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▶ オックスフォード バイオメディカ (ユーケー) リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032913
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ウイルスベクター産生系
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/34 20060101AFI20240305BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/49 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240305BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240305BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240305BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C12P19/34 A
C12N15/867 Z ZNA
C12N15/49
C12N15/31
C12N15/55
C12N5/10
C12M1/00 A
C12M3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】34
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024012735
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2020548961の分割
【原出願日】2019-03-15
(31)【優先権主張番号】62/644,373
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1814590.4
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/795,222
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511143379
【氏名又は名称】オックスフォード バイオメディカ (ユーケー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ファーリー
(72)【発明者】
【氏名】キリアコス ミトロファヌス
(57)【要約】
【課題】ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解するためのヌクレアーゼを分泌するウイルスベクター産生系およびその方法を提供すること。
【解決手段】そのようなウイルスベクター産生系は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含み、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する。別のそのようなウイルスベクター産生系は、1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むヌクレアーゼヘルパー細胞を含み、ヌクレアーゼは、1)の産生細胞および2)のヘルパー細胞の共培養物で発現および分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクターを産生する方法であって、前記方法が、
1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列であって、前記ウイルスベクター成分が、目的のヌクレオチド(NOI)を含む、核酸配列;および
2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列
をウイルスベクター産生細胞にトランスフェクトすることを含み、前記ヌクレアーゼが、前記ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【請求項2】
ウイルスベクター産生細胞を含むウイルスベクター産生系であって、前記ウイルスベクター産生細胞が、
1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列であって、前記ウイルスベクター成分が、目的のヌクレオチド(NOI)を含む、核酸配列;および
2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列
を含み、前記ヌクレアーゼが、前記ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、ウイルスベクター産生系。
【請求項3】
a)細胞培養物が、6.5~7.2のpH範囲に維持される;
b)前記ヌクレアーゼが、配列番号1~配列番号11のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する;
c)前記ヌクレアーゼが、細胞外ヌクレアーゼである;
d)前記ヌクレアーゼが、糖非特異的ヌクレアーゼである;
e)前記ヌクレアーゼが、配列番号3のSerratia marcescensヌクレアーゼAまたは配列番号3と少なくとも90%配列同一性を有するその改変体を含む;
f)前記ヌクレアーゼが、配列番号1のVibrio choleraeエンドヌクレアーゼIまたは配列番号1と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含み、必要に応じて、前記ヌクレアーゼが、配列番号5のVcEndA-12glc、配列番号6のVcEndA-123glc、配列番号7のVcEndA-124glc、配列番号8のVcEndA-134glc、配列番号9のVcEndA-13glc、配列番号10のVcEndA-14glc、および配列番号11のVcEndA-1glcからなる群より選択されるヌクレアーゼ改変体であり、必要に応じて、前記ヌクレアーゼが、配列番号11のVcEndA-1glcのヌクレアーゼ改変体である;
g)前記ヌクレアーゼが、塩活性ヌクレアーゼを含み、必要に応じて、前記塩活性ヌクレアーゼが、配列番号2のVibrio salmonicidaエンドヌクレアーゼIまたは配列番号2と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む;または
h)前記ヌクレアーゼは、配列番号4のBacNucBまたは配列番号4と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a)前記ヌクレアーゼが、天然または非天然N末端分泌シグナルを含む;
b)前記ヌクレアーゼをコードする核酸配列が、潜在的なスプライス部位および/または不安定なエレメントを除去するように配列最適化されている;
c)前記ヌクレアーゼをコードする核酸配列が、前記産生細胞での発現のためにコドン最適化されている;
d)前記産生系および/または方法が、1つまたは複数の追加のヌクレアーゼをさらに含み、必要に応じて、前記ヌクレアーゼが、前記1つまたは複数の追加のヌクレアーゼの少なくとも1つに融合されている;
e)前記細胞培養物が、少なくとも約5リットルの容積の培地を含む;
f)前記細胞が、懸濁しているかまたは付着している;
g)前記細胞培養物が、無血清である;
h)前記産生細胞が真核細胞であり、必要に応じて、前記産生細胞が哺乳動物細胞であり、さらに必要に応じて、前記産生細胞がヒト産生細胞である;および/または
i)前記産生細胞が、HEK293細胞またはその派生物であり、必要に応じて、前記HEK293産生細胞は、HEK293T細胞である、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスベクター成分が、レトロウイルスベクター成分である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レトロウイルスベクター成分が、レンチウイルスベクター成分である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルスベクター成分が、i)gag-pol;ii)env;iii)必要に応じて、レトロウイルスベクターのRNAゲノム;およびiv)必要に応じて、revまたはその機能的代用物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)前記核酸配列の少なくとも2つが、同じ遺伝子座に位置する前記ウイルスベクター成分をコードするモジュール式構築物である;
b)前記核酸配列の少なくとも2つが、前記ウイルスベクター成分を逆向きおよび/または交互の向きにコードするモジュール式構築物である;または
c)前記核酸配列の少なくとも2つは、gag-polおよび/またはenvをコードするモジュール式構築物であり、前記モジュール式構築物は、少なくとも1つの調節因子エレメントに関連している、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記envが、VSV-G envである、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
a)前記ヌクレアーゼが、一過性トランスフェクション後に前記細胞から発現および分泌される;
b)前記ヌクレアーゼが、前記細胞の安定的組込み後に前記細胞から発現および分泌され、必要に応じて、前記ヌクレアーゼの発現は、誘導性または条件付きであり、前記ヌクレアーゼをコードする核酸が、誘導性または条件付きプロモーターまたは調節エレメントを含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
a)細胞培養物が、6.5~7.2のpH範囲に維持される;
b)前記ヌクレアーゼが、配列番号1~配列番号11のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する;
c)前記ヌクレアーゼが、細胞外ヌクレアーゼである;
d)前記ヌクレアーゼが、糖非特異的ヌクレアーゼである;
e)前記ヌクレアーゼが、配列番号3のSerratia marcescensヌクレアーゼAまたは配列番号3と少なくとも90%配列同一性を有するその改変体を含む;
f)前記ヌクレアーゼが、配列番号1のVibrio choleraeエンドヌクレアーゼIまたは配列番号1と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含み、必要に応じて、前記ヌクレアーゼが、配列番号5のVcEndA-12glc、配列番号6のVcEndA-123glc、配列番号7のVcEndA-124glc、配列番号8のVcEndA-134glc、配列番号9のVcEndA-13glc、配列番号10のVcEndA-14glc、および配列番号11のVcEndA-1glcからなる群より選択されるヌクレアーゼ改変体であり、必要に応じて、前記ヌクレアーゼが、配列番号11のVcEndA-1glcのヌクレアーゼ改変体である;
g)前記ヌクレアーゼが、塩活性ヌクレアーゼを含み、必要に応じて、前記塩活性ヌクレアーゼは、配列番号2のVibrio salmonicidaエンドヌクレアーゼIまたは配列番号2と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む;または
h)前記ヌクレアーゼが、配列番号4のBacNucBまたは配列番号4と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、
請求項2に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項12】
a)前記ヌクレアーゼが、天然または非天然N末端分泌シグナルを含む;
b)前記ヌクレアーゼをコードする核酸配列が、潜在的なスプライス部位および/または不安定なエレメントを除去するように配列最適化されている;
c)前記ヌクレアーゼをコードする核酸配列が、前記産生細胞での発現のためにコドン最適化されている;
d)前記産生系および/または方法が、1つまたは複数の追加のヌクレアーゼをさらに含み、必要に応じて、前記ヌクレアーゼが、前記1つまたは複数の追加のヌクレアーゼの少なくとも1つに融合されている;
e)前記細胞培養物が、少なくとも約5リットルの容積の培地を含む;
f)前記細胞が、懸濁しているかまたは付着している;
g)前記細胞培養物が、無血清である;
h)前記産生細胞が真核細胞であり、必要に応じて、前記産生細胞が哺乳動物細胞であり、さらに必要に応じて、前記産生細胞がヒト産生細胞である;および/または
i)前記産生細胞が、HEK293細胞またはその派生物であり、必要に応じて、前記HEK293産生細胞が、HEK293T細胞である、
請求項2または請求項3に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項13】
前記ウイルスベクター成分が、レトロウイルスベクター成分である、請求項2、11または12のいずれか一項に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項14】
前記レトロウイルスベクター成分が、レンチウイルスベクター成分である、請求項13に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項15】
前記ウイルスベクター成分が、i)gag-pol;ii)env;iii)必要に応じて、レトロウイルスベクターのRNAゲノム;およびiv)必要に応じて、revまたはその機能的代用物を含む、請求項14に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項16】
a)前記核酸配列の少なくとも2つが、同じ遺伝子座に位置する前記ウイルスベクター成分をコードするモジュール式構築物である;
b)前記核酸配列の少なくとも2つが、前記ウイルスベクター成分を逆向きおよび/または交互の向きにコードするモジュール式構築物である;または
c)前記核酸配列の少なくとも2つは、gag-polおよび/またはenvをコードするモジュール式構築物であり、前記モジュール式構築物は、少なくとも1つの調節因子エレメントに関連している、
請求項15に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項17】
前記envが、VSV-G envである、請求項15または請求項16に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項18】
a)前記ヌクレアーゼが、一過性トランスフェクション後に前記細胞から発現および分泌される;
b)前記ヌクレアーゼが、前記細胞の安定的組込み後に前記細胞から発現および分泌され、必要に応じて、前記ヌクレアーゼの発現は、誘導性または条件付きであり、前記ヌクレアーゼをコードする核酸が、誘導性または条件付きプロモーターまたは調節エレメントを含む、
請求項2または11~17のいずれか一項に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項19】
ウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、前記産生細胞が、
1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列であって、前記ウイルスベクター成分が、目的のヌクレオチド(NOI)を含む、核酸配列;および
2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列
を含み、前記ヌクレアーゼが、前記ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、前記産生細胞が、真核生物産生細胞である、産生細胞。
【請求項20】
前記ヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼである、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
エキソヌクレアーゼをコードする核酸配列をさらに含む、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
前記エンドヌクレアーゼが、前記エキソヌクレアーゼに融合されている、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
前記ヌクレアーゼが、エキソヌクレアーゼである、請求項19に記載の細胞。
【請求項24】
エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列をさらに含む、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
前記エキソヌクレアーゼが、前記エンドヌクレアーゼに融合されている、請求項24に記載の細胞。
【請求項26】
一過性産生細胞である、請求項19に記載の細胞。
【請求項27】
安定産生細胞である、請求項19に記載の細胞。
【請求項28】
ヌクレアーゼ発現および分泌が、前記安定産生細胞での誘導性発現および分泌である、請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
請求項1~18のいずれか一項に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
【請求項30】
請求項19~28のいずれか一項に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
【請求項31】
前記ヌクレアーゼが、
a)ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解することが可能な分泌ヌクレアーゼの改変体であって、配列番号11のアミノ酸配列を含む改変体;または
b)真核細胞の分泌経路を介して発現される、細胞保持および/または細胞付随の増加を示す修飾ヌクレアーゼであって、そのC末端に保持シグナルを含む修飾ヌクレアーゼ
である、請求項1または3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
a)前記修飾ヌクレアーゼが、小胞体(ER)および/またはゴルジ体区画に局在化し、それにより対応する未修飾ヌクレアーゼの細胞保持と比較して、細胞保持の増加がもたらされる;
b)前記修飾ヌクレアーゼが、ER保持欠損相補群のER受容体に結合する;
c)前記保持シグナルが、コンセンサス[KRHQSA]-[DENQ]-E-LまたはKKXXのC末端にある;または
d)前記保持シグナルが、コンセンサスKDELのC末端にある、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ヌクレアーゼが、
a)ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解することが可能な分泌ヌクレアーゼの改変体であって、配列番号11のアミノ酸配列を含む改変体;または
b)真核細胞の分泌経路を介して発現される、細胞保持および/または細胞付随の増加を示す修飾ヌクレアーゼであって、そのC末端に保持シグナルを含む修飾ヌクレアーゼ
である、請求項2または11~18のいずれか一項に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項34】
a)前記修飾ヌクレアーゼが、小胞体(ER)および/またはゴルジ体区画に局在化し、それにより対応する未修飾ヌクレアーゼの細胞保持と比較して、細胞保持の増加がもたらされる;
b)前記修飾ヌクレアーゼが、ER保持欠損相補群のER受容体に結合する;
c)前記保持シグナルが、コンセンサス[KRHQSA]-[DENQ]-E-LまたはKKXXのC末端にある;または
d)前記保持シグナルが、コンセンサスKDELのC末端にある、
請求項33に記載のウイルスベクター産生系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスベクターの産生に関する。特に、本発明は、ベクター製造プロセス中にヌクレアーゼを発現し、細胞培養培地へと分泌するように操作されたウイルスベクター細胞産生系に関する。
【背景技術】
【0002】
上記に示されているように、本発明は、産生細胞、それらの調製、およびそれらの使用に関する。産生細胞は、時には、宿主細胞または宿主産生細胞とも呼ばれる。産生細胞は、特に遺伝子療法に有用である。
【0003】
遺伝子療法は、概して、遺伝物質を使用して疾患を処置することを含む。遺伝子療法は、欠陥遺伝子(例えば、変異を内包するもの)を有する細胞を、そうした遺伝子の機能的コピーで追加補充すること、不適切に機能する遺伝子を不活化すること、および新しい治療用遺伝子を導入することを含む。
【0004】
ベクターを使用して治療用遺伝物質を宿主の標的細胞に組み込んで、核酸の移入を可能にすることができる。そのようなベクターは、一般に、ウイルスカテゴリーおよび非ウイルスカテゴリーに分類することができる。
【0005】
ウイルスは、天然では、複製サイクルの一部分として遺伝物質を宿主の標的細胞へと導入する。操作されたウイルスベクターは、この能力を活用して、目的のヌクレオチド(NOI)の標的細胞への送達を可能にする。現在まで、いくつかのウイルスが、遺伝子療法のためのベクターとして操作されている。これらのウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、およびワクシニアウイルスが挙げられる。
【0006】
目的のヌクレオチドを運搬する修飾に加えて、ウイルスベクターは、典型的には、複製欠損になるようにさらに操作されている。そのため、組換えベクターは、標的細胞に直接感染することができるが、感染性ビリオンのさらなる生成をもたらすことができない。他のタイプのウイルスベクターは、がん細胞内のみにおいて条件付きで複製コンピテントであってもよく、毒性導入遺伝子またはプロ酵素を追加的にコードしてもよい。
【0007】
治療用遺伝子を送達するためのウイルスベクターの使用は周知であり、適応症は幅広く様々である。特に、遺伝子療法は進歩しており、製品は今やグローバルヘルスケア市場の重要な部分である。γ-レトロウイルスおよびレンチウイルスなどのRNAウイルスならびにアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルスに基づく現代の遺伝子療法ベクターは、ますます多くのヒト疾患適応症に有望であることが示されている。これらとしては、血液学的状態のための患者細胞のex vivo修飾、および眼疾患、心血管疾患、神経変性疾患のin vivo処置、および腫瘍療法または免疫療法が挙げられる。ポックスウイルスおよびトリウイルスに基づくウイルスなどの他のウイルスベクターが、ヒトおよび動物ワクチン接種に広く使用されている。
【0008】
種々の遺伝障害の療法として開発されたレトロウイルスベクターは、臨床試験において有望性の増加を示し続けており、今では、承認された治療用製品の基盤を形成するものが幾つかある。現在では、レトロウイルス遺伝子療法が関与する459件よりも多くのヒト臨床試験が、Journal of Gene Medicineデータベースに登録されており、158件の遺伝子療法臨床試験が、レンチウイルスベクターを使用している(http://www.abedia.com/wiley/vectors.php、2017年4月にアップデート)。ストリ
ムベリスは、2016年5月26日に欧州委員会から市販承認を受けた。ストリムベリスは、ADA遺伝子を発現するレトロウイルスベクターをex vivoで形質導入した患者CD34細胞に基づくADA-SCIDを処置するための製品である。キムリア(USAN:チサゲンレクロイセル)は、2017年8月30日にFDAから承認を受けた。キムリアは、不応性ALLを有する25歳までの患者を処置するための製品である。レトロウイルス遺伝子療法に関する論文としては、以下のものが挙げられる:Wang X, Naranjo A, Brown CE, Bautista C, Wong CW, Chang WC, Aguilar B, Ostberg JR, Riddell SR, Forman SJ, Jensen MC (2012) J Immunother. 35(9):689-701、Hu Y, Wu Z, Luo Y, Shi J, Yu J, Pu C, Liang Z, Wei G, Cui Q, Sun J, Jiang J, Xie J, Tan Y, Ni W, Tu J, Wang J, Jin A, Zhang H, Cai Z, Xiao L, Huang H. (2017) Clin Cancer Res. 23(13):3297-3306、Galy, A. and A. J. Thrasher (2010) Curr Opin Allergy Clin Immunol 11(6): 545-550;Porter, D. L., B. L. Levine, M. Kalos, A. Bagg and C. H. June (2011) N Engl J Med 365(8): 725-733;Campochiaro, P. A. (2012) Gene Ther 19(2): 121-126;Cartier, N., S. Hacein-Bey-Abina, C. C. Bartholomae, P. Bougneres, M. Schmidt, C. V. Kalle, A. Fischer, M. Cavazzana-Calvo and P. Aubourg (2012) Methods Enzymol 507: 187-198;Sadelain, M., I. Riviere, X. Wang, F. Boulad, S. Prockop, P. Giardina, A. Maggio, R. Galanello, F. Locatelli and E. Yannaki (2010) Ann N Y Acad Sci 1202: 52-58;DiGiusto, D. L., A. Krishnan, L. Li, H. Li, S. Li, A. Rao, S. Mi, P. Yam, S. Stinson, M. Kalos, J. Alvarnas, S. F. Lacey, J. K. Yee, M. Li, L. Couture, D. Hsu, S. J. Forman, J. J. Rossi and J. A. Zaia (2010) Sci Transl Med 2(36): 36ra43、およびSegura MM, M. M., Gaillet B, Garnier A. (2013) Expert opinion in biological therapy)。
【0009】
そのようなベクターの重要な例としては、ガンマ-レトロウイルスベクター系(MMLVに基づく)、霊長類レンチウイルスベクター系(HIV-1に基づく)、および非霊長類レンチウイルスベクター系(EIAVに基づく)が挙げられる。
【0010】
リバースジェネティクスは、これらのウイルスに基づくベクターを高度に操作することを可能にし、適切なDNA配列を哺乳動物細胞にトランスフェクションにより大型の異種配列(およそ10kb)をコードするベクターを産生することができる(Bannert, K. (2010) Caister Academic Press: 347-370に総説されている)。
【0011】
研究段階でのレトロウイルスベクターの操作および使用は、典型的には、例えばGFPまたはlacZをコードするレポーター遺伝子ベクターを産生することを含む。これらの臨床的に無関係のベクターの力価は、通常、粗回収物質の1mL当たり1×10~1×10形質導入単位(TU/mL)の領域である。
【0012】
ヒト遺伝子療法およびワクチン接種用のウイルスベクターの製造は、最近の数十年間にわたって科学論文誌に十分に文書化されている。ウイルスベクター製造の周知の方法は、初代細胞または哺乳動物/昆虫細胞株にベクターDNA成分を一過性トラスフェクションなどでトラスフェクションし、続いて限定的な期間にわたってインキュベーションし、次いで、培養培地および/または細胞から粗ベクターを回収することを含む。一過性トランスフェクションには、ウイルスベクターの産生に必要なウイルス遺伝子が、トランスフェクションによりプラスミドを介して産生細胞(例えば、HEK-293)に導入されることが必要である。多くの場合、ベクター産生に必要な各成分は、部分的には安全上の理由で別々のプラスミドによりコードされており、そのため、いくつかの組換え事象が生じて、複製コンピテントウイルス粒子が産生プロセスを介して形成されることが必要とされるだろう。
【0013】
トランスフェクション、インキュベーション、および収集後、次いで、ウイルスベクタービリオンを、以下のステップの一部または全ての一般化されたプロセスを使用して粗物質から精製および濃縮する:1)清澄化、2)不要なまたは夾雑性の核酸の消化(例えば、Benzonase(登録商標)処理)、3)カラムクロマトグラフィー(例えば、イオン交換)、4)緩衝液交換/濃縮(例えば、限外濾過)およびさらなる核酸除去(例えば、第2のBenzonase(登録商標)処理)、5)最終精製(例えば、サイズ排除)、ならびに6)濾過滅菌。
【0014】
数十年間の改良にも関わらず、一過性トランスフェクションには固有の欠点がある。トランスフェクション技法には労働集約的性質があることに加えて、トランスフェクション剤/プラスミドおよび/またはプロセス剤のコストが高いため、一過性トランスフェクションは、臨床/市販ベクターを産生するための高価で技術的に複雑なプロセスになる。
【0015】
したがって、当技術分野には、一過性トランスフェクションプロセスに関連する公知の課題への取組みを支援する、ウイルスベクターを産生するための代替法を提供する要望が存在する。
【0016】
近年、ウイルスパッケージング遺伝子を、これらの遺伝子が安定的に細胞に組み込まれ得るように選択マーカーと共に真核生物宿主細胞に導入するという、安定パッケージング細胞株を生成する試みがなされている。同様に、レトロウイルスゲノムも安定的に組み込まれている安定プロデューサー細胞株も存在する。これらは両方とも、一過性トランスフェクションプロセスの大部分の迂回を可能にする。
【0017】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、ウイルスベクター産生に必要な核酸成分の少なくとも2つを含むモジュール式構築物が用いられるウイルスベクター産生系および方法が記載されている、RETROVIRAL VECTORと題する同時係属中の欧州特許出願第17210359.0号も参照されたい。そのようなモジュール式構築物は、従来の多プラスミド一過性プロセスによるものと同等のベクター産生レベルを提供するが、例えば、トランスフェクション剤の使用の著しい低減を可能にすることが見出された。
【0018】
したがって、ベクター製造分野には、一過性ベクター産生プロセス、ならびに安定パッケージングおよびプロデューサー細胞株を生成するためのプロセスを両方とも向上させるという要望が存在する。
【0019】
産生細胞またはウイルスベクター成分のいずれかに由来する核酸を最終薬物製品から除去することは、安全性およびウイルスベクター製造分野における改善の余地のある重要な側面である。HEK293T細胞(アデノウイルスE1およびSV40T抗原遺伝子も含む)などの形質転換真核細胞株が産生に使用される場合、これらの細胞は、典型的には、(原)がん遺伝子特性を有する遺伝子を内包する。ウイルスベクター製造中の不可避な細胞死および産生細胞DNAの放出は、粗回収物質内のそのような(部分的および夾雑性)配列の存在に結び付く。したがって、不必要で潜在的に有害な機能的遺伝子配列が、ベクター送達中に患者細胞へと組み込まれる可能性を排除するために、一般DNA夾雑物を最小限にする(例えば、最終産物内では、より長鎖の夾雑性dsDNAは、短鎖形態へと分解されている)ことが望ましい。加えて、ウイルスベクター成分をコードする大量のプラスミドDNA(pDNA)を産生細胞に一過性にトランスフェクトする典型的なウイルスベクター産生方法は、ベクター成分起源である大多数の夾雑性DNAをもたらすことになる。そのため、そうでなければ取り込まれ、患者細胞により発現される可能性がある夾雑性の残留pDNAを除去することも望ましい。
【0020】
研究室規模から工業規模まで、ウイルスベクター製造業者は、Serratia marcescensに由来するもの(例えば、Benzonase(登録商標))または他の市販の加水分解ヌクレアーゼなどの組換えヌクレアーゼを使用して粗ベクター物質を処理し、上流および下流の精製プロセス中に夾雑性核酸を除去することに着目している。上流プロセス中にヌクレアーゼ処理する場合、典型的には、タンパク質形態の組換えヌクレアーゼを回収物質に添加し、続いて37℃またはそれ未満にて限定的な期間にわたってインキュベーションする。しかしながら、これは、潜在的に回避可能な追加の加工処理ステップであり、温度の上昇およびインキュベーション時間の増加がベクター安定性の喪失につながる場合がある加工処理ステップである。回収後の独立ステップとしてのこのステップを回避するために、組換えヌクレアーゼは、ベクター産生の後期段階にて産生細胞培養物に添加されることが多い。しかしながら、ヌクレアーゼの半減期が比較的短いか、または必要とされる量の残留核酸を分解するには活性が不十分である場合、大量のヌクレアーゼを、これらの培養後期段階中に一度にまたは継続的に添加する必要がある場合がある。残念ながら、プロセスのこの段階での市販の組換えヌクレアーゼの使用は、特に規模が何百または何千リットルに増加する場合、実際上の負担になり、法外なコストがかかることが多い。
【0021】
したがって、ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する重要なステップが合理化され、より効率的になるように、ウイルスベクター産生および製造プロセスを向上させる要望が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Wang X, Naranjo A, Brown CE, Bautista C, Wong CW, Chang WC, Aguilar B, Ostberg JR, Riddell SR, Forman SJ, Jensen MC (2012) J Immunother. 35(9):689-701
【非特許文献2】Hu Y, Wu Z, Luo Y, Shi J, Yu J, Pu C, Liang Z, Wei G, Cui Q, Sun J, Jiang J, Xie J, Tan Y, Ni W, Tu J, Wang J, Jin A, Zhang H, Cai Z, Xiao L, Huang H. (2017) Clin Cancer Res. 23(13):3297-3306
【非特許文献3】Galy, A. and A. J. Thrasher (2010) Curr Opin Allergy Clin Immunol 11(6): 545-550
【非特許文献4】Porter, D. L., B. L. Levine, M. Kalos, A. Bagg and C. H. June (2011) N Engl J Med 365(8): 725-733
【非特許文献5】Campochiaro, P. A. (2012) Gene Ther 19(2): 121-126
【非特許文献6】Cartier, N., S. Hacein-Bey-Abina, C. C. Bartholomae, P. Bougneres, M. Schmidt, C. V. Kalle, A. Fischer, M. Cavazzana-Calvo and P. Aubourg (2012) Methods Enzymol 507: 187-198
【非特許文献7】Sadelain, M., I. Riviere, X. Wang, F. Boulad, S. Prockop, P. Giardina, A. Maggio, R. Galanello, F. Locatelli and E. Yannaki (2010) Ann N Y Acad Sci 1202: 52-58
【非特許文献8】DiGiusto, D. L., A. Krishnan, L. Li, H. Li, S. Li, A. Rao, S. Mi, P. Yam, S. Stinson, M. Kalos, J. Alvarnas, S. F. Lacey, J. K. Yee, M. Li, L. Couture, D. Hsu, S. J. Forman, J. J. Rossi and J. A. Zaia (2010) Sci Transl Med 2(36): 36ra43
【非特許文献9】Segura MM, M. M., Gaillet B, Garnier A. (2013) Expert opinion in biological therapy
【非特許文献10】Bannert, K. (2010) Caister Academic Press: 347-370
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の概要
【0024】
本明細書で開示される本発明は、ウイルスベクター産生中にウイルスベクター産生細胞で加水分解ヌクレアーゼを発現および分泌させることを用いる高度に効果的で合理化されたウイルスベクター産生系および製造プロセスを記載する。そのため、ヌクレアーゼの分泌は、ウイルスベクター産生中に不要なまたは夾雑性の(残留)核酸を分解する。そのようなベクター産生系およびプロセスでは、ヌクレオチド発現カセットによりコードされるヌクレアーゼを、ウイルスベクター成分発現カセットで一過性に共トランスフェクトするか、または産生細胞ゲノムもしくはヌクレアーゼヘルパー細胞ゲノム内に安定的に組み込むかのいずれかであり、あるいはヌクレアーゼヘルパー細胞は、ヌクレアーゼ発現カセットの一過性トランスフェクションにより生成してもよい。
【0025】
ウイルスベクター産生プロセスは複雑であるため、ウイルスベクター産生系と共におよび/またはウイルスベクター産生プロセス中に、遺伝子発現カセットからヌクレアーゼを発現および分泌させることは、細菌細胞でのヌクレアーゼの発現/共発現を示すに過ぎず、ウイルスベクターの状況では、ウイルスベクターの組換えタンパク質に基づく酵素処理として、負担となる上流および/または下流時点での市販ヌクレアーゼの添加の使用を用いる技術水準とは対照的である。したがって、本明細書で開示される本発明の以前では、ウイルスベクター産生系のウイルスベクター成分発現カセットと共に、核酸発現カセットによりコードされたヌクレアーゼを発現および分泌させることは、必要なベクター成分DNAの分解をもたらし、したがって、ベクター成分の発現の低減、産生されるウイルスベクターの低力価、および/またはウイルスベクター産生細胞に対する毒性につながることになるとみなされていた。
【0026】
しかしながら、ウイルスベクター産生製造を向上させる努力の一環として、本発明者らは、本明細書で開示される本発明:ウイルスベクター産生系、および治療用ウイルスベクター産生中にウイルスベクター産生細胞(プロデューサーおよび/またはヌクレアーゼヘルパー細胞)でヌクレアーゼを発現および分泌させることを用いるウイルスベクターを産生するための方法を提供する。本発明は、現行の商業的ヌクレアーゼ技法と比較して、より効率的な(および対費用効果の高い)ウイルスベクター産生系/方法を提供する。さらに、本発明は、ウイルス力価に影響を及ぼさずにおよび/またはウイルスベクター産生細胞に毒性を付与せずに、ウイルスベクター産生中に不要なまたは夾雑性の残留核酸を分解するためにヌクレアーゼの分泌を操作することにより、従来のベクター製造技術と比較して合理化された様式でのウイルスベクターの製造を提供する。本発明者らは、レンチウイルスベクター産生の場合、産生の上流段階での分泌ヌクレアーゼの適用は、粗回収物質内の残留DNAのそのような効率的分解につなげることができ、下流プロセス中のさらなるヌクレアーゼ処理が不必要となることを示す。重要なことには、分泌ヌクレアーゼを用いると、精製/濃縮レンチウイルスベクター物質内の残留DNAのレベルを、標準的な市販ヌクレアーゼと比較して大幅に低減させることができ、これは、規制当局による製品品質/安全性向上の要求はますます高まっているため、遺伝子療法分野では非常に重要である。
【0027】
したがって、本明細書では、ヌクレアーゼを分泌するように操作されたウイルスベクター産生系が開示される。
【0028】
一実施形態では、ウイルスベクター産生系は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルス産生細胞を含み、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する。
【0029】
別の実施形態では、ウイルスベクター産生系は、1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列を含むウイルス産生細胞;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むヌクレアーゼヘルパー細胞を含み、ヌクレアーゼは、1)の産生細胞および2)のヘルパー細胞の共培養物で発現および分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する。
【0030】
また、本明細書では、ウイルスベクターを産生するための方法であって、ウイルスベクター産生中にヌクレアーゼを発現および分泌させることを含む方法が開示される。特に、ウイルスベクターを産生するためのそのような方法は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列をウイルス産生細胞にトランスフェクトする(接触させると記載されることもある)ステップを含み、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する。
【0031】
加えて、本明細書では、ベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と接触させることを含む、共培養の方法が開示される。さらなる実施形態では、ヘルパー細胞からの液体供給材料を、ベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞と接触させる。
【0032】
本明細書で開示される本発明の別の実施形態では、ウイルスベクターを産生するための改良された方法であって、改良は、核酸配列をウイルスベクター産生細胞に導入することを含み、核酸配列は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードし、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法が開示される。
【0033】
また、本明細書では、ウイルスベクターを産生するための改良された方法であって、改良は、ウイルスベクター成分を含むウイルスベクター産生細胞を、ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と共培養物中で接触させることを含み、ヌクレアーゼは、ヘルパー細胞で発現され、細胞共培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法が開示される。
【0034】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系または方法の別の実施形態では、細胞培養物は、pH6.5~pH7.2のpH範囲に維持される。
【0035】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系または方法の別の実施形態では、ヌクレアーゼは、糖非特異的ヌクレアーゼである。
【0036】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約1Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0037】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約10Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0038】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約50Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0039】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約100Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0040】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内に播種する前にヌクレアーゼヘルパー細胞培養物内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約10Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0041】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内に播種する前にヌクレアーゼヘルパー細胞培養物内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約50Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0042】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内に播種する前にヌクレアーゼヘルパー細胞培養物内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約100Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0043】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内に播種する前にヌクレアーゼヘルパー細胞培養物内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約1000Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0044】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内に播種する前にヌクレアーゼヘルパー細胞培養物内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約1500Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0045】
本明細書で開示されるウイルスベクター産生系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、主ウイルスベクター産生容器内に播種する前にヌクレアーゼヘルパー細胞培養物内で達成されるヌクレアーゼ活性は、1mL当たり少なくとも約2000Benzonase(登録商標)単位当量であり、好ましくは、前記ヌクレアーゼ活性は、アッセイ1として本明細書で提供されるDNAse Alert(商標)アッセイにより決定可能である。
【0046】
ウイルスベクター産生系または方法の別の実施形態では、ヌクレアーゼは、SmNucA、VsEndA、VcEndA、およびBacNucBからなる群より選択される。
【0047】
さらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、配列番号1のVibrio choleraeエンドヌクレアーゼIまたは配列番号1と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体である。
【0048】
またさらなる実施形態では、ヌクレアーゼ改変体は、配列番号5~11のいずれかのVcEndA改変体である。
【0049】
さらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、塩活性ヌクレアーゼを含む。
【0050】
さらなる実施形態では、塩活性ヌクレアーゼは、配列番号2のVibrio salmonicidaエンドヌクレアーゼIまたは配列番号2と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体である。
【0051】
さらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、配列番号3のSerratia marcescensヌクレアーゼAまたは配列番号3と少なくとも90%配列同一性を有するその改変体を含む。
【0052】
さらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、配列番号4のBacillus BacNucBまたは配列番号4と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む。
【0053】
別の実施形態では、ヌクレアーゼは、N末端分泌シグナルを含む。
【0054】
本明細書で開示される本発明の別の実施形態では、ヌクレアーゼをコードする核酸配列は、潜在的なスプライス部位および/または不安定なエレメントを除去するように配列最適化されている。
【0055】
別の実施形態では、ヌクレアーゼをコードする核酸配列は、産生細胞での発現のためにコドン最適化されている。
【0056】
さらなる実施形態では、産生系および/または方法は、1つまたは複数の追加のヌクレアーゼを含む。
【0057】
さらなる実施形態では、産生系および/または方法は、2つまたはそれよりも多くのヌクレアーゼまたはヌクレアーゼドメインの融合タンパク質を含む。
【0058】
なおさらなる実施形態では、融合タンパク質は、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼを含む。
【0059】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約5リットル(L)の容積の培地を含む。
【0060】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約10リットル(L)の容積の培地を含む。
【0061】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約15リットル(L)の容積の培地を含む。
【0062】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約20リットル(L)の容積の培地を含む。
【0063】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約25リットル(L)の容積の培地を含む。
【0064】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約30リットル(L)の容積の培地を含む。
【0065】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約35リットル(L)の容積の培地を含む。
【0066】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約40リットル(L)の容積の培地を含む。
【0067】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約45リットル(L)の容積の培地を含む。
【0068】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約50リットル(L)の容積の培地を含む。
【0069】
系または方法の別の実施形態では、細胞培養物は、少なくとも約60リットル(L)の容積の培地を含む。
【0070】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約70リットル(L)の容積の培地を含む。
【0071】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約80リットル(L)の容積の培地を含む。
【0072】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約90リットル(L)の容積の培地を含む。
【0073】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約100リットル(L)の容積の培地を含む。
【0074】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約200リットル(L)の容積の培地を含む。
【0075】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、少なくとも約500リットル(L)の容積の培地を含む。
【0076】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は、最大でまたは少なくとも約1000リットル(L)の容積の培地を含む。
【0077】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞は付着している。
【0078】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞は懸濁されている。
【0079】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞は、懸濁物中で付着している。
【0080】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は血清を含む。
【0081】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、細胞培養物は無血清である。
【0082】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。
【0083】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、宿主細胞は、ヒト宿主細胞である。
【0084】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ヒト宿主細胞は、HEK293細胞またはその派生物である。HEK293派生物の例としては、HEK293S、HEK293SG、HEK293SGGD、HEK293FTM、およびHEK293Tが挙げられる。これらの派生物は、HEK293の改変体と呼ばれる場合もある。
【0085】
系もしくは方法の一実施形態または本発明の他の態様では、HEK293細胞は、HEK293T細胞である。
【0086】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ウイルスベクター成分は、目的のヌクレオチド(NOI)を含む。
【0087】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ウイルスベクター成分は、レトロウイルスベクター成分である。
【0088】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、レトロウイルベクター成分は、レンチウイルスベクター成分である。
【0089】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ウイルスベクター成分は、i)gag-pol;ii)env;iii)必要に応じて、レトロウイルスベクターのRNAゲノム;およびiv)必要に応じて、revまたはその機能的代用物を含む。
【0090】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ウイルスベクター成分をコードする核酸配列の少なくとも2つは、同じ遺伝子座に位置する。
【0091】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ウイルスベクター成分をコードする核酸配列の少なくとも2つは、逆向きおよび/または交互の向きである。
【0092】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、gag-polおよび/またはenvをコードする核酸配列の少なくとも2つは、少なくとも1つの調節因子エレメントに関連している。
【0093】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、envは、VSV-G envである。
【0094】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。
【0095】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。
【0096】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ヌクレアーゼは、一過性トランスフェクション後に細胞から発現および分泌される。
【0097】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ヌクレアーゼは、細胞の安定的組込み後に細胞から発現および分泌される。
【0098】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ヌクレアーゼの発現は、誘導性または条件付きであり、ヌクレアーゼをコードする核酸は、誘導性または条件付きプロモーターまたは調節エレメントを含む。
【0099】
系もしくは方法の別の実施形態または本発明の他の態様では、ヌクレアーゼは、細胞外ヌクレアーゼである。
【0100】
追加の実施形態では、本明細書で開示される本発明は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む、ウイルスベクターを産生するための一過性または安定産生細胞であって、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留DNAを分解する、一過性または安定産生細胞を提供する。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼ融合タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを産生するための一過性または安定産生細胞であって、ヌクレアーゼ融合タンパク質は、エンドヌクレアーゼドメインに融合されたエキソヌクレアーゼドメインを含み、ヌクレアーゼ融合タンパク質は、ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、産生細胞は、真核生物産生細胞である、一過性または安定産生細胞を提供する。
【0102】
別の実施形態では、本明細書で開示される本発明は、ヌクレアーゼを発現および分泌するウイルスベクター産生細胞を含む、バイオリアクターなどの細胞培養デバイスを提供する。
【0103】
加えて、本明細書では、ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解することが可能な分泌ヌクレアーゼの改変体であって、配列番号5~11のいずれかのアミノ酸配列を含む改変体が開示される。特に、改変体は、配列番号7、配列番号10、または配列番号11を含む。
【0104】
また、本明細書では、真核細胞の分泌経路を介して発現される細胞保持および/または細胞付随の増加を示す修飾ヌクレアーゼであって、そのC末端に保持シグナルを含む修飾ヌクレアーゼが開示される。
【0105】
別の実施形態では、修飾ヌクレアーゼは、小胞体(ER)および/またはゴルジ体区画に局在化し、それにより対応する未修飾ヌクレアーゼの細胞保持と比較して、増加した細胞保持がもたらされる。追加の実施形態では、修飾ヌクレアーゼは、ER保持欠損相補群(ER retention-defective complementation group)のER受容体に結合する。
【0106】
別の実施形態では、保持シグナルは、そのコンセンサス[KRHQSA]-[DENQ]-E-LまたはKKXXのC末端にあり、さらなる実施形態では、保持シグナルは、そのコンセンサスKDELのC末端にある。
【0107】
他の実施形態では、真核細胞は、修飾ヌクレアーゼ、および修飾ヌクレアーゼを発現する細胞を含むウイルスベクター産生系を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1図1A~1Bは、ウイルスベクター産生系の産生中に真核細胞からヌクレアーゼが分泌されることを示す、本明細書で開示される本発明の2つの概念を図示する。これらの概念では、分泌ヌクレアーゼを発現する細胞は、ヌクレアーゼ発現カセットに一過性にトランスフェクトされるか、または細胞のゲノムに安定的に組み込まれるかのいずれでもよく、必要に応じて誘導性であってもよい。いずれの概念でも、ウイルスベクター産生の様式は、付着細胞培養であってもよくまたは懸濁細胞培養であってもよい。図1Aは、分泌ヌクレアーゼを発現することが可能なヌクレアーゼヘルパー細胞でスパイクされたウイルスベクター産生細胞の培養物を示す。図1Bは、産生細胞が、ヌクレアーゼヘルパー細胞を使用せずにそれら自体で分泌ヌクレアーゼを発現することが可能なウイルスベクター産生系を示す。
図2図2は、本明細書で開示される本発明で使用するための産生細胞に遺伝子操作するためのヌクレアーゼ修飾のワークフローの段階的手法を図示する。
図3図3A~3Dは、本明細書で開示される本発明で使用するための模式的なヌクレアーゼ発現カセットを図示する。図3Aは、限定ではないが、SmNucAの例示的な発現カセットを示す。図3Bは、限定ではないが、VsEndAおよびVcEndAの例示的な発現カセットを示す。図3Cは、限定ではないが、BacNucBの例示的な発現カセットを示す。図3Dは、限定ではないが、安定した細胞発達のための調節性分泌ヌクレアーゼカセットの例示的な発現カセットを示す。
図4図4A~4Cは、トランスフェクション後のHEK293T細胞からのヌクレアーゼ発現および分泌が、培養培地中のDNA低減と相関したことを示す図である。図4Aは、抗ヒスチジンタグ付きsmNucAH6について免疫ブロットしたトランスフェクト細胞溶解物を示す。図4Bは、抗ヒスチジンタグ付きSmNucAH6を使用してプローブしたトランスフェクト細胞培養培地の免疫ドットブロットを示す。図4Cは、培地内の残留DNA分析を示す。
図5図5は、付着または懸濁HEK293T細胞培養物での一過性レンチウイルスベクター産生を示す図であり、Benzonase(登録商標)および未処理ベクター回収物に対して、発現カセットから分泌されたタグ付きおよびタグ無しヌクレアーゼ(SmNucA)が比較されている。
図6図6は、天然シグナルペプチドを有するSmNucA発現カセット、および例示的な真核生物ERシグナルペプチドが天然シグナルの代わりに用いられている天然シグナルペプチドを有していないSmNucA発現カセットを使用した、付着HEK293Tでの一過性レンチウイルスベクター産生を示す図である。
図7図7は、限定ではないが、ベクター成分の一過性トランスフェクション中の付着HEK293T細胞培養物でのレンチウイルスベクターの生成中の、発現カセット(総投入pDNAの1%)による分泌ヌクレアーゼ(例えば、VsEndAおよびSmNucA)の例を示す図である。
図8図8は、限定ではないが、ヌクレアーゼプラスミドの一過性トランスフェクション中にベクター成分をdox誘導することによる付着HEK293Tプロデューサー細胞株培養物でのレンチウイルスベクターの生成中の、発現カセット(総投入pDNAの1%)による分泌ヌクレアーゼ(例えば、VsEndAおよびSmNucA)の例を示す図である。
図9図9A~9Bは、懸濁培養物でのベクター産生中の分泌ヌクレアーゼを示す図である。図9Aは、限定ではないが、ベクター成分の一過性トランスフェクション中の懸濁HEK293T細胞培養物でのレンチウイルスベクターの生成中の、発現カセット(総投入pDNAの5%)による分泌ヌクレアーゼ(例えば、VsEndAおよびSmNucA)の例を示す。図9Bは、抗ヒスチジンタグ抗体を使用して分泌ヌクレアーゼタンパク質を検出するためのSDS-PAGEおよび免疫ブロットによる濃縮ベクター上清を示す。
図10-1】図10A~10Dは、本明細書で開示される本発明で使用するためのBacNucBに対するin silico分析および限定ではないが、例示的な修飾を示す図である。図10Aは、BacNucBの一次配列および膜貫通予測分析を示す。図10Bは、BacNucBの分泌性ペプチドシグナルの分析を示す。図10Cは、BacNucBのアルファヘリックス領域、ベータストランド領域、およびコイル領域の分析、ならびに4つの異なる改変体へと操作された新規NxS/Tシークオンの位置を示す。図10Dは、4つのNxS/Tシークオン改変体位置を有するBacNucBの一次配列の分析、およびN-グリカン部位としての予測されるそれらの使用を示す。
図10-2】同上。
図11図11A~11Bは、操作されたBacNucBによる、レンチウイルスベクター産生細胞培養物における残留プラスミドDNAの除去増強を示す図である。図11Aは、高ベクター力価を維持しつつpDNAを低減するための、一過性トランスフェクションによるレンチウイルスのベクター産生中の、懸濁無血清HEK293T細胞でのBacNucB改変体発現プラスミド(総pDNAの5%)の使用を示す。図11Bは、抗ヒスチジンタグ抗体を使用して分泌ヌクレアーゼタンパク質を検出するためのSDS-PAGEおよび免疫ブロットによる濃縮ベクター上清を示す。
図12図12A~12Cは、変異したNxS/Tシークオンを含む操作された改変体「VcEndA-1glc」の使用による、レンチウイルスベクター産生細胞培養物における残留プラスミドDNAの除去の増強を示す図である。図12Aは、高ベクター力価を維持しながら、一過性トランスフェクションによるレンチウイルスベクター産生中の懸濁無血清HEK293T細胞でのVcEndA改変体発現プラスミド(総pDNAの5%)を示す。図12Bは、アガロース電気泳動法による、ベクター上清の残留DNAの度合いを示す。図12Cは、抗ヒスチジンタグ抗体を使用して分泌ヌクレアーゼタンパク質を検出するためのSDS-PAGEおよび免疫ブロットによる濃縮ベクター上清または産生後細胞溶解物を示す。
図13図13は、発現カセットからの分泌VsEndAを使用した、0.5L規模のレンチウイルスベクター産生バイオリアクターでの残留(プラスミド)DNAの分解を示す図である。
図14図14Aは、発現カセットに由来するVsEndA、およびその後の下流加工処理による総KanR/TUを使用した、5L規模のレンチウイルスベクター産生バイオリアクターでの残留DNAの分解を示す図である。図14Bは、ゲル電気泳動法(DNAは臭化エチジウムで染色)により分析したプロセスステップの一部(Aにおける)の濃縮試料の分析を示す。
図15図15A~15Bは、共トランスフェクション中にtetR調節VsEndA発現カセットを使用したレンチウイルスベクター産生細胞培養物における残留DNAの分解を示す図である。図15Aは、ベクター産生力価が高いままであることを示す。図15Bは、アガロース電気泳動法による、ベクター上清の残留DNAの度合いを示す。
図16図16A~16Bは、tetR調節VsEndAまたはSmNucAを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と共に共培養されたレンチウイルスベクター産生細胞培養物における残留DNAの分解を示す図である。図16Aは、ベクター産生力価が高いままであることを示す。図16Bは、アガロース電気泳動法による、ベクター上清の残留DNAの度合いを示す。
図17図17A~17Bは、VcEndAのNxS/T N-グリカンシークオン変異体を要約する図である。図17Aには、VsEndAおよびVcEndAのタンパク質アラインメントが示されており、真核細胞で発現されるとN-グリコシル化される可能性のある部位であるVcEndA内のNxS/Tシークオンが強調されている。VcEndAの最初のN-グリカンシークオンのみ(102位のNCT)はVsEndAと共有されており、したがって、VcEndAのシークオン2、3、および4に関してVsEndA内の同等の位置にあるアミノ酸配列は、これらのシークオンの変異に関する有用な指針を提供する。したがって、119NLT>NLVおよび/または130NRS>DRSおよび/または133NFS>NFRを含む修飾の組合せを含有するVcEndAの改変体が生成され(図17Bに示されている;[構築物9、19~25])、配列番号1、5~11がもたらされた。
図18図18A~18Bは、無血清懸濁形式LV産生培養物における産生後細胞溶解物および培養培地中のSmNucAH6およびVsEndAH6と比べた、VcEndAH6改変体の発現を示す図である。図18Aは、チューブリン(ローディング対照)および抗His6(ヌクレアーゼ)に対してプローブされたLV産生後細胞溶解物の免疫ブロットを示す。図18Bは、VSVG(分泌対照)および抗His6(ヌクレアーゼ)に対してプローブされた濃縮粗ベクター回収物の免疫ブロットを示す。ヌクレアーゼの分子量は、N-グリカン状態によりモジュレートされ(典型的には、単一グリカンにより、約2.5kDaが追加される)、ヌクレアーゼの未修飾サイズは、VcEndAH6-27.6kDa;VsEndAH6-27.9kDa;SmNucAH6-29.7kDaである。トランスフェクション時に、総プラスミドDNAの0.5%または5%の分泌ヌクレアーゼプラスミドをスパイクした。VcEndAH6改変体は、図17および配列番号1、5~11に記載されている。
図19図19A~19Bは、図17および18に記載の分泌ヌクレアーゼの存在下で産生されたLV-CMV-GFPベクター力価ならびに粗ベクター回収物中の残留DNAに対してその結果生じた影響を示す図である。LV回収物では、産生細胞を遠心分離により除去し、HEK293T細胞の形質導入による滴定前に上清を濾過し(0.22μm)、続いてフローサイトメトリーを行い、LV力価を適切に算出した(図19A)。さらに、上清を、3KカットオフのAmicon-15デバイスを使用して遠心分離することにより濃縮し、この物質の50%を、残留DNA電気泳動のために2%アガロースゲルにロードした(図19B;臭化エチジウムで染色したゲル)。データは、LV力価に対する分泌ヌクレアーゼの影響が最小限であること、ならびにVcEndA N-グリカンシークオンの操作が、ヌクレアーゼ分泌の向上および残留DNA除去の増強をもたらすことを示す。
図20図20A~20Bは、酸性またはアルカリ性培養条件下での無血清懸濁培養物におけるLVの産生のVcEndAH6-1glc、VsEndAH6、およびSmNucAH6の評価中に確認されたpH設定点(図20A)および細胞生存率(図20B)を示す図である。
図21図21A~21Bは、酸性またはアルカリ性培養条件下での無血清懸濁形式LV産生培養物における産生後細胞溶解物および培養培地中のVcEndAH6-1glc、SmNucAH6、およびVsEndAH6の発現を示す図である。図21Aは、チューブリン(ローディング対照)および抗His6(ヌクレアーゼ)に対してプローブされたLV産生後細胞溶解物の免疫ブロットを示す。図21Bは、VSVG(分泌対照)および抗His6(ヌクレアーゼ)に対してプローブされた濃縮粗ベクター回収物の免疫ブロットを示す。ヌクレアーゼの分子量は、N-グリカン状態によりモジュレートされ(典型的には、単一グリカンにより、約2.5kDaが追加される)、ヌクレアーゼの未修飾サイズは、VcEndAH6-27.6kDa;VsEndAH6-27.9kDa;SmNucAH6-29.7kDaである。トランスフェクション時に、総プラスミドDNAの5%の分泌ヌクレアーゼプラスミドをスパイクした。
図22図22A~22Bは、分泌ヌクレアーゼVcEndAH6-1glc、SmNucAH6、およびVsEndAH6の存在下でもたらされたLV-CMV-GFPベクター力価ならびに粗ベクター回収物中の残留DNAに対してその結果生じた影響を示す図である。LV回収物では、産生細胞を遠心分離により除去し、HEK293T細胞の形質導入による滴定前に上清を濾過し(0.22μm)、続いてフローサイトメトリーを行い、LV力価を適切に算出した(図22A)。さらに、上清を、3KカットオフのAmicon-15デバイスを使用して遠心分離することにより濃縮し、この物質の50%を、残留DNA電気泳動のために2%アガロースゲルにロードした(図22B;臭化エチジウムで染色したゲル)。データは、VcEndAH6-1glc改変体が、高力価LV産生を維持しつつ、VsEndAH6と比較して酸性下で残留DNAの除去向上を呈することを示す。
図23図23A~23Bは、酸性またはアルカリ性培養条件下での無血清懸濁培養物におけるLVの産生のVcEndAH6-124glc、VcEndAH6-1glc、およびVsEndAH6の評価中に確認されたpH設定点(図23A)および細胞生存率(図23B)を示す図である。興味深いことには、これらのデータは、LV産生の後期段階での細胞生存率に対する、VcEndAH6に基づくヌクレアーゼ発現の潜在的利益を示す(図20でも観察された)。
図24図24A~24Bは、分泌ヌクレアーゼVcEndAH6-124glc、VcEndAH6-1glc、およびVsEndAH6の存在下でもたらされたLV-CMV-GFPベクター力価ならびに粗ベクター回収物中の残留DNAに対してその結果生じた影響を示す図である。LV回収物では、産生細胞を遠心分離により除去し、HEK293T細胞の形質導入による滴定前に上清を濾過し(0.22μm)、続いてフローサイトメトリーを行い、LV力価を適切に算出した(図24A)。さらに、上清を、3KカットオフのAmicon-15デバイスを使用して遠心分離することにより濃縮し、この物質の50%を、残留DNA電気泳動のために2%アガロースゲルにロードした(図24B;臭化エチジウムで染色したゲル)。データは、VcEndAH6-124glcおよびVcEndAH6-1glc改変体が、高力価LV産生を維持しつつ、VsEndAH6と比較して酸性下で残留DNAの除去向上を呈することを示す。
図25図25は、AAVおよびAdVなどの細胞付随型ウイルスベクターの産生に使用するための細胞内により多くのヌクレアーゼを保持するために、ヌクレアーゼを如何に修飾し得るかを示す模式図を表す図である。本発明の一部の実施形態の場合、ヌクレアーゼの一部、好ましくは全てが、ER内腔への放出を可能にするシグナルペプチターゼ(SPase)により切断される、タンパク質のN末端にコードされた機能的ERシグナルペプチド(SP)を使用することにより分泌経路へと標的化されるべきである。しかしながら、必要に応じて、配列「KDEL」(NからCへと読み取って)などのER保持シグナルをヌクレアーゼのC末端に追加することにより、修飾ヌクレアーゼは、ベクター産生細胞内でのより多くのヌクレアーゼの保持を可能にする「ER保持欠損[ERD]相補群」タンパク質受容体の1つに結合することになる。AAVおよびAdVなどの細胞付随型ウイルスベクターを産生する場合、これにより、産生細胞DNAを分解するためにヌクレアーゼが細胞と共に維持され、細胞溶解の時点で存在することを可能にしつつ、産生細胞を細胞溶解前に培養培地から単離する(つまり、濾過、沈殿、または遠心分離する)ことが可能になる。
図26図26A~26Bは、懸濁無血清HEK293T細胞におけるscAAV2-GFPベクターの産生中に分泌およびER保持ヌクレアーゼを使用したデータを示す図である。ゲノム、Repcap2、およびヘルパープラスミド、ならびに5%の(総投入pDNAの)示されているヌクレアーゼプラスミドまたは無ヌクレアーゼ(pBlueScript;AAV-NEG)のいずれかを細胞にトランスフェクトすることにより、複製scAAV2ベクター産生培養物をセットアップした。ヌクレアーゼvcEndAH6[wt]およびvcEndAH6-1glcに、必要に応じてC末端ER保持シグナル(KDEL;図25を参照)を操作し、smNucAH6と比較した。トランスフェクションの2日後、細胞を遠心分離により回収し、溶解に供した。溶解物に塩化マグネシウムを添加し、1時間インキュベートし、陽性対照の場合、SANをAAV-NEG溶解物に添加し、並行してインキュベートした。残屑を遠心分離によりペレットにし、上清を濾過し、HEK293T細胞でベクター力価を直接分析したか[図26A]またはアガロースゲルにロードして残留DNA分解を評価した[図26B]。理論により束縛されることは望まないが、「AAV-NEG」試料レーン内の残留DNAのレベルは、放出されたDNAの多くが、粘性のため実施が困難だった試料濾過中に失われたため、未処理細胞溶解物内に実際に存在するものよりも低い場合がある。したがって、vcEndAH6[wt]改変体は、他のヌクレアーゼ改変体と比較して、残留DNAに対する影響がより低いと考えられるが、実際は、かなりの活性を有する可能性が高い。
図27図27は、図26Bに表されている残留DNAアガロースゲル画像のデンシトメトリー分析を示す図である。ImageLabを使用して、各試料レーンが2~3個のチャネルにより重ね合わせられるように、ゲル画像を複数のチャネルに分割した。表記の試料レーンの代表的なチャネルが表されており、空レーン(バックグラウンド)と比較した相対的バンド強度(任意単位)が示されている。得られたバンド「プロファイル」は、ゲルウェル内および試料レーン内の残留DNAを示す。図26Bのゲル画像から視認することができるように、短いDNAse耐性形態を視認することができ、相関したピークをレーンプロファイル内に観察することができる。vcEndAH6-1glc-KDEL改変体は、他の改変体およびSANよりも大きな残留DNAの除去を達成することができる。
図28図28A~28Bは、ヌクレアーゼヘルパー細胞培養物内で最大に近いレベルのヌクレアーゼ発現を達成する条件を特定するためのトランスフェクション最適化実験の結果を示す図である。無血清懸濁HEK293T細胞のトランスフェクションは、リポフェクタミン2000CD(各条件においてプラスミドDNAの1質量当たり同じ比率の)、および最終トランスフェクト細胞培養物の1mL当たり100、300、500、700、または900ngのヌクレアーゼコードプラスミドを混合することにより媒介された。強力なCMVまたはより弱いSV40プロモーターにより駆動されるVcEndAH6-1glcまたはSmNucAH6発現プラスミドを使用した。また、比較として、複製培養物に、pBluescriptが95%投入量であり総プラスミド投入量の5%がヌクレアーゼプラスミドであるものの各々を共トランスフェクトして、ウイルスベクター産生のために細胞を共トランスフェクションする(つまり、ヌクレアーゼおよびベクターが同じ細胞で作られる)場合のトランスフェクションミックスのタイプを模倣し、これは実質的に1mL当たり62ngのヌクレアーゼプラスミドだった。ウイルスベクター産生培養物内の条件を模倣するために、トランスフェクションの約20時間後、酪酸ナトリウム(10mM最終濃度)より複製トランスフェクションを誘導した。トランスフェクションの2日後、ヘルパー細胞培養上清を濾過し(0.2μm)、3Kカットオフスピンカラムにより濃縮し、ヌクレアーゼ(抗HisTag)およびGAPDH(細胞溶解物のみ)の免疫ブロット前に細胞溶解物を生成した。[A]全ての条件についてプロットされた正規化免疫ブロットバンド強度。[B]ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼタンパク質の免疫ブロット。
図29図29A~29Cは、主ベクター産生培養物と並行して一過性トランスフェクションにより生成されたヌクレアーゼヘルパー細胞を使用した40mL振盪フラスコ規模での無血清懸濁HEK293T培養物におけるレンチウイルスベクター(LV-CMV-GFP)産生の結果を示す図である。以前の実施例で使用された条件下でのベクター成分のHEK293T細胞へのトランスフェクションと並行して、750ng(最終培養物1mL当たり)のpSV40-VcEndAH6-1glcまたはpSV40-SmNucAH6をHEK293T細胞にトランスフェクションすることにより、ヌクレアーゼヘルパー細胞を生成した。トランスフェクションのおよそ20時間後、培養物を計数し、主ベクター産生容器内の総細胞に対する所望の目標パーセンテージ割合を達成するように、ヘルパー細胞を主ベクター産生容器に添加した。この実施例では、ヘルパー細胞割合は、総細胞の1%~10%の範囲だった。同時に、酪酸ナトリウムを10mMの最終濃度になるように添加した。トランスフェクションの2日後、ベクター上清を回収し、清澄化し(0.2μm)、さらなる分析に供した。[A]ベクター上清を、付着HEK293T細胞の形質導入により滴定し、続いて形質導入の2日後にFACSを行った。[B]ヘルパー細胞およびベクター上清を、3Kカットオフスピンカラムにより濃縮し、ヌクレアーゼ発現(抗HisTag)、またはアガロースゲルでの残留DNA分析(臭化エチジウム;ベクター上清のみ)を分析した[C]。
図30図30A~30Bは、ヌクレアーゼヘルパー細胞を使用して残留DNAを除去した場合の、無血清懸濁HEK293T細胞でのレンチウイルスベクター(LV-CMV-GFP)産生の分析を示す図である。主ベクター産生培養物と並行して、無血清懸濁HEK293T細胞に、培養培地1mL当たり750ngのpCMV-VcEndAH6-1glcをトランスフェクトした。酪酸ナトリウム誘導の時点で、ヌクレアーゼヘルパー細胞を、示されている割合(総細胞のパーセンテージ)で主ベクター産生容器に播種した。標準的ベクター産生を、トランスフェクションの2日後まで継続させ、その際にベクター上清を採取して、付着HEK293T細胞に対して滴定し、続いてFACSを行い[A]、また、3Kカットオフスピンカラムにより濃縮して、アガロースゲルで分析した(臭化エチジウム)[B]。
図31図31A~31Bは、ヌクレアーゼヘルパー細胞をスパイクした場合の、レンチウイルスベクター産生培養培地内での達成可能なヌクレアーゼ分泌レベルとヌクレアーゼ比活性との間の相関を示す図である。ベクター調製物産生は、図30と同じである。Benzonase(登録商標)を標準曲線として使用して、DNAse Alertアッセイにより培養上清をヌクレアーゼ活性について分析した[A]。実験の濃縮培養上清を、ヌクレアーゼ(抗HisTag)に対して免疫ブロットすることにより分析した[B]。
図32図32A~32Bは、共トランスフェクションにVcEndAH6-1glcを使用した、5Lバイオリアクター規模の無血清懸濁HEK293T培養物でのレンチウイルスベクター(LV-CMV-GFP)産生の結果を表す図である。pSV40-VcEndAH6-1glcを、総投入量の5%のLV成分プラスミドと混合し、「標準」対照バイオリアクターに、総投入量の5%のpBlueScriptをトランスフェクトした。実施例21に説明されているようにベクター産生を進行させ、トランスフェクション後pHを6.7に維持した[A]。およそ2.5Lの清澄化回収物質を下流プロセスから採取し、各々の表記されている段階でサンプリングした:In-bio(MgCl+/-Benzonase(登録商標)で1時間インキュベーションする前)、CLH(清澄化回収物;MgCl+/-Benzonase(登録商標)による処理後)、IEX溶出物(IEXカラムからの溶出物質[0.6M NaClに希釈]、HFF前(Benzonase(登録商標)添加前に中空繊維カートリッジを使用するダイアフィルトレーション/限外濾過による緩衝液交換IEX溶出物)、HFF後(Benzonase(登録商標)処理後、緩衝液交換)。試料を、3Kカットオフスピンカラムにより濃縮してから、臭化エチジウムを含む2%アガーゲルにロードした[B]。
図33図33は、pSV40-VcEndAH6-1glc、pSV40-VcEndAH6-1glc-KDELをトランスフェクトした無血清懸濁HEK293T細胞または未トランスフェクト細胞の細胞溶解物をロードした染色済みSDS-PAGEゲルを示す図である。細胞抽出物内のVcEndAH6-1glc-KDELは、VcEndAH6-1glcと比較して濃縮されていた。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本明細書で開示される本発明の実施には、別様の指定がない限り、化学、分子生物学、微生物学、および免疫学の従来技法が用いられることになり、それらは当業者の能力内にある。そのような技法は、文献で説明されている。例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Books 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,
F. M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13, and 16, John Wiley & Sons, New York, NY;B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons;J. M. Polak and James O'D. McGee (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice;Oxford University Press; M. J. Gait (ed.) (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press;およびD. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg (1992) Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Pressを参照されたい。これらの基本的教科書の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は全て、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。別様の指示がない限り、「rev」および「gag-pol」は、レンチウイルスのベクターのタンパク質および/または遺伝子を指す。
【0111】
ヌクレアーゼ分泌ウイルスベクター産生系
本明細書で開示される本発明は、ウイルスベクターの産生ならびに少なくとも1つのヌクレアーゼの発現および分泌に必要な成分をコードする1セットの核酸配列を含み、それによりウイルスベクター産生中に不要な/夾雑性の、つまり残留する核酸を分解するヌクレアーゼ分泌ウイルスベクター産生系である。
【0112】
したがって、本明細書で開示される本発明は、ウイルスベクターまたはウイルスに基づくワクチンの産生中にウイルスベクター産生細胞によりヌクレアーゼを発現および分泌する改良されたベクター産生系を提供する。その結果、そうでなければ粗回収物質に付随する不要な(夾雑性)残留核酸(例えば、pDNA)は、時として産生されたウイルスベクターの品質および量をある程度まで損なう場合がある負担となる上流および/または下流の市販ヌクレアーゼ酵素処理ステップに典型的に必要とされるものよりも合理化された様式で産生プロセス中に分解される。以下の文献に記載の周知の上流および下流加工処理ステップを参照されたい:Merten, O-W., Schweizer, M., Chahal, P., & Kamen, A.A. Manufacturing of viral vectors for gene therapy: part I. Upstream processing. Pharmaceutical Bioprocessing 2, 183-203 (2014);Merten, O-W., Schweizer, M., Chahal, P., & Kamen, A.A. Manufacturing of viral vectors: part II. Downstream processing and safety aspects Pharmaceutical Bioprocessing 2, 237-251 (2014);Gousseinov, E., Kools, W., and Pattnaik, P. Nucleic Acid Impurity Reduction in Viral Vaccine Manufacturing. BioProcess International 12, 59-68 (2014)。同じ理由で、本明細書で開示される本発明は、向上されたエキソソームおよびゲシクル(gesicle)産生系の提供にも有用であ
る。
【0113】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼをコードする核酸配列は、ヌクレオチド発現カセットまたはプラスミドの形態であってもよい。そのような発現カセットは、ウイルスベクター成分発現カセットと共に共トランスフェクトされるか、および/またはウイルスベクター産生細胞DNA(または細胞ゲノム)内に安定的に組み込まれるかのいずれかである。
【0114】
一実施形態では、本明細書で開示される本発明の核酸配列は、1つまたは複数のヌクレアーゼをコードする発現構築物である。別の実施形態では、ヌクレアーゼは、2つのヌクレアーゼ(またはヌクレアーゼドメイン)がウイルスベクター産生中に分泌されるように融合タンパク質として発現させることができる。さらなる実施形態では、ヌクレアーゼ融合タンパク質は、エンドヌクレアーゼドメインおよびエキソヌクレアーゼドメインを含み、それにより、ウイルスベクター産生中に、分泌エンドヌクレアーゼは、環状プラスミドDNAを分解し、分泌エキソヌクレアーゼは、そうでなければエンドヌクレアーゼが接近不能であり得るヒストンタンパク質に巻き付いているDNAをより効率的に分解するために、線形DNAを標的とし、5’末端および/または3’末端から分解する。
【0115】
ヌクレアーゼ発現カセットは、ヌクレアーゼの発現を駆動するプロモーター配列および/または調節エレメントを含む。そのようなプロモーターは、ヌクレアーゼの構成的、誘導性、および/または条件付き発現を駆動することができる。加えて、ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼを細胞培養物へと分泌するための天然および/または非天然N末端分泌シグナルを含む。
【0116】
本明細書で開示される本発明の代替的な実施形態では、ヌクレアーゼ発現カセットを、ウイルスベクター産生細胞と共に(または共培養物にて)使用されるヌクレアーゼヘルパー細胞内に一過性にトランスフェクトするかまたは安定的に組み込むために使用する。次いで、そのようなヌクレアーゼヘルパー細胞を、ウイルスベクター製造中にウイルスベクター産生細胞でスパイクし、ウイルスベクター産生が終了するまで共培養する。
【0117】
本明細書で開示される本発明の培養細胞を使用して、上流のウイルスベクター産生プロセス中にヌクレアーゼを分泌するという手法には、以下の利点がある:1)ウイルスベクタービリオンが産生されるとすぐに、培養培地内の不要なまたは夾雑性の(残留)核酸の即時分解がもたらされること、2)さらなる負担となる操作を必要とせずに、ウイルス産生全体にわたってヌクレアーゼが永続的に分泌されること、3)市販ヌクレアーゼ(例えば、Benzonase(登録商標))によりウイルスベクター粗回収物質を処理するステップが排除されること、4)精製ベクター製品内の残留DNAがかなり低減されること、および5)下流のウイルスベクター精製/加工処理中に組換えヌクレアーゼを添加することに関連するコストが削減されること。
【0118】
本明細書で開示される本発明は、付着および/または懸濁無血清細胞培養物において分泌ヌクレアーゼを発現するウイルスベクター産生系(一過性および安定的ベクター産生態様の両方)を提供する。ウイルスベクター産生中のウイルスベクタービリオンのアセンブリに関与する複雑な生物学を考慮すれば、驚くべきことであるが、本発明者らは、本明細書にて、ウイルスベクター産生中に細胞培養物においてヌクレアーゼを発現および分泌させることにより、依然として高産生力価を維持しつつ、上流および下流のウイルスベクター製造における数々の問題が克服されることを示す。また、本発明者らは、本明細書にて、研究室規模または小規模のウイルスベクター産生からバイオリアクターでのウイルスベクター産生までの拡張可能性を実証する。
【0119】
本明細書で開示される本発明は、分泌ヌクレアーゼが、Benzonase(登録商標)およびSAN(塩活性ヌクレアーゼ)などの市販ヌクレアーゼよりも向上された性能で、粗ベクター回収物内の残留DNAを分解する証拠を提供する。本明細書で開示される本発明は、幅広く多岐にわたるヌクレアーゼ(例えば、グラム陰性および陽性細菌に由来する)が、ウイルスベクター産生中に残留DNAを分解することを示す。ヌクレアーゼに追加されたC末端ヒスチジンタグは、本明細書にて、ヌクレアーゼ分泌の機能性に影響を及ぼさないことが示されたため、抗ヒスチジンタグに基づくELISAを使用して、最終ウイルスベクター製剤中の残留ヌクレアーゼを測定した。
【0120】
重要なことには、本明細書で開示される本発明は、ヌクレアーゼ分泌のタイミングが、共トランスフェクトされたウイルスベクター成分発現カセットからの遺伝子発現と時間的に関連付けられるという証拠を提供する。このように、ヌクレアーゼ発現は、残留プラスミドDNA分解が所望である最も初期の時点で開始される。さらに、別の実施形態では、ヌクレアーゼの誘導性発現は、本明細書で開示されるウイルスベクター産生系でのヌクレアーゼ発現の時間的制御を可能にする。
【0121】
本発明の一態様では、テトラサイクリンに基づく手法などに基づき、ウイルスベクター産生細胞株に、ウイルスベクター発現カセットおよび誘導性ヌクレアーゼ発現カセットがトランスフェクトされ、それにより、ウイルスベクター産生中に誘導因子を添加すると細胞培養培地へのヌクレアーゼの安定的分泌が可能になる。
【0122】
本発明の別の態様では、ヌクレアーゼカセットは、安定的にウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞に導入される。このように、ヌクレアーゼの安定的分泌は、選択した調節エレメントに応じて、細胞培養培地への構成的な分泌であってもよく、または誘導性の分泌であってもよい。ベクター成分の一部も調節される態様では、ヌクレアーゼカセットは、ウイルスベクター成分の同じまたは別々の調節エレメントの制御下にあってもよく、後者の場合、ヌクレアーゼおよびベクター成分が時間的に別々に制御される。
【0123】
本発明の別の態様では、ヌクレアーゼカセットは、ベクター産生中に残留核酸を分解するために、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクター産生系でヌクレアーゼを発現および分泌する。
【0124】
ヌクレアーゼ発現を遅延設定で調節することに関する代替態様では、ヌクレアーゼ発現を調節する転写調節制御エレメントを使用することの代わりにまたは加えて、HIV-1
revまたは類似のレトロウイルスRNA搬出タンパク質が、ヌクレアーゼ分泌のモジュレーションに使用される。このように、ヌクレアーゼコードmRNAは、HIV-1 rev応答エレメント(RRE、HIV-1 revに結合する)または類似のレトロウイルスRNA搬出タンパク質応答エレメントを含む。ヌクレアーゼORFおよびRREは、発現カセット内の同じイントロン内に配置され、したがって、HIV-1 rev(または類似のレトロウイルスRNA搬出タンパク質)の非存在下では、細胞質内のヌクレアーゼコードmRNAの量は、revの存在下でのヌクレアーゼの量と比較して低減される。HIV-1 revまたは類似のレトロウイルスRNA搬出タンパク質は、ヌクレアーゼの発現を増加させるために、ベクター産生中の所望の時点で共発現される。
【0125】
本明細書では、ウイルスベクター産生上流プロセス中にヌクレアーゼヘルパー細胞を導入して、ウイルスベクター産生細胞と共に共培養することができる証拠が開示される。この点で、ヌクレアーゼは並行して供給される。
【0126】
本発明の別の態様では、ヌクレアーゼヘルパー細胞またはヘルパー細胞を、ウイルスベクター産生培養物と並行して培養してもよく、次いで分泌ヌクレアーゼを含む培地をウイルスベクター産生細胞培養物に給送する。
【0127】
別の態様では、ヌクレアーゼヘルパー細胞またはヘルパー細胞を、エキソソーム産生培養物と並行して培養してもよく、次いで分泌ヌクレアーゼを含む培地をエキソソーム産生細胞培養物に給送する。
【0128】
