(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032925
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/215 20060101AFI20240305BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08J3/215
C08J5/00 CEP
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013358
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2020138788の分割
【原出願日】2019-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 涼子
(57)【要約】
【課題】機械強度が良好でかつ物性の異方性及びそりが少ない樹脂成形体の製造を可能にする、樹脂成形体の製造方法の提供。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記方法が、(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、を含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合することによって、熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
前記熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーが、互いに異なる繊維長を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料として使用する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1~50質量部を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記主供給材料の構成成分が溶融混合系中で互いに及び補助供給材料と混合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1~50質量部を含む成形体である第1の材料と、前記第1の材料と組成の異なる第2の材料との組合せである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5~50質量%にて行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶融混合が溶融混練である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂成形体がペレットである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融混合が溶融混練であり、前記溶融混練と前記成形とを単一の混練機内で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比が1.05~3.0であり、
前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂成形体において、MD方向の成形収縮率が0.2%~0.7%であり、TD方向の成形収縮率が0.5%~1.0%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料の少なくとも一部として前記樹脂組成物形成工程に戻すことを更に含み、
前記樹脂成形体中のセルロースナノファイバーの総量100質量%に対する、前記樹脂組成物形成工程を2回以上経ているセルロースナノファイバーの比率が、20質量%以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂成形体の黄色度(YI)値と前記補助供給材料の黄色度(YI)値との差が10以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記(B)セルロースナノファイバーが変性セルロースナノファイバーである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記変性セルロースナノファイバーの置換度が0.5~1.5である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂及びセルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、軽く、加工特性に優れるため、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の多方面に広く使用されている。しかしながら、樹脂単体では、機械特性、摺動性、熱安定性、寸法安定性等が不十分である場合が多く、樹脂と各種無機材料をコンポジットしたものが一般的に用いられている。
【0003】
熱可塑性樹脂をガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイなどの無機充填剤である強化材料で強化した樹脂組成物は、比重が高いため、得られる樹脂成形体の重量が大きくなるという課題がある。そこで近年、樹脂の新たな強化材料として、環境負荷の低いセルロースが用いられるようになってきている。
【0004】
セルロースは、その単体特性として、アラミド繊維に匹敵する高い弾性率と、ガラス繊維よりも低い線膨張係数を有することが知られている。また、真密度が1.56g/cm3と、低く、一般的な熱可塑性樹脂の補強材として使用されるガラス(密度2.4~2.6g/cm3)やタルク(密度2.7g/cm3)と比較し圧倒的に軽い材料である。
【0005】
セルロースは、樹木を原料とするもののほか、麻・綿花・ケナフ・キャッサバ等を原料とするものなど多岐にわたっている。さらには、ナタデココに代表されるようなバクテリアセルロースなども知られている。これら原料となる天然資源は地球上に大量に存在し、この有効利用のために、樹脂中にセルロースをフィラーとして活用する技術が注目を浴びている。
【0006】
CNF(セルロースナノファイバー)は、パルプ等を原料とし、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミルやディスクミルといった粉砕法により解繊することにより得られるものであり、水中において微細なナノ分散と呼ばれるレベルの高度の分散状態やネットワークを形成していることが知られている。
【0007】
樹脂中にCNFを配合するためには、CNFを乾燥し粉末化する必要があるが、CNFは水と分離する過程で、微分散状態から、強固な凝集体となり、再分散しにくいといった課題がある。この凝集力はセルロースが持つ水酸基による水素結合により発現されており、非常に強固であると言われている。
【0008】
そのため、CNFの持つ性能を充分に発現させるためには、セルロースが持つ水酸基による水素結合を緩和する必要がある。また水素結合の緩和を実現できても、解繊された状態(ナノメートルサイズ(すなわち1μm未満))を樹脂中で維持することは困難である。
【0009】
特許文献1は、(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物であって、前記化学修飾セルロースナノファイバー及び熱可塑性樹脂が下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R(SPcnf/SPpol)が0.87~1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上である、を満たす繊維強化樹脂組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載される技術は、分散性を改善した繊維と当該繊維が分散され易い樹脂とを好適に複合化することで、セルロースナノファイバーが良好に分散している繊維強化樹脂組成物を提供しようとするものであり、当該技術によれば、セルロースナノファイバーの分散性をある程度向上させることができると考えられる。しかし、樹脂組成物中でのセルロースナノファイバーの分散性を向上させるためにセルロースナノファイバーを化学的及び/又は物理的に処理した場合、セルロースナノファイバーの劣化も生じ、当該セルロースナノファイバーによる補強効果が十分得られなくなるという問題がある。
【0012】
一方、繊維長が大きいセルロースナノファイバーは、補強効果に優れ、これを樹脂組成物中に存在させた場合には当該樹脂組成物に良好な機械強度を与えることができる。しかしこのような大繊維長のセルロースナノファイバーは、樹脂組成物中で配向しやすいことから、当該樹脂組成物の物性(例えば、成形収縮率や熱膨張係数)の異方性(すなわち方向による物性差)をもたらす原因となっていた。この異方性は、大型成形品を成形した際に、そり等の発生の要因となることが知られている。
【0013】
このような異方性を抑制する手段としては、例えば、セルロースナノファイバーを樹脂中に微分散させることが挙げられる。この微分散の達成のためには、例えば二軸押出機や多軸押出機を用いて、強力なせん断を与える方法が一般に採られている。しかしながらこの方法では、セルロースが強い熱履歴で大きく変色し、極度に着色した成形体を与えるといった不具合を起こすことが、近年問題となっている。また、押出機による加工は、ある割合でショートパスすることが知られており、単純な混練のみでは、十分な分散が得られず、巨大な凝集塊(具体的には直径が5μm以上、場合によっては数百μm以上)が混在する組成物となってしまうという課題がある。一方で、強力なせん断を受けたセルロースナノファイバーは、その繊維長が短くなる為か、例えば引張強度が著しく低下するという不具合も呈するようになる。
このように、従来技術によっては、機械強度が良好で、物性の異方性及びそりが少なく、かつ熱による着色を抑制したセルロースナノファイバー含有樹脂組成物は得られていなかった。
【0014】
本発明は上記の課題を解決し、セルロースナノファイバーを含み機械強度が良好でかつ物性の異方性及びそりが少なく、熱による着色の抑制された樹脂成形体の製造を可能にする、樹脂成形体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において、セルロースナノファイバーに特異な態様で熱履歴を与えることで上記課題が解決され得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] (A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含む、方法。
[2] (A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合することによって、熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含む、方法。
[3] 前記熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーが、互いに異なる繊維長を有する、上記態様2に記載の方法。
