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特開2024-32932光ファイバ挿入ユニット及び光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032932
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光ファイバ挿入ユニット及び光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20240305BHJP
   G02B 6/36 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/36
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013920
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2019187534の分割
【原出願日】2019-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100121979
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 吉信
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸一
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、熱膨張による性能の低下を抑制する光ファイバ挿入ユニットを提供することにある。
【解決手段】本発明は、フェルールと、レンズと、先端側に前記レンズを収容するレンズ収容孔を有し、後端側にフェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有するレンズスリーブと、を備える光ファイバ挿入ユニットであって、フェルールは、レンズスリーブに挿入される挿入部と、挿入部の後端側に位置し、挿入部よりも径方向に大きいフランジ部を含む把持部とを有し、レンズの後端部とレンズスリーブの後端部との間の長さが、フェルールの先端とフランジ部の先端側の面との間の長さよりも短い、ことを特徴とする光ファイバ挿入ユニットを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルールと、
レンズと、
先端側に前記レンズを収容するレンズ収容孔を有し、後端側に前記フェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有するレンズスリーブと、
を備える光ファイバ挿入ユニットであって、
前記フェルールは、
前記レンズスリーブに挿入される挿入部と、
前記挿入部の後端側に位置し、挿入部よりも径方向に大きいフランジ部を含む把持部とを有し、
前記フェルールの先端と前記フランジ部の先端側の面との間の距離が、前記レンズの後端部と前記レンズスリーブの後端部との間の距離よりも長い、
ことを特徴とする光ファイバ挿入ユニット。
【請求項2】
前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ挿入ユニット。
【請求項3】
フェルールと、
レンズと、
先端側に前記レンズを収容するレンズ収容孔、後端側に前記フェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有するレンズスリーブと、
を備える光ファイバ挿入ユニットであって、
前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さい、
ことを特徴とする光ファイバ挿入ユニット。
【請求項4】
前記レンズと、前記フェルールとの間に屈折率整合剤を備える、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバ挿入ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法であって、
前記フェルールに、光ファイバの先端を挿入する工程と、
前記レンズスリーブのレンズ収容孔に、前記レンズを挿入する工程と、
前記フェルールの挿入部を前記フェルール挿入孔に挿入し、前記フェルールの先端を前記レンズに接触させる工程と、
を含む、
光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法。
【請求項6】
前記フェルールを前記レンズスリーブの挿入孔に挿入し、前記フェルールの先端を前記レンズに接触させる工程は、サーボプレスにより、圧入することを特徴とする、
請求項5に記載の光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ挿入ユニットと、
