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特開2024-32946電動スライドレール及び電動スライドレールを備えた乗物用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032946
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電動スライドレール及び電動スライドレールを備えた乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B60N2/07
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014266
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2020563871の分割
【原出願日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】62/787,913
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/787,908
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シムス アンドリュー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファンデンヘーデ ディーン シー
(57)【要約】
【課題】 円滑に動作することができる電動スライドレールを提供する。また、円滑にスライド移動することができる乗物用シートを提供する。
【解決手段】 電動スライドレール1であって、溝形の断面を有し、前後方向に延在するレール11と、レールに受容され、かつレールにスライド可能に係合するスライダ12と、前後方向周りに回転可能にスライダに支持されたねじ部材38、39を含むねじアセンブリ35と、スライダに支持され、ねじ部材を回転させる電動モータ36と、前後方向に延在し、ねじ部材と係合するようにレールに形成されたねじ係合部57、58とを有する。乗物用シート2は電動スライドレール1を備え、レール11が乗物のフロア3に結合され、スライダがシートクッション5に結合されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動スライドレールであって、
溝形の断面を有し、前後方向に延在するレールと、
前記レールに受容され、かつ前記レールにスライド可能に係合するスライダと、
前記前後方向周りに回転可能に前記スライダに支持されたねじ部材を含むねじアセンブリと、
前記スライダに支持され、前記ねじ部材を回転させる電動モータと、
前記前後方向に延在し、前記ねじ部材と係合するように前記レールに形成されたねじ係合部とを有し、
前記レールは、互いに対向した第1側壁及び第2側壁を有し、
前記ねじ係合部は、前記第1側壁に形成された第1ねじ係合部と、前記第2側壁に形成された第2ねじ係合部とを有し、
前記ねじ部材は、前記第1ねじ係合部及び前記第2ねじ係合部間にて互いに並列に配置された、前記第1ねじ係合部に係合する第1ねじ部材及び前記第2ねじ係合部に係合する第2ねじ部材を有する電動スライドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動スライドレール及び電動スライドレールを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ロアレールと、アッパレールと、ロアレール及びアッパレールの間に設けられたウォーム及びウォームを駆動する電動モータと、アッパレール及びロアレールの両方に設けられ、ウォームと螺合するウォーム螺合手段とを備える自動車の電動スライドレールが公知である(例えば、特許文献1)。ウォームは、4つ設けられ、上側の2つがアッパレールの下面に設けられたピッチ溝に係合し、下側の2つがロアレールに設けられたピッチ溝に係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-310437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウォーム及び電動モータがロアレール及びアッパレールのいずれにも固定されていない場合、ウォームがロアレール及びアッパレールに対して傾斜し易くなり、ウォームの回転が阻害される虞がある。その結果、電動スライドレールの動作が阻害される虞がある。また、電動スライドレールの動作が阻害されることによって、異音やがたつき等が発生し易くなる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、円滑に動作することができる電動スライドレールを提供することを課題とする。また、円滑にスライド移動することができる乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、電動スライドレール(1)であって、溝形の断面を有し、前後方向に延在するレール(11)と、前記レールに受容され、かつ前記レールにスライド可能に係合するスライダ(12)と、前記前後方向周りに回転可能に前記スライダに支持されたねじ部材(38、39)を含むねじアセンブリ(35)と、前記スライダに支持され、前記ねじ部材を回転させる電動モータ(36)と、前記前後方向に延在し、前記ねじ部材と係合するように前記レールに形成されたねじ係合部(57、58)とを有する。
【0007】
この態様によれば、モータ及びねじアセンブリがスライダに固定されているため、ねじ係合部に対するねじ部材の倒れが抑制される。そのため、ねじ部材がねじ係合部に適切な角度で噛み合うことができ、ねじ部材の回転が円滑になる。その結果、円滑に動作することができる電動スライドレールを提供することができる。また、電動モータがレールに受容されるスライダに取り付けられるため、電動レール装置の外形を小型化することができる。電動モータの回転力をねじ部材に伝達するためのシャフトを短くすることができる。また、スライダに回転可能に支持されたねじ部材がレールに設けられたねじ係合部に噛み合う構成としたため、ねじ係合部がスライダ及びレールの両方に設けられ、ねじ部材がスライダ及びレールの両方に設けられたねじ係合部に噛み合う構成に比べてがた(公差)を小さくすることができる。また、スライダに電動モータ及びねじアセンブリを設けた構成としたため、レールを伸張させることによってスライダの移動ストロークお容易に伸張することができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記レールは、互いに対向した第1側壁(17)及び第2側壁(17)を有し、前記ねじ係合部は、前記第1側壁に形成された第1ねじ係合部(57)と、前記第2側壁に形成された第2ねじ係合部(58)とを有し、前記ねじ部材は、前記第1ねじ係合部及び前記第2ねじ係合部間にて互いに並列に配置された、前記第1ねじ係合部に係合する第1ねじ部材(38)及び前記第2ねじ係合部に係合する第2ねじ部材(39)を有するとよい。