[4] 前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料として使用する、上記態様1~3のいずれかに記載の方法。
[5] 前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1~50質量部を含む、上記態様1~4のいずれかに記載の方法。
[6] 前記主供給材料の構成成分が溶融混合系中で互いに及び補助供給材料と混合される、上記態様1~5のいずれかに記載の方法。
[7] 前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1~50質量部を含む成形体である第1の材料と、前記第1の材料と組成の異なる第2の材料との組合せである、上記態様1~6のいずれかに記載の方法。
[8] 前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5~50質量%にて行う、上記態様1~7のいずれかに記載の方法。
[9] 前記溶融混合が溶融混練である、上記態様1~8のいずれかに記載の方法。
[10] 前記樹脂成形体がペレットである、上記態様1~9のいずれかに記載の方法。
[11] 前記溶融混合が溶融混練であり、前記溶融混練と前記成形とを単一の混練機内で行う、上記態様10に記載の方法。
[12] 前記樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比が1.05~3.0であり、
前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上である、上記態様1~11のいずれかに記載の方法。
[13] 前記樹脂成形体において、MD方向の成形収縮率が0.2%~0.7%であり、TD方向の成形収縮率が0.5%~1.0%である、上記態様1~12のいずれかに記載の方法。
[14] 前記方法が、前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料の少なくとも一部として前記樹脂組成物形成工程に戻すことを更に含み、
前記樹脂成形体中のセルロースナノファイバーの総量100質量%に対する、前記樹脂組成物形成工程を2回以上経ているセルロースナノファイバーの比率が、20質量%以下である、上記態様1~13のいずれかに記載の方法。
[15] 前記樹脂成形体の黄色度(YI)値と前記補助供給材料の黄色度(YI)値との差が10以下である、上記態様1~14のいずれかに記載の方法。
[16] 前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドである、上記態様1~15のいずれかに記載の方法。
[17] 前記(B)セルロースナノファイバーが変性セルロースナノファイバーである、上記態様1~16のいずれかに記載の方法。
[18] 前記変性セルロースナノファイバーの置換度が0.5~1.5である、上記態様17に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セルロースナノファイバーを含み機械強度が良好でかつ物性の異方性及びそりが少なく、熱による着色の抑制された樹脂成形体の製造を可能にする、樹脂成形体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の例としてのプロセス100を説明する図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の例としてのプロセス200を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の例としてのプロセス300を説明する図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の例としてのプロセス400を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の例示の態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。なお図面において同一の符号を付した要素は同様の構成又は機能を有することが意図される。
【0019】
<<樹脂成形体の製造>>
本発明の一態様は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法を提供する。一態様において、該方法は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、該主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、該主供給材料と該補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、該樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、を含む。
【0020】
本発明の一態様は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法を提供する。一態様において、該方法は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、該主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、該主供給材料と該補助供給材料とを溶融混合することによって、熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、該樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、を含む。
【0021】
一態様において、上記熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーは、互いに異なる繊維長を有する。補助供給材料が主供給材料よりも多い熱履歴を有することに起因し、一態様において、補助供給材料中のセルロースナノファイバーの繊維長は主供給材料中のセルロースナノファイバーの繊維長よりも小さい。
【0022】
第1の実施形態において、樹脂成形体は、主供給材料の構成成分(すなわち(A)熱可塑性樹脂、(B)セルロースナノファイバー、及び任意の追加成分)と補助供給材料との溶融混合物である。第1の実施形態で製造される樹脂成形体は、典型的にはペレット等の形状で提供されてよい。
【0023】
第2の実施形態において、樹脂成形体は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)セルロースナノファイバーと、任意の追加成分とを含む溶融混合物(第1の材料)と、これとは異なる組成の第2の材料との溶融混合物である。一態様において、第1の材料は、第1の実施形態で得られる樹脂成形体であることができる。第2の実施形態で製造される樹脂成形体は、典型的には、ペレット等の形状の他、各種成形製品の形状で提供されてよい。
【0024】
[主供給材料及び補助供給材料の構成成分]
主供給材料は、(A)熱可塑性樹脂と(B)セルロースナノファイバーと任意の追加成分とを含む混合物の形態であってもよいし、主供給材料の構成成分(すなわち(A)熱可塑性樹脂、(B)セルロースナノファイバー、及び任意の追加成分)が個別に準備されたものであってもよい。補助供給材料は、主供給材料の溶融処理生成物である。したがって、補助供給材料は、主供給材料と実質的に同組成である(すなわち構成成分の種類及び量が同じである)が、主供給材料の構成成分の少なくとも一部が溶融処理に起因する変質をしたものであってよい。当該変質は、(B)セルロースナノファイバーの繊維長低下を含む。
【0025】
補助供給材料は、主供給材料と実質的に同組成であることから当該供給材料と極めて良好に混和される。また、補助供給材料においては主供給材料中のセルロースナノファイバーの繊維長が低下しているため、主供給材料と補助供給材料との混合物においては、主供給材料由来の(すなわち繊維長が比較的大きい)セルロースナノファイバーと、補助供給材料由来の(すなわち繊維長が比較的小さい)セルロースナノファイバーとが混在することになる。セルロースナノファイバーの繊維長を大きくすると、樹脂成形体の機械強度が向上する一方、樹脂成形体製造時の樹脂組成物の流動性は低くなるため、樹脂成形体中のセルロースナノファイバーの分散性が低下したり、樹脂成形体の物性(例えば熱膨張係数)の異方性(例えば樹脂成形体製造時のMD方向とTD方向とに対応する方向での差異)が大きくなる傾向がある。機械強度は、繊維長が大きいセルロースナノファイバーの存在に特に大きく影響されることから、繊維長が大きいセルロースナノファイバーの使用量が比較的少量でも顕著に向上する。一方、物性の異方性及び分散性に対する、繊維長が大きいセルロースナノファイバーの存在の影響度合いは、機械強度の場合と比べると顕著ではない。したがって、主供給材料と補助供給材料との混合物を用いて得られる樹脂成形体によれば、繊維長が大きいセルロースナノファイバーの存在が強く寄与する機械強度が良好である一方、繊維長が低下したセルロースナノファイバーの共存による物性異方性低減及び分散性向上の効果も良好に得られる。このように、本開示の方法で得られる樹脂成形体は、良好な機械強度と、良好な分散性及び少ない異方性との両立という特異な利点を有し得る。また、補助供給材料は、その溶融過程で受けるせん断により、構造中で最も弱い箇所、具体的には、構造中に存在するセルロースナノファイバー凝集体においてクレーズが生じることとなり、結果的に、セルロースナノファイバー凝集体はより細かくなるとともに、系の粘度上昇という相乗効果も発現され、最終成形体中に含まれうるセルロースナノファイバー凝集体の量を大幅に低減せしめることが可能となる。
【0026】
一態様において、補助供給材料は、樹脂成形体の一部から取り出し、工程に戻されたものであることができる。補助供給材料としては、例えば、(1)目的の樹脂成形体を得るために、生産開始した後、工程条件が安定化するまでに得られた樹脂成形体、(2)組成は実質的に同一であるが、目的の樹脂成形体の物性とは異なる物性を示す樹脂成形体、(3)組成変更中の過渡的時間帯に得られた樹脂成形体の中で、目的の樹脂成形体と組成が実質的に同一の樹脂成形体なども、経済性の観点から、問題ない範囲で使用することができる。ここでいう組成が実質的に同一とは、樹脂成形体を構成する各成分の量が、+5質量%~-5質量%の範囲内にあることをいう。具体的には、例えば(B)セルロースナノファイバーの含有量が7.5質量%の時、7.125質量%~7.875質量%の範囲内である。この+5%~-5%の範囲は、混練機に備えられている材料供給装置への定期的な材料の追加(リフィル)時等に生じる、組成のブレと同程度の範囲である。
【0027】
一態様において、主供給材料中の(B)セルロースナノファイバーの量は、(B)セルロースナノファイバーによる特性向上効果(例えば、機械強度、熱安定性、耐久性等の向上効果)を良好に得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、良好な成形性及び分散性を得る観点、及び異方性を少なくする観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0028】
以下、主供給材料(及びこれと実質的に同組成である補助供給材料)の構成要件の例示の態様について更に説明する。
【0029】