前記光ファイバ挿入ユニットを挿入するためのユニット挿入孔を有し、前記光ファイバ挿入ユニットの前記レンズスリーブを固定する割スリーブを前記ユニット挿入孔内に有するシェルと、
前記光ファイバ挿入ユニットの前記フェルールの光ファイバ挿入孔と連通する通過孔を有する押さえ板と、
を含むことを特徴とする光コネクタ。
【請求項8】
光ファイバ挿入ユニットに用いられるレンズスリーブであって、
先端側にレンズを収容するレンズ収容孔、後端側にフェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有し、
前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さい、
ことを特徴とするレンズスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの接続に使用されるフェルールを含む光ファイバ挿入ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従前、光ファイバの接続にはフェルールが用いられていたが、光ファイバの端面同士を直接接触させると、端面間に異物が付着する。しかも、端面により異物が押圧されていることから異物を除去することが、困難となり得る。そのため、特許文献1に記載されるように、光ファイバの先端から放出される光が散乱することがないように、フェルールの先端にレンズを収容した光ファイバ挿入ユニットを用いることで、光ファイバから放出された光をレンズにより集光して、並行光にして放出し、接続するユニット同士の先端部間に間隙が生じるような構成とすることで異物の付着を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-174245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10は、上記従来技術である光ファイバ挿入ユニット900の斜視図を示す。図11は、図10に示される光ファイバ挿入ユニット900を切断面C-Cで切断した断面図を示す。図11に示されるように、光ファイバ挿入ユニット900では、フェルール902のフランジ部908の先端側の面912が、フェルール902及びレンズ904を収容する筒状のレンズスリーブ906の後端914に接触している。
【0005】
レンズスリーブ906に挿入されるフェルール902の挿入部916は、ヤング率が低く、破壊靭性が大きく、脆性破壊しにくいジルコニアといった硬質の材料で作成される。一方で、レンズスリーブ906は、価格や加工などの観点からステンレスといった金属を採用することが通常であり、レンズスリーブ906の熱膨張率の方が、挿入部916の熱膨張率よりも大きい。そのため、ユニット900の使用時に、周囲環境の温度が高くなると、レンズスリーブ906の方が、挿入部916よりも大きく膨張するので、レンズスリーブ906の後端914が、フランジ部908の先端側の面912を押圧して、フェルール902全体を後方に移動させていた。その結果、レンズ904とフェルール902の先端部910(すなわち、光ファイバの先端)との間に隙間が生じてしまい、又は拡大してしまい、光学性能の低下の原因となっていた。特に、光ファイバ挿入ユニット900が、光コネクタ(図示せず)の内部に収容されて用いられる場合には、レンズスリーブ906が、径方向に膨張することが規制されるため、後方に大きく膨張することになり、一層上記間隙が拡大しやすくなっていた。
【0006】
本発明は、熱膨張による性能の低下を抑制する光ファイバ挿入ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ファイバ挿入ユニットは、フェルールと、レンズと、先端側に前記レンズを収容するレンズ収容孔を有し、後端側に前記フェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有するレンズスリーブと、を備える光ファイバ挿入ユニットであって、前記フェルールは、前記レンズスリーブに挿入される挿入部と、前記挿入部の後端側に位置し、挿入部よりも径方向に大きいフランジ部を含む把持部とを有し、前記レンズの後端部と前記レンズスリーブの後端部との間の長さが、前記フェルールの先端と前記フランジ部の先端側の面との間の長さよりも長いことを特徴とする。本発明により、熱膨張によるフェルールの後端方向への移動を抑制して、接続性能の低下を抑制することが可能になる。
【0008】