【0009】
この態様によれば、ねじアセンブリが第1ねじ部材及び第2ねじ部材の2つを有するため、ねじアセンブリは第1ねじ係合部及び第2ねじ係合部の両方と係合しつつ、小型化が可能になる。また、第1ねじ部材が第1ねじ係合部から受ける反力の方向と、第2ねじ部材が第2ねじ係合部から受ける反力の方向とが逆方向になるため、第1ねじ部材と第1ねじ係合部とが確実に係合し、第2ねじ部材と第2ねじ係合部とが確実に係合する。また、第1ねじ係合部及び第2ねじ係合部が互いに対向した第1側壁及び第2側壁に形成されるため、異物が第1ねじ係合部及び第2ねじ係合部に滞留し難くなる。
【0010】
また、上記の態様において、前記ねじアセンブリは、前記第1ねじ部材及び前記第2ねじ部材を回転可能に支持するギヤケース(41)及び前記ギヤケースを前記スライダに支持するための第1ブラケット(42)を有し、前記ギヤケースは、前記第1ねじ部材及び前記第2ねじ部材を側方に露出させるための開口(48)を有するとよい。
【0011】
この態様によれば、第1ねじ部材及び第2ねじ部材を有するねじアセンブリのスライダへの組み付けを容易にすることができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記第1ブラケットは、前記ギヤケースの前部から前方に延出する第1結合部(42A)と、前記ギヤケースの後部から後方に延出する第2結合部(42B)とを有し、前記第1結合部及び前記第2結合部において前記スライダに結合されているとよい。
【0013】
この態様によれば、第1ブラケットは第1ギヤケースを安定性良く支持することができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記第1ブラケットは、前記第1結合部から前記第2結合部に延びる支持部(42C)を含む一体的な金属製の部材をなし、前記ギヤケースは、前記スライダと前記支持部との間に配置されているとよい。
【0015】
この態様によれば、スライダと第1ブラケットとによって形成される閉構造が安定性良くギヤケースを支持することができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記スライダにおける前記第1ブラケットの前方又は後方に結合された、前記電動モータを支持するための第2ブラケット(51)を更に有し、前記第2ブラケットは、前記電動モータの前記ねじ部材側の端部を片持ち支持するとよい。
【0017】
この態様によれば、電動モータが第2ブラケットによって片持ち支持されるため、電動モータはねじアセンブリに対して若干傾動することができる。これにより、電動モータの回転軸とねじアセンブリとの芯ずれが許容される。
【0018】
また、上記の態様において、前記スライダは、ベース部(25)と、前記ベース部から前記レールの底部側に延びる第3側壁(26)及び第4側壁(26)とを有して溝形に形成され、前記第3側壁は前記第1側壁と対向し、前記第4側壁は前記第2側壁と対向し、前記第2ブラケットは前記ベース部に結合され、前記電動モータは前記第3側壁と前記第4側壁との間に配置されているとよい。
【0019】
この態様によれば、電動モータをスライダの内部に配置して、電動スライドレールの外形を小型化することができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記第1ねじ部材は、前記第3側壁に形成された開口(55)を通過して前記第1ねじ係合部に係合し、前記第2ねじ部材は、前記第4側壁に形成された開口を通過して前記第2ねじ係合部に係合しているとよい。
【0021】
この態様によれば、ねじアセンブリを電動モータに近い位置に配置することができる。その結果、電動モータの駆動力をねじアセンブリに伝達するシャフトを短くすることができ、ねじ部材の回転を円滑にすることができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記ギヤケースは、前記第1ねじ部材の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第1軸受部(45)と、前記第2ねじ部材の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第2軸受部(46)と、前記電動モータの回転軸(36A)に連結した駆動軸(43)を回転可能に支持する前後一対の第3軸受部(47)とを有し、前記駆動軸は、前後一対の駆動ギヤ(43A)を有し、前記第1ねじ部材は、一対の前記駆動ギヤにそれぞれ噛み合う前後一対の第1ギヤ(38B)を有し、前記第2ねじ部材は、一対の前記駆動ギヤにそれぞれ噛み合う前後一対の第2ギヤ(39B)を有するとよい。
【0023】
この態様によれば、電動モータの回転力を第1ねじ部材及び第2ねじ部材に確実に伝達することができる。また、第1ねじ部材、第2ねじ部材、及び駆動軸を安定性良く、かつ正確な位置に配置することができる。
【0024】
また、上記の態様において、前記電動モータの前記回転軸と前記駆動軸とは、減速機を介して互いに接続されているとよい。
【0025】
この態様によれば、第1ねじ部材及び第2ねじ部材に必要なトルクを発生させるべく、駆動軸の回転を減速することができる。
【0026】
また、上記の態様において、前記第1側壁及び前記第2側壁には、互いに近づく方向に突出すると共に、前後方向に延びた突部(22)が形成され、前記ねじ係合部は、前記突部に前後方向に並んで形成された複数の係合孔(59)を含むとよい。
【0027】
この態様によれば、ねじ係合部とねじ部材の歯部との噛み合い量を大きくすることができる。
【0028】
また、上記の態様において、前記レールの内部には、前後に延び、電源に接続される導電性ストリップ(62)と、前記レールと前記導電性ストリップとの間に設けられた電気絶縁板(63)とが設けられ、前記電動モータは、前記導電性ストリップに摺接する導電性の接触端子(64)を有するとよい。
【0029】
この態様によれば、電動モータに電力を供給するためのハーネスを省略することができる。
【0030】
また、上記の態様において、前記電気絶縁板は、その側縁に内方かつ前記導電性ストリップの上方に折り曲げられ、前記導電性ストリップに対して隙間を介して対向する延長部(63A)を有し、前記接触端子は、前記延長部と前記導電性ストリップとの間に延びるとよい。
【0031】
この態様によれば、異物が給電板に接触することを避けることができる。
【0032】