<(A)熱可塑性樹脂>
(A)熱可塑性樹脂としては、種々の樹脂を使用できる。一態様において、(A)熱可塑性樹脂は数平均分子量5000以上を有する。なお本開示の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用い測定したクロマトグラムを、GPC用標準ポリマーで換算した値である。このときのGPC用標準ポリマーとしては、当業者に公知のポリマーを用いることができる。一般的にはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等を例示することができる。どの標準ポリマーを用いるかは、GPC測定時の溶離液の種類により選択される。その一例を挙げると、例えば溶離液が、ヘキサフルオロイソプロパノールの場合、ポリメタクリル酸メチルが使用され、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、1,2,4-トリクロロベンゼンの場合、ポリスチレンが使用され、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、水系の場合、ポリエチレングリコール 、ポリエチレンオキシドが使用される。
(A)熱可塑性樹脂としては、100℃~350℃の範囲内に融点を有する結晶性樹脂、又は、100~250℃の範囲内にガラス転移温度を有する非晶性樹脂が挙げられる。(A)熱可塑性樹脂は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい1種又は2種以上のポリマーで構成されてよい。
【0030】
ここでいう結晶性樹脂の融点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温していった際に、現れる吸熱ピークのピークトップ温度をいう。吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を指す。この時の吸熱ピークのエンタルピーは、10J/g以上であることが望ましく、より望ましくは20J/g以上である。また測定に際しては、サンプルを一度融点+20℃以上の温度条件まで加温し、樹脂を溶融させたのち、10℃/分の降温速度で23℃まで冷却したサンプルを用いることが望ましい。
【0031】
また、ここでいう非晶性樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用いて、23℃から2℃/分の昇温速度で昇温しながら、印加周波数10Hzで測定した際に、貯蔵弾性率が大きく低下し、損失弾性率が最大となるピークのピークトップの温度をいう。損失弾性率のピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側のピークのピークトップ温度を指す。この際の測定頻度は、測定精度を高めるため、少なくとも20秒に1回以上の測定とすることが望ましい。また、測定用サンプルの調製方法については特に制限はないが、成形歪の影響をなくす観点から、熱プレス成型品の切り出し片を用いることが望ましく、切り出し片の大きさ(幅及び厚み)はできるだけ小さい方が熱伝導の観点より望ましい。
【0032】
(A)熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテルを他の樹脂とブレンド又はグラフト重合させて変性させた変性ポリフェニレンエーテルも含む)、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばα-オレフィン(共)重合体)、各種アイオノマー等が挙げられる。
【0033】
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、ポリマーアロイとして用いてもよい。また、上記した熱可塑性樹脂が、不飽和カルボン酸、その酸無水物又はその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物により変性されたものも用いることもできる。
【0034】
これらの中でも、耐熱性、成形性、意匠性及び機械特性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びポリフェニレンスルフィド系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が好ましい。
【0035】
これらの中でもポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、及びポリフェニレンエーテル系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂、特に、ポリオレフィン系樹脂、及びポリアミド系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が、取り扱い性及びコストの観点からより好ましい。特に好ましい態様において、(A)熱可塑性樹脂はポリアミドである。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα-オレフィン類)を含むモノマー単位を重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、特に限定されないが、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等に例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等に例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等に代表されるα-オレフィンと他のモノマー単位との共重合体等が挙げられる。
【0037】
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、組成物の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、組成物の流動性の観点から上記下限値を超えないことが望ましい。
【0038】
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。酸としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及びこれらの無水物、及びクエン酸等のポリカルボン酸等から適宜選択可能である。これらの中でも好ましいのは、変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物である。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下/非存在下で樹脂を融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂はすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが中でも好適に使用可能である。
【0039】
酸変性されたポリオレフィン系樹脂は、単独で用いても構わないが、組成物としての変性率を調整するため、変性されていないポリオレフィン系樹脂と混合して使用することがより好ましい。例えば、変性されていないポリプロピレンと酸変性されたポリプロピレンとの混合物を用いる場合、全ポリプロピレンに対する酸変性されたポリプロピレンの割合は、好ましくは0.5質量%~50質量%である。より好ましい下限は、1質量%であり、更に好ましくは2質量%、更により好ましくは3質量%、特に好ましくは4質量%、最も好ましくは5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%であり、更に好ましくは40質量%、更により好ましくは35質量%、特に好ましくは30質量%、最も好ましくは20質量%である。セルロースとの界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリオレフィン系樹脂の酸変性率の下限は、好ましくは0.01質量%であり、より好ましくは0.1質量%であり、更に好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.5質量%であり、最も好ましくは0.7質量%である。また上限は、好ましくは10質量%であり、より好ましくは5質量%であり、更に好ましくは3質量%であり、特に好ましくは2質量%であり、最も好ましくは1.5質量%である。セルロースとの界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、酸変性されたポリオレフィンの機械物性を維持するためには上限以下が好ましい。
【0040】
酸変性されたポリプロピレンの好ましいISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)は、セルロース界面との親和性を高めるため、50g/10分以上であることが好ましい。より好ましい下限は100g/10分であり、更により好ましくは150g/10分、最も好ましくは200g/10分である。上限は特にないが、機械的強度の維持から500g/10分である。MFRをこの範囲内とすることにより、セルロースと樹脂との界面に存在しやすくなるという利点を享受できる。
【0041】
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、ラクタム類の重縮合反応により得られる、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等;1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、2-メチル-1-6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、2-メチル-1,7-ヘプタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、m-キシリレンジアミン等のジアミン類と、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸、ベンゼン-1,3-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4ジカルボン酸等、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸等のジカルボン酸類との共重合体として得られる、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,C等;及び、これらがそれぞれ共重合された共重合体(一例としてポリアミド6,T/6,I)等の共重合体;が挙げられる。
【0042】
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12といった脂肪族ポリアミド、及びポリアミド6,C、ポリアミド2M5,Cといった脂環式ポリアミドがより好ましい。
【0043】
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度には特に制限はないが、下限値は、20μモル/gであると好ましく、より好ましくは30μモル/gである。また、末端カルボキシル基濃度の上限値は、150μモル/gであると好ましく、より好ましくは100μモル/gであり、更に好ましくは80μモル/gである。