また、本発明の光ファイバ挿入ユニットでは、前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さくすることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の光ファイバ挿入ユニットは、フェルールと、レンズと、先端側に前記レンズを収容するレンズ収容孔、後端側に前記フェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有するレンズスリーブと、を備える光ファイバ挿入ユニットであって、前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さくするようにしてもよい。
【0010】
上記の光ファイバ挿入ユニットは、前記レンズと、前記フェルールとの間に屈折率整合剤を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明の上記の光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法は、前記フェルールに、光ファイバの先端を挿入する工程と、前記レンズスリーブのレンズ収容孔に、前記レンズを挿入する工程と、前記挿入部を前記レンズスリーブ挿入孔に挿入し、前記フェルールの先端を前記レンズに接触させる工程と、を含むことを特徴とする。特に、前記フェルールを前記レンズスリーブの挿入孔に挿入し、前記フェルールの先端を前記レンズに接触させる工程は、サーボプレスにより、圧入することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の光コネクタは、上記の光ファイバ挿入ユニットと、前記光ファイバ挿入ユニットを挿入するためのユニット挿入孔を有し、前記光ファイバ挿入ユニットの前記レンズスリーブを固定する割スリーブを前記ユニット挿入孔内に有するシェルと、前記光ファイバ挿入ユニットの前記フェルールの光ファイバ挿入孔と連通する通過孔を有する押さえ板とを含む。
【0013】
またさらに、本発明の光ファイバ挿入ユニットに用いられるレンズスリーブは、先端側にレンズを収容するレンズ収容孔、後端側にフェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有し、前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さいことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光ファイバ挿入ユニット100を示す斜視図である。
図2図1に示される光ファイバ挿入ユニット100の断面図である。
図3】光ファイバ600の平面図である。
図4】光ファイバ600をチューブ700に挿入する工程を示す斜視図である。
図5】光ファイバ600を挿入したフェルール200を示す斜視図である。
図6】レンズ300をレンズスリーブ400に挿入する工程を示す斜視図である。
図7】フェルール200をレンズスリーブ400に挿入する工程を示す斜視図である。
図8】光コネクタ500を示す平面図である。
図9図8に示される光コネクタ500の断面図である。
図10】従来技術である光ファイバ挿入ユニット900を示す斜視図である。
図11図10に示される光ファイバ挿入ユニット900の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、実施形態を説明するための全ての図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る光ファイバ挿入ユニット100を示す。また、図2は、図1に示される光ファイバ挿入ユニット100を切断面A-Aで切断した断面図である。光ファイバ挿入ユニット100は、光ファイバ(図示せず)を収容し、光ファイバの先端の位置決めをするフェルール200と、フェルールの先端に隣接して配置されるレンズ300と、先端側にレンズ300を収容し、後端側にフェルール200を収容するレンズスリーブ400とを備える。なお、本説明においては、先端側は、相手端子側を意味し、後端側は、光ファイバケーブル延出側を意味する。
【0017】
フェルール200は、略円柱状の形状であり、先端側にレンズスリーブ400に挿入される略円柱状の挿入部202と、後端側に位置し、挿入部202の後端側の一部が圧入される筒状の把持部204とからなる。把持部204の先端側外側(フェルール200全体としては中央部分外側)には、把持部204と一体として形成されるフランジ部206が設けられる。挿入部202の内側には、フェルール内に光ファイバ(図示せず)を挿入するための微細挿入孔208が設けられる。また、挿入部202の先端にテーパ214が設けられる。テーパ214は、フェルール200の挿入時に、挿入部202をレンズスリーブ400の内側に案内する役割を果たす。把持部204の内側には、フェルール200内に光ファイバケーブルを挿入するための光ファイバ挿入穴210が設けられ、光ファイバ挿入穴210の先端側には、光ファイバを微細挿入孔208に案内するための先細の形状(例えば、円錐状)の光ファイバ案内面212が形成されている。