また、本発明の他の態様は、上記の電動スライドレールを備えた乗物用シート(2)であって、前記レールが乗物のフロア(3)に結合され、前記スライダがシートクッション(5)に結合されている。
【0033】
この態様によれば、円滑にスライド移動することができる乗物用シートを提供することができる。
【0034】
また、上記の態様において、前記レールは、前記フロアに設けられたレール溝(4)に受容されているとよい。
【0035】
この態様によれば、レールをレール溝に配置して、レールがフロアから突出しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一態様は、電動スライドレール(1)であって、溝形の断面を有し、前後方向に延在するレール(11)と、前記レールに受容され、かつ前記レールにスライド可能に係合するスライダ(12)と、前記前後方向周りに回転可能に前記スライダに支持されたねじ部材(38、39)を含むねじアセンブリ(35)と、前記スライダに支持され、前記ねじ部材を回転させる電動モータ(36)と、前記前後方向に延在し、前記ねじ部材と係合するように前記レールに形成されたねじ係合部(57、58)とを有する。
【0037】
この態様によれば、モータ及びねじアセンブリがスライダに固定されているため、ねじ係合部に対するねじ部材の倒れが抑制される。そのため、ねじ部材がねじ係合部に適切な角度で噛み合うことができ、ねじ部材の回転が円滑になる。その結果、円滑に動作することができる電動スライドレールを提供することができる。また、電動モータがレールに受容されるスライダに取り付けられるため、電動レール装置の外形を小型化することができる。電動モータの回転力をねじ部材に伝達するためのシャフトを短くすることができる。また、スライダに回転可能に支持されたねじ部材がレールに設けられたねじ係合部に噛み合う構成としたため、ねじ係合部がスライダ及びレールの両方に設けられ、ねじ部材がスライダ及びレールの両方に設けられたねじ係合部に噛み合う構成に比べてがた(公差)を小さくすることができる。また、スライダに電動モータ及びねじアセンブリを設けた構成としたため、レールを伸張させることによってスライダの移動ストロークお容易に伸張することができる。
【0038】
また、上記の態様において、前記レールは、互いに対向した第1側壁(17)及び第2側壁(17)を有し、前記ねじ係合部は、前記第1側壁に形成された第1ねじ係合部(57)と、前記第2側壁に形成された第2ねじ係合部(58)とを有し、前記ねじ部材は、前記第1ねじ係合部及び前記第2ねじ係合部間にて互いに並列に配置された、前記第1ねじ係合部に係合する第1ねじ部材(38)及び前記第2ねじ係合部に係合する第2ねじ部材(39)を有するとよい。
【0039】
この態様によれば、ねじアセンブリが第1ねじ部材及び第2ねじ部材の2つを有するため、ねじアセンブリは第1ねじ係合部及び第2ねじ係合部の両方と係合しつつ、小型化が可能になる。また、第1ねじ部材が第1ねじ係合部から受ける反力の方向と、第2ねじ部材が第2ねじ係合部から受ける反力の方向とが逆方向になるため、第1ねじ部材と第1ねじ係合部とが確実に係合し、第2ねじ部材と第2ねじ係合部とが確実に係合する。また、第1ねじ係合部及び第2ねじ係合部が互いに対向した第1側壁及び第2側壁に形成されるため、異物が第1ねじ係合部及び第2ねじ係合部に滞留し難くなる。
【0040】
また、上記の態様において、前記ねじアセンブリは、前記第1ねじ部材及び前記第2ねじ部材を回転可能に支持するギヤケース(41)及び前記ギヤケースを前記スライダに支持するための第1ブラケット(42)を有し、前記ギヤケースは、前記第1ねじ部材及び前記第2ねじ部材を側方に露出させるための開口(48)を有するとよい。
【0041】
この態様によれば、第1ねじ部材及び第2ねじ部材を有するねじアセンブリのスライダへの組み付けを容易にすることができる。
【0042】
また、上記の態様において、前記第1ブラケットは、前記ギヤケースの前部から前方に延出する第1結合部(42A)と、前記ギヤケースの後部から後方に延出する第2結合部(42B)とを有し、前記第1結合部及び前記第2結合部において前記スライダに結合されているとよい。
【0043】
この態様によれば、第1ブラケットは第1ギヤケースを安定性良く支持することができる。
【0044】
また、上記の態様において、前記第1ブラケットは、前記第1結合部から前記第2結合部に延びる支持部(42C)を含む一体的な金属製の部材をなし、前記ギヤケースは、前記スライダと前記支持部との間に配置されているとよい。
【0045】
この態様によれば、スライダと第1ブラケットとによって形成される閉構造が安定性良くギヤケースを支持することができる。
【0046】
また、上記の態様において、前記スライダにおける前記第1ブラケットの前方又は後方に結合された、前記電動モータを支持するための第2ブラケット(51)を更に有し、前記第2ブラケットは、前記電動モータの前記ねじ部材側の端部を片持ち支持するとよい。
【0047】
この態様によれば、電動モータが第2ブラケットによって片持ち支持されるため、電動モータはねじアセンブリに対して若干傾動することができる。これにより、電動モータの回転軸とねじアセンブリとの芯ずれが許容される。
【0048】
また、上記の態様において、前記スライダは、ベース部(25)と、前記ベース部から前記レールの底部側に延びる第3側壁(26)及び第4側壁(26)とを有して溝形に形成され、前記第3側壁は前記第1側壁と対向し、前記第4側壁は前記第2側壁と対向し、前記第2ブラケットは前記ベース部に結合され、前記電動モータは前記第3側壁と前記第4側壁との間に配置されているとよい。
【0049】
この態様によれば、電動モータをスライダの内部に配置して、電動スライドレールの外形を小型化することができる。
【0050】
また、上記の態様において、前記第1ねじ部材は、前記第3側壁に形成された開口(55)を通過して前記第1ねじ係合部に係合し、前記第2ねじ部材は、前記第4側壁に形成された開口を通過して前記第2ねじ係合部に係合しているとよい。
【0051】
この態様によれば、ねじアセンブリを電動モータに近い位置に配置することができる。その結果、電動モータの駆動力をねじアセンブリに伝達するシャフトを短くすることができ、ねじ部材の回転を円滑にすることができる。
【0052】
また、上記の態様において、前記ギヤケースは、前記第1ねじ部材の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第1軸受部(45)と、前記第2ねじ部材の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第2軸受部(46)と、前記電動モータの回転軸(36A)に連結した駆動軸(43)を回転可能に支持する前後一対の第3軸受部(47)とを有し、前記駆動軸は、前後一対の駆動ギヤ(43A)を有し、前記第1ねじ部材は、一対の前記駆動ギヤにそれぞれ噛み合う前後一対の第1ギヤ(38B)を有し、前記第2ねじ部材は、一対の前記駆動ギヤにそれぞれ噛み合う前後一対の第2ギヤ(39B)を有するとよい。