【0044】
ポリアミド系樹脂において、全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、0.30~0.95であることが好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらにより好ましくは0.40であり、最も好ましくは0.45である。またカルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらにより好ましくは0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、(B)セルロースナノファイバーの樹脂組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られ樹脂組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
【0045】
ポリアミド系樹脂の末端基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミドの重合時に所定の末端基濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等の末端基と反応する末端調整剤を重合液に添加する方法が挙げられる。
【0046】
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
【0047】
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
【0048】
これら、アミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H-NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。それらの末端基の濃度を求める方法として、具体的に、特開平7-228775号公報に記載された方法が推奨される。この方法を用いる場合、測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が有用である。また、1H-NMRの積算回数は、十分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンは必要である。そのほか、特開2003-055549号公報に記載されているような滴定による測定方法によっても末端基の濃度を測定できる。ただし、混在する添加剤、潤滑剤等の影響をなるべく少なくするためには、1H-NMRによる定量がより好ましい。
【0049】
ポリアミド系樹脂は、ISO307に準拠し96%硫酸中で測定した粘度数[VN]が、60~300であることが好ましく、70~250であることがより好ましく、75~200であることが更に好ましく、80~180であることが特に好ましい。上記範囲の粘度数を有するポリアミド系樹脂は、樹脂組成物を射出成形して樹脂成形体を製造する際の金型内流動性を良好にし、樹脂成形体の外観を良好にできる点で有利である。
【0050】
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリアリレート(PAR)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)(3-ヒドロキシアルカン酸からなるポリエステル樹脂)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でより好ましいポリエステル系樹脂としては、PET、PBS、PBSA、PBT、及びPENが挙げられ、更に好ましくは、PBS、PBSA、及びPBTが挙げられる。
【0051】
また、ポリエステル系樹脂は、重合時のモノマー比率並びに末端安定化剤の添加の有無及び量によって、末端基を自由に変えることが可能であるが、ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])が、0.30~0.95であることが好ましい。カルボキシル末端基比率下限は、より好ましくは0.35であり、さらに好ましくは、0.40であり、最も好ましくは0.45である。また、カルボキシル末端基比率上限は、より好ましくは0.90であり、さらに好ましくは、0.85であり、最も好ましくは0.80である。上記カルボキシル末端基比率は、(B)セルロースナノファイバーの組成物中への分散性の観点から0.30以上とすることが望ましく、得られる組成物の色調の観点から0.95以下とすることが望ましい。
【0052】
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂には、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、例えば1,3-ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールとが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましく使用できる。特に、コモノマー成分(例えば1,3-ジオキソラン)量としては0.01~4モル%の範囲内が好ましい。コモノマー成分量のより好ましい下限量は、0.05モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%であり、特に好ましくは0.2モル%である。またより好ましい上限量は、3.5モル%であり、さらに好ましくは3.0モル%であり、特に好ましくは2.5モル%であり、最も好ましくは2.3モル%である。押出加工時及び成形加工時の熱安定性の観点から、下限は上述の範囲内とすることが望ましく、機械的強度の観点より、上限は上述の範囲内とすることが望ましい。
【0053】
<(B)セルロースナノファイバー>
(B)セルロースナノファイバーは、平均繊維径1000nm以下のセルロースである。(B)セルロースナノファイバーの好適例は、特に限定されないが、例えばセルロースパルプを原料としたセルロースナノファイバー又はこれらセルロースの変性物の1種以上を用いることが出来る。これらの中でも、安定性、性能等の点から、セルロースの変性物の1種以上が好ましく使用可能である。(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径は、樹脂成形体の良好な機械的強度(特に引張弾性率)を得る観点から、1000nm以下であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。平均繊維径は小さい方が好ましいが、加工容易性の観点からは、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上であることができる。上記平均繊維径は、レーザー回折/散乱法粒度分布計で、積算体積が50%になるときの粒子の球形換算直径(体積平均粒子径)として求められる値である。
【0054】
上記平均繊維径は、以下の方法で測定することができる。(B)セルロースナノファイバーを固形分40質量%として、プラネタリーミキサー(例えば(株)品川工業所製、5DM-03-R、撹拌羽根はフック型)中において、126rpmで、室温常圧下で30分間混練し、次いで0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED-7」処理条件)を用い、回転数15,000rpm×5分間で分散させ、遠心分離機(例えば久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」、ロータータイプRA-400型)を用い、処理条件:遠心力39200m2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m2/sで45分間遠心処理し、遠心後の上澄みを採取する。この上澄み液を用いて、レーザー回折/散乱法粒度分布計(例えば堀場製作所(株)製、商品名「LA-910」又は商品名「LA-950」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(すなわち、粒子全体の体積に対して、積算体積が50%になるときの粒子の球形換算直径)を、体積平均粒子径とする。
【0055】
典型的な態様において、(B)セルロースナノファイバーのL/D比は、20以上である。セルロースナノファイバーのL/D下限は、好ましくは30であり、より好ましくは40であり、より好ましくは50であり、さらにより好ましくは100である。上限は特に限定されないが、取扱い性の観点から好ましくは10000以下である。本開示の樹脂組成物の良好な機械的特性を少量のセルロースナノファイバーで発揮させるために、セルロースナノファイバーのL/D比は上述の範囲内であることが望ましい。
【0056】
本開示で、セルロースナノファイバーの長さ(L)、径(D)及びL/D比は、セルロースナノファイバーの水分散液を、高剪断ホモジナイザー(例えば日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED-7」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×5分間で分散させた水分散体を、0.1~0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、光学顕微鏡、又は高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本のセルロースナノファイバーが観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本のセルロースナノファイバーの長さ(L)及び径(D)を計測し、比(L/D)を算出する。また、本開示のセルロースナノファイバーの長さ及び径とは、上記100本のセルロースの数平均値である。
【0057】
(B)セルロースナノファイバーは、パルプ等を100℃以上の熱水等で処理し、ヘミセルロース部分を加水分解して脆弱化したのち、高圧ホモジナイザー、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等を用いた粉砕法により解繊したセルロースであってよい。
【0058】
一態様において、(B)セルロースナノファイバーは変性物(すなわち変性セルロースナノファイバー)である。(B)セルロースナノファイバーの変性物としては、エステル化剤、シリル化剤、イソシアネート化合物、ハロゲン化アルキル化剤、酸化アルキレン及び/又はグリシジル化合物から選択される1種以上の変性剤によりセルロースが変性されたものが挙げられる。好ましい態様において、(B)セルロースナノファイバーは、未変性物、又はオキソ酸変性基(すなわちセルロースの水酸基がオキソ酸(例えばカルボン酸)又はその塩(例えばカルボン酸塩)で変換されている部位)不含有の変性物であり、この好ましい変性物の例は上記で列挙した変性剤による変性物である。
【0059】
変性剤としてのエステル化剤は、(B)セルロースナノファイバーの表面のヒドロキシル基と反応してこれをエステル化できる少なくとも一つの官能基を有する有機化合物を包含する。またエステル化は国際公開第2017/159823号の段落[0108]に記載の方法で実施できる。エステル化剤は市販の試薬又は製品であってもよい。
