(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032917
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】たわみ量算出装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/404 20060101AFI20240305BHJP
B23Q 15/12 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G05B19/404 G
B23Q15/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012748
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2019203497の分割
【原出願日】2019-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】平沼 琢也
(57)【要約】
【課題】より簡易にたわみ量を得ることができるたわみ量算出装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】産業機械を構成する構成要素の基準方向に対するたわみ量を算出する、たわみ量算出装置であって、前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素の自重によるたわみ量を算出する自重たわみ量算出部と、前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素について前記基準方向に対するたわみ角度を算出するたわみ角度算出部と、前記自重たわみ量及び前記たわみ角度に基づいて、前記構成要素の位置座標を補正する位置座標補正部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械を構成する構成要素の基準方向に対するたわみ量を算出する、たわみ量算出装置であって、
前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素の自重によるたわみ量を算出する自重たわみ量算出部と、
前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素について前記基準方向に対するたわみ角度を算出するたわみ角度算出部と、
前記自重たわみ量及び前記たわみ角度に基づいて、前記構成要素の位置座標を補正する位置座標補正部と、
を備えるたわみ量算出装置。
【請求項2】
前記構成要素の機械上の点の実際の位置座標を取得する工具位置座標取得部と、
前記構成要素の機械上の点の実際の位置座標と補正された位置座標とに基づいて、前記産業機械の組立誤差を算出する組立誤差算出部と、
をさらに備え、
位置座標補正部は、算出された組立誤差に基づいて前記構成要素の機械上の点の位置座標をさらに補正する請求項1に記載のたわみ量算出装置。
【請求項3】
産業機械を構成する構成要素の基準方向に対するたわみ量を算出する、たわみ量算出装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素の自重によるたわみ量を算出する自重たわみ量算出部、
前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素の機械上の点について前記基準方向に対するたわみ角度を算出するたわみ角度算出部、
前記自重たわみ量及び前記たわみ角度に基づいて、前記構成要素の機械上の点の位置座標を補正する位置座標補正部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、たわみ量算出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、コラムに対して梁を介して工具を配置した産業機械が知られている。このような産業機械では、例えば、工具は、梁の長さ方向に沿って移動可能に、梁に支持される。
【0003】
ところで、このような産業機械では、工具及び梁の自重により、傾斜、たわみ等
の変形が生じることがある。そこで、変形に基づいて、産業機械を動作させるための指令値を補正する数値制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の数値制御装置では、ワークの変位と工具の変位との相対変位を測定して、変位予測モデルが作成される。そして、相対変位と、予測される相対変位予測値との偏差を抑制するように産業機械を動作させている。これにより、特許文献1に記載の数値制御装置では、より高い精度でワークを加工することができる。
【0006】