【0053】
この態様によれば、電動モータの回転力を第1ねじ部材及び第2ねじ部材に確実に伝達することができる。また、第1ねじ部材、第2ねじ部材、及び駆動軸を安定性良く、かつ正確な位置に配置することができる。
【0054】
また、上記の態様において、前記電動モータの前記回転軸と前記駆動軸とは、減速機を介して互いに接続されているとよい。
【0055】
この態様によれば、第1ねじ部材及び第2ねじ部材に必要なトルクを発生させるべく、駆動軸の回転を減速することができる。
【0056】
また、上記の態様において、前記第1側壁及び前記第2側壁には、互いに近づく方向に突出すると共に、前後方向に延びた突部(22)が形成され、前記ねじ係合部は、前記突部に前後方向に並んで形成された複数の係合孔(59)を含むとよい。
【0057】
この態様によれば、ねじ係合部とねじ部材の歯部との噛み合い量を大きくすることができる。
【0058】
また、上記の態様において、前記レールの内部には、前後に延び、電源に接続される導電性ストリップ(62)と、前記レールと前記導電性ストリップとの間に設けられた電気絶縁板(63)とが設けられ、前記電動モータは、前記導電性ストリップに摺接する導電性の接触端子(64)を有するとよい。
【0059】
この態様によれば、電動モータに電力を供給するためのハーネスを省略することができる。
【0060】
また、上記の態様において、前記電気絶縁板は、その側縁に内方かつ前記導電性ストリップの上方に折り曲げられ、前記導電性ストリップに対して隙間を介して対向する延長部(63A)を有し、前記接触端子は、前記延長部と前記導電性ストリップとの間に延びるとよい。
【0061】
この態様によれば、異物が給電板に接触することを避けることができる。
【0062】
また、本発明の他の態様は、上記の電動スライドレールを備えた乗物用シート(2)であって、前記レールが乗物のフロア(3)に結合され、前記スライダがシートクッション(5)に結合されている。
【0063】
この態様によれば、円滑にスライド移動することができる乗物用シートを提供することができる。
【0064】
また、上記の態様において、前記レールは、前記フロアに設けられたレール溝(4)に受容されているとよい。
【0065】
この態様によれば、レールをレール溝に配置して、レールがフロアから突出しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】実施形態に係る電動スライドレール備えた乗物用シートの構成図
図2】電動スライドレールの斜視図
図3】電動スライドレールの断面図(図5のIII-III断面図)
図4】レールの断面図
図5】一部を破断して示すスライダの斜視図
図6】電動スライドレールの断面図
図7】第1ブラケットを省略して示すねじアセンブリの斜視図
図8】第1ブラケット及びアウタケースを省略して示すねじアセンブリの斜視図
図9】電動スライドレールの断面図(図5のIX-IX断面図)
図10】第1及び第2ねじ部材と第1及び第2ねじ係合部との噛み合いを示す斜視図
図11】変形例に係る給電装置を備えた電動スライドレールの斜視図
図12】(A)スライダがレールに対して前方にあるとき、(B)スライダがレールに対して後方にあるときの給電装置の態様を示す説明図
図13】カバーピースの断面図
図14】他の実施形態に係るスライダの断面図
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。電動スライドレールは、レールと、レールに対してスライド移動可能なスライダとを有する。レールは第1の構造体に結合され、スライダは第2の構造体に結合される。レールに対してスライダが移動することによって、電動スライドレールは第1の構造体に対して第2の構造体を移動させる。電動スライドレールは、例えば、車両のフロアとシートとの間に設けられ、フロアに対してシートを移動させる。また、電動スライドレールは、基台とワークホルダとの間に設けられ、基台に対してワークホルダを移動させる。
【0068】
以下、図面を参照して電動スライドレール1及び電動スライドレール1を備えた乗物用シート2の実施形態について説明する。図1に示すように、乗物用シート2は、その下部に少なくとも1つの電動スライドレール1を有し、電動スライドレール1において車両のフロア3に結合されている。乗物用シート2は、乗員の臀部を支持するシートクッション5と、シートクッション5の後部から上方に延び、乗員の背部を支持するシートバック6とを有する。電動スライドレール1は、フロア3とシートクッション5との間に設けられ、フロア3に対してシートクッション5をスライド移動可能に支持する。乗物用シート2は、一対の電動スライドレール1を有することが好ましい。
【0069】
図2に示すように、電動スライドレール1は、前後方向に延在するレール11と、レール11にスライド可能に係合するスライダ12とを有する。レール11の延在方向を前後方向とする。レール11の延在方向は、車両の前後方向と一致してもよく、一致しなくてもよい。すなわち、レール11の延在方向は、車両への搭載方向を限定するものではない。本実施形態では、レール11の延在方向は、車両の前後方向と一致する。本実施形態では、スライダ12はレール11に対して上側に設けられている。そのため、レール11をロアレール、スライダ12をアッパレールと称してもよい。
【0070】
図3及び図4に示すように、レール11は、溝形の断面を有する。詳細には、レール11は、面が上下を向くレール底壁14と、レール底壁14の左右の縁部から上方に延びて面が左右を向く左右のレール外側壁15と、左右のレール外側壁15の上端からそれぞれ互いに近づく方向に延び、面が上下を向く左右のレール上壁16と、左右のレール上壁16の内端からそれぞれ下方に延び、面が左右を向く左右のレール内側壁17とを有する。左右のレール内側壁17は、請求項の第1側壁及び第2側壁に対応する。
【0071】
レール底壁14、左右のレール外側壁15、左右のレール上壁16、及び左右のレール内側壁17は、それぞれ前後に延在している。左右のレール外側壁15及び左右のレール内側壁17は、互いに平行に、かつレール底壁14に対して垂直に延在している。左右のレール内側壁17の下端は、レール底壁14に対して間隔をおいて配置されている。レール11は、その上部に前後に延びるレール開口19を有する。レール開口19は、左右のレール内側壁17によって画定されている。レール11は、金属板をプレス成形することによって形成されているとよい。レール底壁14の左右の縁側部は、上方に隆起した段部21を有してもよい。左右の段部21は、前後に延在し、その上面が平坦に形成されている。
【0072】
