(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032975
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】単一ドメイン抗体に基づくキメラ抗原受容体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240305BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240305BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240305BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240305BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240305BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240305BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240305BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240305BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20240305BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/28
A61K31/7088
A61K35/17
A61K35/76
A61K39/395 M
A61K39/395 T
A61K48/00
A61P35/00
C12N15/13 ZNA
C12N5/078
【審査請求】有
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014929
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2022167222の分割
【原出願日】2016-08-10
(31)【優先権主張番号】201510490002.8
(32)【優先日】2015-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201510733585.2
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518051824
【氏名又は名称】レジェンド バイオテック アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】ファン,シャオフー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,チュアン-チュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン,チーチュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ピンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ジャーイン
(57)【要約】
【課題】単一ドメイン抗体に基づくキメラ抗原受容体及びその使用方法を提供する。
【解決手段】単一ドメイン抗体、及び単一ドメイン抗体を各々含む1つ以上の抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供する。キメラ抗原受容体を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)がさらに提供される。癌を治療する薬学的組成物、キット、及び方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD38単一ドメイン抗体(sdAb)であって、配列番号89~100のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗CD38 sdAb。
【請求項2】
前記抗CD38 sdAbが、以下のいずれかを含むsdAbの群より選択される、請求項1に記載の抗CD38 sdAb:
(1)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3;
(2)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3;
(3)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3;
(4)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3;
(5)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3;
(6)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3;
(7)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3;
(8)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3;
(9)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3;
(10)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3;
(11)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3;または
(12)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3。
【請求項3】
前記抗CD38 sdAbが、配列番号89~100のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗CD38 sdAb。
【請求項4】
(a)請求項1~3のいずれか1項に記載の抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む、多価キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項5】
前記抗CD38 sdAbが、配列番号92~94および97~100のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、請求項4に記載のCAR。
【請求項6】
前記抗CD38 sdAbが、以下のいずれかを含むsdAbの群より選択される、請求項5に記載のCAR:
(1)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3;
(2)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3;
(3)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3;
(4)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3;
(5)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3;
(6)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3;または
(7)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3。
【請求項7】
前記抗CD38 sdAbが、配列番号92~94および97~100のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のCAR。
【請求項8】
前記抗CD38 sdAbが、ラクダ科、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である、請求項4~7のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項9】
(a)第1の抗原に特異的に結合する第1のsdAb及び第2の抗原に特異的に結合する第2のsdAbを含み、前記第1のsdAbが請求項1~3のいずれか1項に記載の抗CD38 sdAbである、細胞外抗原結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む、CAR。
【請求項10】
前記第1の抗原が、前記第2の抗原とは異なる、または前記第1の抗原が、前記第2の抗原と同じである、請求項9に記載のCAR。
【請求項11】
前記第1のsdAbが、前記第2のsdAbのN末端に位置する、または前記第2のsdAbのC末端に位置する、請求項9または10に記載のCAR。
【請求項12】
前記第2の抗原が、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される、請求項9~11のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項13】
前記第2のsdAbが、抗BCMA sdAbまたは抗CD38 sdAbである、請求項12に記載のCAR。
【請求項14】
前記第1のsdAbが、配列番号93のアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗CD38 sdAbである、請求項9~13のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項15】
前記抗CD38 sdAbが、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含むsdAbである、請求項14に記載のCAR。
【請求項16】
前記抗CD38 sdAbが配列番号93のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のCAR。
【請求項17】
前記第2のsdAbが、配列番号78~88のアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗BCMA sdAbである、請求項13~16のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項18】
前記第2のsdAbが、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗CD38 sdAbである、請求項13~16のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項19】
前記第2のsdAbが、配列番号93のアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗CD38 sdAbである、請求項18に記載のCAR。
【請求項20】
前記抗CD38 sdAbが、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含むsdAbである、請求項19に記載のCAR。
【請求項21】
前記抗CD38 sdAbが配列番号93のアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のCAR。
【請求項22】
前記第1のsdAb及び前記第2のsdAbが、同じエピトープに、または異なるエピトープに特異的に結合する、請求項9または10に記載のCAR。
【請求項23】
前記第1のsdAb及び/または前記第2のsdAbが、ラクダ科、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である、請求項9~23のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項24】
前記第1の抗CD38 sdAb及び前記第2の抗CD38 sdAbが、ペプチド結合または50以下のアミノ酸長ペプチドリンカーを介して互いに融合される、請求項9~23のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項25】
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される分子に由来する、請求項4~24のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項26】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、免疫エフェクター細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み、該一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する、請求項4~25のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項27】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する共刺激シグナル伝達ドメインを含む、請求項4~26のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項28】
細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン、及び
ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチドをさらに含む、請求項4~27のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項29】
配列番号163~174及び260から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4または9に記載のCAR。
【請求項30】
請求項4~29のいずれか1項に記載のCARをコードする核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項31】
請求項30に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項32】
操作された免疫エフェクター細胞であって、請求項1~3のいずれか1項に記載のsdAb、請求項4~29のいずれか1項に記載のCAR、請求項30に記載の単離された核酸、または請求項31に記載のベクターを含み、
該免疫エフェクター細胞がT細胞である、操作された免疫エフェクター細胞。
【請求項33】
請求項1~3のいずれか1項に記載のsdAb、請求項4~29のいずれか1項に記載のCAR、請求項30に記載の単離された核酸、請求項31に記載のベクター、または請求項32に記載の操作された免疫エフェクター細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物。
【請求項34】
個体における癌を治療するための薬学的組成物を調整するために使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載のsdAb、請求項4~29のいずれか1項に記載のCAR、または請求項32に記載の操作された免疫エフェクター細胞。
【請求項35】
個体に有効量の前記薬学的組成物を投与することを含む、個体における癌の治療における使用のための、請求項33に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年8月11日に出願された中国特許出願第CN201510490002.8号、及び2015年11月2日に出願された中国特許出願第CN201510733585.2号の優先利益を主張するものであり、これらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:761422000340SEQLISTING.txt、記録日:2016年8月9日、サイズ:355KB)。
【0003】
発明の技術分野
本発明は、単一ドメイン抗体、キメラ抗原受容体、操作された免疫エフェクター細胞、及びその使用方法に関する。本発明はさらに、治療的使用のための、特に、キメラ抗原受容体に基づくT細胞免疫療法のための細胞の活性化及び増殖に関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍免疫療法及び臨床技術の発達とともに、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)免疫療法は、現在、最も有望な腫瘍免疫療法アプローチのうちの1つである。一般に、キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む。細胞外抗原結合ドメインは、特定された腫瘍抗原を標的とする一本鎖可変フラグメント(scFv)を含み得る。CARは、遺伝子トランスフェクション技術を使用して、T細胞の表面上に発現させることができる。標的腫瘍抗原に結合すると、CARは、標的腫瘍抗原に特異的な主要組織適合性複合体(MHC)の利用可能性によって制限されることなく、抗原依存的様態で、特異的な抗腫瘍応答を開始するように、T細胞を活性化することができる。
【0005】
単一ドメイン抗体(sdAb)は、単一の単量体抗体可変ドメインを有することにより、従来の4鎖抗体とは異なる。例えば、ラクダ科及びサメは、重鎖のみ抗体(HcAb)と命名された単一ドメイン抗体を産生し、これは、軽鎖を天然に欠いている。ラクダ科重鎖のみ抗体の各アームにおける抗原結合フラグメントは、単一の重鎖可変ドメイン(VHH)を有し、これは、軽鎖の援助なしに抗原に対する高い親和性を有することができる。ラクダ科VHHは、およそ15kDの分子量を有する最小の機能的抗原結合フラグメントとして既知である。
【0006】
本明細書において参照される全ての公開物、特許、特許出願、及び公開された特許出願の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体に基づくキメラ抗原受容体(CAR)(VHHフラグメント等)、操作された免疫エフェクター細胞、及び癌免疫療法におけるその使用方法を提供する。
【0008】
本出願の態様は、配列番号76のCDR領域を含む抗CD19 sdAbを提供する。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号1のアミノ酸配列を含むC
DR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗CD19重鎖のみ抗体(HcAb)、または上に記載される抗CD19 sdAbのうちのいずれか1つを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0010】
本出願の態様は、(a)抗CD19 sdAb(上に記載される抗CD19 sdAbのうちのいずれか1つ等)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、CD19キメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CARは、多価(二価または三価等)である。いくつかの実施形態では、CARは、多重特異性(二重特異性等)である。
【0011】
本出願の態様は、配列番号77のCDR領域を含む抗CD20 sdAbを提供する。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗CD20重鎖のみ抗体(HCAB)、または上に記載される抗CD20 sdAbのうちのいずれか1つを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0013】
本出願の態様は、(a)抗CD20 sdAb(上に記載される抗CD20 sdAbのうちのいずれか1つ等)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、CD20キメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CARは、多価(二価または三価等)である。いくつかの実施形態では、CARは、多重特異性(二重特異性等)である。
【0014】
本出願の態様は、配列番号78~88のうちのいずれか1つのCDR領域を含む抗BCMA sdAbを提供する。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、以下:(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(11)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78~88から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗BCMA重鎖のみ抗体(HCAB)、または上に記載される抗BCMA sdAbのうちのいずれか1つを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0016】
本出願の態様は、(a)抗BCMA sdAb(上に記載される抗BCMA sdAbのうちのいずれか1つ等)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、BCMAキメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CARは、多価(二価または三価等)である。いくつかの実施形態では、CARは、多重特異性(二重特異性等)である。
【0017】
本出願の態様は、配列番号89~100のうちのいずれか1つのCDR領域を含む抗CD38 sdAbを提供する。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、以下:
(1)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3、
(11)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(12)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、配列番号89~100から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗BCMA重鎖のみ抗体(HCAB)、または上に記載され
る抗BCMA sdAbのうちのいずれか1つを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0019】
本出願の態様は、(a)抗CD38 sdAb(上に記載される抗CD38 sdAbのうちのいずれか1つ等)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、CD38キメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CARは、多価(二価または三価等)である。いくつかの実施形態では、CARは、多重特異性(二重特異性等)である。
【0020】
本出願の態様は、(a)抗CD22 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、CD22キメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CARは、多価(二価または三価等)である。いくつかの実施形態では、CARは、多重特異性(二重特異性等)である。
【0021】
本出願の態様は、(a)第1の抗原に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及び第2の抗原に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのN末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのC末端に位置する。
【0022】
上に提供されるCARのうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、上に記載されるBCMA sdAbのうちのいずれか1つ等の抗BCMA sdAbである。いくつかの実施形態では、CARは、抗BCMA sdAbの少なくとも2つのコピー(2、3、またはそれ以上のコピー等)を含む細胞外抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、上に記載される抗CD19 sdAbのうちのいずれか1つ等の抗CD19 sdAbである。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、上に記載される抗CD20 sdAbのうちのいずれか1つ等の抗CD20 sdAbである。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、上に記載される抗CD38 sdAbのうちのいずれか1つ等の抗CD38 sdAbである。いくつかの実施形態では、CARは、抗CD38 sdAbの少なくとも2つのコピー(2、3、またはそれ以上のコピー等)を含む細胞外抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、抗CD22 sdAbである。
【0023】
上に提供されるCARのうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、第1の抗原は、第2の抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、CARは、二重特異性等の多重特異性である。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、抗BCMA sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD38 sdAbである。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、抗BCMA sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD19 sdAbである。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、抗CD19 sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD20 sdAbである。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、抗CD19 sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD22 sdAbである。
【0024】
上に提供される単一特異性CARのうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では
、第1の抗原は、第2の抗原と同じである。いくつかの実施形態では、CARは、二価または三価である。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、同じエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbと同じである。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、異なるエピトープに特異的に結合する。
【0025】
上に提供されるCARのうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。
【0026】
上に提供されるCARのうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、ペプチド結合を介して互いに直接融合される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、ペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50個以下(約いずれか1つの35、25、20、15、10、または5個以下等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
上に提供されるCAR(CD19 CAR、CD20 CAR、BCMA CAR、CD38 CAR、及びCD22 CARを含む)のうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される分子に由来する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8またはCD28に由来する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号132または配列番号133のアミノ酸配列を含む。
【0028】
上に提供されるCAR(CD19 CAR、CD20 CAR、BCMA CAR、CD38 CAR、及びCD22 CARを含む)のうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号140または配列番号141のアミノ酸配列を含む。
【0029】
上に提供されるCAR(CD19 CAR、CD20 CAR、BCMA CAR、CD38 CAR、及びCD22 CARを含む)のうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28の細胞質ドメイン及び/またはCD137の細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号136及び/または配列番号137のアミノ酸配列を含む。
【0030】
上に提供されるCAR(CD19 CAR、CD20 CAR、BCMA CAR、CD38 CAR、及びCD22 CARを含む)のうちのいずれか1つに従ういくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αに由来する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号130のアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、CD8α、GM-CSF受容体α、及びIgG1重鎖から成る群から選択される分子に由来する。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、CD8αに由来する。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号127のアミノ酸配列を含む。
【0032】
本出願の態様は、表4、5、及び6に列記されるいずれか1つのキメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号152~174、198~201、206~216、248~249、257~260、及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
本出願の態様は、配列番号76~100、152~174、198~201、206~216、248~249、257~260、及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチドを提供する。
【0034】
本出願の態様は、上に提供されるCAR(CD19 CAR、CD20 CAR、BCMA CAR、CD38 CAR、及びCD22 CARを含む)のうちのいずれか1つをコードする核酸配列を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの実施形態では、核酸配列は、配列番号175~197、202~205、217~227、250~251、261~264、及び271~276から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、第2のCARをコードする第2の核酸配列をさらに含み、CARをコードする核酸配列は、T2A、P2A、またはF2Aペプチド等の自己開裂ペプチドをコードする第3の核酸配列を介して、第2の核酸配列に操作可能に連結される。いくつかの実施形態では、第3の核酸配列は、配列番号256である。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNA分子である。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNA分子である。
【0035】
本出願の態様は、上に記載される単離された核酸のうちのいずれか1つを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0036】
本出願の態様は、上に提供されるCAR(CD19 CAR、CD20 CAR、BCMA CAR、CD38 CAR、及びCD22 CARを含む)のうちのいずれか1つ、または上に記載される単離された核酸のうちのいずれか1つ、または上に記載されるベクターのうちのいずれか1つを含む、操作された免疫エフェクター細胞を提供する。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、上に記載される2つ以上のCAR(CD19 CAR、CD20 CAR、BCMA CAR、CD38 CAR、及びCD22 CARを含む)を含むか、または発現し、2つ以上のCARは、異なる抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。
【0037】
本出願の態様は、上に記載される操作された免疫エフェクター細胞のうちのいずれか1つと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物を提供する。個体における癌を治療する方法がさらに提供され、個体に有効量の上に記載される薬学的組成物のうちのいずれか1つを投与することを含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌である。いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。
いくつかの実施形態では、癌は、膠芽腫等の固体癌である。
【0038】
本出願の態様は、上に記載される抗CD19 sdAb、抗CD20 sdAb、抗CD38 sdAb、または抗BCMA sdAbのうちのいずれか1つと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、個体における疾患(癌等)を治療する方法がさらに提供され、個体に有効量の薬学的組成物を投与することを含む。
【0039】
上に記載される単一ドメイン抗体、CAR、操作された免疫エフェクター細胞、単離された核酸、またはベクターのうちのいずれか1つを含む、使用方法、キット、及び製品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】V
HHに基づくCARの構造と、従来のscFvに基づくCARの構造とを比較する。左の概略構造は、V
HHドメインを含む細胞外抗原結合ドメインを有する、例示的な単一特異性一価CARを示す。右の概略構造は、scFvドメインを含む細胞外抗原結合ドメインを有する、例示的な単一特異性一価CARを示す。
【
図1B】2つの抗原結合部位を有するV
HHに基づくCARの構造と、2つの抗原結合部位を有する従来のscFvに基づくCARの構造とを比較する。左の概略構造は、2つのV
HHドメインを含む細胞外抗原結合ドメインを有する、例示的なCARである。2つのV
HHドメインは、同じであってもよく、または異なってもよい。右の概略構造は、2つのscFvドメインを含む細胞外抗原結合ドメインを有する、例示的なCARを示す。2つのscFvドメインは、同じであってもよく、または異なってもよい。
【
図1C】例示的な二価及び二重特異性V
HHに基づくCARの概略構造を示す。左上のパネルの概略構造は、2つの同一のV
HHドメイン(これらの各々は、抗原Aのエピトープ1に特異的に結合する)を含む細胞外抗原結合ドメインを有する、例示的な単一特異性、二価CARを示す。右上のパネルの概略構造は、抗原Aのエピトープ1に特異的に結合する第1のV
HHドメイン及び抗原Aのエピトープ2に特異的に結合する第2のV
HHドメインを含む細胞外抗原結合ドメインを有する、例示的な単一特異性、二価CARを示す。抗原Aのエピトープ1及びエピトープ2は、それらの構造及び/または配列において異なってもよい。左下のパネルの概略構造は、抗原Aに特異的に結合する第1のV
HHドメイン及び抗原Bに特異的に結合する第2のV
HHドメインを含む細胞外抗原結合ドメインを有する、例示的な二重特異性CARを示す。抗原A及び抗原Bは、異なる抗原である。
【
図1D】3つ以上のV
HHドメインを有する、例示的なV
HHに基づくCARの概略構造を示す。CARは、互い直接、またはペプチドリンカーを介して融合される複数のV
HHドメインを有し得る。V
HHドメインは、同じであってもよく、または異なってもよい。異なるV
HHドメインは、同じ抗原または異なる抗原上の異なるエピトープに特異的に結合し得る。
【
図1E】2つの異なるV
HHに基づくCARを共発現する、例示的な操作された免疫エフェクター細胞を示す。左のパネルの例示的な操作された免疫エフェクター細胞は、2つの異なる単一特異性、一価CARを共発現する。中央のパネルの例示的な操作された免疫エフェクター細胞は、単一特異性、一価CAR、及び二重特異性または二価CARを共発現する。右のパネルの例示的な操作された免疫エフェクター細胞は、2つの異なる二重特異性または二価CARを共発現する。CARは、異なる抗原を認識し得る。
【
図2A】多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Lucに対する種々の抗BCMA(すなわち、抗CD269)または抗CD38単一ドメイン抗体を含む、例示的な単一特異性CARを発現する、T細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。
【
図2B】膠芽腫細胞株U87MG.Lucに対する種々の抗BCMA(すなわち、抗CD269)または抗CD38単一ドメイン抗体を含む、例示的な単一特異性CARを発現する、T細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。
【
図3A】多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Lucに対する例示的な二重特異性CARを発現するT細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。
【
図3B】多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Lucに対する例示的な二重特異性CARを発現するT細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。
【
図4】多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Lucに対する例示的な二重特異性CARを発現するT細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。
【
図5】CD19及びCD20を標的とする例示的な二重特異性CAR、CD19を標的とする例示的な単一特異性CAR、ならびにCD20を標的とする例示的な単一特異性CARの構築を示す。
【
図6】種々のT細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。左上のパネルは、形質導入されていない対照T細胞の結果を示す。右上のパネルは、例示的なCD19 CARを発現するT細胞の結果を示す。左下のパネルは、例示的なCD20 CARを発現するT細胞の結果を示す。右下のパネルは、例示的な二重特異性CD19×CD20 CARを発現するT細胞の結果を示す。
【
図7】CD19及びCD20を標的とする例示的な二重特異性CARを発現するT細胞のインビボ抗腫瘍アッセイの結果を示す。
【
図8A】多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Lucに対する例示的な単一特異性、二価CARを発現するT細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。CARは、2つの異なる抗BCMA(すなわち、抗CD269)sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインを各々含む。
【
図8B】膠芽腫細胞株U87MG.Lucに対する例示的な単一特異性、二価CARを発現するT細胞のインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。CARは、2つの異なる抗BCMA(すなわち、抗CD269)sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインを各々含む。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本出願は、単一ドメイン抗体(sdAb)に基づく細胞外抗原結合ドメインを含む、単一特異性、多重特異性(二重特異性等)、及び多価(二価または三価等)キメラ抗原受容体を提供する。従来の4鎖抗体由来の抗原結合フラグメントとは異なり、sdAbは、VHH等の単一の可変ドメインを含有するのみである。このため、sdAbは、CARにおいて細胞外抗原結合ドメインとして現在使用されるscFv等の抗原結合フラグメントよりも、サイズがはるかに小さい。また、sdAbの折り畳み中に重鎖及び軽鎖の対合が必要ではないため、細胞外抗原結合ドメインの誤った折り畳みが、sdAbに基づくCARを発現する操作された免疫細胞において低減され得る。異なるエピトープまたは抗原を標的とするsdAbの複数のコピーまたは複数のsdAbを含む細胞外抗原結合ドメインを有するCARは、好都合に構築され、かつ組換え産生され得、それによって、多価及び多重特異性CARの調製及びスクリーニングのための効率的なプラットフォームを提供する。さらに、sdAbの小さいフットプリントは、腫瘍組織における隠れた抗原標的及びエピトープへのCARのアクセスを可能にし得る。
【0042】
多重特異性及び多価CARは、癌免疫療法に対して、単一特異性一価CARに勝る改善された効率性を有し得る。癌細胞は、一般に不安定であり、これは、それらが、標的抗原をコードする遺伝子を変異または喪失させることによって、標的療法から逃避することを可能にする。癌細胞上の2つ以上の異なるエピトープまたは抗原を標的とすることによって、多価または多重特異性CARは、癌細胞が、CARを発現する操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)による標的から完全に逃避することをより困難にし得る。それらの小さいサイズにより、本出願の多価または多重特異性CARにおいて細胞外抗原結合ドメインとして使用される、タンデム融合された単一ドメイン抗体は、それらの個々の構造的一体性、及び標的抗原への結合親和性を保つことができ、それによって、CARによる
各エピトープまたは抗原の効果的な標的化を可能にする。多価または多重特異性CARを発現するか、または異なる腫瘍抗原を標的とする2つ以上のキメラ抗原受容体を共発現する、操作された免疫エフェクター細胞は、タンパク質-抗原処理及び提示における異常に起因する腫瘍免疫逃避機構を克服し得る。
【0043】
したがって、本出願の態様は、(a)第1の抗原に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及び第2の抗原に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、ポリペプチドを含む、多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(CAR)を提供し、第1の抗原は、第2の抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、BCMAであり、第2の抗原は、CD38である。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD19であり、第2の抗原は、BCMAである。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD19であり、第2の抗原は、CD20である。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD19であり、第2の抗原は、CD22である。
【0044】
別の態様では、(a)抗原に特異的に結合する複数の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、ポリペプチドを含む、多価キメラ抗原受容体(CAR)が提供される。
【0045】
別の態様では、(a)抗原の第1のエピトープに特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体及び抗原の第2のエピトープに特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む、ポリペプチドを含む、多価キメラ抗原受容体(CAR)が提供され、第1のエピトープは、第2のエピトープとは異なる。
【0046】
新規の抗CD19、抗CD20、抗BCMA、及び抗CD38単一ドメイン抗体、ならびに該sdAbのうちのいずれか1つを含むキメラ抗原受容体がさらに提供される。
【0047】
CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)、操作された免疫エフェクター細胞または単一ドメイン抗体を使用して癌を治療する薬学的組成物、キット、製品、及び方法も本明細書に記載される。
【0048】
I.定義
本発明の実践は、具体的に矛盾すると示されない限り、当業者の技術範囲内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学、及び組換えDNA技術の従来の方法を用い、これらのうちの多くを、例証目的で以下に記載する。かかる技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001 );Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translat
ion(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、及び他の同様の参考文献を参照されたい。
【0049】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長4鎖抗体または全長重鎖のみ抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、及び一本鎖分子)、ならびに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、及びFv)を含む。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」と同義に使用される。本明細書において企図される抗体は、重鎖のみ抗体等の単一ドメイン抗体を含む。
【0050】
基本的な4鎖抗体ユニットは、2本の同一の軽鎖(L)及び2本の同一の重鎖(H)から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、5つの基本的なヘテロ四量体ユニットに加えて、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドから成り、10個の抗原結合部位を含有しているが、一方でIgA抗体は、2~5個の基本的な4鎖ユニットから構成されており、このユニットは、重合してJ鎖と組み合わさった多価集合体を形成することができる。IgGの場合、4鎖ユニットは、一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つのジスルフィド共有結合によってH鎖に連結されているが、一方で2本のH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結されている。H鎖及びL鎖はそれぞれ、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、続いて、α及びγ鎖の各々については3つの定常ドメイン(CH)、ならびにμ及びεアイソタイプについては4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いてその反対側の端部に定常ドメインを有する。VLは、VHと整合しており、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整合している。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。VHとVLとが一緒に対合することにより、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I.Terr and Tristram G.Parsolw(eds),Appleton & Lange,Norwalk,Conn.,1994、71頁及び6章を参照されたい。任意の脊椎動物種に由来するL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM5つのクラスがあり、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと表記される重鎖を有する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能における比較的わずかな相違に基づいてさらにサブクラスに分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2を発現する。
【0051】
「重鎖のみ抗体」または「HCAb」という用語は、重鎖を含むが、4鎖抗体に通常見出される軽鎖を欠いている、機能的抗体を指す。ラクダ科動物(ラクダ、ラマ、またはアルパカ等)は、HCAbを産生することが既知である。
【0052】
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、3つの相補性決定領域(CDR)を有する、単一の抗原結合ポリペプチドを指す。sdAbは、単独で、対応するCDR含有ポリペプチドと対合せずに、抗原に結合することが可能である。いくつかの場合では、単一ドメイン抗体は、ラクダ科HCAbから操作され、それらの重鎖可変ドメインは、本明細書で「VHH」と称される。いくつかのVHHはまた、ナノボディとしても既知であり得る。ラクダ科sdAbは、最小の既知の抗原結合抗体フラグメントのうちの1つである(例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-8(1993);Greenberg et al.,Nature 374:168-73(1995);Hassanzadeh-Ghassabeh et al.,Nanomedicine(Lond),8:1013-26(2013)を参照されたい)。基本的なVHHは、N末端からC末端まで、以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有し、ここでは、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、相補性決定領域1~3を指す。
【0053】
「単離された」抗体は、その産生環境(例えば、天然または組換え)の成分から特定、分離、及び/または回収されたものである。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その産生環境からの全ての他の成分との会合を含まない。組換えトランスフェクト細胞に起因するもの等のその産生環境の混入成分は、抗体の研究、診断的、または治療的使用を典型的に妨げるであろう材料であり、これらとしては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性もしくは非タンパク質性の溶質が挙げられ得る。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えば、ローリー法によって決定される、抗体の95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(1)スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルー、または好ましくはシルバー染色を使用して、非還元または還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内でインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0054】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」及び「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。ラクダ科種からの重鎖のみ抗体は、単一の重鎖可変領域を有し、これは、「VHH」と称される。このため、VHHは、VHの特殊なタイプである。
【0055】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが、抗体によって配列が大幅に異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の、その特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメイン全体に均等に分布しているわけではない。むしろ、それは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインにおいて、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって連結されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖のHVRは、FR領域によって極めて近接して一緒に保持され、他方の鎖からのHVRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与等の種々のエフェクター機能を示す。
【0056】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を指す、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、微量で存
在し得る可能性のある自然に発生する変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象としている。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象としている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが、ハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンが混入されていないという点で、有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本出願に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照されたい)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有する動物におけるヒト抗体またはヒト様抗体の産生技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild
et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);ならびにLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照されたい)を含む様々な技術によって作製され得る。
【0057】
「ネイキッド抗体」という用語は、細胞毒性部分または放射標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。
【0058】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、または「全抗体」という用語は、抗体フラグメントとは対照的に、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指して同義に使用される。具体的には、全長4鎖抗体Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。全長重鎖のみ抗体は、重鎖(VHH等)及びFc領域を含む。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異形であり得る。いくつかの場合では、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0059】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部分、好ましくはインタクト抗体の抗原結合領域及び/または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062[1995]);一本鎖抗体分子;単一ドメイン抗体(VHH等)、ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、容易に結晶化する能力を反映して表記される残りの「Fc」フラグメントとが得られた。Fabフラグメントは、L鎖全体に加えて、H鎖の可変領域ドメイン(VH)、ならびに1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)から成る。各Fabフラグメントは、抗原結合に関しては一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab’)2フラグメントが得られ、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのFabフラグメントがジスルフィド結合したものにほぼ相当し、依然として抗原に架橋することが可能である。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の追加の残基を有することが、Fabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体フラグメントは、元来、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生されたものであった。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも既知である。
【0060】
Fcフラグメントは、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、この領域はまた、ある特定の細胞型に見られるFc受容体(FcR)によって認識される。
【0061】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが、非共有結合で緊密に結合した二量体から成る。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0062】
「sFv」または「scFv」とも略称される「一本鎖Fv」は、連結されて単一のポリペプチド鎖となったVH及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、VH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含んでおり、sFvが抗原結合に所望される構造を形成することを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of
Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg
and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0063】