一方、ワーク及び工具の三次元位置における誤差量を測定する必要がある。そのため、補正には、膨大な点数の計測が必要であり、処理が煩雑であった。そこで、より簡易にたわみ量を得ることができれば好適である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、産業機械を構成する構成要素の基準方向に対するたわみ量を算出する、たわみ量算出装置であって、前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素の自重によるたわみ量を算出する自重たわみ量算出部と、前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素について前記基準方向に対するたわみ角度を算出するたわみ角度算出部と、前記自重たわみ量及び前記たわみ角度に基づいて、前記構成要素の位置座標を補正する位置座標補正部と、を備えるたわみ量算出装置に関する。
【0008】
(2)また、本開示は、産業機械を構成する構成要素の基準方向に対するたわみ量を算出する、たわみ量算出装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素の自重によるたわみ量を算出する自重たわみ量算出部、前記構成要素の理想モデルに基づいて、前記構成要素の機械上の点について前記基準方向に対するたわみ角度を算出するたわみ角度算出部、前記自重たわみ量及び前記たわみ角度に基づいて、前記構成要素の機械上の点の位置座標を補正する位置座標補正部、として機能させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より簡易にたわみ量を得ることができるたわみ量算出装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るたわみ量算出装置と産業機械との関係を示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の産業機械の他の例を示す概略構成図である。
【
図3】第1実施形態の産業機械のさらに他の例を示す概略構成図である。
【
図4】第1実施形態の産業機械のさらに他の例を示す概略構成図である。
【
図5】第1実施形態のたわみ量算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係るたわみ量算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】第2実施形態のたわみ量算出装置の指令値の位置を示す概念図である。
【
図8】本開示の第3実施形態に係るたわみ量算出装置の組立誤差成分を示す概念図である。
【
図9】第3実施形態のたわみ量算出装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の各実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムについて、
図1から
図9を参照して説明する。
まず、各実施形態のたわみ量算出装置1の概要について説明する。
【0012】
たわみ量算出装置1は、例えば、産業機械100を制御する装置である。たわみ量算出装置1は、産業機械100を構成する構成要素のたわみ量を算出する装置である。たわみ量算出装置1は、例えば、構成要素の一例として、工具を支持する支持体101(
図1、
図2参照)及びワーク300を支持するテーブル114(
図3、
図4参照)のたわみ量を算出する。具体的には、たわみ量算出装置1は、支持体101及びテーブル114の実際のたわみ量として、理想的な理想モデルを用いてたわみ量を算出する。すなわち、たわみ量算出装置1は、実際のたわみ量として、片持ち梁のたわみ量を算出するための片持ち梁モデル又は両持ち梁のたわみ量を算出するための両持ち梁モデルを用いてたわみ量を算出する。
【0013】
一例として、たわみ量算出装置1は、
図1に示すような、工具102を支持する支持体101(片持ち梁型機械)のたわみ量について片持ち梁モデルを用いてたわみ量を算出する。また、他の例として、たわみ量算出装置1は、
図2に示すような、工具102を支持する支持体101(門形機械)のたわみ量について両持ち梁モデルを用いてたわみ量を算出する。また、さらに他の例として、たわみ量算出装置1は、
図3に示すような、U字型のテーブル114のたわみ量について、両持ち梁モデルを用いてたわみ量を算出する。また、さらに他の例として、たわみ量算出装置1は、
図4に示すような、スライダ上の端にワーク300を支持するようなテーブル114のたわみ量について、片持ち梁モデルを用いてたわみ量を算出する。すなわち、たわみ量算出装置1は、複数の構成要素のそれぞれについて、理想モデルである片持ち梁モデル又は両持ち梁モデルを用いてたわみ量を算出する。そして、たわみ量算出装置1は、それぞれの構成要素の機械上の点(構成要素の任意の位置、例えば、工具102の先端位置、支持体101の任意の位置、及びテーブル114の任意の位置)のたわみ量について、影響を受ける構成要素のたわみ量を合算することで理想値を求めることができる。
【0014】