左右のレール内側壁17のそれぞれには、互いに近づく方向に突出すると共に、前後方向に延びた突部22が形成されている。左右の突部22の断面は、円弧状又は台形状に形成されているとよい。各突部22は、対応するレール内側壁17において、上下方向における中間部に配置されているとよい。左右のレール内側壁17の上端部及び下端部は、突部22よりも左右外方に配置されている。
【0073】
図3に示すように、スライダ12は、レール開口19の開口端に配置され、面が上下を向く板状のベース部25と、ベース部25の左右の側縁からレール底壁14側、すなわち下方に延びる左右のスライダ内側壁26と、左右のスライダ内側壁26の下端からそれぞれ左右外方に延びる左右のスライダ下壁27と、左右のスライダ下壁27の左右外端から上方に延びる左右のスライダ外側壁28とを有する。左右のスライダ内側壁26は、請求項の第3側壁及び第4側壁に対応する。ベース部25、左右のスライダ内側壁26、左右のスライダ下壁27、及び左右のスライダ外側壁28は、前後に延在している。
【0074】
スライダ12は、プレス成形又はロール成形された複数の金属板を互いに締結することによって形成されているとよい。本実施形態では、スライダ12は、ベース部25、左側のスライダ内側壁26、左側のスライダ下壁27、及び左側のスライダ外側壁28を構成する第1ピース12Aと、ベース部25、右側のスライダ内側壁26、右側のスライダ下壁27、及び右側のスライダ外側壁28を構成する第2ピース12Bとから構成されている。第1ピース12Aと第2ピース12Bとが、それぞれのベース部25で互いに重ね合わされ、締結されることによってスライダ12が形成されている。他の実施形態では、スライダ12はプレス成形又はロール成形された1枚の金属板から形成されてもよい。スライダ12の前後長は、レール11の前後長に対して短く設定されている。スライダ12は、ベース部25において、シートクッション5に結合される。
【0075】
ベース部25は、左右のレール上壁16よりも上方に配置されてもよく、左右のレール上壁16よりも下方に配置されてもよい。左右のスライダ内側壁26は、面が左右を向き、左右に互いに距離をおいて対向する。左右のスライダ内側壁26は、左右のレール内側壁17の間に配置されている。各スライダ内側壁26は、左右において対応するレール内側壁17と隙間を介して対向する。各スライダ下壁27は、レール底壁14と左右において対応するレール11内壁の下端の間を通過して左右に延びている。各スライダ12外壁は、左右において対応するレール外側壁15及びレール内側壁17の間に配置されている。各スライダ外側壁28の左右方向における外面側には、複数の車輪31が回転可能に支持されている。各車輪31は、左右方向回りの回転軸を有し、レール底壁14に接地している。本実施形態では、各車輪31は、レール底壁14の段部21の上面に接地している。スライダ12は、車輪31を介してレール11に接地することによって、レール11に対して円滑にスライド移動することができる。以上の構成により、スライダ12はレール11に受容され、かつレール11にスライド可能に係合する。他の実施形態では、スライダ12はボールやローラーベアリングを介してレール11に支持されてもよい。
【0076】
左右のスライダ内側壁26には、互いに近づく方向に凹むと共に、前後方向に延びた凹部33が形成されている。スライダ内側壁26の凹部33の背面側には突部が形成されている。左右の凹部33の前後方向から見た断面は、円弧状又は台形状に形成されているとよい。各凹部33は、対応するスライダ内側壁26において、上下方向における中間部に配置されているとよい。各凹部33は、左右において対応するレール11の突部22と対向する位置に配置されている。
【0077】
スライダ12は、ベース部25と、左右のスライダ内側壁26とによって、レール底壁14側、すなわち下方に向けて開口する溝形に形成されている。図5及び図6に示すように、ベース部25の下面には、ねじアセンブリ35及び電動モータ36が支持されている。ねじアセンブリ35は、前後方向周りに回転可能にスライダ12に支持されたねじ部材38、39を含む。電動モータ36は、スライダ12に支持され、ねじ部材38、39を回転させる。
【0078】
図8及び図10に示すように、本実施形態では、ねじ部材38、39は、第1ねじ部材38と第2ねじ部材39とを含む。他の実施形態では、ねじアセンブリ35は、単一のねじ部材を有してもよい。第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39は、長手方向における中間部の外周面にねじ山38A、39Aを有する。ねじ山38A、39Aの数は、電動スライドレール1の大きさや、電動スライドレール1の長手方向における要求強度によって決定されるとよい。例えば、要求強度を増加させたい場合には、ねじ山38A、39Aの数を増加させるとよい。図5及び図6に示すように、ねじアセンブリ35は、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39を回転可能に支持するギヤケース41と、ギヤケース41をスライダ12に支持するための第1ブラケット42とを有する。
【0079】
図7及び図8に示すように、ギヤケース41は、前後に長い直方体の箱形に形成されている。ギヤケース41は、第1ねじ部材38と、第2ねじ部材39と、電動モータ36の回転軸36Aに連結する駆動軸43とを回転可能に支持している。第1ねじ部材38、第2ねじ部材39、及び駆動軸43は、それぞれ前後に延び、互いに並列にギヤケース41に配置されている。ギヤケース41は、外殻をなす箱形のアウタケース41Aと、アウタケース41Aの前端及び後端に支持された前支持部材41B及び後支持部材41Cとを有する。前支持部材41B及び後支持部材41Cには、第1ねじ部材38の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第1軸受部45と、第2ねじ部材39の前端及び後端を回転可能に支持する前後一対の第2軸受部46と、駆動軸43を回転可能に支持する前後一対の第3軸受部47とが設けられている。
【0080】
第1ねじ部材38はギヤケース41の左側部に沿って配置され、第2ねじ部材39はギヤケース41の右側部に沿って配置されている。駆動軸43は、第1ねじ部材38と第2ねじ部材39との中間部の下方に配置されている。駆動軸43は、ギヤケース41内において駆動ギヤ43Aを有する。第1ねじ部材38は、駆動ギヤ43Aに噛み合う第1ギヤ38Bを有する。第2ねじ部材39は、駆動ギヤ43Aに噛み合う第2ギヤ39Bを有する。駆動ギヤ43A、第1ギヤ38B、及び第2ギヤ39Bのそれぞれは、平歯車であってよい。駆動軸43が回転すると、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39は互いに同一方向に回転する。第1ギヤ38Bと第2ギヤ39Bとは、対称形であってよい。
