(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032998
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】合成石のための組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/10 20060101AFI20240305BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240305BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08L33/10
C08K3/013
C08K5/101
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015589
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2022017224の分割
【原出願日】2017-03-09
(31)【優先権主張番号】1604077.6
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】500460209
【氏名又は名称】ミツビシ ケミカル ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI CHEMICAL UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】アプシー、グレン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュース、アラン ウィリアム
(57)【要約】
【課題】合成石のための組成物を与える。
【解決手段】組成物は(a)3~25重量%のアクリル樹脂を有し、アクリル樹脂は、(i)50重量%超~最大95重量%の、メチルメタクリレート及びメチルメタクリレートモノマー残基、(ii)4~40重量%の、高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー、(iii)任意選択的な、0~10重量%の他のアクリレート又はビニルコモノマー残基、並びに(iv)架橋剤、を含有する。成分(a)(i)のMMA残基は、(コ)ポリマーの少なくとも80%のMMA残基を含むMMA残基含有(コ)ポリマーの形態でアクリル樹脂中に存在する。組成物は、更に、(b)70~95重量%のフィラー;及び(c)任意選択的なカップリング剤も含有する。組成物は、屋外用途での使用のための合成石の製造のために特に有用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
(i)50重量%超~最大95重量%の、メチルメタクリレート及びメチルメタクリレートモノマー残基、
(ii)4~40重量%の、高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー、
(iii)任意選択的な、0~10重量%の他のアクリレート又はビニルコモノマー残基、並びに
(iv)架橋剤
を含有する、4~20重量%のアクリル樹脂;
(b)75~95重量%のフィラー;並びに
(c)任意選択的なカップリング剤;
を含有する合成石のための組成物であって、成分(a)(i)の前記MMA残基が、MMAの残基を含む、MMA残基含有(コ)ポリマーの形態で前記アクリル樹脂の中に存在し、前記成分(a)(i)の前記MMA残基は、前記MMA残基含有(コ)ポリマーの重量基準で少なくとも80%にて存在し、成分(a)(i)の前記MMAモノマー成分は、前記アクリル樹脂の30~65重量%の量で存在する、合成石のための組成物。
【請求項2】
(a)
(i)50重量%超~最大95重量%の、メチルメタクリレート及びメチルメタクリレートモノマー残基、
(ii)4~40重量%の、高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー、
(iii)任意選択的な、0~10重量%の他のアクリレート又はビニルコモノマー残基、並びに
(iv)架橋剤
を含有する、4~20重量%のアクリル樹脂;
(b)75~95重量%のフィラー;並びに
(c)任意選択的なカップリング剤;
を含有し、成分(a)(i)の前記MMAモノマー成分は、前記アクリル樹脂の30~65重量%の量で存在する、合成石のための組成物。
【請求項3】
請求項1又は2で定義したアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂を含み、任意選択的には請求項1又は2で定義したカップリング剤(c)も更に含むアクリル樹脂成分;並びに請求項1又は2で定義したフィラー(b)にかかるフィラーを含むフィラー成分;を含む、合成石を形成するための成分のキット。
【請求項4】
前記アクリル樹脂が、前記組成物の4~18重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項5】
前記フィラーが、前記組成物の80~95重量%で存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項6】
成分(a)(i)の前記MMA及びMMA残基のうちの少なくとも1つが、前記アクリル樹脂の55~95重量%の量で前記アクリル樹脂中に存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項7】