別の態様では、ヌクレアーゼヘルパー細胞またはヘルパー細胞を、ゲシクル産生培養物と並行して培養してもよく、次いで分泌ヌクレアーゼを含む培地をエキソソームゲシクル細胞培養物に給送する。
【0129】
本明細書で開示される本発明の別の態様では、ヌクレアーゼカセットは、ベクター産生中に残留核酸を分解するために、AAVまたはアデノウイルスベクター産生系でヌクレアーゼを発現および分泌する。
【0130】
典型的には、AAVに基づくベクターは、哺乳動物細胞株で(例えば、HEK293に基づく)、またはバキュロウイルス/Sf9昆虫細胞系を使用することにより産生される。AAVベクターは、典型的にはアデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来するヘルパー機能と共にDNAをコードするベクター成分の一過性トランスフェクションにより、または安定的にAAVベクター成分を発現する細胞株の使用により、産生することができる。アデノウイルスベクターは、典型的には、アデノウイルスE1機能を安定的に発現する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293に基づく)で産生される。また、アデノウイルスベクターは、典型的には、産生細胞株を使用した逐次的ラウンドの「感染」によりヘルパー機能依存性複製により「増幅」される。本明細書で開示される本発明の場合、AAVベクターおよびアデノウイルスベクター産生の共通特徴は、細胞に付随するベクタービリオンをより効率的に放出するための細胞溶解のステップである。凍結解凍などの一部の方法は、回収培地内での細胞溶解を可能にするが、大規模の場合、凍結解凍または機械的もしくは化学的処理による細胞溶解前に産生細胞を濃縮する(例えば、遠心分離または濾過により)ことが望ましい場合がある。細胞溶解ステップでは、粗ベクターは、典型的には、産生細胞DNAでかなり夾雑されることになり、通常は、商業的供給源の組換えヌクレアーゼタンパク質(Benzonase(登録商標)またはSAN-HQなど)が、DNAの量を最小限にするために細胞溶解の直前および/または後のいずれかで使用され、これにより、粘性が低減され、その後の下流加工処理が容易になる。
【0131】
したがって、本明細書で開示される本発明は、限定ではないが、AAVおよびアデノウイルスベクター産生系および製造プロセスにおいて、市販ヌクレアーゼの代わりに分泌ヌクレアーゼを使用することを含む。そのような系およびプロセスの状況では、ヌクレアーゼは、成熟ヌクレアーゼとしてER-ゴルジネットワークへと継続的に発現および分泌されるため、分泌ヌクレアーゼは、培地内(細胞溶解が培養培地内に生じている場合)および/またはベクター産生細胞内のいずれかに、タンパク質の「定常状態」プールとして存在する。産生細胞内に存在するヌクレアーゼは、細胞が培養培地から取り除かれて濃縮されても存在するが、細胞溶解の際に放出され、したがって夾雑性(または残留)DNAに接近する。あるいは、分泌ヌクレアーゼならびに「遊離」ベクタービリオンを含む清澄化培養上清を、さらなる下流加工処理前にバルク細胞溶解物に「再添加」して、DNA分解を引き起こし得る。本発明の一態様では、細胞溶解が必要である、そのようなAAVまたはアデノウイルスに基づくベクター産生(または実際は、ベクタービリオンが主に細胞に付随したままである任意のウイルスベクタープラットフォーム)でのヌクレアーゼ分泌には、誘導性安定ヌクレアーゼ発現カセットを含む真核細胞株を使用することができる。別の態様では、ヌクレアーゼ分泌は、トランスフェクトされた細胞(例えば、RapAd(登録商標)系)内で組換えを実施する場合、AAVベクター産生またはアデノウイルスベクターマスターシードストック産生のためのヌクレアーゼプラスミド(他のベクター成分を有する)の一過性トランスフェクションにより達成することができる。
【0132】
ヌクレアーゼ
ヌクレアーゼ構造および機能は当技術分野においで周知である(Yang, Q. Rev. Biophys. 2011 Feb; 44(1)L1-93)。ヌクレアーゼは、核酸-DNAおよびRNAを加水
分解する遍在性の種類の酵素である。これらの酵素は、ポリヌクレオチドの骨格内のホスホジエステル結合の加水分解を媒介して、切断をもたらす。多くのヌクレアーゼは、それらの最大活性のために金属イオンを必要とする。ヌクレアーゼは、それらの攻撃様式に従って2つの幅広い群:[1]エンドヌクレアーゼおよび[2]エキソヌクレアーゼに分類することができる。
【0133】
エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖(内部/「エンド」)内のホスホジエステル結合を攻撃し、一部のエンドヌクレアーゼは非特異性であり、これは、あらゆるヌクレオチド間で切断が起こることを意味し、一方で他のエンドヌクレアーゼは、特定のジヌクレオチドに部位優先性を示すことができる。
【0134】
エキソヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖の5’末端または3’末端のいずれかに存在する核酸の末端から消化する。一部のヌクレアーゼ、例えばヌクレアーゼBal-31は、エンドヌクレアーゼ特性およびエキソヌクレアーゼ特性を両方とも示すことができ、標的の性質に応じて(つまり、標的がdsDNAであるかまたはssDNAであるか)、ポリヌクレオチドの末端および内部の両方からDNAを消化することができる。
【0135】
標的ポリヌクレオチドが遊離5’末端または3’末端を有するという要件を欠如する場合でも、エンドヌクレアーゼは、DNA(プラスミドDNAなど)の環状形態を消化することができる。そのため、本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、「糖非特異性」ヌクレアーゼに由来するヌクレアーゼであり、それは、これらの酵素が、ssDNA、dsDNA、ssRNA、および/またはdsRNAを、配列非依存的な様式で非特異的に分解することができるからである。この群としては、細菌ヌクレアーゼ(NucA)を含む「Serratia」科のヌクレアーゼおよび酵母ではNuc1pとしても公知の真核生物ミトコンドリアエンドヌクレアーゼG(Endo G)が挙げられる。Serriatiaヌクレアーゼは、構造的に非常に類似しており、触媒性ββαモチーフが構造サブドメインを形成し、6鎖逆平行βシートの一方の面に対してパッキングされている。「糖非特異性」ヌクレアーゼとしては、細菌周辺質エンドヌクレアーゼIファミリーのヌクレアーゼ、例えばVsEndAも挙げられる。
【0136】
真核細胞または原核細胞から分泌されるヌクレアーゼは、古典的分泌経路の全ての分泌タンパク質の特徴が同様であることにより特徴付けられる類似の分泌経路を共有する。リボソームから出現する成熟前ヌクレアーゼタンパク質のN末端に位置する比較的短いペプチド(典型的には30残基未満)は、細胞機構により認識され、細胞質/サイトゾルから、それぞれ真核細胞または原核細胞の小胞体(ER)の膜または原形質膜へと物理的に再配置され、翻訳は、膜を通過して別々の細胞区画内へと継続する。タンパク質翻訳後、分泌性ペプチドは切断され、タンパク質のフォールディングが完了し、成熟ヌクレアーゼは、ER(真核細胞)または周辺質(原核細胞)内に含まれる。次いで、ヌクレアーゼは、典型的には細胞外空間へと放出されることになる。
【0137】
本明細書で開示される本発明は、限定ではないが、ウイルスベクター産生の際に分泌され得る野生型および修飾または変異(つまり改変体)ヌクレアーゼの使用を含む。そのようなヌクレアーゼは、必要に応じて、細菌性または天然の分泌ペプチドを置き換えるための真核生物分泌シグナルを含んでいてもよい。例示的な分泌性シグナルペプチドとしては、限定ではないが、以下の表に列挙されているものが挙げられる。
【表1】
【0138】
本明細書で開示される本発明で使用するためのヌクレアーゼは、機能破壊性N-グリカンシークオンまたは新規N-グリカンシークオン部位の創出に関する修飾および/もしくは変異を含んでいてもよい。真核細胞から古典的分泌経路を介して効率的に分泌され得るヌクレアーゼ活性を有するタンパク質の分泌は、オープンリーディングフレーム(ORF)の開始部分にコードされた機能的分泌シグナルペプチドの存在を必要とし、分泌タンパク質は、多くの場合、分泌がより効率的になされるように少なくとも1つのアスパラギン連結(N連結)グリカンを含むことになる。グリコシル化は、真核細胞に見出される分泌経路を介した搬出中にNxSまたはNxTシークオン(xは、プロリン以外の任意のアミノ酸であってもよい)のアスパラギン残基で生じ、細菌性分泌ヌクレアーゼは、この様式ではグリコシル化されていない。しかしながら、NxS/Tモチーフは、多くの場合、細菌性ヌクレアーゼでも生じるので、細菌性ヌクレアーゼが、本明細書で開示される本発明と同様に真核細胞から発現される場合、原理的にこれらの部位を利用することができる。N-グリカン部位予測因子プログラム(NetNGlycなど)は、どのNxS/T部位を使用することができる可能性が最も高いかを特定するために有用であり得る。加えて、DNAse活性部位に対するN-グリカンの近接性およびDNA活性に対する任意の影響に関する決定をなすことができる。実際、本発明者らは、ヌクレアーゼを変異させて、本明細書で開示されるウイルスベクター産生系および/または産生細胞毎の状況での分泌を向上させるように、NxS/Tシークオンをモジュレートまたは修飾することができることを示す。
【0139】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、ヌクレアーゼをERおよび/またはゴルジ体区画に局在化させることにより細胞保持または細胞付随を向上させるER保持シグナルなどの保持シグナルを有するヌクレアーゼのC末端付加の修飾を含んでいてもよい。このように、ヌクレアーゼは、ER保持欠損相補群のER受容体に結合する。そのような修飾は、ベクター産生中に、特にAAVベクター産生中に、細胞溶解物からの残留DNA除去を向上させる。保持シグナルとしては、限定ではないが、コンセンサス[KRHQSA]-[DENQ]-E-LまたはKKXXの保持シグナル、および/またはコンセンサスKDELの保持シグナルが挙げられる。KDELモチーフを有するC末端保持シグナルは、当技術分野で公知である(例えば、Raykhel et al. , J. Cell. Biol., 2007
Dec 7, 179(6): 1193-1204)。
【0140】
細胞保持/付随を達成するための本発明のヌクレアーゼの代替的修飾としては、限定ではないが、ヌクレアーゼのC末端にGPIアンカーまたは膜貫通ドメインを使用することが挙げられる。そのため、代替的実施形態では、修飾ヌクレアーゼは、そのC末端のGPIアンカーおよび/または膜貫通ドメインを含む。
【0141】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、ウイルスベクター産生系で機能するための最適なpHまたはpH範囲を有するヌクレアーゼである。本発明の分泌ヌクレアーゼは、ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解するための最適なpHまたは最適なpH範囲で機能する。本明細書で開示される本発明の分泌ヌクレアーゼの最適なpHは、限定ではないが、約pH6、約pH6.5、約pH6.6、約pH6.8、約pH7、約pH7.2、約pH7.5である。本発明の分泌ヌクレアーゼの最適なpH範囲は、限定ではないが、約pH6~約pH7、約pH6~約pH6.5、約pH6~約pH7.2、約pH6.5~約pH7.2、約pH6.5~約pH7.5、約pH6.5~約pH7、約pH6.5~約pH6.8、約pH6.6~約pH7.2、約pH6.6~約pH7.5、約pH6.6~約pH7.2、約pH6.6~約pH7、約pH6.6~約pH6.8、約pH6.8~約pH7、約pH6.8~約pH7.2、約pH7~約pH7.2、約pH7~約pH7.5、約pH7.2~約pH7.5である。
【0142】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、細胞外ヌクレアーゼまたはウイルスベクター産生系で細胞外ヌクレアーゼとして機能するように修飾されたヌクレアーゼなど、限定ではないが、分泌され得る加水分解ヌクレアーゼである。
【0143】
産生系からできるだけ多くの夾雑性(または残留)核酸(DNAおよびRNAの両方)を除去する必要がある場合、市販ヌクレアーゼ(タンパク質形態)の広範な使用が製造状況で生じる。産生が細胞内で生じる場合、または細胞が産生中に溶解される場合、核酸を除去する必要性が特に重要であることは周知である。その結果として、大量の夾雑性核酸が放出され、例えば、試料の粘性が増加するため、濾過および/またはクロマトグラフィーなどのさらなる精製プロセスがより難しくなる。
【0144】
そのため、本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、ウイルスベクター産生系の状況で、ヌクレアーゼ機能性および安定性を示すが、夾雑性(または不要な)残留核酸(好ましくはDNAだが、RNAse活性を有していてもよい)を切断する(つまり、分解する)ヌクレアーゼである。
【0145】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、原核生物ヌクレアーゼ、真核生物ヌクレアーゼ、および/またはウイルスベクター産生系で残留核酸を分解することが可能なその機能的改変体もしくは誘導体である。
【0146】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、糖非特異的ヌクレアーゼ、ならびに/またはウイルスベクター産生系でdsDNA、ssDNA、dsRNAおよび/もしくはssRNAを分解することが可能なその機能的改変体、ドメイン、もしくは誘導体である。
【0147】
本明細書における本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、Vibrio cholerae、Vibrio salmonicida、Serratia marcescens、およびBacillus licheniformisからなる群より選択される生物に由来するヌクレアーゼ、その改変体、およびその組合せである。
【0148】
本明細書における本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、任意の公知のヌクレアーゼまたは公知の生物に由来するヌクレアーゼである。(Wang、上記を参照)例えば、限定ではないが、本発明のヌクレアーゼは、Vibrio cholerae、Vibrio
salmonicida、Serratia marcescens、およびBacillus licheniformisに由来するヌクレアーゼである。さらに、限定ではないが、本発明のヌクレアーゼは、以下の範疇の任意の公知のヌクレアーゼである。
補食性細菌ヌクレアーゼ、例えば、Bdellovibrio bacteriovorus Bd1244、Bd1934
植物ヌクレアーゼ、例えば、Hordeum vulgare L小胞子ヌクレアーゼ(大麦)
Snaseファミリーヌクレアーゼ、例えば、Staphylococcus aureus NucA
腸ヌクレアーゼ、例えば、膵臓DNAse I
低pH活性、例えば、Mycobacterium smegmatis Rv0888(低pHヌクレアーゼ)
【0149】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、smNucA(NCBI参照配列:WP_047571650.1)、VsEndA(GenBank:CAQ78235.1)、VcEndA(NCBI参照配列:WP_000972597.1)、BacNucB(NCBI参照配列:WP_003182220.1)、それらの改変体、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0150】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、Vibrio choleraeに由来するエンドヌクレアーゼI(本明細書ではVcEndAと呼ばれる)の修飾改変体である。野生型VcEndAの参照配列[予測真核生物シグナルペプチドは太字、NxS/Tシークオンは下線]は、本明細書では配列番号1として提供されている。
【化1】
【0151】
限定ではないが、参照変異を有するVcEndAの改変体は、以下の通りである。
【化2】
【0152】
VcEndAは、Vibrionaceae科の湾曲桿状グラム陰性細菌の種である。この細菌ヌクレアーゼは、真核生物分泌シグナルペプチドとして機能する細菌分泌シグナルを含む。このヌクレアーゼの最適塩濃度は150~200mMであり、広範囲のpHにわたって活性であり、ウイルスベクター産生細胞培地に分泌させるための理想的な細胞外ヌクレアーゼ候補である。未修飾VcEndAは、ベクター産生細胞から発現されると検出可能な分泌およびDNAse活性を示すが、N119、N130、N133(成熟前天然VcEndAに対する残基番号)から始まるNxS/Tモチーフの削除は、本明細書で開示される本発明においてVcEndA分泌およびDNA除去の向上を可能にする。
【0153】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、典型的には好塩性微生物に由来する「塩活性」ヌクレアーゼである。他のヌクレアーゼとは異なり、塩活性ヌクレアーゼは、超生理学的塩濃度(例えば、>0.15M[NaCl])で活性を維持する。そのため、回収後清澄化ベクター物質および塩活性ヌクレアーゼを超生理学的塩濃度でインキュベートして、回収物質内のタンパク質に結合した核酸の解離を潜在的に支援することができる。これにより、核酸はヌクレアーゼ切断に対してより接近可能になる。
【0154】
本明細書で開示される本発明の塩活性ヌクレアーゼは、限定ではないが、Vibrio salmonicidaに由来する「エンドヌクレアーゼI」である(本明細書では「VsEndA」と呼ばれる)。Altermark B1, Niiranen L, Willassen NP, Smalas AO, Moe E. Comparative studies of endonuclease I from cold-adapted Vibrio salmonicida and mesophilic Vibrio cholerae. FEBS J. 274(1):252-63 (2007)を参照されたい。野生型VsEndAの参照配列(上記の予測真核生物シグナルペプチドは太字、NxS/Tシークオンは下線)は、本明細書では配列番号2として提供されている。
【化3】
【0155】
VsEndAは、Vibrionaceae科の湾曲桿状グラム陰性細菌の種である。この細菌ヌクレアーゼは、真核生物分泌シグナルペプチドとして機能する細菌分泌シグナルを含む。
【0156】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、Enterobacteriaceae科の桿状グラム陰性細菌の種である、Serratia marcescensに由来する「ヌクレアーゼA」(以下、「SmNucA」)である。野生型SmNucAの参照配列(上記の予測真核生物シグナルペプチドは太字、NxS/Tシークオンは下線)は、本明細書では配列番号3として提供されている。
【化4】
【0157】
本明細書で開示される本発明のヌクレアーゼは、限定ではないが、Enterobacteriaceae科の桿状グラム陽性細菌の種である、Bacillus licheniformisに由来する「ヌクレアーゼB」、以下「BacNucB」である。野生型BacNucBの参照配列(上記の予測真核生物シグナルペプチドは太字)は、本明細書では配列番号4として提供されている。
【化5】
【0158】
ベクター
本明細書で開示される本発明は、ウイルスベクターならびにその製造および/または産生に関する。
【0159】
ベクターは、ある環境から別の環境へと実体の移動を可能にするかまたは容易にするツールである。本発明によると、および例として、組換え核酸技法で使用される一部のベクターは、核酸のセグメントなどの実体(例えば、異種cDNAセグメントなどの異種DNAセグメント)が、標的細胞へと移動し、標的細胞により発現されることを可能にする。ベクターは、目的の核酸/ヌクレオチド(NOI)の組込みを容易にして、標的細胞内でNOIおよびその発現を維持することができる。あるいは、ベクターは、一過性の系でNOIを発現させることによりベクターの複製を容易にすることができる。
【0160】
本発明のベクターは、前記NOIを発現させるためのプロモーターおよび必要に応じてNOIの調節因子を有するウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターである。ベクターは、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)および/または追跡可能なマーカー遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子)を含んでいてもよい。ベクターは、例えば、標的細胞を感染および/または形質導入するために使用することができる。
【0161】
ウイルスベクターは、NOIを適合性の標的細胞でin vitro発現するために使用することができる。したがって、本発明は、本発明のベクターを適合性の標的細胞にin vitroで導入し、NOIの発現をもたらす条件下で標的細胞を増殖させることによりin vitroでタンパク質を製作するための方法を提供する。タンパク質およびNOIは、当技術分野で周知の方法により標的細胞から収集することができる。好適な標的細胞としては、哺乳動物細胞株および他の真核細胞株が挙げられる。
【0162】
ベクターは、発現ベクターであってもよい。本明細書に記載のような発現ベクターは、転写され得る配列を含む核酸の領域を含む。したがって、mRNA、tRNA、およびrRNAをコードする配列が、この定義内に含まれる。
【0163】
一部の態様では、ベクターは、プロモーターとエンハンサーとの間の相互作用を遮断し、隣接遺伝子からのリードスルーを低減する障壁として作用する遺伝子配列である「インスレーター」を有してもよい。
【0164】
一実施形態では、インスレーターは、レトロウイルス核酸配列の1つまたは複数の間に存在して、プロモーター干渉および隣接遺伝子からのリードスルーを防止する。インスレーターが、レトロウイルス核酸配列の1つまたは複数の間のモジュール式構築物に存在する場合、これらの絶縁された遺伝子の各々は、個々の発現ユニットとして配置されていてもよい。
【0165】
一態様では、本発明は、以下のものをコードする核酸配列を含むレトロウイルスベクターを産生するための細胞を提供する。
i)gag-pol、
ii)env、
iii)必要に応じて、レトロウイルスベクターのRNAゲノム、および
iv)必要に応じて、rev、またはその機能的代用物、
【0166】
別の態様では、本発明のベクターは、同じ遺伝子座に位置する少なくとも2つの核酸配列を含み、少なくとも2つの核酸配列は、逆向きおよび/または交互の向きであり、gag-polおよび/またはenvをコードする核酸配列は、少なくとも1つの調節エレメントに付随している。
【0167】
別の実施形態では、レトロウイルスは、泡沫状ウイルスに由来する。
【0168】
別の実施形態では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスに由来する。
【0169】
別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEV、またはビスナレンチウイルスに由来する。
【0170】
レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター
本明細書で開示される本発明のレトロウイルスベクターは、任意の好適なレトロウイルスから導出されてもよく、または導出可能であってもよい。多数の異なるレトロウイルスが特定されている。例としては、以下のものが挙げられる:マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エーベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄細胞腫症ウイルス-29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin et al. (1997) "Retroviruses", Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds: JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus pp 758-763に見出すことができる。
【0171】
レトロウイルスは、2つの範疇、すなわち「単純」および「複雑」に幅広く分割することができる。レトロウイルスは、7つの群にさらに分割することさえできる。これらの群の5つは、腫瘍形成の可能性を有するレトロウイルスである。残りの2つの群は、レンチウイルスおよびスプーマウイルスである。これらのレトロウイルスの総説は、Coffin et
al (1997)同書に提示されている。
【0172】
レトロウイルスゲノムおよびレンチウイルスゲノムの基本構造は、ゲノムのパッケージングを可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、標的細胞ゲノムへの組込みを可能にする組込み部位、ならびにウイルス粒子の構築に必要なポリペプチドであるパッケージング成分をコードするgag/pol遺伝子およびenv遺伝子が、その間またはその内部に位置する5’LTRおよび3’LTRなど、多くの共通特徴を共有する。レンチウイルスは、HIVではrev遺伝子およびRRE配列などの追加の特徴を有し、これらは、組み込まれたプロウイルスのRNA転写物が、感染標的細胞の核から細胞質へと効率的に搬出されることを可能にする。
【0173】
プロウイルスでは、これらの遺伝子は、末端反復配列(LTR)と呼ばれる領域により両端で隣接されている。LTRは、プロウイルスの組込みおよび転写に関与する。また、LTRは、エンハンサー-プロモーター配列としての役目を果たし、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。
【0174】
LTRはそれら自体が、U3、R、およびU5と呼ばれる3つのエレメントに分割することができる同一の配列である。U3は、RNAの3’末端に特有の配列に由来する。Rは、RNAの両末端で繰り返される配列に由来し、U5は、RNAの5’末端に特有の配列に由来する。3つのエレメントのサイズは、レトロウイルスが異なれば相当に異なる場合がある。
【0175】
本発明の典型的なレトロウイルスベクターでは、複製に不可欠な1つまたは複数のタンパク質コード領域の少なくとも一部分が、ウイルスから除去されていてもよく、例えば、gag/polおよびenvは、存在していなくともよくまたは機能的でなくともよい。これにより、ウイルスベクターは複製欠損になる。
【0176】
レンチウイルスは、レトロウイルスのより大きな群の一部分である。レンチウイルスの詳細なリストは、Coffin et al (1997) "Retroviruses", Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds:JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus pp 758-763)に見出すことができる。手短に述べると、レンチウイルスは、霊長類群および非霊長類群に分割することができる。霊長類レンチウイルスの例としては、これらに限定されないが、ヒト自己免疫不全症候群(AIDS)の原因因子であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルス群としては、原型「遅発型ウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、マエディビスナウイルス(MVV)、およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。
【0177】
レンチウイルス科は、レンチウイルスが、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染する能力を有する点でレトロウイルスとは異なる(Lewis et al (1992) EMBO J 11(8):3053-3058およびLewis and Emerman (1994) J Virol 68 (1):510-516)。対照的に、MLVなどの他のレトロウイルスは、例えば、筋肉、脳、肺、および肝臓組織を構成するものなど、非分裂細胞またはゆっくりと分裂する細胞に感染することができない。
【0178】
レンチウイルスベクターは、本明細書で使用される場合、レンチウイルスから派生可能な少なくとも1つの成分部分を含むベクターである。好ましくは、その成分部分は、ベクターが標的細胞に感染するかまたは標的細胞を形質導入して、NOIを発現する生物学的機序に関与する。
【0179】
レンチウイルスベクターは、霊長類レンチウイルス(例えば、HIV-1)または非霊長類レンチウイルス(例えば、EIAV)のいずれに由来してもよい。
【0180】
一般的に言って、典型的なレトロウイルスベクター産生系は、必須ウイルスパッケージング機能からウイルスゲノムを分離することを含む。これらのベクター成分は、典型的には、別々のDNA発現カセット(あるいはプラスミド、発現プラスミド、DNA構築物、または発現構築物として公知)で産生細胞に提供される。
【0181】
ベクターゲノムはNOIを含む。ベクターゲノムは、典型的には、パッケージングシグナル(ψ)、NOIを内包する内部発現カセット、(必要に応じて)転写後エレメント(PRE)、3’-ppu、および自己不活性化(SIN)LTRを必要とする。R-U5領域は、ベクターゲノムRNAおよびNOI mRNAの両方の正確なポリアデニル化、ならびに逆転写プロセスに必要である。ベクターゲノムは、必要に応じて、国際公開第2003/064665号記載のように、revの非存在下でのベクター産生を可能にするオープンリーディングフレームを含んでいてもよい。
【0182】
パッケージング機能は、gag/pol遺伝子およびenv遺伝子を含む。これらは、産生細胞によるベクター粒子の産生に必要である。これらの機能をトランスでゲノムに提供することにより、複製欠損ウイルスベクターの産生が容易になる。
【0183】
ガンマ-レトロウイルスベクターの産生系は、典型的には、ゲノム、gag/pol、およびenv発現構築物を必要とする3成分系である。HIV-1に基づくレンチウイルスベクターの産生系は、アクセサリー遺伝子revが提供されること、およびベクターゲノムがrev応答エレメント(RRE)を含むことをさらに必要とする場合がある。EIAVに基づくレンチウイルスベクターは、オープンリーディングフレーム(ORF)がゲノム内に存在する場合、revがトランスで提供されることを必要としない(国際公開第2003/064665号を参照)。
【0184】
通常、ベクターゲノムカセット内にコードされる「外部」プロモーター(ベクターゲノムカセットを駆動する)および「内部」プロモーター(NOIカセットを駆動する)は両方とも、他のベクター系成分を駆動するものと同様に、強力な真核生物プロモーターまたはウイルスプロモーターである。そのようなプロモーターの例としては、CMVプロモーター、EF1αプロモーター、PGKプロモーター、CAGプロモーター、TKプロモーター、SV40プロモーター、およびユビキチンプロモーターが挙げられる。DNAライブラリにより生成されるものなど、強力な「合成」プロモーター(例えば、JeTプロモーター)も、転写の駆動に使用することができる。あるいは、以下のものなどの組織特異的プロモーターを使用して、転写を駆動してもよい:ロドプシン(Rho)、ロドプシンキナーゼ(RhoK)、錐体桿体ホメオボックス含有遺伝子(CRX、cone-rod homeobox containing gene)、神経網膜特異的ロイシンジッパータンパク質(NRL)、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)、チロシンヒドロキシラーゼ、ニューロン特異的ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、アストロサイト特異的グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、ホスホエノールピルビル酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、肝臓型脂肪酸結合タンパク質プロモーター、Flt-1プロモーター、INF-βプロモーター、Mbプロモーター、SP-Bプロモーター、SYN1プロモーター、WASPプロモーター、SV40/hAlbプロモーター、SV40/CD43、SV40/CD45、NSE/RU5’プロモーター、ICAM-2プロモーター、GPIIbプロモーター、GFAPプロモーター、フィブロネクチンプロモーター、エンドグリンプロモーター、エラスターゼ-1プロモーター、デスミンプロモーター、CD68プロモーター、CD14プロモーター、およびB29プロモーター。
【0185】
レトロウイルスベクターの産生は、これらのDNA成分を産生細胞に一過性に共トランスフェクションすること、または全ての成分が産生細胞ゲノム内に安定的に組み込まれている安定産生細胞株を使用することのいずれかを含む(例えば、Stewart HJ, Fong-Wong L, Strickland I, Chipchase D, Kelleher M, Stevenson L, Thoree V, McCarthy J, Ralph GS, Mitrophanous KA and Radcliffe PA. (2011). Hum Gene Ther. Mar; 22 (3):357-69)。代替的な手法は、安定パッケージング細胞(パッケージング成分が安定的に組み込まれている)を使用し、次いで、必要とされるベクターゲノムプラスミドを一過性にトランスフェクトすることである(例えば、Stewart, H. J., M. A. Leroux-Carlucci, C. J. Sion, K. A. Mitrophanous and P. A. Radcliffe (2009). Gene Ther. Jun; 16 (6):805-14)。また、代替的な不完全パッケージング細胞株(1つまたは2つのパッケージング成分のみが、安定的に細胞株に組み込まれている)を生成し、欠如成分を一時的にトランスフェクトしてベクターを生成することも実施可能である。また、産生細胞は、転写調節因子のtetリプレッサー(TetR)タンパク質群のメンバー(例えば、T-Rex、Tet-On、およびTet-Off)、転写調節因子のcumate誘導性スイッチ系群のメンバー(例えば、cumateリプレッサー(CymR)タンパク質)、または産生中に導入遺伝子発現を抑制するために供給されるRNA結合タンパク質(例えば、TRAP-トリプトファン活性化RNA結合タンパク質)などの調節タンパク質を発現することができる。
【0186】
本明細書で開示される本発明の一実施形態では、ウイルスベクターは、EIAVに由来する。EIAVは、レンチウイルスの中で最も単純なゲノム構造を有する。gag/pol遺伝子およびenv遺伝子に加えて、EIAVは、3つの他の遺伝子:tat、rev、およびS2をコードする。Tatは、ウイルスLTRの転写活性化因子として作用し(Derse and Newbold (1993) Virology 194(2):530-536およびMaury et al (1994) Virology 200(2):632-642)、およびrevは、rev応答エレメント(RRE)を介してウイルス遺伝子の発現を調節および協調させる(Martarano et al. (1994) J Virol 68(5):3102-3111)。これらの2つのタンパク質の作用機序は、霊長類ウイルスの類似機序におおよそ類似すると考えられる(Martarano et al. (1994) J Virol 68(5):3102-3111)。S2の機能は、SERINC3/5をアンタゴナイズすることである(Chande et al., PNAS, 2016 Nov 15; 113(46):13197-13202。加えて、EIAVタンパク質Ttmは、膜貫通型タンパク質の開始部でenvコード配列にスプライシングされるtatの最初のエクソンによりコードされることが特定されている。本明細書で開示される本発明の代替的な実施形態では、ウイルスベクターは、HIVに由来し、HIVは、S2をコードしない点でEIAVとは異なるが、EIAVとは異なり、vif、vpr、vpu、およびnefをコードする。
【0187】
用語「組換えレトロウイルスまたはレンチウイルスベクター」(RRV)は、パッケージング成分の存在下で、RNAゲノムを、標的細胞を形質導入することが可能なウイルス粒子へとパッケージングすることを可能にするのに十分なレトロウイルス遺伝情報を有するベクターを指す。標的細胞の形質導入は、逆転写および標的細胞ゲノムへの組込みを含んでいてもよい。RRVは、ベクターにより標的細胞に送達されることになる非ウイルスコード配列を保持する。RRVは、非依存的複製を行って、標的細胞内で感染性レトロウイルス粒子を産生することができない。通常、RRVは、機能的なgag/pol遺伝子および/もしくはenv遺伝子ならびに/または複製に不可欠な他の遺伝子を欠如する。
【0188】
好ましくは、本明細書で開示される本発明のRRVベクターは、最小ウイルスゲノムを有する。
【0189】
本明細書で使用される場合、用語「最小ウイルスゲノム」は、ウイルスベクターが、非必須エレメントが除去されているが、感染、形質導入、およびNOIを標的細胞に送達するために必要な機能性を提供するのに不可欠なエレメントを維持するように操作されていることを意味する。この戦略のさらなる詳細は、国際公開第1998/17815号および国際公開第99/32646号に見出すことができる。最小EIAVベクターは、tat遺伝子、rev遺伝子、およびS2遺伝子を欠如し、これらの遺伝子はいずれも産生系ではトランスで提供されない。最小HIVベクターは、vif、vpr、vpu、tat、およびnefを欠如する。
【0190】
産生細胞内でベクターゲノムを産生するために使用される発現プラスミドは、産生細胞/パッケージング細胞でのゲノム転写を指図するようにレトロウイルスゲノムに作動可能に連結した転写調節制御配列を含んでいてもよい。これらの調節配列は、転写されるレトロウイルス配列に関連する天然配列、つまり5’U3領域であってもよく、または下記で考察されているように、別のウイルスプロモーター、例えばCMVプロモーターなどの異種プロモーターであってもよい。一部のレンチウイルスベクターゲノムは、効率的なウイルス産生のために追加の配列を必要とする。例えば、特にHIVの場合、RRE配列が含まれていてもよい。しかしながら、RREの必要性(およびトランスで提供されているrevに対する依存性)は、コドン最適化により低減または排除される場合がある。この戦略のさらなる詳細は、国際公開第2001/79518号に見出すことができる。
【0191】
rev/RRE系と同じ機能を発揮する代替的配列も公知である。例えば、rev/RRE系の機能的類似体は、マソンファイザーサルウイルスに見出される。これは、構成的輸送エレメント(CTE)として公知であり、感染細胞の因子と相互作用すると考えられているRRE型配列をゲノムに含む。細胞因子は、rev類似体と考えることができる。したがって、CTEを、rev/RRE系の代替として使用することができる。公知であるかまたは利用可能になるRevタンパク質の任意の他の機能的等価物が、本発明に関係する場合がある。例えば、HTLV-IのRexタンパク質が、HIV-1のRevタンパク質を機能的に置き換えることができることも公知である。RevおよびRREは、本明細書で開示される本発明の方法で使用するためのベクターには存在しなくともよくまたは非機能性であってもよく、代替的なrevおよびRRE、または機能的に等価な系では、本明細書のベクター系に組み込まれていてもよい。
【0192】
本明細書で使用される場合、用語「機能的代用物」は、別のタンパク質または配列と同じ機能を発揮する代替的配列を有するタンパク質または配列を意味する。用語「機能的代用物」は、本明細書では、「機能的等価物」および「機能的類似体」と同義的に使用され、同じ意味を有する。
【0193】
SINベクター
本発明のレトロウイルスベクターは、ウイルスエンハンサーおよびプロモーター配列が欠失されている自己不活性化(SIN)構成で使用してもよい。SINベクターを生成し、非SINベクターの有効性と同様の有効性で、非分裂標的細胞にin vivo、ex
vivo、またはin vitroで形質導入することができる。SINプロウイルスの末端反復配列(LTR)の転写不活化は、複製コンピテントウイルスによる動員を防止するはずである。また、これは、LTRの任意のシス作用効果を除去することにより内部プロモーターからの、調節された遺伝子発現を可能にするはずである。
【0194】
例として、自己不活性化レトロウイルスベクター系は、3’LTRのU3領域にある転写エンハンサーまたはエンハンサーおよびプロモーターを欠失させることにより構築されている。一連のベクター逆転写および組込み後、これらの変化は、5’および3’LTRの両方にコピーされ、転写的に不活性なプロウイルスが産生される。しかしながら、そのようなベクターのLTRに対して内部にある任意のプロモーターは、依然として転写的に活性であるだろう。この戦略は、内部に配置されている遺伝子からの転写に対する、ウイルスLTRのエンハンサーおよびプロモーターの効果を除去するために用いられている。そのような効果としては、転写の増加または転写の抑制が挙げられる。この戦略は、3’LTRからゲノムDNAへの下流転写を除去するために使用することもできる。これは、ヒト遺伝子療法に特に関係し、あらゆる内因性オンコジーンの偶発的活性化を防止するために非常に望ましく、一部の場合では重要である。Yu et al., (1986) PNAS 83: 3194-98;Marty et al., (1990) Biochimie 72: 885-7;Naviaux et al., (1996) J. Virol. 70: 5701-5;Iwakuma et al., (1999) Virol. 261: 120-32;Deglon et al., (2000) Human Gene Therapy 11: 179-90。SINレンチウイルスベクターは、米国特許第6,924,123号および米国特許第7,056,699号に記載されている。
【0195】
複製欠損レンチウイルスベクター
複製欠損レンチウイルスベクターのゲノムでは、gag/polおよび/またはenvの配列は、変異されていてもよく、および/または非機能性であってもよい。
【0196】
本明細書で開示される本発明の典型的なレンチウイルスベクターでは、ウイルス複製に不可欠なタンパク質の1つまたは複数のコード領域の少なくとも一部分が、ベクターから取り除かれていてもよい。それにより、ウイルスベクターは複製欠損になる。また、ウイルスゲノムの部分は、非分裂標的細胞を形質導入することおよび/またはそのゲノムを標的細胞ゲノムへと組み込むことが可能なNOIを含むベクターを生成するために、NOIにより置換されていてもよい。
【0197】
一実施形態では、レンチウイルスベクターは、国際公開第2006/010834号および国際公開第2007/071994号に記載のような非組込み型ベクターである。
【0198】
さらなる実施形態では、ベクターは、ウイルスRNAを欠いているかまたは欠如する配列を送達する能力を有する。さらなる実施形態では、送達しようとするRNAに位置する異種結合ドメイン(gagに対して異種)およびGagまたはGagPolにある同種結合ドメインを、送達しようとするRNAを確実にパッケージングするために使用することができる。これらのベクターは両方とも、国際公開第2007/072056号に記載されている。
【0199】
アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクター
遺伝子療法のための、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)およびアデノウイルスに基づくウイルスベクターの使用は広く普及しており、それらの製造は十分に文書化されている。典型的には、AAVに基づくベクターは、哺乳動物細胞株で(例えば、HEK293に基づく)、またはバキュロウイルス/Sf9昆虫細胞系を使用することにより産生される。AAVベクターは、典型的にはアデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来するヘルパー機能と共にDNAをコードするベクター成分の一過性トランスフェクションにより、またはAAVベクター成分を安定的に発現する細胞株の使用により、産生することができる。
【0200】
AAVベクターは、一般的には、限定ではないが、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、およびAAV-8を含むアデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターであると理解されている。AAVベクターは、AAV野生型遺伝子の1つまたは複数、好ましくはrep遺伝子および/またはcap遺伝子が全部または一部分欠失していてもよいが、機能的隣接ITR配列を保持することができる。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製、およびパッケージングに必要である。したがって、AAVベクターは、本明細書では、ウイルスの複製およびパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要な少なくともそうした配列を含むと規定される。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、配列が機能的レスキュー、複製、およびパッケージングを提供する限り、例えばヌクレオチドの挿入、欠失、または置換により変更されていてもよい。「AAVベクター」は、ベクター核酸を標的細胞の核へと送達するための効率的なビヒクルを提供するそのタンパク質殻またはカプシドも指す。AAV産生系は、典型的には、次いで生産的AAV複製のためにトランスで機能するAAV遺伝子産物を提供するように発現させることができるAAV由来コード配列を指すヘルパー機能を必要とする。そのため、AAVヘルパー機能は、主要AAVオープンリーディングフレーム(ORF)、repおよびcapを両方とも含む。Rep発現産物は、中でも、AAVのDNA複製起点の認識、結合、ニック化;DNAヘリカーゼ活性;およびAAV(または他の異種)プロモーターからの転写調節を含む、多くの機能を有することが示されている。Cap発現産物は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、本明細書では、AAVベクターに欠如しているAAV機能をトランスで補完するために使用される。AAVヘルパー構築物は、一般に、目的のヌクレオチド配列を送達するための形質導入ベクターを産生するために使用されることになるAAVベクターから欠失されているAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を指すと理解される。AAVヘルパー構築物は、一般的に、AAV repおよび/またはcap遺伝子の一過性発現を提供して、AAV複製に必要な欠如AAV機能を補完するために使用されるが、しかしながら、ヘルパー構築物は、AAV ITRを欠如し、それら自体で複製することも、パッケージングすることもできない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンの形態であってもよい。いくつかのAAVヘルパー構築物が記載されており、RepおよびCap発現産物を両方ともコードするプラスミドpAAV/AdおよびplM29+45などが一般的に使用されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSamulski et al. (1989) J. Virol. 63:3822-3828;およびMcCarty et al. (1991) J. Virol.