【0018】
挿入部202は、加工における寸法精度を高く保ち、繰り返し着脱を行っても、破損しにくくするため、硬質な材料が好ましく、例えば、ジルコニアを用いて形成することができる。また、把持部204は、ステンレス鋼などの金属を使用して形成され、先端側に挿入部202が、例えば、圧入されて、挿入部202と一体となっている。
【0019】
レンズ300は、フェルール200の先端側に配置され、レンズ300の後端面302が、フェルール200の先端216の近傍に位置するが、特に、レンズ300の後端面302が、フェルール200の先端216と接触することが好ましい。レンズ300は、送信側の光コネクタに光ファイバ挿入ユニット100を使用する際には、光ファイバの先端から放射した光を集光し、並行光にする。レンズ300の軸方向の長さは、光の波長の4分の1波長の光学距離になるように定めるなどして、透過する光を平行光にすることができる。並行光となった光は、相手コネクタ側のレンズによって、集光され、光ファイバ同士の端面の軸ずれなどによる接続損失を低減し、結合効率を高めることができる。上記は、送信側の光コネクタに光ファイバ挿入ユニット100を使用する場合の説明であるが、光ファイバ挿入ユニット100は、受信側の光コネクタに用いることもでき、その際には、レンズ300は、並行光をフェルール200内に配置された光ファイバの先端に集光することになる。
【0020】
レンズは、例えば、ガラスなどを主成分とする透明材料であり、典型的には、ガラスと同程度の屈折率である1.45から1.46にすることができる。本実施形態においては、レンズ300は、レンズの両端面が平面であるが、不純物を含有させるなどにより、内部の屈折率を段階的又は連続的に変化させて、光を屈折させるグリンレンズであるが、先端側を球面にした半球面レンズを採用してもよいし、他のレンズであってもよい。また、レンズの300の先端側に反射防止剤を塗布してもよい。
【0021】
レンズスリーブ400は、筒状であり、ステンレス鋼といった金属で形成されている。レンズスリーブ400は、先端側にあるレンズ挿入孔404と、後端側にあるフェルールを挿入するフェルール挿入孔406とを有し、レンズ挿入孔404とフェルール挿入孔406とは、連通している。レンズ300をレンズスリーブ400に挿入することを容易にするため、フェルール挿入孔406の内径は、レンズ挿入孔404の内径よりもわずかに大きいが、両者の内径は、同一であってもよい。また、フェルール200が、レンズスリーブ400から容易に外れないようにするために、フェルール200の挿入部202の外径は、フェルール挿入部416の内径よりもわずかに大きい。そのため、フェルール200の挿入部202をフェルール挿入孔416に圧入すると、フェルール挿入部416は、拡径することになる。
【0022】
レンズスリーブ400の先端には、光を通過させる光通過孔402が形成されている。光通過孔402の内径は、レンズ挿入孔404の内径よりも小さく、レンズ300が先端から抜けないように、レンズの先端方向への移動を規制している。
【0023】
光ファイバ挿入ユニット100では、フェルール200の先端216(接続相手側)から把持部204(フランジ部206)の先端側部分(先端面)218までの距離が、レンズ300の後端面302(後端部)から、レンズスリーブ400の後端部408までの距離よりも長い。そのため、挿入部202の先端216が、レンズ300の後端部に接触している状態であっても、レンズスリーブ400の後端部408と把持部204の先端側部分218との間に隙間が空いている。レンズスリーブ400は、ステンレス鋼といった金属で形成されており、レンズスリーブ400の熱膨張率は、ジルコニアなどの硬質材料で形成されている挿入部の熱膨張率よりも大きい。そうすると、周囲の機器や外気などによる温度が高くなった環境で光ファイバ挿入ユニット100を使用し、挿入部202よりもレンズスリーブ400の方が膨張することがある。しかしながら、レンズスリーブ400の後端部408が、把持部204の先端側部分218に接触していないから、フェルール200を後方に押圧して、移動させない。その結果、光ファイバの先端(フェルール200の先端216)とレンズ300の後端面302の間に隙間が生じにくく、又は、拡大しにくくなるので、接続損失の増加を抑制することができる。
【0024】