成分(a)(i)の前記MMAモノマー成分が前記アクリル樹脂の32~60重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項8】
(a)(i)の前記MMA残基成分が前記アクリル樹脂の20~75重量%の量で存在する、請求項2~7のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項9】
成分(a)(i)の前記MMA残基が、MMA残基含有(コ)ポリマーの形態で前記アクリル樹脂中に存在し、前記MMA残基含有(コ)ポリマーは前記(コ)ポリマーの少なくとも70重量%のMMAの残基を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項10】
前記MMA残基含有(コ)ポリマーがPMMAホモポリマーである、請求項9に記載の組成物又はキット。
【請求項11】
前記高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマーである成分(a)(ii)が前記アクリル樹脂の5~40重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項12】
成分(a)(ii)が、標準大気圧条件で101℃より高い沸点を有するモノマーから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項13】
前記高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマーである成分(a)(ii)が、(C3~C12)アルキルアクリレート及び(C2~C12)アルキル(C1~C8アルク)アクリレートからなるモノマー(群)の少なくとも1つから選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項14】
成分(a)(ii)のモノマー(群)が、エチルメタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上から選択される、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項15】
成分(a)(ii)が2種以上の高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマーから構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項16】
成分(a)(ii)のモノマー群がi-ブチルメタクリレート又はn-ブチルメタクリレートから選択される、請求項14又は15に記載の組成物又はキット。
【請求項17】
架橋剤である成分(a)(iv)が、前記アクリル樹脂の0.01~10重量%の量で存在する、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項18】
前記フィラーが天然の骨材を含み、前記天然の骨材は、炭酸カルシウム、石英、クリストバライト、花崗岩、長石、大理石、珪岩、ドロマイト、玄武岩、及びフェロシリコンからなる群のうちの1種以上から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項19】
フィラー(b)が、前記組成物の0.01~5重量%の顔料を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項20】
前記フィラー(b)粒子の平均径d50が、50mm未満である、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項21】
フィラー成分(b)が、0.01~100mmの範囲内の平均粒径を有する粗いフィラーフラクションを含み、これらの大きさは前記フィラー中の前記天然骨材に適用される、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項22】
フィラー成分(b)が、前記粗いフィラーフラクション(複数可)の前記平均粒径よりも小さい平均粒径を有する微細フィラーフラクションを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項23】
フィラー成分(b)が500μm未満平均粒径を有する微細フィラーフラクションを含む、請求項22に記載の組成物又はキット。
【請求項24】
前記微細フィラーフラクションが前記フィラー成分の0~40重量%の量でフィラー(b)中に存在する、請求項23に記載の組成物又はキット。
【請求項25】
前記粗いフィラーフラクションが前記フィラー成分の60~100重量%の量で存在する、請求項21~24のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項26】
カップリング剤である成分(c)を更に含有し、前記組成物は前記樹脂の0.1~5重量%のカップリング剤を含有する、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項27】
開始剤系である成分(d)を更に含有する、請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項28】
前記開始剤系が、80℃未満で最大1時間の半減期を有する少なくとも第1の開始剤を含む、請求項27に記載の組成物又はキット。
【請求項29】
前記開始剤系が、最高20℃で少なくとも3か月間の貯蔵安定性を有する第1の開始剤を少なくとも含む、請求項28に記載の組成物又はキット。