【0060】
エステル化剤の好適例としては、特に限定されないが、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物、及び、これら酸とビニルアルコールのエステル化物(例として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル等)、並びに、上述の酸から任意に選ばれる、対称無水物(例として、無水酢酸、無水マレイン酸、シクロヘキサン-カルボン酸無水物、ベンゼン-スルホン酸無水物)、混合酸無水物(例として、酪酸-吉草酸無水物)、環状無水物(例として、無水コハク酸、無水フタル酸、ナフタレン-1,8:4,5-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸3,4-無水物)、エステル酸無水物(例として、酢酸3-(エトキシカルボニル)プロパン酸無水物、炭酸ベンゾイルエチル)等が挙げられる。
【0061】
これらの中でも、反応性、安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、これら酸とビニルアルコールのエステル化物、 安息香酸、無水酢酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、及び無水フタル酸が好ましく使用可能である。
【0062】
変性剤としてのシリル化剤は、セルロースの表面のヒドロキシル基又はその加水分解後の基と反応できる少なくとも一つの反応性基を有するSi含有化合物を包含する。シリル化剤は市販の試薬又は製品であってもよい。
【0063】
シリル化剤の好適例としては、特に限定されないが、クロロジメチルイソプロピルシラン、クロロジメチルブチルシラン、クロロジメチルオクチルシラン、クロロジメチルドデシルシラン、クロロジメチルオクタデシルシラン、クロロジメチルフェニルシラン、クロロ(1-ヘキセニル)ジメチルシラン、ジクロロヘキシルメチルシラン、ジクロロヘプチルメチルシラン、トリクロロオクチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチル-ジシラザン、1,3-N-ジオクチルテトラメチル-ジシラザン、ジイソブチルテトラメチルジシラザン、ジエチルテトラメチルジシラザン、N-ジプロピルテトラメチルジシラザン、N-ジブチルテトラメチルジシラザン又は1,3-ジ(パラ-t-ブチルフェネチル)テトラメチルジシラザン、N-トリメチルシリルアセトアミド、N-メチルジフェニルシリルアセトアミド、N-トリエチルシリルアセトアミド、t-ブチルジフェニルメトキシシラン、オクタデシルジメチルメトキシシラン、ジメチルオクチルメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、等が挙げられる。
【0064】
これらの中でも、反応性、安定性、価格等の点からヘキサメチルジシラザン、オクタデシルジメチルメトキシシラン、ジメチルオクチルメトキシシラン、及びトリメチルエトキシシランが好ましく使用可能である。
【0065】
変性剤としてのハロゲン化アルキル化剤は、セルロースの表面のヒドロキシル基と反応してこれをハロゲン化アルキル化できる少なくとも一つの官能基を有する有機化合物を包含する。ハロゲン化アルキル化剤は市販の試薬又は製品であってもよい。
【0066】
ハロゲン化アルキル化剤の好適例としては、特に限定されないが、クロロプロパン、クロロブタン、ブロモプロパン、ブロモヘキサン、ブロモヘプタン、ヨードメタン、ヨードエタン、ヨードオクタン、ヨードオクタデカン、ヨードベンゼン等を用いることが出来る。これらの中でも、反応性、安定性、価格等の点からブロモヘキサン、及びヨードオクタンが好ましく使用可能である。
【0067】
変性剤としてのイソシアネート化合物は、(B)セルロースナノファイバーの表面のヒドロキシル基と反応できるイソシアネート基を少なくとも一つ有する有機化合物を包含する。またイソシアネート化合物は、特定の温度でブロック基が脱離してイソシアネート基を再生する事が可能なブロックイソシアネート化合物であってもよく、また、ポリイソシアネートの2量体若しくは3量体、ビューレット化イソシアネート等の変性体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等であってもよい。これらは市販の試薬又は製品であってもよい。
【0068】
イソシアネート化合物の好適例としては、特に限定されないが、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、ブロックイソシアネート化合物、ポリイソシアネート等が挙げられる。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)、トリレンジイソシアネート(TDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート)、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、上記イソシアネート化合物にオキシム系ブロック剤、フェノール系ブロック剤、ラクタム系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、アミン系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤、重亜硫酸塩系ブロック剤、又はイミダゾール系ブロック剤を反応させたブロックイソシアネート化合物、等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、反応性、安定性、価格等の点からTDI、MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネート変性体とヘキサメチレンジイソシアネートとを原料とするブロック化イソシアネートが好ましく使用可能である。
【0070】
ブロックイソシアネート化合物のブロック基の解離温度は、反応性、安定性の観点から、上限値が好ましくは210℃であり、より好ましくは190℃であり、さらに好ましくは150℃である。また下限値は好ましくは70℃であり、より好ましくは80℃であり、さらに好ましくは110℃である。ブロック基の解離温度がこの範囲となるようなブロック剤としては、メチルエチルケトンオキシム、オルト-セカンダリーブチルフェノール、カプロラクタム、重亜硫酸ナトリウム、3,5-ジメチルピラゾール、2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0071】
変性剤としての酸化アルキレン及び/又はグリシジル化合物は、セルロースの表面のヒドロキシル基と反応できる酸化アルキレン基、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも一つ有する有機化合物を包含する。酸化アルキレン及び/又はグリシジル化合物は市販の試薬又は製品であってもよい。
【0072】
酸化アルキレン及び/又はグリシジル化合物の好適例としては、特に限定されないが、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;グリシジルアセテート、グリシジルステアレート等のグリシジルエステル;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等の多価アルコールグリシジルエーテルが挙げられる。
【0073】
これらの中でも、反応性、安定性、価格等の点から2-メチルオクチルグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましく使用可能である。
【0074】
変性セルロースナノファイバーの総置換度は、(A)熱可塑性樹脂への(B)セルロースナノファイバーの良好な分散性を得る観点から、0.5以上、又は0.7以上、又は0.75以上であり、(B)セルロースナノファイバーの物性を良好に保持する観点から、1.5以下、又は1.3以下、又は1.25以下である。一態様においては、変性セルロースナノファイバーがエステル化セルロースナノファイバーであり、上記総置換度が総エステル置換度である。置換度は、変性セルロースナノファイバーを凍結粉砕し、13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1-C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めることができる。
置換度=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は、以下が例示できる。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
【0075】
≪追加成分≫
主供給材料は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーに加えて、追加成分を任意に含んでよい。追加成分としては、表面処理剤、酸化防止剤、無機充填剤、潤滑油等が挙げられる。これらの成分は、各々、1種又は2種以上の組み合わせで使用してよい。またこれらの成分は市販の試薬又は製品であってもよい。
【0076】
表面処理剤の好適例としては、親水性セグメントと疎水性セグメントとを分子内に有する化合物が挙げられ、より具体的には、親水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリエチレングリコール)、疎水性セグメントを与える化合物(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)、ポリブタジエンジオール等)をそれぞれ1種以上用いて得られる共重合体(例えば、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロック共重合体、テトラヒドロフランとエチレンオキシドとのブロック共重合体)等が挙げられる。
【0077】
主供給材料中の表面処理剤の好ましい含有率は、樹脂成形体中での(B)セルロースナノファイバーの分散性を高める観点から、好ましくは、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.5質量%であり、樹脂成形体の可塑化を抑制し、強度を良好に保つ観点から、好ましくは、50質量%以下、又は30質量%、又は20質量%、又は18質量%、又は15質量%、又は10質量%、又は5質量%である。
【0078】
(B)セルロースナノファイバー100質量部に対する表面処理剤の好ましい量は、樹脂成形体中での(B)セルロースナノファイバーの分散性を高める観点から、好ましくは、0.1質量部以上、又は0.5質量部以上、又は1質量部以上であり、樹脂成形体の可塑化を抑制し、強度を良好に保つ観点から、好ましくは、100質量部以下、又は99質量部以下、又は90質量部以下、又は80質量部以下、又は70質量部以下、又は50質量部以下、又は40質量部以下である。
【0079】
酸化防止剤としては、熱による劣化の防止効果の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましく、リン系酸化防止剤及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)との併用がさらに好ましい。