そして、たわみ量算出装置1は、例えば、理想モデルを用いて、産業機械の軸の移動に起因する支持体及びテーブルの(全ての構成要素)の実際のたわみ量を算出する。これにより、たわみ量算出装置1は、任意の構成要素を動作させた際に、構成要素の機械上の点の実際の位置について、純粋な運動学計算結果に対してどの程度ずれているかを求めることができる。以下の各実施形態では、理解を容易にするために、たわみ量を算出する位置(機械上の点)は、工具102の位置(先端位置)として説明される。
【0015】
次に、たわみ量算出装置1によって制御される産業機械100の構成と、算出される理想モデルのたわみ角及びたわみ量とについて、片持ち梁型と両持ち梁型とに分けて説明する。
【0016】
(片持ち梁型)
産業機械100は、複数の構成要素によって構成される。産業機械100は、例えば
図1に示すように、構成要素として、支持体101と、工具102と、を備える。産業機械100は、例えば、テーブル114に配置されるワーク300を加工する機械である。
【0017】
支持体101は、工具102を支持すべく設けられる。支持体101は、コラム111と、片持ち梁112と、を備える。
【0018】
コラム111は、例えば、柱状体である。コラム111は、長さ方向を上下方向(例えば、鉛直方向)に向けた状態に配置される。なお、コラム111の上下方向(鉛直方向)は、以下の実施形態において、y軸方向とも記述される。コラム111は、片持ち梁112の基端側を直接的又は間接的に支持する。
【0019】
片持ち梁112は、例えば、柱状体である。片持ち梁112の一端は、コラム111の一端に支持される。片持ち梁112は、例えば、長さ方向を横方向(例えば、水平方向)に向けた状態に配置される。なお、片持ち梁112が向けられる横方向は、以下の実施形態において、基準方向(x軸方向)とも記述される。片持ち梁112は、工具102を直接的又は間接的に支持する。
【0020】
工具102は、例えば、回転工具である。工具102は、片持ち梁112に支持される。具体的には、工具102は、片持ち梁112の長さ方向に沿って移動可能に支持される。工具102は、例えば、鉛直下方に先端を向けた状態で片持ち梁112に支持される。
【0021】
以上の産業機械100によれば、支持体101は、その自重及び工具102の重さによりたわむ。産業機械100の理想モデルにおいて、片持ち梁112の長さをL
x、片持ち梁112の断面積をS
x、片持ち梁112の密度をρ
xとすると、片持ち梁112の自重による荷重は、
【数1】
となる。そして、単位長さ当たりの荷重は、
【数2】
となる。
片持ち梁112の自由端(基準点)からの距離xにおけるモーメントM(x)は、
【数3】
となる。
【0022】
片持ち梁112の曲げモーメントによる片持ち梁112のたわみにより、片持ち梁112に掛かる曲げモーメントは、
【数4】
となる。片持ち梁112の位置xにおけるたわみ量をyとすると、Eをヤング率、Iを断面2次モーメントとして、
【数5】
となる。
【0023】
片持ち梁112の位置xにおける、基準方向(x軸方向)とのなす角度をθとすると、
【数6】
となる。x=Lxのときθ=0なので、
【数7】
となる。そして、片持ち梁112の位置xにおけるたわみ量δは、
【数8】
となり、x=L
xのときδ=0なので、
【数9】
となる。
【0024】
片持ち梁112に沿って移動する工具102による、片持ち梁112の曲げモーメントは、工具102の位置x
1,x
2を
【数10】
として、工具102の質量をM
t、工具102による荷重W
t=M
tgとして、片持ち梁112の自由端からの距離xにおけるモーメントM(x)は、工具位置x
tを
【数11】
としたときに、
【数12】
となる。
【0025】
工具102の曲げモーメントによる片持ち梁112のたわみは、
【数13】
となる。片持ち梁112の位置xにおける、y軸方向のたわみ量をδ、なす角度をθとすると、
【数14】
となる。そして、コラム111のたわみ量は、モーメント力から以下の数15で求められる。
【数15】
慣性力や振動についても、力(又は加速度)の方向と大きさがわかれば、重力と同様に求めることができる。上記たわみ量については、たわみ量算出装置1が備える自重たわみ量算出部13が算出する。自重たわみ量算出部13は、産業機械100の理想モデルに基づいて、片持ち梁112及び工具102の自重によるたわみ量を算出する。
【0026】
(両持ち梁型)
両持ち梁型の産業機械100は、例えば、支持体101が門形である点で片持ち梁型と異なる。すなわち、産業機械100は、2つのコラム111に両持ち梁113の両端のそれぞれが支持される点で片持ち梁型と異なる。
【0027】
以上の産業機械100によれば、支持体101は、その自重及び工具102の重さによりたわむ。産業機械100の理想モデルにおいて、長さlの両持ち梁113自体に単位長さあたりwの分布荷重が加わっている場合、両持ち梁113の一端からの距離xにおけるモーメントM(x)は、
【数16】
となる。ここで、Eは、ヤング率である。Iは、断面2次モーメントである。
【0028】
両持ち梁113の端からの距離xにおけるたわみ角θ(x)及びたわみ量δ(x)は
θ(0)=0、δ(0)=0であるため、
【数17】
となる。
【0029】