また、本実施形態においては、光ファイバの先端とレンズ300の後端面302の接触を維持しやすいが、両者の間に隙間が生じる場合に備えて、端面での損失を低下させるために、フェルール200とレンズ300との間に、屈折率整合剤を導入してもよい。屈折率整合剤の屈折率は、レンズ300の屈折率と光ファイバの屈折率を考慮して、屈折率差が小さくなるように選択される。レンズ200及び光ファイバの素線のいずれも石英ガラスを採用した場合、屈折率整合剤の屈折率が、1.4から1.5となる材料を選択することが好ましく、典型的には、シリコーン系又はパラフィン系の流動性を有する材料を用いることができる。例えば、屈折率整合剤は、石英ガラスに近い高透明性を有するオイルコンパウンドであり、300から400のちょう度(25℃/混和、JIS K 2220試験方法)を有するものである。ディスペンサーなどによって計量して、フェルール200の先端216に塗布することにより、フェルール200とレンズ300との間の間隙の体積と同量の屈折率整合剤を導入してもよい。屈折率整合剤が挿入されることで、光ファイバの先端とレンズ300との間に間隙が生じた場合であっても、屈折率の変化を小さくし、反射や散乱による光の損失を低下させることができる。
【0025】
フェルール挿入穴406の周囲にあるフェルール挿入部416の外径は、レンズ挿入孔204の周囲にあるレンズ挿入部414の外径よりも小さい。そのため、フェルール200の挿入部202をフェルール挿入孔416に圧入して、フェルール挿入部416が、拡径した状態であっても、フェルール挿入部416の外径は、レンズ挿入部414の外径よりも小さいか、同程度に留まる。光ファイバ挿入ユニット100を、軸合わせ用の割スリーブといった着脱先に取り付けた際に、レンズ挿入部414の外径が、着脱先の内径に合致することになり、接続相手のレンズスリーブとの軸合わせを正確に行うことができる。すなわち、光ファイバ挿入ユニット100では、フェルール挿入部416の外径と着脱先の内径が合致し、レンズ挿入部414が合致しないことによる、レンズ挿入部414(フェルール200の先端216)の位置ずれを抑制することができる。特に、フェルール200をレンズスリーブ400への挿入前のフェルール200の挿入部202の外径とフェルール挿入孔406の内径との差分は、フェルール200挿入時の拡径量よりも大きいか、同程度となるため、該差分よりも、フェルール挿入部416の外径とレンズ挿入部414の外径との差の方が大きいことが、レンズ挿入部414の位置ずれを抑制する上で好ましい。
【0026】
また、上述のとおり、典型的には、レンズ200には、ガラスが用いられ、挿入部202には、ジルコニアを用いられるが、一般に、ガラスの熱膨張係数よりもジルコニアの熱膨張係数の方が大きい。そのため、高温の使用状態において、ジルコニアの方が、ガラスよりも膨張し、フェルール挿入部416の方が、レンズ挿入部414よりも径方向外側に大きく押し出されるが、フェルール挿入部416の外径の方が小さいため、膨張後であっても、フェルール挿入部416の外径が、レンズ挿入部414の外径よりも大きくなりにくい。その結果、レンズスリーブ400の全体の外径は、比較的熱膨張係数が小さいレンズの熱膨張率に応じて定まり、熱による外径の変化が、小さくなる。例えば、SC規格などの規格によって、レンズスリーブ400の外径を定めた場合、高温使用状態下であっても、外径の変化が小さく、規格に準拠した寸法を維持しやすくなり、歪み、破損などを原因とする性能の低下又は不具合が生じにくくなる。
【0027】
以下に、本発明の実施形態である光ファイバ挿入ユニット100の結線方法について説明する。図3は、光ファイバ挿入ユニット100に挿入される光ファイバケーブル600を示す平面図である。図3では、光ファイバ602が露出した状態を示す。光ファイバケーブル600は、内側から、通信対象となる光を透過させる光ファイバ602と、光ファイバ602を保護するケブラ繊維604と、外皮606とからなる。
【0028】
まず、光ファイバケーブル600から、専用の治具で外皮606を剥がし、ケブラ604を撚り分けて適切な長さに切断し、光ファイバ602を露出させる(図3)。光ファイバ602の先端面は、専用の治具などによって、研磨して、滑らかにすることが望ましい。そして、図4に示すように、光ファイバ602に弾性素材のハイトレルチューブ700を取り付け、接着剤で固定する。このハイトレルチューブ700は、光ファイバ挿入孔210に光ファイバ602を挿入し、接着固定する。
【0029】
次に、図5に示すように、露出した光ファイバ602をフェルール200の微細挿入孔208に挿入し、ハイトレルチューブ700を光ファイバ挿入孔210に挿入し、接着固定することで光ファイバ602をフェルール200に結合し、固定する。
【0030】
また、図6に示すように、レンズ300をレンズスリーブ400に挿入する。このとき、レンズ300の後端側に屈折率整合剤を塗布してもよい。屈折率整合剤の量は、レンズ300と、フェルール200の挿入部202の間隙の体積に合わせて、ディスペンサーによって正確に計量することが好ましい。
【0031】