65:2936-2945を参照されたい。Repおよび/またはCap発現産物をコードするいくつかの他のベクターが記載されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,139,941号および第6,376,237号を参照されたい。加えて、用語「アクセサリー機能」は、AAVがその複製のために依存する、非AAV由来のウイルス性および/または細胞性機能を指すことは一般的知識である。したがって、この用語は、AAV遺伝子転写の活性化、段階特異的なAAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、およびAAVカプシド構築に関与する部分を含む、AAV複製に必要なタンパク質およびRNAを包含する。ウイルスに基づくアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)、およびワクシニアウイルスなどの、公知のヘルパーウイルスのいずれに由来してもよい。
【0201】
以下の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれており、それらには、アデノ随伴ウイルスベクターの産生に関するアデノ随伴ウイルス生物学および/または技法の種々の態様が記載されている。Aponte-Ubillus, et al. Molecular design for recombinant adeno-associated virus (rAAV) vector production. Appl Microbiol Biotechnol. 2018; 102(3): 1045-1054;Wang Q, et al. A Robust System for Production of Superabundant VP1 Recombinant AAV Vectors. Mol Ther Methods Clin Dev. 2017 Dec 15; 7: 146-156;Adamson-Small L, et al. A scalable method for the production of high-titer and high-quality adeno-associated type 9 vectors using the HSV platform. Mol Ther Methods Clin Dev. 2016; 3: 16031;Clement N and Grieger JC. Manufacturing of recombinant adeno-associated viral vectors for clinical trials. Mol Ther Methods Clin Dev. 2016; 3: 16002;Guo P, et al. Rapid and simplified purification of recombinant adeno-associated virus. J Virol Methods. 2012 Aug; 183(2): 139-146;Shin J-H, et al. Recombinant Adeno-Associated Viral Vector Production and Purification. Methods Mol Biol. 2012; 798: 267-284;Cecchini S, et al. Reproducible High Yields of Recombinant Adeno-Associated Virus Produced Using Invertebrate Cells in 0.02-to 200-Liter Cultures. Hum. Gene Ther. 22(8) 2011: 1021-1030;Wright JF. Adeno-Associated Viral Vector Manufacturing: Keeping Pace with Accelerating Clinical Development. Hum. Gene Ther. 22(8) 2011: 913-915;Kotin RL. Large-scale recombinant adeno-associated virus production. Hum Mol Genet. 2011 Apr 15; 20(R1): R2-R6;Thomas DL, et al. Scalable Recombinant Adeno-Associated Virus Production Using Recombinant Herpes Simplex Virus Type 1 Coinfection of Suspension-Adapted Mammalian Cells. Hum. Gene Ther. 20(8) 2009: 861-870;Thorne BA, et al. Manufacturing Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors from Producer Cell Clones. Hum. Gene Ther. 20(7) 2009: 707-714;Wright F. Transient Transfection Methods for Clinical Adeno-Associated Viral Vector Production. Hum. Gene Ther. 20(7) 2009: 698-706;Urabe M, et al. Insect Cells As a Factory to Produce AdenoAssociated Virus Type 2 Vectors. Hum. Gene Ther. 13(16) 2002: 1935-1943。
【0202】
アデノウイルスベクターは、典型的には、アデノウイルスE1機能を安定的に発現する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293に基づく)で産生される。また、アデノウイルスベクターは、典型的には、産生細胞株を使用した逐次的ラウンドの「感染」によるヘルパー機能依存的複製により「増幅」される。アデノウイルスベクターおよびその産生系は、アデノウイルスゲノムの全てまたは部分を含むポリヌクレオチドを含む。アデノウイルスは、限定ではないが、Ad2、Ad5、Ad12、およびAd40に由来するアデノウイルスであることは周知である。アデノウイルスベクターは、典型的には、アデノウイルス外被に被包されたDNAまたは別のウイルス形態またはウイルス様形態(単純ヘルペスおよびAAVなど)にパッケージングされたアデノウイルスDNAの形態である。
【0203】
以下の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれており、それらには、アデノウイルスベクターの産生に関するアデノウイルス生物学および/または技法の種々の態様が記載されている。Graham and Van de Eb (1973) Virology 52:456-467;Takiff et al. (1981) Lancet ii:832-834;Berkner and Sharp (1983) Nucleic Acid Research 6003-6020;Graham (1984) EMBO J 3:2917-2922;Bett et al. (1993) J. Virology 67:5911-5921;およびBett et al. (1994) Proc. Natl. Acad Sci. USA 91:8802-8806。アデノウイルスは、複製欠損遺伝子移入ベクターを産生するように遺伝子改変されている。そのようなベクターでは、初期アデノウイルス遺伝子産物E1AおよびE1Bは欠失されており、Frank Graham(Graham et al. (1987) J. Gen. Birol. 36:59-72およびGraham (1977) J. Genetic Virology 68:937-940)により開発されたパッケージング細胞株293によりトランスで提供される。形質導入しようとする遺伝子は、一般的に、ウイルスゲノムの欠失されたE1AおよびE1B領域においてアデノウイルスに挿入される。Bett et al. (1994)、上記。アデノウイルスベクターおよびその産生は、以下の文献に記載されている:Stratford-Perricaudet (1990) Human Gene Therapy 1:2-256;Rosenfeld (1991) Science 252:431-434;Wang et al. (1991) Adv. Exp. Med. Biol. 309:61-66;Jaffe et al. (1992) Nat Gent. 1:372-378;Quantin et al. (1992) Proc Natl. Acad. Sci. USA 89:2581-2584;Rosenfeld et al. (1992) Cell 68:143-155;Stratford-Perricaudet et al. (1992) J. Clin. Invest. 90:626-630;Le Gal La Salle et al. (1993) Science 259:988-990;Mastrangeli et al. (1993) J. Clin. Invest. 91:225-234;Ragot et al. (1993) Nature 361:647-650;Hayaski et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:23872-23875;Lee CS, et al. Adenovirus-Mediated Gene Delivery: Potential Applications for Gene and Cell-Based Therapies in the New Era of Personalized Medicine. Genes Dis. 2017 Jun;4(2):43-63;Kallel H, Kamen AA. Large-Scale Adenovirus and Poxvirus-Vectored Vaccine Manufacturing to Enable Clinical Trials. Biotechnol. J. 10(5) 2015: 741-747;Miravet S, et al. Construction, production, and purification of recombinant adenovirus vectors. Methods Mol Biol. 2014;1089:159-73;Silva AC, etal. Scalable production of adenovirus vectors. Methods Mol Biol. 2014;1089:175-96;Kreppel F. Production of high-capacity adenovirus vectors. Methods Mol Biol. 2014;1089:211-29;Xie L, et al. Large-Scale Propagation of a Replication-Defective Adenovirus Vector in Stirred-Tank Bioreactor PER.C6TM Cell Culture Under Sparging Conditions. Biotechnol. Bioeng. 83(1) 2003: 45-52;Garnier A, et al. Scale-Up of the Adenovirus Expression System for the Production of Recombinant Protein in Human 293S Cells. Cell Culture Engineering IV. Buckland BC, Ed. Springer Science and Business Media: Rotterdam, The Netherlands, 1994; 145-155。
【0204】
NOIおよびポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含んでいてもよい。それらは、一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよい。当業者であれば、遺伝子コードの縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが同じポリペプチドをコードし得ることが理解されるだろう。加えて、当業者であれば、日常的な技法を使用して、本発明のポリペプチドが発現されることになる任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するように、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換をなし得ることを理解するだろう。
【0205】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能な任意の方法により修飾することができる。そのような修飾は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強するために実施してもよい。
【0206】
DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、組換え的に、合成的に、または当業者に利用可能な任意の手段により産生することができる。また、それらは、標準的技法によりクローニングすることができる。
【0207】
より長いポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段を使用して、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技法を使用して産生されるだろう。これは、クローニングが所望される標的配列を挟む1対のプライマー(例えば、約15~30個ヌクレオチドの)を製作すること、プライマーを、動物またはヒト細胞から得たmRNAまたはcDNAと接触させること、所望の領域の増幅をもたらす条件下でPCRを実施すること、増幅した断片を単離すること(例えば、反応混合物をアガロースゲルで精製することにより)、および増幅したDNAを収集することを含むだろう。プライマーは、増幅されたDNAを好適なベクターにクローニングすることができるように好適な制限酵素認識部位を含むように設計されていてもよい。
【0208】
タンパク質
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、単一鎖のポリペプチド分子、ならびに個々の成分ポリペプチドが共有結合手段または非共有結合手段により連結されている複数ポリペプチドの複合体を含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」および「ペプチド」は、モノマーがアミノ酸であり、ペプチドまたはジスルフィド結合により共に接合されているポリマーを指す。
【0209】
改変体、誘導体、類似体、相同体、および断片
本明細書で言及されている特異的タンパク質およびヌクレオチドに加えて、本明細書で開示される本発明は、それらの改変体、誘導体、類似体、相同体、および断片の使用も包含する。
【0210】
本明細書の本発明の状況では、任意の所与の配列の改変体は、特定の残基配列が(アミノ酸残基または核酸残基に関わらず)、問題のポリペプチドまたはポリヌクレオチドがその内因性機能の少なくとも1つを維持するように修飾されている配列である。改変体配列は、天然に存在するタンパク質に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、置換え、および/または変異により得ることができる。
【0211】
用語「誘導体」は、本発明のタンパク質またはポリペプチドに関して本明細書で使用される場合、得られるタンパク質またはポリペプチドがその内因性機能の少なくとも1つを維持することを提供する配列からまたはその配列への、1つ(または複数)のアミノ酸残基の任意の置換、変異、修飾、置換え、欠失、および/または付加を含む。
【0212】
用語「類似体」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して本明細書で使用される場合、任意の模倣体、すなわち、それが模倣するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内因性機能の少なくとも1つを有する化学化合物を含む。
【0213】
典型的には、アミノ酸置換は、修飾配列が必要な活性または能力を維持する限り、例えば、1個、2個または3個~10個または20個までの置換をなすことができる。アミノ酸置換は、天然に存在しない類似体の使用を含んでいてもよい。
【0214】
また、本明細書で開示される本発明で使用されるタンパク質は、サイレント変化を生み出し、機能的に等価なタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を有していてもよい。意図的なアミノ酸置換は、内因性機能が維持される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいてなすことができる。例えば、負荷電アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正荷電アミノ酸としては、リシンおよびアルギニンが挙げられ、同様の親水性値を有する非荷電極性頭部を有するアミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、およびチロシンが挙げられる。
【0215】
保存的置換は、例えば、下記の表に従ってなすことができる。2番目の列の同じブロックおよび好ましくは3番目の列の同じ行のアミノ酸を、互いに置換してもよい。
【表2】
【0216】
用語「相同体」は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列とある相同性を有する実体を意味する。用語「相同性」は、「同一性」と等しい場合がある。
【0217】
本状況では、相同性配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%、または90%同一、好ましくは少なくとも95%、97%、または99%同一であってもよいアミノ酸配列を含むとされる。典型的には、相同体は、対象アミノ酸配列と同じ活性部位などを含むことになる。また、相同性は、本明細書で開示される本発明の状況では、類似性(つまり、同様の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の点で考慮することができるが、配列同一性の点で相同性を現すことが好ましい。
【0218】
本状況では、相同性配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%、または90%同一、好ましくは少なくとも95%、97、または99%同一であってもよいヌクレオチド配列を含むとされる。また、相同性は、本明細書で開示される本発明の状況では、類似性の点で考慮することができるが、配列同一性の点で相同性を現すことが好ましい。
【0219】
相同性比較は、目視により、またはより一般には容易に利用可能な配列比較プログラムの支援によりより容易に行うことができる。これらの市販コンピュータプログラムは、2つまたはそれよりも多くの配列間の相同性または同一性パーセンテージを算出することができる。
【0220】
相同性パーセンテージは、連続した配列にわたって算出してもよく、つまり1つの配列を別の配列とアラインメントし、一方の配列の各アミノ酸を、他方の配列の対応するアミノ酸と直接的に1残基ずつ比較する。これは、「ギャップ無し」アラインメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップ無しアラインメントは、比較的短い数の残基にわたってのみ実施される。
【0221】
これは非常に単純で一貫した方法であるが、例えば、そうでなければ同一である配列の対でも、ヌクレオチド配列に1つの挿入または欠失があると、それに続くコドンがアラインメントから外れてしまい、したがってグローバルアラインメントを実施する場合、相同性パーセントの大きな低減がもたらされる可能性がある。結果的に、ほとんどの配列比較法は、全体的な相同性スコアに過度にペナルティを課さずに、考え得る挿入および欠失を考慮に入れる最適なアラインメントを作出するように設計されている。これは、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して、局所的相同性の最大化を試みることにより達成される。
【0222】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同じ数の同一アミノ酸について、2つの比較した配列間のより高度な関連性を反映する可能な限り少数のギャップを有する配列アラインメントが、多数のギャップを有するものよりも高いスコアを達成することになるように、アラインメントに生じる「ギャップペナルティ」を各ギャップに割り当てる。典型的には、ギャップの存在に比較的高いコストを課し、ギャップの各々の後の残基にはより小さなペナルティを課す「アファインギャップコスト」が使用される。これは、最も一般的に使用されているギャップスコア系である。無論、高いギャップペナルティは、より少数のギャップを有する最適化アラインメントを作出するだろう。ほとんどのアラインメントプログラムでは、ギャップペナルティを変更することができる。しかしながら、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティは、ギャップ毎に-12であり、各伸長毎に-4である。
【0223】
したがって、最大相同性パーセンテージの計算は、まずギャップペナルティを考慮に入れて、最適なアラインメントを作出することが必要である。そのようなアラインメントを実施するのに好適なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(ウィスコンシン大学、U.S.A.;Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウェアの例としては、これらに限定されないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999)同書-Ch.18を参照)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)、およびGENEWORKSスイートの比較ツールが挙げられる。BLASTおよびFASTAは両方とも、オフラインおよびオンライン探索に利用可能である(Ausubel et al. (1999)同書、pages 7-58 to 7-60を参照)。しかしながら、一部の適用では、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる別のツールも、タンパク質およびヌクレオチド配列の比較に利用可能である(FEMS Microbiol Lett (1999) 174(2):247-50;FEMS Microbiol Lett (1999) 177(1):187-8を参照)。
【0224】
最終相同性パーセンテージを同一性の点で測定することができるが、アラインメントプロセスそれ自体は、典型的には、全か無かの対比較に基づいていない。代わりに、一般には、化学的類似性または進化距離に基づく各ペア毎の比較にスコアを割り当てるスケーリングされた類似性スコアマトリックス(scaled similarity score matrix)が使用される。一般的に使用されるそのようなマトリックスの例は、BLASTスイートのプログラムのデフォルトマトリックスであるBLOSUM62マトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、公開されたデフォルト値または供給されている場合は特注記号比較表のいずれかを使用する(より詳細に関してはユーザーマニュアルを参照)。一部の適用では、GCGパッケージには公的なデフォルト値を、またはBLOSUM62などの他のソフトウェアの場合、デフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0225】
ソフトウェアが最適なアラインメントを作出したら、相同性パーセンテージ、好ましくは配列同一性パーセンテージを算出することが可能である。ソフトウェアは、通常、これを配列比較の一部分として行い、数値的結果を生成する。
【0226】
「断片」も改変体であり、この用語は、典型的には、機能的にまたは例えばアッセイでのいずれかにおける目的のものであるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を指す。したがって、「断片」は、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの部分であるアミノ酸配列または核酸配列を指す。
【0227】
そのような改変体は、部位特異的変異誘発など、標準的な組換えDNA技術を使用して調製することができる。挿入をなす場合、天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接領域と共に、挿入部位のいずれかの側に、挿入をコードする合成DNAを製作することができる。隣接領域は、配列を適切な酵素で切断し、合成DNAを破断部分にライゲートすることができるように、天然に存在する配列の部位に対応する便利な制限部位を含むことになる。次いで、DNAを本発明に従って発現させて、コードされたタンパク質を製作する。これらの方法は、DNA配列の操作に関する当技術分野で公知の多数の標準的技法の例示に過ぎず、他の公知技法も使用することができる。
【0228】
本発明の細胞および/またはモジュール式構築物で使用するのに好適な調節タンパク質の全ての改変体、断片、または相同体は、NOIの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように、NOIの同種結合部位に結合する能力を維持することになる。
【0229】
結合部位の全ての改変体断片または相同体は、NOIの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように、同種RNA結合タンパク質に結合する能力を維持することになる。
【0230】
コドン最適化
本明細書で開示される本発明で使用されるポリヌクレオチド(ベクター産生系のNOIおよび/または成分を含む)は、コドン最適化されていてもよい。コドン最適化は、以前に、国際公開第1999/41397号および国際公開第2001/79518号に記載されている。細胞が異なれば、特定のコドンのそれらの使用が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在量の偏りに対応する。配列のコドンを調整して対応するtRNAの相対的存在量と一致するように配列のコドンを変更することにより、発現を増加させることが可能である。同じ理由で、対応するtRNAが、特定の細胞型において希少であることが公知であるコドンを意図的に選択することにより、発現を減少させることが可能である。したがって、追加の度合いの翻訳制御が利用可能である。
【0231】
レトロウイルスを含む多くのウイルスは、多数の希少コドンを使用し、それらを一般的に使用される哺乳動物コドンに対応して変化させると、目的の遺伝子、例えば哺乳動物産生細胞のNOIまたはパッケージング成分の発現の増加を達成することができる。哺乳動物細胞のならびに様々な他の生物のコドン使用表は、当技術分野で公知である。
【0232】
ウイルスベクター成分のコドン最適化は、いくつかの他の利点を有する。それらの配列を変更することにより、プロデューサー細胞/パッケージング細胞のウイルス粒子の構築に必要なウイルス粒子のパッケージング成分をコードするヌクレオチド配列は、RNA不安定性配列(INS)がそれらから除去されている。同時に、パッケージング成分のアミノ酸配列コード配列は、配列によりコードされるウイルス成分が、同じまたは少なくとも十分に類似したままであり、パッケージング成分の機能が妨害されないように維持される。また、レンチウイルスベクターでは、コドン最適化は、搬出にRev/RREが必要であることを克服して、最適化された配列をRev非依存性にする。また、コドン最適化は、ベクター系内の異なる構築物間(例えば、gag-polおよびenvオープンリーディングフレームのオーバーラップ領域間)の相同組換えを低減する。したがって、コドン最適化の全体的な効果は、ウイルス力価および安全性向上の顕著な増加である。
【0233】
一実施形態では、INSに関するコドンだけがコドン最適化される。しかしながら、非常により好ましく実際的な実施形態では、配列は、一部の例外、例えば、gag-polのフレームシフト部位を包含する配列を除いて、それらの全体がコドン最適化されている(以下を参照)。
【0234】
レンチウイルスベクターのgag-pol遺伝子は、gag-polタンパク質をコードする2つのオーバーラップリーディングフレームを含む。両タンパク質の発現は、翻訳中のフレームシフトに依存する。このフレームシフトは、翻訳中のリボソーム「スリップ」の結果として生じる。このスリップは、少なくとも部分的には、リボソーム停滞RNA二次構造により引き起こされると考えられる。そのような二次構造は、gag-pol遺伝子のフレームシフト部位の下流に存在する。HIVの場合、オーバーラップの領域は、gagの開始部(ヌクレオチド1は、gag ATGのAである)の下流のヌクレオチド1222からgagの終了部(nt1503)まで伸長する。結果的に、フレームシフト部位および2つのリーディングフレームのオーバーラップ領域にわたる281bp断片は、好ましくはコドン最適化されない。この断片の維持は、Gag-Polタンパク質のより効率的な発現を可能にするだろう。EIAVの場合、オーバーラップの開始部は、nt1262であり(ヌクレオチド1は、gag ATGのAである)、オーバーラップの終了部はnt1461であるとされる。フレームシフト部位およびgag-polオーバーラップが確実に保存されるために、野生型配列は、nt1156から1465までが維持されている。
【0235】
例えば、便利な制限部位を提供するために、最適なコドン使用からの逸脱がなされてもよく、保存的アミノ酸変化が、Gag-Polタンパク質に導入されてもよい。
【0236】
一実施形態では、コドン最適化は、発現が少ない哺乳動物遺伝子に基づく。3番目および時には2番目および3番目の塩基を変化させてもよい。
【0237】
遺伝子コードの縮重のため、当業者であれば、多数のgag-pol配列を達成することができることが認識されるだろう。また、コドン最適化されたgag-pol配列を生成するための出発点として使用することができるレトロウイルス改変体が多数記載されている。レンチウイルスゲノムは、非常に可変性であり得る。例えば、依然として機能的なHIV-1の疑似種が多数存在する。これは、EIAVの場合にも当てはまる。これらの改変体は、形質導入プロセスの特定の部分を増強するために使用することができる。HIV-1変異株の例は、http://hiv-web.lanl.govにてLos Alamos National Security,LLCが運営するHIVデータベースに見出すことができる。EIAVクローンの詳細は、http://www.ncbi.nlm.nih.govに
位置する国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースに見出すことができる。
【0238】
コドン最適化されたgag-pol配列の戦略は、任意のレトロウイルスに関して使用することができる。これは、EIAV、FIV、BIV、CAEV、VMV SIV、HIV-1、およびHIV-2を含む全てのレンチウイルスに当てはまるだろう。加えて、この方法は、HTLV-1、HTLV-2、HFV、HSRV、およびヒト内因性レトロウイルス(HERV)、MLV、および他のレトロウイルスに由来する遺伝子の発現を増加させるために使用することができる。
【0239】
コドン最適化は、gag-pol発現をRev非依存性にすることができる。しかしながら、レンチウイルスベクターでの抗revまたはRRE因子の使用を可能にするために、ウイルスベクター生成系を完全にRev/RRE非依存性にすることが必要だろう。したがって、ゲノムを修飾する必要もある。これは、ベクターゲノム成分を最適化することにより達成される。有利には、これらの修飾は、プロデューサー細胞および形質導入細胞の両方に全ての追加タンパク質が存在しないより安全な系の産生にもつながる。
【0240】
共通ベクターエレメント
プロモーターおよびエンハンサー
NOIおよびポリヌクレオチドの発現は、制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の発現調節シグナル(例えば、tetリプレッサー(TetR)系)またはベクター産生細胞系での導入遺伝子抑制(TRIP、Transgene Repression In vector Production cell system)または本明細書に記載のNOIの他の調節因子を含む、転写調節エレメントまたは翻訳抑制エレメントを使用して制御することができる。
【0241】
原核生物プロモーターおよび真核細胞で機能的なプロモーターを使用してもよい。組織特異的または刺激特異的プロモーターを使用してもよい。また、2つまたはそれよりも多くの異なるプロモーターに由来する配列エレメントを含むキメラプロモーターを使用してもよい。
【0242】
好適なプロモーティング配列(promoting sequence)は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムに由来するもの、またはアクチンプロモーター、EF1α、CAG、TK、SV40、ユビキチン、PGK、もしくはリボソームタンパク質プロモーターなどの異種哺乳動物プロモーターに由来するものを含む強力なプロモーターである。あるいは、以下のものなどの組織特異的プロモーターを使用して、転写を駆動してもよい:ロドプシン(Rho)、ロドプシンキナーゼ(RhoK)、錐体桿体ホメオボックス含有遺伝子(CRX)、神経網膜特異的ロイシンジッパータンパク質(NRL)、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)、チロシンヒドロキシラーゼ、ニューロン特異的ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、アストロサイト特異的グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、ホスホエノールピルビル酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、肝臓型脂肪酸結合タンパク質プロモーター、Flt-1プロモーター、INF-βプロモーター、Mbプロモーター、SP-Bプロモーター、SYN1プロモーター、WASPプロモーター、SV40/hAlbプロモーター、SV40/CD43、SV40/CD45、NSE/RU5’プロモーター、ICAM-2プロモーター、GPIIbプロモーター、GFAPプロモーター、フィブロネクチンプロモーター、エンドグリンプロモーター、エラスターゼ-1プロモーター、デスミンプロモーター、CD68プロモーター、CD14プロモーター、およびB29プロモーター。
【0243】
NOIの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによりさらに増加させることができる。エンハンサーは、比較的、向きおよび位置非依存性であるが、しかしながら、SV40エンハンサーおよびCMV初期プロモーターエンハンサーなどの真核細胞ウイルスに由来するエンハンサーを使用してもよい。エンハンサーは、プロモーターの5’位または3’位にてベクターにスプライシングされてもよいが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。
【0244】
加えて、プロモーターは、好適な標的細胞での発現を保証または増加するための特徴を含んでいてもよい。例えば、特徴は、保存された領域、例えばプリブノウボックスまたはTATAボックスであってもよい。プロモーターは、ヌクレオチド配列の発現レベルに影響を及ぼすための(維持、増強、または減少させるなど)他の配列を含んでいてもよい。好適な他の配列としては、Sh1イントロンまたはADHイントロンが挙げられる。他の配列としては、温度、化学物質、光、またはストレス誘導性エレメントなどの誘導性エレメントが挙げられる。また、転写または翻訳を増強する好適なエレメントが、本明細書に組み込まれてもよい。
【0245】
NOIの調節因子
レトロウイルスパッケージング/プロデューサー細胞株の生成およびレトロウイルスベクター産生を複雑にする要因は、あるレトロウイルスベクター成分およびNOIの構成的発現が細胞傷害性であり、これらの成分を発現する細胞の死滅に結び付き、したがってベクターを産生することができないことである。したがって、本発明の一部の実施形態の場合、これらの成分(例えば、gag-pol、およびVSV-Gなどのエンベロープタンパク質)の発現を調節しなければならない。他の非細胞傷害性ベクター成分の発現も、細胞に対する代謝負担を最小限にするように調節することができる。本発明のモジュール式構築物および/または細胞は、少なくとも1つの調節エレメントに関連する細胞傷害性および/または非細胞傷害性ベクター成分を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、用語「調節エレメント」は、関連する遺伝子またはタンパク質の発現に影響を及ぼす、すなわちその発現を増加または減少させることが可能ないずれかである任意のエレメントを指す。調節エレメントは、遺伝子スイッチ系、転写調節エレメント、および翻訳抑制エレメントを含む。
【0246】
いくつかの原核生物調節因子系が、哺乳動物細胞での遺伝子スイッチの生成に適している。多くのレトロウイルスパッケージングおよびプロデューサー細胞株は、遺伝子スイッチ系(例えば、テトラサイクリンおよびcumate誘導性スイッチ系)を使用して制御され、したがって、レトロウイルスベクター成分の1つまたは複数の発現を、ベクター産生時に切り替えることが可能になる。遺伝子スイッチ系としては、(TetR)タンパク質群の転写調節因子のもの(例えば、T-Rex、Tet-On、およびTet-Off)、およびcumate誘導性スイッチ系群の転写調節因子のもの(例えば、CymRタンパク質)が挙げられる。
【0247】
1つのそのようなテトラサイクリン誘導系は、T-REx(商標)系に基づくテトラサイクリンリプレッサー(TetR)系である。例として、そのような系では、テトラサイクリンオペレーター(TetO)は、最初のヌクレオチドが、ヒトサイトメガロウイルス主要前初期プロモーター(hCMVp)のTATATAAエレメントの最後のヌクレオチドの3’末端から10bpである位置に位置し、そのためTetRは単独でリプレッサーとして作用することが可能である(Yao F, Svensjo T, Winkler T, Lu M, Eriksson C, Eriksson E. Tetracycline repressor, tetR, rather than the tetR-mammalian cell transcription factor fusion derivatives, regulates inducible gene expression in mammalian cells. 1998. Hum Gene Ther; 9: 1939-1950)。そのような系では、NOIの発現は、TetO配列の2つのコピーがタンデ
ムに挿入されているCMVプロモーターにより制御することができる。TetRホモ二量体は、誘導剤(テトラサイクリンまたはその類似体ドキシサイクリン[dox])の非存在下ではTetO配列に結合し、上流のCMVプロモーターからの転写を物理的に遮断する。存在する場合、誘導剤は、TetRホモ二量体に結合し、それがもはやTetO配列に結合することができないようにアロステリックな変化を引き起こし、遺伝子発現をもたらす。本明細書で開示された実施例で使用されたTetR遺伝子は、コドン最適化されており、これは、翻訳効率を向上させて、より厳密なTetO制御遺伝子発現の制御をもたらすことが見出された。
【0248】
TRiP系は、国際公開第2015/092440号に記載されており、ベクター産生中に産生細胞でのNOI発現を抑制する別の方法を提供する。TRAP結合配列(例えば、TRAP-tbs)相互作用は、導入遺伝子を駆動する、組織特異的プロモーターを含む構成的なおよび/または強力なプロモーターが望ましい場合、特に産生細胞での導入遺伝子タンパク質の発現が、導入遺伝子由来タンパク質のウイルスベクター送達のため、ベクター力価の低減につながるおよび/またはin vivoで免疫応答を誘発する場合、レトロウイルスベクターを産生するための導入遺伝子タンパク質抑制系の基盤を形成する(Maunder et al, Nat Commun. (2017) Mar 27; 8)。
【0249】