産業機械100の理想モデルにおいて、長さlの両持ち梁のxの位置にWの集中荷重が加わっている場合、両持ち梁113の一端からの距離xにおけるモーメントM(x)は、
【数18】
で求められる。ここで、Eは、ヤング率である。Iは、断面2次モーメントである。
【0030】
両持ち梁113の端からの距離xにおけるたわみ角θ(x)及びたわみ量δ(x)は
θ(0)=0、δ(0)=0であるため、
【数19】
となる。
【0031】
以下の各実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムでは、簡便のために、コラム111及び片持ち梁112を有する支持体101に対して、直接的又は間接的に支持される工具102の基準方向に対するたわみ量を算出する例(片持ち梁型機械)が説明される。なお、以下の各実施形態においては、基準方向はx方向であり、片持ち梁112の自由端の位置が基準点として説明される。また、
図2及び
図3の門形機械及びU字型のテーブル114のように、両持ち梁として考えられる構成についてたわみ量を算出する場合には、両持ち梁モデルにおけるたわみ角及びたわみ量が用いられる。
【0032】
[第1実施形態]
次に、本開示の第1実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムについて、
図5を参照して説明する。
本実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムは、上記の理想モデルで示した産業機械100に比べ、たわみ量を算出するのが困難な場合においてたわみ量を算出するのに好適な装置である。たわみ量算出装置1及びプログラムは、例えば、複雑な形状、構成、又は複数の材質で構成されている産業機械100について、たわみ量を算出することができる。たわみ量算出装置1は、
図5に示すように、実たわみ量取得部10と、理想モデル格納部11と、理想たわみ量算出部12と、自重たわみ量算出部13と、を備える。なお、たわみ量は、いわゆる動的な誤差であり、工具102のx軸方向への移動によって変化する誤差である。
【0033】
実たわみ量取得部10は、例えば、CPUが動作することで実現される。実たわみ量取得部10は、支持体101の任意の位置に実荷重が加えられた場合において付加前後の所定の位置における変位量の計測値を実たわみ量として取得する。本実施形態において、実たわみ量取得部10は、片持ち梁112の位置を計測するセンサ200から、片持ち梁112の任意の位置を取得する。実たわみ量取得部10は、例えば、任意の位置における、荷重前後のy軸方向への変位量δを変位量として取得する。
【0034】
理想モデル格納部11は、例えば、ハードディスク等の二次記録媒体である。理想モデル格納部11は、理想的な支持体101及び工具102の機械構成に関する情報を構成情報として格納する。なお、「理想的」とは、上記数14で示されるたわみ量δ及びなす角度θにより近い期待値を特性として示すことをいう。理想モデル格納部11は、例えば、上述したたわみ量を算出した産業機械100の機械構成を構成情報として格納する。
【0035】
理想たわみ量算出部12は、例えば、CPUが動作することにより実現される。理想たわみ量算出部12は、産業機械100の理想モデルに基づいて、実たわみ量の理想値を理想たわみ量として算出する。
【0036】
自重たわみ量算出部13は、例えば、CPUが動作することにより実現される。自重たわみ量算出部13は、実たわみ量及び理想たわみ量に基づいて、支持体101及び工具102の自重による自重たわみ量を算出する。自重たわみ量算出部13は、例えば、実たわみ量と理想たわみ量との差を自重たわみ量として算出する。
【0037】
次に、本実施形態のたわみ量算出装置1の動作の流れについて説明する。
【0038】
まず、実たわみ量取得部10は、センサから出力される信号を用いて、任意の位置の実たわみ量を取得する。なお、本実施形態では、実たわみ量取得部10は、計測位置や荷重量を変更した5パターンを実たわみ量として取得する。
【0039】
次いで、理想たわみ量算出部12は、理想モデルの構成情報を理想モデル格納部11から読み出す。理想たわみ量算出部12は、理想たわみ量δ
1(x)について、以下の数16を用いて算出する。なお、数16は、数14と実質的に同じである。
【数20】
【0040】
次いで、自重たわみ量算出部13は、片持ち梁112の自重によるたわみモデル(たわみ量δ
2(x))として以下の数21を算出する。
【数21】
具体的には、自重たわみ量算出部13は、実たわみ量をδ(x)として、
【数22】
を用いてδ
2(x)を算出する。自重たわみ量算出部13は、5パターンの実たわみ量のそれぞれについて当てはめることで、数21の係数a,b,c,d,eについて求めることができる。
【0041】
次に、プログラムについて説明する。
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0042】