本明細書に記載の抗体の「機能性フラグメント」は、インタクトな抗体の一部分を含み、これには、一般に、インタクトな抗体の抗原結合領域もしくは可変領域、またはFcR結合能力を保持するかもしくは修飾されたFcR結合能力を有する抗体のFc領域が含まれる。抗体フラグメントの例としては、直鎖抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0064】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間のVドメイン対合を達成し、それによって二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られるようにVH及びVLドメイン間に短いリンカー(約5~10個の残基)を用いてsFvフラグメント(前の段落を参照されたい)を構築することによって調製された小さい抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在している、2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第WO93/11161号、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。
【0065】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにかかる抗体のフラグメントを特異的に含むが、これは、それらが所望の生物活性を呈する場合に限る(米国特許第4,816,567;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))。本明細書における目的とするキメラ抗体としては、PRIMATTZFD(登録商標)抗体が含まれ、ここで、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルに目的とする抗原で免疫化を行うことによって産生される抗体に由来する。本明細書で使用されるとき、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0066】
非ヒト(例えば、ラクダ科)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR(以下に定義される)からの残基が、所望される特異性、親和性、及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも供与体抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、結合親和性等の抗体の性能をさらに改良するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものに対応するが、FR領域には、結合親和性、異性体化、免疫原性等の抗体の性能を向上させる1つ以上の個々のFR残基置換が含まれてもよい。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的に、H鎖では6個以下であり、L鎖では3個以下である。ヒト化抗体はまた、任意に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分を含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
【0067】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製する技術のうちの任意のものを用いて作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当技術分野で既知の種々の技術を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。van Dijk and
van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してかかる抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することにより調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関しては、米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号を参照されたい)。例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA103:3557-3562(2006)も参照されたい。
【0068】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、単一ドメイン抗体は、3つのHVR(またはCDR):HVR1(またはCDR1)、HVR2(またはCDR2)、及びHVR3(またはCDR3)を含む。HVR3は、3つのHVRのうちの最も高い多様性を呈し、抗体への優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0069】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、Kabat方式によって定義されるような超可変領域を指すために使用される。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい。
【0070】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置を示す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々の残基を、以下の表1に記載する。
【表1】
【0071】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、及び89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおいて、26~35(H1)、50~65または49~65(H2)、及び93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
【0072】
単一ドメイン抗体(VHH等)のアミノ酸残基は、Riechmann and Muyldermans,J.Immunol.Methods 2000 Jun.23;240(1-2):185-195の論文において、ラクダ科からのVHHドメインに適用されるように、Kabat et al.(「Sequence of proteins of immunological interest」,US Public Health Services,NIH Bethesda,Md.,Publication No.91)によって与えられる、VHドメインに対する一般的な番号付けに従って番号付けされる。この番号付けによれば、VHHのFR1は、1~30位のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR1は、31~35位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR2は、36~49位のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR2は、50~65位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR3は、66~94位のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR3は、95~102位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR4は、103~113位のアミノ酸残基を含む。この点に関して、当該技術分野で周知であるが、VHドメインについて、及びVHHドメインについて、CDRの各々におけるアミノ酸残基の総数は変動し得、Kabat番号付けによって示されるアミノ酸残基の総数に対応しない場合がある(つまり、Kabat番号付けによる1つ以上の位置が、実際の配列において占有されない場合があるか、または実際の配列が、Kabat番号付けによって許容される数よりも多いアミノ酸残基を含有する場合がある)ことに留意すべきである。
【0073】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という表現、及びそれらの変形形態は、Kabatら(上記)
における抗体の編成において重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されている番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従って残基52a)を、そして重鎖FR残基82後に挿入された残基(例えば、Kabatに従って残基82a、82b、及び82c等)を含んでもよい。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域での整合によって決定され得る。
【0074】
本明細書において別途指示がない限り、免疫グロブリン重鎖内の残基の番号付けは、上記のKabat et al.にあるようなEU指標のものである。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0075】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0076】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」または「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)にあるようなサブグループである。例としては、VLに関するものが含まれ、サブグループは、上記のKabat et al.にあるようなサブグループカッパI、カッパII、カッパIII、またはカッパIVであり得る。さらに、VHについては、サブグループは、Kabat et al.にあるようなサブグループI、サブグループII、またはサブグループIIIであり得る。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、特定の残基、例えば、ドナーフレームワーク配列を種々のヒトフレームワーク配列の集合と整合することによって、ヒトフレームワーク残基が、ドナーフレームワークに対するその相同性に基づいて選択される場合等、上記のものに由来し得る。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それと同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは既存のアミノ酸配列変化を含有してもよい。いくつかの実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下である。
【0077】
例えば、Fc領域の指定された位置における「アミノ酸修飾」は、指定された残基の置換もしくは欠失、または指定された残基に隣接する少なくとも1個のアミノ酸残基の挿入を指す。指定された残基に「隣接する」挿入とは、その1~2個の残基内への挿入を意味する。挿入は、指定された残基のN末端側またはC末端側であり得る。本明細書における好ましいアミノ酸修飾は、置換である。
【0078】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のHVRに1つ以上の変化を有し、これらの変化が、それらの変化(複数可)を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらすものである。いくつかの実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該技術分野で既知の手順によって産生される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャフ
リングによる親和性成熟を記載している。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異生成は、例えば、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene 169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「特異的に結合する」、「特異的に認識する」、または「に対して特異的な」という用語は、標的と抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)との間の結合等の測定可能及び再生可能な相互作用を指し、それは、生体分子を含む分子の不均一な集団の存在下で標的の存在を確定させる。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、及び/またはより長い持続時間でこの標的に結合する、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される際、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)の約10%未満である。いくつかの実施形態では、標的に特異的に結合する抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0080】
「特異性」という用語は、抗原の特定のエピトープに対する抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)の選択的認識を指す。例えば、自然抗体は、単一特異性である。「多重特異性」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)が、2つ以上の抗原結合部位を有し、これらの少なくとも2つは、異なる抗原、または同じ抗原の異なるエピトープに結合することを示す。「二重特異性」は、本明細書で使用されるとき、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)が、2つの異なる抗原結合特異性を有することを示す。「単一特異性」CARという用語は、本明細書で使用されるとき、各々が同じ抗原の同じエピトープに結合する、1つ以上の結合部位を有する、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)を示す。
【0081】
「価」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)における指定された数の結合部位の存在を示す。例えば、自然抗体、または全長抗体は、2つの結合部位を有し、二価である。したがって、「三価」、「四価」、「五価」、及び「六価」という用語は、抗原結合タンパク質(CARまたはsdAb等)における、それぞれ、2つの結合部位、3つの結合部位、4つの結合部位、5つの結合部位、及び6つの結合部位の存在を示す。
【0082】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列変異形Fc領域)に帰属する生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプに応じて多様である。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化が挙げられる。「低減または最小化された」抗体エフェクター機能は、野生型または未修飾抗体から少なくとも50%(あるいは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97
%、98%、99%)低減されていることを示す。抗体エフェクター機能の決定は、当業者によって容易に決定可能かつ測定可能である。好ましい実施形態では、補体結合、補体依存性細胞毒性、及び抗体依存性細胞毒性の抗体エフェクター機能が、影響される。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を排除した定常領域における変異、例えば、「エフェクターレス変異」を通じて排除される。一態様では、エフェクターレス変異は、CH2領域におけるN297AまたはDANA変異(D265A+N297A)である。Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591-6604(2001)。あるいは、低減または排除されたエフェクター機能をもたらす追加の変異としては、K322A及びL234A/L235A(LALA)が挙げられる。あるいは、エフェクター機能は、グリコシル化しない宿主細胞(例えば、E.coli.)、またはエフェクター機能を促進する際に非効果的であるか、もしくはあまり効果的ではない、改変されたグリコシル化パターンをもたらす宿主細胞における発現等の産生技術を通じて、低減または排除され得る(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278(5):3466-3473(2003)。
【0083】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」またはADCCは、ある特定の細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)と結合した分泌Igが、これらの細胞毒性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞と特異的に結合して、続いて細胞毒を用いて標的細胞を死滅させることができるようにする細胞毒性の形態を指す。抗体は、細胞毒性細胞で「武装」し、この機序により標的細胞を死滅させるために必要である。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFc発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。目的とする分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載のアッセイ等のインビトロADCCアッセイが行われ得る。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,PNAS USA 95:652-656(1998)に開示されるもの等の動物モデルで評価されてもよい。
【0084】
本明細書における「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義して使用され、天然配列のFc領域及び変異形Fc領域が含まれる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによると残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって、除去されてもよい。したがって、無傷抗体の組成物は、全K447残基が除去された抗体集団、除去されたK447残基がない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含んでもよい。本明細書に記載の抗体における使用に好適な天然配列のFc領域としては、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、及びIgG4が挙げられる。
【0085】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば、抗体またはCAR)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原、またはCAR及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載のものを含む当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。低親和性抗体は、一般に、抗原にゆっくり結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は、一般に、抗原により早く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術分野で既知であり、これらのいずれも、本出願の目的のために使用することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0086】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を阻害または低減するものである。いくつかの実施形態では、遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0087】
「アゴニスト」または活性化抗体は、それが結合する抗原によるシグナル伝達を増強または開始するものである。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗体は、天然のリガンドの存在なしに、シグナル伝達を引き起こすか、または活性化する。
【0088】
ペプチド、ポリペプチド、または抗体配列に関して、「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、配列同一性最大パーセントを達成するために、配列を整合させ、かつ必要に応じてギャップを導入した後の、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮しない、特定のペプチドもしくはポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のための整合は、当該技術分野の技術範囲内である種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の整合を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整合を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0089】
本明細書で使用される「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、T細胞等の免疫エフェクター細胞に1つ以上の抗原特異性をグラフとするために使用され得る遺伝子操作された受容体を指す。いくつかのCARは、「人工T細胞受容体」、「キメラT細胞受容体」、または「キメラ免疫受容体」としても既知である。いくつかの実施形態では、CARは、T細胞及び/または他の受容体の1つ以上の抗原(腫瘍抗原等)、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインに特異的な細胞外抗原結合ドメインを含む。「CAR-T」とは、CARを発現するT細胞を指す。
【0090】
本明細書に記載のCARまたはsdAbをコードする「単離された」核酸分子は、それが産生された環境において通常会合している少なくとも1つの混入核酸分子から特定及び分離される核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、産生環境に関連する全ての成分との会合を含まない。本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする単離された核酸分子は、それが天然に見られる形態または設定以外の形態である。したがって、単離された核酸分子は、細胞中に天然に存在する本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。
【0091】
「制御配列」という用語は、特定の宿主生物における、操作可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列には、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを用いることで知られている。
【0092】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係性に置かれるとき、「操作可能に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAに操作可能に連結してい
るか、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、その配列に操作可能に連結しているか、あるいはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に操作可能に連結されている。一般に、「操作可能に連結」されるとは、連結しているDNA配列が連続的であること、及び分泌リーダーの場合、連続しており、かつリーディング相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続していなくてもよい。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。かかる部位が存在していない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の慣例に従って使用される。
【0093】
本明細書で使用されるとき、「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及び中に導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが操作可能に連結している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0094】
本明細書で使用されるとき、「自己由来」という用語は、それが後に個体に再導入される同じ個体に由来する任意の材料を指すよう意図されている。
【0095】
「同種」とは、同じ種の異なる個体に由来するグラフトを指す。
【0096】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクト」または「形質転換」または「形質導入」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換、または形質導入された細胞である。この細胞は、初代対象細胞及びその子孫を含む。
【0097】
本明細書で使用されるとき、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は、同義に使用され、全てのかかる指名は、子孫を含む。したがって、「トランスフェクタント」及び「トランスフェクト細胞」は、初代対象細胞及び移入の数にかかわらずそれに由来する培養物を含む。全ての子孫が、故意のまたは偶発的な変異により、DNA含有量の点で厳密に同一でない場合があることも理解される。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異形子孫が含まれる。
【0098】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」という用語は、同義に使用され、外因性核酸が中に導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞としては、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が挙げられ、これらは、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一ではないが、変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0099】
本明細書で使用されるとき、「治療」または「治療する」とは、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果としては、以下:疾患に起因する1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の弱化、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の予防または遅延)、疾患の蔓延(例えば、転移)の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患の進行の遅延または減速、病状の改善、疾患の寛解(部分的または全体的)の提供、疾患の治療に必要な1つ以上の他の薬剤の用量の低減、疾患の進行の遅延、生活の質の向上、及び/または生存期間の延長のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない癌の病理学的帰結の軽減も「治療」に包含される。本出願の方法は、これらの治療態様のうちのいずれか1つ以上を企図する。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「個体」または「対象」とは、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類、または霊長類を含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
【0101】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、特定の障害、状態、または疾患を治療するのに、例えば、その症状のうちの1つ以上を改善、緩和、軽減、及び/または遅延するのに十分な薬剤の量、例えば、単一ドメイン抗体、操作された免疫エフェクター細胞、またはその薬学的組成物の量を指す。癌に関して、有効量は、腫瘍の縮小を引き起こし、かつ/または腫瘍の成長速度を低下させる(例えば、腫瘍成長を抑圧する)か、または他の望ましくない細胞増殖を阻止または遅延させるのに十分な量を含む。いくつかの実施形態では、有効量は、発症を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、再発を予防または遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。有効量の薬物または組成物は、(i)癌細胞の数を減少させ、(ii)腫瘍サイズを減少させ、(iii)末梢器官への癌細胞浸潤を阻止し、遅らせ、ある程度遅延させ、好ましくは停止し、(iv)腫瘍転移を阻止し(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは停止し)、(v)腫瘍成長を阻止し、(vi)腫瘍の発生及び/または再発を予防または遅延し、かつ/または(vii)癌に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。
【0102】
「補助状況」とは、個体が癌の病歴を有しており、(必ずしもではないが)一般に手術(例えば、切除手術)、放射線療法、及び化学療法を含むが、これらに限定されない療法に応答している臨床状況を指す。しかしながら、固体の癌の病歴のため、これらの個体は、疾患を発症する危険性があると見なされる。「アジュバント状況」における治療または投与とは、その後の治療様式を指す。危険性の程度(例えば、アジュバント状況にある個体が「高リスク」または「低リスク」と見なされる場合)は、いくつかの要因、最も一般的には最初に治療されたときの疾患の程度に依存する。
【0103】
「ネオアジュバント状況」とは、本方法が一次/原因療法前に行われる臨床状況を指す。
【0104】
本明細書で使用されるとき、癌の発症を「遅延させる」とは、疾患の発症を保留し、妨害し、遅延させ、遅らせ、安定させ、かつ/または延期することを意味する。この遅延は、治療されている病歴及び/または個体に応じて異なる期間であり得る。当業者に明らかであるように、十分なまたは著しい遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含し得る。癌の発症を「遅延」させる方法は、その方法を使用しないときと比較して、所与の時間枠内で疾患発症の可能性を低減させ、かつ/または所与の時間枠内で疾患の程度を低減させる方法である。かかる比較は、典型的には、統計的に有意な数の個体を使用する臨床研究に基づく。癌発症は、コンピュータ断層撮影(CATスキャン)、磁気共鳴映像法(MRI)、腹部超音波検査、凝固検査、動脈造影法、または生検を含むが、これらに限定されない標準の方法を使用して検出可能であり得る。発症は、初期に検出不可能であり得る癌進行も指し、発生、再発、及び発症を含む。
【0105】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性を有効にさせる形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容しがたい程度に毒性のさらなる成分を含有しない調製物を指す。かかる製剤は、滅菌である。「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まない。
【0106】
本明細書で使用される「担体」は、用いられる投与量及び濃度でそれに曝露されている細胞または哺乳動物に非毒性の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。多くの場合、生理的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン;単糖、二糖、及び他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0107】
目的とする「希釈剤」は、本明細書において、薬学的に許容され(ヒトへの投与について安全かつ非毒性である)、液体製剤の調製物、例えば凍結乾燥後に再構成される製剤に有用なものである。例示的な希釈剤としては、滅菌水、静菌性の注射用水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌食塩水溶液、リンゲル液、またはデキストロース溶液が挙げられる。代替の一実施態様では、希釈剤は、塩の水溶液及び/または緩衝液を含み得る。
【0108】
「防腐剤」は、細菌活性を低減するために本明細書における製剤に添加され得る化合物である。防腐剤の添加は、例えば、複数回使用(複数回用量)製剤の製造を容易にし得る。可能な防腐剤の例としては、例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの混合物)及びベンゼトニウムクロライドが挙げられる。他のタイプの防腐剤としては、芳香族アルコール、例えば、フェノール、ブチル、及びベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3‐ペンタノール、及びm‐クレゾールが挙げられる。本明細書において最も好ましい防腐剤は、ベンジルアルコールである。
【0109】
「安定した」製剤とは、中のタンパク質が保管時に物理的及び化学的安定性及び完全性を本質的に保持するものである。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技術が当該技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York、N.Y.,Pubs.(1991)及びJones、A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。安定性は、選択された温度で選択された期間にわたって測定され得る。迅速なスクリーニングのために、製剤が40℃で2週間~1ヶ月間保存され得、その時点で安定性が測定される。製剤が2~8℃で保管される場合、一般に、製剤は、30℃または40℃で少なくとも1ヶ月間安定しているべきであり、かつ/または2~8℃で少なくとも2年間安定しているべきである。製剤が30℃で保管される場合、一般に、製剤は、30℃で少なくとも2年間安定しているべきであり、かつ/または40℃で少なくとも6ヶ月間安定しているべきである。例えば、保管中の凝集の程度は、タンパク質安定性の指標として使用され得る。したがって、「安定した」製剤は、タンパク質の約10%未満、好ましくは約5%未満が製剤中に凝集体として存在するものであり得る。他の実施形態では、製剤の保管中の凝集体形成のいずれの増加も決定することができる。
【0110】
「再構成された」製剤とは、タンパク質が全体に分散するように希釈剤中に凍結乾燥タンパク質または抗体製剤を溶解させることによって調製されたものである。再構成された製剤は、目的とするタンパク質で治療される患者への投与(例えば、皮下投与)に好適であり、本出願のいくつかの実施形態では、非経口または静脈内投与に好適なものであり得る。
【0111】
「等張」製剤は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有するものである。等張製剤は、一般に、約250~350mOsmの浸透圧を有する。「低張」という用語は、ヒト血液の浸透圧よりも低い浸透圧を有する製剤を説明する。同様に、「高張」という用語は、ヒト血液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する製剤を説明するために使用される。等張性は、例えば、蒸気圧または氷結型浸透圧計を使用して測定され得る。本発明の製剤は、塩及び/または緩衝液の添加の結果として高張である。
【0112】
本明細書に記載の本出願の実施形態が、実施形態「から成る」及び/または「から本質的に成る」を含むことが理解される。
【0113】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変形を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」について言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0114】
本明細書で使用されるとき、ある値またはパラメータ「ではない」への言及は、一般に、ある値またはパラメータ「以外」を意味及び説明する。例えば、タイプXの癌を治療するための方法が使用されないとは、X以外のタイプの癌を治療するための方法が使用されることを意味する。
【0115】
本明細書で使用される「約X-Y」という用語は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
【0116】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「or」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数指示対象を含む。
【0117】
II.単一ドメイン抗体
本出願は、一態様において、単一ドメイン抗体、その抗原結合フラグメント、及び単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つを含む抗原結合タンパク質を提供する。例示的な単一ドメイン抗体は、以下の表2に列記されている。
【表2-1】
【表2-2】
【0118】
抗CD19単一ドメイン抗体
一態様では、本出願は、ヒトCD19等のCD19に特異的に結合する単離された単一ドメイン抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、CD19活性を調節する。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、アンタゴニスト抗体である。
【0119】
いくつかの実施形態では、配列番号76のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD19単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗
CD19単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD19単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD19単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つの同一性を有するCDRは、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗CD19単一ドメイン抗体は、CD19に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、親和性成熟抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD19単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、配列番号76のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するVHHドメインを含む抗CD19単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つ
の同一性を有するVHH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗CD19単一ドメイン抗体は、CD19に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号76のアミノ酸配列に置換されており、挿入されており、かつ/または欠失している。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗CD19単一ドメイン抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む配列番号76のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、配列番号76のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む抗CD19単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号76のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0125】
いくつかの実施形態では、機能的エピトープは、コンビナトリアルアラニンスキャニングによってマッピングされ得る。このプロセスでは、コンビナトリアルアラニンスキャニング戦略を使用して、抗CD19単一ドメイン抗体との相互作用に必要なCD19タンパク質中のアミノ酸を特定することができる。いくつかの実施形態では、エピトープは、立体配座であり、CD19に結合している抗CD19単一ドメイン抗体の結晶構造を用いて、エピトープを特定することができる。いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に提供される抗CD19単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つと同じエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号76のアミノ酸配列を含む抗CD19単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0126】
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載の抗CD19単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つと競合してCD19に特異的に結合する抗CD19抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、競合的結合は、ELISAアッセイを使用して決定され得る。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号76のアミノ酸配列を含む抗CD19単一ドメイン抗体と競合してCD19に特異的に結合する抗体が提供される。
【0127】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗CD19単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つを含む抗CD19抗体または抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、ラクダ科、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、抗体フラグメント、例えば、VHHフラグメントである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、IgG1またはIgG4等の任意の抗体クラスまたはアイソタイプのFc領域を含む全長重鎖のみ抗体である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、低減または最小化されたエフェクター機能を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、上述の実施形態のうちのいずれかによる抗CD19抗体(抗CD19単一ドメイン抗体等)または抗原結合タンパク質は、以下の「抗体の特徴」の第1~7節に記載の特徴のうちのいずれかを単独でまたは組み合わせで組み込み得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗CD19抗体(抗CD19単一ドメイン抗体等)のうちのいずれか1つをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体をコードする単離された核酸が提供され、この核酸は、配列番号101の核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89
%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号101の核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を作製する方法が提供され、この方法は、上に提供される抗CD19抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を抗CD19抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗CD19抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0130】
抗CD20単一ドメイン抗体
一態様では、本出願は、ヒトCD20等のCD20に特異的に結合する単離された単一ドメイン抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、CD20活性を調節する。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、アンタゴニスト抗体である。
【0131】
いくつかの実施形態では、配列番号77のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD20単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD20単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR1、(b)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR2、及び(c)配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD20単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つの同一性を有するCDRは、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗CD20単一ドメイン抗体は、CD20に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、親和性成熟抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD20
単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD20単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、配列番号77のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するVHHドメインを含む抗CD20単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つの同一性を有するVHH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗CD20単一ドメイン抗体は、CD20に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号77のアミノ酸配列に置換されており、挿入されており、かつ/または欠失している。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗CD20単一ドメイン抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む配列番号77のアミノ酸配列を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、配列番号77のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD20単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号77のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0137】
いくつかの実施形態では、機能的エピトープは、コンビナトリアルアラニンスキャニングによってマッピングされ得る。このプロセスでは、コンビナトリアルアラニンスキャニング戦略を使用して、抗CD20単一ドメイン抗体との相互作用に必要なCD20タンパク質中のアミノ酸を特定することができる。いくつかの実施形態では、エピトープは、立体配座であり、CD20に結合している抗CD20単一ドメイン抗体の結晶構造を用いて、エピトープを特定することができる。いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に提供される抗CD20単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つと同じエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号77のアミノ酸配列を含む抗CD20単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0138】
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載の抗CD20単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つと競合してCD20に特異的に結合する抗CD20抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、競合的結合は、ELISAアッセイを使用して決定され得る。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号77のアミノ酸配列を含む抗CD20単一ドメイン抗体と競合してCD20に特異的に結合する抗体が提供される。
【0139】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗CD20単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つを含む抗CD20抗体または抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、ラクダ科、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含むモノクロ
ーナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、抗体フラグメント、例えば、VHHフラグメントである。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、IgG1またはIgG4等の任意の抗体クラスまたはアイソタイプのFc領域を含む全長重鎖のみ抗体である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、低減または最小化されたエフェクター機能を有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、上述の実施形態のうちのいずれかによる抗CD20抗体(抗CD20単一ドメイン抗体等)または抗原結合タンパク質は、以下の「抗体の特徴」の第1~7節に記載の特徴のうちのいずれかを単独でまたは組み合わせで組み込み得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗CD20抗体(抗CD20単一ドメイン抗体等)のうちのいずれか1つをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体をコードする単離された核酸が提供され、この核酸は、配列番号102の核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号102の核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体を作製する方法が提供され、この方法は、上に提供される抗CD20抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を抗CD20抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗CD20抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0142】
抗BCMA単一ドメイン抗体
一態様では、本出願は、ヒトBCMA等のBCMAに特異的に結合する単離された単一ドメイン抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、BCMA活性を調節する。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アンタゴニスト抗体である。
【0143】
B細胞成熟抗原(BCMA)(別名、CD269)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、すなわち、TNFRSF17である(Thompson et al.,J.Exp.Medicine,192(1):129-135、2000)。ヒトBCMAは、形質細胞及び多発性骨髄腫細胞でほぼ例外なく発現される(例えば、Novak et al.,Blood,103(2):689-694,2004;Neri et al.,Clinical Cancer Research,73(19):5903-5909、Felix et al.,Mol.Oncology,9(7):1348-58,2015を参照されたい)。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)及び増殖を含むリガンド(proliferation including ligand)(APRIL)に結合することができる(例えば、Mackay et al.,2003 and Kalled et al.,Immunological Review,204:43-54,2005)。BCMAは、多発性骨髄腫に対する免疫療法薬に好適な腫瘍抗原標的であり得る。高親和性の抗体は、BCMAとその天然リガンドBAFF及びAPRILとの間の結合を遮断し得る。抗BCMA単一ドメイン抗体を、CAR-T細胞を使用する細胞免疫療法と組み合わせて使用して、例えば、腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を増強することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、配列番号78のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号79のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一
ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号80のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号81のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号82のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号83のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号84のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号85のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号86のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号87のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号88のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号7~17から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号18~28から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号29~39から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号7~17から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR1、(b)配列番号18~28から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR2、及び(c)配列番号29~39から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つの同一性を有するCDRは、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体は、BCMAに結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、親和性成熟抗体である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフ
レームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、(c)配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、(c)配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、配列番号78~88から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するVHHドメインを含む抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つの同一性を有するVHH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体は、BCMAに結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号78~88から選択されるアミノ酸配列に置換されており、挿入され