手短に言えば、TRAP-tbs相互作用は翻訳遮断を形成し、導入遺伝子タンパク質の翻訳を抑制する(Maunder et al, Nat Commun. (2017) Mar 27; 8)。翻訳遮断は、産生細胞でのみ有効であり、そのため、DNAまたはRNAに基づくベクター系を妨害しない。TRiP系は、導入遺伝子タンパク質が、単シストロン性または多シストロン性mRNAに由来する組織特異的プロモーターを含む構成的なおよび/または強力なプロモーターから発現される場合、翻訳を抑制することができる。導入遺伝子タンパク質の無秩序な発現は、ベクター力価を低減する場合があり、ベクター製品品質に影響を及ぼす場合があることが実証されている。一過性および安定的PaCL/PCLベクター産生系の両方の導入遺伝子タンパク質の抑制は、産生細胞がベクター力価の低減を防止するのに有益であり、毒性または分子負担問題は、細胞ストレスにつながる場合があり、導入遺伝子タンパク質は、導入遺伝子由来タンパク質のウイルスベクター送達のためin vivoで免疫応答を誘発し、遺伝子編集導入遺伝子の使用は、オン/オフターゲット効果をもたらす場合があり、導入遺伝子タンパク質は、ベクターおよび/またはエンベロープ糖タンパク質排除に影響を及ぼす場合がある。
【0250】
エンベロープおよびシュードタイピング
1つの好ましい態様では、本明細書で開示される本発明のレトロウイルスベクターは、シュードタイピングされている。この点で、シュードタイピングは、1つまたは複数の利点を付与することができる。例えば、HIVに基づくベクターのenv遺伝子産物は、これらのベクターを、CD4と呼ばれるタンパク質を発現する細胞のみの感染に限定するだろう。しかし、これらのベクターのenv遺伝子が、他のエンベロープウイルスに由来するenv配列と置換されている場合、より幅広い感染スペクトルを有する場合がある(Verma and Somia (1997) Nature 389(6648):239-242)。例として、研究者らにより、VSVに由来する糖タンパク質を有するHIVに基づくベクターがシュードタイピングされている(Verma and Somia (1997) Nature 389(6648):239-242)。
【0251】
別の代替では、Envタンパク質は、変異体または操作Envタンパク質などの修飾Envタンパク質であってもよい。修飾は、標的化能力を導入するか、または毒性を低減するか、または別の目的のために製作または選択することができる(Valsesia-Wittman et al 1996 J Virol 70: 2056-64;Nilson et al (1996) Gene Ther 3(4):280-286;およびFielding et al (1998) Blood 91(5):1802-1809、ならびにそれらに引用されている文献を参照)。
【0252】
ベクターは、任意の選択した分子でシュードタイピングすることができる。
【0253】
本明細書で使用される場合、「env」は、本明細書に記載のように、内因性レンチウイルスエンベロープまたは異種エンベロープを意味するものとする。
【0254】
VSV-G
ラブドウイルスである水疱性口内炎ウイルス(VSV)のエンベロープ糖タンパク質(G)は、あるエンベロープウイルスおよびウイルスベクタービリオンをシュードタイピング可能であることが示されているエンベロープタンパク質である。
【0255】
一切のレトロウイルスエンベロープタンパク質の非存在下でMoMLVに基づくレトロウイルスベクターをシュードタイピングするその能力は、Emi et al. (1991) Journal of Virology 65:1202-1207)により最初に示された。国際公開第1994/294440号には、レトロウイルスベクターをVSV-Gでシュードタイピングすることに成功し得ることが教示されている。これらのシュードタイピングされたVSV-Gベクターを使用して、広範囲の哺乳動物細胞を形質導入することができる。より最近では、Abe et al. (1998) J Virol 72(8) 6356-6361に、VSV-Gを添加することにより、非感染性レトロウイルス粒子を感染性にすることができることが教示されている。
【0256】
Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-7)は、レトロウイルスMLVをVSV-Gでシュードタイピングすることに成功し、これは、その天然形態のMLVと比較して宿主範囲が変更されたベクターをもたらした。VSV-Gシュードタイピングベクターは、哺乳動物細胞だけでなく魚類、爬虫類、および昆虫に由来する細胞株も感染させることが示されている(Burns et al. (1993)同書)。また、彼らは、様々な細胞株に対して従来の広宿主性エンベロープよりも効率的であることを示した(Yee et al., (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9564-9568、Emi et al. (1991) Journal of Virology 65:1202-1207)。VSV-Gタンパク質は、その細胞質側尾部がレトロウイルスコアと相互作用することが可能であるため、あるレトロウイルスをシュードタイピングするために使用することができる。
【0257】
VSV-Gタンパク質などの、非レトロウイルスシュードタイピングエンベロープを提供することは、感染性を喪失させずにベクター粒子を高力価に濃縮することができるという利点を与える(Akkina et al. (1996) J. Virol. 70:2581-5)。レトロウイルスエンベロープタンパク質は、おそらくは2つの非共有結合で連結されているサブユニットからなるため、超遠心分離中の剪断力に耐えることができないと考えられる。サブユニット間の相互作用は、遠心分離により破壊される場合がある。比較して、VSV糖タンパク質は、単一ユニットで構成されている。したがって、VSV-Gタンパク質シュードタイピングは、効率的な標的細胞感染/形質導入および製造プロセス中の両方に潜在的な利点を提供することができる。
【0258】
国際公開第2000/52188号には、安定プロデューサー細胞株からの、膜関連ウイルスエンベロープタンパク質として水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)を有する、シュードタイピングされたレトロウイルスベクターの生成が記載されており、VSV-Gタンパク質の遺伝子配列が提供されている。
【0259】
ロスリバーウイルス
ロスリバーウイルスエンベロープは、非霊長類レンチウイルスベクター(FIV)のシュードタイピングに使用されており、その後の全身性投与により、主に肝臓に形質導入される(Kang et al (2002) J Virol 76(18):9378-9388)。効率は、VSV-Gシュードタイピングベクターで得られるよりも20倍大きく、肝毒性を示唆する肝酵素の血清レベルにより測定して、引き起こされる細胞傷害がより少ないことが報告された。
【0260】
バキュロウイルスGP64
バキュロウイルスGP64タンパク質は、臨床適用および商業適用に必要な高力価ウイルスの大規模産生に使用されるウイルスベクター用のVSV-Gの代替であることが示されている(Kumar M, Bradow BP, Zimmerberg J (2003) Hum Gene Ther. 14(1):67-77)。VSV-Gシュードタイピングベクターと比較して、GP64シュードタイピングベクターは、同様の幅広い向性および同様の天然力価を有する。GP64発現は細胞を死滅させないため、GP64を構成的に発現するHEK293Tに基づく細胞株を生成することができる。
【0261】
代替的エンベロープ
EIAVのシュードタイピングに使用すると妥当な力価をもたらす他のエンベロープとしては、モコラ、狂犬病、エボラ、およびLCMV(リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス)が挙げられる。4070Aでシュードタイピングされたレンチウイルスをマウスに静脈注入することは、肝臓での最大遺伝子発現につながる。
【0262】
パッケージング配列
本発明の状況内で利用される場合、用語「パッケージングシグナル」は、同義的に「パッケージング配列」または「psi」とも呼ばれ、ウイルス粒子形成中のレトロウイルスRNA鎖のカプシド形成に必要な非コードシス作用性配列に関して使用される。HIV-1では、この配列は、主要スプライスドナー部位(SD)の上流から少なくともgag開始コドンまで伸長する遺伝子座にマッピングされている。EIAVでは、パッケージングシグナルは、Gagの5’コード領域へのR領域を含む。
【0263】
本明細書で使用される場合、用語「伸長パッケージングシグナル」または「伸長パッケージング配列」は、gag遺伝子へのさらなる伸長を有するpsi配列周囲の配列の使用を指す。これらの追加のパッケージング配列の包含により、ベクターRNAのウイルス粒子への挿入効率を増加させることができる。
【0264】
ネコ免疫不全ウイルス(FIV)RNAカプシド形成決定因子は、離散性および非連続性であり、ゲノムmRNAの5’末端(R-U5)の1つの領域、およびgagの近位311nt内にマッピングされる別の領域を含むことが示されている(Kaye et al. , J Virol. Oct;69(10):6588-92 (1995)。
【0265】
内部リボソーム侵入部位(IRES)
IRESエレメントの挿入は、単一のプロモーターから複数のコード領域を発現させることを可能にする(Adam et al(上記);Koo et al (1992) Virology 186:669-675;Chen et al 1993 J. Virol 67:2142-2148)。IRESエレメントは、ピコル
ナウイルスの非翻訳5’末端で最初に見出され、それらは、ウイルスタンパク質のcap非依存性翻訳を促進する(Jang et al (1990) Enzyme 44: 292-309)。RNAのオープンリーディングフレーム間に位置する場合、IRESエレメントは、IRESエレメントでのリボソーム侵入、続いて下流の翻訳開始を促進することにより、下流のオープンリーディングフレームの効率的な翻訳を可能にする。
【0266】
IRESに関する総説は、MountfordおよびSmith (TIG May 1995 vol 11, No 5:179-184)により表されている。脳心筋炎ウイルス(EMCV)(Ghattas, I.R. , et al., Mol. Cell. Biol., 11:5848-5859 (1991);BiPタンパク質[Macejak and Sarnow, Nature 353:91 (1991)];Drosophilaのアンテナペディア遺伝子(エクソンdおよびe)[Oh, et al., Genes & Development, 6:1643-1653 (1992)]、ならびにポリオウイルス(PV)のもの[Pelletier and Sonenberg, Nature
334: 320-325 (1988);また、Mountford and Smith, TIG 11, 179-184 (1985)も参照]に由来するものを含む、いくつかの様々なIRES配列が公知である。
【0267】
PV、EMCV、およびブタ水疱病ウイルスに由来するIRESエレメントが、レトロウイルスベクターに以前に使用されている(Coffin et al、上記)。
【0268】
用語「IRES」は、IRESとして働くかまたはIRESの機能を向上させる任意の配列または配列の組合せを含む。IRESは、ウイルス起原であってもよく(EMCV IRES、PV IRES、またはFMDV 2A様配列など)または細胞起原であってもよい(FGF2 IRES、NRF IRES、Notch2 IRES、またはEIF4 IRESなど)。
【0269】
IRESは、IRESが各ポリヌクレオチドの翻訳を開始することを可能にするために、モジュール式構築物のポリヌクレオチド間またはその前に位置するべきである。
【0270】
安定細胞株を開発するために利用される本開示のベクター構築物は、安定的組込みが生じた細胞を選択するための選択可能マーカーの付加を必要とする。これらの選択可能なマーカーは、モジュール式構築物内の単一の転写単位として発現させてもよく、またはIRESエレメントを使用して、ポリシストロンメッセージの選択可能なマーカーの翻訳を開始させることが好ましい場合がある(Adam et al 1991 J.Virol. 65, 4985)。そのため、いくつかのモジュール式構築物は、選択可能なメーカーが、IRESエレメントを使用するレトロウイルスベクター成分の1つの下流に位置するように設計された。
【0271】
遺伝子の向きおよびインスレーター
核酸には方向性があることが周知であり、これは、最終的に細胞での転写および複製などの機序に影響を及ぼす。したがって、遺伝子は、同じ核酸構築物の一部分である場合、互いに対して相対的な向きを有してもよい。
【0272】
そのため、細胞または構築物の同じ遺伝子座に存在する少なくとも2つの核酸配列は、逆の向きおよび/または交互の向きであってもよい。言い換えれば、この特定の遺伝子座では、連続する遺伝子の対は、同じ向きを有さないだろう。ベクター産生に必要な核酸が産生細胞内の同じ遺伝子座に基づいている場合、向きを交互にすることは、レトロウイルスベクター産生に有益である。これは、領域が産生細胞の同じ物理的な位置内に発現される場合、転写および翻訳リードスルーを両方とも防止することを支援することができる。次いで、これは、得られる構築物の安全性を向上させ、複製コンピテントレトロウイルスベクターの生成を防止することもできる。核酸配列が逆の向きおよび/または交互の向きである場合、インスレーターの使用は、その遺伝子環境からのNOIの不適切な発現またはサイレンシングを防止することができる。
【0273】
用語「インスレーター」は、インスレーター結合タンパク質に結合すると、周辺の調節因子シグナルから遺伝子を保護する能力を有するDNA配列エレメントの種類を指す。2つのタイプのインスレーター:エンハンサーブロッキング機能およびクロマチン障壁機能が存在する。インスレーターが、プロモーターとエンハンサーとの間に位置している場合、インスレーターのエンハンサーブロッキング機能は、エンハンサーの転写増強効果からプロモーターを遮蔽する(Geyer and Corces 1992;Kellum and Schedl 1992)。
クロマチン障壁インスレーターは、付近の凝縮クロマチンの前進を防止することにより機能し、それは、転写的に活性なクロマチン領域の転写的に不活性なクロマチン領域への変換に結び付き、遺伝子発現のサイレンシングをもたらすだろう。ヘテロクロマチンの広がり、したがって遺伝子サイレンシングを阻害するインスレーターは、ヒストン修飾に関与する酵素を動員して、このプロセスを防止する(Yang J, Corces VG. Chromatin Insulators: A Role in Nuclear Organization and Gene Expression. Advances in cancer research. 2011;110:43-76. doi:10.1016/B978-0-12-386469-7.00003-7;Huang, Li et al. 2007;Dhillon, Raab et al. 2009)。インスレーターは、これらの機能の一方または両方を有していてもよく、ニワトリβ-グロビンインスレーター(cHS4)は、1つのそのような例である。このインスレーターは、最も広範に研究されている脊椎動物インスレーターであり、高度にG+Cリッチであり、エンハンサーブロッキング機能およびヘテロクロマチン障壁機能を両方とも有する(Chung J H, Whitely M, Felsenfeld G. Cell. 1993;74:505-514)。エンハンサーブロッキング機能を有する他のそのようなインスレーターは、これらに限定されないが、ヒトβ-グロビンインスレーター5(HS5)、ヒトβ-グロビンインスレーター1(HS1)、およびニワトリβ-グロビンインスレーター(cHS3)が挙げられる(Farrell CM1, West AG, Felsenfeld G., Mol Cell Biol. 2002 Jun; 22 (11): 3820-31;J Ellis et al. EMBO J. 1996 Feb 1; 15(3): 562-568)。望ましくない遠位の相互作用を低減することに加えて、インスレーターは、隣接するレトロウイルス核酸配列間のプロモーター干渉(つまり、1つの転写単位のプロモーターが、隣接する転写単位の発現を妨害する)の防止も支援する。レトロウイルスベクター核酸配列の各々の間にインスレーターが使用される場合、直接リードスルーの低減は、複製コンピテントレトロウイルスベクター粒子形成の防止を支援することになる。インスレーターは、レトロウイルス核酸配列の各々の間に存在することができ、インスレーターの使用は、モジュール式構築物の別のNOI発現カセットと相互作用する1つのNOI発現カセットのプロモーター-エンハンサー相互作用を防止することができる。インスレーターは、ベクターゲノムとgag-pol配列との間に存在してもよい。したがって、これは、複製コンピテントレトロウイルスベクターおよび「野生型」様RNA転写物の産生の可能性を制限し、構築物の安全性プロファイルを向上させる。インスレーターエレメントを使用して、安定的に組み込まれた多遺伝子ベクターの発現を向上させることは、Moriarity et al (Modular assembly of transposon integratable multigene vectors using RecWay assembly, Nucleic Acids Res. 2013 Apr;41(8):e92)に引用されている。
【0274】
ベクター力価
当業者であれば、ウイルスベクターの力価を決定するためのいくつかの異なる方法が存在することを理解するだろう。力価は、形質導入単位/mL(TU/mL)として記載されることが多い。力価は、ベクター粒子の数を増加させることにより、およびベクター調製物の比活性を増加させることにより増加させることができる。
【0275】
モジュール式構築物
本明細書で開示されるヌクレアーゼ分泌ウイルス産生系および方法には、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、RETROVIRAL VECTORと題する同時係属中の欧州特許出願第17210359.0号に開示されているモジュール式核酸構築物(モジュール式構築物)が組み込まれていてもよい。モジュール式構築物は、レトロウイルスベクターの産生に使用される2つまたはそれよりも多くの核酸を含むDNA発現構築物である。モジュール式構築物は、レトロウイルスベクターの産生に使用される2つまたはそれよりも多くの核酸を含むDNAプラスミドであってもよい。核酸は、例えば、gag-pol、rev、env、ベクターゲノムをコードしてもよい。加えて、パッケージングおよびプロデューサー細胞株の生成用に設計されているモジュール式構築物は、加えて、転写調節タンパク質(例えば、TetR、CymR)および/または翻訳抑制タンパク質(例えば、TRAP)および選択可能なマーカー(例えば、Zeocin(商標)、ヒグロマイシン、ブラストサイジン、ピューロマイシン、ネオマイシン耐性遺伝子)をコードする必要があり得る。
【0276】
DNA発現構築物は、DNAプラスミド(スーパーコイル化、ニック化、線形化)、ミニサークルDNA(線形またはスーパーコイル化)、制限酵素消化および精製によってプラスミド骨格を除去することにより目的の領域のみを含むプラスミドDNA、酵素的DNA増幅プラットフォーム、例えばdoggybone DNA(dbDNA(商標))を使用して生成されるDNAであり、使用される最終DNAは、接近してライゲートされた形態であるかまたは開放切断端を有するように調製(例えば、制限酵素消化)されているDNAであってもよい。
【0277】
本明細書に記載されているように、レトロウイルスベクターを産生するための現行の方法では、レトロウイルス産生に不可欠な遺伝子が一過性トランスフェクション法により別々のプラスミドで産生細胞に導入される遺伝子構築物が利用される。これによりバッチ間変動が創出される場合があり、高価なトランスフェクション剤およびプラスミドによりコストがさらに増加する。そのようなモジュール式構築物を使用することにより、トランスフェクションプロセスに必要なプラスミドの数が低減され、したがって労働力および材料コストに対する負担が軽減される。
【0278】
また、そのようなモジュール式構築物の使用は、効率的なパッケージングおよびプロデューサー細胞株の産生を支援することができる。特に、2つまたはそれよりも多くのレトロウイルスベクター遺伝子を1つのモジュール式構築物に導入することにより、結果的に、最終パッケージング/プロデューサー細胞を創作するために必要な安定的トランスフェクション/形質導入、組込み、および選択ステップの数が低減されることになる。
【0279】
特に、細菌プラスミドがこの機能を実施することができることが見出されたのは驚くべきことであり、それは、大型遺伝子が関与する場合、複数の遺伝子が細菌プラスミドに安定的に組み込まれることを可能にしないだろうと一般に考えられているためである。
【0280】
本発明の態様によると、レトロウイルスベクターを産生するための安定細胞株(パッケージングまたはプロデューサー)は、同じ遺伝子座に位置するレトロウイルス遺伝子の少なくとも2つを含む。下記の表には、本明細書で開示される本発明の安定ベクター産生細胞の同じ遺伝子座に位置させることができ、単一のモジュール式構築物から発現される核酸の組合せ例が列挙されている。各成分核酸の順番も表記されている。Revはそのようなベクターの必須成分ではないため、EIAVに基づくレトロウイルスベクターの産生に好適であると考えられる組合せにはアスタリスク()が記されている。調節エレメントに関連するか、またはベクターにて逆向きおよび/もしくは交互の向きである組合せには、二重アスタリスク(**)が記されている。
【表3-1】

【表3-2】
【0281】
そのようなモジュール式構築物を使用する場合、本発明の細胞またはベクターは、PAC、BAC、YAC、コスミド、またはフォスミドに由来する複製開始点配列を含んでいない。PAC、BAC、YAC、コスミド、およびフォスミドは、大量のDNAを保持するように設計されている人為的に生成された核酸ベクターである。したがって、それらのコア配列は周知であり、当技術分野で規定されている。
【0282】
ウイルスベクター産生系および細胞
一般的に言えば、「ウイルスベクター産生系」または「ベクター産生系」または「産生系」は、ウイルスベクター産生に必要な成分を含む系であると理解されるべきである。
【0283】
本発明の一実施形態では、ウイルスベクター産生系は、そのGagおよびGag/Polタンパク質、およびEnvタンパク質、ならびにベクターゲノム配列をコードする核酸配列を含むレトロウイルスベクター産生系である。産生系は、必要に応じて、Revタンパク質またはその機能的代用物をコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0284】
別の実施形態では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスに由来する。別の実施形態では、レトロウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEV、またはビスナレンチウイルスに由来する。本発明の別の態様は、本発明のモジュール式構築物を含む本発明のレトロウイルスベクター産生系で使用するための1セットのDNA構築物に関する。本発明の一実施形態では、DNA構築物のセットは、Revタンパク質またはその機能的代用物をコードするDNA構築物をさらに含む。
【0285】
本発明の別の態様は、ウイルスベクター成分をコードする、発現カセットおよび/または一部のもしくは全てのモジュール式構築物などの核酸配列を含むレトロウイルスベクター産生細胞に関する。
【0286】
本発明の別の実施形態では、ウイルスベクター産生系は、AAVウイルスベクター産生系またはアデノウイルスベクター産生系である。
【0287】
「ウイルスベクター産生細胞」、「ベクター産生細胞」、または「産生細胞」は、ウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子を産生することが可能な細胞であると理解されるべきである。レトロウイルスベクター産生細胞は、「プロデューサー細胞」または「パッケージング細胞」であってもよい。ウイルスベクター系の1つまたは複数のDNA構築物は、ウイルスベクター産生細胞内に安定的に組み込まれるかまたはエピソームに維持されるかのいずれであってもよい。あるいは、ウイルスベクター系のDNA成分を全て、ウイルスベクター産生細胞に一過性にトランスフェクトしてもよい。さらに別の代替では、成分の一部を安定的に発現する産生細胞に、ベクター産生に必要な残りの成分を一過性にトランスフェクトしてもよい。
【0288】
本明細書で使用される場合、用語「パッケージング細胞」は、レトロウイルスベクター粒子の産生に必要なエレメントを含むが、ベクターゲノムを欠如する細胞を指す。必要に応じて、そのようなパッケージング細胞は、ウイルス構造タンパク質(gag、gag/pol、およびenvなど)を発現することが可能な1つまたは複数の発現カセットを含む。
【0289】
プロデューサー細胞/パッケージング細胞は、任意の好適な細胞型であってもよい。プロデューサー細胞は、一般に哺乳動物細胞であるが、例えば昆虫細胞であってもよい。
【0290】
本明細書で使用される場合、用語「プロデューサー/産生細胞」または「ベクター産出/産生細胞」は、レトロウイルスベクター粒子の産生に必要なエレメントを全て含む細胞を指す。プロデューサー細胞は、安定プロデューサー細胞株であってもまたは一時的に導出されてもいずれでもよく、またはレトロウイルスゲノムが一過性に発現される安定パッケージング細胞であってもよい。
【0291】
ベクター産生細胞は、組織培養細胞株など、in vitroで培養される細胞であってもよい。好適な細胞株としては、これらに限定されないが、マウス線維芽細胞由来細胞株またはヒト細胞株などの哺乳動物細胞が挙げられる。好ましくは、ベクター産生細胞はヒト細胞株に由来する。
【0292】
細胞および産生方法
本発明は、ウイルスベクターを産生するためのプロセスであって、本明細書に記載の核酸配列を細胞(例えば、産生細胞)に導入すること、およびウイルスベクターを産生するために好適な条件下で細胞を培養することを含むプロセスに関する。
【0293】
さらなる態様では、本明細書で開示される本発明は、本発明の任意の方法により産生された複製欠損レトロウイルスベクターを提供する。
【0294】
好適な産生細胞は、適切な条件下で培養すると、ウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子を産生することが可能な細胞である。好適な産生細胞は、一般に、哺乳動物細胞またはヒト細胞、例えば、HEK293T、HEK293、CAP、CAP-T、CHO細胞、またはPER.C6細胞などの真核細胞であるが、例えば、SF9細胞などの昆虫細胞であってもよい。
【0295】
核酸を産生細胞に導入するための方法は、当技術分野で周知であり、以前に記載されている。
【0296】
安定細胞は、パッケージング細胞またはプロデューサー細胞であってもよい。パッケージング細胞からプロデューサー細胞を生成するために、ベクターゲノムDNA構築物を、安定的にまたは一過性に導入してもよい。
【0297】
パッケージング/プロデューサー細胞は、国際公開第2004/022761号に記載のように、パッケージング/プロデューサー細胞の成分、つまりゲノム、gag-pol成分、およびエンベロープの1つを発現するレトロウイルスベクターを好適な細胞株に形質導入することにより生成することができる。
【0298】
あるいは、核酸を細胞にトランスフェクトすることができ、次いで、産生細胞ゲノムへの組込みが希におよびランダムに生じる。トランスフェクション法は、当技術分野で周知の方法を使用して実施することができる。例えば、トランスフェクションプロセスは、リン酸カルシウム、またはLipofectamine(商標)2000CD(Invitrogen、CA)、FuGENE(登録商標)HD、またはポリエチレンイミン(PEI)などの市販の製剤を使用して実施してもよい。あるいは、本発明のモジュール式構築物は、エレクトロポレーションにより産生細胞に導入してもよい。当業者であれば、産生細胞への核酸の組込みを促進する方法を認知しているだろう。例えば、天然で環状の場合、核酸構築物の線形化が助けとなる場合がある。よりランダムでない組込み方法論は、内因性ゲノム内の選択された部位へと組込みを導くために、哺乳動物宿主細胞の内因性染色体と相同性が共有される区域で構成される核酸構築物を含んでいてもよい。さらに、組換え部位が構築物に存在する場合、それらを標的化組換えに使用することができる。例えば、核酸構築物は、Creリコンビナーゼと組み合わせると(つまり、P1バクテリオファージに由来するCre/lox系を使用して)標的化組込みを可能にするloxP部位を含んでいてもよい。あるいはまたは加えて、組換え部位は、att部位(例えば、λファージに由来する)であり、att部位は、ラムダインテグラーゼの存在下で部位指定組込みを可能にする。これは、レトロウイルス遺伝子を、高いおよび/または安定した発現を可能にする宿主細胞ゲノム内の遺伝子座へと標的化することを可能にするだろう。
【0299】
標的化組込みの他の方法は、当技術分野で周知である。例えば、ゲノムDNAの標的化切断を誘導するための方法を使用して、選択された染色体遺伝子座での標的化組換えを促進することができる。これらの方法は、多くの場合、内因性ゲノムに二本鎖切断(DSB)、例えばニックを誘導して、非相同末端結合(NHEJ)などの生理学的機序による切断の修復を誘導する方法または系の使用を含む。切断は、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの部位特異的ヌクレアーゼを使用すること、操作されたcrRNA/tracrRNA(「一本鎖ガイドRNA」)を有するCRISPR/Cas9系を使用して特異的切断を導くこと、および/またはアルゴノート系(例えば、T.thermophilusに由来する)に基づくヌクレアーゼを使用することにより生じてもよい。そのような遺伝子編集型ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼに対して標的化された部位特異的酵素であり、本明細書で開示される本発明の非特異的ヌクレアーゼと同様には分泌されないため、ベクター産生中に残留核酸を非特異的に分解するためのベクター産生細胞において使用するには好適ではない。
【0300】
パッケージング/プロデューサー細胞株は、レトロウイルス形質導入、または核酸トランスフェクション、またはそれらの組合せの方法を使用して、核酸を組み込むことにより生成することができる。産生細胞からレトロウイルスベクターを生成するための方法、および特にレトロウイルスベクターの加工処理は、国際公開第2009/153563号に記載されている。
【0301】
産生細胞は、必要に応じて、RNA結合タンパク質(例えば、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(tryptophan RNA-binding attenuation protein)TRAP)および/またはTetリプレッサー(TetR)タンパク質または代替的調節タンパク質(例えば、CymR)を含んでいてもよい。
【0302】
産生細胞からのレトロウイルスベクターの産生は、トランスフェクション法によるものであってもよく、誘導ステップ(例えば、ドキシサイクリン誘導)を含んでいてもよい安定細胞株からの産生によるものであってもよく、または両方の組合せによるものであってもよい。トランスフェクション法は、当技術分野で周知の方法を使用して実施することができ、例は以前に記載されている。
【0303】
産生細胞、パッケージング細胞株、またはプロデューサー細胞株、または成分をコードするレトロウイルスベクターを一過性にトランスフェクトしたもののいずれかを培養して、細胞およびウイルス数ならびに/またはウイルス力価を増加させる。細胞培養は、それにより、本発明による目的のウイルスベクターの代謝、および/または増殖、および/または分割、および/または産生が可能になるように実施される。これは、これに限定されないが、細胞に、例えば適切な培養培地に栄養素を提供することを含む、当業者に周知の方法により達成することができる。方法は、表面に付着させての増殖、懸濁での増殖、またはそれらの組合せを含んでいてもよい。培養は、例えば、組織培養フラスコ、組織培養マルチウェルプレート、ディッシュ、ローラーボトル、ウェーブバック、またはバイオリアクターにて、バッチ系、流加系、連続系などを使用して実施することができる。細胞培養物によりウイルスベクターの大規模産生を達成するために、当技術分野では、懸濁での増殖が可能な細胞を有することが好ましい。細胞培養に好適な条件は公知である(例えば、Tissue Culture, Academic Press, Kruse and Paterson, editors (1973)、およびR.I. Freshney, Culture of animal cells: A manual of basic technique, fourth edition (Wiley- Liss Inc., 2000, ISBN 0-471-34889-9)を参照。
【0304】
一実施形態では、細胞を、まず組織培養フラスコまたはバイオリアクターで「増量」し、その後、多層培養容器または大型バイオリアクター(50Lよりも大きな)で増殖させて、本明細書で開示される本発明のベクター産出細胞を生成する。
【0305】
別の実施形態では、細胞を付着様式で増殖させて、本発明のベクター産出細胞を生成する。
【0306】
さらに別の実施形態では、細胞を懸濁様式で増殖させて、本発明のベクター産出細胞を生成する。
【0307】
使用
本発明の別の態様は、本発明のウイルスベクターの使用、または本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞または組織の、医学における使用に関する。
【0308】
本発明の別の態様は、それを必要とする標的部位に目的のヌクレオチドを送達するための医薬を調製するための、本発明のウイルスベクター、本発明の産生細胞、または本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞もしくは組織の使用に関する。本発明のウイルスベクターまたは形質導入された細胞のそのような使用は、既に記載のように、治療目的または診断目的であってもよい。
【0309】
本発明の別の態様は、本発明のウイルスベクターにより形質導入された細胞に関する。
【0310】
「ウイルスベクター粒子により形質導入された細胞」は、ウイルスベクター粒子により保持される核酸が移入されている細胞、特に標的細胞であると理解されるべきである。
【0311】
医薬組成物
本発明の別の態様は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、本発明のウイルスベクターまたは本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞もしくは組織を含む医薬組成物に関する。
【0312】
また、本明細書で開示される本発明は、遺伝子療法により個体を治療するための医薬組成物であって、治療有効量のウイルスベクターを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、ヒトまたは動物で使用するためのものであってもよい。
【0313】
組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはアジュバントを含んでいてもよい。医薬担体、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図されている投与経路および標準的薬学的実施を鑑みて行うことができる。医薬組成物は、担体、賦形剤、もしくは希釈剤に加えて、任意の好適な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤、および標的部位へのベクター進入を支援または増加させることができる他の担体剤(例えば、脂質送達系など)を含んでいてもよく、またはそれらであってもよい。
【0314】
適切な場合、組成物は、吸入;坐薬またはペッサリーの形態で;ローション、液剤、クリーム、軟膏、または粉剤の形態で局所的に;皮膚パッチの使用により;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤を含む錠剤の形態で、または単独もしくは賦形剤との混合物のいずれかのカプセル剤もしくはオブール(ovule)で、または矯味矯臭剤もしくは着色剤を
含むエリキシル剤、液剤、もしくは懸濁剤の形態での経口のいずれか1つまたは複数により投与することができ、または組成物は、非経口的に、例えば、海綿体内に、静脈内に、筋肉内に、頭蓋内に、眼内に、腹腔内に、または皮下に注射することができる。非経口投与の場合、組成物は、他の物質、例えば溶液を血液と等張性にするのに十分な塩または単糖を含んでいてもよい無菌水溶液の形態で最も良好に使用することができる。口腔または舌下投与の場合、組成物は、従来様式で製剤化することができる錠剤またはロゼンジの形態で投与することができる。
【0315】
また、本発明のウイルスベクターは、それを必要とする患者に前記標的細胞または組織を移入する前に、標的細胞または標的組織をex vivoで形質導入するために使用してもよい。そのような標的細胞の例は、自己由来T細胞であってもよく、そのような組織の例は、ドナー角膜であってもよい。
【0316】
本発明は、ゲシクルまたはエキソソームの産生に有用である。この点で、ゲシクルは、典型的には、(HEK293由来の(dereived))細胞株でVSV-Gエンベロープを過剰発現させることにより製作され、それによりベシクルが産生される。エキソソームは、細胞から内因的に誘導/発現することができる。ゲシクルまたはエキソソームを、CRISPR-cas9または他の遺伝子編集成分などのRNAおよびタンパク質と共に負荷してもよい。
【0317】
番号付き段落
本明細書には、ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解するための、ヌクレアーゼを分泌するウイルスベクター産生系およびその方法が開示される。そのようなウイルスベクター産生系は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含み、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する。別のそのようなウイルスベクター産生系は、1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むヌクレアーゼヘルパー細胞を含み、ヌクレアーゼは、1)の産生細胞および2)のヘルパー細胞の共培養物で発現および分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する。
【0318】
本発明の態様を、番号付き段落セット1として示されている番号付き段落1~26により以下に記述するものとする。
【0319】
番号付き段落セット1
1.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含むウイルスベクター産生系であって、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、ウイルスベクター産生系。
【0320】
2.1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むヌクレアーゼヘルパー細胞を含むウイルスベクター産生系であって、ヌクレアーゼは、1)の産生細胞および2)のヘルパー細胞の共培養物で発現および分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、ウイルスベクター産生系。
【0321】
3.ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列をウイルスベクター産生細胞にトランスフェクトする(接触させると記載されることもある)ことを含み、ヌクレアーゼは産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0322】
4.ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、2)ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と接触させることを含み、ヌクレアーゼは、ヘルパー細胞で発現され、産生細胞とヘルパー細胞との共培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0323】
5.ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、2)ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞に由来する液体供給材料と接触させることを含み、ヌクレアーゼは、細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0324】
6.細胞培養物は、少なくとも約5リットルの容積の培地を含む、請求項1~5のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0325】
7.細胞培養物は、少なくとも約50リットルの容積の培地を含む、段落1~6のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0326】