【0081】
図5及び図6に示すように、ギヤケース41は、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39を側方に露出させるための開口であるケース開口48を有する。第1ねじ部材38のねじ山38Aは、ギヤケース41の左側部に形成されたケース開口48を通過して左方に突出している。同様に、第2ねじ部材39のねじ山39Aは、ギヤケース41の右側部に形成されたケース開口48を通過して右方に突出している。ケース開口48はアウタケース41Aに形成されている。
【0082】
第1ブラケット42は、前後に延在し、前端に設けられた第1結合部42Aと、後端に設けられた第2結合部42Bとを有する。第1ブラケット42は、第1結合部42A及び第2結合部42Bにおいてスライダ12のベース部25の下面に結合されている。第1ブラケット42は、第1結合部42Aから第2結合部42Bに延びる支持部42Cを有する。第1ブラケット42は、第1結合部42A、第2結合部42B、支持部42Cを含む一体的な金属製の部材であるとよい。支持部42Cは、第1結合部42A及び第2結合部42Bに対して下方に位置する部分を有する。支持部42Cによって第1ブラケット42はベース部25と協働して閉構造を形成する。ギヤケース41はスライダ12のベース部25と支持部42Cとの間に配置されている。第1ブラケット42は、金属板を折曲成形することに形成されている。第1結合部42Aはギヤケース41の前部から前方に延出し、第2結合部42Bはギヤケース41の後部から後方に延出している。第1結合部42A及び第2結合部42Bは、ねじやリベット等の締結部材によってベース部25に締結されているとよい。第1結合部42A及び第2結合部42Bの締結点間の距離は、ギヤケース41の前後長よりも長く設定されている。
【0083】
第1ブラケット42の後方には、電動モータ36をスライダ12のベース部25に支持するための第2ブラケット51が設けられている。第2ブラケット51は、ベース部25に結合される結合部51Aと、結合部51Aからベース部25と相反する側、すなわち下方に延びる支持部51Bとを有する。支持部51Bは結合部51Aに対して直交し、第2ブラケット51はL字形に形成されている。電動モータ36は、その一側の端部において支持部51Bに結合されている。本実施形態では、電動モータ36は結合部51Aの下方に配置され、第2ブラケット51は電動モータ36のねじ部材38、39側の端部を片持ち支持する。
【0084】
駆動軸43の後端は、ギヤケース41の後支持部材41Cから後方に突出し、第1ブラケット42に形成された貫通孔を通過して後方に延びている。電動モータ36の回転軸36Aは、駆動軸43の後端部に接続されている。回転軸36Aと駆動軸43とはカップリングによって結合されているとよい。また、回転軸36Aと駆動軸43とは、互いに噛み合う嵌合部を有してもよい。電動モータ36の回転軸36Aと駆動軸43とは、同一直線上に配置されている。電動モータ36は、円筒形に形成され、前後に延びている。
【0085】
電動モータ36の回転軸36Aと駆動軸43との間に、減速機40が設けられてもよい。減速機40は、例えば、遊星歯車機構であるとよい。減速機40は、第2ブラケット51の支持部51Bの電動モータ36と相反する側の面に設けられているとよい。他の実施形態では、ギヤケース41の後端面に支持されてもよい。減速機40は選択的な構成であり、省略可能である。
【0086】
ねじアセンブリ35、電動モータ36、第1ブラケット42、及び第2ブラケット51は、ベース部25の下方、かつ左右のスライダ内側壁26の間に配置されている。左右のスライダ内側壁26は、ねじアセンブリ35と対応する位置に開口であるスライダ開口55を有する。スライダ開口55は、スライダ内側壁26の凹部33に形成されている。第1ねじ部材38のねじ山38Aの左部は、ギヤケース41の左側のケース開口48及び左側のスライダ内側壁26のスライダ開口55を通過して左側のスライダ内側壁26の左方に突出している。同様に、第2ねじ部材39のねじ山39Aの右部は、ギヤケース41の右側のケース開口48及び右側のスライダ内側壁26のスライダ開口55を通過して右側のスライダ内側壁26の右方に突出している。
【0087】
図2及び図10に示すように、レール11には、前後方向に延在し、ねじ部材38、39と係合するねじ係合部57、58が形成されている。図10は、レール11の内で、レール内側壁17のみを示している。ねじ係合部57、58は、左側のレール内側壁17に形成され、第1ねじ部材38のねじ山38Aに噛み合う第1ねじ係合部57と、右側のレール内側壁17に形成され、第2ねじ部材39のねじ山39Aに噛み合う第2ねじ係合部58とを有する。第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58は、対応するレール内側壁17の突部22に形成されている。第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58は、突部22に前後方向に並んで形成された複数の係合孔59を含む。第1ねじ部材38は、第1ねじ部材38のねじ山38Aの左部において第1ねじ係合部57の複数の係合孔59と噛み合い、前後方向周りに回転することによって第1ねじ係合部57に対して前後に移動する。同様に、第2ねじ部材39は、第2ねじ部材39のねじ山39Aの右部において第2ねじ係合部58の複数の係合孔59と噛み合い、前後方向周りに回転することによって第2ねじ係合部58に対して前後に移動する。
【0088】
電動モータ36の回転は、回転軸36A、駆動軸43、駆動ギヤ43A、第1ギヤ38B又は第2ギヤ39Bを介して第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39に伝達される。その結果、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39が同一方向に回転する。第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39が回転すると、第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39が第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58に対して前後に移動し、レール11に対してスライダ12が前後に移動する。
【0089】