ており、かつ/または欠失している。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗BCMA単一ドメイン抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む配列番号78~88から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、配列番号78のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号78のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号79のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号79のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号80のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号80のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号81のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号81のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号82のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号82のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号83のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号83のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号84のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号84のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号85のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号85のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号86のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号86のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号87のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号87のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号88のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗BCMA単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号88のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0160】
いくつかの実施形態では、機能的エピトープは、コンビナトリアルアラニンスキャニングによってマッピングされ得る。このプロセスでは、コンビナトリアルアラニンスキャニング戦略を使用して、抗BCMA単一ドメイン抗体との相互作用に必要なBCMAタンパク質中のアミノ酸を特定することができる。いくつかの実施形態では、エピトープは、立体配座であり、BCMAに結合している抗BCMA単一ドメイン抗体の結晶構造を用いて、エピトープを特定することができる。いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に提供される抗BCMA単一ドメイン抗体のうちのいずれかと同じエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号78のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号79のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号80のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号81のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号82のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合す
る抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号83のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号84のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号85のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号86のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号87のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号88のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0161】
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載の抗BCMA単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つと競合してBCMAに特異的に結合する抗BCMA抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、競合的結合は、ELISAアッセイを使用して決定され得る。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号78のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号79のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号80のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号81のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号82のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号83のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号84のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号85のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号86のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号87のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号88のアミノ酸配列を含む抗BCMA単一ドメイン抗体と競合してBCMAに特異的に結合する抗体が提供される。
【0162】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗BCMA単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つを含む抗BCMA抗体または抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、ラクダ科、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、抗体フラグメント、例えば、VHHフラグメントである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、IgG1またはIgG4等の任意の抗体クラスまたはアイソタイプのFc領域を含む全長重鎖のみ抗体である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、低減または最小化されたエフェクター機能を有する。
【0163】
いくつかの実施形態では、上述の実施形態のうちのいずれかによる抗BCMA抗体(抗BCMA単一ドメイン抗体等)または抗原結合タンパク質は、以下の「抗体の特徴」の第1~7節に記載の特徴のうちのいずれかを単独でまたは組み合わせで組み込み得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗BCMA抗体(抗BCMA単一ドメイン抗体等)のうちのいずれか1つをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施
形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体をコードする単離された核酸が提供され、この核酸は、配列番号103~113から成る群から選択される核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号103~113から成る群から選択される核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を作製する方法が提供され、この方法は、上に提供される抗BCMA抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を抗BCMA抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗BCMA抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0165】
抗CD38単一ドメイン抗体
一態様では、本出願は、ヒトCD38等のCD38に特異的に結合する単離された単一ドメイン抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、CD38活性を調節する。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アンタゴニスト抗体である。
【0166】
CD38は、細胞表面受容体と会合し、細胞質Ca2+流束を制御し、かつリンパ球及び脊髄におけるシグナル伝達を媒介するII型膜貫通糖タンパク質である(Konopleva et al.,J Immunol,161:4702-8,1998、Deaglio et al.,Blood,109:5390-8,2007)。ヒトCD38は、骨髄腫細胞で高度かつ一様に発現し、正常なリンパ球及び脊髄細胞ならびに非造血起源のいくつかの組織で比較的低いレベルで発現し、それを骨髄腫の治療における潜在的標的にする(例えば、Lin et al.,Am J Clin Pathol,2004,121:482、H.M.Lokhorst et al.,New Eng.J.Med.,2015,373:13を参照されたい)。
【0167】
いくつかの実施形態では、配列番号89のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号90のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号91のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号92のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号93のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号94のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号95のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号96のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号97のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号98のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号99のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号100のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号40~51から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号52~63から選択されるアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号64~75から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号40~51から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR1、(b)配列番号52~63から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR2、及び(c)配列番号64~75から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つの同一性を有するCDRは、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体は、CD38に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、親和性成熟抗体である。
【0170】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号72のアミノ酸配列を
含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、(a)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、ヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、配列番号89~100から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するVHHドメインを含む抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちのいずれか1つの同一性を有するVHH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体は、CD38に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号89~100から選択されるアミノ酸配列に置換されており、挿入されており、かつ/または欠失している。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域で(すなわち、FR内で)生じる。任意に、抗CD38単一ドメイン抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む配列番号89~100から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、配列番号89のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号89のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号90のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号90のアミノ酸配列を含むポリ
ペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号91のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号91のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号92のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号92のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号93のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号93のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号94のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号94のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号95のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号95のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号96のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号96のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号97のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号97のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号98のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号98のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号99のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号99のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号100のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む単離された抗CD38単一ドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号100のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0184】
いくつかの実施形態では、機能的エピトープは、コンビナトリアルアラニンスキャニングによってマッピングされ得る。このプロセスでは、コンビナトリアルアラニンスキャニング戦略を使用して、抗CD38単一ドメイン抗体との相互作用に必要なCD38タンパク質中のアミノ酸を特定することができる。いくつかの実施形態では、エピトープは、立体配座であり、CD38に結合している抗CD38単一ドメイン抗体の結晶構造を用いて、エピトープを特定することができる。いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に提供される抗CD38単一ドメイン抗体のうちのいずれかと同じエピトープに特異的に結合する抗体を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号89のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号90のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号91のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号92のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号93のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号94のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号95のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号96のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号98のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号99のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号100のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0185】
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載の抗CD38単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つと競合してCD38に特異的に結合する抗CD38抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、競合的結合は、ELISAアッセイを使用して決定され得る。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号89のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号90のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号91のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号92のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号93のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号94のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号95のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号96のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号98のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号99のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号100のアミノ酸配列を含む抗CD38単一ドメイン抗体と競合してCD38に特異的に結合する抗体が提供される。
【0186】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗CD38単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つを含む抗CD38抗体または抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ラクダ科、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、抗体フラグメント、例えば、VHHフラグメントである。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1またはIgG4等の任意の抗体クラスまたはアイソタイプのFc領域を含む全長重鎖のみ抗体である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、低減または最小化されたエフェクター機能を有する。
【0187】
いくつかの実施形態では、上述の実施形態のうちのいずれかによる抗CD38抗体(抗CD38単一ドメイン抗体等)または抗原結合タンパク質は、以下の「抗体の特徴」の第1~7節に記載の特徴のうちのいずれかを単独でまたは組み合わせで組み込み得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、上に記載される抗CD38抗体(抗CD38単一ドメイン抗体等)のうちのいずれか1つをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38単一ドメイン抗体をコードする単離された核酸が提供され、核酸は、配列番号114~125から成る群から選択される核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号114~125から成る群から選択される核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体を作製する方法が提供され、この方法は、上に提供される抗CD38抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を抗CD38抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗CD38抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0189】
抗体の特徴
1.抗体親和性
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0190】
いくつかの実施形態では、Kdは、以下のアッセイによって説明されるように、目的とする抗体のFabバージョンまたはVHHフラグメント及びその抗原を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。例えば、抗体に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最低濃度の(125I)標識抗原と平衡させ、次いで、抗Fab抗体をコーティングしたプレートで結合した抗体を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。このアッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mLの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2w/v%ウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着プレート(Nunc番号269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的とするFabの連続希釈液と混合する(Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致する)。次いで、目的とするFabを一晩インキュベートするが、平衡が達成されたことを確実にするために、このインキュベーションをより長い時間(例えば、約65時間)にわたって継続してもよい。その後、混合物を捕捉プレートに移して、室温でインキュベート(例えば、1時間)する。その後、溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥した時点で、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間にわたって計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0191】
いくつかの実施形態では、Kdは、約10応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップを有するBIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway,NJ)を25℃で使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いて抗原を5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後、5μL/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。反応速度測定のために、目的とする抗体のFabまたはVHHの2倍連続希釈液(0.78nM~500nM)を、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20TM)界面活性剤(PBST)を有するPBS中におよそ25μL/分の流量で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et
al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。オン速度が上述の表面プラズモン共鳴アッセイによって106M-1s-1を超える場合、オン速度は、ストップフローを装備した分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備える8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される漸増濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)中20nM抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用することによって決定され得る。
【0192】
2.抗体フラグメント
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体フラグメントである。抗体フラグメントとしては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFvフラグメント、VHH、ならびに以下に記載の他のフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体フラグメントの概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFvフラグメントの概説については、例えば、Pluckthun, in The
Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたく、WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、かつ増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)2フラグメントの考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0193】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、欧州第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディについては、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載されている。
【0194】
抗体フラグメントは、本明細書に記載されるように、インタクトな抗体のタンパク質消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない種々の技術によって作製され得る。
【0195】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、ラマ等のラクダ科種に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、そのクラスまたはサブクラスが、親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチした」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合フラグメントを含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒト化されてヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持する。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、そのHVR、例えば、CDR(またはその一部)は、非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0197】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説され、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(SDR(a-CDR)グラフトについて記載)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「表面再構成」について記載)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」について記載)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)にさらに記載されている。
【0198】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0199】
いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗原に対するドメインの生来の親和性を低下させない一方で、異種種に対するその免疫原性を減少させるように修飾、例えば、ヒト化される。例えば、ラマ抗体の抗体可変ドメイン(VHH)のアミノ酸残基が決定され得、例えば、フレームワーク領域内のラクダ科アミノ酸のうちの1つ以上が、ポリペプチドがその典型的な特徴を失うことなく、すなわち、ヒト化が結果として生じるポリペプチドの抗原結合能力に著しく影響を及ぼさないように、ヒトコンセンサス配列に見られるようなそれらのヒト対応物に置き換えられる。ラクダ科単一ドメイン抗体のヒト化は、単一ポリペプチド鎖内の限定された量のアミノ酸の導入及び変異誘発を必要とする。これは、2つの鎖(軽鎖及び重鎖)へのアミノ酸変化の導入、ならびに両方の鎖のアセンブリの保存を必要とするscFv、Fab’、(Fab’)2、及びIgGのヒト化とは対照的である。
【0200】
VHHドメインを含む単一ドメイン抗体は、ヒト様配列を有するようにヒト化され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるVHHドメインのFR領域は、ヒトVHフレームワーク領域に対する少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のアミノ酸配列相同性のうちのいずれか1つを含む。ヒト化VHHドメインの1つの例示的なクラスは、VHHが、Kabat番号付けに従って、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンから成る群からのアミノ酸を45位に(例えば、L45等)、トリプトファンを103位に保有することを特徴とする。したがって、このクラスに属するポリペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ポリペプチドは、それからの望ましくない免疫応答を予期することなく、かつさらなるヒト化に負担をかけることなくヒトに直接投与され得る。
【0201】
ヒト化ラクダ科単一ドメイン抗体の別の例示的なクラスがWO03/035694に記載されており、典型的にはヒト起源のまたは他の種由来の従来の抗体に見られるが、二本鎖抗体由来のVHに存在する保存されたトリプトファン残基を103位の荷電アルギニン残基で置換することによりこの親水性損失を補償する疎水性FR2残基を含有する。したがって、これらの2つのクラスに属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ペプチドは、それからの望ましくない免疫応答を予期することなく、かつさらなるヒト化に負担をかけることなくヒトに直接投与され得る。
【0202】
4.ヒト抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技術を使用して産生され得る。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。完全ヒト単一ドメイン抗体を産生することができるトランスジェニックマウスまたはラットが当該技術分野で既知である。例えば、US20090307787A1、米国特許第8,754,287号、US20150289489A1、US20100122358A1、及びWO2004049794を参照されたい。
【0203】
ヒト抗体は、抗原投与に応答してヒト可変領域を有する無傷ヒト抗体または無傷抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するか、もしくはその動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術を記載)、米国特許第5,770,429号(HUMAB(登録商標)技術を記載)、米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術を記載)、ならびに米国特許出願公開第US2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載)も参照されたい。かかる動物によって生成される無傷抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾され得る。
【0204】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株について説明されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体についても、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)については、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185:91(2005)にも記載されている。
【0205】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技術が以下に記載される。
【0206】
特定の抗原もしくは標的に対して指向されるVHH配列を得るための1つの技術は、重鎖抗体を発現することができるトランスジェニック哺乳動物を好適に免疫化することと(すなわち、免疫応答及び/または前記抗原もしくは標的に対して指向される重鎖抗体をもたらすように)、前記VHH配列(をコードする核酸配列)を含有する前記トランスジェニック哺乳動物から好適な生体試料(血液試料、血清試料、またはB細胞試料等)を得ることと、その後、前記試料から開始して、本来既知の任意の好適な技術(本明細書に記載の方法またはハイブリドーマ技術のうちのいずれか等)を使用して前記抗原もしくは標的に対して指向されるVHH配列を生成することとを伴う。例えば、この目的のために、WO02/085945、WO04/049794及びWO06/008548、及びJanssens et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2006 Oct.10;103(41):15130-5に記載の重鎖抗体発現マウスならびにさらなる方法及び技術が使用され得る。例えば、かかる重鎖抗体発現マウスは、天然源由来の(単一)可変ドメイン(例えば、ヒト(単一)可変ドメイン、ラクダ科(単一)可変ドメインまたはサメ(単一)可変ドメイン)、ならびに例えば合成または半合成(単一)可変ドメイン等の任意の好適な(単一)可変ドメインを有する重鎖抗体を発現させることができる。
【0207】
5.ライブラリ由来抗体
本出願の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular B
iology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human
Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554、Clackson et
al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)にさらに記載されている。単一ドメイン抗体ライブラリを構築するための方法が説明されており、例えば、米国特許第7371849号を参照されたい。
【0208】
ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ内でランダムに組換えられ、その後、これが、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントのいずれかとして抗体フラグメントをディスプレイする。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J.12:725-734(1993)に記載されるように、ナイーブレパートリーが(例えば、ヒトから)クローニングされて、免疫化することなく、広範な非自己抗原及び自己抗原に対する単一源の抗体を提供することができる。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞由来の再編成されていないV遺伝子フラグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度に可変的なCDR3領域をコードし、インビトロでの再編成を達成することによってナイーブライブラリを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0209】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体フラグメントは、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体フラグメントと見なされる。
【0210】
6.多重特異性抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対して結合特異性を有する抗体である。いくつかの実施形態では、一方の結合特異性は、CD19、CD20、BCMA、及びCD38から成る群から選択される抗原に対してであり、他方は、任意の他の抗原に対してである。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、CD19、CD20、BCMA、及びCD38から成る群から選択される抗原の2つの異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体を使用して、CD19、CD20、BCMA、及びCD38から成る群から選択される抗原を発現させる細胞に対して細胞毒性薬を局在化させることもできる。
【0211】
二重特異性抗体は、全長抗体または抗体フラグメントとして調製することができる。多重特異性抗体を作製するための技術としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker
et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、及び「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、静電ステアリング効果を操作して抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体またはフラグメントを架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体フラグメントを作製すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444-6448(1993))、及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、ならびに三重特異性抗体を調製すること(例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)、ならびにタンデム単一ドメイン抗体を含むポリペプチドを作製すること(例えば、米国特許出願第20110028695号、及びConrath et al.J.Biol.Chem.,2001;276(10):7346-50を参照されたい)によっても作製され得る。「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0212】
7.抗体変異形
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異形が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異形は、抗体をコードする核酸配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。最終構築物に到達ために欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行うことができるが、最終構築物が所望の特性、例えば、抗原結合を保有することを条件とする。
【0213】
a)置換、挿入、及び欠失変異形
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形が提供される。置換型変異誘発のための目的とする部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表3の「好ましい置換」という見出しの下に示される。より実質的な変化は、表3の「例示的な置換」という見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換が目的とする抗体に導入され、生成物が所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低減、またはADCCまたはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
【表3】
【0214】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0215】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのあるメンバーと別のクラスとの交換を伴うことになる。
【0216】
ある種類の置換型変異形は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる試験のために選択される結果として生じる変異形(複数可)は、親抗体と比較してある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に
保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型変異形は、例えば、本明細書に記載の技術等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異され、変異形抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0217】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVR内に行われてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008))、及び/またはSDR(a-CDR)に行われてもよく、結果として生じる変異形VHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリの構築及びそこからの再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001).)に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体変異形を識別する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に識別され得る。多くの場合、CDR-H3及びCDR-L3がとりわけ標的とされる。
【0218】
いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR内で行われてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはCDR外であり得る。上に提供される変異形VHH配列のいくつかの実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、または3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0219】
変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域の識別のための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と称され、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されている。この方法において、標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGlu等の荷電残基)の残基または基が識別され、中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響されたかを決定する。さらなる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を識別するための抗原-抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異形をスクリーニングして、それらが所望の特性を有するかを決定することができる。
【0220】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の長さを有するアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型変異形には、酵素(例えば、ADEPTのため)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN
末端またはC末端の融合が含まれる。
【0221】
b)グリコシル化変異形
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0222】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を改変してもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の改善された特性を有する抗体変異形を作製するために、本出願の抗体中のオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0223】
いくつかの実施形態では、Fc領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異形が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸、上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異形は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異形に関する出版物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312A1(Adamsら、特に実施例11))、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0224】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体変異形がさらに提供される。かかる抗体変異形は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異形の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairetら)、米国特許第6,602,684号(Umanaら)、及び米国特許第2005/0123546号(Umanaら)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異形も提供される。かかる抗体変異形は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異形は、例えば、WO1997/30087(Patelら)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0225】
c)Fc領域変異形
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域変異形が生成され得る。Fc領域変異形は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0226】
いくつかの実施形態では、本出願は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を保有し、それにより抗体のインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異形を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞毒性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(それ故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFc(RIIIのみを発現する一方で、単球は、Fc(RI、Fc(RII、及びFc(RIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、動物モデル、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示される動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合することができず、それによりCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で既知の方法を使用して行うこともできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0227】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体としては、アミノ酸265、269、270、297、及び327位のうちの2つ以上での置換を有するFc変異体、例えば、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体が挙げられる(米国特許第7,332,581号)。
【0228】
FcRへの結合が改善または低減されたある特定の抗体変異形が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。)
【0229】
いくつかの実施形態では、抗体変異形は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、Fc領域でもたらされた改変の結果、改変された(すなわち、改善または低減のいずれか)C1q結合及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす。
【0231】
半減期の延長及び母体IgGの胎児への移送に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合の改善を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))については、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換をそこに有するFc領域を含む。かかるFc変異形は、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
【0232】
Fc領域変異形の他の例に関して、Duncan & Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0233】
d)システイン操作された抗体変異形
いくつかの実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作された抗体、例えば、「thioMab」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基がそれにより抗体のアクセス可能な部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分にコンジュゲートして、本明細書にさらに記載されるイム
ノコンジュゲートを作製することができる。いくつかの実施形態では、以下の残基のうちのいずれか1つ以上がシステインで置換され得る:重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0234】
e)抗体誘導体
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じかまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体の誘導体が規定の条件下で療法に使用されるか等を含むが、これらに限定されない、検討事項に基づいて決定され得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞を死滅させる温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これらに限定されない、任意の波長のものであり得る。
【0236】
調製方法
本明細書に記載の抗体(単一ドメイン抗体等)は、当該技術分野で既知のまたは本明細書に記載の任意の方法を使用して調製され得る。
【0237】
単一ドメイン抗体を調製する方法が説明されている。例えば、Els Pardon et al,Nature Protocol,2014;9(3):674を参照されたい。単一ドメイン抗体(VHH等)は、当該技術分野で既知の方法を使用して、例えば、ラクダ科種(ラクダまたはラマ等)を免疫化し、それからハイブリドーマを得ることによって、または当該技術分野で既知の分子生物学技術を使用して単一ドメイン抗体のライブラリをクローニングし、その後、選択されていないライブラリの個々のクローンをELISAによりまたはファージディスプレイを使用して選択することによって得られ得る。
【0238】
単一ドメイン抗体の組換え産生について、単一ドメイン抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。単一ドメイン抗体をコードするDNAは、従来の手法を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離及び配列決定され得る。多くのベクター
が利用可能である。ベクターの選択は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物起源または真核生物(一般に、哺乳類)起源のいずれかのものである。
【0239】
1.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、一般に、関連抗原及びアジュバントの複数の皮下(sc)または腹腔内(ip)注入によって動物において産生される。二機能性または誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N‐ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、R及びR1が独立して低級アルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫する種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤にコンジュゲートすることが有用であり得る。用いられ得るアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバント、及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコール酸塩)が挙げられる。免疫化プロトコルは、過度な実験なしに当業者によって選択され得る。
【0240】