8.産生細胞は、HEK293細胞またはその派生物である、段落1~7のいずれか一段落に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0327】
9.HEK293産生細胞は、HEK293T細胞である、段落8に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0328】
10.ウイルスベクター成分は、目的のヌクレオチド(NOI)を含む、段落1~9のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0329】
11.ウイルスベクター成分は、レトロウイルスベクター成分である、段落1~10のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0330】
12.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、ヌクレアーゼは、ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、産生細胞は、真核生物産生細胞である、産生細胞。
【0331】
13.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼ融合タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、ヌクレアーゼ融合タンパク質は、エンドヌクレアーゼドメインに融合されたエキソヌクレアーゼドメインを含み、ヌクレアーゼ融合タンパク質は、ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、産生細胞は、真核生物産生細胞である、産生細胞。
【0332】
14.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含むウイルスベクター産生系を含む細胞培養デバイスであって、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、細胞培養デバイス。
【0333】
15.真核細胞の分泌経路を介して発現される、細胞保持および/または細胞付随の増加を示す修飾ヌクレアーゼであって、そのC末端に保持シグナルを含む修飾ヌクレアーゼ。
【0334】
16.ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約1単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0335】
17.ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約10単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0336】
18.ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約100単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0337】
19.ヌクレアーゼ活性は、ウイルスベクター産生細胞により供給される、段落16~18に記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0338】
20.ヌクレアーゼ活性は、ヌクレアーゼヘルパー細胞により供給される、段落16~18に記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0339】
21.ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約10単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
【0340】
22.ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約100単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
【0341】
23.ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約2000単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
【0342】
24.ヌクレアーゼ発現カセットが、強力なプロモーター、好ましくはCMVプロモーターを利用する、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0343】
25.ヌクレアーゼヘルパー細胞は、酪酸ナトリウム追加補充の時点または追加補充後に主ウイルスベクター産生容器に添加される、ヌクレアーゼヘルパー細胞を利用する先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0344】
26.ウイルスベクター産生容器内のヌクレアーゼの発現は、さらなるヌクレアーゼ処理を必要とせずに下流加工処理の使用を可能にする、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0345】
本発明のこれらのおよび他の態様を、番号付き段落セット2として示されている番号付き段落1~82により以下に記述するものとする。
【0346】
番号付き段落セット2
1.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含むウイルスベクター産生系であって、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、ウイルスベクター産生系。
【0347】
2.1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むヌクレアーゼヘルパー細胞を含むウイルスベクター産生系であって、ヌクレアーゼは、1)の産生細胞および2)のヘルパー細胞の共培養物で発現および分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、ウイルスベクター産生系。
【0348】
3.ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列をウイルスベクター産生細胞にトランスフェクトすること(接触させると記載されることもある)を含み、ヌクレアーゼは産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0349】
4.ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、2)ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と接触させることを含み、ヌクレアーゼは、ヘルパー細胞で発現され、産生細胞とヘルパー細胞との共培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0350】
5.ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、2)ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞に由来する液体供給材料と接触させることを含み、ヌクレアーゼは、細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0351】
6.ウイルスベクターを産生するための改良された方法において、改良は、核酸配列をウイルスベクター産生細胞に導入することを含み、核酸配列は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードし、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0352】
7.ウイルスベクターを産生するための改良された方法において、改良は、ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と共培養物中で接触させることを含み、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
【0353】
8.細胞培養物は、6.5~7.2のpH範囲に維持される、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0354】
9.細胞外ヌクレアーゼは、SmNucA、VsEndA、VcEndA、およびBacNucBからなる群より選択される、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0355】
10.ヌクレアーゼは、細胞外ヌクレアーゼである、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0356】
11.ヌクレアーゼは、糖非特異的ヌクレアーゼである、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0357】
12.ヌクレアーゼは、配列番号3のSerratia marcescensヌクレアーゼAまたは配列番号3と少なくとも90%配列同一性を有するその改変体を含む、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0358】
13.ヌクレアーゼは、配列番号1のVibrio choleraeエンドヌクレアーゼIまたは配列番号1と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0359】
14.ヌクレアーゼは、配列番号5のVcEndA-12glc、配列番号6のVcEndA-123glc、配列番号7のVcEndA-124glc、配列番号8のVcEndA-134glc、配列番号9のVcEndA-13glc、配列番号10のVcEndA-14glc、および配列番号11のVcEndA-1glcからなる群より選択されるヌクレアーゼ改変体である、段落13に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0360】
15.ヌクレアーゼは、配列番号11のヌクレアーゼ改変体VcEndA-1glcである、段落13に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0361】
16.ヌクレアーゼは、塩活性ヌクレアーゼを含む、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0362】
17.塩活性ヌクレアーゼは、配列番号2のVibrio salmonicidaエンドヌクレアーゼIまたは配列番号2と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、段落16に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0363】
18.ヌクレアーゼは、配列番号4のBacNucBまたは配列番号4と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、段落1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0364】
19.ヌクレアーゼは、天然または非天然N末端分泌シグナルを含む、段落1~18のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0365】
20.ヌクレアーゼをコードする核酸配列は、潜在的なスプライス部位および/または不安定なエレメントを除去するように配列最適化されている、段落1~18のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0366】
21.ヌクレアーゼをコードする核酸配列は、産生細胞での発現のためにコドン最適化されている、段落1~18のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0367】
22.産生系および/または方法は、1つまたは複数の追加のヌクレアーゼをさらに含む、段落1~21のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0368】
23.ヌクレアーゼは、1つまたは複数の追加のヌクレアーゼの少なくとも1つに融合されている、段落22に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0369】
24.細胞培養物は、少なくとも約5リットルの容積の培地を含む、段落1~23のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0370】
25.細胞は、懸濁しているかまたは付着している、段落1~24のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0371】
26.細胞培養物は、無血清である、段落1~25のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0372】
27.産生細胞は、真核細胞である、段落1~26のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0373】
28.産生細胞は、哺乳動物細胞である、段落27に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0374】
29.産生細胞はヒト産生細胞である、段落28に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0375】
30.産生細胞は、HEK293細胞またはその派生物である、段落1~29のいずれか一段落に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0376】
31.HEK293産生細胞は、HEK293T細胞である、段落30に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0377】
32.ウイルスベクター成分は、目的のヌクレオチド(NOI)を含む、段落1~31のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0378】
33.ウイルスベクター成分は、レトロウイルスベクター成分である、段落1~32のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0379】
34.レトロウイルスベクター成分は、レンチウイルスベクター成分である、段落33に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0380】
35.ウイルスベクター成分は、i)gag-pol;ii)env;iii)必要に応じて、レトロウイルスベクターのRNAゲノム;およびiv)必要に応じて、revまたはその機能的代用物を含む、段落34に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0381】
36.核酸配列の少なくとも2つは、同じ遺伝子座に位置するウイルスベクター成分をコードするモジュール式構築物である、段落35に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0382】
37.核酸配列の少なくとも2つは、ウイルスベクター成分を逆向きおよび/または交互の向きにコードするモジュール式構築物である、段落35に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0383】
38.核酸配列の少なくとも2つは、gag-polおよび/またはenvをコードするモジュール式構築物であり、モジュール式構築物は、少なくとも1つの調節因子エレメントに関連している、段落35に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0384】
39.envは、VSV-G envである、段落35~38に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0385】
40.ヌクレアーゼは、一過性トランスフェクション後に細胞から発現および分泌される、段落1~39のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0386】
41.ヌクレアーゼは、細胞の安定的組込み後に細胞から発現および分泌される、段落1~39のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0387】
42.ヌクレアーゼの発現は、誘導性または条件付きであり、ヌクレアーゼをコードする核酸は、誘導性または条件付きプロモーターまたは調節エレメントを含む、段落41に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0388】
43.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、ヌクレアーゼは、ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、産生細胞は、真核生物産生細胞である、産生細胞。
【0389】
44.ヌクレアーゼはエンドヌクレアーゼである、段落43に記載の細胞。
【0390】
45.エキソヌクレアーゼをコードする核酸配列をさらに含む、段落44に記載の細胞。
【0391】
46.エンドヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼに融合されている、段落45に記載の細胞。
【0392】
47.ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼである、段落43に記載の細胞。
【0393】
48.エキソヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼに融合されている、段落48に記載の細胞。
【0394】
49.一過性産生細胞である、段落43に記載の細胞。
【0395】
50.安定産生細胞である、段落43に記載の細胞。
【0396】
51.ヌクレアーゼ発現および分泌は、安定産生細胞での誘導性発現および分泌である、段落50に記載の細胞。
【0397】
52.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼ融合タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、ヌクレアーゼ融合タンパク質は、エンドヌクレアーゼドメインに融合されたエキソヌクレアーゼドメインを含み、ヌクレアーゼ融合タンパク質は、ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、産生細胞は、真核生物産生細胞である、産生細胞。
【0398】
53.エンドヌクレアーゼは、VcEndAまたはその改変体である、段落52に記載の細胞。
【0399】
54.エンドヌクレアーゼは、配列番号11のVcEndA-1glcである、段落52に記載の細胞。
【0400】
55.1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含むウイルスベクター産生系を含む細胞培養デバイスであって、ヌクレアーゼは、産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する細胞培養デバイス。
【0401】
56.撹拌タンクバイオリアクターまたはウェーブバッグまたはiCELLis(登録商標)バイオリアクターである、段落46に記載の細胞培養デバイス。
【0402】
57.ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解することが可能な分泌ヌクレアーゼの改変体であって、配列番号11のアミノ酸配列を含む改変体。
【0403】
58.真核細胞の分泌経路を介して発現される、細胞保持および/または細胞付随の増加を示す修飾ヌクレアーゼであって、そのC末端に保持シグナルを含む修飾ヌクレアーゼ。
【0404】
59.修飾ヌクレアーゼは、小胞体(ER)および/またはゴルジ体区画に局在化し、それにより対応する未修飾ヌクレアーゼの細胞保持と比較して、細胞保持の増加がもたらされる、段落58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
【0405】
60.修飾ヌクレアーゼは、ER保持欠損相補群のER受容体に結合する、段落58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
61.保持シグナルは、コンセンサス[KRHQSA]-[DENQ]-E-LまたはKKXXのC末端にある、段落58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
【0406】
62.保持シグナルは、コンセンサスKDELのC末端にある、段落58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
【0407】
63.段落58に記載の修飾ヌクレアーゼを発現する真核細胞。
【0408】
64.段落63に記載の細胞を含むウイルスベクター産生系。
【0409】
65.段落1~42のいずれか一段落に規定されるウイルス産生細胞を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞。
【0410】
66.段落1~42のいずれか一段落に規定されるウイルス産生細胞を含む、段落43またはそれに従属するいずれかの段落に記載の産生細胞。
【0411】
67.段落1~42のいずれか一段落に規定されるウイルス産生細胞を含む、段落52またはそれに従属するいずれかの段落に記載の産生細胞。
【0412】
68.段落1~42のいずれか一段落に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
【0413】
69.段落43またはそれに従属するいずれかの段落に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
【0414】
70.段落52またはそれに従属するいずれかの段落に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
【0415】
71.段落57~62のいずれか一段落に規定されるヌクレアーゼを含む、段落1~42のいずれか一段落に記載のウイルスベクター産生系または方法。
【0416】
72.ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約1単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0417】
73.ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約10単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0418】
74.ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約100単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0419】
75.ヌクレアーゼ活性は、ウイルスベクター産生細胞により供給される、段落72~74に記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0420】
76.ヌクレアーゼ活性は、ヌクレアーゼヘルパー細胞により供給される、段落72~74に記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0421】
77.ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約10単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
【0422】
78.ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約100単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
【0423】
79.ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約2000単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
【0424】
80.ヌクレアーゼ発現カセットは、CMVなどの強力なプロモーターを利用する、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0425】
81.ヌクレアーゼヘルパー細胞は、酪酸ナトリウム追加補充の時点または追加補充後に主ウイルスベクター産生容器に添加される、ヌクレアーゼヘルパー細胞を利用する先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0426】
82.ウイルスベクター産生容器内のヌクレアーゼの発現は、さらなるヌクレアーゼ処理を必要とせずに下流加工処理の使用を可能にする、先行する段落のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
【0427】
本発明の種々の好ましい特徴および実施形態を、非限定的な例により以下に記述するものとする。
【実施例0428】
(実施例1)
ウイルスベクター産生細胞培養中に残留DNAを低減させるための幅広く多岐にわたるヌクレアーゼをコードする発現構築物
Serratia marcescensエンドヌクレアーゼA(SmNucA)、VsEndA、およびBacNucBの発現プラスミドを図3のように構築した。構築物は全て、SV40プロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含んでいた。ORFを、コドン最適化し(Homo sapiens)、それらのC末端を6×ヒスチジンでタグ付けした(H6)。SmNucA発現プラスミドは、それ自体の細菌性分泌配列を有する野生型smNucAをコードしていたか、またはその細菌性分泌配列がヒトアルブミンまたはVSV-Gのものと置き換えられていたか、または加えて表記の位置にNxS/Tシークオン変異を含んでいた。VsEndAまたはVcEndA発現プラスミドは、それ自体の細菌性分泌配列を有する野生型ヌクレアーゼをコードしていたか、またはその細菌性分泌配列がヒトアルブミンのものと置き換えられていたか、または加えてT121V、N130D、S135RにNxS/Tシークオン変異を含んでいた。BacNucB発現プラスミドは、それ自体の細菌性分泌配列を有する野生型BacNucBをコードしていたか、または加えて、表記の位置にy>N変異を含み、NxS/Tシークオンがもたらされていた。
【0429】
(実施例2)
HEK293T細胞からのヌクレアーゼ発現および分泌が、培養培地中の残留DNA低減と相関したことの実証
HEK293T細胞に、異なる比のスタッファーDNA(pBluescript)およびタンパク質検出を可能にするC末端Hisタグに融合されたSmNucAをコードするpSV40-smNucAH6を使用して、一定量のプラスミドDNA(合計、μg)をトランスフェクトした。細胞溶解物および培養培地を、Hisタグ(内因性Hisタグ付きタンパク質「TRAPH6」をローディング対照として使用した)に対して免疫ブロットすることにより分析し、これは、SmNucAH6が、用量依存的な様式で発現され培養物に分泌されたことを実証した。清澄化培養上清を、PicoGreenアッセイにより残留DNAについて分析した。これは、DNA検出の低減が、培地にSmNucAH6が存在する場合にのみ生じたことを実証した。結果は図4に示されている。
【0430】
(実施例3)
レンチウイルスベクター産生の産生中のC末端ヒスチジンタグ付きおよびタグ無し分泌ヌクレアーゼ
付着または懸濁いずれかのHEK293T細胞に、分泌ヌクレアーゼプラスミドを総pDNAの10%投入量で一過性に共トランスフェクトすることによりHIV-1に基づくレンチウイルスベクターを産生した。レンチウイルスベクター回収物を、「未処理」のままにしたか、または清澄化前に1時間にわたってBenzonase(登録商標)で処理した。分泌ヌクレアーゼ培養物は、Benzonase(登録商標)で処理しなかった。濾過した培養培地を、PicoGreenアッセイにより分析した。分泌ヌクレアーゼは、培養培地にてBenzonase(登録商標)と同等かまたはそれよりも良好なDNA低減をもたらした。結果は、図5に示されている。
【0431】
(実施例4)
真核生物ERシグナルペプチドは、smNucAの細菌性分泌ペプチドを置き換えることができる
付着HEK293T細胞に、分泌ヌクレアーゼプラスミドを総pDNAの1%投入量で一過性に共トランスフェクトすることによりHIV-1に基づくレンチウイルスベクター(HIV-CMV-GFP)を産生した。SmNucA ORFは、その天然細菌性分泌シグナル(天然)またはヒトアルブミンERシグナルペプチド(HuアルブミンER-SP)またはVSV-G ERシグナルペプチド(VSV-G ER-SP)のいずれかを含んでいた。レンチウイルスベクター回収物はいずれも、Benzonase(登録商標)で処理しなかった。濾過した培養培地を、PicoGreenアッセイにより分析し(黒色バー)、HEK293T細胞を形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことによりレンチウイルスベクターを滴定した。結果は、図6に示されている。
【0432】
(実施例5)
ベクター成分の一過性トランスフェクション中の付着HEK293T細胞培養物でのレンチウイルスベクター生成中の多岐にわたる分泌ヌクレアーゼ
付着HEK293Tに、SmNucAH6またはVsEndAH6ヌクレアーゼプラスミドのいずれかを総pdNAの1%投入量で一過性に共トランスフェクトすることによりHIV-1に基づくレンチウイルスベクター(HIV-CMV-GFP)を産生した。レンチウイルスベクター回収物を、「未処理」のままにしたか、またはベクター回収前に1時間にわたってBenzonase(登録商標)で処理した。分泌ヌクレアーゼ培養物は、Benzonase(登録商標)で処理しなかった。濾過した培養培地を、PicoGreenアッセイにより分析し(黒色バー)、HEK293Tを形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことによりLVを滴定した。結果は、図7に示されている。
【0433】
(実施例6)
付着安定プロデューサー細胞株培養物でのレンチウイルスベクター産生中の多岐にわたる分泌ヌクレアーゼ
プロデューサー細胞株に、SmNucAH6またはVsEndAH6ヌクレアーゼプラスミドのいずれかを総pDNAの1%投入量で(pBluescriptを標準スタッファーとして添加した)一過性にトランスフェクトすることにより、HIV-1に基づくレンチウイルスベクター(HIV-CMV-GFP)を産生した。トランスフェクションのおよそ18時間後、ドキシサイクリン(1000ng/ml最終濃度)を添加することにより培養物を誘導した。それにより、CMV-tetOプロモーターにより駆動されたパッケージング成分の発現がもたらされた(GFPゲノムが構成的に発現された)。濾過した培養培地を、PicoGreenアッセイにより分析し(黒色バー)、HEK293Tを形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことによりLVを滴定した。結果は、図8に示されている。
【0434】
(実施例7)
懸濁細胞培養物でのレンチウイルスベクター産生中の多岐にわたる分泌ヌクレアーゼ
HIV-1に基づくレンチウイルスベクター(HIV-CMV-GFP)を、懸濁されているHEK293T細胞で産生した。細胞に、SmNucAH6またはVsEndAH6ヌクレアーゼプラスミドのいずれかを総pDNAの5%投入量で一過性に共トランスフェクトした。レンチウイルスベクター回収物を、「未処理」のままにしたか、またはベクター回収前に1時間にわたってBenzonase(登録商標)で処理した。分泌ヌクレアーゼ培養物は、Benzonase(登録商標)で処理しなかった。濾過した培養培地をPicoGreenアッセイで分析し(黒色バー)、精製した全DNAを、18S DNAに対するqPCRにより産生細胞DNAについて分析した(明灰色バー)。HEK293Tを形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことによりレンチウイルスベクター上清を滴定した(暗灰色バー)。濃縮ベクター上清をSDS-PAGEおよび免疫ブロットに供し、抗Hisタグ抗体を使用して分泌ヌクレアーゼタンパク質を検出した。結果は、図9に示されている。
【0435】
(実施例8)
BacNucBおよびBacNucB改変体を使用したレンチウイルスベクター産生懸濁無血清細胞培養物での残留プラスミドDNAの除去
Bacillus種BacNucBタンパク質(配列番号4)は、一切のNxS/Tシークオンを含んでおらず、したがって真核細胞の分泌経路に標的化される場合、N-グリコシル化されない場合がある。したがって、N-グリコシル化の欠如が分泌レベルを妨げる場合があるため、ベクター産生培養物からの残留DNAの除去にBacNucBを有効に使用することができるか否かは不明だった。図2に概説されているワークフローを、BacNucB(配列番号4)の一次配列に適用した。配列を分析し、TMHMM(CBS)を使用して、シグナルペプチド(TM(膜貫通)であると予測される)のC末端側にTMドメインは存在しないと決定した。SignalP(CBS)によるBacNucBの分析は、細菌性分泌ペプチドが、その切断が完全な成熟ヌクレアーゼを生成すると予測されるERシグナルペプチドとして機能すると予測されることを確認した。より小さな折り畳み構造を妨害せずにNxS/TモチーフをBacNucBタンパク質配列に導入することができる領域を正確に示すYAPIN(Centre for integrative Bioinformatics VU(IBIVU))によるさらなる分析は、アルファヘリックス、ベータストランド、およびコイルの領域を予測した。そのため、BacNucBの以下の4つの改変体を特定した:P43N(シークオン=NAS)は改変体「N1」であり、G61N(シークオン=NHS)は「N2」であり、V65N(シークオン=NCT)は改変体「N3」であり、D133N(シークオン=NGT)は改変体「N4」である。43、61、65、および133に「N」変異を有するBacNucBの一次配列を、分析のためにNetNGlyc(CBS)に入力した。4つのNxS/tシークオンは全て、閾値(0.5)を上回るスコアを示し、N65およびN133改変体は、機能性向上の最も高い可能性を達成した。結果は、図10に示されている。
【0436】
上記の分析に基づき、BacNucBの4つの改変体(N1、N2、N3、およびN4)を、天然タンパク質配列内の4つのYxS/T部位にてY残基をNに変異させることによってその一次アミノ酸配列にNxS/Tシークオンを挿入することにより生成した。これは、潜在的なN-グリコシル化がタンパク質フォールディングに影響を及ぼさないと考えられる可能性を最大化するために、二次折り畳み構造に参加しないと予測される位置で行った。
【0437】
BacNucB発現プラスミドは全て、検出を容易にするためにそれらのC末端にHisタグをつけた。懸濁無血清HEK293T細胞に、HIV-CMV-GFPベクター成分およびヌクレアーゼプラスミドを総pDNAの5%投入量でトランスフェクトした。ベクター回収物からの精製全DNAを、KanR配列に対するqPCRにより残留プラスミドについて分析した(黒色バー)。HEK293T細胞を形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことによりレンチウイルスベクター上清を滴定した(灰色バー)。濃縮ベクター上清を、抗Hisタグ抗体を使用するSDS-PAGEおよび免疫ブロットに供して、分泌ヌクレアーゼタンパク質を検出した。データは、残留プラスミドDNAが、BacNucBH6によりわずかに除去されたに過ぎなかったが、N-グリカン改変体の2つは、残留プラスミドDNAの除去増強を示したことを実証する。なお、VsEndAH6をコードする発現プラスミドは、残留DNA除去の点でBacNucBをコードする全ての発現プラスミドよりも優れていた。
【0438】
(実施例9)
VcEndA改変体を使用した懸濁無血清細胞培養物でのレンチウイルスベクター産生における残留プラスミドDNAの除去
VcEndAおよびVsEndAは、それらのアミノ酸配列(分泌形態)が68%同一性を共有する。VcEndAは、150~200mM塩(つまり、典型的な真核細胞培養物の塩濃度に近い)で最適な活性を有することが示されており、pH6.5およびpH7ではVsEndAよりも活性である。VcEndAの分析は(図2に示されているワークフローに従って)、その4つのNxS/Tシークオンの3つが、VsEndAに存在しないことを明らかにする。3つ全ての位置のこれらのシークオンを切除することにより、「1glc」VcEndA改変体を生成した(図3に示されているように)。ヒトアルブミンERシグナルペプチドならびに必要に応じてC末端Hisタグを有する追加のVcEndA改変体を生成した。(凡例:wt=VcEndA、1=VcEndA-1glc、2=AlbVcEndA、3=AlbVcEndA-1glyc;4、5、6、7=それぞれ、wt、1、2、3のHisタグ付きバージョン。ヌクレアーゼプラスミドを総投入pDNAの5%で共トランスフェクトした懸濁無血清培養物で、HIV-CMV-GFPベクターを製作した。HEK293T細胞を形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことによりレンチウイルスベクター上清を滴定した(バー)。濃縮ベクター上清(VcEndA改変体4~7)を、抗HisTag抗体を使用するSDS-PAGE/免疫ブロットに供して、分泌ヌクレアーゼタンパク質ならびにVSV-G(レンチウイルス(lentiriviral)ベクタービリオン)を検出した。また、産生後細胞溶解物を、ヌクレアーゼ発現についてプローブした。ベクター上清に由来する残留DNAをアガロース電気泳動法により可視化した。VcEndA(wt)は、培養培地への分泌が不良だったが、「1glc」改変体は、効率的に分泌され、残留DNAの効率的な除去につながる。結果は、図12に示されている。
【0439】
(実施例10)
0.5L規模でのレンチウイルスベクター産生バイオリアクターからの残留DNAの分解
総プラスミド投入量の5%のpBluescript(図13ではSTD-Benzonase(登録商標)と称される)またはpSV40-VsEndAH6のいずれかと共に、HIV-1に基づくレンチウイルスベクター成分(GFP発現ゲノム)をトランスフェクトした懸濁無血清適応HEK293T細胞を、6つの0.5リットル(L)バイオリアクターおよび三連のバイオリアクターに播種した。トランスフェクションの20時間後、酪酸ナトリウム(NaBut)を、全てのバイオリアクターに10mMの最終濃度で添加した。NaBut誘導の4時間後、試料を採取した(バイオリアクター[NaBut4時間後])。ベクター回収1時間前に、pBluescriptを共トランスフェクトしたバイオリアクターに、Benzonase(登録商標)を5U/ml最終濃度で接種した。pSV40-VsEndAH6を共トランスフェクトしたバイオリアクターは、未処理のままにした。次いで、三連のバイオリアクターに由来するバルク回収物をプールして、約1Lの回収物を生成し、0.45μm濾過に供し、分析のために試料を採取した(CL回収物)。このプール化は、典型的な大規模下流プロセスを反映する装置/流速の使用を可能にする規模で下流プロセスを実施することができるように行った。物質をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーに供し、試料を収集した後(IEX通過画分、IEX洗浄、IEX溶出、および2M塩でのIEXカラムクリーニング)、中空繊維カートリッジを使用したダイアフィルトレーション/限外濾過を使用してさらに加工処理した。第1のステップは、緩衝液交換を可能にし(HFF-Benzonase(登録商標)前)、次いで第2のヌクレアーゼステップとして、400U/mlのBenzonase(登録商標)を、「標準Benzonase(登録商標)」加工処理ベクターおよびVsEndAH6処理ベクターの両方に添加した。最後に、緩衝液交換を生じさせて、Benzonase(登録商標)を除去した(HFF-Benzonase(登録商標)後)。試料を滴定して、レンチウイルスベクター力価(GFP/FACS;TU/ml)を生成し、残留DNAを精製し、KanR配列に対するqPCRによるプラスミドコピー数分析に供した。各ステップでの合計TUおよび合計kanRコピーを、各ステップでの総容積を考慮する(factoring)ことにより生成した。結果は、図13に示されている。データは、分泌VsEndAAH6が、バイオリアクターでは、トランスフェクション24時間後に早くも10分の1にKanR検出を低減させるが、レンチウイルスベクター力価は、バイオリアクターにおいておよび下流加工処理中に影響を受けないままであることを示す。Benzonase(登録商標)処理回収物は、VsEndAH6と比較してわずかにより高いとは言え同様のレベルにKanR検出を低減すると考えられたが、下流プロセスにわたるKanR検出は、VsEndAH6物質のほうがより低かった。これは、両手法を比較すると同様のKanRコピー数がCL回収物で検出されたが、2つの条件の間には質的な違いがあり、つまり、VsEndAH6物質中の残留DNAは、サイズがより小さくなっている可能性が高く(この証拠は、図14を参照)、下流プロセス中に除去することがより容易である。