次に、図7に示すように、光ファイバ602を保持したフェルール200をレンズスリーブ400に挿入する。光ファイバ挿入ユニット100においては、フェルール200の挿入部202の先端216からフランジ部206の先端側の面218の距離が、レンズ300の後端面302からレンズスリーブの後端までの距離よりも長く、先端216が、レンズ300の後端面302に接触しても、レンズスリーブ400の後端408によって、フェルール200の動きを規制することがない。そのため、サーボプレスを用いて、圧入力を調整し、フェルール200の先端部により、レンズを破損することを回避すると共に、フェルール200の先端面をレンズ300に確実に接触させることが好ましい。例えば、人手により、フェルール200をレンズスリーブ400に仮挿入し、フェルール200がレンズスリーブ400から容易には抜けないようにした後に、サーボプレスによりフェルール200をレンズスリーブ400に圧入するようにしてもよい。
【0032】
図8は、本発明の実施形態である2本の光ファイバ挿入ユニット100を含む光コネクタ500を示す平面図である。図9は、図8に示される光コネクタ500を切断面B-Bで切断した断面図である。なお、光コネクタ500は、プラグであるが、光ファイバ挿入ユニット100は、該プラグと嵌合するレセプタクルの光コネクタにも同様に使用することができ、嵌合時には、プラグ及びレセプタクル内にある光ファイバ挿入ユニットの先端同士が接触する。光コネクタ500は、シェル502及び押さえ板504を含み、シェル502には、光ファイバ挿入ユニット100を挿入するためのユニット挿入孔506が設けられている。ユニット挿入孔506内には、光ファイバ挿入ユニット100の先端部(すなわち、レンズスリーブ400)の位置を固定するための割りスリーブ508を備える。図8図9に示される実施形態では、2つのユニット挿入孔506に、2本の光ファイバ挿入ユニット100が挿入され、押さえ板504で固定された状態になっている。押さえ板504には、光ファイバ挿入孔210に通じる、光ファイバを通すための通過孔510が設けられている。光ファイバケーブルは、通過孔510及び光ファイバ挿入孔210を介して光コネクタ500内の光ファイバ挿入ユニット100から延出し、コードカン、締付金具で抜けないように固定される。
【0033】
光ファイバ挿入ユニット100を先端方向に付勢するために、フェルール200のフランジ部206と押さえ板504の間に弾性体を設けることができる。図9に示される実施形態では、弾性体として付勢バネ512が設けられている。付勢バネ512により、光コネクタ500をレセプタクルに接続した際に、光ファイバ挿入ユニット100の先端部分(レンズスリーブ400)をレセプタクル側の光ファイバ挿入ユニットの先端部分に圧接した状態を保つことができる。
【0034】
また、レセプタクルと接続するためのシェル502の先端部分外側には防水リング514が設けられ、シェル502の外側には、レセプタクルと嵌合するためのコネクタスリーブ516が設けられている。
【0035】
上記のとおり、光ファイバ挿入ユニット100では、フェルール挿入孔406の周囲にあるフェルール挿入部416の外径が、レンズ挿入孔204の周囲にあるレンズ挿入部414の外径よりも小さい。そのため、フェルール200の挿入部202をレンズスリーブ400に挿入し、フェルール挿入部416の外径が拡径しても、レンズ挿入部414の外径を割スリーブ408の内径に合致させて、レンズ挿入部414(すなわちフェルール200の先端216であり、光ファイバ602の先端)の位置ずれを抑制して、相手側のレンズスリーブの外径による軸合わせを容易にする。
【0036】
また、上記のとおり、温度変化によるファイバ挿入ユニット100全体の形状変化が小さくなる。そのため、光コネクタ500全体の形状変化も小さくなり、例えば、防水効果が維持しやすくなる。さらに、ファイバ挿入ユニット100の形状変化による、ユニット挿入孔506又は割りスリーブ508との間に生じる摩擦力の増加を抑制することができ、作業現場においてメンテナンスをする際の抜線作業を容易にすることができる。
【0037】
以上、本発明を特定の実施形態について図示し、説明したが、本発明は、図示の実施形
態に限定されるものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲の請求項によってのみ定
まるものである。
【符号の説明】
【0038】
100 光ファイバ挿入ユニット
200 フェルール
202 挿入部
204 把持部
206 フランジ部
208 微細挿入孔
210 光ファイバ挿入孔
212 光ファイバ案内面
214 テーパ
216 フェルール200の先端
218 把持部204(フランジ部206)の先端側部分
300 レンズ
302 レンズ300の後端面
400 レンズスリーブ
402 光通過孔