動物は、例えば、100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲート(それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)を、3体積のフロイントの完全なアジュバントと組み合わせ、複数の部位で溶液を皮内注入することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、動物は、複数の部位での皮下注入により完全フロイントアジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートの元の量の1/5~1/10で追加免疫される。7~14日後、動物が採血され、血清が抗体力価についてアッセイされる。動物は、力価がプラトーに到達するまで追加免疫される。コンジュゲートは、タンパク質融合物として組換え細胞培養物でも作製され得る。また、ミョウバン等の凝集剤も免疫応答の増強に好適である。
【0241】
2.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体集団から得られ、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、微量で存在し得る可能な自然に生じる変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。
【0242】
例えば、モノクローナル抗体は、最初にKohler et al.,Nature,256:495(1975)により記載されるハイブリドーマ法を使用して作製され得るか、または組換えDNA法により作製され得る(米国特許第4,816,567号)。
【0243】
ハイブリドーマ法において、マウス、またはハムスター等の他の適切な宿主動物が、上述のように免疫化されて、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球が誘発される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。次いで、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞で融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles
and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986)を参照されたい。
【0244】
免疫化剤は、典型的には、抗原タンパク質またはその融合変異形を含む。一般に、ヒト起源の細胞が所望される場合に抹消血リンパ球(「PBL」)が使用されるか、または非ヒト哺乳類起源が所望される場合に脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用されるかのいず
れかである。その後、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986),pp.59-103。
【0245】
不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳類細胞、特に齧歯類、ウシ、及びヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞系が用いられる。このように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、融合されていない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含有する好適な培養培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含み、これらは、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する物質である。
【0246】
好ましい不死化骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地等の培地に感受性を示すものである。これらの中でもとりわけ、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するものUSA、ならびにAmerican Type
Culture Collection,Manassas,Va.USAから入手可能なSP-2細胞(及びその誘導体、例えば、X63-Ag8-653)等のマウス骨髄腫株が好ましい。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0247】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、抗原に対して指向されたモノクローナル抗体の産生に関してアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される。
【0248】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、所望の抗原に対して指向されたモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、モノクローナル抗体の結合親和性及び特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合アッセイ(ELISA)によって決定され得る。かかる技術及びアッセイは、当該技術分野で既知である。例えば、結合親和性は、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャチャード分析によって決定され得る。
【0249】
所望の特異性、親和性、及び/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンが限界希釈手技によってサブクローニングされ、標準の方法によって成長し得る(Goding(上記参照))。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物における腫瘍としてインビボで成長し得る。
【0250】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、タンパク質A-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和
性クロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。
【0251】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載される方法及び上に記載される方法等の組換えDNA法によっても作製され得る。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及び配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい源としての機能を果たす。単離されると、DNAが発現ベクター内に配置され得、その後、これが、宿主細胞、例えば、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または免疫グロブリンタンパク質を別様に産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされて、かかる組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体を合成する。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する概説論文としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256-262(1993)及びPliickthun、Immunol.Revs.130:151-188(1992)が挙げられる。
【0252】
さらなる一実施形態では、抗体は、McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990)に記載される技術を使用して生成された抗体ファージライブラリから単離され得る。Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記載する。続報は、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al.,Bio/Technology,10:779-783(1992))、ならびに非常に大きなファージライブラリを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換えを記載する(Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.,21:2265-2266(1993))。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替案である。
【0253】
DNAは、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison、et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによっても修飾され得る。典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインの代わりに置換されるか、またはそれらが、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位、及び異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0254】
本明細書に記載のモノクローナル抗体は一価であり得、その調製は、当該技術分野で既知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組換え発現を伴う。重鎖は、重鎖架橋を防止するように、一般にFc領域内の任意の点で切断される。あるいは、関連システイン残基は、別のアミノ酸残基で置換され得るか、または架橋を防止するように欠失される。インビトロ方法も、一価抗体の調製に好適である。そのフラグメント、具体的には、Fabフラグメントを産生するための抗体の消化は、当該技術分野で既知の日常的な技法を使用して達成され得る。
【0255】
キメラまたはハイブリッド抗体も、架橋剤を伴うものを含む合成タンパク質化学で既知の方法を使用してインビトロで調製され得る。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反
応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって構築され得る。この目的に好適な試薬としては、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデート(mercaptobutyrimidate)が挙げられる。
【0256】
3.原核生物細胞における組換え産生
a)ベクター構築
本出願の抗体をコードするポリ核酸配列は、標準の組換え技法を使用して得られ得る。所望のポリ核酸配列は、ハイブリドーマ細胞等の抗体産生細胞から単離及び配列決定され得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技術を使用して合成され得る。得られた時点で、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主内で異種ポリヌクレオチドを複製及び発現することができる組換えベクターに挿入される。利用可能であり、かつ当該技術分野で既知である多くのベクターが本発明で使用され得る。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸の大きさ及びベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはこれらの両方)及びそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に応じて種々の成分を含有する。ベクター成分としては、一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入及び転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0257】
一般に、宿主細胞と適合性のある種由来のレプリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。このベクターは、通常、複製部位、及び形質転換細胞において表現型選択を提供することができるマーキング配列を持つ。例えば、E.coliは、典型的には、E.coli種由来のプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、それ故に形質転換細胞を特定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージは、内因性タンパク質の発現のための微生物によって使用され得るプロモーターも含有し得るか、またはそれを含有するように修飾され得る。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322誘導体の例は、Carter et al.,米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0258】
加えて、宿主微生物と適合性のあるレプリコン及び制御配列を含有するファージベクターは、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、GEM(商標)-11等のバクテリオファージが、E.coli LE392等の感受性宿主細胞を形質転換するために使用され得る組換えベクターを作製する際に利用され得る。
【0259】
本出願の発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を調節するシストロンの上流(5’)に位置する非翻訳制御配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、2つのクラス、誘導プロモーター及び構成プロモーターに分けられる。誘導プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の存在もしくは不在、または温度の変化に応答してその制御下で増加したレベルのシストロンの転写を開始するプロモーターである。
【0260】
様々な潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化によりソースDNAからプロモーターを除去し、かつ単離されたプロモーター配列を本出願のベクターに挿入することによって、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に結合し得る。天然プロモーター配列も多くの異種プロモーターもいずれも、標的遺伝子の増幅及び/または発現を誘導するために使用され得る。いくつかの実施形態では、異種プロモーターが一般に天然標的ポリペプチドプロモーターと比較して発現された標的遺伝子のより大きい転写及びより高い収率をもたら
すため、異種プロモーターが利用される。
【0261】
原核生物宿主との使用に好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えば、tacまたはtrcプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能的な他のプロモーター(他の既知の細菌またはファージプロモーター等)も好適である。それらの核酸配列が公開されており、それにより、当業者が、任意の必要な制限部位を提供するためにリンカーまたはアダプターを使用して、それらを標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロンに作動可能に連結することを可能にする(Siebenlist et al.(1980)Cell 20:269)。
【0262】
一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜にわたる発現ポリペプチドの転位を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。異種ポリペプチドに天然のシグナル配列を認識もプロセシングもしない原核生物宿主細胞について、シグナル配列は、例えば、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、及びMBPから成る群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。本出願のいくつかの実施形態では、発現系の両方のシストロンで使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその変異形である。
【0263】
いくつかの実施形態では、本出願による抗体の産生は、宿主細胞の細胞質で生じ得、それ故に、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。いくつかの実施形態では、ポリペプチド成分、例えば、第2の抗原結合部分に任意に融合される第1の抗原結合部分のVHドメインをコードするポリペプチド及び第2の抗原結合部分に任意に融合される第1の抗原結合部分のVLドメインをコードするポリペプチド等が発現され、折り畳まれ、アセンブリされて、細胞質内に機能的抗体を形成する。ある特定の宿主株(例えば、E.coli trxB-株)は、ジスルフィド結合形成に好ましい細胞質条件を提供し、それにより発現タンパク質サブユニットの適切な折り畳み及びアセンブリを可能にする。Proba and Pluckthun Gene,159:203(1995)。
【0264】
本発明は、分泌及び適切にアセンブリされた本出願の抗体の収率を最大化するために発現ポリペプチド成分の量比が調節され得る発現系を提供する。かかる調節は、ポリペプチド成分の翻訳強度を同時に調節することによって少なくとも部分的に達成される。翻訳強度を調節するための1つの技術が、Simmons et al.,米国特許第5,840,523号に開示されている。それは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の変異形を利用する。所与のTIRについて、一連のアミノ酸または核酸配列変異形がある範囲の翻訳強度で作製され、それによりこの因子を特定の鎖の所望の発現レベルに調整するための便利な手段を提供することができる。TIR変異形は、アミノ酸配列を改変することができるコドン変化をもたらす従来の変異誘発技法によって生成され得るが、核酸配列のサイレント変化が好ましい。TIRの改変は、例えば、シグナル配列の改変に加えて、シャイン・ダルガノ配列の数またはスペーシングの改変を含み得る。変異シグナル配列を生成するための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)コード配列の始めに「コドンバンク」を生成することである。これは、各コドンの第3のヌクレオチド位置を変化させることによって達成され得、加えて、ロイシン、セリン、及びアルギニン等のいくつかのアミノ酸は、バンクの作製を複雑にし得る複数の第1及び第2の位置を有する。この変異誘発法は、Yansura et al.(1992)METHODS:A Companion to Methods in Enzymol.4:151-158に詳細に記載されている。
【0265】
好ましくは、一組のベクターは、その内部の各シストロンのある範囲のTIR強度で生成される。この限定された組は、各鎖の発現レベルの比較、ならびに種々のTIR強度組み合わせ下での所望のタンパク質産物の収率を提供する。TIR強度は、Simmons
et al.米国特許第5,840,523号に詳細に記載されるように、レポーター遺伝子の発現レベルを定量することによって決定され得る。翻訳強度比較に基づいて、所望の個々のTIRが、本出願の発現ベクター構築物において組み合わせられるように選択される。
【0266】
b)原核生物宿主細胞
本出願の抗体の発現に好適な原核生物宿主細胞としては、グラム陰性またはグラム陽性生物等のArchaebacteria及びEubacteriaが挙げられる。有用な細菌の例としては、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。いくつかの実施形態では、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態では、E.coli細胞が、本発明の宿主として使用される。E.coli株の例としては、株W3110(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),pp.1190-1219、ATCC寄託番号27,325)及びその誘導体(遺伝子型W3110 AfhuA(AtonA)ptr3 lac Iq lacL8 AompT A(nmpc-fepE)degP41 kanRを有する株33D3を含む)が挙げられる(米国特許第5,639,635号)。他の株及びそれらの誘導体、例えば、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coli 1776(ATCC 31,537)及びE.coli RV308(ATCC 31,608)も好適である。これらの例は、限定するものではなく、例証するものである。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のうちのいずれかの誘導体の構築方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309-314(1990)に記載されている。一般に、細菌の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮して適切な細菌を選択することが必要である。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410等の周知のプラスミドを使用してレプリコンを提供する場合、E.coli、Serratia、またはSalmonella種が宿主として好適に使用され得る。
【0267】
典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素しか分泌すべきでなく、さらなるプロテアーゼ阻害剤が細胞培養物に組み込まれることが望ましくあり得る。
【0268】
c)タンパク質の産生
宿主細胞は、上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切になるように修飾された従来の栄養素培地で培養される。形質転換とは、DNAが染色体外要素として、または染色体組み込み体によってのいずれかで複製可能になるように、DNAを原核生物宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換がかかる細胞に適切な標準の技術を使用して行われる。一般に、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理が、実質的な細胞壁障壁を含有する細菌細胞に使用される。形質転換の別の方法は、ポリエチレングリコ
ール/DMSOを用いる。使用されるなお別の技術は、電気穿孔法である。
【0269】
本出願の抗体を産生するために使用される原核生物細胞は、当該技術分野で既知であり、かつ選択された宿主細胞の培養に好適な培地で成長する。好適な培地の例としては、必要な栄養補助剤を含むルリアブロス(LB)が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は、発現ベクターを含有する原核生物細胞の成長を選択的に許容するために、発現ベクターの構築に基づいて選択された選択剤も含有する。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞を成長させるための培地に添加される。
【0270】
炭素、窒素、及び無機リン酸塩源に加えて、任意の必要な補助剤も、単独で、または複合窒素源等の別の補助剤もしくは培地との混合物として導入される適切な濃度で含まれ得る。任意に、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール、及びジチオスレイトールから成る群から選択される1つ以上の還元剤を含有し得る。
【0271】
原核生物宿主細胞は、好適な温度で培養される。E.coli成長の場合、例えば、好ましい温度は、約20℃~約39℃の範囲、より好ましくは約25℃~約37℃の範囲、さらにより好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に応じて約5~約9の範囲の任意のpHであり得る。E.coliの場合、pHは、好ましくは約6.8~約7.4、より好ましくは約7.0である。
【0272】
誘導プロモーターが本出願の発現ベクターに使用される場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。本出願の態様では、PhoAプロモーターは、ポリペプチドの転写を制御するために使用される。したがって、形質転換宿主細胞は、誘導のためにリン酸塩制限培地で培養される。好ましくは、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmons et al.,J.Immunol.Methods(2002),263:133-147を参照されたい)。様々な他の誘導因子が、当該技術分野で既知の用いられるベクター構築物に従って使用され得る。
【0273】
本出願の発現抗体は、宿主細胞の周辺質に分泌され、それから回収される。タンパク質回収は、典型的には、一般に浸透圧ショック、超音波処理、または溶解等の手段による微生物の破壊を伴う。細胞が破壊されると、細胞残屑または全細胞は、遠心分離または濾過によって除去され得る。タンパク質は、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製される。あるいは、タンパク質は、培養培地に輸送され、その中で単離され得る。細胞が培養物から除去され得、培養上清が、産生されたタンパク質のさらなる精製のために濾過及び濃縮される。発現ポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットアッセイ等の一般に既知の方法を使用してさらに単離及び特定され得る。
【0274】
あるいは、タンパク質産生は、発酵プロセスによって大量に行われる。種々の大規模供給バッチ発酵手技が、組換えタンパク質の産生に利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000~100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素及び栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分布させるために撹拌インペラーを使用する。小規模発酵とは、一般に、容積がおよそ100リットル以下であり、かつ約1リットル~約100リットルの範囲であり得る発酵槽での発酵を指す。
【0275】
発酵プロセス中、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が所望の密度、例えば、約180~220のOD550になるまで好適な条件下で成長した後に開始され、その段階で、細胞は、初期静止期にある。様々な誘導因子が、当該技術分野で既知の上述の用い
られるベクター構築物に従って使用され得る。細胞は、誘導前により短い期間成長し得る。細胞は、通常、約12~50時間誘導されるが、より長いまたはより短い誘導時間も使用され得る。
【0276】
本出願の抗体の産生収率及び品質を改善するために、種々の発酵条件が修正され得る。例えば、分泌ポリペプチドの適切なアセンブリ及び折り畳みを改善するために、シャペロンタンパク質、例えば、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、及び/もしくはDsbG)またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルシス,トランス-イソメラーゼ)を過剰発現するさらなるベクターを使用して、宿主原核生物細胞を共形質転換することができる。シャペロンタンパク質が細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の適切な折り畳み及び溶解を容易にすることが実証されている。Chen et al.(1999)J Bio Chem 274:19601-19605、Georgiou et al.,米国特許第6,083,715号、Georgiou et al.,米国特許第6,027,888号、Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100-17105、Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106-17113、Arie et al.(2001)Mol.Microbiol.39:199-210。
【0277】
発現異種タンパク質(特にタンパク質分解感受性のもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損したある特定の宿主株が本発明に使用され得る。例えば、宿主細胞株は、既知の細菌プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、及びそれらの組み合わせをコードする遺伝子において遺伝子変異(複数可)をもたらすように修飾され得る。いくつかのE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、例えば、Joly et al.(1998)(上記参照)、Georgiou et al.,米国特許第5,264,365号、Georgiou et al.,米国特許第5,508,192号、Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63-72(1996)に記載されている。
【0278】
タンパク質分解酵素が欠損し、かつ1つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換されたE.coli株が、本出願の抗体をコードする発現系における宿主細胞として使用され得る。
【0279】
d)タンパク質の精製
本明細書における産生された抗体は、さらなるアッセイ及び使用のためにさらに精製されて実質的に同種の調製物を得る。当該技術分野で既知の標準のタンパク質精製方法が用いられ得る。以下の手技:免疫親和性またはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、DEAE等のシリカまたは陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及び例えばSephadex G-75を使用したゲル濾過が、好適な精製手技の例示である。
【0280】
一態様では、固相上に固定化されたタンパク質Aは、本出願のFc領域を含む抗体の免疫親和性精製のために使用される。タンパク質Aは、高親和性で抗体のFc領域に結合するStaphylococcus aureas由来の41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmark et al(1983)J.Immunol.Meth.62:1-13。タンパク質Aが固定化される固相は、好ましくは、ガラスまたはシリカ表面を含むカラム、より好ましくは、制御孔ガラスカラムまたはケイ酸カラムである。いくつかの適用では、カラムは、混入物質の非特異的付着を阻止するためにグリセロール等の試薬でコーティングされている。その後、固相が洗浄されて、固相に非特異的に結合している
混入物質を除去する。最後に、目的とする抗体が溶出により固相から回収される。
【0281】
4.真核生物細胞における組換え産生
真核生物発現の場合、ベクター成分としては、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、及びエンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0282】
a)シグナル配列成分
真核生物宿主で使用するためのベクターは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドをコードする挿入物でもあり得る。選択された異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
【0283】
かかる前駆体領域のDNAは、本出願の抗体をコードするDNAに対するリーディングフレーム内でライゲーションされる。
【0284】
b)複製起点
一般に、複製起点成分は、哺乳類発現ベクターには必要ではない(SV40起点は、典型的には、それが初期プロモーターを含有するという理由のみで使用され得る)。
【0285】
c)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択遺伝子、別名、選択可能なマーカーを含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンへの耐性を与えるか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、または(c)複合培地から入手不可能な必須の栄養素、例えば、BacilliのためのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
【0286】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。異種遺伝子を用いた形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を与え、したがって選択レジメンで生き残るタンパク質を産生する。かかる優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンを使用する。
【0287】
哺乳類細胞に好適な選択可能なマーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等の本出願の抗体をコードする核酸を取り込むための細胞成分の特定を可能にするものである。
【0288】
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、最初に、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で全ての形質転換体を培養することによって特定される。野生型DHFRが用いられるときに適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)である。
【0289】
あるいは、ポリペプチドコードDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)等の別の選択可能なマーカーで形質転換または共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418等の選択可能なマーカーのための選択剤を含有する培地中での細胞成長によって選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0290】
d)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、かつ所望のポリペプチド配列をコードする核酸に操作可能に連結するプロモーターを含有する。実質的に全ての真核生物遺伝子が、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するATに富んだ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70~80塩基上流に見られる別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであり得るCNCAAT領域である。大半の真核生物の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリA尾部の付加のためのシグナルであり得るAATAAA配列である。これらの配列は全て、真核生物発現ベクターに挿入され得る。
【0291】
原核生物宿主との使用に好適な他のプロモーターとしては、phoAプロモーター、-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリ性ホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えば、tacプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するためのプロモーターは、抗体をコードするDNAに操作可能に連結するシャイン・ダルガノ(S.D.)配列も含有する。
【0292】
哺乳類宿主細胞中のベクターからのポリペプチド転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはサルウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから、異種哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御されるが、但し、かかるプロモーターが宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
【0293】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限フラグメントとして好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして好都合に得られる。ウシ乳頭腫ウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主におけるDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号で開示される。この系の修飾は、米国特許第4,601,978号に記載される。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞内のヒトβ-インターフェロンcDNAの発現に関しては、Reyes et al.,Nature 297:598-601(1982)も参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復がプロモーターとして使用され得る。
【0294】
e)エンハンサー要素成分
より高次の真核生物による本出願の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用されるであろう。例としては、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核プロモーターの活性化のための増強要素に関しては、Yaniv,Nature 297:17-18(1982)も参照されたい。エンハンサーは、ポリペプチドコード配列の5’位または3’位でベクターにスプライスされ得るが、好ましくは、プロモ
ーターから5’部位に位置する。
【0295】
f)転写終結成分
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクターは、転写終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有するであろう。かかる配列は、一般的には、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域、時折、3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、ポリペプチドコードmRNAの非翻訳部分内のポリアデニル化フラグメントとして転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結構成成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びそれらで開示される発現ベクターを参照されたい。
【0296】
g)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書におけるベクター中のDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞としては、脊椎動物宿主細胞を含む本明細書に記載のより高次の真核生物細胞が挙げられる。培養物(組織培養物)中での脊椎動物細胞の繁殖は、日常的な手技になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓株(293細胞または懸濁培養物中での成長のためにサブクローン化された293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))、MRC5細胞、FS4細胞、及びヒト肝臓癌株(Hep G2)である。
【0297】
宿主細胞は、抗体産生のための上述の発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切になるように修飾された従来の栄養素培地中で培養される。
【0298】
h)宿主細胞の培養
本出願の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)等の市販されている培地は、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、もしくは同第5,122,469号、WO90/03430、WO87/00195、または米国特許再発行第30,985号に記載される培地のいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれにも、必要に応じて、ホルモン及び/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HE
PESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量要素(マイクロモルの範囲の最小濃度で通常存在する無機化合物と定義される)、及びグルコースまたは同等のエネルギー源が補充され得る。任意の他の必要な補充物も、当業者には既知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞とともにこれまでに使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
【0299】
i)タンパク質の精製
組換え技術を使用する際、抗体は、細胞内、周辺腔内で産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、微粒子残屑(宿主細胞または溶解フラグメントのいずれか)が、例えば、遠心分離または限外濾過により除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、E.coliの細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載する。簡潔には、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分間にわたって解凍される。細胞残屑は、遠心分離によって除去され得る。抗体が培地に分泌される場合、かかる発現系の上清は、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して最初に濃縮される。PMSF等のプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために前述のステップのうちのいずれかに含まれ得、抗生物質は、外来性混入物質の成長を阻止するために含まれ得る。
【0300】
細胞から調製されたタンパク質組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技法である。親和性リガンドとしてのタンパク質Aの好適性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。タンパク質Aを使用して、1つ、2つ、または4つの重鎖を含有するヒト免疫グロブリンに基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプ及びヒト3に推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合する基質は、ほとんどの場合アガロースであるが、他の基質も利用可能である。制御細孔ガラスまたはポリ(スチレン-ジビニル)ベンゼン等の機械的に安定した基質は、アガロースで達成され得るものよりも速い流速及び短いプロセシング時間を可能にする。抗体がCH3 ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラム上での分画、エタノール沈降、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)上でのヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈降等のタンパク質精製のための他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0301】
任意の予備精製ステップ(複数可)後、目的とする抗体及び汚染物質を含む混合物が、約2.5~4.5のpHの溶出緩衝液を使用して、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供され得、好ましくは、低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で行われ得る。
【0302】
イムノコンジュゲート
いくつかの実施形態では、本出願は、化学療法剤もしくは薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、また
はそのフラグメント)、または放射性同位体等の1つ以上の細胞毒性薬にコンジュゲートした本明細書に記載の抗体(単一ドメイン抗体等)のうちのいずれかを含むイムノコンジュゲートも提供する。
【0303】
いくつかの実施形態では、イムノコンジュゲートは、抗体が、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第EP0425235 B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)等のオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、及び同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシン等のアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic & Med.Chem.Letters 16:358-362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.& Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセル等のタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない1つ以上の薬物にコンジュゲートする抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0304】
いくつかの実施形態では、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない酵素的に活性な毒素またはそのフラグメントにコンジュゲートした本明細書に記載の抗体を含む。
【0305】
いくつかの実施形態では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートして放射性コンジュゲートを形成する本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体が、放射性コンジュゲートの産生のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識、例えば、この場合もやはりヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
【0306】
抗体及び細胞毒性剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジル
ジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)等の様々な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
【0307】
本明細書のイムヌオコンジュゲート(immunuoconjugate)またはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびに市販される(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)SVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むが、これらに限定されない、架橋剤試薬で調製されたかかるコンジュゲートを明白に企図するが、これらに限定されない。
【0308】
診断及び検出のための方法及び組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体(単一ドメイン抗体等)のうちのいずれも、生体試料中の対応する抗原(CD19、CD20、BCMA、またはCD38等)の存在の検出に有用である。「検出すること」という用語は、本明細書で使用されるとき、定量または定性検出を包含する。ある特定の実施形態では、生体試料は、血液、血清、または生体起源の他の液体試料である。いくつかの実施形態では、生体試料は、細胞または組織を含む。
【0309】
いくつかの実施形態では、診断または検出方法に使用するための抗CD19抗体(本明細書に記載の抗CD19単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つ等)が提供される。さらなる態様では、生体試料中のCD19の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、生体試料中のCD19タンパク質の存在を検出することを含む。ある特定の実施形態では、CD19は、ヒトCD19である。ある特定の実施形態では、本方法は、抗CD19抗体のCD19への結合を許容する条件下で生体試料を本明細書に記載の抗CD19抗体と接触させることと、複合体が抗CD19抗体とCD19との間に形成されたかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、抗CD19抗体での治療に適格な対象を選択するために使用され、例えば、CD19は、患者の選択のためのバイオマーカーである。
【0310】
いくつかの実施形態では、診断または検出方法に使用するための抗CD20抗体(本明
細書に記載の抗CD20単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つ等)が提供される。さらなる態様では、生体試料中のCD20の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、生体試料中のCD20タンパク質の存在を検出することを含む。ある特定の実施形態では、CD20は、ヒトCD20である。ある特定の実施形態では、本方法は、抗CD20抗体のCD20への結合を許容する条件下で生体試料を本明細書に記載の抗CD20抗体と接触させることと、複合体が抗CD20抗体とCD20との間に形成されたかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、抗CD20抗体での治療に適格な対象を選択するために使用され、例えば、CD20は、患者の選択のためのバイオマーカーである。
【0311】
いくつかの実施形態では、診断または検出方法に使用するための抗BCMA抗体(本明細書に記載の抗BCMA単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つ等)が提供される。さらなる態様では、生体試料中のBCMAの存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、生体試料中のBCMAタンパク質の存在を検出することを含む。ある特定の実施形態では、BCMAは、ヒトBCMAである。ある特定の実施形態では、本方法は、抗BCMA抗体のBCMAへの結合を許容する条件下で生体試料を本明細書に記載の抗BCMA抗体と接触させることと、複合体が抗BCMA抗体とBCMAとの間に形成されたかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、抗BCMA抗体での治療に適格な対象を選択するために使用され、例えば、BCMAは、患者の選択のためのバイオマーカーである。
【0312】
いくつかの実施形態では、診断または検出の方法に使用するための抗CD38抗体(本明細書に記載の抗CD38単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つ等)が提供される。さらなる態様では、生体試料中のCD38の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、生体試料中のCD38タンパク質の存在を検出することを含む。ある特定の実施形態では、CD38は、ヒトCD38である。ある特定の実施形態では、本方法は、抗CD38抗体のCD38への結合を許容する条件下で生体試料を本明細書に記載の抗CD38抗体と接触させることと、複合体が抗CD38抗体とCD38との間に形成されたかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、抗CD38抗体での治療に適格な対象を選択するために使用され、例えば、CD38は、患者の選択のためのバイオマーカーである。
【0313】
ある特定の実施形態では、標識抗体(抗CD19、抗CD20、抗BCMA、または抗CD38単一ドメイン抗体等)が提供される。標識としては、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、電子密度の高い標識、化学発光標識、及び放射性標識等)、ならびに間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用により検出される酵素またはリガンド等の部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な標識としては、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、フルオロフォア、例えば、希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えば、蛍ルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ等)とカップリングした複素環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、ビオチン
/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0314】
III.キメラ抗原受容体
本出願の態様は、1つ以上の単一ドメイン抗体(V
HH等)を含む細胞外抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。第II節に記載の単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つが、本明細書に記載のCARで使用され得る。1つ以上のV
HHドメインを含む例示的なCAR(すなわち、V
HHに基づくCAR)が、
図1A~1Dに例証されており、scFvを含む従来のCAR(すなわち、scFvに基づくCAR)と比較されている。当業者であれば、
図1A~1Dの例示的なCARにおけるV
HHドメインが他のsdAbで置換され得ることを認識するであろう。
【0315】
いくつかの実施形態では、(a)抗原(腫瘍抗原等)に特異的に結合する単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CARは、二価または三価等の多価である。いくつかの実施形態では、CARは、二重特異性等の多重特異性である。
【0316】
特異的標的のキメラ抗原受容体
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載の抗CD19、抗CD20、抗BCMA、または抗CD38単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つを含む細胞外抗原結合
ドメインを含むCARを提供する。CARは、単一特異性または多重特異性(二重特異性またはより高次の特異性等)であり得、CARは、一価または多価(二価、三価、またはより高次の価数等)であり得る。例示的な単一特異性キメラ抗原受容体、例示的な配列、構築、及びそれらのベクターのリストが表4に示される。
【0317】
「III.キメラ抗原受容体」節に列記される表4、5、及び6は、以下の略語を使用する。Ex.:例示的な、Vec.:ベクター、AA:CARのアミノ酸配列、NA:CARの核酸配列、SP:シグナルペプチド、細胞外:細胞外抗原結合ドメイン、sdAb:単一ドメイン抗体、TM:膜貫通ドメイン、CO1:共刺激シグナル伝達ドメイン1、CO2:共刺激シグナル伝達ドメイン2、Prim.:一次細胞内シグナル伝達ドメイン。ドメインは、CARポリペプチドのN末端からC末端までのドメインの順序に対応する各行の左から右に列記される。
【0318】
1.CD19 CAR
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19を標的とするCAR(本明細書で「CD19 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、二重特異性等の多重特異性である。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、二価または三価等の多価である。
【0319】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19 CARが提供され、抗CD19 sdAbは、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号240のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号241のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号242のアミノ酸配列を含むFR3、及び/または配列番号243のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、二重特異性等の多重特異性である。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、二価または三価等の多価である。
【0320】
いくつかの実施形態では、配列番号248のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含むCD19 CARが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号248のアミノ酸配列を含むCD19 CARが提供される。配列番号248のアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0321】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCD19 CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号250の核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号250の核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載されるCD19 CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0322】
2.CD20 CAR