【0440】
(実施例11)
5L規模のレンチウイルスベクター産生バイオリアクターからの残留DNAの分解
GFPを発現するHIV-1に基づくレンチウイルスベクターを、0.5Lバイオリアクター(実施例10)について記載されているものと同様の様式だが、5L規模の単一バイオリアクターで産生した。また、SAN-HQを、Benzonase(登録商標)および分泌ヌクレアーゼ手法(pSV40-VsEndAH6を総プラスミド投入量の5%で共トランスフェクトした)と並行して試験した。図14Aは、各プロセスステップでの合計レンチウイルスベクターTUおよび検出可能なプラスミド(KanR)を示し、図14Bは、上流および下流のプロセスステップからの濃縮試料をゲル電気泳動法により分析した(臭化エチジウムでDNAを染色)ことを示す。図13に示されているように、発現プラスミドから発現された分泌ヌクレアーゼは、市販のヌクレアーゼ(Benzonase(登録商標)など)と比較して、プラスミドDNAの同等のまたはより良好な低減を達成するが、加えて、全DNA(産生細胞DNAを含むことになる)は、HFFカートリッジでの最終のヌクレアーゼステップによってより効率的に除去されると考えられるより小さな断片へと消化される。
【0441】
(実施例12)
tetR調節ヌクレアーゼ発現プラスミドを使用したレンチウイルスベクター産生培養物内の残留DNAの分解
ベクター成分、および総プラスミドDNAの1%または5%投入量のいずれかのpCMV-TO-VsEndAH6を無血清懸濁適応HEK293T.tetR細胞に一過性にトランスフェクトすることにより、GFPをコードするHIV-1に基づくベクターを生成した(図15)。ヌクレアーゼプラスミドを受け取っていない培養物に、pBluescriptを共トランスフェクトした。トランスフェクションのおよそ20時間後、培養物は全て、酪酸ナトリウムのみを受け取った5%pCMV-TO-VsEndAH6をトランスフェクトした複製セットの培養物(無dox;レーン2)を除いて、酪酸ナトリウムおよび1000ng/mLドキシサイクリンで誘導した(レーン1、3~6;存在する場合は、VsEndAH6発現を誘導するために)。対照培養物は、未処理のままにしたか(無Nuc)、または回収1時間前に5U/mL最終濃度のBenzonase(登録商標)もしくはSANで処理したかのいずれかだった。培養物は全て、回収1時間前に2mM最終濃度のMgClを受け取った。条件は全て三連で実施した。回収時に、産生細胞を遠心分離により除去し、上清を濾過(0.22μm)した後、HEK293T細胞を形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことにより滴定した。三連の培養物の各々に由来する上清をプールし、約2mLを、3KカットオフAmicon-15デバイスを使用した遠心分離により0.12mLに濃縮し、この物質の50%を、残留DNA電気泳動(臭化エチジウム)のために2%アガロースゲルにロードした。データは、tetR調節ヌクレアーゼ発現を用いて、ヌクレアーゼ発現を時間的に制御可能にすることができ、トランスフェクション20時間後のドキシサイクリン添加は、市販ヌクレアーゼと比較して、残留DNAの除去向上により示される十分な活性レベルの分泌ヌクレアーゼにつながることを示す。分泌ヌクレアーゼの存在下で産生されたレンチウイルスベクターの力価は全て、1×10TU/mLを上回り、ベクターの生産力に対する影響が最小限であることが実証された。
【0442】
(実施例13)
分泌ヌクレアーゼを発現するヘルパー細胞との共培養によるレンチウイルスベクター産生培養物内の残留DNAの分解。
ベクター成分を無血清懸濁適応HEK293T-1.65S細胞に一過性にトランスフェクトすることにより、GFPをコードするHIV-1に基づくベクターを産生した。並行しておよび同じ規模で、無血清懸濁適応HEK293T.tetR細胞に、tetR調節ヌクレアーゼプラスミドpCMV-TO-VsEndAH6またはpCMV-TO-smNucAH6をトランスフェクトした。トランスフェクションのおよそ20時間後、培養物に、酪酸ナトリウムおよび1000ng/mL doxと共に10%のヘルパー細胞培養物を接種し、ヘルパー細胞からのヌクレアーゼ発現を誘導した。対照培養物は、未処理のままにしたか(無Nuc)、または回収1時間前に5U/mLの最終濃度のBenzonase(登録商標)またはSANで処理したかのいずれかだった。培養物は全て、回収1時間前に2mMの最終濃度のMgClを受け取った。条件は全て三連で実施した。回収時に、産生細胞を遠心分離により除去し、上清を濾過(0.22μm)した後、HEK293T細胞を形質導入し、続いてフローサイトメトリーを行うことにより滴定した。三連の培養物の各々に由来する上清をプールし、約2mLを、3KカットオフAmicon-15デバイスを使用した遠心分離により0.12mLに濃縮し、この物質の50%を、残留DNA電気泳動(臭化エチジウム)のために2%アガロースゲルにロードした。結果は、図16に示されている。データは、ヌクレアーゼ発現ヘルパー細胞をベクター産生細胞と共に共培養することができ、市販ヌクレアーゼと比較して残留DNAの除去が向上されることにより示される十分な活性レベルの分泌ヌクレアーゼが可能になることを示す。分泌ヌクレアーゼの存在下で産生されたレンチウイルスベクターの力価は全て、1×10TU/mLを上回り、ベクターの生産力に対する影響がないことを示した。
【0443】
(実施例14)
凍結解凍ステップを必要とする、ベクター産生中に残留核酸を分解するための、分泌ヌクレアーゼを発現するAAVに基づくおよびアデノウイルス基づくベクター産生系
A.一過性トランスフェクションによるAAVベクターの産生において分泌ヌクレアーゼを使用するためのワークフロー:
1.産生細胞(例えば、HEK293)を培養容器に播種する(付着または懸濁)
2.ベクター成分をヌクレアーゼプラスミドと共に一過性に共トランスフェクトする:
i.ベクター成分pAAVゲノム:pRepCap:pHelper(例えば、1:1:1比)+総pDNAの亜画分として共トランスフェクトされるpNucleaseの多プラスミドトランスフェクション
ii.リポフェクタミンまたはPEIなどの試薬によるトランスフェクション
3.トランスフェクトした細胞培養物を、数日間(例えば、2~4日間)インキュベーションする
4.細胞を溶解する:
i.培養培地での産生細胞の直接凍結解凍、または
ii.産生細胞の濃縮、続いて化学的溶解または物理的溶解、例えば微少溶液操作(microfluidisation)/凍結解凍
iii.分泌ヌクレアーゼによる夾雑性DNAの消化を可能にする制限されたインキュベーション期間
5.バルク物質を濾過および必要に応じて凍結する
6.下流の精製/濃縮、例えば、クロマトグラフィー(イオン交換)、ダイアフィルトレーション/限外濾過および/またはサイズ排除。
【0444】
B.アデノウイルスE1発現細胞での増幅によるアデノウイルスベクター産生において分泌ヌクレアーゼを使用するためのワークフロー:
1.産生細胞(例えば、HEK293)を培養容器に播種する(付着または懸濁)
2.アデノウイルスベクターシードストックをMOI=1で接種する
3.培養物を、24~72時間または約50%可視細胞変性効果(cpe)までインキュベートする
4.細胞を溶解する:
i.培養培地での産生細胞の直接凍結解凍、または
ii.産生細胞の濃縮、続いて化学的溶解または物理的溶解、例えば、微少溶液操作/凍結解凍
iii.分泌ヌクレアーゼによる夾雑性DNAの消化を可能にする制限されたインキュベーション期間
5.バルク物質を濾過および必要に応じて凍結する
6.必要に応じて、ステップ1~5を逐次的に大規模化する
7.下流の精製/濃縮、例えば、クロマトグラフィー(イオン交換)、ダイアフィルトレーション/限外濾過および/またはサイズ排除。
【0445】
(実施例15)
レンチウイルスベクター産生無血清懸濁培養物にて残留DNAを分解するための、NxS/Tシークオン切除変異を含むVcEndA改変体の生成および評価。
GFPをコードするHIV-1に基づくベクターを、LV成分pDNAと共に異なる分泌ヌクレアーゼコードプラスミド(総投入pDNAの0.5%または5%)を共トランスフェクトした無血清懸濁適応HEK293T-1.65S細胞から産生させた。試験した分泌ヌクレアーゼは全て、免疫ブロットによる検出を容易にするためにそれらのC末端にHisタグをつけた。図17Bに示されているシークオン変異改変体を全て、野生型VcEndA(「1234-glc」)、SmNucA、およびVsEndAと併せて試験した。
【0446】
産生終了細胞溶解物および濃縮上清を、His6-タグ(ヌクレアーゼ)、チューブリン(細胞対照)、またはVSVG(分泌対照、つまりLVビリオン上のVSVG)に対する抗血清を使用して、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットに供した。図18Aおよび18Bを参照されたい。これらの免疫ブロットは、分泌ヌクレアーゼ(それらの全てのグリコシル化形態)が、LV産生中に細胞で発現され、あるレベルに分泌されたことを実証した。野生型VcEndAH6-1234glcヌクレアーゼ(およびVcEndAH6-123glc改変体)の分泌は不良であり、これにより、NxS/Tシークオン切除手法を使用して、新規の向上された分泌ヌクレアーゼ改変体を生成することができることが実証された。要約すると、1glcおよび12glc改変体は、主に単一にグリコシル化されたが、VcEndAH6の他の形態は全て、二重にグリコシル化された。推論すると、主にこれらのシークオンの2つのみが実際に利用されているVcEndAH6(wt)およびVcEndAH6-134glcを除いて、存在する場合は、102NCT(#1)、130NRS(#3)、および133NFS(#4)でのシークオンが利用されると結論付けることができる。LV力価は全て、1×10TU/mLを上回り、分泌ヌクレアーゼの存在下で高力価ベクターを産生することができることが実証された(図19A)。
【0447】
また、培養上清を、濃縮試料をもたらす加工処理に供し、それをゲル電気泳動法により可視化することにより残留DNA含有量について分析した(図19B)。この分析により、残留DNA分解と分泌向上との一般的な相関が明らかになった。しかしながら、130NRSシークオン(#3)がVcEndAH6内に存在する場合、ヌクレアーゼが効率的に分泌されたとしても、DNA分解は効率的が非常に低く、これは、VcEndA内のNRSシークオンが、N-グリコシル化のために優先的に利用されるが、この修飾はヌクレアーゼ活性の減衰をもたらすことを示す。
【0448】
(実施例16)
異なる設定のpH条件で分泌ヌクレアーゼを使用したレンチウイルスベクター産生無血清懸濁培養物内の残留DNAの分解。
LV成分pDNAと共に異なる分泌ヌクレアーゼコードプラスミド(総投入pDNAの5%)を共トランスフェクトし、トランスフェクション後に培養物を2つの異なるpHレベル:pH7.2(わずかにアルカリ性)およびpH6.6(わずかに酸性)に設定した無血清懸濁適応HEK293T-1.65S細胞から、GFPをコードするHIV-1に基づくベクターを産生した。図20~22を参照されたい。二連の12mL培養物を、AMBR-15システムを使用してセットアップし、pHレベル(図20A)および細胞生存率(図20B)を、産生試行の各日にて測定した。トランスフェクション当日(2日目)のpH設定点は、pDNA/リポフェクタミントランスフェクションミックスを添加した後で、6.6±0.15または7.2±0.15のいずれかだった。これらのpH設定点を、4日目のLV回収まで維持した。使用した分泌ヌクレアーゼプラスミドは、pSV40-VcEndAH6-1glc(配列番号11、C末端His6タグを有する)、pSV40-VsEndAH6(配列番号2、C末端His6タグを有する)、およびpSV40-SmNucAH6(配列番号3、C末端His6タグを有する)だった。残りの12個のトランスフェクション/培養物を、5%pBluescriptでスパイクし、一切の分泌ヌクレアーゼを授与しなかった。これらの残りの12個の培養物を、LV回収前に1時間にわたってBenzonase(登録商標)(4つの培養物)、SAN(4つの培養物)、または未処理(4つの培養物)のいずれかで処理し、pSecNucトランスフェクト培養物(各例4つ)については、それらをpH6.6およびpH7.2設定点試験条件へと対にした。
【0449】
産生終了細胞溶解物および濃縮上清を、His6-タグ(ヌクレアーゼ)、チューブリン(細胞対照)、またはVSVG(分泌対照、つまりLVビリオン上のVSVG)に対する抗血清を使用して、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットに供した。図21Aおよび21Bを参照されたい。これらの免疫ブロットは、分泌ヌクレアーゼ(それらの全てのグリコシル化形態)が、LV産生中に細胞で発現され、効率的に分泌されたことを実証した。
【0450】
LV-CMV-GFP上清を、HEK293T細胞に対して滴定し、それにより、全ての条件が、1×10TU/mLを超えるLV産生を可能にし、両pH設定点での産生力価が概して同様だったことが示された(図22A)。また、培養上清を、濃縮試料をもたらす加工処理に供し、それをゲル電気泳動法により可視化することにより残留DNA含有量について分析した(図22B)。分泌ヌクレアーゼまたはBenzonase(登録商標)/SANで処理した培養物は全て、分泌ヌクレアーゼが概して市販ヌクレアーゼよりも性能が良かったことを除いて、未処理と比較してより低量の残留DNAを示した。VsEndAH6は、pH6.6と比較してpH7.2においてより良好な残留DNA除去特性を示した。しかしながら、VcEndAH6-1glcおよびSmNucAH6は両方とも、両pH設定点において残留DNAを効率的に除去すると考えられた。なお、VcEndAH6-1glcはこれを達成したが、LV力価に対する最小限の影響を提供すると考えられた。
【0451】
(実施例17)
VcEndAの2つの異なるN-グリカン変異体の活性を比較した、異なる設定のpH条件でのレンチウイルスベクター産生無血清懸濁培養物内の残留DNAの分解。
実施例15は、野生型VcEndAと比較して向上した分泌および残留DNA除去を示す、LV力価に対する影響が最小限であるかまたは影響を示さない3つのVcEndA改変体を特定した。これらは、VcEndAH6-1glc、-14glc、および-124glcだった。実施例16では、VsEndAH6およびSmNucAH6と併せてVcEndAH6-1glc改変体を、アルカリ性または酸性培養条件にて撹拌タンクミニバイオリアクターで試験し、それにより、VsEndAH6は、酸性pHではVcEndAH6-1glcほど効率的には作用しないことが実証された。VcEndAH6-1glcは、VsEndAに基づき残基が変更されている変異NxS/Tシークオンを内包するため、他のNxS/Tシークオンを「復帰」させた場合に、酸性条件下でのVcEndAH6-1glcの活性向上がさらに向上され得るか否かは不明であった。実施例16に概説されているものと同様の実験を実施し(pH6.6または7.2における撹拌タンクミニバイオリアクター[AMBR-15]でのLV-CMV-GFPベクターおよび分泌ヌクレアーゼの産生)、およびVcEndAH6-124glc、VcEndAH6-1glc、およびVsEndAH6を、市販ヌクレアーゼと比較した(図23および24)。pHの設定点および細胞生存率を記録し(図24Aおよび24B)、LVを滴定し、これにより、これらのヌクレアーゼは、産生力価に影響を及ぼさなかったことが実証された(図24A)。また、培養上清を、濃縮試料をもたす加工処理に供し、それをゲル電気泳動法により可視化することにより残留DNA含有量について分析した(図24B)。この分析により、VcEndAH6-1glcおよびVcEndAH6-124glcによる残留DNA除去のレベルが非常に類似しており、両改変体は、VsEndAH6よりも性能が良く、ならびに酸性条件下で活性の増強を示したことが明らかになった。これらのデータは、VcEndAH6-1glc改変体が、その一次配列に導入された修飾にも関わらず、酸性pHで完全な活性特徴を有することを実証し、これはおそらくは、変更された残基が、VcEndAとVsEndAとを区別するヌクレアーゼ活性に寄与しないことを示す。
【0452】
(実施例18)
AAVに基づくベクターの産生中に残留DNAを分解するための、分泌および細胞保持ヌクレアーゼの使用。
AAVおよびAdVなど、ベクタービリオンが産生細胞に付随したままであるウイルスベクターを産生する場合、産生細胞は、界面活性剤などの細胞破壊剤を添加することによりバイオリアクター内でin situにて直接的に溶解することができることが予期される。この場合、培養培地内の分泌ヌクレアーゼは、夾雑性DNAを分解するために存在することになる。しかしながら、産生細胞が培養培地から隔てられている場合(例えば、沈殿または遠心分離または培地交換により)、共発現されたヌクレアーゼは、細胞溶解後に存在し活性であるために、細胞に付随したままであることが望ましい。この例は、既知ER保持シグナル「KDEL」をヌクレアーゼのC末端に追加することにより、scAAV2-GFP産生中の細胞溶解物からの残留DNA除去がどのように向上されるかを示す。図25は、如何にしてER保持シグナルをER内腔へと分泌されるヌクレアーゼに追加して、絶えずER内腔へと循環して戻るように「ER保持欠損[ERD]相補群」タンパク質受容体とのその結合をもたらすことができるかを示す(非制限的な点で)。この手法を試験するために、VcEndAH6[wt](HEK293Tに基づく細胞では分泌が不良であることが示された。図18ABを参照)およびVcEndAH6-1glcを、C末端「KDEL」配列を含むように操作した。図26は、懸濁無血清HEK293T細胞に、AAV2ベクター成分プラスミド(ゲノム:RepCap2:ヘルパー-比は1:1:1だった)と共に、示されているヌクレアーゼ発現プラスミド(総投入量の5%)を共トランスフェクションすることによるscAAV2-GFPベクター産生の結果を示す。SmNucAH6ヌクレアーゼも試験した。ヌクレアーゼ発現プラスミドが含まれていなかった2つの対照(つまり、5%pBluescript:「AAV-NEG」)が含まれていた。2日後、細胞をペレットにし、上清から分離し、界面活性剤に基づく溶解緩衝液の存在下で3回の凍結解凍事象を実施した。塩化マグネシウムを全ての条件に添加し(2mM最終)、SANを、対照の1つに添加して、市販ヌクレアーゼ(有効量は75U/0.5mL細胞ペレット)との比較を可能にした。残屑を低速遠心分離により除去し、得られた溶解物を濾過した後、粗ベクター含有上清をHEK293T細胞に対して滴定し(図26A)、残留DNAをアガロースゲル電気泳動法(臭化エチジウム)により分析した(図26B)。この例は、このレベルのプラスミド投入量ではSmNucAH6が力価を1/3~1/4に低減させるとは言え、共発現ヌクレアーゼの存在下で高力価scAAV2-GFPを産生することができることを実証する。試験した他のヌクレアーゼは、5%投入量レベルではベクター産生に影響を及ぼさなかった。残留DNA除去の分析は、実際に、非常に良好なレベルのDNA消化が、VcEndAH6-1glcおよびKDEL配列を有していないsmNucAH6で達成可能であったことを示した。細胞溶解物に付随するこれらの2つの分泌ヌクレアーゼのレベル(図18Bを参照)は、効率的なDNA除去を可能にするのに十分であると考えられ、これらが細胞から分泌される「途中で」完全に活性なタンパク質であることを示す。それにも関わらず、KDELをVcEndAH6[wt]およびVcEndAH6-1glcに追加することは、非KDEL改変体と比較してDNA除去の向上を可能にすると考えられた。レンチウイルスベクター産生で観察されたように、VcEndAH6-1glcは、VcEndAH6[wt]型よりも非常により効率的であり、VcEndAH6-1glc-KDEL改変体は、図26Bのゲル画像のデンシトメトリープロファイル(図27)を比較すると、残留DNAレベルをバックグラウンドレベル付近まで低減することが可能だった。VcEndAH6-1glc-KDEL改変体は、ゲル分析で典型的に観察される小型「耐性」形態のDNAを排除する点で、試験した他の分泌ヌクレアーゼならびにSANよりも性能が高かった。この例により、分泌ヌクレアーゼは、細胞付随様式での残留DNA除去に有用であるが、これは、ER保持シグナルを使用することにより向上させることができることが実証される。
【0453】
(実施例19)
一過性トランスフェクションによりヌクレアーゼヘルパー細胞を生成するためのトランスフェクションパラメーターの最適化
好ましい実施形態において分泌ヌクレアーゼ技術を適用するための主要な方法の1つは、別々に生成され、ウイルスベクター粒子が産生されてから主ウイルスベクター産生培養物に適用されるヌクレアーゼヘルパー細胞を用いることだろう。1つの手法は、細胞、理想的にはウイルスベクターコードプラスミドによる一過性トランスフェクションに使用されることになる同じ基礎細胞株を、GMP製造活動中に並行して一過性にトランスフェクトすることである。考えられる限りでは、一過性にトランスフェクトされたヌクレアーゼヘルパー細胞のGMPバンクを生成することができ(凍結前に特徴付けおよび検証される)、次いでそれを復元し、主ウイルスベクター産生培養物に適用することができる。安定tet調節ヌクレアーゼヘルパー細胞に対する、一過性にトランスフェクトされたヌクレアーゼヘルパー細胞の使用の認知されている利点は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンなどの化学誘導因子の必要性の欠如である。しかしながら、好ましい実施形態では、ヘルパー細胞手法が適用され(一過性にまたは安定的に)、重要なパラメーターは、主ウイルスベクター産生培養物において望ましい(有効な)レベルの分泌ヌクレアーゼ活性を達成するために、主ウイルスベクター産生培養物に添加されるヘルパー細胞の総数であろう。
【0454】
ウイルスベクタープラスミドと共に分泌ヌクレアーゼプラスミドを共トランスフェクションする手法は(以前の実施例を参照)、用いられているプロモーターの強さに応じて、投入量パーセンテージレベル(トランスフェクトするプラスミドDNAの合計量に対して)の一般的な範囲が1~5%であることを明らかにした。しかしながら、この手法では、ウイルスベクタープラスミドは、互いの、また分泌ヌクレアーゼプラスミドの「担体」DNAとして作用する。ヘルパー細胞手法をGMP生産に適合させる場合、好ましい実施形態では、分泌ヌクレアーゼプラスミドのみが、細胞にトランスフェクトされるべきであり(一切の「スタッファー」DNAを用いずに)、さらに少数のヘルパー細胞を主ウイルスベクター産生培養物に適用して、残留DNAの最大除去の達成を可能にするために、ヘルパー細胞からの分泌ヌクレアーゼの最大発現/分泌を達成することが望ましいだろう。これを評価するために、無血清懸濁HEK293T細胞に、ある範囲の投入量(最終培養物1mL当たり100~900ng)のより弱いSV40プロモーターまたはより強力なCMVプロモーターのいずれかにより駆動されるVcEndAH6-1glcまたはSmNucAH6コードプラスミドを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションは、2つの群:酪酸ナトリウム誘導(10mM最終濃度)を用いた群または用いない群で実施した。酪酸ナトリウム誘導(酪酸ナトリウムは、HEK293に基づく細胞においてCMVなどのプロモーターにより駆動される遺伝子の発現を上方制御することが公知である)は、酪酸ナトリウム誘導の時点で(またはそれ以降に)主ウイルスベクター産生培養物にヘルパー細胞を添加する効果を模倣するために、トランスフェクション後20時間以内に実施した(レンチウイルスベクター産生の酪酸ナトリウム誘導の典型的なレジメン)。各分泌ヌクレアーゼプラスミドについて共トランスフェクション対照が含まれており、pSecNuc(合計の5%;最終培養物1mL当たり62ng)を、pBlueScript(合計の95%)と混合した。これは、ヘルパー細胞培養物の分泌ヌクレアーゼ発現を、本明細書の他の実施例で例示されている共トランスフェクション手法と比較することができるように実施した。トランスフェクションの2日後、トランスフェクトされたヘルパー細胞に由来する上清を回収し、分泌ヌクレアーゼ(抗HisTag)に対する免疫ブロットにより分析し、また、細胞溶解物を、分泌ヌクレアーゼおよびGAPDHに対する免疫ブロットにより分析した。細胞で発現された分泌ヌクレアーゼのレベルを評価するために、分泌ヌクレアーゼバンド強度を定量化し、GAPDHバンドに対して正規化し(図28A)、これを、上清中の分泌ヌクレアーゼの免疫ブロットと比較した(図28B)。
【0455】
データは、(予想通り)プロモーター強度の選択は、細胞における分泌ヌクレアーゼの発現レベルと相関し、CMVプロモーター駆動カセットは、SV40プロモーター対応物よりも高い発現レベルを達成することを明らかにする。≧700ngのプラスミドDNAのトランスフェクション投入量(細胞培養物1mL当たり≧8×10個の生存細胞を含む)は、最大に近いレベルの分泌ヌクレアーゼ発現を達成したことが特定された。酪酸ナトリウム誘導の効果は、CMVプロモーター駆動カセットで一般に観察され、VcEndAH6-1glc発現の増大は、SmNucAH6と比較して、VcEndAH6-1glcでより明白だった。これは、SmNucAH6発現が、ある意味で「自己制限的」であり得ることを示す以前の研究と一致しており、VcEndAH6-1glcヌクレアーゼが、本発明の適用での優れた選択であることを示す証拠のさらなる主要部分を構築する。pSV40-VcEndAH6-1glc(本明細書の他の実施例で例示されている「共トランスフェクション」手法に主に使用される)を使用して達成されたVcEndAH6-1glc発現のレベルを、≧700ng/mL投入量レベルでpCMV-VcEndAH6-1glc構築物と比較すると、後者は、前者よりも少なくとも10倍多くの発現を達成することができた。
【0456】
(実施例20)
ウイルスベクター産生培養物にスパイクした場合のヌクレアーゼヘルパー細胞のヌクレアーゼ活性出力の定量化
実施例19は、非常に高いレベルのヌクレアーゼ分泌およびヌクレアーゼ活性を有するヌクレアーゼヘルパー細胞培養物を生成することができることを実証した。明らかに、本発明では、ヌクレアーゼヘルパー細胞を生成するためのいくつかの方法が記載されており、考えられる限りでは、所与のヘルパー細胞培養物のヌクレアーゼ出力活性は、様々であり得る。したがって、ヘルパー細胞をスパイクすることによるウイルスベクター産生培養物で望ましい/有効なレベルのヌクレアーゼ活性を達成するために追加補充されるヘルパー細胞の数は、用いられるヘルパー細胞のヌクレアーゼ活性出力に応じて様々であろう。しかしながら、最も望ましい手法は、主ウイルスベクター産生培養物に添加する場合、ベクター生産プロセスに対する影響(例えば、希釈効果および/または増殖代謝産物の競合など、ウイルスベクター産生細胞に対する効果)を最小限に抑えるように、できるだけ少数のヘルパー細胞が必要とされる手法であるだろう。好ましい実施形態では、これを達成するために、分泌ヌクレアーゼの最大発現が望ましいかまたは一部の場合では必要になるだろう。これは、実施例19で例示された。ヘルパー細胞をスパイクすることによるウイルスベクター産生培養物内のDNA除去効率を評価するために、初期実験を実施し、ヌクレアーゼヘルパー細胞を、無血清懸濁HEK293T細胞に、培養物1mL当たり750ngのプラスミドDNAを一過性にトランスフェクトすることにより生成し、主レンチウイルスベクター産生容器中の総細胞数に対して異なる投入量パーセンテージでレンチウイルスベクター産生培養物にスパイクした。これらは、10%、5%、2.5%、および1%だった。この初期実験では、VcEndAH6-1glcおよびSmNucAH6のSV40プロモーター駆動ヌクレアーゼプラスミドを使用した。主ウイルスベクター産生およびヘルパー-培養物に由来する細胞に、関連成分を並行してトランスフェクトし、次いでトランスフェクションの約20時間後に計数した後、適切な容積のヘルパー細胞培養懸濁物(上記パーセンテージを表す)を、元のベクター産生培養物から分割した複製ウイルスベクター産生培養物に添加した。次いで、この時点から通常のベクター産生を継続させ(この場合、酪酸ナトリウム誘導は、ヘルパー細胞添加と同時に生じた)、ベクター回収物を滴定のために採取し、免疫ブロットによりヌクレアーゼ分泌を分析し、残留DNA含有量を分析した(図29)。ヘルパー細胞を用いてまたは用いずに産生されたベクター力価は、>1×10TU/mLであり、10%および5%ヘルパー細胞投入量での影響は最小限(<2倍)であり、これはおそらくは、10%よりも多くのヘルパー細胞をウイルスベクター産生培養物に添加することは、望ましくない場合があることを示す(図29A)。ヘルパー細胞培養物で達成された分泌ヌクレアーゼのレベルは、非常に高く(免疫ブロットでのバンドのバーンアウトにより示される)、ベクター産生培養物中の得られた分泌ヌクレアーゼのレベルは、投入量パーセンテージと良好に相関した(図29B)。この場合も、SmNucAH6と比較してより大きなレベルのVcEndAH6-1glcタンパク質レベルが達成された。驚くべきことに、最も低い1%の投入量レベルでさえ、非常に良好なレベルの残留DNA除去が、全ての分泌ヌクレアーゼ条件で観察された(図29C)。これは、活性が中程度のプロモーターが使用されている分泌ヌクレアーゼ発現カセットを使用してヌクレアーゼヘルパー細胞手法を使用することができるが、重要なことには、好ましい実施形態では、より強力なプロモーターが使用される場合、さらにより少数のヌクレアーゼヘルパー細胞をウイルスベクター産生培養物に添加して、潜在的にはベクター力価に対するあらゆる観察可能な影響を回避することができることを示した。
【0457】
ヌクレアーゼヘルパー細胞手法のさらなる評価を、pCMV-VcEndAH6-1glcプラスミドの使用に注目し、主ウイルスベクター産生培養物に添加されるヘルパー細胞の数を低減させることにより試みた。ヘルパー細胞およびレンチウイルスベクター産生細胞に、それぞれのプラスミドを並行してトランスフェクトし、次いで、トランスフェクション約20時間後の酪酸ナトリウム誘導時点で、異なる割合のヘルパー細胞をベクター産生培養物にスパイクした。上記と同様に、培養物1mL当たり750ngのプラスミドDNAを無血清懸濁HEK293T細胞に一過性にトランスフェクトすることにより、ヌクレアーゼヘルパー細胞を生成した。CMVプロモーター駆動カセットは、SV40プロモーターよりも>10倍多くのVcEndAH6-1glcタンパク質を産出したことが以前に実証されたため、ヘルパー細胞の細胞投入量の範囲は、わずか0.1%へと低下した(ベクター産生培養物内の細胞数に対して)。生存細胞数を考慮すると、これは、30μLのヘルパー細胞培養物を40mLのベクター産生培養物に添加することに等しい。この実験では、追加の対照は、回収1時間前に標準Benzonase/SAN(5U/mL)処理を含み、ヘルパー細胞手法を「共トランスフェクション」手法と直接比較するために、5%「共トランスフェクション」対照(LV成分と混合されたpSV40-VcEndAH6-1glc)を含んでいた。上記のように、ベクター産生を通常通りに継続させ、滴定および残留DNA含有量の分析のためにベクター回収物を採取した(図30)。ヘルパー細胞を用いてまたは用いずに産生されたベクター力価は、>1×10TU/mLであり、5%および1%ヘルパー細胞投入量では影響は最小限だった(<3倍)(図30A)。
【0458】
濃縮(44倍)ベクター産生培養物中の残留DNA除去の評価は、分泌VcEndAH6-1glcにより残留DNAが非常に良好に除去されることを明らかにし、これは、Benzonase/SAN処理ベクター試料と同じかまたはそれよりも良好であると考えられた(図30B)。顕著には、ベクター産生培養物内の細胞総数の0.1%のみしか、ヘルパー細胞を含んでいなかった場合でも、見かけの残留DNA除去のレベルは、高投入量レベルのヘルパー細胞と比較して全く同様に効果的だった。興味深いことには、「ヌクレアーゼ耐性」バンド(「供給材料特異的」)が、全ての濃縮ベクター上清で観察されたが、濃縮ヘルパー細胞上清では観察されなかった。これは、このバンドがレンチウイルスベクター含有上清に特異的であり、VcEndAH6-1glcのRNAse活性から防御された、おそらくはビリオン内に存在する(細胞性)RNAであり得ることを示唆した。レンチウイルスベクター産生中の分泌ヌクレアーゼの使用の他の実施例の多くを振り返って見ると、時として同様のバンドを観察することができる。この実施例では、ベクター上清の濃縮倍数は、以前の実施例よりも大きく、おそらくはこの実験でのこのバンドの検出感度は増加された。しかしながら、そのようなバンドは、精製したベクター物質では観察されず(実施例11および21を参照)、この物質がビリオン内にある可能性は低く、緩衝液交換などのさらなる加工処理により除去することができることを示す。VcEndAH6-1glcによる全ての明白な臭化エチジウム染色夾雑物が、5Lバイオリアクター産生規模で非常に効率的に除去されることが実施例21で実証されたことを考慮すると、アガロースゲル分析で時として出現するこのバンドは、下流で処理されたベクター内には一般に検出されない一部の不定未確認夾雑物、おそらくは遊離細胞性/リボソームRNAによるものであり得る可能性が高いと考えられる。
【0459】
ヘルパー細胞およびウイルスベクター産生細胞培養物の両方で達成された分泌ヌクレアーゼのレベルを、単位が規定されたヌクレアーゼ活性に関連付けることができるように、培養上清を、DNAse Alertアッセイにより、またVcEndAH6-1glcに対する免疫ブロット(抗HisTag)により、ヌクレアーゼ活性について評価した。ヌクレアーゼ活性が既知の市販Benzonase(登録商標)酵素ストックを、アッセイ内での標準曲線として使用した。図31にはこの関係性が表示されており、それにより、本発明にて、目標ヌクレアーゼ活性単位の点で望ましい分泌ヌクレアーゼ発現範囲を記載することが可能になる。ヌクレアーゼ活性(図31A)および免疫ブロット(図31B)データは、両アッセイタイプ間だけでなく、ベクター産生培養物にスパイクされたヌクレアーゼヘルパー細胞の割合とも非常に良好に相関した。重要なことには、DNAse Alertアッセイは、5U/mLのBenzonase(登録商標)で処理した対照ベクター培養物が、平均4.5U/mLを含むと算出されたため、非常に正確な方法であることが検証された。データは、5%のヌクレアーゼヘルパー細胞を含むベクター産生培養物では、培養培地内のヌクレアーゼの活性が、1mL当たり約100Benzonase(登録商標)単位当量だったことを示す。1%、0.5%、および0.1%のヌクレアーゼヘルパー細胞を含む培養物のヌクレアーゼ活性は、1mL当たり15.2、8.8、および2.1Benzonase(登録商標)単位当量であり、ベクター産生培養物に添加されたヘルパー細胞のそれに見合った低減と良好に一致した。この実験では、「共トランスフェクトされた」ベクター産生培養物は、1mL当たり26.3Benzonase(登録商標)単位当量を達成した。重要なことには、0.1%のヌクレアーゼヘルパー細胞含有ベクター産生培養物は、5U/mLのBenzonase(登録商標)またはSANで処理した「標準」ベクター培養物と比較して、1mL当たり2.1Benzonase(登録商標)単位当量を達成したに「過ぎず」、残留DNAの除去は、これらの標準処理と少なくとも同様に良好だった。これは、分泌ヌクレアーゼの使用が、より高いレベルのヌクレアーゼ活性を達成する(非常に削減されたコストで)という観点だけでなく、ベクター産生(より低いレベルであってさえ)の全体にわたって堅固なレベルのヌクレアーゼを供給することにより、より有効な様式の残留DNA除去が提供されるという観点でも、市販ヌクレアーゼの使用よりも有利であることを示す。ベクター産生培養物内で測定されるヌクレアーゼ活性を使用して、ヘルパー培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性の量を逆算することが可能であり、これは、1mL当たり約2000Benzonase(登録商標)単位当量だった。
【0460】
(実施例21)
下流プロセスでのさらなるヌクレアーゼ処理の使用を不要とするレベルまで無血清懸濁バイオリアクターの残留DNAを分解するためのVcEndAH6-1glcの使用
実施例10および11は、中規模から大規模の懸濁バイオリアクターでレンチウイルスベクター産生培養物に分泌ヌクレアーゼを適用することにより、残留DNAの除去が支援されることを示す。5L規模でのVsEndAH6の使用は、下流プロセス物質中の残留DNAの最大除去が中空線維カートリッジに添加された市販ヌクレアーゼの使用により依然として支援されたため、この特定のヌクレアーゼは、より低いpHの培養物では活性が制限される場合があることを示唆した。このpH感受性は、後に検証され、「pH耐容性」VcEndAH6-1glcヌクレアーゼの開発につながった(実施例15~17)。上流段階で適用されたVcEndAH6-1glcヌクレアーゼが、同じ下流プロセス中(ダイアフィルトレーション/限外濾過中)に市販ヌクレアーゼ処理の撤回を可能にし得るか否かを評価するため、GFPをコードするレンチウイルスベクターを以下のように産生した。総プラスミド投入量の5%のpBluescript(対照;標準Benzonase(登録商標)処理)またはpSV40-VcEndAH6-1glcのいずれかと共にHIV-1に基づくレンチウイルスベクター成分(GFP発現ゲノム)をトランスフェクトした懸濁無血清適応HEK293T細胞を、2つの5Lバイオリアクターに播種した。トランスフェクションの20時間後、酪酸ナトリウムを、全てのバイオリアクターに10mMの最終濃度で添加した。ベクター回収1時間前に、「In Bio」試料を採取し(細胞を取り出し、上清を濾過した)、次いで対照バイオリアクターに、2mM MgClと共に5U/ml最終濃度のBenzonase(登録商標)を接種した。pSV40-VcEndAH6-1glcを共トランスフェクトしたバイオリアクターは、2mM MgClのみを受け取った。両バイオリアクターを、回収前に標準増殖条件下で1時間インキュベートし、回収時に5Lの培養物を清澄化し(10μm>0.45μm)、試料を得た(CLH)。次いで、およそ2.5Lの回収物を、下流加工処理に供した。物質をイオン交換(IEX)クロマトグラフィーに供して、約215mLのIEX溶出物を生成した後、中空繊維カートリッジを使用したダイアフィルトレーション/限外濾過によるさらなる加工処理を行ってこの容積を65~70mLに低減した。第1のステップは、塩の緩衝液交換「HFF前」を可能にし(前Benzonase(登録商標)処理)、試料が得られ、次いで400U/mlのBenzonase(登録商標)を、標準(「+Benzonase(登録商標)」)加工処理ベクターおよびVcEndAH6-1lgc処理ベクターの両方に添加した。これは、分泌ヌクレアーゼベクター物質がそれを必要とする場合に、HFF時ヌクレアーゼステップの任意のさらなる利益を評価するために行われた。最後に、緩衝液交換を生じさせて、Benzonase(登録商標)を除去した(「HFF後」)。図32Aは、産生試行中の2つのバイオリアクターのpHプロファイルを示し、6.7の目標pHが達成されたことを実証する。清澄化回収ベクター(CLH)試料を、FACSアッセイにより滴定し、標準物質およびVcEndAH6-1glcベクターの力価が、それぞれ1.7×10および1.0×10TU/mLであったことを明らかにした。産生プロセス全体に由来する試料を、3Kカットオフ遠心分離デバイスでの遠心分離により濃縮した後、試料を、残留DNA分析のためにアガロースゲル(臭化エチジウム)にロードした(図32B)。残留DNA分析は、VcEndAH6-1glcを使用した残留DNAの除去が優れていること、および上流の産生でこのヌクレアーゼを使用することにより、圧倒的大部分の夾雑性残留DNAをダイアフィルトレーション/限外濾過ステップで除去することが本質的に可能になり、市販ヌクレアーゼのさらなる使用が必要とされないことを実証する。詳しく分析すると、IEXカラムからのVcEndAH6-1glcベクター溶出物内に検出可能な残留DNAが存在するが、これは、明らかに、緩衝液交換中にベクター物質から抽出される場合がある形態である。ダイアフィルトレーション/限外濾過中空繊維細孔サイズが0.2μmだったことを考慮すると、これは、ベクターと同時溶出した残留DNAが、ベクター粒子よりも小さかった(またはより小さなタンパク質複合体内にあった)ことを示した。なお、ダイアフィルトレーション/限外濾過ステップでまたはその前に確実に失われる、加工処理されていない試料中の「供給材料特異的」バンドの存在(実施例20を参照)にも留意されたい。残留DNAが「HFF後」対照(2×処理Benzonase(登録商標))ベクター物質内に依然として観察される場合があった。これは、市販組換えヌクレアーゼの使用に依存しないヌクレアーゼ手法を使用して、レンチウイルスベクター産生から残留DNAを除去する能力を初めて表すものである。