図3及び図9に示すように、電動スライドレール1は、電動モータ36に電力を供給するための給電装置61を有する。給電装置61は、レール11の内部を前後に延び、電源68に接続される導電性ストリップ62と、レール11と導電性ストリップ62との間に設けられた電気絶縁板63と、電動モータ36に設けられ、導電性ストリップ62に摺接する導電性の接触端子64とを有する。本実施形態では、レール底壁14の上面に電気絶縁板63が設けられ、電気絶縁板63の上面に導電性ストリップ62が設けられている。導電性ストリップ62は、帯状の金属板であり、左右一対設けられ、それぞれ前後に延びている。左右の導電性ストリップ62は、前後に延びる電気絶縁板63の左右の側縁に沿って配置されている。
【0090】
電気絶縁板63は、その左右の側縁に内方かつ左右において対応する導電性ストリップ62の上方に折り曲げられた延長部63Aを有する。各延長部63Aは、左右において対応する導電性ストリップ62に対して隙間を介して対向する。すなわち、各延長部63Aは、左右において対応する導電性ストリップ62の上方に延出している。延長部63Aは、異物が導電性ストリップ62に接触することを防止する。電気絶縁板63の左右の側縁は、左右外方に向けて上方に傾斜した傾斜部63Bをそれぞれ有してもよい。左右の導電性ストリップ62は、傾斜部63Bの上面に設けられてもよい。この場合、異物が導電性ストリップ62に一層接触し難くなる。
【0091】
接触端子64は、電動モータ36から延長部63Aと導電性ストリップ62との間に延びている。接触端子64は、自身の弾性力によって導電性ストリップ62に向けて付勢されている。接触端子64は、例えば導電性を有する金属片であってよい。本実施形態では、電動モータ36は、左側の導電性ストリップ62に摺接する左側の接触端子64と、右側の導電性ストリップ62に摺接する右側の接触端子64とを有する。左右の導電性ストリップ62及び左右の接触端子64によって、電動モータ36は電源68から電力の供給を受ける。レール11に対してスライダ12が前後に移動すると、左右の接触端子64は対応する導電性ストリップ62に対して前後に摺動し、左右の接触端子64は対応する導電性ストリップ62に接触し続ける。
【0092】
給電装置61は、制御装置66を介して電源68に接続されている。制御装置66は、例えばフロア3に設けられる。制御装置66は、電子制御装置であり、電源68と、各電動スライドレール1の左右の導電性ストリップ62と、操作スイッチ67とに接続されている。操作スイッチ67は、前進に対応したボタンと、後退に対応したボタンとを有する。制御装置66は、操作スイッチ67からの信号に基づいて、各導電性ストリップ62に供給する電力を調整し、電動モータ36の回転方向及び回転量を制御する。これにより、操作者は操作スイッチ67を操作することによって電動スライドレール1を作動させ、フロア3に対して乗物用シート2を前後に移動させることができる。他の実施形態では、電動モータ36は、導電性ストリップ62によって供給される電力とは独立して、無線装置による無線信号によって制御されてもよい。
【0093】
左右の電動スライドレール1の各レール11は、ブラケットを介して、又は直接に車両のフロア3に結合される。各レール11はフロア3に形成されたレール溝4に受容されるとよい。レール11のレール上壁16の上面は、フロア3の上面と同一平面上に配置されるとよい。レール11がレール溝4に配置されることによって、レール11がフロア3から突出することを抑制することができる。左右の電動スライドレール1の各スライダ12は、シートクッション5に結合される。左右の電動スライドレール1の各スライダ12は、連結部材によって互いに接続されてもよい。
【0094】
本実施形態に係る電動スライドレール1では、電動モータ36及びねじアセンブリ35がスライダ12に固定されているため、第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58に対する第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39の倒れが抑制される。そのため、第1ねじ部材38が第1ねじ係合部57に適切な角度で噛み合うことができ、第1ねじ部材38の回転が円滑になる。第2ねじ部材39についても同様である。その結果、円滑に動作することができる電動スライドレール1を提供することができる。また、電動モータ36がレール11に受容されるスライダ12に取り付けられるため、電動スライドレール1の外形を小型化することができる。また、電動モータ36がスライダ12の内部に配置されるため、電動モータ36とねじアセンブリ35との距離を短くすることができ、電動モータ36とねじアセンブリ35とを接続する駆動軸43を短くすることができる。これにより、駆動軸43の撓みが抑制され、ねじアセンブリ35が円滑に回転することができる。
【0095】
ねじアセンブリ35が第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39の2つを有するため、ねじアセンブリ35は第1ねじ係合部57及び第2ねじ係合部58の両方と係合しつつ、小型化が可能になる。また、第1ねじ部材38が第1ねじ係合部57から受ける反力の方向と、第2ねじ部材39が第2ねじ係合部58から受ける反力の方向とが逆方向になるため、第1ねじ部材38と第1ねじ係合部57とが確実に係合し、第2ねじ部材39と第2ねじ係合部58とが確実に係合する。
【0096】
第1ねじ部材38及び第2ねじ部材39は、ギヤケース41及び第1ブラケット42と共にねじアセンブリ35を構成するため、スライダ12への組み付けが容易である。
【0097】
以下に、給電装置61の変形例である給電装置81について説明する。給電装置81は、乗物用シート2において、フロア3に対するワイヤハーネスの不要な動きを抑制しつつ、スライダ12の位置に応じたワイヤハーネスの送り出しを可能にする。ある実施形態では、ワイヤハーネスは電力の供給や通信のために使用される。また、給電装置81は、レール11の開口を塞ぐカバーとして機能する。図11図13に示すように、給電装置81は、制御装置66を介して電源68に接続された電力線82と、電力線82に装着されたカバーピース83と、電力線82及びカバーピース83を収納する収納ケース84とを有する。電力線82は、外周部が電気絶縁材によって被覆されたワイヤハーネスである。収納ケース84は、その内部に画定された収納室86と、収納室86と外部とを接続する入口孔87と、収納室86内に配置され電力線82の一端を固定する固定部88とを有する。
【0098】
図11に示すように、収納ケース84は扁平な箱形に形成されている。収納ケース84の入口孔87は、収納ケース84の側部に設けられ、レール11の前端又は後端に接続している。本実施形態では、入口孔87はレール11の後端に接続している。入口孔87は、収納ケース84の左側又は右側の側縁の後部に設けられ、前方に向けて開口している。図12に示すように、本実施形態では、固定部88は収納ケース84の底部に設けられた貫通孔である。電力線82の一端側にはカバーピース83は装着されておらず、電力線82は固定部88に挿入されることによって固定されている。電力線82は、固定部88を通過して収納ケース84の外方に延び、制御装置66に接続されている。