いくつかの実施形態では、(a)抗CD20 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD20を標的とするCAR(本明細書で「CD20 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、配列番号249のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、二重特異性等の多重特異性である。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、二価または三価等の多価である。
【0323】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD20 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD20 CARが提供され、抗CD20 sdAbは、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号244のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号245のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号246のアミノ酸配列を含むFR3、及び/または配列番号247のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、一価である。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、配列番号249のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、二重特異性等の多重特異性である。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、二価または三価等の多価である。
【0324】
いくつかの実施形態では、配列番号249のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含むCD20 CARが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号249のアミノ酸配列を含むCD20 CARが提供される。配列番号249のアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0325】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCD20 CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号251の核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号251の核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載されるCD20 CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0326】
3.BCMA CAR
いくつかの実施形態では、(a)抗BCMA sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMAを標的とするCAR(本明細書で「BCMA CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、一価である。
【0327】
いくつかの実施形態では、(a)抗BCMA sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMA CARが提供され、抗BCMA sdAbは、以下:
(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含む
CDR2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(11)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78~88から成る群からのアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、一価である。
【0328】
いくつかの実施形態では、配列番号152~162及び257~259から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含むBCMA CARが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号152~162及び257~259から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むBCMA CARが提供される。配列番号152~162及び257~259から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0329】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるBCMA CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号175~185及び261~263から成る群から選択される核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号175~185及び261~263から成る群から選択される核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載されるBCMA CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0330】
4.CD38 CAR
いくつかの実施形態では、(a)抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD38を標的とするCAR(本明細書で「CD38 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、一価である。
【0331】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD38 CARが提供され、抗CD38 sdAbは、以下:
(1)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3、
(11)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(12)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、配列番号89~100から成る群からのアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、一価である。
【0332】
いくつかの実施形態では、配列番号163~174及び260から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含むCD38 CARが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号163~174及び260から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むCD38 CARが提供される。配列番号163~174及び260から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0333】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCD38 CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号186~197及び264から成る群から選択される核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号186~197及び264から成る群から選択される核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載されるCD38 CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0334】
5.CD22 CAR
いくつかの実施形態では、(a)抗CD22 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD22を標的とするCAR(本明細書で「CD22 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD22 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD22CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、CD22 CARは、一価である。
【表4-1】
【表4-2】
【0335】
多価キメラ抗原受容体
本出願は、単一ドメイン抗体を含む2つ以上(約2、3、4、5、6、またはそれ以上のうちのいずれか1つ等)の抗原結合部位を有する多価CARも提供する。いくつかの実施形態では、多価CARは、単一の抗原を標的とし、単一の抗原に対する結合部位を2つ以上含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、2つ以上の抗原を標的とし、多価C
ARは、少なくとも1つの抗原に対する結合部位を2つ以上含む。同じ抗原に特異的な結合部位は、抗原の同じエピトープに結合し得るか、または抗原の異なるエピトープに結合し得る。同じ抗原に特異的な結合部位は、同じまたは異なる単一ドメイン抗体を含み得る。
【0336】
いくつかの実施形態では、本出願は、(a)抗原(腫瘍抗原等)に特異的に結合する複数(約2、3、4、5、6、またはそれ以上のうちのいずれか1つ等)の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多価(二価、三価、またはより高次の価数等)キメラ抗原受容体を提供する。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、複数のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、多価CARは、二重特異性等の多重特異性である。
【0337】
いくつかの実施形態では、本出願は、(a)抗原(腫瘍抗原等)の第1のエピトープに特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体及び抗原の第2のエピトープに特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多価(二価、三価、またはより高次の価数等)キメラ抗原受容体を提供し、第1のエピトープ及び第2のエピトープが異なる。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、多価CARは、二重特異性等の多重特異性である。
【0338】
本明細書に記載の多価CARは、異なる抗原結合部位による相乗的結合を介する多量体抗原の標的に、または抗原に対する結合親和性または結合力の増強に特に好適であり得る。抗CD19、抗CD20、抗BCMA、または抗CD38抗体等の本明細書に記載の単一ドメイン抗体のうちのいずれも、本明細書に記載の多価CARの細胞外抗原結合ドメインで使用され得る。例示的な単一特異性多価キメラ抗原受容体、例示的な配列、構築、及びそれらのベクターのリストが表5に示される。
【0339】
1.多価BCMA CAR
いくつかの実施形態では、(a)複数(2つ、3つ、またはそれ以上等)の抗BCMA
sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むBCMAを標的とする多価CAR(本明細書で「多価BCMA CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の抗BCMA sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、三価である。抗BCMA sdAbのうちのいずれかを使用して、多価BCMA CARを構築することができる。
【0340】
いくつかの実施形態では、(a)複数(2つ、3つ、またはそれ以上等)の抗BCMA
sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む多価BCMA CARが提供され、抗BCMA sdAbは、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、複数の抗BCMA sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、三価である。
【0341】
いくつかの実施形態では、(a)第1の抗BCMA sdAb及び第2の抗BCMA sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む多価BCMA CARが提供され、第1の抗BCMA sdAb及び第2の抗BCMA sdAbは、BCMA上の異なるエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAbは、第2の抗BCMA sdAbのN末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAbは、第2の抗BCMA sdAbのC末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAb及び第2の抗BCMA sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、三価である。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、第1及び第2の抗BCMA sdAbとは異なるエピトープに特異的に結合する第3の抗BCMA sdAbをさらに含む。抗BCMA sdAbのうちのいずれかを使用して、多価BCMA CARを構築することができる。
【0342】
いくつかの実施形態では、(a)第1の抗BCMA sdAb及び第2の抗BCMA sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む多価BCMA CARが提供され、第1の抗BCMA sdAbは、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、第2の抗BCMA
sdAbは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAbは、配列番号87のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAbは、配列番号80のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAbは、第2の抗BCMA sdAbのN末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAbは、第2の抗BCMA sdAbのC末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMA sdAb及び第2の抗BCMA sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価BCMA CARは、二価である。
【0343】
いくつかの実施形態では、配列番号198~199及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含む多価BCMA CARが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号198~199及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む多価BCMA CARが提供される。
配列番号198~199及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0344】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される多価BCMA CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号202~203及び271~276から成る群から選択される核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号202~203及び271~276から成る群から選択される核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載される多価BCMA CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0345】
2.多価CD38 CAR
いくつかの実施形態では、(a)複数(2つ、3つ、またはそれ以上等)の抗CD38
sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むCD38を標的とする多価CAR(本明細書で「多価CD38 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の抗CD38 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、三価である。抗CD38 sdAbのうちのいずれかを使用して、多価CD38 CARを構築することができる。
【0346】
いくつかの実施形態では、(a)複数の抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む多価CD38 CARが提供され、複数の抗CD38 sdAbは各々、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の抗CD38 sdAbは各々、配列番号93のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、複数の抗CD38 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、三価である。
【0347】
いくつかの実施形態では、(a)第1の抗CD38 sdAb及び第2の抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む多価CD38 CARが提供され、第1の抗CD38 sdAb及び第2の抗CD38 sdAbは、CD38上の異なるエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗CD38 sdAbは、第2の抗CD38 sdAbのN末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1の抗CD38 sdAbは、第2の抗CD38 sdAbのC末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1の抗CD38 sdAb及び第2の抗CD38 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価CD38 CARは、三価である。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、第1及び第2の抗CD38 sdAbとは異なるエピトープに特異的に結合する第3の抗CD38 sdAbをさらに含む。抗CD38 sdAbのうちのいずれかを使用して、多価CD38 CARを構築す
ることができる。
【0348】
いくつかの実施形態では、配列番号200または配列番号201のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%うちのいずれか1つの配列同一性のを有するポリペプチドを含む多価CD38 CARが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号200または配列番号201のアミノ酸配列を含む多価CD38 CARが提供される。配列番号200または配列番号201のアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0349】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される多価CD38 CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号204または配列番号205の核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号204または配列番号205の核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載される多価CD38 CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0350】
3.他の例示的な多価CAR
いくつかの実施形態では、(a)複数(2つ、3つ、またはそれ以上等)の抗CD19
sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むCD19を標的とする多価CAR(本明細書で「多価CD19 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の抗CD19 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CD19 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CD19 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CD19 CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価CD19 CARは、三価である。抗CD19 sdAbのうちのいずれかを使用して、多価CD19 CARを構築することができる。
【0351】
いくつかの実施形態では、(a)複数(2つ、3つ、またはそれ以上等)の抗CD20
sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むCD20を標的とする多価CAR(本明細書で「多価CD20 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の抗CD20 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CD20 CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価CD20 CARは、三価である。抗CD20 sdAbのうちのいずれかを使用して、多価CD20 CARを構築することができる。
【0352】
いくつかの実施形態では、(a)複数(2つ、3つ、またはそれ以上等)の抗CD22
sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むCD22を標的とする多価CAR(本明細書で「多価CD22 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD22 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の抗CD22 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CD22 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CD22 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CD22 CARは、二価である。いくつかの実施形態では、多価CD22 CARは、三価である。
【表5】
【0353】
多重特異性キメラ抗原受容体
本出願は、2つ以上(約2、3、4、5、6、またはそれ以上のうちのいずれか1つ等)の異なる抗原を標的とする多重特異性キメラ抗原受容体をさらに提供する。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、各抗原に対する抗原結合部位を1つ有する。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、少なくとも1つの抗原に対する結合部位を3つ以上有する。各抗原結合部位は、単一ドメイン抗体を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、多重特異性キメラ抗原受容体は、抗原に各々特異的に結合する2つの異なるsdAbを含む細胞外抗原結合ドメインを含む二重特異性CARである。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、抗原に各々特異的に結合する3つの異なるsdAbを含む細胞外抗原結合ドメインを含む三重特異性CARである。
【0354】
いくつかの実施形態では、(a)第1の抗原(第1の腫瘍抗原等)に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及び第2の抗原(第2の腫瘍抗原等)に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(CAR)が提供され、第1の抗原は、第2の抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、第1の抗原及び/または第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0355】
標的とされる所望の抗原に応じて、本出願のCARは、所望の抗原に特異的な適切な単一ドメイン抗体を含むように操作され得る。本明細書に記載の抗CD19、抗CD20、抗BCMA、または抗CD38抗体のうちのいずれか1つ以上が、本出願のCARにおける細胞外抗原結合ドメインで使用され得る。単一ドメイン抗体は、任意の好適な順序で配置され得る。例えば、第1の単一ドメイン抗体は、第2の単一ドメイン抗体のN末端また
はC末端で融合される。好適なペプチドリンカーが異なる単一ドメイン抗体間に置かれて、単一ドメイン抗体間の立体障害を回避することができる。例示的な二重特異性キメラ抗原受容体、例示的な配列、構築、及びそれらのベクターのリストが表6に示される。
【0356】
1.BCMA×CD38 CAR
いくつかの実施形態では、本出願のCARは、BCMA及びCD38を同時に標的とする二重特異性CARである。例えば、BCMA及びCD38は、多発性骨髄腫細胞で発現する抗原を標的とするための候補として使用され得る。
【0357】
いくつかの実施形態では、(a)BCMAに特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及びCD38に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMA及びCD38を標的とする多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(本明細書で「BCMA×CD38 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0358】
いくつかの実施形態では、(a)抗BCMA単一ドメイン抗体及び抗CD38単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMA及びCD38を標的とする多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(本明細書で「BCMA×CD38 CAR」とも称される)が提供され、抗BCMA単一ドメイン抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、抗CD38抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAb及び/または抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実
施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、配列番号93のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAb及び抗CD38 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、抗CD38 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、第1の抗BCMAは、抗CD38 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。
【0359】
いくつかの実施形態では、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、抗CD38単一ドメイン抗体、ペプチドリンカー、抗BCMA単一ドメイン抗体、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むBCMA×CD38 CARが提供され、抗BCMA単一ドメイン抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、抗CD38抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号207~211から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含むBCMA×CD38 CAR。いくつかの実施形態では、配列番号207~211から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むBCMA×CD38 CARが提供される。配列番号207~211から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0360】
いくつかの実施形態では、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、抗BCMA単一ドメイン抗体、ペプチドリンカー、抗CD38単一ドメイン抗体、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むBCMA×CD38 CARが提供され、抗BCMA単一ドメイン抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番
号29のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、抗CD38抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号212~216から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含むBCMA×CD38 CAR。いくつかの実施形態では、配列番号212~216から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むBCMA×CD38 CARが提供される。配列番号212~216から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0361】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるBCMA×CD38 CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号218~227から成る群から選択される核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号218~227から成る群から選択される核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載されるBCMA×CD38 CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0362】
2.CD19×CD20 CAR
いくつかの実施形態では、CD19及びCD20等のB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原の候補である。これらの抗原のうちのいくつかがモノクローナル抗体を用いた受動免疫療法の標的として使用されているが、わずかな成功しか収めていない。いくつかの実施形態では、本出願のCARは、CD19及びCD20を同時に標的とする二重特異性CARである。
【0363】
いくつかの実施形態では、(a)CD19に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及びCD20に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19及びCD20を標的とする多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(本明細書で「CD19×CD20 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0364】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19単一ドメイン抗体及び抗CD20単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19及びCD20を標的とする多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(本明細書で「CD19×CD20 CAR」とも称される)が提供され、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、抗CD20抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び/または抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び抗CD20 sdAbは、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD20 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、第1の抗CD19は、抗CD20 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号146のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。
【0365】
いくつかの実施形態では、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、抗CD
19単一ドメイン抗体、ペプチドリンカー、抗CD20単一ドメイン抗体、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含むCD19×CD20 CARが提供され、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、抗CD20抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号146のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号206のアミノ酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有するポリペプチドを含むCD19×CD20 CAR。いくつかの実施形態では、配列番号206のアミノ酸配列を含むCD19×CD20 CARが提供される。配列番号206のアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供される。
【0366】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCD19×CD20 CARのうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号217の核酸配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちのいずれか1つの配列同一性を有する単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号217の核酸配列を含む単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、RNAである。いくつかの実施形態では、上に記載されるCD19×CD20 CARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0367】
現在、CD19を標的とする免疫療法の顕著な結果が臨床試験で確認されている。短期ALL治療のCD19 CAR-T細胞に基づく臨床試験は、約90%の完全寛解有効性を達成することができる。しかしながら、患者のおよそ10%が数ヶ月の治療後に再発したことが見出された。主な理由は、CD19がB細胞の形質細胞への成熟中に損失され、残りの腫瘍細胞がCD19抗原損失エスケープ変異形をもたらしたことであった。本明細書に記載のCD19×CD20 CARは、CD19及びCD20腫瘍表面抗原を同時に標的することができ、これにより、全身のT細胞抗腫瘍活性が増強され、CAR治療後に白血病の少なくとも30%の再発を引き起こした標的エスケープ現象が低減され得る。
【0368】
3.他の例示的な多重特異性CAR
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19単一ドメイン抗体及び抗CD22単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19及びCD22を標的とする多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(本明細書で「CD19×CD22 CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び/または抗CD22 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD22単一ドメイン抗体及び抗CD22単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD22 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD22 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15
、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×CD22 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD22 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0369】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19単一ドメイン抗体及び抗BCMA単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19及びBCMAを標的とする多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(本明細書で「CD19×BCMA CAR」とも称される)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び/または抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体及び抗BCMA単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗BCMA sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗BCMA sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【表6】
【0370】
細胞外抗原結合ドメイン
本明細書に記載のCARの細胞外抗原結合ドメインは、1つ以上(1、2、3、4、5
、6、またはそれ以上のうちのいずれか1つ等)の単一ドメイン抗体を含む。単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに直接融合され得る。
【0371】
1.単一ドメイン抗体
本出願のCARは、1つ以上の単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインを含む。sdAbは、同じまたは異なる起源のものであり得、同じまたは異なるサイズのものであり得る。例示的なsdAbとしては、重鎖のみ抗体由来の重鎖可変ドメイン(例えば、VHHまたはVNAR)、軽鎖を天然に欠いている結合分子、従来の4鎖抗体に由来する単一ドメイン(VHまたはVL等)、ヒト化重鎖のみ抗体、ヒト重鎖セグメントを発現させるトランスジェニックマウスまたはラットによって産生されるヒト単一ドメイン抗体、及び抗体に由来するもの以外の操作されたドメイン及び単一ドメインスキャフォールドが挙げられるが、これらに限定されない。本出願の第II節に記載の単一ドメイン抗体を含む、当該技術分野で既知のまたは発明人によって開発された任意のsdAbを使用して、本明細書に記載のCARを構築することができる。sdAbは、マウス、ラット、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤツメウナギ、魚、サメ、ヤギ、ウサギ、及びウシを含むが、これらに限定されない任意の種に由来し得る。本明細書で企図される単一ドメイン抗体は、ラクダ科及びサメ以外の種由来の天然に存在する単一ドメイン抗体分子も含む。
【0372】
いくつかの実施形態では、sdAbは、軽鎖を欠いている重鎖抗体(本明細書で「重鎖のみ抗体」とも称される)として既知の天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子に由来する。かかる単一ドメイン分子は、例えば,WO94/04678及びHamers-Casterman,C.et al.(1993)Nature 363:446-448に開示されている。明確化のために、軽鎖を天然に欠いている重鎖分子に由来する可変ドメインは、それを4鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するためにVHHとして本明細書で既知である。かかるVHH分子は、ラクダ科種、例えば、ラクダ、ラマ、ビクーナ、ヒトコブラクダ、アルパカ、及びグアナコで産生される抗体に由来し得る。ラクダ科以外の他の種が、軽鎖を天然に欠いている重鎖分子を産生することができ、かかるVHHは、本出願の範囲内である。
【0373】
ラクダ科由来のVHH分子は、IgG分子よりも約10倍小さい。それらは、単一ポリペプチドであり、非常に安定しており、極度のpH及び温度条件に耐性を示すことができる。さらに、それらは、プロテアーゼ作用に耐性を示すことができ、従来の4鎖抗体には当てはまらない。さらに、VHHのインビトロ発現は、高収率の適切に折り畳まれた機能的VHHをもたらす。加えて、ラクダ科で生成された抗体は、抗体ライブラリの使用により、またはラクダ科以外の哺乳動物の免疫化により、インビトロで生成された抗体によって認識されるエピトープ以外のエピトープを認識することができる(例えば、WO9749805を参照されたい)。したがって、1つ以上のVHHドメインを含む多重特異性または多価CARは、従来の4鎖抗体に由来する抗原結合フラグメントを含む多重特異性または多価CARよりも効率的に標的と相互作用することができる。VHHが空洞または溝等の「異常な」エピトープに結合することで知られているため、かかるVHHを含むCARの親和性は、従来の多重特異性ポリペプチドよりも治療的治療に好適であり得る。
【0374】
いくつかの実施形態では、sdAbは、軟骨魚に見られる免疫グロブリンの可変領域に由来する。例えば、sdAbは、サメ血清に見られる新規抗原受容体(NAR)として既知の免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。NARの可変領域(「IgNAR」)に由来する単一ドメイン分子を産生する方法は、WO03/014161及びStreltsov(2005)Protein Sci.14:2901-2909に記載されている。
【0375】
いくつかの実施形態では、sdAbは、組換え、CDRグラフト、ヒト化、ラクダ化、
脱免疫化、及び/またはインビトロ生成された(例えば、ファージディスプレイによって選択された)ものである。いくつかの実施形態では、フレームワーク領域のアミノ酸配列は、フレームワーク領域内の特定のアミノ酸残基の「ラクダ化」によって改変され得る。ラクダ化は、従来の4鎖抗体由来の(天然に存在する)VHドメインのアミノ酸配列内の1つ以上のアミノ酸残基の、重鎖抗体のVHHドメイン内の対応する位置(複数可)で生じるアミノ酸残基のうちの1つ以上による置き換えまたは置換を指す。これは、例えば、本明細書におけるさらなる記述に基づいて当業者に明らかになる本来既知の様態において行われ得る。かかる「ラクダ化」置換は、好ましくは、VH-VL界面を形成し、かつ/またはその界面に存在するアミノ酸位置に、かつ/または本明細書に定義されるいわゆるラクダ科特徴残基に挿入される(例えば、WO94/04678、Davies and
Riechmann FEBS Letters 339:285-290,1994、Davies and Riechmann Protein Engineering 9(6):531-537,1996、Riechmann J.Mol.Biol.259:957-969,1996、及びRiechmann and Muyldermans J.Immunol.Meth.231:25-38,1999を参照されたい)。
【0376】
いくつかの実施形態では、sdAbは、ヒト重鎖セグメントを発現させるトランスジェニックマウスまたはラットによって産生されるヒト単一ドメイン抗体である。例えば、US20090307787A1、米国特許第8,754,287号、US20150289489A1、US20100122358A1、及びWO2004049794を参照されたい。いくつかの実施形態では、sdAbは、親和性成熟である。
【0377】
いくつかの実施形態では、特定の抗原または標的に対する天然に存在するVHHドメインは、ラクダ科VHH配列の(天然または免疫)ライブラリから得られ得る。かかる方法は、本来既知の1つ以上のスクリーニング技術を使用した、前記抗原または標的、または少なくとも1つの部分、フラグメント、抗原決定基、またはそのエピトープを使用するかかるライブラリのスクリーニングを伴っても伴わなくてもよい。かかるライブラリ及び技術は、例えば、WO99/37681、WO01/90190、WO03/025020、及びWO03/035694に記載されている。あるいは、例えば、WO00/43507に記載のランダム変異誘発及び/またはCDRシャッフリング等の技術により(天然または免疫)VHHライブラリから得られるVHHライブラリ等の(天然または免疫)VHHライブラリに由来する改善された合成または半合成ライブラリが使用され得る。
【0378】
いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体は、従来の4鎖抗体から生成される。例えば、EP 0 368 684、Ward et al.(Nature 1989 Oct.12;341(6242):544-6)、Holt et al.,Trends Biotechnol.,2003、21(11):484-490、WO06/030220、及びWO06/003388を参照されたい。
【0379】
2.抗原
本出願のCARによって標的とされる抗原(複数可)は、細胞表面分子である。単一ドメイン抗体は、特殊な病状に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとしての役割を果たす抗原を認識するように選択され得る。いくつかの実施形態では、抗原(第1の抗原及び/または第2の抗原等)は、腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、2つ以上の腫瘍抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、B細胞悪性腫瘍に関連する。腫瘍は、免疫応答、具体的には、T細胞媒介免疫応答に対する標的抗原としての機能を果たすことができるいくつかのタンパク質を発現する。CARによって標的とされる抗原は、単一の疾患細胞上の抗原または各々が疾患に寄与する異なる細胞上で発現する抗原であり得る。CARによって標的とされる抗原は、疾患に直接または間
接的に関与し得る。
【0380】
腫瘍抗原は、免疫応答、具体的には、T細胞媒介免疫応答を誘発することができる腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明の標的とされた抗原の選択は、治療される特定の種類の癌に依存する。例示的な腫瘍抗原としては、例えば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-la、p53、プロステイン、PSMA、HER2/neu、スルビビン及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、ならびにメソテリンが挙げられる。
【0381】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、悪性腫瘍に関連する1つ以上の抗原癌エピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃に対する標的抗原としての機能を果たすことができるいくつかのタンパク質を発現する。これらの分子としては、組織特異的抗原、例えば、黒色腫におけるMART-1、チロシナーゼ、及びgp100、ならびに前立腺癌における前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)及び前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の標的分子は、癌遺伝子HER2/Neu/ErbB-2等の形質転換関連分子の群に属する。標的抗原のさらに別の群は、癌胎児性抗原(CEA)等の癌胎児抗原である。B細胞リンパ腫において、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは、個々の腫瘍に特有の真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20、及びCD37等のB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原の他の候補である。
【0382】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍特異的抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)である。TSAは、腫瘍細胞に特有であり、体内の他の細胞に生じない。TAA関連抗原は、腫瘍細胞に特有ではなく、代わりに、抗原に対する免疫学的寛容の状態を誘導することができない条件下で正常細胞でも発現する。腫瘍上での抗原の発現は、免疫系が抗原に応答することを可能にする条件下で生じ得る。TAAは、免疫系が未熟であり、応答することができない場合に胎児発育中に正常細胞で発現する抗原であり得るか、またはそれらは、通常非常に低レベルで正常細胞上に存在するが、はるかにより高いレベルで腫瘍細胞で発現する抗原であり得る。
【0383】
TSAまたはTAA抗原の非限定的な例としては、以下:分化抗原、例えば、MART-1/MelanA(MART-I)、gp 100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、及び腫瘍特異的多系列抗原、例えば、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、pl5;過剰発現胚抗原、例えば、CEA;過剰発現癌遺伝子及び変異腫瘍サプレッサー遺伝子、例えば、p53、Ras、HER2/neu;染色体転座に起因する特有の腫瘍抗原、例えば、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、ならびにウイルス抗原、例えば、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVA及びヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原E6及びE7が挙げられる。他の大きいタンパク質に基づく抗原としては、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、pl85erbB2、pl80erbB-3、c-met、nm-23HI、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO- 1、RCAS 1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\サイクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、及びTPSが挙げられる。
【0384】
いくつかの実施形態では、抗原(第1の抗原及び/または第2の抗原等)は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。
【0385】
3.ペプチドリンカー
本明細書に記載の多重特異性または多価CARにおける種々の単一ドメイン抗体は、ペプチドリンカーを介して互い融合される。いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体は、いずれのペプチドリンカーもなしで互いに直接融合される。異なる単一ドメイン抗体を連結するペプチドリンカーは、同じであってもよく、または異なってもよい。CARの異なるドメインも、ペプチドリンカーを介して互いに融合され得る。
【0386】
CARにおける各ペプチドリンカーは、単一ドメイン抗体及び/または種々のドメインの構造的及び/または機能的特徴に応じて同じまたは異なる長さ及び/または配列を有し得る。各ペプチドリンカーは、独立して選択及び最適化され得る。CARで使用されるペプチドリンカー(複数可)の長さ、可撓度、及び/または他の特性は、1つ以上の特定の抗原またはエピトープに対する親和性、特異性、または結合力を含むが、これらに限定されない特性に何らかの影響を及ぼし得る。例えば、より長いペプチドリンカーは、2つの隣接するドメインが互いに立体的に妨害しないことを確実にするために選択され得る。例えば、多量体抗原に対して指向された単一ドメイン抗体を含む本出願の多価または多重特異性CARにおいて、ペプチドリンカーの長さ及び可撓性は、好ましくは、多価CARにおける各単一ドメイン抗体が多量体のサブユニットの各々上の抗原決定基に結合することを可能にするようなものである。いくつかの実施形態では、短いペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に配置され得る。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、隣接するドメインが互いに対して自由に移動することができるように、可撓性残基(グリシン及びセリン等)を含む。例えば、グリシン-セリンダブレットは、好適なペプチドリンカーであり得る。
【0387】
ペプチドリンカーは、任意の好適な長さのものであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、またはそれ以上のうちのいずれかのアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約100、75、50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5以下、またはそれ以下のうちのいずれかのアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーの長さは、約1アミノ酸~約10アミノ酸、約1アミノ酸~約20アミノ酸、約1アミノ酸~約30アミノ酸、約5アミノ酸~約15アミノ酸、約10アミノ酸~約25アミノ酸、約5アミノ酸~約30アミノ酸、約10アミノ酸~約30アミノ酸長、約30アミノ酸~約50アミノ酸、約50アミノ酸~約100アミノ酸、または約1アミノ酸~約100アミノ酸のうちのいずれかである。
【0388】
ペプチドリンカーは、天然に存在する配列、または天然に存在しない配列を有し得る。例えば、重鎖のみ抗体のヒンジ領域に由来する配列は、リンカーとして使用され得る。例
えば、WO1996/34103を参照されたい。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、可撓性リンカーである。例示的な可撓性リンカーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGS)n、及び(GGGGS)nを含み、式中、nは、少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当該技術分野で既知の他の可撓性リンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGS(配列番号144)、(GGGGS)2(配列番号145)、(GGGS)4(配列番号146)、GGGGSGGGGSGGGGGGSGSGGGGS(配列番号147)、GGGGSGGGGSGGGGGGSGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号148)、(GGGGS)3(配列番号149)、(GGGGS)4(配列番号150)、または(GGGGS)3(配列番号151)を含む。
【0389】
膜貫通ドメイン
本出願のCARは、細胞外抗原結合ドメインに直接または間接的に融合され得る膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。本明細書で使用されるとき、「膜貫通ドメイン」とは、細胞膜、好ましくは、真核生物細胞膜内で熱力学的に安定している任意のタンパク質構造を指す。本明細書に記載のCARでの使用に適合性のある膜貫通ドメインは、天然に存在するタンパク質から得られ得る。あるいは、それは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメント、例えば、細胞膜内で熱力学的に安定している疎水性タンパク質セグメントであり得る。
【0390】
膜貫通ドメインは、膜貫通ドメインの三次元構造に基づいて分類される。例えば、膜貫通ドメインは、アルファヘリックス、2つ以上のアルファヘリックスの複合体、ベータバレル、または細胞のリン脂質二重層にまたがることができる任意の他の安定した構造を形成し得る。さらに、膜貫通ドメインは、加えて、またはあるいは、膜貫通ドメインが膜を通過する回数及びタンパク質の配向を含む膜貫通ドメイントポロジーに基づいて分類され得る。例えば、単回通過膜タンパク質は、細胞膜を1回横断し、複数回通過膜タンパク質は、細胞膜を少なくとも2回(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、またはそれ以上の回数)横断する。膜タンパク質は、細胞の内外に対するそれらの末端及び膜通過セグメント(複数可)のトポロジーに応じて、I型、II型、またはIII型と定義され得る。I型膜タンパク質は、単一膜にまたがる領域を有し、タンパク質のN末端が細胞の脂質二重層の細胞外側に存在し、タンパク質のC末端が細胞質側に存在するように配向される。II型膜タンパク質も単一膜にまたがる領域を有するが、タンパク質のC末端が細胞の脂質二重層の細胞外側に存在し、タンパク質のN末端が細胞質側に存在するように配向される。III型膜タンパク質は、複数膜にまたがるセグメントを有し、膜貫通セグメントの数ならびにN末端及びC末端の位置に基づいてさらに下位分類され得る。