404 レンズ挿入孔
406 フェルール挿入孔
408 レンズスリーブ400の後端部
414 レンズ挿入部
416 フェルール挿入部
500 光コネクタ
502 シェル
504 押さえ板
506 ユニット挿入孔
508 割りスリーブ
510 通過孔
512 付勢バネ
514 防水リング
516 コネクタスリーブ
600 光ファイバケーブル
602 光ファイバ
604 ケブラ繊維
606 外皮
700 ハイトレルチューブ
900 光ファイバ挿入ユニット(従来技術)
902 フェルール
904 レンズ
906 レンズスリーブ
908 フランジ部
910 フェルール902の先端部
912 フランジ部908の先端側の面
914 レンズスリーブ906の後端
916 挿入部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルールと、
レンズと、
先端側に前記レンズを収容するレンズ収容孔を有し、後端側に前記フェルールを挿入するためのフェルール挿入孔を有するレンズスリーブと、
を備える光ファイバ挿入ユニットであって、
前記フェルールは、
前記レンズスリーブに挿入される挿入部と、
前記挿入部の後端側に位置し、挿入部よりも径方向に大きいフランジ部を含む把持部とを有し、
前記フランジ部は、前記把持部の先端側外側に設けられ、
前記フェルールの先端と前記フランジ部の先端側の面との間の距離が、前記レンズの後端部と前記レンズスリーブの後端部との間の距離よりも長く、前記挿入部の先端が、前記レンズの後端部に接触している状態であっても、前記レンズスリーブの後端部と前記把持部の先端側部分との間に隙間が空くように構成され、
前記レンズスリーブの熱膨張率は、前記挿入部の熱膨張率より大きく、
前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さく、
前記レンズスリーブの先端には、光を通過させる光通過孔が形成されており、前記光通過孔の内径は、前記レンズ収容孔の内径よりも小さい、
ことを特徴とする光ファイバ挿入ユニット。
【請求項2】
フェルールと、
レンズと、
先端側に前記レンズを収容するレンズ収容孔、後端側に前記フェルールの挿入部を挿入するためのフェルール挿入孔を有するレンズスリーブと、
を備える光ファイバ挿入ユニットであって、
前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さく、
前記レンズスリーブの熱膨張率は、前記挿入部の熱膨張率より大きく、
前記レンズスリーブの先端には、光を通過させる光通過孔が形成されており、前記光通過孔の内径は、前記レンズ収容孔の内径よりも小さい
ことを特徴とする光ファイバ挿入ユニット。
【請求項3】
前記レンズと、前記フェルールとの間に屈折率整合剤を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ挿入ユニット。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法であって、
前記フェルールに、光ファイバの先端を挿入する工程と、
前記レンズスリーブのレンズ収容孔に、前記レンズを挿入する工程と、
前記フェルールの挿入部を前記フェルール挿入孔に挿入し、前記フェルールの先端を前記レンズに接触させる工程と、
を含む、
光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法。
【請求項5】
前記フェルールを前記レンズスリーブの挿入孔に挿入し、前記フェルールの先端を前記レンズに接触させる工程は、サーボプレスにより、圧入することを特徴とする、
請求項に記載の光ファイバ挿入ユニットを組み立てる方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の光ファイバ挿入ユニットと、
前記光ファイバ挿入ユニットを挿入するためのユニット挿入孔を有し、前記光ファイバ挿入ユニットの前記レンズスリーブを固定する割スリーブを前記ユニット挿入孔内に有するシェルと、
前記光ファイバ挿入ユニットの前記フェルールの光ファイバ挿入孔と連通する通過孔を有する押さえ板と、
を含むことを特徴とする光コネクタ。
【請求項7】
光ファイバ挿入ユニットに用いられるレンズスリーブであって、
先端側にレンズを収容するレンズ収容孔、後端側にフェルールの挿入部を挿入するためのフェルール挿入孔を有し、
前記レンズスリーブの前記フェルール挿入孔の周囲の外径が、前記レンズスリーブの前記レンズ収容孔の周囲の外径よりも小さく、
前記レンズスリーブの熱膨張率は、前記挿入部の熱膨張率より大きく、
前記レンズスリーブの先端には、光を通過させる光通過孔が形成されており、前記光通過孔の内径は、前記レンズ収容孔の内径よりも小さい、
ことを特徴とするレンズスリーブ。