【請求項30】
前記開始剤系が、2種以上の開始剤の混合物を含む、請求項29に記載の組成物又はキット。
【請求項31】
前記開始剤系が、前記第1の開始剤よりも高い温度で前記アクリル樹脂の重合を開始するために機能することができる第2の開始剤を含み、前記第2の開始剤は、95℃で最大1時間の半減期を有し、前記第2の開始剤は最高25℃で貯蔵安定性を有する、請求項30に記載の組成物又はキット。
【請求項32】
前記第2の開始剤は最高25℃で貯蔵安定性を有する、請求項31に記載の組成物又はキット。
【請求項33】
開始剤系(d)が、ジ-(t-ブチル-シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、アゾ-ジ-イソブチロニトリル、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)、及びジセチルペルオキシジカーボネートからなる群から選択される1種以上の開始剤を含む、請求項27~32のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
【請求項34】
開始剤系(d)は、第1の開始剤としてのジ-(t-ブチル-シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートと、第2の開始剤としてのアゾ-ジ-イソブチロニトリルと、任意選択的な第3の開始剤とから構成される、請求項33に記載の組成物又はキット。
【請求項35】
請求項1~34のいずれかで定義したアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂を含み、任意選択的には請求項1~34のいずれかで定義したカップリング剤(c)も更に含むアクリル樹脂成分;請求項1~34のいずれかで定義したフィラー(b)にかかるフィラーを含むフィラー成分;並びに請求項1~34のいずれかで定義した開始剤系(d)にかかる開始剤系を含む開始剤成分;を含む、合成石を形成するための成分のキット。
【請求項36】
a.請求項1~34のいずれかで定義したアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂、請求項1~34のいずれかで定義したフィラー(b)にかかるフィラー、並びに任意選択的な請求項1~34のいずれかで定義したカップリング剤(c)及び任意選択的な請求項1~34のいずれかで定義した開始剤系(d)を前記成分が前記樹脂と均一になるまで混合する工程;
b.前記混合物をモールドに入れ、及び前記混合物を実質的に脱気する工程;
c.加熱することにより、前記混合物を硬化させる工程;並びに
d.任意選択的な、前記硬化した混合物を研磨する工程;
を含む、合成石の製造方法。
【請求項37】
a.請求項1~34のいずれかで定義したアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂、請求項1~34のいずれかで定義したフィラー(b)にかかるフィラー、並びに任意選択的な請求項1~34のいずれかで定義したカップリング剤(c)及び任意選択的な請求項1~34のいずれかで定義した開始剤系(d)を前記成分が前記樹脂と均一になるまで混合する工程;
b.前記混合物を実質的に脱気する工程;
c.前記混合物をプレスに入れる工程;
d.加熱することにより、前記混合物を硬化させる工程;並びに
e.任意選択的な、前記硬化した混合物を研磨する工程;
を含む、合成石の製造方法。
【請求項38】
(a)(i)の前記MMA残基成分が、工程a中で(b)と最初に混合された際に、前記アクリル樹脂の少なくとも20重量%の量で存在する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~34のいずれか1項に記載の組成物又はキットから形成される合成石。
【請求項40】
(a)
i.50重量%超~最大95重量%の、請求項1~34のいずれかで定義したMMA又はMMA残基のメチルメタクリレートモノマー残基、
ii.4~40重量%の、請求項1~34のいずれかで定義した高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマーの高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー残基、
iii.任意選択的な、0~10重量%の、請求項1~34のいずれかで定義したアクリレート又はビニルコモノマーの他のアクリレート又はビニルコモノマー残基、及び
iv.請求項1~34のいずれかで定義した架橋剤の架橋剤残基、
を含有する、4~20重量%のアクリル樹脂;
(b)75~95重量%の、請求項1~34のいずれかで定義したフィラー;並びに、任意選択的な、請求項1~34のいずれかで定義したカップリング剤のカップリング剤残基;を含有する合成石。
【請求項41】
合成石の製造における、請求項1~34のいずれか1項に記載の組成物又はキットの使用。
【請求項42】
請求項36~38に記載の方法により製造される合成石。
【請求項43】
請求項1~34のいずれか1項に記載の合成石の、Breton法による製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成石のための組成物に関し、より詳しくは、本発明は、改善された耐割れ性のための、屋外用途及び屋内での使用(台所の調理台等)で有用な合成石のためのメチルメタクリレートを主成分とする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大理石や花崗岩などの天然石は、屋外の装飾及び機能用途において多くの場合使用されている。しかし、天然石の使用は、加工に費用がかかること及び限られた供給量のため高コストである。更に、天然の不完全さは、割れ及び全般的な脆さの原因となり得る。