【0391】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARの膜貫通ドメインは、I型単回通過膜タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、複数回通過膜タンパク質由来の膜貫通ドメインも、本明細書に記載のCARでの使用に適合性があり得る。複数回通過膜タンパク質は、複合(少なくとも2、3、4、5、6、7、またはそれ以上の)アルファヘリックスまたはベータシート構造を含み得る。好ましくは、複数回通過膜タンパク質のN末端及びC末端は、脂質二重層の反対側に存在し、例えば、タンパク質のN末端は、脂質二重層の細胞質側に存在し、タンパク質のC末端は、細胞外側に存在する。
【0392】
いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、またはゼータ鎖の膜貫通ドメイン、CD28、CD3エプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDl la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDl ld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDl lb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及び/またはNKG2Cから選択される膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される分子に由来する。
【0393】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28に由来する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号133のアミノ酸配列を含むCD28の膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、CD28の膜貫通ドメインは、配列番号135の核酸配列によってコードされる。
【0394】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8αに由来する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号132のアミノ酸配列を含むCD8αの膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、CD8αの膜貫通ドメインは、配列番号134の核酸配列によってコードされる。
【0395】
本明細書に記載のCARで使用するための膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメントの少なくとも一部も含み得る。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないアルファヘリックスまたはベータシートである。いくつかの実施形態では、タンパク質セグメントは、少なくともおよそ20アミノ酸、例えば、少なくとも18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上のアミノ酸である。合成膜貫通ドメインの例は、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第7,052,906B1号及びPCT公開第WO2000/032776A2号にあり、これらの関連開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0396】
膜貫通ドメインは、膜貫通ドメインのC末端側に位置する膜貫通領域及び細胞質領域を含み得る。膜貫通ドメインの細胞質領域は、3つ以上のアミノ酸を含み得、いくつかの実施形態では、脂質二重層内で膜貫通ドメインを配向させる助けとなる。いくつかの実施形態では、1つ以上のシステイン残基が、膜貫通ドメインの膜貫通領域に存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上のシステイン残基が、膜貫通ドメインの細胞質領域に存在する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインの細胞質領域は、正荷電アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインの細胞質領域は、アミノ酸、アルギニン、セリン、及びリジンを含む。
【0397】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインの膜貫通領域は、疎水性アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、人工疎水性配列を含む。例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、及びバリンのトリプレットが、膜貫通ドメインのC末端に存在し得る。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、主に疎水性のアミノ酸残基、例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはバリンを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、疎水性である。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、ポリ-ロイシン-アラニン配列を含む。タンパク質またはタンパク質セグメントのハイドロパシーまたは疎水性もしくは親水性特徴は、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、カイト及びドゥーリトルのハイドロパシー分析によって評定され得る。
【0398】
細胞内シグナル伝達ドメイン
本出願のCARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARを発現する免疫エフェクター細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化の原因である。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊化機能を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。したがって、「細胞質シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを形質導入し、かつ細胞に特殊化機能を行うように指示するタンパク質の一部を指す。通常、全細胞質シグナル伝達ドメインが用いられ得るが、多くの場合、全鎖を使用する必要はない。細胞質シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される程度まで、かかる切断部分は、それがエフェクター機能シグナルを形質導入する限り、インタクトな鎖の代わりに使用され得る。したがって、細胞質シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを形質導入するのに十分な細胞質シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むよう意図されている。
【0399】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、免疫エフェクター細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインから本質的に成る細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「一次細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、刺激様態で作用して免疫エフェクター機能を誘導する細胞質シグナル伝達配列を指す。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフまたはITAMとして既知のシグナル伝達モチーフを含有する。本明細書で使用される「ITAM」とは、一般に多くの免疫細胞で発現するシグナル伝達分子の尾部分に存在する保存されたタンパク質モチーフである。このモチーフは、6~8個のアミノ酸によって分離されたアミノ酸配列YxxL/Iの2つの繰り返しを含み得、式中、各xは独立して、保存されたモチーフYxxL/Ix(6-8)YxxL/Iをもたらす任意のアミノ酸である。シグナル伝達分子内のITAMは、細胞内のシグナル形質導入に必要であり、これは、シグナル伝達分子の活性化後にITAM内のチロシン残基のリン酸化によって少なくとも部分的に媒介される。ITAMは、シグナル伝達経路に関与する他のタンパク質のドッキング部位としての機能も果たし得る。例示的なITAM含有初代細胞質シグナル伝達配列としては、CD3ζ、FcRガンマ(FCER1G)、FcRベータ(FcエプシロンRib)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3エプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが挙げられる。
【0400】
いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインから成る。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、野生型CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、野生型CD3ζの一次細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号140のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、野生型CD3ζの一次細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号142の核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、Q65K等の1つ以上の変異を含むCD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインの機能的変異体である。いくつかの実施形態では、変異体CD3ζの一次細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号141のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、変異体CD3ζの一次細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号143の核酸によってコード
される。
【0401】
共刺激シグナル伝達ドメイン
多くの免疫エフェクター細胞は、細胞増殖、分化、及び生存を促進し、かつ細胞のエフェクター機能を活性化するために、抗原特異的シグナルの刺激に加えて共刺激を必要とする。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。本明細書で使用される「共刺激シグナル伝達ドメイン」という用語は、細胞内のシグナル形質導入を媒介してエフェクター機能等の免疫応答を誘導するタンパク質の少なくとも一部を指す。本明細書に記載のキメラ受容体の共刺激シグナル伝達ドメインは、シグナルを形質導入し、かつ免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、または好酸球によって媒介される応答を調節する共刺激タンパク質由来の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。「共刺激シグナル伝達ドメイン」は、共刺激分子の細胞質部分であり得る。「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それにより、増殖及び生存等であるが、これらに限定されない免疫細胞による共刺激応答を媒介する免疫細胞(T細胞等)上の同族結合パートナーを指す。
【0402】
いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、単一の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上(約2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のうちのいずれか等)の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、同じ共刺激シグナル伝達ドメインのうちの2つ以上、例えば、CD28の共刺激シグナル伝達ドメインの2つのコピーを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載のいずれか2つ以上の共刺激タンパク質等の異なる共刺激タンパク質由来の2つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメイン等)及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン及び一次細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメイン等)は、任意のペプチドリンカーを介して互いに融合される。一次細胞内シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の好適な順序で配置され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインと一次細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメイン等)との間に位置する。複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、相加的または相乗的刺激効果を提供し得る。
【0403】
宿主細胞(例えば、免疫細胞)内の共刺激シグナル伝達ドメインの活性化は、細胞が、サイトカインの産生及び分泌、食作用特性、増殖、分化、生存、ならびに/または細胞毒性を増加または減少するように誘導し得る。任意の共刺激分子の共刺激シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載のCARでの使用に適合性があり得る。共刺激シグナル伝達ドメインのタイプ(複数可)は、エフェクター分子が発現される免疫エフェクター細胞のタイプ(例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、または好酸球)、及び所望の免疫エフェクター機能(例えば、ADCC効果)等の因子に基づいて選択される。CARで使用するための共刺激シグナル伝達ドメインの例は、B7/CD28ファミリーのメンバー(例えば、B7-1/CD80、B7-2/CD86、B7-H1/PD-L1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、B7-H7、BTLA/CD272、CD28、CTLA-4、Gi24/VISTA/B7-H5、ICOS/CD278、PD-1、PD-L2/B7-DC、及びPDCD6)、TNFスーパーファミリーのメンバー(例えば、4-1BB/TNFSF9/CD137、4-1BBリガンド/TNFSF9、BAFF/BLyS/TNFSF13B、BAFF R/TNFRSF13C、CD27/TNFRSF7、CD27リガンド/TNFSF7、CD30/TNFRSF8、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40/TNFS
F5、CD40リガンド/TNFSF5、DR3/TNFRSF25、GITR/TNFRSF18、GITRリガンド/TNFSF18、HVEM/TNFRSF14、LIGHT/TNFSF14、リンホトキシン-アルファ/TNF-ベータ、OX40/TNFRSF4、OX40リガンド/TNFSF4、RELT/TNFRSF19L、TACI/TNFRSF13B、TL1A/TNFSF15、TNF-アルファ、及びTNF RII/TNFRSF1B)、SLAMファミリーのメンバー(例えば、2B4/CD244/SLAMF4、BLAME/SLAMF8、CD2、CD2F-10/SLAMF9、CD48/SLAMF2、CD58/LFA-3、CD84/SLAMF5、CD229/SLAMF3、CRACC/SLAMF7、NTB-A/SLAMF6、及びSLAM/CD150)、ならびに任意の他の共刺激分子、例えば、CD2、CD7、CD53、CD82/Kai-1、CD90/Thy1、CD96、CD160、CD200、CD300a/LMIR1、HLAクラスI、HLA-DR、Ikaros、インテグリンアルファ4/CD49d、インテグリンアルファ4ベータ1、インテグリンアルファ4ベータ7/LPAM-1、LAG-3、TCL1A、TCL1B、CRTAM、DAP12、デクチン-1/CLEC7A、DPPIV/CD26、EphB6、TIM-1/KIM-1/HAVCR、TIM-4、TSLP、TSLP R、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、及びNKG2Cを含むが、これらに限定されない共刺激タンパク質の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。
【0404】
いくつかの実施形態では、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、CD3、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83に特異的に結合するリガンドから成る群から選択される。
【0405】
いくつかの実施形態では、本出願のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメイン及びCD28の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号136のアミノ酸配列を含むCD28の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD28の共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号138の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号228の核酸配列によってコードされる。
【0406】
いくつかの実施形態では、本出願のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン(すなわち、4-1BB)を含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメイン及びCD137の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号137のアミノ酸配列を含むCD137の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD137の共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号139の核酸配列によってコードされる。
【0407】
いくつかの実施形態では、本出願のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD137の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞質シグナル伝達ドメイン、CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD137の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、N末端からC末端まで、CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号136のアミノ酸配列を含むCD28の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、
CD28の共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号138の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号137のアミノ酸配列を含むCD137の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD137の共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号139の核酸配列によってコードされる。
【0408】
共刺激シグナル伝達ドメインが免疫細胞の免疫応答を調節することができるように、本明細書に記載の共刺激シグナル伝達ドメインのうちのいずれかの変異形も本開示の範囲内である。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、野生型対応物と比較して、最大10個のアミノ酸残基変形(例えば、1、2、3、4、5、または8個)を含む。1つ以上のアミノ酸変形を含むかかる共刺激シグナル伝達ドメインは、変異形と称され得る。共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸残基の変異は、変異を含まない共刺激シグナル伝達ドメインと比較して、シグナル伝達形質導入の増加及び免疫応答の刺激の増強をもたらし得る。共刺激シグナル伝達ドメインのアミノ酸残基の変異は、変異を含まない共刺激シグナル伝達ドメインと比較して、シグナル伝達形質導入の減少及び免疫応答の刺激の低減をもたらし得る。
【0409】
ヒンジ領域
本出願のCARは、細胞外抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメインを含み得る。ヒンジドメインは、一般にタンパク質の2つのドメイン間に見られるアミノ酸セグメントであり、タンパク質の可撓性及びそれらのドメインの一方または両方の互いに対する移動を許容し得る。エフェクター分子の膜貫通ドメインに対する細胞外抗原結合ドメインのかかる可撓性及び移動を提供する任意のアミノ酸配列が使用され得る。
【0410】
ヒンジドメインは、約10~100個のアミノ酸、例えば、約15~75個のアミノ酸、20~50個のアミノ酸、または30~60個のアミノ酸のうちのいずれか1つを含有し得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、または75アミノ酸長のうちのいずれか1つであり得る。
【0411】
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインである。ヒンジドメインを含むための当該技術分野で既知の任意のタンパク質のヒンジドメインは、本明細書に記載のキメラ受容体での使用に適合性がある。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインの少なくとも一部であり、キメラ受容体に可撓性を付与する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αに由来する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αのヒンジドメインの一部、例えば、少なくとも15個(例えば、20、25、30、35、または40個)の連続アミノ酸を含有するCD8αのヒンジドメインのフラグメントである。いくつかの実施形態では、CD8αのヒンジドメインは、配列番号130のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD8αのヒンジドメインは、配列番号131の核酸配列によってコードされる。
【0412】
IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgD抗体等の抗体のヒンジドメインは、本明細書に記載のpH依存性キメラ受容体系での使用にも適合性がある。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体の定常ドメインCH1及びCH2を連結するヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメイン及び抗体の1つ以上の定常領域を含む抗体のものである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメイン及び抗体のCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態で
は、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメインならびに抗体のCH2及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgD抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域ならびにCH2及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域及びCH3定常領域を含む。
【0413】
天然に存在しないペプチドは、本明細書に記載のキメラ受容体のヒンジドメインとしても使用され得る。いくつかの実施形態では、Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間のヒンジドメインは、ペプチドリンカー、例えば、(GxS)nリンカーであり、式中、x及びnは独立して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上を含む3~12の整数であり得る。
【0414】
シグナルペプチド
本出願のCARは、ポリペプチドのN末端にシグナルペプチド(別名、シグナル配列)を含み得る。一般に、シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞内の所望の部位に標的するペプチド配列である。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、エフェクター分子を細胞の分泌経路に標的し、エフェクター分子の脂質二重層への組み込み及び繋留を可能にする。本明細書に記載のCARでの使用に適合性のある天然に存在するタンパク質のシグナル配列または合成の天然に存在しないシグナル配列を含むシグナルペプチドは、当業者に明らかであろう。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、CD8α、GM-CSF受容体α、及びIgG1重鎖から成る群から選択される分子に由来する。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、CD8αに由来する。いくつかの実施形態では、CD8αのシグナルペプチドは、配列番号127のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD8αのシグナルペプチドは、配列番号128または配列番号129の核酸配列によってコードされる。
【0415】
IV.操作された免疫エフェクター細胞
本明細書に記載のCARのうちのいずれか1つを含む宿主細胞(免疫エフェクター細胞等)が本出願にさらに提供される。
【0416】
したがって、いくつかの実施形態では、(a)第1の抗原(第1の腫瘍抗原等)に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及び第2の抗原(第2の腫瘍抗原等)に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供され、第1の抗原は、第2の抗原とは異なる。いくつかの実施形態では、第1の抗原及び/または第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0417】
いくつかの実施形態では、(a)抗BCMA単一ドメイン抗体及び抗CD38単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMA×CD38 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAb及び/または抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体及び抗CD38単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、抗CD38 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、抗CD38 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、配列番号207~216から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0418】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19単一ドメイン抗体及び抗CD20単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19×CD20 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び/または抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体及び抗CD20単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD20 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD20 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、配列番号206のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0419】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19単一ドメイン抗体及び抗CD22単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19×CD22 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び/または抗CD22 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD22単一ドメイン抗体及び抗CD22単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD22 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD22 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×CD22 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD22 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0420】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19単一ドメイン抗体及び抗BCMA単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19×BCMA CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び/または抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体及び抗BCMA単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗BCMA sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗BCMA sdA
bのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0421】
いくつかの実施形態では、(a)抗原(腫瘍抗原等)に特異的に結合する複数の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多価キメラ抗原受容体を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供される。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、複数のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、単一特異性である。いくつかの実施形態では、多価CARは、二重特異性等の多重特異性である。いくつかの実施形態では、多価CARは、配列番号198~201から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0422】
いくつかの実施形態では、(a)抗原(腫瘍抗原等)の第1のエピトープに特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体及び抗原の第2のエピトープに特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多価キメラ抗原受容体を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供され、第1のエピトープ及び第2のエピトープが異なる。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0423】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD19 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチ
ドを含むCD19キメラ抗原受容体を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供され、抗CD19 sdAbは、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、配列番号248のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0424】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD20 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD20 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供され、抗CD20 sdAbは、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号244のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号245のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号246のアミノ酸配列を含むFR3、及び/または配列番号247のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、配列番号249のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0425】
いくつかの実施形態では、(a)抗BCMA sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMA CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供され、抗BCMA sdAbは、以下:
(12)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3、
(13)CDR1配列番号のアミノ酸配列を含む8、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3、
(14)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3、
(15)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3、
(16)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3、
(17)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3、
(18)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3、
(19)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3、
(20)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3、
(21)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(22)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78~88から成る群からのアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、配列番号152~162から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0426】
いくつかの実施形態では、(a)抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD38 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)が提供され、抗BCMA sdAbは、以下:
(13)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3、
(14)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3、
(15)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3、
(16)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3、
(17)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3、
(18)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3、
(19)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3、
(20)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3、
(21)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3、
(22)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3、
(23)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(24)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、配列番号89~100から成る群からのアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、抗CD38 sdAb、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、配列番号163~174から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むCD38 CARが提供される。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0427】
2つ以上の異なるCARを含む(または発現する)操作された免疫エフェクター細胞も提供される。本明細書に記載のCARのうちのいずれか2つ以上が組み合わせで発現される。CARは、異なる抗原を標的とし、それにより相乗的または相加的効果をもたらすことができる。CARの細胞外抗原結合ドメイン内の単一ドメイン抗体は、単一の抗原可変鎖(重鎖等)のみを有し、かかるCAR発現細胞は、2つ以上のscFvに基づくCARを共発現する操作された免疫エフェクター細胞で見られる可変鎖誤対合問題を有しない。2つのV
HHに基づくCARを共発現する例示的な操作された免疫エフェクター細胞が、
図1Eに例証される。当業者であれば、他のsdAbに基づくCARまたは本明細書に記載の他の構造を有するCARが操作された免疫エフェクター細胞でも共発現され得ることを認識するであろう。2つ以上のCARは、同じベクターまたは異なるベクター上でコードされ得る。
【0428】
操作された免疫エフェクター細胞は、1つ以上の治療用タンパク質及び/または免疫調節剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤をさらに発現し得る。例えば、国際特許出願第PCT/CN2016/073489号及び同第PCT/CN2016/087855号を参照されたく、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0429】
ベクター
本出願は、本明細書に記載のCARのうちのいずれか1つをクローニング及び発現するためのベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、哺乳類細胞等の真核生物細胞における複製及び組み込みに好適である。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、及び他のウイルス学及び分子生物学手引き書に記載されている。
【0430】
いくつかのウイルスベースの系が、哺乳類細胞への遺伝子導入のために開発されている
。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系に好都合なプラットフォームを提供する。異種核酸は、ベクターに挿入され、当該技術分野で既知の技術を使用してレトロウイルス粒子内にパッケージングされ得る。その後、組換えウイルスは、単離され、操作された哺乳類細胞にインビトロまたはエクスビボ送達され得る。いくつかのレトロウイルス系が当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターが当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。いくつかの実施形態では、自己不活性化レンチウイルスベクターが使用される。例えば、免疫調節剤(免疫チェックポイント阻害剤等)コード配列を持つ自己不活性化レンチウイルスベクター及び/またはキメラ抗原受容体を持つ自己不活性化レンチウイルスベクターが、当該技術分野で既知のプロトコルとともにパッケージングされ得る。結果として生じるレンチウイルスベクターは、当該技術分野で既知の方法を使用して哺乳類細胞(初代ヒトT細胞等)を形質導入するために使用され得る。レンチウイルス等のレトロウイルスに由来するベクターは、それらが導入遺伝子の長期の安定した組み込み及び子孫細胞におけるその繁殖を可能にするため、長期遺伝子導入を達成するのに好適なツールである。レンチウイルスベクターは、低免疫原性も有し、非増殖細胞を形質導入することができる。
【0431】
いくつかの実施形態では、ベクターは、本明細書に記載のCARをコードする核酸のうちのいずれか1つを含む。核酸は、当該技術分野で既知の任意の分子クローニング法を使用して、例えば、制限エンドヌクレアーゼ部位及び1つ以上の選択可能なマーカーを使用して、ベクターにクローニングされ得る。いくつかの実施形態では、核酸は、プロモーターに操作可能に連結される。様々なプロモーターが哺乳類細胞での遺伝子発現について調査されており、当該技術分野で既知のプロモーターのうちのいずれかが本発明で使用され得る。プロモーターは、構成的プロモーターまたは制御プロモーター、例えば、誘導性プロモーターとして大まかに分類され得る。
【0432】
いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、構成的プロモーターに操作可能に連結される。構成的プロモーターは、異種遺伝子(導入遺伝子とも称される)を宿主細胞で構成的に発現させる。本明細書で企図される例示的な構成的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ヒト伸長因子-1アルファ(hEF1α)、ユビキチンCプロモーター(UbiC)、ホスホグリセロキナーゼプロモーター(PGK)、サルウイルス40初期プロモーター(SV40)、及びCMV初期エンハンサーとカップリングしたトリβ-アクチンプロモーター(CAGG)が挙げられるが、これらに限定されない。導入遺伝子発現の駆動におけるかかる構成的プロモーターの効率は、多数の研究において広く比較されている。例えば、Michael C.Miloneらは、初代ヒトT細胞でのキメラ抗原受容体発現を駆動するためのCMV、hEF1α、UbiC、及びPGKの効率を比較し、hEF1αプロモーターが、最も高いレベルの導入遺伝子発現を誘導しただけでなく、CD4及びCD8 ヒトT細胞で最適に維持されたという結論を下した(Molecular Therapy,17(8):1453-1464(2009))。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、hEF1αプロモーターに操作可能に連結される。
【0433】
いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、誘導性プロモーターに操作可能に連結される。誘導性プロモーターは、制御プロモーターのカテゴリーに属する。誘導性プロモーターは、物理的条件、操作された免疫エフェクター細胞の微環境、または操作された免疫エフェクター細胞、誘導因子(すなわち、誘導剤)、もしくはそれらの組み合わせの生理学的状態等の1つ以上の条件によって誘導され得る。いくつかの実施形態では、誘導条件は、操作された哺乳類細胞及び/または薬学的組成物を受ける対象における内在性遺伝子発現を誘導しない。いくつかの実施形態では、誘導条件は、操作された哺乳類細胞の誘導因子、放射線照射(イオン化放射、光等)、温度(熱等)、レドックス状態、腫
瘍環境、及び活性化状態から成る群から選択される。
【0434】
いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターによりトランスフェクトされた宿主細胞集団からCARを発現する細胞を選択するために選択可能なマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子も含有する。選択可能なマーカーもレポーター遺伝子もいずれも適切な制御配列と隣接して、宿主細胞での発現を可能にし得る。例えば、ベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、及び核酸配列の発現の制御に有用なプロモーターを含有し得る。
【0435】
いくつかの実施形態では、ベクターは、CARをコードする核酸を2つ以上含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、第1のCARをコードする第1の核酸配列及び第2のCARをコードする第2の核酸配列を含む核酸を含み、第1の核酸は、自己開裂ペプチドをコードする第3の核酸配列を介して第2の核酸に操作可能に連結される。いくつかの実施形態では、自己開裂ペプチドは、T2A、P2A、及びF2Aから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、T2Aペプチドは、配列番号254のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、T2Aペプチドは、配列番号255の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号239の核酸配列を含むBCMA CAR及びCD38 CARをコードする単離された核酸が提供される。
【0436】
免疫エフェクター細胞
「免疫エフェクター細胞」は、免疫エフェクター機能を実行することができる免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介する免疫エフェクター細胞の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、好中球、及び好酸球が挙げられる。
【0437】
いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4+/CD8-、CD4-/CD8+、CD4+/CD8+、CD4-/CD8-、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、T細胞は、CARの発現及びCD20+またはCD19+腫瘍細胞等の標的細胞への結合時にIL-2、TFN、及び/またはTNFを産生する。いくつかの実施形態では、CD8+T細胞は、CARの発現及び標的細胞への結合時に抗原特異的標的細胞を溶解する。
【0438】
いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、NK細胞である。他の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、確立された細胞株、例えば、NK-92細胞であり得る。
【0439】
いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、造血幹細胞、多能性幹細胞、iPS、または胚幹細胞等の幹細胞から分化される。
【0440】
操作された免疫エフェクター細胞は、CARをT細胞等の免疫エフェクター細胞に導入することによって調製される。いくつかの実施形態では、CARは、第III節に記載の単離された核酸のうちのいずれか1つまたはベクターのうちのいずれか1つをトランスフェクトすることによって免疫エフェクター細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CARは、タンパク質を細胞膜に挿入しながら、細胞をCELL SQUEEZE(登録商標)等のマイクロ流体系に通過させることによって免疫エフェクター細胞に導入される(例えば、米国特許出願公開第20140287509号を参照されたい)。
【0441】
ベクターまたは単離された核酸を哺乳類細胞に導入する方法が当該技術分野で既知である。記載のベクターは、物理的、化学的、または生物学的方法によって免疫エフェクター細胞に移入される。
【0442】
ベクターを免疫エフェクター細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、微量注入法、電気穿孔法等が挙げられる。ベクター及び/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法が、当該技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New Yorkを参照されたい。いくつかの実施形態では、ベクターは、電気穿孔法によって細胞に導入される。
【0443】
ベクターを免疫エフェクター細胞に導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクターは、遺伝子を哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞に挿入するための最も広く使用されている方法である。
【0444】
ベクターを免疫エフェクター細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質に基づく系が含まれる。インビトロで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0445】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARのうちのいずれかをコードするRNA分子は、従来の方法(例えば、インビトロ転写)によって調製され、その後、mRNA電気穿孔法等の既知の方法によって免疫エフェクター細胞に導入され得る。例えば、Rabinovich et al.,Human Gene Therapy 17:1027-1035を参照されたい。
【0446】
いくつかの実施形態では、形質導入またはトランスフェクトされた免疫エフェクター細胞は、ベクターまたは単離された核酸の導入後にエクスビボで繁殖する。いくつかの実施形態では、形質導入またはトランスフェクトされた免疫エフェクター細胞は、培養されて、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、10日間、12日間、または14日間のうちのいずれかにわたって繁殖する。いくつかの実施形態では、形質導入またはトランスフェクトされた免疫エフェクター細胞は、さらに評価またはスクリーニングされて、操作された哺乳類細胞を選択する。
【0447】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を特定し、かつ制御配列の機能性を評価するために使用され得る。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物もしくは組織に存在せず、またはそれによって発現されず、かつ発現がいくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性により明らかになるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリ性ホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が挙げられ得る(例えば、Ui-Tei et al.FEBS Letters 479:79-82(2000))。好適な発現系が周知であり、既知の技法を使用して調製されるか、または商業的に入手され得る。
【0448】
操作された免疫エフェクター細胞におけるCARをコードする核酸の存在を確認するための他の方法としては、例えば、サザンブロット法及びノーザンブロット法、RT-PCR及びPCR等の当業者に周知の分子生物学的アッセイ、例えば、免疫学的方法(ELISA及びウエスタンブロット法等)による特定のペプチドの存在または不在の検出等の生化学的アッセイが挙げられる。
【0449】
1.T細胞源
T細胞の増殖及び遺伝子修飾前に、T細胞源が個体から得られる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含むいくつかの源から得られ得る。いくつかの実施形態では、当該技術分野で入手可能な任意の数のT細胞株が使用され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離等の当業者に既知の任意の数の技法を使用して対象から収集される血液単位から得られ得る。いくつかの実施形態では、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、リンパ球、例えば、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球細胞、赤血球細胞、及び血小板を含有する。いくつかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞は、洗浄されて血漿画分を除去し、細胞をその後の処理ステップに適切な緩衝液または培地中に置いてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠き得、または全てではないが多くの二価陽イオンを欠き得る。この場合もやはり、驚くべきことに、カルシウムの不在下での初期活性化ステップが、活性化の拡大をもたらす。当業者であれば容易に理解するであろうように、洗浄ステップは、当業者に既知の方法によって、例えば、製造業者の指示に従って半自動「貫流」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞処理装置、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を使用することによって達成され得る。洗浄後、細胞は、様々な生体適合性緩衝液、例えば、Ca2+を含まないPBS、Mg2+を含まないPBS、PlasmaLyte A、または他の生理食塩水溶液(緩衝液の有無にかかわらず)等に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去され、細胞が培養培地に直接再懸濁され得る。
【0450】
いくつかの実施形態では、T細胞は、赤血球細胞を溶解し、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離または向流遠心分離水簸によって単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離される。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及びCD45RO+T細胞等のT細胞の特定の下位集団は、陽性または陰性選択技法によってさらに単離され得る。例えば、いくつかの実施形態では、T細胞は、所望のT細胞の陽性選択に十分な時間にわたる、抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)コンジュゲートビーズ、例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tとのインキュベーションによって単離される。いくつかの実施形態では、時間は、約30分間である。さらなる一実施形態では、時間は、30分間~36時間以上の範囲及びそれらの間の全ての整数値である。さらなる一実施形態では、時間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。いくつかの実施形態では、時間は、10~24時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーション時間は、24時間である。白血病を有する患者からのT細胞の単離の場合、24時間等のより長いインキュベーション時間により、細胞収率が高まり得る。より長いインキュベーション時間を使用して、例えば、腫瘍組織または免疫が低下した個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離する際に、他の細胞型と比較してわずかなT細胞しか存在しない任意の状況下でT細胞を単離することができる。さらに、より長いインキュベーション時間の使用により、CD8+T細胞の捕捉効率が高まり得る。したがって、T細胞がCD3/CD28ビーズに結合することができる時間を短縮もしくは延長することによって、かつ/または(本明細書にさらに記載されるように)ビーズのT細胞に対する比率を増加もしくは減少させることによって、T細胞の下位集団は、培養開始時またはプロセス中の他の時点で賛否について優先的に選択され得る。加えて、ビーズまたは他の表面上の抗CD3及び/または抗CD28抗体の比率を増加または減少させることによって、T細胞の下位集団は、培養開始時または他の所望の時点で賛否について優先的に選択され得る。当業者であれば、複数回の選択ラウンドを使用することもできることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、選択手順を実行し、活性化及び増殖プロセスで「選択されていない」細胞を使用することが望ましい場合がある。「選択されていない」細胞は、さらなる選択ラウンドにも供され得る。
【0451】
陰性選択によるT細胞集団の富化は、陰性選択された細胞に特有の表面マーカーに指向された抗体の組み合わせを用いて達成され得る。1つの方法は、陰性選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに指向されたモノクローナル抗体のカクテルを使用する陰性磁気免疫付着またはフローサイトメトリーによる細胞選別及び/または選択である。例えば、陰性選択によるCD4+細胞を富化するために、モノクローナル抗体のカクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8に対する抗体を含む。ある特定の実施形態では、典型的にはCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、及びFoxP3+を発現する制御T細胞を富化するか、またはそれを陽性選択することが望ましい場合がある。あるいは、ある特定の実施形態では、制御T細胞は、抗C25コンジュゲートビーズまたは他の同様の選択方法によって枯渇される。