【0080】
酸化防止剤の好ましい量は、樹脂成形体の全体に対し、好ましくは0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上であり、好ましくは、5質量%以下、又は4質量%以下、又は3質量%以下、又は2質量%以下、又は1質量%以下である。
【0081】
無機充填剤としては、繊維状粒子、板状粒子、無機顔料等が挙げられる。繊維状粒子及び板状粒子は、平均アスペクト比が5以上であってよい。具体的には、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭素繊維、カーノンナノチューブ、カーボンブラック、タルク、マイカ、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、トバモライト、ハロサイト、ハロサイトナノチューブ、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化鉄等が挙げられる。樹脂成形体中の無機充填剤の量は、樹脂組成物から樹脂成形体に成形する際の取扱い性を高める観点から、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して好ましくは0.002質量部~50質量部である。
【0082】
潤滑油としては、天然オイル(エンジンオイル、シリンダーオイル等)、合成炭化水素(パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等)、シリコーン系オイル、等が挙げられる。潤滑油の分子量は、例えば100以上、又は400以上、又は500以上であってよく、また例えば500万以下、又は200万以下、又は100万以下であってよい。
【0083】
潤滑油の融点は、例えば-50℃以上、又は-30℃以上、又は-20℃以上であってよく、また例えば50℃以下、又は30℃以下、又は20℃以下であってよい。なお上記融点は潤滑油の流動点の2.5℃低い温度であり、流動点はJIS K2269に準拠して測定することができる。
【0084】
(A)熱可塑性樹脂100質量部に対する潤滑油の含有量は、耐摩耗性向上の観点から、好ましくは、0.1質量部以上、又は0.2質量部以上、又は0.3質量部以上であり、樹脂成形体の不所望の軟化を回避する観点から、好ましくは、5.0質量部以下、又は4.5質量部以下、又は4.2質量部以下である。
【0085】
主供給材料中の追加成分の総量は、例えば、0.5質量%以上、又は2質量%以上であってよく、例えば、20質量%以下、又は15質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0086】
好ましい一態様において、主供給材料は、(A)熱可塑性樹脂70質量%~99質量%、(B)セルロースナノファイバー1質量%~30質量%、及び追加成分0質量%~20質量%を含む。好ましい別の一態様において、主供給材料は、(A)熱可塑性樹脂80質量%~95質量%、(B)セルロースナノファイバー5質量%~20質量%、及び追加成分1質量%~15質量%、又は、(A)熱可塑性樹脂85質量%~95質量%、(B)セルロースナノファイバー5質量%~15質量%、及び追加成分2質量%~10質量%を含む。
【0087】
一態様においては、溶融混合を、主供給材料と補助供給材料との合計100質量%に対する補助供給材料の混合比率5~50質量%にて行う。補助供給材料の混合比率は、補助供給材料由来の(B)セルロースナノファイバーの寄与による異方性低減効果を良好に得る観点から、好ましくは、5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上であり、主供給材料由来の(B)セルロースナノファイバーの寄与による機械強度向上効果を良好に得る観点から、好ましくは、50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下である。
【0088】
以下、本開示の方法の各工程について、第1の実施形態及び第2の実施形態を例に説明するが、本開示の方法はこれらの実施形態に限定されない。
【0089】
[第1の実施形態]
図1~3は、第1の実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の例としてのプロセス100,200,300を説明する図である。
図1~3を参照し、プロセス100,200,300においては、溶融混合部101において、主供給材料11又はその構成成分(すなわち、(A)熱可塑性樹脂11a、(B)セルロースナノファイバー11b、及び任意の追加成分11c)と補助供給材料12とを溶融混合して溶融混合物である樹脂組成物13を生成し、成形部102にて樹脂組成物13を成形して樹脂成形体14を生成する。樹脂成形体14は、ペレット等の形状を有してよい。
【0090】
<主供給材料と補助供給材料とを準備する工程>
主供給材料11は、(A)熱可塑性樹脂11aと(B)セルロースナノファイバー11bと任意の追加成分11cとを含む混合物の形態(
図1及び2中の主供給材料11)、又は、主供給材料11の構成成分としての(A)熱可塑性樹脂11a、(B)セルロースナノファイバー11b、及び任意の追加成分11cが個別に準備される形態(
図3中の主供給材料11)であってよい。後者の場合には、主供給材料の構成成分が溶融混合系中で互いに及び補助供給材料と混合されることになる。
【0091】
補助供給材料12は、主供給材料11の溶融処理生成物である。補助供給材料12は、主供給材料11を単独で溶融処理して得たものでもよいし、樹脂成形体14の一部を回収したものでもよい。後者の場合には、
図1~3に示すように、主供給材料11と補助供給材料12とを溶融混合、次いで成形して得た樹脂成形体14の一部を分離部位S5で分離して補助供給材料12として溶融混合部101に戻し、残りを目的の樹脂成形体14として回収する。溶融混合部101に戻された補助供給材料12は新たに供給された主供給材料11と溶融混合される。このようなサイクルによれば、補助供給材料12は、主供給材料11を基にするが、溶融処理回数(すなわち熱履歴)が異なる複数の組成物の混合物となる。
【0092】
<樹脂組成物形成工程>
本工程では、主供給材料11と補助供給材料12とを溶融混合部101に供給してこれらを溶融混合する。一態様において、溶融混合は溶融混練である。溶融混合部101は、例えば単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等の混合装置における混合部であることができる。上記混合装置の中でも、二軸押出機が好ましく、より具体的には、減圧装置及びサイドフィーダー設備を装備した二軸押出機が挙げられる。二軸押出機のL/Dは、例えば、30~100、又は35~75、又は45~70であってよい。
【0093】
主供給材料11と補助供給材料12との供給手順としては、以下を例示できる。
(1)
図1及び2を参照し、(A)熱可塑性樹脂と(B)セルロースナノファイバーと任意の追加成分との混合物としての主供給材料11を溶融混合部101の主供給材料投入部位S1に投入し、補助供給材料12を溶融混合部101の補助供給材料投入部位S2に投入し、両者を溶融混合して樹脂組成物13を生成する。主供給材料投入部位S1と補助供給材料投入部位S2との位置関係は目的に応じて適宜設計できる。例えば、主供給材料投入部位S1の下流側に補助供給材料投入部位S2を配置(
図1)してよく、又は、補助供給材料投入部位S2の下流側に主供給材料投入部位S1を配置(
図2)してよく、又は、主供給材料11と補助供給材料12とを同時に(例えば、主供給材料11と補助供給材料12とを個別に、又は予め混合して)供給してよい。
【0094】
(2)
図3を参照し、主供給材料11の構成成分としての(A)熱可塑性樹脂11a、(B)セルロースナノファイバー11b及び任意の追加成分11cを、溶融混合部101の複数の主供給材料投入部位S1a,S1b,S1cのそれぞれに投入し、補助供給材料12を溶融混合部101の補助供給材料投入部位S2に投入することによって、主供給材料11及び補助供給材料12を溶融混合系に導入し、両者を溶融混合して樹脂組成物13を生成する。主供給材料11の構成成分の供給態様は目的に応じて設計でき、構成成分を各々個別に溶融混合部101に供給してもよいし、構成成分のうち一部を予め混合した状態で溶融混合部101に供給してもよい。また
図3においては、溶融混合部101の上流側から順に(A)熱可塑性樹脂11a、(B)セルロースナノファイバー11b及び任意の追加成分11cを供給する例を示しているが、供給順はこれに限定されず目的に応じて適宜設定してよい。また上記(1)の手順と同様、主供給材料投入部位S1と補助供給材料投入部位S2との位置関係も適宜設計できる。
【0095】
溶融混合の温度及び時間は、目的の樹脂成形体に応じて適宜設定できる。樹脂成形体14の一部を補助供給材料12として用いる場合の補助供給材料による物性向上効果(特に、良好な機械強度と少ない異方性との両立)を良好に得る観点から好ましい条件は、(A)熱可塑性樹脂の溶融開始温度~溶融開始温度+100℃、又は溶融開始温度+10℃~溶融開始温度+90℃、又は溶融開始温度+20℃~溶融開始温度+85℃であり、ここでいう溶融開始温度とは、結晶性樹脂の場合はその融点であり、非結晶性樹脂の場合は、実質的に容易に流動する温度を指す。目安としては、メルトマスフローレートの測定温度が挙げられる。時間0.1分~3分、又は0.2分~2.5分、又は0.3分~2.0分である。溶融混合時の圧力は目的に応じて適宜設定してよいが、好ましい一例は、圧力-0.1MPa~10MPa、又は-0.15MPa~8MPa、又は-0.2MPa~5MPaである。
【0096】
<成形工程>
本工程では、樹脂組成物13を溶融混合部101の混合終了部位S3から成形部102に送り、成形部102にて目的の形状(例えばペレット、シート、フィルム、三次元的に構造を有する成形体等)に成形して、送出部位S4から目的の樹脂成形体14を取り出す。好ましい態様においては、溶融混合が溶融混練であり、溶融混練と成形とを単一の混練機(例えば、<樹脂組成物形成工程>において例示したもの)内で行う。別の好ましい態様としては、成形が溶融混練とは異なる成形機(例えば、射出成形機)で行う。
【0097】
一態様においては、樹脂成形体14の一部を分離部位S5で分離して補助供給材料12として溶融混合部101に戻し、残りを製品として回収する。すなわち、一態様に係る方法は、樹脂成形体14の一部を補助供給材料の少なくとも一部として樹脂組成物形成工程に戻すことを更に含む。この態様において、樹脂成形体中のセルロースナノファイバーの総量100質量%に対する、樹脂組成物形成工程を2回以上経ているセルロースナノファイバーの比率は、好ましくは20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下である。セルロースナノファイバーがリグニンを含む場合、着色、臭気(すなわち分解成分による臭気)等を良好に回避する観点から、セルロースナノファイバーは過度の熱履歴を経ないことが望ましい。上記比率が上記範囲であることは、着色、臭気等の回避に有利である。上記比率は、着色、臭気等を回避しつつ樹脂成形体の製造コスト上昇も回避する観点から、例えば1質量%以上、又は2質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。