【0003】
天然石に関連する問題に対処する試みにおいて、様々な合成石が述べられてきた。合成石は、一般的には、ポリマー樹脂並びに高濃度の天然及び/又は人工の骨材を主成分とする成形された製品である。合成石は、天然石の望ましい外観を複製するだけでなく、天然石で見出された問題の多くを克服することができ、特に、これは天然石よりも大幅に低コストで達成できる。
【0004】
合成石組成物の樹脂としては、一般的にはポリエステルを主成分とする樹脂が注目されてきた。ポリエステルを主成分とする樹脂は、特に、室内装飾用途に有用である。しかし、ポリエステルを主成分とする樹脂は紫外線耐性が低い。つまり、これは屋外用途での性能が劣る場合がある。そのため、屋外用途のためのより優れた耐候特性を付与することができる樹脂を使用することが望ましい。
【0005】
アクリルを主成分とする系は、ポリエステルを主成分とする系と比較して、改善された屋外耐候性を付与することが見出されている。アクリルは、ポリエステル樹脂を含む合成石よりも屋外での経時的な劣化が少なく、特には太陽光に対して遥かに高い耐性を有する合成石を生じさせる。
【0006】
特許文献1には、液体メタクリレート樹脂から形成される、重合性樹脂を含む屋外用途のために適した人工石板の製造方法が記載されている。残念なことには、最終製品はエッジが崩れることが分かった。更に、硬化系は、促進剤を使用しない場合に高温になる開始剤を活性化させるために促進剤を使用するが、促進剤は樹脂のポットライフを縮め、また樹脂の変色の原因となる。
【0007】
特許文献2では、臭気及び粗いフィラーの不均一な分布などの様々な主張されている問題に対処するために、MMAが非常に多量の環状エステルモノマーで置き換えられている。環状エステルモノマーは、環状ラジカルと少なくとも2つの酸素原子とを有するアルコールとの、(メタ)アクリル酸のエステルである。特許文献2は、続けて人工石の残りの特性を損ねることなしに完全にMMAをなくす可能性についても教示している。しかし、提案されたモノマーは非常に高価である。
【0008】
特許文献3には、ポリエステルを主成分とする組成物に対して温度及び衝撃性能が改善された、MMAだけでなくウレタンアクリレート及びスチレンも使用する、表面材料のためのアクリル及び石英を主成分とする組成物が記載されている。そのような製品は、耐候性及び濁りの問題の結果としての変色の問題や、高価な成分を使用することの問題をなお抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1878712号明細書
【特許文献2】国際公開第2015091318号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,387,985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、崩壊や高価な成分を必要とすることや工程を適合させることの問題なしに、高濃度のMMAを可能にする合成石のための組成物が未だ必要とされている。したがって、本発明の態様の1つの目的は、これらの1つ以上の問題、又は他の問題に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、(a)
i.50重量%超~最大95重量%の、メチルメタクリレート及びメチルメタクリレートモノマー残基、
ii.4~40重量%の、高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー、
iii.任意選択的な、0~10重量%の他のアクリレート又はビニルコモノマー残基、並びに
iv.架橋剤を含有する、3~25重量%のアクリル樹脂;(b)70~95重量%のフィラー;並びに(c)任意選択的なカップリング剤;を含有する合成石のための組成物であって、成分(a)(i)のMMA残基が、(コ)ポリマーの重量基準で少なくとも80%のMMAの残基を含む、MMA残基含有(コ)ポリマーの形態でアクリル樹脂の中に存在する、組成物が提供される。
【0012】
本発明の代替の第1の態様によれば、(a)i.50重量%超~最大95重量%の、メチルメタクリレート及びメチルメタクリレートモノマー残基、
ii.4~40重量%の、高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー、
iii.任意選択的な、0~10重量%の他のアクリレート又はビニルコモノマー残基、並びに
iv.架橋剤を含有する、3~25重量%のアクリル樹脂;(b)70~95重量%のフィラー;並びに(c)任意選択的なカップリング剤;を含有する合成石のための組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
アクリル樹脂(a)及びフィラー(b)は、通常処理する直前まで別々に離されたままにされる。そのため、本発明の追加的な態様として、・本発明の第1の態様若しくは代替の第1の態様のアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂を含み、任意選択的には本発明の第1の態様のカップリング剤(c)も更に含むアクリル樹脂成分;並びに・本発明の第1の態様のフィラー(b)にかかるフィラーを含むフィラー成分;を含む、合成石を形成するための成分のキットも提供される。