【0452】
陽性または陰性選択による所望の細胞集団を単離するために、細胞及び表面(例えば、ビーズ等の粒子)の濃度を変化させることができる。ある特定の実施形態では、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、ビーズ及び細胞が一緒に混合される体積を著しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、20億細胞/mLの濃度が使用される。一実施形態では、10億細胞/mLの濃度が使用される。さらなる一実施形態では、1億細胞/mL超が使用される。さらなる一実施形態では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万細胞/mLの細胞濃度が使用される。なお別の実施形態では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億細胞/mLの細胞濃度が使用される。さらなる実施形態では、1億2500万または1億5000万細胞/mLの濃度が使用され得る。高濃度の使用により、細胞収率、細胞活性化、及び細胞増殖の増加がもたらされ得る。さらに、高細胞濃度の使用により、CD28陰性T細胞等の目的とする標的抗原を弱く発現し得る細胞、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(すなわち、白血病血液、腫瘍組織等)由来の細胞のより効率的な捕捉が可能になる。かかる細胞集団は、治療値を有し得、得ることが望ましいであろう。例えば、高濃度の細胞の使用により、通常より弱いCD28発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択が可能になる。
【0453】
いくつかの実施形態では、より低い濃度の細胞を使用することが望ましい場合がある。T細胞と表面(例えば、ビーズ等の粒子)との混合物を著しく希釈することにより、粒子と細胞との間の相互作用が最小限に抑えられる。これにより、粒子に結合する多量の所望の抗原を発現する細胞が選択される。例えば、CD4+T細胞は、より高いレベルのCD28を発現し、希釈濃度でCD8+T細胞よりも効率的に捕捉される。いくつかの実施形態では、使用される細胞濃度は、5×106/mLである。いくつかの実施形態では、使用される濃度は、約1×105/mL~1×106/mL、及びそれらの間の任意の整数値であり得る。
【0454】
いくつかの実施形態では、細胞は、回転子上で、2~10℃または室温のいずれかで、様々な速度で様々な長さの時間にわたってインキュベートされ得る。
【0455】
刺激用のT細胞は、洗浄ステップ後に凍結することもできる。理論に拘束されることを望まないが、凍結ステップ及びその後の解凍ステップにより、細胞集団における顆粒球を除去し、かつ単球をある程度除去することによってより均一な生成物が提供される。血漿及び血小板を除去する洗浄ステップ後、細胞は、凍結溶液中に懸濁され得る。多くの凍結溶液及びパラメータが当該技術分野で既知であり、この状況において有用である一方で、
1つの方法は、20%DMSO及び8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または10%デキストラン40及び5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン及び7.5%DMSO、または31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40及び5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、及び7.5%DMSOを含有する培養培地、または例えば、Hespan及びPlasmalyte Aを含有する他の好適な細胞凍結培地の使用を伴い、その後、細胞は、1℃/分の速度で-80℃になるまで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相中に貯蔵される。他の制御凍結方法、ならびに-20℃でまたは液体窒素中での直後の非制御凍結方法が使用され得る。
【0456】
いくつかの実施形態では、凍結保存細胞が解凍され、本明細書に記載されるように洗浄され、室温で1時間静置させた後、活性化する。
【0457】
本明細書に記載の細胞の増殖が必要とされ得る前の時点での対象からの血液試料またはアフェレーシス産物の収集も本出願で企図される。したがって、増殖される細胞の源は、必要な任意の時点で収集され、T細胞等の所望の細胞が単離され、本明細書に記載の疾患または状態等のT細胞療法の利益を享受するであろう任意の数の疾患または状態のためのT細胞療法での後の使用のために凍結される。一実施形態では、血液試料またはアフェレーシスは、一般に健常な対象から採取される。ある特定の実施形態では、血液試料またはアフェレーシスは、疾患を発症する危険性があるが、疾患をまだ発症していない一般に健常な対象から採取され、目的とする細胞が単離され、後の使用のために凍結される。ある特定の実施形態では、T細胞が増殖され、凍結され、後に使用され得る。ある特定の実施形態では、試料は、本明細書に記載の特定の疾患の診断直後であるが、任意の治療の前に患者から収集される。さらなる一実施形態では、細胞は、薬剤、例えば、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、及びFK506、抗体、または他の免疫除去剤(immunoablative agent)、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、及び放射線照射での治療を含むが、これらに限定されない任意の数の関連治療法前に対象由来の血液試料またはアフェレーシスから単離される。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリン及びFK506)または成長因子によって誘導されるシグナル伝達に重要なp70S6キナーゼ(ラパマイシン)のいずれかを阻害する(Liu et al.,Cell 66:807-815,1991、Henderson et al.,Immun 73:316-321,1991、Bierer et al.,Curr.Opin.Immun.5:763-773,1993)。さらなる一実施形態では、細胞は、患者のために単離され、骨髄もしくは幹細胞移植、フルダラビン等のいずれかの化学療法薬を使用したT細胞除去療法、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、または抗体、例えば、OKT3もしくはCAMPATHと併せて(例えば、その前に、同時に、またはその後に)後の使用のために凍結される。別の実施形態では、細胞は、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサン等のB細胞除去療法前に単離され、B細胞除去療法前後の治療のために後の使用のために凍結される。
【0458】
いくつかの実施形態では、T細胞は、治療後に患者から直接得られる。この点について、ある特定の癌治療後、具体的には、免疫系を損傷する薬物での治療後、治療直後、患者が通常治療から回復する期間中、得られたT細胞の質が最適であるか、またはエクスビボで増殖するそれらの能力について改善され得ることが観察されている。同様に、本明細書に記載の方法を使用したエクスビボ操作後、これらの細胞は、生着の増強及びインビボ増殖に好ましい状態にあり得る。したがって、この回復期中のT細胞、樹状細胞、または造血系列の他の細胞を含む血液細胞の収集が、本発明の文脈内で企図される。さらに、ある特定の実施形態では、動員(例えば、GM-CSFでの動員)及び前処置(conditioning)レジメンを使用して、特に、療法後の定義された期間中に、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生、及び/または増殖が好ましい状態を対象に作り出すことができる。例証的な細胞型としては、T細胞、B細胞、樹状細胞、及び免疫系の他の細胞が挙げられる。
【0459】
2.T細胞の活性化及び増殖
本明細書に記載のCARでのT細胞の遺伝子修飾の前または後にかかわらず、T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、及び米国特許出願公開第20060121005号に記載の方法を一般に使用して活性化及び増殖され得る。
【0460】
一般に、T細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドに結合した表面との接触によって増殖され得る。具体的には、T細胞集団は、本明細書に記載されるように、例えば、抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または表面上に固定化された抗CD2抗体との接触によって、またはカルシウムイオノフォアと併せたタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によって刺激され得る。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触し得る。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体及び抗CD28抗体。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone,Besancon,France)が挙げられ、当該技術分野で一般に既知の他の方法として使用され得る(Berg et al.,Transplant Proc.30(8):3975-3977,1998、Haanen et al.,J.Exp.Med.190(9):13191328,1999、Garland et al.,J.Immunol Meth.227(1-2):53-63,1999)。
【0461】
いくつかの実施形態では、T細胞の一次刺激シグナル及び共刺激シグナルは、異なるプロトコルによって提供され得る。例えば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液中に存在し得るか、または表面にカップリングし得る。表面にカップリングすると、薬剤は、同じ表面にカップリングし得る(すなわち、「シス」形成)か、または表面を分離し得る(すなわち、「トランス」形成)。あるいは、一方の薬剤が表面にカップリングし、他方の薬剤が溶液中に存在し得る。一実施形態では、共刺激シグナルを提供する薬剤は、細胞表面に結合し、一次活性化シグナルを提供する薬剤は、溶液中に存在するか、または表面に結合する。ある特定の実施形態では、両方の薬剤が溶液中に存在し得る。別の実施形態では、薬剤は、可溶性形態であり得、表面、例えば、Fc受容体もしくは抗体を発現する細胞、または薬剤に結合する他の結合剤に架橋し得る。この点について、例えば、米国特許出願公開第20040101519号及び同第20060034810号(本発明におけるT細胞の活性化及び増殖での使用に企図される人工抗原提示細胞(aAPC))を参照されたい。
【0462】
いくつかの実施形態では、T細胞は、薬剤でコーティングされたビーズと合わせられ、その後、ビーズとT細胞が分離され、次いで、T細胞が培養される。代替の一実施形態では、培養前に、薬剤でコーティングされたビーズと細胞は分離されないが、一緒に培養さ
れる。さらなる一実施形態では、ビーズ及び細胞は、磁力等の力を加えることによって最初に濃縮され、細胞表面マーカーのライゲーションの増加がもたらされ、それにより細胞刺激を誘導する。
【0463】
一例として、細胞表面タンパク質は、抗CD3及び抗CD28が結合する常磁性ビーズ(3×28個のビーズ)をT細胞と接触させることによってライゲーションされ得る。一実施形態では、細胞(例えば、104~109個のT細胞)及びビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ(1:1の比率))が、緩衝液、好ましくは、PBS(カルシウム及びマグネシウム等の二価陽イオンなし)中で合わせられる。この場合もやはり、当業者であれば、任意の細胞濃度が使用され得ることを容易に理解することができる。例えば、標的細胞は、試料中では非常に稀であり、試料の0.01%を構成するか、または全試料(すなわち、100%)が目的とする標的細胞を含む。したがって、任意の細胞数は、本発明の文脈内である。ある特定の実施形態では、粒子及び細胞が一緒に混合される体積を著しく減少させて(すなわち、細胞濃度を増加させて)、細胞と粒子との最大接触を確実にすることが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、約20億細胞/mLの濃度が使用される。別の実施形態では、1億細胞/mL超が使用される。さらなる一実施形態では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万細胞/mLの細胞濃度が使用される。なお別の実施形態では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億細胞/mLの細胞濃度が使用される。さらなる実施形態では、1億2500万または1億5000万細胞/mLの濃度が使用され得る。高濃度の使用により、細胞収率、細胞活性化、及び細胞増殖の増加がもたらされ得る。さらに、高細胞濃度の使用により、CD28陰性T細胞等の目的とする標的抗原を弱く発現し得る細胞のより効率的な捕捉が可能になる。ある特定の実施形態では、かかる細胞集団は、治療値を有し得、得ることが望ましいであろう。例えば、高濃度の細胞の使用により、通常より弱いCD28発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択が可能になる。
【0464】
いくつかの実施形態では、混合物は、数時間(約3時間)~約14日間またはそれらの間の任意の時間単位の整数値にわたって培養され得る。別の実施形態では、混合物は、21日間にわたって培養され得る。本発明の一実施形態では、ビーズ及びT細胞は、約8日間にわたって一緒に培養される。別の実施形態では、ビーズ及びT細胞は、2~3日間にわたって一緒に培養される。T細胞の培養時間が60日間以上になるように、いくつかの刺激サイクルも所望され得る。T細胞培養に適切な条件は、血清(例えば、ウシまたはヒト胎児血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、及びTNF-α、または当業者に既知の細胞成長のための任意の他の添加物を含む増殖及び生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo 15(Lonza))を含む。細胞成長のための他の添加物としては、界面活性剤、プラスマネート、ならびに還元剤、例えば、N-アセチル-システイン及び2-メルカプトエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。培地は、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びビタミンが添加され、無血清であるか、または適切な量の血清(もしくは血漿)または定義された組のホルモン、及び/またはT細胞の成長及び増殖に十分な量のサイトカイン(複数可)を補充しているかのいずれかのRPMI1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、及びX-Vivo 20、Optimizerを含み得る。抗生物質、例えば、ペニシリン及びストレプトマイシンは、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、成長を支援するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)及び大気(例えば、空気+5%CO2)で維持される。様々な刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特徴を呈し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレーシス末梢血単核細胞産物は、細胞毒性またはサプレッサーT細胞集団(TC、CD8)を超えるヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有する。CD3及びCD28受容体の刺激によるT細胞のエクスビボ増殖により、約8~9日目前に主にTH細胞から成るT細胞集団が産生される一方で、約8~9日目後、T細胞集団は、次第により多くのTC細胞集団を含む。したがって、治療目的に応じて、対象にTH細胞から主に成るT細胞集団を注入することが有利であり得る。同様に、抗原特異的TC細胞サブセットが単離された場合、このサブセットをより大きな程度に増殖することが有益であり得る。
【0465】
さらに、CD4及びCD8マーカーに加えて、他の表現型マーカーが、細胞増殖プロセスの過程中に著しく変化するが、主に、再現可能に変化する。したがって、かかる再現性により、特定の目的のために活性化T細胞産物を調整する能力が有効になる。
【0466】
V.薬学的組成物
単一ドメイン抗体(抗CD19、抗CD20、抗BCMA、もしくは抗CD38 sdAb等)のうちのいずれか1つ、または本明細書に記載のCARのうちのいずれか1つを含む操作された免疫エフェクター細胞のうちのいずれか1つと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物が、本出願によってさらに提供される。薬学的組成物は、所望の純度を有する単一ドメイン抗体、または複数の操作された免疫エフェクター細胞を、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって調製され得る。
【0467】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量及び濃度ではレシピエントに非毒性であり、緩衝液、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムを含む抗酸化物質、防腐剤、等張化剤、安定剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);キレート剤、例えば、EDTA及び/または非イオン性界面活性剤を含む。
【0468】
緩衝液は、特に安定性がpH依存性である場合、治療有効性を最適化する範囲内でpHを制御するために使用される。緩衝液は、好ましくは、約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在する。本発明での使用に好適な緩衝剤は、有機酸及び無機酸の両方、ならびにそれらの塩を含む。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。さらに、緩衝液は、ヒスチジン及びトリメチルアミン塩、例えば、トリスを含み得る。
【0469】
防腐剤は、微生物成長を遅延させるために添加され、典型的には、0.2w/v%~1.0w/v%の範囲で存在する。本発明での使用に好適な防腐剤としては、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。
【0470】
時折「安定剤」としても既知の等張化剤は、組成物中の液体の等張性を調整または維持するために存在する。タンパク質及び抗体等の大きい荷電した生体分子とともに使用される場合、それらが、荷電したアミノ酸側鎖群と相互作用し、それにより分子間及び分子内相互作用の可能性を低減するため、それらは、多くの場合、「安定剤」と称される。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1%~25重量%、好ましくは、1~5%の任意の量で存在し得る。好ましい等張化剤としては、多価糖アルコール、好ましくは、三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリト
ール、ソルビトール、及びマンニトールが挙げられる。
【0471】
さらなる賦形剤としては、以下:(1)増量剤、(2)溶解度向上剤、(3)安定剤、及び(4)変性または容器の壁への付着を阻止する薬剤のうちの1つ以上としての機能を果たし得る薬剤が挙げられる。かかる賦形剤としては、多価糖アルコール(上に列挙されるもの);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等;有機糖または糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖、例えば、ラフィノース;ならびに多糖、例えば、デキストリンまたはデキストランが挙げられる。
【0472】
非イオン性界面活性剤または洗剤(別名、「湿潤剤」)は、治療薬の可溶化を助けるために、かつ撹拌によって誘導される凝集から治療用タンパク質を保護するために存在し、それにより、活性治療用タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく製剤が剪断表面応力に曝露されることも可能になる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mL~約1.0mg/mL、好ましくは、約0.07mg/mL~約0.2mg/mLの範囲で存在する。
【0473】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80等)、ポリオキサマー(polyoxamer)(184、188等)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80等)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50、及び60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用され得る陰イオン性洗剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、及びジオクチルスルホン酸ナトリウムを含む。陽イオン性洗剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含む。
【0474】
薬学的組成物がインビボ投与に使用されるために、それらは、滅菌でなければならない。薬学的組成物は、滅菌濾過膜を通す濾過によって滅菌にされる。本明細書の薬学的組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルに入れられる。
【0475】
投与経路は、好適な様態での、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内、もしくは関節内経路による注射もしくは注入、局所投与、吸入、または持続放出もしくは徐放手段による長期にわたる単回もしくは複数回ボーラスまたは注入等の既知の認められている方法に従う。
【0476】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成
形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とL-グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから成る注射用ミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0477】
本明細書に記載の薬学的組成物は、治療される特定の適応症に必要な2つ以上の活性化合物または薬剤、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。あるいは、または加えて、本組成物は、細胞毒性薬、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、または成長阻害剤を含み得る。かかる分子は、意図される目的に有効な量で組み合わせで好適に存在する。
【0478】
活性成分は、例えば、液滴形成技法または界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)、またはマクロエマルジョンにも封入され得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th editionに開示されている。
【0479】
VI.癌の治療方法
本出願はさらに、細胞免疫療法で使用するための方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態では、細胞免疫療法は、血液学的悪性腫瘍及び固形腫瘍を含むが、これらに限定されない癌を治療するためのものである。本明細書に記載の単一ドメイン抗体、キメラ抗原受容体、及び操作された免疫エフェクター細胞のうちのいずれも、癌の治療方法で使用され得る。本明細書に記載のCARは、抗原損失エスケープ変異を有する腫瘍の治療、及び既存の療法への耐性の低減に有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物は、例えば、自己免疫疾患等の単一ドメイン抗体またはCARによって特異的に認識される抗原に関連する他の疾患を治療するために使用され得る。
【0480】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)第1の抗原(第1の腫瘍抗原等)に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及び第2の抗原(第2の腫瘍抗原等)に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多重特異性(二重特異性等)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)(第1の抗原は、第2の抗原とは異なる)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第1の抗原及び/または第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多重特異性CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌、例えば、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。
【0481】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)抗BCMA単一ドメイン抗体及び抗CD38単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMA×CD38 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAb及び/または抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体及び抗CD38単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、抗CD38 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、抗CD38 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA単一ドメイン抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、BCMA×CD38 CARは、配列番号207~216から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、多発性骨髄腫である。
【0482】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)細胞外抗原結合ドメインを含む抗CD19単一ドメイン抗体及び抗CD20単一ドメイン抗体;(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19×CD20 CARと、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、及び/または抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20単一ドメイン抗体及び抗CD20単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD20 sdAbのN末端で融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、抗CD20 sdAbのC末端で融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19単一ドメイン抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD19×CD20 CARは、配列番号206のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌である。いくつかの実施形態では、液体癌は、B細胞リンパ腫である。
【0483】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)抗原(腫瘍抗原等)に特異的に結合する複数の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多価キメラ抗原受容体を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、複数のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、複数の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、各ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多価CARは、配列番号198-201及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌、例えば、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。
【0484】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)抗原(腫瘍抗原等)の第1のエピトープに特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体及び抗原の第2のエピトープに特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む多価キメラ抗原受容体を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)(第1のエピトープ及び第2のエピトープが異なる)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、第1の単一ドメイン抗体及び第2の単一ドメイン抗体は、ペプチド結合またはペプチドリンカーを介して互いに融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約50以下(約35、25、20、15、10、または5以下のうちのいずれか1つ等)のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、多価CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌、例えば、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。
【0485】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)抗CD19 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD19 キメラ抗原受容体を含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)(抗CD19 sdAbは、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARは、配列番号248のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌、例えば、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。
【0486】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)抗CD20 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD20 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)(抗CD20 sdAbは、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号244のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号245のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号246のアミノ酸配列を含むFR3、及び/または配列番号247のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、配列番号249のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD20 CARは、配列番号249のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌、例えば、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。
【0487】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)抗BCMA sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むBCMA CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供され、抗BCMA sdAbは、以下:
(23)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3、
(24)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3、
(25)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3、
(26)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3、
(27)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3、
(28)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3、
(29)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3、
(30)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3、
(31)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3、
(32)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(33)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78~88から成る群からのアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、配列番号152~162から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌、例えば、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。
【0488】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における癌を治療する方法であって、個体に、(1)(a)抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むCD38 CARを含む操作された免疫エフェクター細胞(T細胞等)と、(2)薬学的に許容される担体と、を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供され、抗BCMA sdAbは、以下:
(25)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3、
(26)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3、
(27)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3、
(28)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3、
(29)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3、
(30)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3、
(31)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3、
(32)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3、
(33)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3、
(34)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3、
(35)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(36)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、配列番号89~100から成る群からのアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞(T細胞等)の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメイン(CD8αヒンジドメイン等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチド(CD8αシグナルペプチド等)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28に由来する第1の共刺激シグナル伝達ドメイン、CD137に由来する第2の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζに由来する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD38 CARは、配列番号163~174から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。いくつかの実施形態では、癌は、液体癌、例えば、多発性骨髄腫、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。
【0489】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における疾患(癌等)を治療する方法であって、個体に、抗CD19単一ドメイン抗体及び薬学的に許容される担体を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供され、抗CD19単一ドメイン抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号76のアミノ酸配列を含む。
【0490】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における疾患(癌等)を治療する方法であって、個体に、抗CD19単一ドメイン抗体及び薬学的に許容される担体を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供され、抗CD20単一ドメイン抗体は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含む。
【0491】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における疾患(癌等)を治療する方法であって、個体に、抗BCMA単一ドメイン抗体及び薬学的に許容される担体を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供され、抗BCMA sdAbは、以下:
(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(11)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78~88から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0492】
いくつかの実施形態では、個体(ヒト個体等)における疾患(癌等)を治療する方法であって、個体に、抗CD38単一ドメイン抗体及び薬学的に許容される担体を含む有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供され、抗CD38 sdAbは、以下:配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3、
(1)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(11)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
いくつかの実施形態では、抗CD38 sdAbは、配列番号89~100から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0493】
本明細書に記載の方法は、固形癌及び液体癌の両方を含む種々の癌の治療に好適である。これらの方法は、早期、進行期、及び転移癌を含む全ての病期の癌に適用される。本明細書に記載の方法は、補助状況または新補助状況下で、第1の療法、第2の療法、第3の療法、または当該技術分野で既知の他の種類の癌療法、例えば、化学療法、手術、放射線、遺伝子療法、免疫療法、骨髄移植、幹細胞移植、標的療法、凍結療法、超音波療法、光線力学療法、高周波アブレーション等との併用療法として使用され得る。
【0494】
薬学的組成物の投与は、注入、摂取、輸液、植え込み、または移植を含む任意の好都合な様態で行われ得る。本組成物は、患者に、経動脈、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内、または腹腔内投与され得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、全身投与される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、静脈内注入等の注入によって個体に投与される。免疫療法のための注入技法は、当該技術分野で既知である(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676(1988)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、個体に、皮内または皮下注射によって投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、静脈注射によって投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、腫瘍またはリンパ節に直接注射される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、腫瘍部位に、例えば、腫瘍細胞に直接、または腫瘍細胞を有する組織に局所投与される。
【0495】
多発性骨髄腫(MM)は、不治の侵襲性血漿悪性腫瘍であり、これは、B細胞新形成に分類され、制御不能な方法で骨髄内に増殖し、血液細胞の正常な代謝産生を妨害し、有痛性骨病変を引き起こす(Garfall,A.L.et al.,Discovery Med.2014,17,37)。多発性骨髄腫は、高カルシウム血症、腎不全、貧血症、骨病変、細菌感染、過粘稠、及びアミロイドーシスを臨床的に呈し得る(Robert Z.Orlowski,Cancer Cell.2013,24(3))。研究及び統計によれば、毎年ほぼ86,000名の患者が骨髄腫と診断される一方で、約63,000名の患者が毎年この疾患関連の合併症で死亡する(Becker,2011)。高齢化大衆のため、骨髄腫の症例数が年々増加することが予測される。多くの癌と同様に、多発性骨髄腫の原因は知られておらず、治療法も存在しない。多発性骨髄腫のいくつかの治療は、化学療法または放射線療法、幹細胞移植または骨髄移植、標的療法、または生物学的療法等の他の癌の治療と類似している(George,2014)。抗体に基づく細胞免疫療法が、血液学的悪性腫瘍、具体的には、B細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者に対する実質的な臨床的利益を実証している。多発性骨髄腫の治療に有効な免疫療法薬が必要とされている。
【0496】
本発明の薬学的組成物の投薬量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の使用に応じて異なり得る。適切な投薬量または投与経路の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。動物実験により、ヒト療法に有効な用量を決定するのに信頼できるガイダンスが提供される。有効な用量の種間スケーリングが、Mordenti,J.and Chappell,W.“The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics,”In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobi et al.,Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42-46によって設定された原理に従って行われ得る。異なる製剤が異なる治療及び異なる障害に有効であり、かつ特定の器官または組織を治療するよう意図された投与が別の器官または組織とは異なる様態での送達を必要とし得ることは、本出願の範囲内である。
【0497】
薬学的組成物が本明細書に記載の単一ドメイン抗体のうちのいずれか1つを含むいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、投与経路に応じて、約10ng/個体体重kg/日~最大約100mg/個体体重kg/日以上の投薬量で、例えば、約1mg/kg/日~10mg/kg/日で投与される。特定の投薬量及び送達方法に関するガイダンスが文献に提供されており、例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,344号、または第5,225,212号を参照されたい。
【0498】
薬学的組成物が本明細書に記載の操作された免疫細胞のうちのいずれか1つを含むいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、少なくとも約104、105、106、107、108、または109細胞/個体体重kgのうちのいずれかの投薬量で投与される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、約104~約105、約105~約106、約106~約107、約107~約108、約108~約109、約104~約109、約104~約106、約106~約108、または約105~約107細胞/個体体重kgのうちのいずれかの投薬量で投与される。
【0499】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、単回投与される。いくつかの実施形態では
、薬学的組成物は、複数回(2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上の回数のうちのいずれか等)投与される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、または1年に1回投与される。いくつかの実施形態では、投与間の間隔は、約1週間~2週間、2週間~1ヶ月、2週間~2ヶ月、1ヶ月~2ヶ月、1ヶ月~3ヶ月、3ヶ月~6ヶ月、または6ヶ月~1年のうちのいずれか1つである。特定の患者に最適な投薬量及び治療レジーム(regime)は、患者を疾患の兆候について監視し、適宜に治療を調整することによって、医学分野の技術者によって容易に決定され得る。
【0500】
さらに、投薬量は、1回以上の別個の投与によって、または持続注入によって投与され得る。数日間以上にわたる反復投与の場合、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで治療が継続される。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易に監視される。
【0501】
VII.キット及び製品
本明細書に記載の単一ドメイン抗体、キメラ抗原受容体、または操作された免疫エフェクター細胞のうちのいずれかを含むキット、単位投薬量、及び製品がさらに提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬学的組成物のうちのいずれか1つを含むキットが提供され、好ましくは、その使用に関する指示を提供する。
【0502】
本出願のキットは、好適なパッケージング内に存在する。好適なパッケージングとしては、バイアル、ボトル、瓶、可撓性パッケージング(例えば、密封マイラーまたはプラスチック袋)等が挙げられるが、これらに限定されない。キットは、任意に、緩衝液及び解釈情報等の追加の成分を提供し得る。したがって、本出願は、バイアル(密封バイアル等)、ボトル、瓶、可撓性パッケージング等を含む製品も提供する。
【0503】
製品は、容器及び容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書を含み得る。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の様々な材料から形成され得る。一般に、容器は、本明細書に記載の疾患または障害(癌等)の治療に有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルである)。ラベルまたは添付文書は、組成物が個体における特定の状態の治療のために使用されることを示す。ラベルまたは添付文書は、個体への組成物の投与に関する指示をさらに含む。ラベルは、再構成及び/または使用に関する指示を示し得る。薬学的組成物を保持する容器は、再構成された製剤の繰り返し投与(例えば、2~6回の投与)を可能にする複数回使用バイアルであり得る。添付文書とは、かかる治療薬の適応症、使用、投薬量、投与、禁忌、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含む、治療薬の商業用パッケージに通例含まれる指示を指す。さらに、製品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含み得る。製品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0504】
キットまたは製品は、薬局、例えば、病院薬局及び配合薬局での保管及び使用に十分な量でパッケージングされる、薬学的組成物の複数の単位用量及び使用に関する指示を含み得る。
【0505】
以下の実施例及び例示的な実施形態は、単に本発明の例示となるよう意図されており、それ故に、決して本発明を限定するものと見なされるべきではない。以下の実施例及び詳
細な説明は、限定するものではなく、例証として提供されている。
【0506】
例示的な実施形態
実施形態1.いくつかの実施形態では、(a)第1の抗原に特異的に結合する第1の単一ドメイン抗体(sdAb)及び第2の抗原に特異的に結合する第2の単一ドメイン抗体(sdAb)を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含むキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。
【0507】
実施形態2.実施形態1のいくつかのさらなる実施形態では、第1の抗原は、第2の抗原とは異なる。
【0508】
実施形態3.実施形態2のいくつかのさらなる実施形態では、CARは、多重特異性である。
【0509】
実施形態4.実施形態3のいくつかのさらなる実施形態では、CARは、二重特異性である。
【0510】
実施形態5.実施形態1~4のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのN末端に位置する。
【0511】
実施形態6.実施形態1~4のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbのC末端に位置する。
【0512】
実施形態7.実施形態1~6のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される。
【0513】
実施形態8.実施形態7のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗BCMA sdAbである。
【0514】
実施形態9.実施形態7のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗CD38 sdAbである。
【0515】
実施形態10.実施形態7のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗CD19 sdAbである。
【0516】
実施形態11.実施形態7のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗CD20 sdAbである。
【0517】
実施形態12.実施形態7のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗CD22 sdAbである。
【0518】
実施形態13.実施形態8のいくつかのさらなる実施形態では、CARは、抗BCMA
sdAbの少なくとも2つのコピーを含む細胞外抗原結合ドメインを含む。
【0519】
実施形態14.実施形態9のいくつかのさらなる実施形態では、CARは、抗CD38
sdAbの少なくとも2つのコピーを含む細胞外抗原結合ドメインを含む。
【0520】
実施形態15.実施形態8または実施形態9のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗BCMA sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD38 sdAbである。
【0521】
実施形態16.実施形態8または実施形態10のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗BCMA sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD19 sdAbである。
【0522】
実施形態17.実施形態10または実施形態11のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗CD19 sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD20 sdAbである。
【0523】
実施形態18.実施形態10または実施形態12のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、抗CD19 sdAbであり、第2のsdAbは、抗CD22 sdAbである。
【0524】
実施形態19.実施形態1~14のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、第1の抗原は、第2の抗原と同じである。
【0525】
実施形態20.実施形態19のいくつかのさらなる実施形態では、CARは、二価または三価である。
【0526】
実施形態21.実施形態19または実施形態20のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、同じエピトープに特異的に結合する。
【0527】
実施形態22.実施形態21のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAbは、第2のsdAbと同じである。
【0528】
実施形態23.実施形態19または実施形態20のいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、異なるエピトープに特異的に結合する。
【0529】
実施形態24.実施形態8、13、15、16、及び19~23のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、抗BCMAは、以下:
(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(11)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
【0530】
実施形態25.実施形態24のいくつかのさらなる実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78~88から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0531】
実施形態26.実施形態9、14、15、及び19~23のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、抗CD38 sdAbは、以下:
(1)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3、
(11)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(12)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む。
【0532】
実施形態27.実施形態26のいくつかのさらなる実施形態では、抗CD38 sdAbは、配列番号89~100から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0533】
実施形態28.実施形態10及び16~23のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0534】
実施形態29.実施形態28のいくつかのさらなる実施形態では、抗CD19 sdA
bは、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0535】
実施形態30.実施形態11、17、及び19~23のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0536】
実施形態31.実施形態30のいくつかのさらなる実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0537】
実施形態32.実施形態1~31のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAb及び/または第2のsdAbは、ラクダ科、キメラ、ヒト、またはヒト化である。
【0538】
実施形態33.実施形態1~32のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、ペプチド結合を介して互いに直接融合される。