【0099】
電力線82は、固定部88から収納室86内、入口孔87、及びレール11内を順に通過して電動モータ36に接続されている。スライダ12の内側に電動モータ36に接続した電気コネクタを設け、電力線82を電気コネクタに接続してもよい。電力線82の外周部には、複数のカバーピース83が結合されている。図13に示すように、カバーピース83は、上板91と、上板91から下方に突出した一対の支持片92とを有する。カバーピース83は、例えば樹脂から形成されているとよい。一対の支持片92は、それらの間に電力線82を挟持する。各支持片92の下端には、互いに近づく方向に突出した第1係止爪93が突設されているとよい。一対の第1係止爪93が電力線82を係止することによって、電力線82が一対の支持片92の間に維持される。
【0100】
カバーピース83がレール11内に位置するとき、上板91の左右の側縁は左右のレール上壁16の上面に載置され、一対の支持片92は左右のレール内側壁17の間に配置される。各支持片92の下端には、互いに離れる方向に突出した第2係止爪94が突設されている。一対の第2係止爪94が対応するレール内側壁17に当接することによって、カバーピース83のレール11に対する上下位置が定まる。本実施形態では一対の第2係止爪94はレール内側壁17の突部22の下部に当接している。他の実施形態では、一対の第2係止爪94はレール内側壁17の下縁に当接してもよい。
【0101】
隣り合うカバーピース83の上板91は、上下方向に互いに重なり合う部分を有する。隣り合うカバーピース83の上板91は、上下に延びるピボット96を中心として所定の範囲で回動可能に連結されている。回動範囲が規制されたカバーピース83が電力線82に装着されることによって電力線82の撓みが所定の範囲に規制されている。複数のカバーピース83の内で最も電動モータ36側に配置された一つは、スライダ12の後端に結合されている。複数のカバーピース83は、レール11におけるスライダ12よりも後側のレール開口19を覆う。また、複数のカバーピース83は、電力線82を隠す。
【0102】
図12に示すように、収納ケース84の内部には、カバーピース83の移動方向をガイドするガイド壁97が設けられている。本実施形態では、ガイド壁97は、平面視で半円形に湾曲している。ガイド壁97は、カバーピース83の側部に摺接することによって、収納室86内を後方に移動するカバーピース83を滑らかに湾曲させ、収納室86の前部に導く。
【0103】
収納ケース84の入口孔87の上縁はレール11の上面よりも上方に位置している。また、入口孔87の側部には、入口孔87内のカバーピース83の上板91をレール11の上面上に導くためのガイドスロープ(不図示)が設けられている。
【0104】
図12(A)に示すように、スライダ12がレール11に対して前方に移動すると、電力線82及びカバーピース83は入口孔87から前方に引き出される。このとき、カバーピース83はガイドスロープにガイドされて、上板91が一対のレール上壁16の上に位置し、かつ一対の第2係止爪94が一対の突部22の下部の下方に位置する。これにより、レール11に対するカバーピース83の上下位置が定まる。この状態で、各カバーピース83はレール11に対して前後にスライド移動が可能である。
【0105】
図12(B)に示すように、スライダ12がレール11に対して後方に移動すると、カバーピース83がスライダ12に後方に押され、入口孔87を通過して収納ケース84の内部に押し込まれる。収納ケース84内に押し込まれた各カバーピース83は、ガイド壁97にガイドされて、収納室86の前部に導かれる。
【0106】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えばレール11が左右方向、或いは上下方向に延びるように、電動スライドレール1は対象物に配置されてもよい。レール11及びスライダ12の形状は目的に合わせて適宜変更することができる。上記実施形態では、本発明を車両用のシートに適用した例を説明したが、本発明に係る乗物シートは航空機用や鉄道用等の様々なシートに適用することもできる。
【0107】
また、駆動ギヤ43Aは前後一対設けられてもよく、第1ギヤ38B及び第2ギヤ39Bは駆動ギヤ43Aに対応して前後一対設けられてもよい。
【0108】
接触端子64は、電動モータ36に加えて、乗物用シート2に設けられる他の電装装置に接続され、電装装置に電力を供給してもよい。
【0109】
また、1つのレール11には、複数のスライダ12が配置されてもよい。すなわち、1つのレール11上に、互いに独立した複数のシートクッション5を含むシートが配置されてもよい。その場合、各シートに対応して導電性ストリップ62が設けられるとよい。
【0110】
図14に示すように、スライダ12はベース部25から上方に突出する連結部29を有してもよい。連結部29は、板状に形成され、面が左右を向いている。スライダ12は、連結部29において、シートクッション5に結合されるとよい。スライダ12は、連結部29、ベース部25、左側のスライダ内側壁26、左側のスライダ下壁27、及び左側のスライダ外側壁28を構成する第1ピース12Aと、連結部29、右側のスライダ内側壁26、右側のスライダ下壁27、及び右側のスライダ外側壁28を構成する第2ピース12Bとから構成されている。第1ピース12Aと第2ピース12Bとが、それぞれの連結部29で互いに重ね合わされ、締結されることによってスライダ12が形成されているとよい。
【符号の説明】
【0111】
1 :電動スライドレール
2 :乗物用シート
3 :フロア
5 :シートクッション
11 :レール
12 :スライダ
17 :レール内側壁
22 :突部
25 :ベース部
26 :スライダ内側壁
35 :ねじアセンブリ
36 :電動モータ
36A :回転軸
38 :第1ねじ部材
38A :ねじ山
38B :第1ギヤ
39 :第2ねじ部材
39A :ねじ山
39B :第2ギヤ
41 :ギヤケース
42 :第1ブラケット
42A :第1結合部
42B :第2結合部
42C :支持部
43 :駆動軸
43A :駆動ギヤ
45 :第1軸受部
46 :第2軸受部
47 :第3軸受部
51 :第2ブラケット
51A :結合部
51B :支持部
57 :第1ねじ係合部
58 :第2ねじ係合部
59 :係合孔
61 :給電装置
62 :導電性ストリップ
63 :電気絶縁板
63A :延長部
64 :接触端子
図1
図2
図3
図4
図5
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図12
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図14