【0098】
第1の実施形態に係る樹脂成形体の形状としては、ペレット状、シート状、繊維状、板状、棒状、筒状等が挙げられ、ペレット形状は、後加工及び運搬の容易性から好ましい例である。ペレット形状は、押出加工時のカット方式により異なることができ、例えば丸型、楕円型、円柱型等であってよい。例えば、アンダーウォーターカットにて切断されたペレットは丸型になることが多く、ホットカットにて切断されたペレットは丸型又は楕円型になることが多く、ストランドカットにて切断されたペレットは円柱型になることが多い。丸型ペレットの場合、ペレット直径は、例えば1mm以上3mm以下であってよい。円柱型ペレットの場合、ペレット直径は例えば1mm以上3mm以下であってよく、ペレット長さは例えば2mm以上10mm以下であってよい。ペレットサイズは、押出時の運転安定性の観点から上記の下限以上にすることが好ましく、後加工での成形機への噛み込み性の観点から上記の上限以下にすることが好ましい。
【0099】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の例としてのプロセス400を説明する図である。
図4を参照し、プロセス400においては、溶融混合部401において、主供給材料41と補助供給材料42とを溶融混合して溶融混合物である樹脂組成物43を生成し、成形部402にて樹脂組成物43を成形して樹脂成形体44を生成する。樹脂成形体44は、更なる加工に供されるための形状(ペレット等)であってもよいし、後述の各種製品形状であってもよい。
【0100】
<主供給材料と補助供給材料とを準備する工程>
主供給材料41は、第1の材料41aと第2の材料41bとを含むことができる。一態様において、第1の材料41aは溶融混合物である。一態様において、第1の材料41aは第1の実施形態で得られる樹脂成形体14である。一態様において、第1の材料41aは(A)熱可塑性樹脂100質量部及び(B)セルロースナノファイバー1~50質量部を含む成形体である。
【0101】
補助供給材料42は、主供給材料41の溶融処理生成物である。補助供給材料42は、主供給材料41を単独で溶融処理して得たものでもよいし、樹脂成形体44の一部を回収したものでもよい。後者の場合には、
図4に示すように、主供給材料41と補助供給材料42とを溶融混合、次いで成形して得た樹脂成形体44の一部を補助供給材料42として溶融混合部401に戻し、残りを目的の樹脂成形体44として回収する。溶融混合部401に戻された補助供給材料42は新たに供給された主供給材料41と溶融混合される。このようなサイクルによれば、補助供給材料42は、主供給材料41を基にするが、溶融処理回数(すなわち熱履歴)が異なる複数の組成物の混合物となる。
【0102】
<樹脂組成物形成工程>
本工程では、主供給材料41と補助供給材料42とを溶融混合部401に供給してこれらを溶融混合する。一態様において、溶融混合は溶融混練である。溶融混合部401は、第1の実施形態の溶融混合部101と同様であってよい。すなわち、溶融混合部401は、例えば単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等の混合装置における混合部であることができる。上記混合装置の中でも、二軸押出機が好ましく、より具体的には、減圧装置及びサイドフィーダー設備を装備した二軸押出機が挙げられる。二軸押出機のL/Dは、例えば、30~100、又は35~75、又は45~70であってよい。
【0103】
主供給材料41と補助供給材料42との供給手順としては、以下を例示できる。
図4を参照し、主供給材料41としての第1の材料41a及び第2の材料41bを、溶融混合部401の複数の主供給材料投入部位S1a,S1bのそれぞれに供給し、補助供給材料42を溶融混合部401の補助供給材料投入部位S2に投入し、両者を溶融混合して樹脂組成物43を生成する。第1の材料41a及び第2の材料41bの供給態様は目的に応じて設計でき、これらを各々個別に又は予め混合した状態で溶融混合部401に供給してよい。また
図4においては、溶融混合部401の上流側から順に第1の材料41a、第2の材料41b、補助供給材料42を供給する例を示しているが、供給順はこれに限定されず目的に応じて適宜設定してよい。また主供給材料投入部位S1と補助供給材料投入部位S2との位置関係も適宜設計できる。
【0104】
溶融混合の温度及び時間は、目的の樹脂成形体に応じて適宜設定できる。樹脂成形体44の一部を補助供給材料42として用いる場合の補助供給材料による物性向上効果(特に、良好な機械強度と少ない異方性との両立)を良好に得る観点から好ましい条件は、(A)熱可塑性樹脂の溶融開始温度~溶融開始温度+100℃、又は溶融開始温度+10℃~溶融開始温度+90℃、又は溶融開始温度+20℃~溶融開始温度+85℃であり、ここでいう溶融開始温度とは、結晶性樹脂の場合はその融点であり、非結晶性樹脂の場合は、実質的に容易に流動する温度を指す。目安としては、メルトマスフローレートの測定温度が挙げられる。時間0.1分~3分、又は0.2分~2.5分、又は0.3分~2.0分である。溶融混合時の圧力は目的に応じて適宜設定してよいが、好ましい一例は、圧力0.01MPa~10MPa、又は0.02MPa~8MPa、又は0.03MPa~5MPaである。
【0105】
<成形工程>
本工程では、樹脂組成物43を溶融混合部401の混合終了部位S3から成形部402に送り、成形部402にて目的の形状に成形して、送出部位S4から目的の樹脂成形体44を取り出す。成形部402は、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等から選択される成形を行うように構成されている。好ましい態様においては、溶融混合が溶融混練であり、溶融混練と成形とを単一の混練機(例えば、<樹脂組成物形成工程>において例示したもの)内で行う。
【0106】
一態様においては、樹脂成形体44の一部を補助供給材料投入部位S2から溶融混合部401に戻し、残りを製品として回収する。すなわち、一態様に係る方法は、樹脂成形体44の一部を補助供給材料の少なくとも一部として樹脂組成物形成工程に戻すことを更に含む。この態様において、樹脂成形体中のセルロースナノファイバーの総量100質量%に対する、樹脂組成物形成工程を2回以上経ているセルロースナノファイバーの比率は、第1の実施形態で説明したのと同様の理由で、好ましくは20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下であり、例えば1質量%以上、又は2質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。
【0107】
第2の実施形態に係る樹脂成形体の形状としては、第1の実施形態において例示したものに加え、各種成形製品の種々の形状を例示できる。製品としては、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video tape recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser disk)、MD(Mini disk、CD(Compact disk)〔CD-ROM(Read only memory)、CD-R(Recordable)、CD-RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital versatile disk)〔DVD-ROM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW、DVD-R DL、DVD+R DL、DVD-RAM(Random access memory)、DVD-Audioを含む〕、Blu-ray(登録商標) Disc、HD-DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD(Multi Function Display)、MO(Magneto-Optical Disk)、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。また、本実施形態の成形体は、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;さらにシャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、産業用機械部品(例えば、電磁機器筐体、ロール材、搬送用アーム、医療機器部材等)、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品(例えば外板、シャーシ、空力部材、座席、トランスミッション内部の摩擦材等)、船舶部材(例えば船体、座席等)、航空関連部品(例えば、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材等)、宇宙機、人工衛星部材(モーターケース、主翼、構体、アンテナ等)、電子・電気部品(例えばパーソナルコンピュータ筐体、携帯電話筐体、OA機器、AV機器、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品等)、建築・土木材料(例えば、鉄筋代替材料、トラス構造体、つり橋用ケーブル等)、生活用品、スポーツ・レジャー用品(例えば、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、テニスやバトミントンのラケット等)、風力発電用筐体部材等、また容器・包装部材、例えば、燃料電池に使用されるような水素ガス等を充填する高圧力容器、等が挙げられる。
【0108】
<<樹脂成形体の特性>>
本開示の方法で製造される樹脂成形体においては、(B)セルロースナノファイバーの繊維長が特異な態様で制御されており、良好な機械強度と少ない異方性とが両立されている。
【0109】
樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比は、一態様において、1.05~3.0、又は1.05~1.75、又は1.05~1.6、又は1.05~1.4であることができる。成形収縮率は、ISO294-4に準拠した方法で測定される値である。この際の成形条件は、使用樹脂に関する成形法を記したそれぞれのISO規格に準拠して成形される。なお上記のMD方向及びTD方向は、樹脂成形体の成形時のMD方向及びTD方向にそれぞれ対応する。成形収縮率のTD/MD比が上記範囲内である場合、樹脂成形体の異方性が少なく好適である。
【0110】
樹脂成形体の引張強度は、一態様において、90MPa以上、又は95MPa以上、又は100MPa以上、又は110MPa以上であることができる。引張強度が上記を満たす場合、樹脂成形体の機械強度が高く好適である。引張強度は、ISO527に準拠した方法で測定される値である。この際の適した成形条件も、成形収縮率での記載と同様である。引張強度は、樹脂成形体の別の特性(例えば靭性等)とのバランスの点で、例えば、300MPa以下、又は280MPa以下、又は250MPa以下であってよい。
【0111】
特に好ましい態様においては、樹脂成形体のTD/MD比及び引張強度の両者が上記範囲内である。
【0112】