【0461】
(実施例22)
細胞画分中のVcEndAH6-1glc-KDELを富化するためのKDEL保持シグナルの使用
実施例18は、AAVベクターの上流産生中に残留DNAを除去するための分泌およびER保持ヌクレアーゼの使用を実証した。図33は、pSV40-VcEndAH6-1glcまたはpSV40-VcEndAH6-1glc-KDELのいずれかを無血清懸濁HEK293T細胞にトランスフェクションすることに起因する回収細胞溶解物のSDS-PAGE分析を示す。この分析は、ヌクレアーゼが、ヌクレアーゼタンパク質のC末端に追加されたER保持シグナルを使用することにより細胞内に保持/富化されるように、ヌクレアーゼ発現を指図することができることを示す以前の研究を支持する。
【0462】
物質および方法
ヌクレアーゼ発現構築物
ヌクレアーゼオープンリーディングフレームは、GeneArtによりHomo sapiensでの高度な発現のために最適化されたコドンおよび配列である。smNucA(NCBI参照配列:WP_047571650.1)、VsEndA(GenBank:CAQ78235.1)、VcEndA(NCBI参照配列:WP_000972597.1)、BacNucB(NCBI参照配列:WP_003182220.1)。ヌクレアーゼは全て、SV40プロモーターおよびSV40ポリアデニル化シグナルが使用された遺伝子発現カセットを設計することにより評価した(図3A~3C)。典型的には、発現カセット全体を、プロモーター-5’utr-ヌクレアーゼ-3’utr-ポリAをコードする1つの断片として合成し、GeneArtのpMK骨格内に収容した。3’utr領域は、各ヌクレアーゼのHisタグ付き改変体を、プラスミドの単純な制限酵素消化および再ライゲーションにより生成することができるように、6×His-タグに融合された代替C末端を内包するように設計した。ERシグナルペプチド改変体およびNxS/Tシークオン欠失/挿入改変体の構築は、典型的には、再導出合成断片(GeneArt)を上記に記載の既存ヌクレアーゼプラスミドにクローニングすることにより実施した。誘導性ヌクレアーゼ発現カセット(図3D)を、標準的クローニング技法を使用してHindIII/NotIにより、ヌクレアーゼORFを再導出型のpf pcDNA5/TOに挿入することによりクローニングした。大まかに言えば、酵素(pDNAの1マイクログラム当たり5~10単位)による消化を37℃にて1~2時間実施し、続いて10分間の骨格断片「迅速」脱リン酸化反応(Roche)を行い、次いで100Vで1時間にわたって1%アガロースゲルに流した。関連バンドを、QIAQuickゲル抽出キット(QIAGEN)を使用して抽出した。ライゲーションは、「迅速」DNAライゲーションキット(Roche)を推奨条件下で使用して1:3の骨格:インサート比で20μL容積にて実施した。およそ25~50μLのTurbo(NEB)またはStbl2(Thermo)コンピテント細胞を、2~3μLのライゲーション反応で形質転換した。細菌は、ミニプレップのために、LBKANアガロースプレートにてLBKAN培地で増殖させた。制限酵素分析および配列確認後、プラスミドDNAを、Plus Megaキット(QIAGEN)で調製した。
【0463】
付着細胞培養、トランスフェクション、およびレンチウイルスベクター産生
HEK293T細胞を、ベクター産生および滴定に使用した。細胞を、完全培地(10%熱不活化(FBS)(Gibco)、2mM L-グルタミン(Sigma)、および1%非必須アミノ酸(NEAA)(Sigma)で追加補充されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Sigma))で37℃、5%COにて維持した。
【0464】
HIV-1ベクターの付着様式での標準規模産生は、以下の条件下の10cmディッシュでのものだった(他の形式で実施する場合、条件は全て面積により調整した)。HEK293T細胞を、1ml当たり3.5×10細胞で完全培地に播種し、およそ24時間後に、10cmプレート1つ当たり以下の質量比のプラスミドを使用して細胞にトランスフェクトした:4.5μgのゲノム、1.5μgのGag-Pol、1.1μgのRev、0.7μgのVSV-G(つまり、合計で7.8μg/プレート)。適切な場合、ヌクレアーゼ発現プラスミドを、総pDNAに対する表記の投入量%でこのベクターミックスにスパイクした(典型的な範囲は0.001~10%)。
【0465】
トランスフェクションは、製造業者のプロトコール(Life Technologies)に従って、DNAをOpti-MEM中でリポフェクタミン2000CDと混合することにより媒介した。約18時間後に酪酸ナトリウム(Sigma)を10mMの最終濃度になるように5~6時間添加した後、トランスフェクション培地を10mlの新鮮な無血清培地と置き換えた。典型的には、20~24時間後にベクター上清を回収し、次いで濾過し(0.22μm)、-20/-80℃で凍結した。ヌクレアーゼ処理の陽性対照として、典型的には、Benzonase(登録商標)を回収物に5U/mLで濾過前に1時間にわたって添加した。
【0466】
HEK293T.GFP.PrCL(安定細胞株)を、樹立されたHEK293T.tetR14付着細胞株を使用して自家開発した。パッケージング成分およびHIV-GFPゲノムは全て、選択マーカーと共にHEK293T.TetR細胞に以前に安定的にトランスフェクトされた。RevおよびVSV-GはZeocin(Zeo)の選択下に配置され、Gag-Polはブラストサイジン(Bsr)の選択下にあり、GFPゲノムはヒグロマイシン(Hyg)の選択下にあった。HIV-1に基づくベクタープロデューサー細胞株内の分泌ヌクレアーゼ手法の評価のために、ヌクレアーゼ発現プラスミドを、合計に対する表記の投入量%で培養物にトランスフェクトした(pBlueScriptをスタッファー(stuff)として合計7.8μg/10cmプレートまたは等価な調整量/面積まで添加した)。ベクター産生を誘導するために、ドキシサイクリンを、1μg/mLの最終濃度で酪酸ナトリウム誘導ステップから添加した。
【0467】
懸濁細胞培養、トランスフェクション、およびレンチウイルスベクター産生
HEK293T.TetR14S(安定的に組み込まれたコドン最適化tetR)およびHEK293T.1-65s懸濁細胞を、振盪インキュベーター(190RPMに設定した25mmの軌道)にて37℃、5%COでFreestyle+0.1%CLC(Gibco)中で増殖させた。懸濁物を使用するベクター産生は全て、作業容積を25mlとした125ml振盪フラスコで、または作業容積を12mLとしたAMBR-15バイオリアクターで実施した。HEK293T細胞を、1ml当たり8×10細胞で無血清培地に播種し、ベクター産生の全体にわたって、37℃、5%CO2で振盪しながらインキュベートした。AMBR-15バイオリアクター産生の場合、培養物を、pH7.2に設定した。播種のおよそ24時間後、細胞に、ゲノム(GFP)、gagpol、rev、およびVSVGをコードするベクター成分プラスミドのミックスをトランスフェクトした。適切な場合、ヌクレアーゼ発現プラスミドを、総pDNAに対する表記の投入量%でこのベクターミックスにスパイクした(典型的な範囲は0.1~10%)。
【0468】
トランスフェクションは、製造業者のプロトコール(Life Technologies)に従って、DNAをOpti-MEM中でリポフェクタミン2000CDと混合することにより媒介した。AMBR-15バイオリアクター産生の場合、培養物を、トランスフェクション直後にpH6.6またはpH7.2に設定した。約18時間後、酪酸ナトリウム(Sigma)を10mM最終濃度になるように添加した。典型的には、20~24時間後にベクター上清を回収し、次いで濾過し(0.22μm)、-20/-80℃で凍結した。ヌクレアーゼ処理の陽性対照として、典型的には、Benzonase(登録商標)またはSANを回収物に5U/mLで濾過前に1時間にわたって添加した。AMBR-15バイオリアクター産生の場合、pHおよび細胞生存率を、プロセスの全体にわたってモニターした。
【0469】
0.5または5L撹拌タンクバイオリアクターでのレンチウイルスベクター産生および下流加工処理
懸濁適応HEK293T細胞株、クローン1.65および追加補充された無血清培地を、バイオリアクター研究に使用した。MCBから培養された細胞を復元し、エルレンマイヤーフラスコで規模を大きくし、予め平衡化された5%COの加湿雰囲気の空気インキュベーター内で37℃にてインキュベートした。細胞を、軌道振盪機プラットフォームで懸濁のまま維持した。
【0470】
バイオリアクターを、溶存酸素およびpHについて全体にわたって能動的に管理し、代謝産物および副産物のレベルもモニターした。細胞生存率をモニターし、適切な場合は消泡剤を使用した。バイオリアクター培養物に、4つのプラスミド:pHIV-CMV-GFP(ゲノム)、pSynGPK(gagpol)、pOB-Rev、およびpOB-VSVGを、トランスフェクション試薬を使用して共トランスフェクトした。示されている場合、pNucleaseを、典型的には合計の5%でpDNAミックスにスパイクした。バイオリアクター培養物を、トランスフェクションの20時間後に10mM酪酸ナトリウムで誘導した。誘導の24時間後にベクター回収物を採取し、必要に応じて、回収前に1時間にわたって5U/mLまたは25U/mLの市販ヌクレアーゼ(Benzonase(登録商標)またはSAN-HQ)で処理した。
【0471】
ベクター上清を予備的に清澄化し(≧10μm)、次いで0.22~0.45μm濾過によりさらに清澄化した。少なくとも1Lの清澄化ベクター回収物を、典型的には、低濃度塩洗浄液および溶出前洗浄緩衝液を含む、Sarto-Qカートリッジを使用したイオン交換クロマトグラフィーにより加工処理した後、>1M NaCl含有緩衝液で溶出し、溶出物を直ちに希釈して、ベクタービリオン活性を保存した。次いで、溶出物を、すばやく中空繊維ダイアフィルトレーション/限外濾過に供して、まず低塩条件へと緩衝液交換した後、400U/mLの市販ヌクレアーゼおよび2mM塩化マグネシウムを、第2のヌクレアーゼ処理仕上げステップとして添加した。最後に、最終緩衝液交換を実施して、市販ヌクレアーゼを除去した。
【0472】
最大ヌクレアーゼ発現を達成する一過性トランスフェクションによるヌクレアーゼヘルパー細胞の産生
懸濁適応無血清HEK293T細胞を、主ウイルスベクター産生培養物と並行して、1mL当たり8×10細胞で播種し、37℃、5%COにてFreestyle+0.1%CLC(Gibco)中で一晩増殖させた。翌日、細胞に、培養物1mL当たり>750ngのpCMV-VcEndAH6-1glcを、リポフェクタミン2000CDを使用してトランスフェクトした(ベクター産生培養物にベクター成分をトランスフェクトした)。酪酸ナトリウム誘導(10mM最終)の時点で、ヌクレアーゼヘルパー細胞を、目標細胞投入量レベルで接種して、主ベクター産生容器中の総細胞数の表記パーセンテージを達成した。次いで、上記に記載のように、ベクター産生を継続させた。
【0473】
レンチウイルスベクター滴定アッセイ
レンチウイルスベクター滴定では、HEK293T細胞を、1.2×10細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。GFPコードウイルスベクターを使用して、8mg/mlのポリブレンおよび1×ペニシリンストレプトマイシンを含む完全培地中でおよそ5~6時間にわたって細胞を形質導入し、その後新鮮な培地を添加した。形質導入した細胞を、37℃、5%COで2日間インキュベートした。次いで、培養物を、FACSVerse(BD Biosciences)によるフローサイトメトリーのために調製し、GFP発現パーセントを測定し、2日間のインキュベーション後に予測細胞数を使用してベクター力価を推定した。
【0474】
AAVベクター産生
AAVベクター産生では、HEK293T-1.65S無血清懸濁適応細胞を、トランスフェクションの約20時間前に、8×10細胞/mLで培養容器に播種した。トランスフェクションでは、等しい質量のpscAAV-CMV-GFP(ゲノム)、pRepCap2(アセンブリ活性化タンパク質(assembly-activating protein)[AAP]を含む全ての必要なウイルスパッケージング成分をコードする)、およびpHelper(Adeno E2A、E4、およびVA RNA機能)を、ヌクレアーゼコードプラスミドまたはpBluescript(陰性対照)のいずれかと共に総pDNAの5%質量で細胞にトランスフェクトすることにより、自己相補的(sc)AAV-GFPベクター産生を開始させた。トランスフェクションは、製造業者のプロトコール(Life Technologies)に従って、DNAを無血清培地中でリポフェクタミン2000CDと混合することにより媒介した。2日後に、低速での遠心分離により細胞を回収し、界面活性剤溶解緩衝液の存在下で3回の凍結解凍サイクルを行うことにより、細胞を溶解した。次に、溶解物を、8細胞ペレット容積の無血清DMEM中でピペットで吸引排出した。塩化マグネシウムを、2mMの最終濃度で溶解物に添加し、37℃で1時間インキュベートした。「市販」陽性対照の場合、塩活性ヌクレアーゼ(SAN-HQ;Articzymes)を、複製陰性対照溶解物の0.5mL有効細胞ペレット容積当たり25Uで添加し、2mM MgClの存在下で37℃にて1時間インキュベートした。陰性対照溶解物は、ヌクレアーゼ無しでインキュベートした。処理した細胞溶解物を、低速で遠心分離して残屑を除去し、次いで上清を濾過(0.45μm)した後、さらなる分析のために-20℃≦で保管した。
【0475】
AAVベクター滴定アッセイ
AAVベクター滴定では、HEK293T細胞を、1.2×10細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。GFPコードウイルスベクターを使用して、1×ペニシリンストレプトマイシンを含む無血清培地中でおよそ5時間にわたって細胞を形質導入し、その後新鮮な血清含有培地を添加した。形質導入した細胞を、37℃、5%COで3日間インキュベートした。次いで、Attune NxT(Thermofisher)によるフローサイトメトリーのために培養物を調製し、GFP発現パーセントを測定し、ベクター力価を細胞数およびベクター希釈を使用して推定した。
【0476】
PicoGreen(登録商標)アッセイによる残留DNA検出
Quant-iT(商標)PicoGreen(登録商標)dsDNAアッセイキット(Life Technologies)を使用して、回収したベクター物質中の残留DNAをアッセイした。ラムダストックDNAを、TrisおよびEDTA(TE)緩衝液で系列希釈して、DNA標準物質を調製した。また、TE緩衝液を使用して、回収したベクター試料を1:10に希釈した後、PicoGreenアッセイ試薬(製造業者のプロトコールに従って調製した)を添加し、試料を暗所で2~5分間インキュベートした。試料中のPicoGreen試薬の蛍光を、EMマイクロプレートリーダー(Gemini)を使用してトップリードで測定した。
【0477】
定量的PCRアッセイによる残留DNA検出
DNAを、QIAamp DNAミニキット(QIAGEN)を使用してベクター試料から抽出した。抽出プロセス中、ヌクレアーゼ不含水(NFW)(Gibco)を含む模擬試料を、プロセス内対照(IPC)として使用した。
【0478】
抽出したDNAを、18S定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(qPCR)に供した。反応は、細胞由来18S DNAの短い断片を増幅した。ミックスは、SYBR(登録商標)Green PCR Mastermix(Life Technologies)、18Sプライマー(10mM Tris-HCl、pH7で調製)(Sigma)、およびNFWを含んでいた。
フォワードプライマー:5’ACCGCAGCTAGGAATAATGG3’
リバースプライマー:5’CTCAGTTCCGAAAACCAACA3’
【0479】
DNA標準物質を生成するために、線形化18Sプラスミドを、1×10コピー/5μlから1×10コピー/5μlまで系列希釈した。試料を1:5に希釈した後、反応ミックスを添加した。反応は、QuantStudio(商標)6 Flex System(Life Technologies)を使用して、標準化学qPCR条件下で実施した。qPCR試行は、QuantStudio(商標)6 Flex Systemソフトウェア(Life Technologies)を使用して設定および分析した。
【0480】
設定した対照は、PRC反応ミックス夾雑を制御するための無鋳型対照(NTC)、抽出プロセス中のDNA夾雑を制御するためのおよび最終的にはPCR阻害をモニターするためのIPC試料を含み、1×104コピーの18S標準DNAをIPC試料にスパイクすることによるスパイクPCR阻害対照(SPIC)が含まれていた。
【0481】
抽出したDNAを、KanR定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(qPCR)に供し、反応は、プラスミド由来KanR DNAの短い断片を増幅した。ミックスは、TaqMan(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Life Technologies)、KanRプライマー、およびプローブセット(10mM Tris-HCl、pH7で調製した)(Sigma)、およびNFWを含んでいた。
フォワードプライマー:5’AGATGGATTGCACGCAGGTT3’
リバースプライマー:5’TGCCCAGTCATAGCCGAATAG3’
プローブ:5’(FAM)CTCCACCCAAGCGGCCGGA(TAMRA)3’
【0482】
DNA標準物質を生成するために、線形化KanR+プラスミドを、1×10コピー/5μlから1×10コピー/5μlまで系列希釈した。試料を1:5に希釈してから、反応ミックスを添加した。反応は、QuantStudio(商標)6 Flex System(Life Technologies)を使用して、標準化学qPCR条件下で実施した。qPCR試行は、QuantStudio(商標)6 Flex Systemソフトウェア(Life Technologies)を使用して設定および分析した。
【0483】
設定した対照は、PRC反応ミックス夾雑を制御するための無鋳型対照(NTC)、抽出プロセス中のDNA夾雑を制御するためのおよび最終的にはPCR阻害をモニターするためのIPC試料を含み、1×104コピーのKanR標準DNAをIPC試料にスパイクすることによるスパイクPCR阻害対照(SPIC)が含まれていた。
【0484】
ゲル電気泳動法による残留DNA検出の可視化
LV粗ベクター上清をフィルター清澄化し、必要に応じて、37℃にて1時間プロテイナーゼKで処理した。清澄化した試料を、Amicon Ultra-15 3Kカットオフフィルターユニットで遠心分離して、DNAを最大150倍まで濃縮した。試料を、並行して、2%アガロース/TBEゲル(DNAを臭化エチジウムで可視化した)、および1kbp/100bpラダーでの標準的電気泳動に供した。
【0485】
DNAse Alert(商標)アッセイ(本明細書では「アッセイ1」と呼ばれる)によるヌクレアーゼ活性の定量化
ウイルスベクター培養培地内のヌクレアーゼ活性を定量化するために、DNAse Alert(商標)アッセイ(IDT)を使用することができ、使用した。アッセイの基盤は、ヌクレアーゼにより分解された場合にのみ蛍光シグナルを発する蛍光標識消光ヌクレオチドプローブを使用することである。キットは、5U/mLから0.08U/mLまで系列希釈されたBenzonase(登録商標)から構成された標準曲線を使用して、製造業者の推奨に基づいて使用した。分泌ヌクレアーゼを含むウイルスベクター培養上清は、蛍光活性が標準曲線の上限および下限内に入るように系列希釈されるべきである。Benzonase(登録商標)の単位の定義は(本研究の時点では)、「1単位は、超音波処理したサケ精子DNAを、37℃、pH8.0にて30分でΔA260が1.0と等価な酸可溶性オリゴヌクレオチドへと消化することになる(反応容積2.625ml)」である。この単位の定義は将来的に変更されることになることが予想されないため、この標準単位活性に対してQC照合された商業的に入手可能なBenzonase(登録商標)をDNAse Alertアッセイで使用して、本発明で達成される分泌ヌクレアーゼ活性を検証することができる。何らかの理由でBenzonase(登録商標)の供給業者が単位の定義を変更した場合でも、「古い」単位の定義と「新しい」単位の定義との関係性が公知であるため、本発明内で報告および特許請求されている分泌ヌクレアーゼ活性にも適用されることになることが予想される。
【0486】
上記明細書で言及されている刊行物は全て、参照により本明細書に組み込まれる。当業者には、本発明の範囲および趣旨から逸脱しない、本発明の上記方法および系の種々の改変および変動は明白だろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、特許請求されている本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含むウイルスベクター産生系であって、前記ヌクレアーゼは、前記産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、ウイルスベクター産生系。
(項目2)
1)ウイルスベクター成分をコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むヌクレアーゼヘルパー細胞を含むウイルスベクター産生系であって、前記ヌクレアーゼは、1)の前記産生細胞および2)の前記ヘルパー細胞の共培養物で発現および分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、ウイルスベクター産生系。
(項目3)
ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列をウイルスベクター産生細胞にトランスフェクトすることを含み、前記ウイルスベクター成分および前記ヌクレアーゼは、前記ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
(項目4)
ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、2)ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と接触させることを含み、前記ヌクレアーゼは、前記ヘルパー細胞で発現され、前記産生細胞と前記ヘルパー細胞との共培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
(項目5)
ウイルスベクターを産生するための方法であって、1)ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、2)ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞に由来する液体供給材料と接触させることを含み、前記ヌクレアーゼは、前記細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分
解する、方法。
(項目6)
ウイルスベクターを産生するための改良された方法において、改良は、核酸配列をウイルスベクター産生細胞に導入することを含み、前記核酸配列は、1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードし、前記ヌクレアーゼは、前記産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
(項目7)
ウイルスベクターを産生するための改良された方法において、改良は、ウイルスベクター成分を発現するウイルスベクター産生細胞を、ヌクレアーゼを発現するヌクレアーゼヘルパー細胞と共培養物中で接触させることを含み、前記ヌクレアーゼは、前記産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、方法。
(項目8)
細胞培養物は、6.5~7.2のpH範囲に維持される、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目9)
細胞外ヌクレアーゼは、SmNucA、VsEndA、VcEndA、およびBacNucBからなる群より選択される、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目10)
前記ヌクレアーゼは、細胞外ヌクレアーゼである、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目11)
前記ヌクレアーゼは、糖非特異的ヌクレアーゼである、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目12)
前記ヌクレアーゼは、配列番号3のSerratia marcescensヌクレアーゼAまたは配列番号3と少なくとも90%配列同一性を有するその改変体を含む、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目13)
前記ヌクレアーゼは、配列番号1のVibrio choleraeエンドヌクレアーゼIまたは配列番号1と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目14)
前記ヌクレアーゼは、配列番号5のVcEndA-12glc、配列番号6のVcEndA-123glc、配列番号7のVcEndA-124glc、配列番号8のVcEndA-134glc、配列番号9のVcEndA-13glc、配列番号10のVcEndA-14glc、および配列番号11のVcEndA-1glcからなる群より選択されるヌクレアーゼ改変体である、項目13に記載のウイルスベクター産生系または方法。(項目15)
前記ヌクレアーゼは、配列番号11のヌクレアーゼ改変体VcEndA-1glcである、項目13に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目16)
前記ヌクレアーゼは、塩活性ヌクレアーゼを含む、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目17)
前記塩活性ヌクレアーゼは、配列番号2のVibrio salmonicidaエンドヌクレアーゼIまたは配列番号2と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、項目16に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目18)
前記ヌクレアーゼは、配列番号4のBacNucBまたは配列番号4と少なくとも90%アミノ酸同一性を有するその改変体を含む、項目1~7のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目19)
前記ヌクレアーゼは、天然または非天然N末端分泌シグナルを含む、項目1~18のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目20)
ヌクレアーゼをコードする前記核酸配列は、潜在的なスプライス部位および/または不安定なエレメントを除去するように配列最適化されている、項目1~18のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目21)
ヌクレアーゼをコードする前記核酸配列は、前記産生細胞での発現のためにコドン最適化されている、項目1~18のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目22)
1つまたは複数の追加のヌクレアーゼをさらに含む、項目1~21のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目23)
前記ヌクレアーゼは、前記1つまたは複数の追加のヌクレアーゼの少なくとも1つに融合されている、項目22に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目24)
前記細胞培養物は、少なくとも約5リットルの容積の培地を含む、項目1~23のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目25)
前記細胞は、懸濁しているかまたは付着している、項目1~24のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目26)
前記細胞培養物は、無血清である、項目1~25のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目27)
前記産生細胞は、真核細胞である、項目1~26のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目28)
前記産生細胞は、哺乳動物細胞である、項目27に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目29)
前記産生細胞は、ヒト細胞である、項目28に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目30)
前記産生細胞は、HEK293細胞またはその派生物である、項目1~29のいずれか一項に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目31)
前記HEK293産生細胞は、HEK293T細胞である、項目30に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目32)
前記ウイルスベクター成分は、目的のヌクレオチド(NOI)を含む、項目1~31のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目33)
前記ウイルスベクター成分は、レトロウイルスベクター成分である、項目1~32のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目34)
前記レトロウイルスベクター成分は、レンチウイルスベクター成分である、項目33に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目35)
前記ウイルスベクター成分は、i)gag-pol;ii)env;iii)必要に応じて、レトロウイルスベクターのRNAゲノム;およびiv)必要に応じて、revまたはその機能的代用物を含む、項目34に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目36)
前記核酸配列の少なくとも2つは、同じ遺伝子座に位置する前記ウイルスベクター成分をコードするモジュール式構築物である、項目35に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目37)
前記核酸配列の少なくとも2つは、前記ウイルスベクター成分を逆向きおよび/または交互の向きにコードするモジュール式構築物である、項目35に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目38)
前記核酸配列の少なくとも2つは、gag-polおよび/またはenvをコードするモジュール式構築物であり、前記モジュール式構築物は、少なくとも1つの調節因子エレメントに関連している、項目35に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目39)
前記envは、VSV-G envである、項目35~38に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目40)
前記ヌクレアーゼは、一過性トランスフェクション後に前記細胞から発現および分泌される、項目1~39のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目41)
前記ヌクレアーゼは、前記細胞の安定的組込み後に前記細胞から発現および分泌される、項目1~39のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目42)
前記ヌクレアーゼの発現は、誘導性または条件付きであり、前記ヌクレアーゼをコードする前記核酸は、誘導性または条件付きプロモーターまたは調節エレメントを含む、項目41に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目43)
1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、前記ヌクレアーゼは、前記ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、前記産生細胞は、真核生物産生細胞である、産生細胞。
(項目44)
前記ヌクレアーゼはエンドヌクレアーゼである、項目43に記載の細胞。
(項目45)
エキソヌクレアーゼをコードする核酸配列をさらに含む、項目44に記載の細胞。
(項目46)
前記エンドヌクレアーゼは、前記エキソヌクレアーゼに融合されている、項目45に記載の細胞。
(項目47)
前記ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼである、項目43に記載の細胞。
(項目48)
前記エキソヌクレアーゼは、前記エンドヌクレアーゼに融合されている、項目48に記載の細胞。
(項目49)
一過性産生細胞である、項目43に記載の細胞。
(項目50)
安定産生細胞である、項目43に記載の細胞。
(項目51)
ヌクレアーゼ発現および分泌は、前記安定産生細胞での誘導性発現および分泌である、項目50に記載の細胞。
(項目52)
1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼ融合タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、前記ヌクレアーゼ融合タンパク質は、エンドヌクレアーゼドメインに融合されたエキソヌクレアーゼドメインを含み、前記ヌクレアーゼ融合タンパク質は、前記ウイルスベクター産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解し、前記産生細胞は、真核生物産生細胞である、産生細胞。
(項目53)
前記エンドヌクレアーゼは、VcEndAまたはその改変体である、項目52に記載の細胞。
(項目54)
前記エンドヌクレアーゼは、配列番号11のVcEndA-1glcである、項目52に記載の細胞。
(項目55)
1)ウイルスベクター成分;および2)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクター産生細胞を含むウイルスベクター産生系を含む細胞培養デバイスであって、前記ヌクレアーゼは、前記産生細胞で発現され、そして細胞培養物に分泌され、それによりウイルスベクター産生中に残留核酸を分解する、細胞培養デバイス。
(項目56)
撹拌タンクバイオリアクターまたはウェーブバッグまたはiCELLis(登録商標)バイオリアクターである、項目46に記載の細胞培養デバイス。
(項目57)
ウイルスベクター産生中に残留核酸を分解することが可能な分泌ヌクレアーゼの改変体であって、配列番号11のアミノ酸配列を含む改変体。
(項目58)
真核細胞の分泌経路を介して発現される、細胞保持および/または細胞付随の増加を示す修飾ヌクレアーゼであって、そのC末端に保持シグナルを含む修飾ヌクレアーゼ。
(項目59)
小胞体(ER)および/またはゴルジ体区画に局在化し、それにより対応する未修飾ヌクレアーゼの細胞保持と比較して、細胞保持の増加がもたらされる、項目58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
(項目60)
ER保持欠損相補群のER受容体に結合する、項目58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
(項目61)
前記保持シグナルは、コンセンサス[KRHQSA]-[DENQ]-E-LまたはKKXXのC末端にある、項目58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
(項目62)
前記保持シグナルは、コンセンサスKDELのC末端にある、項目58に記載の修飾ヌクレアーゼ。
(項目63)
項目58に記載の修飾ヌクレアーゼを発現する真核細胞。
(項目64)
項目63に記載の細胞を含むウイルスベクター産生系。
(項目65)
項目1~42のいずれか一項に規定されるウイルス産生細胞を含むウイルスベクターを産生するための産生細胞。
(項目66)
項目1~42のいずれか一項に規定されるウイルス産生細胞を含む、項目43またはそれに従属するいずれかの項目に記載の産生細胞。
(項目67)
項目1~42のいずれか一項に規定されるウイルス産生細胞を含む、項目52またはそれに従属するいずれかの項目に記載の産生細胞。
(項目68)
項目1~42のいずれか一項に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
(項目69)
項目43またはそれに従属するいずれかの項目に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
(項目70)
項目52またはそれに従属するいずれかの項目に規定される産生細胞を含む細胞培養デバイス。
(項目71)
項目57~62のいずれか一項に規定されるヌクレアーゼを含む、項目1~42のいずれか一項に記載のウイルスベクター産生系または方法。
(項目72)
ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約1単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する項目のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
(項目73)
前記ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約10単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する項目のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
(項目74)
前記ウイルスベクター産生培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約100単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、先行する項目のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
(項目75)
前記ヌクレアーゼ活性は、前記ウイルスベクター産生細胞により供給される、項目72~74に記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
(項目76)
前記ヌクレアーゼ活性は、ヌクレアーゼヘルパー細胞により供給される、項目72~74に記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
(項目77)
ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約10単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
(項目78)
ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約100単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
(項目79)
ヘルパー細胞培養物内の分泌ヌクレアーゼ活性は、本明細書でアッセイ1として示されているアッセイで決定可能な、1mL当たり少なくとも約2000単位のBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ活性当量である、ヌクレアーゼヘルパー細胞。
(項目80)
ヌクレアーゼ発現カセットは、CMVなどの強力なプロモーターを利用する、先行する項目のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
(項目81)
酪酸ナトリウム追加補充の時点または追加補充後に主ウイルスベクター産生容器に添加される、ヌクレアーゼヘルパー細胞を利用する、先行する項目のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
(項目82)
ウイルスベクター産生容器内のヌクレアーゼの発現は、さらなるヌクレアーゼ処理を必要とせずに下流加工処理の使用を可能にする、先行する項目のいずれかに記載のウイルスベクター産生系、方法、産生細胞、細胞培養デバイス、分泌ヌクレアーゼの改変体、修飾ヌクレアーゼ、または真核細胞。
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【配列表】
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【外国語明細書】