以上、第1実施形態のたわみ量算出装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(1)産業機械を構成する構成要素の基準方向に対するたわみ量を算出するたわみ量算出装置1であって、構成要素の任意の位置に実荷重が加えられた場合において付加前後の所定の位置における変位量の計測値を実たわみ量として取得する実たわみ量取得部10と、構成要素の理想モデルに基づいて、実たわみ量の理想値を理想たわみ量として算出する理想たわみ量算出部12と、実たわみ量及び理想たわみ量に基づいて、構成要素の自重による自重たわみ量を算出する自重たわみ量算出部13と、を備える。これにより、理想モデルで示した産業機械100に比べ、たわみ量を算出するのが困難な場合であっても、少ない点数の測定でたわみ量を算出することができる。したがって、より簡易にたわみ量を得ることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムについて、
図6及び
図7を参照して説明する。第2実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第2実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムは、片持ち梁112及び工具102の自重によるたわみ量及びたわみ角度に基づいて、工具102の位置座標を補正することが可能な装置である。たわみ量算出装置1は、
図6に示すように、機械情報格納部14と、指令値取得部15と、たわみ角度算出部16と、位置座標補正部17と、移動制御部18と、を備える。たわみ量算出装置1は、例えば、数値制御装置(図示せず)の一機能として設けられる。
【0044】
機械情報格納部14は、例えば、ハードディスク等の二次記憶媒体である。機械情報格納部14は、上述のたわみモデルを反映した産業機械100の機械情報を格納する。機械情報格納部14は、例えば、工具102の位置に対するたわみ量を含む機械構成の情報を格納する。具体的には、機械情報格納部14は、上記理想モデル又は第1実施形態によって得られたたわみモデルを反映した産業機械100の機械情報を格納する。
【0045】
指令値取得部15は、例えば、CPUが動作することにより実現される。指令値取得部15は、例えば、予め設定された動作プログラムから得られる動作指令に基づく指令値を取得する。
【0046】
たわみ角度算出部16は、例えば、CPUが動作することにより実現される。たわみ角度算出部16は、支持体101の理想モデルに基づいて、工具102について基準方向に対するたわみ角度を算出する。
【0047】
位置座標補正部17は、例えば、CPUが動作することにより実現される。位置座標補正部17は、片持ち梁112及び工具102の自重たわみ量及びたわみ角度に基づいて、工具102の位置座標を補正する。位置座標補正部17は、例えば、取得された指令値に基づいて、移動予定の工具102の位置に応じて求められるたわみ量及びたわみ角度を用いて工具102の位置座標を補正する。
【0048】
移動制御部18は、例えば、CPUが動作することにより実現される。移動制御部18は、例えば、位置座標補正部17によって補正された位置に工具102を移動させるためのパルスを産業機械100に出力する。
【0049】
次に、本実施形態にたわみ量算出装置1の動作について説明する。
まず、指令値取得部15は、動作指令に基づく指令値を取得する。次いで、たわみ角度算出部16は、たわみ角度を算出する。次いで、位置座標補正部17は、機械情報格納部14から機械情報を取得する。また、位置座標補正部17は、取得した機械情報と、指令値とを用いて、指令値で示される工具102の位置座標を補正する。位置座標補正部17は、
図7に示すように、例えば、指令値をx=x
c,y=y
cとすると、たわみ量δ及びたわみ角度θを考慮して、以下の数23のように指令値(工具102の位置座標)を補正する。
【数23】
なお、δ(x)及びθ(x)は、数24のように定義される。
【数24】
移動制御部18は、産業機械100に、補正された位置に工具102を移動させるためのパルスを出力する。
【0050】
以上、第2実施形態のたわみ量算出装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(2)たわみ量算出装置1は、支持体101の理想モデルに基づいて、構成要素について基準方向に対するたわみ角度を算出するたわみ角度算出部16と、自重たわみ量及びたわみ角度に基づいて、構成要素の機械上の点の位置座標を補正する位置座標補正部17と、をさらに備える。これにより、実際にたわみ量を加味して補正した位置に工具102の先端を位置させることができる。したがって、加工精度を向上することができる。
【0051】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムについて、
図8及び