【0539】
実施形態34.実施形態1~32のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、第1のsdAb及び第2のsdAbは、ペプチドリンカーを介して互いに融合される。
【0540】
実施形態35.実施形態34のいくつかのさらなる実施形態では、ペプチドリンカーは、約50アミノ酸長以下である。
【0541】
実施形態36.実施形態35のいくつかのさらなる実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号144~151から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0542】
実施形態37.いくつかの実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3を含む抗CD19単一ドメイン抗体(sdAb)が提供される。
【0543】
実施形態38.実施形態37のいくつかのさらなる実施形態では、抗CD19 sdAbは、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0544】
実施形態39.いくつかの実施形態では、(a)実施形態37または実施形態38の抗CD19を含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むキメラ抗原受容体が提供される。
【0545】
実施形態40.いくつかの実施形態では、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3を含む抗CD20単一ドメイン抗体(sdAb)が提供される。
【0546】
実施形態41.実施形態40のいくつかのさらなる実施形態では、抗CD20 sdAbは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0547】
実施形態42.いくつかの実施形態では、(a)実施形態40または実施形態41の抗CD20 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むキメラ抗原受容体が提供される。
【0548】
実施形態43.いくつかの実施形態では、以下:
(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(11)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含む抗BCMA単一ドメイン抗体(sdAb)が提供される。
【0549】
実施形態44.実施形態43のいくつかのさらなる実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号78~88から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0550】
実施形態45.いくつかの実施形態では、(a)実施形態43または実施形態44の抗BCMA sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むキメラ抗原受容体が提供される。
【0551】
実施形態46.いくつかの実施形態では、以下:
(1)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むCDR3、
(2)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号65のアミノ酸配列を含むCDR3、
(3)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むCDR3、
(4)配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号67のアミノ酸配列を含むCDR3、
(5)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3、
(6)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR3、
(7)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR3、
(8)配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むCDR3、
(9)配列番号48のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号60のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3、
(10)配列番号49のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR3、
(11)配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号62のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR3、または
(12)配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR3、のうちのいずれか1つを含むCDRを含む抗CD38単一ドメイン抗体(sdAb)が提供される。
【0552】
実施形態47.実施形態46のいくつかのさらなる実施形態では、抗BCMA sdAbは、配列番号89~100から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVHHドメインを含む。
【0553】
実施形態48.いくつかの実施形態では、(a)実施形態46または実施形態47の抗CD38 sdAbを含む細胞外抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むキメラ抗原受容体が提供される。
【0554】
実施形態49.実施形態1~36、39、42、45、及び48のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152及びPD1から成る群から選択される分子に由来する。
【0555】
実施形態50.実施形態49のいくつかのさらなる実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8またはCD28に由来する。
【0556】
実施形態51.実施形態50のいくつかのさらなる実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号132または配列番号133のアミノ酸配列を含む。
【0557】
実施形態52.実施形態1~36、39、42、45、及び48~51のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫エフェクター細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0558】
実施形態53.実施形態52のいくつかのさらなる実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。
【0559】
実施形態54.実施形態53のいくつかのさらなる実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号140または配列番号141のアミノ酸配列を含む。
【0560】
実施形態55.実施形態1~36、39、42、45、及び48~54のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0561】
実施形態56.実施形態55のいくつかのさらなる実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する。
【0562】
実施形態57.実施形態56のいくつかのさらなる実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28の細胞質ドメイン及び/またはCD137の細胞質ドメインを含む
。
【0563】
実施形態58.実施形態57のいくつかのさらなる実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号136及び/または配列番号137のアミノ酸配列を含む。
【0564】
実施形態59.実施形態1~36、39、42、45、及び48~58のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジドメインをさらに含む。
【0565】
実施形態60.実施形態59のいくつかのさらなる実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αに由来する。
【0566】
実施形態61.実施形態60のいくつかのさらなる実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号130のアミノ酸配列を含む。
【0567】
実施形態62.実施形態1~36、39、42、45、及び48~61のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、CARは、ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチドをさらに含む。
【0568】
実施形態63.実施形態62のいくつかのさらなる実施形態では、シグナルペプチドはから成る群から選択されるCD8α、GM-CSF受容体α、及びIgG1重鎖、分子に由来する。
【0569】
実施形態64.実施形態63のいくつかのさらなる実施形態では、シグナルペプチドは、CD8αに由来する。
【0570】
実施形態65.実施形態64のいくつかのさらなる実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号127のアミノ酸配列を含む。
【0571】
実施形態66.いくつかの実施形態では、配列番号152~174、198~201、206~216、248~249、257~260、及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体が提供される。
【0572】
実施形態67.いくつかの実施形態では、配列番号76~100、152~174、198~201、206~216、248~249、257~260、及び265~270から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0573】
実施形態68.いくつかの実施形態では、実施形態1~36、39、42、45、及び48~66のうちのいずれか1つのCARをコードする核酸配列を含む単離された核酸が提供される。
【0574】
実施形態69.実施形態68のいくつかのさらなる実施形態では、核酸配列は、配列番号175~197、202~205、217~227、250~251、261~264、及び271~276から成る群から選択される。
【0575】
実施形態7.実施形態68または実施形態69のいくつかのさらなる実施形態では、単離された核酸は、第2のCARをコードする第2の核酸配列をさらに含み、CARをコードする核酸配列は、自己開裂ペプチドをコードする第3の核酸配列を介して第2の核酸配列に操作可能に連結される。
【0576】
実施形態71.実施形態70のいくつかのさらなる実施形態では、自己開裂ペプチドは、T2A、P2A、及びF2Aから成る群から選択される。
【0577】
実施形態72.実施形態71のいくつかのさらなる実施形態では、第3の核酸配列は、配列番号255である。
【0578】
実施形態73.実施形態68~72のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、単離された核酸は、RNA分子である。
【0579】
実施形態74.いくつかの実施形態では、実施形態68~72のうちのいずれか1つの単離された核酸を含むベクターが提供される。
【0580】
実施形態75.実施形態74のいくつかのさらなる実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。
【0581】
実施形態76.実施形態74または実施形態75のいくつかのさらなる実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0582】
実施形態77.実施形態76のいくつかのさらなる実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0583】
実施形態78.いくつかの実施形態では、実施形態1~36、39、42、45、及び48~66のうちのいずれか1つのCAR、実施形態68~73のうちのいずれか1つの単離された核酸、または実施形態74~77のうちのいずれか1つのベクターを含む操作された免疫エフェクター細胞が提供される。
【0584】
実施形態79.実施形態78のいくつかのさらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。
【0585】
実施形態80.実施形態79のいくつかのさらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。
【0586】
実施形態81.いくつかの実施形態では、実施形態78~80のうちのいずれか1つの操作された免疫エフェクター細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物が提供される。
【0587】
実施形態82.いくつかの実施形態では、個体における癌を治療する方法であって、個体に、有効量の実施形態81の薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0588】
実施形態83.実施形態82のいくつかのさらなる実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、自己由来である。
【0589】
実施形態84.実施形態82のいくつかのさらなる実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞は、同種異系である。
【0590】
実施形態85.実施形態82~84のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、癌は、液体癌である。
【0591】
実施形態86.実施形態85のいくつかのさらなる実施形態では、癌は、多発性骨髄腫
、急性リンパ性白血病、または慢性リンパ性白血病である。
【0592】
実施形態87.実施形態82~84のうちのいずれか1つのいくつかのさらなる実施形態では、癌は、固形癌である。
【0593】
実施形態88.いくつかの実施形態では、実施形態37または実施形態38の抗CD19 sdAbと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物が提供される。
【0594】
実施形態89.いくつかの実施形態では、実施形態40または実施形態41の抗CD20 sdAbと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物が提供される。
【0595】
実施形態90.いくつかの実施形態では、実施形態43または実施形態44の抗BCMA sdAbと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物が提供される。
【0596】
実施形態91.いくつかの実施形態では、実施形態46または実施形態47の抗CD38 sdAbと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物が提供される。
【0597】
実施形態92.いくつかの実施形態では、個体における疾患を治療する方法であって、個体に、有効量の実施形態88~91のうちのいずれか1つの薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0598】
実施形態93.実施形態92のいくつかのさらなる実施形態では、疾患は、癌である。
【実施例0599】
本明細書に記載の実施例は、以下の実験が行われる全ての実験または唯一の実験であることを表すようには意図されていない。使用される数(例えば、量、温度等)に対する正確さを確保するよう努力されているが、いくつかの実験誤差及び偏差が計上されるべきである。別途示されない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏温度であり、圧力は、大気圧であるか、またはそれに近い。
【0600】
実施例1.単一ドメイン抗体の調製
特定の抗原に対して高結合親和性を有する単一ドメイン抗体を開発するために、ラマを免疫化し、ファージディスプレイライブラリを構築して、VHHリードを特定した。はっきりと異なるクローンをランダムに選び、抗原結合において重要な役割を果たし得る領域である重鎖相補性決定領域3(CDR3)に従って分類した。
【0601】
単一ドメイン抗体を得るために、ラマをそれぞれの免疫原で定期的に免疫化し、免疫原は、C末端Fcタグを有する組換えヒトBCMAタンパク質(ACRO Biosystems、カタログ番号BC7-H5254)、C末端Hisタグを有する組換えヒトCD38タンパク質(ACRO Biosystems、カタログ番号CD8-H5224)、C末端Fcタグを有する組換えヒトCD19タンパク質(ACRO Biosystems、カタログ番号CD9-H5229)、及びC末端Fcタグを有する組換えヒトCD20タンパク質(ACRO Biosystems、カタログ番号CD0-H526a)を含み得る。
【0602】
抗BCMA単一ドメイン抗体を生成するプロセスは、種々の抗原に対する単一ドメイン抗体を生成する一例として以下に記載される。抗ヒトCD38、抗ヒトCD19、及び抗CD20単一ドメイン抗体の生成を、以下に記載のプロセスと同様のプロセスを用いて行った。単一ドメイン抗体を調製するための他のプロトコルについて説明されている。例えば、Els Pardon et al,Nature Protocol,2014;9(3):674を参照されたい。
【0603】
1.動物免疫化及び免疫応答アッセイ
1.1 動物免疫化
組換え抗原タンパク質を含む各免疫原をアジュバントまたはPBSと合わせ、ラマに注入した。動物を、サービスベンダー(Cedarline)によって、典型的には、200μgの免疫原及びCFA(完全フロインドアジュバント)で、毎回約1週間~2週間間隔で7回免疫化した。末梢血試料を、免疫化前段階で、かつ5回目及び7回目の免疫化後に収集した。複数回の免疫化後、標的抗原に対するラマの免疫反応を評価して、抗原特異的単一ドメイン抗体の力価を確認した。リンパ球を、約100mLの末梢血から勾配遠心分離によって単離した。細胞にRNALATER(商標)を補充し、-80℃で保管した。血清を、抗凝固血液試料の遠心分離によって得て、-80℃で保管した。
【0604】
1.2 IgG分画
IgGサブクラス分画を、GenScriptの標準操作手順に従って行った。IgGサブクラスを、タンパク質G及びタンパク質A樹脂を使用して最終出血血清から分画した。1mLの血清試料を1mLのHITRAP(登録商標)タンパク質G HPカラムに装填し、カラムを10mLのリン酸緩衝液(20mM、pH7.0)で洗浄した。IgG3(分子量100,000ダルトン)画分を0.15MのNaCl、0.58%酢酸(pH3.5)で溶出し、溶出液を1Mのトリス-HCl(pH9.0)でpH7.4に中和した。その後、IgG1(分子量170,000ダルトン)画分を0.1Mのグリシン-HCl(pH2.7)で溶出し、溶出液を1Mのトリス-HCl(pH8.5)でpH7.4に中和した。その後、HITRAP(登録商標)タンパク質G HPカラムの貫流液を1mLのHITRAP(登録商標)タンパク質A HPカラムに充填し、カラムを20mLのリン酸緩衝液(20mM、pH7.0)で洗浄した。IgG2(分子量100,000ダルトン)画分を0.15MのNaCl、0.58%酢酸(pH4.5)で溶出し、溶出液を1Mのトリス-HCl(pH9.0)でpH7.4に中和した。精製されたIgG1、IgG2、及びIgG3抗体の濃度をOD280によって決定し、各々の純度を還元SDS-PAGE分析及び非還元SDS-PAGE分析の両方によって評定した。
【0605】
1.3 免疫応答アッセイ
ラマの免疫応答をELISAによって評価し、血清試料及び精製されたIgGを固定化免疫原への結合についてアッセイした。免疫化前、5回目の免疫化後、及び最終出血時に収集した血清を評価した。抗原(すなわち、組換えヒト抗原タンパク質)をコーティング緩衝液中に4μg/mLで希釈した。マイクロタイタープレートを希釈抗原で、4℃で一晩コーティングした。その後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、続いて、室温で2時間遮断した。その後、プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄した。一連の希釈血清またはIgGをプレートに添加し、室温で1.5時間インキュベートした。その後、プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄した。HRPコンジュゲート抗ラマIgG二次抗体をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を各ウェルに添加し、10分間インキュベートした後、1MのHClで停止した。結合を定量するために、450nmでの吸光度を、MK3分光計を使用して各ウェルについて測定した。
【0606】
2.VHHファージディスプレイライブラリの構築
2.1 RNA抽出
全RNAを、製造業者のプロトコルに従ってTRIZOL(登録商標)試薬を使用して単離されたリンパ球(1.1.1)から抽出した。全RNAの量及び質をゲル電気泳動によって評定し、OD260/280で吸光度を測定することによって定量した。
【0607】
2.2 RT-PCR及びVHH増幅
全RNAを、製造業者のプロトコルに従ってPRIMESCRIPT(商標)第一鎖cDNA合成キットを使用して、オリゴ(dT)20プライマーでcDNAに逆転写した。6つの順方向特異的縮重プライマー及び2つの逆方向特異的縮重プライマーを、2つのBglI制限部位が導入されたVHHフラグメントを増幅するように設計した。VHHフラグメントを、以下に記載のGenScriptの標準操作手順(SOP)に従って増幅した。
【0608】
重鎖免疫グロブリンの可変領域(すなわち、VHH)を、二段階ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅した。第1のPCRにおいて、100ngのcDNA鋳型をプライマーCALL001(配列番号229)及びCALL002(配列番号230)と混合した。第1のPCR反応由来のDNA産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。ゲル精製後、第1のPCRのDNA産物を第2のPCRにおける鋳型として使用した。第2のPCRを、プライマーBACK-1(配列番号231)、BACK-2(配列番号232)、及びPMCF(配列番号233)で行った。VHH PCRフラグメントを含有する増幅された第2のPCR産物をゲル精製し、酵素消化し、その後、ファージミドプラスミドに挿入した。VHH遺伝子フラグメントを有する組換えプラスミドをE.coli細胞に電気移動させて、ファージディスプレイVHH免疫ライブラリを生成した。
【0609】
PCR反応の手順は、94℃で7分間の初期変性ステップ、その後、94℃で1分間、55℃で1分間、及び72℃で1分間の30サイクル、その後、72℃で7分間の最終伸長ステップを有する。
【0610】
2.3 ファージライブラリの構築
VHH PCR産物を、異なるプライマー対を使用して増幅によって得た。その後、PCR産物をBglIで消化し、ゲル精製した。ゲル精製されたフラグメントをGenScriptの社内ファージミドベクターに挿入した。パイロットライブラリを、ライゲーション及び変換条件を最適化するように構築した。最適化されたライゲーション及び変換条件を用いて、ファージミドライブラリを開発した。形質転換細胞のほんの一部を希釈し、100μg/mLのアンピシリンを補充した2×YTプレートに画線した。コロニーを計数して、ライブラリサイズを計算した。陽性クローンをランダムに選択し、配列決定して、ライブラリの質を評定した。形質転換細胞を、100μg/mLのアンピシリン及び2%グルコースを補充したYTプレートに画線した。コロニーのローンをプレートから擦り取った。ほんの一定分量の細胞をライブラリプラスミド単離に使用した。残りにグリセロールを補充し、ストックとして-80℃で保管した。
【0611】
3.ファージディスプレイパニング
3.1 バイオパニング
構築されたVHHファージライブラリを、GenScriptによって開発された標準手順を使用して、それぞれ、組換えヒトBCMAタンパク質及びヒトBCMAを発現するCHO細胞(すなわち、Legend Biotecによって社内で調製されたCHO-BCMA細胞)に対してパニングした。ライブラリストックを対数期まで成長させ、その後、ライブラリをM13KO7ヘルパーファージでレスキューし、振盪機内で25℃で一晩増幅した。その後、ファージをPEG/NaClで沈殿させ、PBS中に再懸濁し、-80℃で保管した。固相パニングの場合、マイクロプレートウェルにPBS中組換えヒトBCMAタンパク質を4℃で一晩コーティングした。液体相パニングの場合、CHO-BCMA細胞をブロッキング緩衝液で室温で1時間遮断した。コーティングまたはブロッキングステップ中、ファージ粒子をマイクロプレートウェル内でブロッキング緩衝液及びFc対照タンパク質とプレインキュベートした。プレインキュベートした後、ファージ粒子を、それぞれ、BCMAタンパク質またはCHO-BCMA溶液をコーティングしたウェルに添加し、1時間インキュベートした。インキュベートした後、結合していないファー
ジ及び非特異的に結合したファージを、ウェルをすすぐことによって洗い流すか、またはCHO-BCMA細胞をPBSTで6回洗浄し、PBSでさらに2回洗浄した。結合したファージ粒子を100mMのトリエチルアミン(TEA)によって溶出し、溶出液を1MのTris-HCl(pH7.4)によって中和した。その後、溶出液の半分を使用して、出力滴定のために指数関数的成長するE.coli TG1細胞(OD600=0.4~0.6)を感染させた。
【0612】
3.2 ファージELISA
ファージELISAを行って、標的抗原に特異的なクローンを特定した。個々の出力ファージクローンを、96ウェルプレートで成長させ、M13KO7ヘルパーファージによって一晩レスキューした。抗原タンパク質に結合するクローンを特定するために、96ウェルELISAマイクロタイタープレートに、それぞれ、コーティング緩衝液中組換えヒトBCMAタンパク質及びFc対照タンパク質を4℃で一晩コーティングし、その後、プレートをブロッキング緩衝液でブロックした。ブロックした後、一晩細胞培養由来のおよそ50μL/ウェルのファージ上清をプレートに添加し、4℃で1.5時間インキュベートした。プレートを4回洗浄し、HRPコンジュゲート抗M13モノクローナル抗体をプレートに添加し、4℃で45分間インキュベートした。プレートを再度5回洗浄し、基質溶液をウェルに添加して現像した。450nmでの吸光を各ウェルについて測定した。
【0613】
CHO-BCMA細胞に結合するクローンを特定するために、CHO-BCMA細胞をブロッキング緩衝液で室温で1時間ブロックした。ブロックした後、一晩細胞培養由来のおよそ20μL/ウェルのファージ上清を細胞溶液に添加し、室温で1時間インキュベートした。細胞を4回洗浄した後、HRPコンジュゲート抗M13モノクローナル抗体を添加し、室温で30分間インキュベートした。細胞を5回洗浄し、その後、基質溶液を添加して現像した。吸光を450nmで測定した。
【0614】
パニング後、ファージELISA陽性単一クローンをランダムに選択し、プラスミド抽出キットを使用してDNAを出力ファージから調製した。プラスミドへの挿入を配列決定した。標的抗原毎に1つ以上のVHH配列を得た。例えば、表2を参照されたい。
【0615】
実施例2.単一特異性VHHキメラ抗原受容体の調製
N末端からC末端まで、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28細胞質ドメイン、CD137細胞質ドメイン、及びCD3ζ細胞質ドメインを含むCAR骨格ポリペプチドをコードするCAR骨格配列を化学的に合成し、構成的hEF1αプロモーターの下流にかつそれに操作可能に連結された事前修飾レンチウイルスベクターにクローニングした。結果として生じたCAR骨格ベクターを「PLLV-hEF1α-8281373」と命名した。ベクター内の多クローニング部位(MCS)は、VHHフラグメントのN末端に融合されたCD8αシグナルペプチドをコードする核酸配列に操作可能に連結されたKozak配列(配列番号126:5’-GCCGCCACC-3’)を含む核酸配列の、CAR骨格配列の上流にかつそれに操作可能に連結されたPLLV-hEF1α-8281373ベクターへの挿入を可能にした。
【0616】
PLLV-hEF1α-8281373骨格を使用して単一VHHドメインを有する単一特異性CARを構築するために、VHHドメインをコードする核酸配列を、CD8αシグナルペプチドをコードする核酸配列の3’に操作可能に連結した。融合核酸配列を化学的に合成し、当該技術分野で既知の分子クローニング技法により、EcoRI(配列番号234:5’-GAATTC-3’)及びSpeI(配列番号235:5’-ACTAGT-3’)制限部位を介してPLLV-hEF1α-8281373 CAR骨格にクローニングした。表4は、例示的な単一特異性の一価抗BCMA及び抗CD38 CARを発現するように構築されたベクターを列記する。
【0617】
単一特異性CAR構築物(例えば、抗BCMAまたは抗CD38)を設計する際に第2のVHHをコードするヌクレオチド等の追加配列のさらなる挿入を容易にするために、HpaI(配列番号236:5’-GTTAAC-3’)、MluI(配列番号237:5’-ACGCGT-3’)、NsiI(配列番号238:5’-ATGCAT-3’)部位を含む制限部位を、CD8αシグナルペプチド核酸配列とVHH核酸配列との間に含めた。
【0618】
pCMV-ΔR-8.74及びpMD2.Gを含むレンチウイルスパッケージングプラスミド混合物(Addgene番号12259)を、ポリエーテルイミド(PEI)との事前最適化比率でVHHフラグメントを有するベクターPLLV-hEF1α-8281373(表4)と事前混合し、その後、適切に混合し、室温で5分間インキュベートした。その後、トランスフェクション混合物をHEK293細胞に滴加し、穏やかに混合した。その後、細胞を37℃及び5%CO2細胞インキュベーター内で一晩インキュベートした。4℃、500gで10分間遠心分離した後、上清を収集した。
【0619】
ウイルス含有上清を、0.45μmのPESフィルターを通して濾過し、その後、レンチウイルス濃縮のために超遠心分離した。超遠心分離後、上清を慎重に処分し、ウイルスペレットを予冷DPBSで慎重にすすいだ。ウイルスを適切に一定分量に分割し、その直後に-80℃で保管した。ウイルス力価を、GenScriptによって開発されたHTRFキットに基づいてp24によって決定した。
【0620】
PBMCの調製
白血球をアフェレーシスによって健常ドナーから収集し、細胞濃度をR10培地中5×106細胞/mLに調整した。その後、白血球を0.9%NaCl溶液と1:1(v/v)比で混合した。3mLのLymphoprep培地を15mLの遠心分離管に添加し、6mLの希釈リンパ球混合物をLymphoprep培地の上部に緩徐に層化した。リンパ球混合物を、制動なしで、20℃、800gで30分間遠心分離した。その後、リンパ球バフィーコートを200μLのピペットで収集した。収集した画分を0.9%NaClまたはR10で少なくとも6倍希釈し、溶液の密度を低減した。その後、収集した画分を、20℃、250gで10分間遠心分離した。上清を完全に吸引し、10mLのR10を細胞ペレットに添加して、細胞ペレットを再懸濁した。混合物を、20℃、250gで10分間さらに遠心分離した。上清を再度吸引した。100IU/mLのIL-2を有する2mLの37℃で予温したR10を細胞ペレットに添加し、細胞ペレットを緩やかに再懸濁した。細胞の数をトリパンブルー染色に従って決定し、このPBMC試料を後の実験に準備させた。
【0621】
T細胞の精製
ヒトT細胞を、以下に記載の製造業者のプロトコルに従ってMiltenyi Pan
T Cell単離キット(カタログ番号130-096-535)を使用してPBMCから精製した。細胞の数を最初に決定し、細胞懸濁液を300gで10分間遠心分離した。その後、上清を完全に吸引し、細胞ペレットを40μL/107全細胞の緩衝液中に再懸濁した。10μL/107全細胞のPan T Cellビオチン-抗体カクテルを添加し、完全に混合し、冷蔵庫(2~8℃)内で約5分間インキュベートした。その後、30μL/107細胞の緩衝液を添加した。20μL/107細胞のPan T Cellマイクロビーズカクテルを添加した。細胞懸濁液混合物を十分に混合し、冷蔵庫(2~8℃)内でさらに10分間インキュベートした。磁気分離には最小500μLが必要である。磁気分離のために、LSカラムを好適なMACS分離器の磁場に置いた。カラムを3mLの緩衝液ですすぐことによって調製した。その後、細胞懸濁液をカラムに塗布し、非標識細胞を含有する貫流液を収集し、これは、富化T細胞画分となった。カラムを3mLの緩衝液で洗浄し、通過した非標識細胞を収集することによって、さらなるT細胞を収集した。これらの非標識細胞は、この場合もやはり、富化T細胞となり、これらを先のステップからの貫流物と合わせた。その後、プールされた富化T細胞を遠心分離し、R10+100IU/mLのIL-2中に再懸濁した。
【0622】
その後、調製されたT細胞を、抗CD3/CD28 MACSiBead粒子を1:2のビーズ:細胞比で添加した製造業者のプロトコルに従ってヒトT細胞活性化/増殖キット(Miltenyi番号130-091-441)で48~96時間事前活性化した。
【0623】
事前活性化されたT細胞を、1200g、32℃で1.5時間遠心分離しながら、7μg/mLのポリブレンの存在下で、レンチウイルスストックで形質導入した。その後、形質導入された細胞を細胞培養インキュベーターに移して、好適な条件下で導入遺伝子を発現させた。
【0624】
形質導入後3日目または7日目に、形質導入されたT細胞を収集し、20:1のエフェクター(CAR-T):標的細胞比で腫瘍細胞と20時間共インキュベートした。標的細胞は、ヒト多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Luc細胞またはヒト膠芽腫細胞株U87MG.Luc細胞のいずれかであり、これらの細胞株のいずれも社内で操作されて蛍ルシフェラーゼを発現させたものであった。腫瘍細胞へのCAR-Tの細胞毒性をアッセイするために、One-glo発光ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega番号E6110)を製造業者のプロトコルに従って調製し、共培養細胞に添加して、ウェル内の残りのルシフェラーゼ活性を検出した。ルシフェラーゼがRPMI8226.Luc細胞またはU87MG.Luc細胞でのみ発現するため、ウェル内の残りのルシフェラーゼ活性は、ウェル内の生存標的細胞の数に直接相関する。最大ルシフェラーゼ活性を、培養培地をエフェクター細胞の不在下で標的細胞に添加することによって得た。最小ルシフェラーゼ活性を、細胞毒性アッセイを開始した時点でTriton X-100を1%の最終濃度で添加することによって決定した。特異的細胞毒性を以下の式によって計算した:特異的細胞毒性%=100%×(1-(RLU試料-RLU最小)/(RLU最大-RLU最小))。
【0625】
BCMA(CD269)を標的とする単一特異性CARクローンを数字「269」から開始してコードした一方で、CD38を標的とする単一特異性CARクローンを数字「38」から開始して同様にコードした。
図2Aに示されるように、選択されたクローンは、多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Luc細胞で異なるレベルの細胞毒性を呈し、60%超の単一特異性V
HHに基づくCAR-TがRPMI8226.Luc細胞に対して50%超の細胞毒性を示した。クローン269A37346、269A37348、269A37353、269A37355、38A37326、38A37331、38A37717、及び38A37719に基づくCAR-Tをさらなる試験のために選択した。具体的には、クローン269A37346、269A37348、267A37353、269A37355、38A37326、38A37331、38A37717に基づくCAR-Tは、多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Luc細胞で強力な細胞毒性を呈し、非形質導入対照T細胞(UnT)と比較してCAR-T処置によるRPMI8226.Luc細胞死滅が20%超~30%増加した。それにもかかわらず、かかる細胞毒性増加は、ヒト膠芽腫細胞株U87MG.Luc細胞では生じなかった(
図2Bを参照されたい)。UnT対照と比較してこれらの単一特異性V
HHに基づくCAR-T細胞によるU87MG.Lucに対するいずれの有意な細胞毒性影響も検出されなかった。上述の観察は、これらのクローンのうちのいくつかが標的特異的であり、BCMAまたはCD38陽性細胞で強力であり得ることを示す。
【0626】
実施例3.例示的な二重特異性または多価キメラ抗原受容体の調製
実施例2に記載の潜在的に強力なクローンは、二重特異性または多価VHHに基づくCARの生成に好ましい候補でもあり得る。2つの代表的なVHHクローン(抗BCMA VHHクローン269A37346及び抗CD38 VHHクローン38A37717)を選択して、種々の例示的なCAR構築物を構築した。
【0627】
BCMA×CD38 VHHに基づくCARを、好適なペプチドリンカー(例えば、Gly-Serポリマー)、その後、CARシグナルドメイン骨格ベクターを介してBCMA特異的VHHとCD38特異的VHHを組み合わせることによって生成することができる。例示的な二重特異性BCMA×CD38 CAR構築物(GSI5001~GSI5010)を表6に列記する。最初に、抗BCMA VHHのアミノ酸配列と抗CD38 VHHのアミノ酸配列を、異なる長さのものであり得るGly-Serリンカーを介して一緒に連結させた。その後、アミノ酸配列をCD8αシグナルペプチド配列の後に置いた。Kozak-CD8αシグナルペプチド-二重特異性VHHを含むこの組み合わせられた配列を直接合成し、当該技術分野で既知の通常の分子クローニングプロトコルによって、EcoRI及びSpeI制限部位を介してPLLV-hEF1α-81373 CAR骨格にクローニングした。N末端からC末端まで、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137細胞質ドメイン、及びCD3ζ細胞質ドメインを含むCAR骨格ポリペプチドをコードするCAR骨格配列を化学的に合成し、構成的hEF1αプロモーターの下流にかつそれに操作可能に連結された事前修飾レンチウイルスベクターにクローニングした。結果として生じたCAR骨格ベクターを「PLLV-hEF1α-81373」と命名した。
【0628】
さらに、BCMA CAR及びCD38 CARをコードする例示的な共発現ベクターを、好適なスプライスに基づくリンカー(T2A、P2A、またはF2A)を介して単一CARベクター内でBCMA特異的VHHに基づくCARとCD38特異的VHHに基づくCARを組み合わせることによって構築した。例えば、GSI5013構築物は、配列番号239の核酸配列を有する。GSI5013の核酸配列は、5’から3’まで、CD8αシグナルペプチド、38A37717 VHH、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメイン、T2A、CD8αシグナルペプチド、269A37346 VHH、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインをコードする。
【0629】
多価VHH CARを、ペプチドリンカーによって互いに融合される単一VHHの複数のコピーをコードする核酸配列をCARシグナルドメイン骨格ベクターに導入することによって構築することができる。例示的な一価多価CAR構築物(GSI5014、GSI5015、GSI5016、GSI5017)を表5に列記する。これらの構築物を、グリシン-セリンリンカーによりVHHの2~3つのコピーを連結させ、その後、この連結した配列をKozak-CD8αシグナルペプチド核酸配列と組み合わせて直接合成し、EcoRI及びSpeI制限部位を介してPLLV-hEF1α-81373 CAR骨格にクローニングすることによって調製した。対照として、単一コピーVHHも同一の方法によって同じPLLV-hEF1α-81373 CAR骨格にクローニングした(GSI5011及びGSI5012、表4に列記)。
【0630】
GSI5001~GSI5017のCAR遺伝子を持つレンチウイルスベクターをパッケージングし、実施例2に記載のプロトコルで滴定した。実施例2に記載のプロトコルを使用して、ヒトPBMCを志願者の末梢血から調製し、Miltenyi human Pan T cell単離キットを使用して初代ヒトT細胞をさらに単離した。精製されたT細胞を事前活性化し、実施例2に記載のMiltenyi 抗CD3/CD28マイクロビーズを使用して増殖させた。その後、事前活性化されたT細胞を、1200g、3
2℃で1.5時間の遠心分離により、7μg/mLのポリブレンの存在下で、レンチウイルスストックで形質導入した。その後、形質導入された細胞を細胞培養インキュベーターに移して、好適な条件下で導入遺伝子を発現させた。
【0631】
形質導入後3日目に、形質導入されたT細胞を収集し、20:1のエフェクター(CAR-T):標的細胞比で腫瘍細胞と20時間共インキュベートした。腫瘍細胞へのCAR-Tの細胞毒性をアッセイするために、One-glo発光ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega番号E6110)を共培養細胞に添加し、各CAR-Tの特異的細胞毒性を実施例2に記載されるように測定した。
【0632】
各群の組み込まれたCAR遺伝子のコピー数を半定量PCR(q-PCR)アッセイによって決定した。簡潔には、CAR-Tの各群由来のゲノムDNAをGentra Puregene細胞キット(Qiagen)で調製した。ゲノムDNAの濃度をNanodropによって決定し、10ngのゲノムDNA試料を、CAR特異的プライマー(順方向プライマー137P2F(配列番号252):5’-GTCCTTCTCCTGTCACTGGTTAT-3’、及び逆方向プライマー137P2R(配列番号253):5’-TCTTCTTCTTCTGGAAATCGGCA-3’)を使用してABI番号7300 q-PCR器具上でSYBR Green Realtime PCRマスターミックスプラス(Toyobo)を用いて標準化q-PCRアッセイのために処理した。各組み込まれたCAR遺伝子の相対コピー数を、標的配列を含有するプラスミドを使用して確立された標準曲線に基づいて計算した。
【0633】
以下の表7に示されるように、各CAR-T調製物のコピー数を決定し、データは、T細胞のゲノムへの高標的遺伝子組み込みを示唆する。
【表7】
【0634】
図3A~3Bに例証されるように、BCMA(GSI5011)に対する単一特異性V
HH CAR及びCD38(GSI5012)に対する単一特異性V
HH CARは、多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Lucへの強力な細胞毒性を示した。非形質導入対照T細胞(UnT、9.25±1.11%)による非特異的溶解と比較して、GSI5011 CARでは、42.98±2.86%のRPMI8226.Luc細胞が溶解し、GSI5012では、61.25±1.92%のRPMI8226.Luc細胞が溶解した。
【0635】
二重特異性CAR GSI5001-GSI5010は、非形質導入対照T細胞(UnT)と比較して、多発性骨髄腫細胞株RPMI8226.Lucの強力な特異的溶解を誘発した。
図3A及び3Bに示されるように、RPMI8226.Luc細胞の特異的溶解の割合は、非形質導入対照T細胞(UnT、9.25±1.11%)による非特異的溶解と比較して、GSI5001発現CAR-T細胞では98.91±0.17%であり、GSI5002発現CAR-T細胞では97.10±0.26%であり、GSI5003発現CAR-T細胞では93.85±0.69%であり、GSI5004発現CAR-T細胞では82.81±2.40%であり、GSI5005発現CAR-T細胞では98.95±0.66%であり、GSI5006発現CAR-T細胞では93.91±1.25%であり、GSI5007発現CAR-T細胞では96.49±1.05%であり、GSI5008発現CAR-T細胞では94.41±0.75%であり、GSI5009発現CAR-T細胞では90.72±0.62%であり、GSI5010発現CAR-T細胞では85.05±2.69%であった。これらの結果は、より短いGly-Serリンカーが標的腫瘍細胞でわずかにより良好な細胞毒性能力を示しているようであったことも示唆した。さらなる研究を準最適アッセイ条件下で行い、かかる影響を研究することができた。さらに、ベクターにおける抗BCMA V
HH及び抗CD38 V
HHの順序は、RPMI8226.Luc細胞での最終細胞毒性能力への著しい影響を示さなかった。2つのscFvに基づくCAR-T細胞も本アッセイで調製し、GSS005が抗BCMA scFvに基づくCARであり、GSI005が抗CD38 scFvに基づくCARであった。GSS005もGSI005もいずれも、RPMI8226.Luc細胞に対して強力な特異的溶解も示した(GSS5005では57.94±1.91%、GSI005では61.25±1.92%)。
【0636】
BCMA特異的一価CAR(GSI5011)、BCMA特異的二価CAR(GSI5012)、またはBCMA特異的三価CAR(GSI5013)操作されたT細胞を有する操作されたT細胞、及びCD38特異的一価CAR(GSI5012)、CD38特異的二価CAR(GSI5016)、またはCD38特異的三価CAR(GSI5017)を有する操作されたT細胞を調製し、細胞毒性アッセイを上に記載されるようにRPMI8226.Luc細胞で行った。
図4に示されるように、RPMI8226.Luc細胞の特異的溶解の割合は、非形質導入対照T細胞(UnT)での0.05%±2.33%と比較して、GSI5011発現CAR-T細胞では63.25±2.64%であり、GSI5014発現CAR-T細胞では61.04±2.75%であり、GSI5015発現CAR-T細胞では59.57±2.64%であった。また、
図4に示されるように、抗CD38 V
HH CAR-TによるRPMI8226.Luc細胞の特異的溶解は、非形質導入対照T細胞(UnT)での57.92%±2.88%と比較して、GSI5012発現CAR-T細胞では95.79±0.62%であり、GSI5016発現CAR-T細胞では94.16±0.31%であり、GSI5015発現CAR-T細胞では97.61±0.77%であった。データは、異なる抗原結合様式を有するこれらのCARがBCMA陽性細胞に対して強力な抗腫瘍活性を有したことを示唆した。
【0637】
実施例4.例示的なCD19×CD20 CARの調製、インビトロ及びインビボアッセイ
例示的な抗CD19 sdAb及び抗CD20 sdAbを実施例1に記載の手順と同
様の手順によって得た。これらの単一ドメイン抗体を表2に列記する。CD19 V
HHに基づく単一特異性CD19 CAR及びCD20 V
HHに基づく単一特異性CD20
CARを、実施例2に記載され、かつ表4に列記されるように調製した。CD19 V
HH及びCD20 V
HHに基づく例示的な二重特異性CD19×CD20 CARを、実施例3に記載され、かつ表6に列記されるように構築した。例示的なCD19 CAR、CD20 CAR、及びCD19×CD20 CARを構築するために使用したCAR骨格ベクターは、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28の細胞質ドメイン、及びCD3ζの細胞質ドメインをコードする。
図5は、CD19 CAR、CD20 CAR、及び二重特異性CD19×CD20 CARの構築物を示す。CD19 CAR、CD20 CAR、または二重特異性CD19×CD20 CARを発現する操作されたCAR-T細胞を、実施例2に記載されるように調製した。
【0638】
CAR-T細胞の細胞毒性を4時間の共培養アッセイで決定した。この実験では、調製されたCAR-T細胞を遠心分離で収集し、その後、10%ヒトAB血清を有するDPBSにより所望の濃度に希釈し、96ウェルプレートで培養した。CD19及びCD20の強発現を呈することで知られているRaji腫瘍細胞をCalcein-AM(BD Biosciences)で標識した。標識されたCAR-T細胞及びRaji細胞を10:1のエフェクター:標的比で37℃で4時間培養した。その後、CAR-T細胞の細胞毒性をFACSによって検出した。
【0639】
図6の左上パネルに見られるように、非形質導入T細胞による著しいRaji細胞溶解は見られなかった。CD19(39%、右上パネル)またはCD20(41%、左下パネル)単一特異性V
HH CAR-T細胞のいずれかによるRaji細胞の細胞毒性は、およそ40%であった。同じCD19 V
HH及びCD20 V
HHが融合されて同じ構築物内、すなわち、CD19×CD20二重特異性CAR-T細胞内で細胞外抗原結合ドメインとしての機能を果たす場合、Raji腫瘍細胞の細胞毒性(75.24%)は、単一特異性CD19 V
HH CAR-TまたはCD20 V
HH CAR-T細胞と比較して増強された(
図6の右下パネル)。
【0640】
マウス腫瘍モデル研究
NOGマウスに、尾静脈注射により4×106Raji細胞/マウスを注入した。10日後、マウスをランダムに4つの群に均等に分け、各群に、それぞれ、当量の非形質導入T細胞、CD19 CAR-T細胞、CD20 CAR-T細胞、またはCD19×CD20二重特異性CAR-T細胞を注入し、5週間継続的に観察した。
【0641】
図7に示されるように、インビボ生存データは、CD19×CD20二重特異性CARで処置したマウスの全生存率が、CD19またはCD20単一特異性CAR-T細胞で処置したマウスの全生存率よりも高かったことを示唆した。
【0642】
実施例5.2つの異なるBCMA結合ドメインを有する例示的な単一特異性二価CARの調製
実施例2に記載の潜在的なVHHクローンを使用して、細胞外抗原結合ドメインにおいて2つ以上の異なる標的結合ドメインを有する単一特異性多価CARを生成することもできた。2つの代表的な抗BCMA sdAbクローン(クローン269A37353及びクローン269A37917)を選択して、本実施例において種々の例示的な単一特異性二価CAR構築物を構築した。
【0643】
BCMAを標的とする二価CAR(すなわち、二価BCMA CAR)を、好適なペプチドリンカー(例えば、Gly-Serポリマー)を介して2つの異なるBCMA特異的
VHHドメインを融合し、その後、融合構築物をCARシグナルドメイン骨格ベクターに挿入することによって生成することができる。2つの異なるBCMA結合ドメイン269A37353及び269A37917を有する例示的な二価BCMA CAR 構築物(GSI5021~GSI5026)を表5に列記する。種々の長さのペプチドリンカーを異なる構築物に使用した。構築物GSI5021~GSI5023は各々、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、269A37353、ペプチドリンカー、269A37917、CD8αヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、CD137の細胞質ドメイン、及びヒトCD3ζの細胞質ドメインをコードした。構築物GSI5024-GSI5026は各々、N末端からC末端まで、CD8αシグナルペプチド、269A37917、ペプチドリンカー、269A37353、CD8αヒンジ、CD8α膜貫通ドメイン、CD137の細胞質ドメイン、及びヒトCD3ζの細胞質ドメインをコードした。各構築物をKozak配列の5’にさらに融合して、完全コード配列を提供した。この完全コード配列を直接合成し、当該技術分野で既知の通常の分子クローニングプロトコルを使用して、EcoRI及びSpeI制限部位を介してPLLV-hEF1α-81373 CAR骨格にクローニングした。対照的に、同じCARシグナルドメイン骨格を有する単一特異性一価CAR(GSI5019及びGSI5020、表4に列記)を、同様の方法を使用して構築した。
【0644】
CAR構築物GSI5019~GSI5026の各々を持つレンチウイルスベクターをパッケージングし、実施例2に記載のプロトコルで滴定した。実施例2に記載のプロトコルを使用して、ヒトPBMCを志願者由来の末梢血試料から調製し、Miltenyi human Pan T cell単離キットを使用して初代ヒトT細胞をさらに単離した。精製されたT細胞を事前活性化し、実施例2に記載のMiltenyi 抗CD3/CD28マイクロビーズを使用して増殖させた。
【0645】
その後、事前活性化されたT細胞を、1200g、32℃で1.5時間の遠心分離により、7μg/mLのポリブレンの存在下で、レンチウイルスストックで形質導入した。その後、形質導入された細胞を細胞培養インキュベーターに移して、好適な条件下で導入遺伝子を発現させた。
【0646】
形質導入後3日目に、形質導入されたT細胞を収集し、20:1のエフェクター(CAR-T):標的細胞比で腫瘍細胞(RPMI8226.Luc細胞またはU87MG.Luc細胞)と20時間共インキュベートした。RPMI8226.Luc細胞は、ルシフェラーゼを発現する多発性骨髄腫細胞であり、BCMA陽性である。U87MG.Luc細胞は、ルシフェラーゼを発現する膠芽腫細胞であり、BCMA陰性である。腫瘍細胞へのCAR-Tの細胞毒性をアッセイするために、One-glo発光ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega番号E6110)を共培養細胞に添加し、各CAR-Tの特異的細胞毒性を実施例2に記載されるように測定した。
【0647】
図8Aに示されるように、RPMI8226.Luc細胞の特異的溶解の割合は、非形質導入対照T細胞(UnT)での13.49%±1.75%と比較して、それぞれ、GSI5019発現CAR-T細胞では88.21±1.29%であり、GSI5020発現CAR-T細胞では93.84±1.13%であり、GSI5021発現CAR-T細胞では71.45±1.79%であり、GSI5022発現CAR-T細胞では99.80±0.45%であり、GSI5023発現CAR-T細胞では97.46±0.50%であり、GSI5024発現CAR-T細胞では81.29±1.27%であり、GSI5025発現CAR-T細胞では93.50±0.47%であり、GSI5026発現CAR-T細胞では87.83±0.23%であった。また、
図8Bに示されるように、BCMA陰性細胞株U87MG.Lucの特異的溶解の割合は、非形質導入対照T細胞(UnT)での12.49%±3.79%と比較して、GSI5019発現CAR-T細胞では2.84±7.41%であり、GSI5020発現CAR-T細胞では15.50±2.24%であり、GSI5021発現CAR-T細胞では6.74±3.37%であり、GSI5022発現CAR-T細胞では8.03±2.36%であり、GSI5023発現CAR-T細胞では9.00±1.88%であり、GSI5024発現CAR-T細胞では17.03±2.27%であり、GSI5025発現CAR-T細胞では16.81±1.98%であり、GSI5026発現CAR-T細胞では-11.55±5.43%であった。データは、異なる抗原結合様式を有する多価CARが、BCMA陽性細胞に対して強力な抗腫瘍活性を有したが、BCMA陰性細胞に対しては強力な抗腫瘍活性を有しなかったことを示唆した。
前記抗CD38 sdAbが、配列番号92~94および97~100のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、請求項4に記載のCAR。
(a)第1の抗原に特異的に結合する第1のsdAb及び第2の抗原に特異的に結合する第2のsdAbを含み、前記第1のsdAbが請求項1~3のいずれか1項に記載の抗CD38 sdAbである、細胞外抗原結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むポリペプチドを含む、CAR。
前記第2の抗原が、CD19、CD20、CD22、CD33、CD38、BCMA、CS1、ROR1、GPC3、CD123、IL-13R、CD138、c-Met、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGE A3、及び糖脂質F77から成る群から選択される、請求項9~11のいずれか1項に記載のCAR。
前記第1のsdAbが、配列番号93のアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗CD38 sdAbである、請求項9~13のいずれか1項に記載のCAR。
前記抗CD38 sdAbが、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含むsdAbである、請求項14に記載のCAR。
前記第2のsdAbが、配列番号78~88のアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗BCMA sdAbである、請求項13~16のいずれか1項に記載のCAR。
前記第2のsdAbが、配列番号93のアミノ酸配列を含むsdAbにより定められるCDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗CD38 sdAbである、請求項18に記載のCAR。
前記抗CD38 sdAbが、配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むCDR3を含むsdAbである、請求項19に記載のCAR。
前記第1の抗CD38 sdAb及び前記第2の抗CD38 sdAbが、ペプチド結合または50以下のアミノ酸長ペプチドリンカーを介して互いに融合される、請求項9~23のいずれか1項に記載のCAR。
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152、及びPD1から成る群から選択される分子に由来する、請求項4~24のいずれか1項に記載のCAR。
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、免疫エフェクター細胞の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み、該一次細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する、請求項4~25のいずれか1項に記載のCAR。
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、CD137、OX40、CD30、CD40、CD3、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83のリガンド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される共刺激分子に由来する共刺激シグナル伝達ドメインを含む、請求項4~26のいずれか1項に記載のCAR。
操作された免疫エフェクター細胞であって、請求項1~3のいずれか1項に記載のsdAb、請求項4~29のいずれか1項に記載のCAR、請求項30に記載の単離された核酸、または請求項31に記載のベクターを含み、
該免疫エフェクター細胞がT細胞である、操作された免疫エフェクター細胞。
請求項1~3のいずれか1項に記載のsdAb、請求項4~29のいずれか1項に記載のCAR、請求項30に記載の単離された核酸、請求項31に記載のベクター、または請求項32に記載の操作された免疫エフェクター細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物。
個体における癌を治療するための薬学的組成物を調整するために使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載のsdAb、請求項4~29のいずれか1項に記載のCAR、または請求項32に記載の操作された免疫エフェクター細胞。