一態様において、樹脂成形体のMD方向の成形収縮率は、0.1%~0.7%、又は0.2%~0.7%、又は0.3%~0.7%であり、TD方向の成形収縮率は、0.4%~1.2%、又は0.4%~1.0%、又は0.5%~1.0%、又は0.4%~0.9%である。
【0113】
一態様に係る樹脂成形体において、MD方向の成形収縮率とTD方向の成形収縮率との和は、0.5%~1.9%、又は0.6%~1.6%、又は0.8%~1.5%であることができる。
【0114】
樹脂成形体の温度範囲0℃~60℃における線膨張係数(MD方向)は、好ましくは、60ppm/K以下、又は50ppm/K以下、又は45ppm/K以下、又は35ppm/K以下である。線膨張係数の下限は特に制限されないが、製造容易性の観点から、例えば、好ましくは、5ppm/K以上、又は10ppm/K以上である。線膨張係数は、ISO11359-2に準拠して測定される値である。
【0115】
一態様において、樹脂成形体の黄色度(YI)値と補助供給材料の黄色度(YI)値との差は、10以下、又は8以下、又は7以下であることができる。黄色度(YI)値は、JIS K7373に準拠した方法で測定される値である。
【実施例0116】
以下、実施例を挙げて本発明の例示の態様を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
【0117】
<引張強度>
得られたペレット状の成形体を、射出成形機を用いて、ISO294-1に準拠し多目的試験片に成形した。得られた多目的試験片について、ISO527-1に準拠し、引張降伏強度を測定した。降伏に至る前に破断した成形片については、その最大強度を代用した。
【0118】
<成形収縮率・成形収縮比>
得られたペレット状の成形体を、射出成形機を用いて、JIS K7152-3に規定された60mm×60mm×2mmの平板に成形した。得られた平板状成形片をISO294-4に準拠し、樹脂流動方向(MD)と流動方向と垂直方向(TD)の寸法を正確に測定し、収縮率を算出した。得られたTD方向の収縮率をMD方向の収縮率で除して、成形収縮比を算出した。
【0119】
<黄色度変化 △YI>
成形収縮測定用に成形した平板を用いて、JIS K7373に準拠し、黄色度を測定した。この時、補助供給材料の黄色度(YI)値に対する、得られた樹脂成形体の黄色度(YI)値の差を黄色度変化率(△YI)として算出した。
【0120】
<平板のそり>
得られたペレット状の成形体を、射出成形機を用いて、直径1mmのピンポイントゲートを有する幅50mm、長さ70mm、厚み1mmの平板に成形した。この時、金型温度は25℃に調節した。平滑な面上に、得られた平板状成形片のそり凸部を下にし、ゲート側の一方を面上に押さえつけて、反対側の成形片と平滑面との隙間を測定した。測定は、その隙間を写真で撮影することで測定した。測定は少なくとも5枚の平板について実施し、最大と最小を除いた3点の平均をもってそりの値とした。
【0121】
<巨大凝集塊の数>
得られたペレット状の成形体を、流れに垂直方向にミクロトームで切削し、平滑な面を削りだし、光学顕微鏡(BX53M:オリンパス社製)を用いて写真撮影した。ペレット状成形体の3点について撮影した。得られた写真を、画像解析装置を用いて二値化し、円相当径の直径が5μm以上の個数の合計を算出した。
【0122】
<使用材料>
(A)熱可塑性樹脂
ポリアミド6(以下、単にPA6)
UBEナイロン1013B 宇部興産株式会社製
粘度数:120
カルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基]):0.6
ポリプロピレン(以下、単にPP)
ノバテックPP MA1B(日本ポリプロ株式会社)
MFR(230℃、荷重21.2N)=21g/10分
(B)セルロースナノファイバー(以下、単にCNF)
以下の調製例によって、アセチル化置換していないCNF、及び置換度の異なる3種のCNFを作製した。
【0123】
[調製例1]
(解繊工程)
リンターパルプを裁断し、一軸撹拌機(アイメックス社製 DKV-1 φ125mmディゾルバー)中、ジメチルスルホキサイド(DMSO)中で500rpmにて1時間、常温で攪拌した。続いて、ホースポンプでビーズミル(アイメックス社製 NVM-1.5)にフィードし、120分間循環運転させ、解繊CNFスラリーを得た。
循環運転の際、ビーズミルの回転数は2500rpm、周速12m/sとした。ビーズはジルコニア製、φ2.0mmを用い、充填率は70%とした(このときのビーズミルのスリット隙間は0.6mm)。また、循環運転の際は、摩擦による発熱を吸収するためにチラーによりスラリー温度を40℃に温度管理した。
得られた、解繊CNFの特性を評価したところ、径が65nm、L/Dが約450であった。
【0124】
(アセチル化工程)
解繊工程で得られた解繊CNFスラリー100質量部に対し、酢酸ビニル11質量部、炭酸水素ナトリウム1.63質量部をビーズミル装置内へ加えた後、循環運転を行い、アセチル化CNFスラリーを得た。循環運転の条件は、解繊工程と同一とした。循環運転時間は、30分、60分、120分の3条件で実施し、置換度の異なるアセチル化CNFスラリーを得た。
各条件で得られたCNFの置換度を測定したところ、循環運転時間30分のものは0.50、循環運転時間60分のものは1.02、循環運転時間120分のものは1.49であった。
【0125】
(水置換工程)
得られた解繊CNFスラリー、又はアセチル化CNFスラリーの100質量部に対し、純水を192質量部加えて十分に撹拌した後、脱水機に入れて脱水・濃縮し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを再度、同量の純水に分散、撹拌、濃縮する洗浄操作を合計5回繰り返し、溶剤置換を実施した。
【0126】
(乾燥工程)
解繊CNFウェットケーキ、及びそれぞれのアセチル化CNFウェットケーキを、セルロース固形分濃度が10質量%になるように、純水で濃度調整し、CNF100質量部に対し、PEG20000を5質量部添加し、よく撹拌した後、公転・自転方式の攪拌機(EME社製 V-mini300)を用いて約40℃で真空乾燥させることにより、それぞれのCNFの乾燥粉体を得た。
【0127】
<装置>
<溶融混合装置>
L/D=4の温度調整バレルを15個有するL/D=60の同方向回転二軸押出機(TEM26SX:東芝機械社製)を用い、押出機の最も上流側バレルであるバレル1に原料供給用のスロート(以下、単にスロートと称す)、バレル4及びバレル7に原料供給用のサイドフィード装置(以下、単にバレル4に設置のサイドフィードをサイド1、バレル7に設置のサイドフィードをサイド2と称す)、バレル14に脱揮用の減圧ポートを設置した。
スクリューデザインは、L/D=0~18(バレル1~バレル5の真ん中)の位置に「時計回りスクリュー(以下、単にRS)」を配し、L/D=19~24(バレル5中央~バレル6)の位置に、2個の「時計回りニーディングディスク(以下、単にRKD)」、3個の「ニュートラルニーディングディスク(以下、単にNKD)」、1個の「反時計回りニーディングディスク(以下、単にLKD)」をこの順に配し、L/D=24~32(バレル7~バレル8)の位置にRSを配し、L/D=32~36(バレル9)の位置に、1個のRKD、2個のNKD、1個のRKD,2個のNKDをこの順に配し、L/D=36~40(バレル10)の位置にRSを配し、L/D=40~44(バレル11)の位置に、1個のRKD、2個のNKD、1個のRKD,3個のNKDをこの順に配し、L/D=44~48(バレル12)の位置にRSを配し、L/D=48~52(バレル13)の位置に、2個のNKD、1個のLKD,3個のNKD、1個の「反時計回りスクリュー(以下、単にLS)」をこの順に配し、L/D=52~56(バレル14)の位置にRSを配し、L/D=56~60(バレル13)の位置に、1個RS、3個のNKDの順に配した後、残りをすべてRSとするデザインとした。
押出機の先端には、3mm径の紡口を2個有するダイスを設置し、溶融樹脂をストランド状に押し出せるようにした。
【0128】
<成形装置>
溶融混合装置の後工程に設置した水槽で、溶融ストランドを冷却し、その後のペレターザーでペレット状にカットし、ペレット状樹脂成形体を得た。得られたペレット状樹脂成形体の一部を補助供給材料として用いた。(以下、補助供給材料の形状「ペレット」と称す)
更に得られたペレット状樹脂成形体を、射出成形機(ソディックプラステック社製:TR05EH2 型締圧力5トン)を用いて、FPCコネクター(長さ30mm、幅1mm、2個取り、50ピン穴、ピン穴ピッチ:0.5ミリピッチ)金型を用い、射出速度300mm/secで成型し、コネクター状樹脂成形体を得た。本コネクター状成形体を粉砕機を用いて粉砕処理し、メッシュを用いて径が5mm以下となるよう調製し、粉砕補助供給材料を得た。(以下、補助供給材料の形状「粉砕品」と称す)
【0129】
[調製例2]
溶融混合装置のバレル温度の設定を、バレル1~3を150℃、バレル4~15及びダイスを250℃に設定し、PA6が60質量%、置換度1.02のCNFが40質量%となるようスロート部より供給し、溶融混合を実施し、ペレット状のPA/CNFの高濃度物(以下、単にPA/CNFMBと称す)を得た。この時の溶融混合装置のスクリュー回転数は、300rpmであり、時間当たりの吐出量は、18kg/hrであった。
【0130】
[調製例3]
溶融混合装置のバレル温度の設定を、バレル1~3を100℃、バレル4~15及びダイスを200℃に設定し、PA6をPPに変更した以外は、すべて調製例2と同様に実施し、ペレット状のPP/CNF高濃度物(以下、単にPP/CNF-MBと称す)を得た。
【0131】
[実施例1~17、比較例1~5]
溶融混合装置のバレル温度の設定を、バレル1~3を150℃、バレル4~7を260℃、バレル8~15及びダイスを250℃に設定し主供給材料を表1及び表2に記載の組成になるように主供給材料の添加位置より供給し、主供給材料の溶融混合物である補助供給材料を補助供給材料の添加位置より供給し、それぞれ溶融混合を実施し、ペレット状樹脂成形体を得て、各種特性を評価し、表1及び2に記載した。この時の溶融混合装置のスクリュー回転数は、300rpmであり、時間当たりの吐出量は、25kg/hrであった。
なお、表中に記載した「プロセス」とは、本実施態様で説明に用いたプロセス100、200、300、400の事を指す。
また、実施例6で用いた補助供給材料の粉砕品は、上述で得られたペレット状樹脂成形体を、コネクター状樹脂成形体に成形後、粉砕処理を施して得た。
実施例9の主供給材料は、スロート部よりPA6を供給し、サイド1よりCNFを供給した。分けて供給することで、CNF粉体の供給時の舞い上がりが抑制でき、供給が安定するためか、引張強度の試験片ごとのばらつきが少ないという予想外の効果が得られた。
比較例1、3、及び5は、補助供給材料を添加しなかった例である。比較例2及び4は、主供給材料がない態様、すなわち、補助供給材料のみという態様であり、100%再循環(リサイクル)に相当する。
【0132】
【0133】
【表2】
[実施例18~22]
溶融混合装置のバレル温度の設定を、バレル1~3を100℃、バレル4~7を200℃、バレル8~15及びダイスを190℃に設定し、表3記載の組成・条件に変更した以外は、実施例10と同様に実施し、各種特性を評価した。結果を表3に記載する。
【0134】