図9を参照して説明する。第3実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第3実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムでは、たわみ量に加えて、組立誤差による誤差成分を補正する。すなわち、第3実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムでは、たわみ以外の誤差を組立誤差として誤差成分を補正する。第3実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムでは、例えば、組立のみならず、経年劣化による変位誤差についても誤差成分として補正する。なお、第3実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムは、
図8に示すように、誤差計測量から、たわみ誤差成分を除去することで、組立誤差成分を算出する。
【0052】
第3実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムは、
図9に示すように、第2実施形態の構成に加えて、工具位置座標取得部19と、組立誤差算出部20と、を備える。また、第3実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムは、位置座標補正部17が、組立誤差を含めて算出された組立誤差に基づいて工具102の位置座標をさらに補正する点で第1及び第2実施形態と異なる。
【0053】
工具位置座標取得部19は、例えば、CPUが動作することにより実現される。工具位置座標取得部19は、工具102の実際の位置座標を取得する。工具位置座標取得部19は、例えば、センサ200から得られる信号に基づいて、工具102の実際の位置座標を取得する。
【0054】
組立誤差算出部20は、例えば、CPUが動作することにより実現される。組立誤差算出部20は、工具102の実際の位置座標と補正された座標位置とに基づいて、産業機械100の組立誤差を算出する。組立誤差算出部20は、例えば、工具102の実際の位置座標からたわみ量の差分を組立誤差として算出する。
【0055】
次に、本実施形態に係るたわみ量算出装置1及びプログラムの動作の流れを説明する。
まず、工具位置座標取得部19は、センサ200から工具102の位置座標を取得する。たわみ以外の誤差が無い場合、工具102の位置座標x
e、y
eは、数25のようになる。
【数25】
すなわち、数26がともに0にならない場合、その値をたわみ以外の誤差とする。
【数26】
【0056】
位置座標補正部17は、数26で得られた組立誤差をたわみ量に加えて、指令値の工具位置を補正する。
【0057】
以上、第3実施形態のたわみ量算出装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(3)たわみ量算出装置1は、構成要素の機械上の点の実際の位置座標を取得する工具位置座標取得部19と、構成要素の機械上の点の実際の位置座標と補正された位置座標とに基づいて、産業機械100の組立誤差を算出する組立誤差算出部20と、をさらに備え、位置座標補正部17はさらに、算出された組立誤差に基づいて構成要素の機械上の点の位置座標を補正する。これにより、産業機械100固有の組立誤差についても加味して工具102の位置を補正することができる。したがって、産業機械100の加工精度をより向上することができる。
【0058】
以上、本開示のたわみ量算出装置及びプログラムの好ましい各実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記第1実施形態において、実たわみ量取得部10は、センサ200を用いて実たわみ量を取得したが、これに制限されない。実たわみ量取得部10は、CAD等のシミュレーションにより実たわみ量を取得してもよい。
【0059】
また、上記第2実施形態において、片持ち梁112に掛かる力が一定のモーメント力である場合、工具102のy軸方向への移動は、大きな円弧上の移動とみなすことができる。例えば、円弧の半径をRとして、以下の数27のように考えることができる。このような考えをたわみモデルに含めてもよい。
【数27】
【0060】
また、上記第1から第3実施形態は、適宜組み合わされてたわみ量算出装置1及びプログラムが構成されてもよい。すなわち、1つのたわみ量算出装置1に第1実施形態から第3実施形態を任意に組み合わせた構成が含まれてもよい。
【0061】
また、上記第2及び第3実施形態において、たわみ量算出装置1は、たわみ角度算出部16を備えるとして説明したがこれに制限されない。機械情報格納部14は、たわみ角度のモデルを機械情報とともに格納してもよい。位置座標補正部17は、機械情報格納部14からたわみ角度のモデルを読み出して、たわみ角度を得てもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 たわみ量算出装置
10 実たわみ量取得部
12 理想たわみ量算出部
13 自重たわみ量算出部
15 指令値取得部
16 たわみ角度算出部
17 位置座標補正部
19 工具位置座標取得部
20 組立誤差算出部
100 産業機械
101 支持体
102 工具
111 コラム
112 片持ち梁