【0014】
アクリル樹脂(a)は、典型的には重合後の合成石の中でフィラー成分を結合させるために機能することが可能な液体樹脂である。
液体樹脂は、21℃及び60rpmのスピンドル2設定で、300~1000センチポアズ、または400~900センチポアズなどの、200~1100センチポアズの粘度を有し得る。好ましくは、液体樹脂は、21℃及び60rpmのスピンドル2設定で、300~1000センチポアズ、より好ましくは350~800センチポアズ、最も好ましくは400~700センチポアズの粘度を有する。
【0015】
アクリル樹脂は、組成物の4~20重量%、好ましくは4~18重量%、より好ましくは5~15重量%の量で存在していてもよい。したがって、フィラーは、75~95重量%、好ましくは80~95重量%、より好ましくは80~90重量%で存在していてもよい。フィラー及び樹脂のこれらの範囲は、例えばカップリング剤が存在できるように、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。
【0016】
成分(a)(i)のMMA及び/又はMMA残基は、60~95重量%、又は65~95重量%などの、アクリル樹脂の55~95重量%の量でアクリル樹脂中に存在していてもよい。好ましくは、成分(a)(i)のMMA及び/又はMMA残基は、70~95重量%、より好ましくは75~93重量%、又は77~89重量%の量で存在する。
【0017】
用語「MMA残基」は、当業者に周知の用語であり、MMAモノマーから形成されたオリゴマー又はポリマーの中の部位を意味する。
(a)(i)のMMA残基は、オリゴマー及び/又はポリマーの中に存在していてもよい。好適には、MMA及び/又はMMA残基は、MMAモノマーとMMA残基との混合物の形態である。
【0018】
好適には、(a)(i)のMMAモノマー成分は、25~70重量%、30~65重量%、又は32~60重量%などの、アクリル樹脂の20~75重量%の量で存在する。好ましくは、(a)(i)のMMAモノマー成分は、38~50重量%、より好ましくは40~48重量%、最も好ましくは42~46重量%などの、アクリル樹脂の34~50重量%の量で存在する。
【0019】
(a)(i)のMMA残基成分は、25~70重量%、30~65重量%、又は30~60重量%などの、アクリル樹脂の20~75重量%の量で存在していてもよい。好ましくは、(a)(i)のMMA残基成分は、33~45重量%、より好ましくは35~43重量%、最も好ましくは37~41重量%などの、アクリル樹脂の30~55重量%又は30~50重量%の量で存在する。
【0020】
成分(a)(i)のMMA残基は、MMA残基含有(コ)ポリマーの形態でアクリル樹脂中に存在していてもよく、好適には、MMA残基含有(コ)ポリマーは、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%などの、少なくとも(コ)ポリマーの70重量%のMMAの残基を含む。好ましくは、(コ)ポリマーは、少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%などの、少なくとも90重量%のMMAの残基を含む。
【0021】
MMA残基に加えて、MMA残基含有(コ)ポリマーは、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ビニルトルエン、及びスチレンからなる群(n-、sec-、tert-、及び/又はiso-形態などの全ての骨格異性体形態を含む)からなる群から選択される、より典型的にはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、又はスチレンから選択されるコモノマーから好適に形成される1種以上の他のアクリレート若しくはビニルコモノマー残基((a)iii)を含んでいてもよい。
【0022】
好ましくは、MMA残基含有(コ)ポリマーはPMMAホモポリマーである。
高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマーである成分(a)(ii)は、5~35重量%、5~30重量%、又は5~25重量%などの、アクリル樹脂の5~40重量%の量で存在していてもよい。好ましくは、成分(a)(ii)は、アクリル樹脂の6~20重量%、より好ましくは7~18重量%又は7~15重量%、最も好ましくは7~14重量%の量で存在する。
【0023】
「高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー」は、重合可能な単一の(アルク)アクリレート基を有し、標準大気圧すなわち1barでMMAよりも高い沸点を有するモノマーを意味する。成分(a)(ii)は、標準大気圧条件で、102℃超、105℃超、110℃超又は130℃超、好ましくは150℃超などの、101℃より高い沸点を有するモノマーから選択することができる。
【0024】
好適な成分(a)(ii)は、モノマーである(C3~C12)アルキルアクリレート及び/又は(C2~C12)アルキル(C1~C8アルク)アクリレートから選択される。好ましくは、成分(a)(ii)は、(C3~C10)アルキル(C0~C6アルク)アクリレート、より好ましくは(C3~C8)アルキル(C0~C4アルク)アクリレート、最も好ましくは(C3~C6)アルキル(C0~C2アルク)アクリレートに従うモノマーから選択される。(C0アルク)アクリレートは、α炭素上にアルキル置換基が存在せず、C5アルキル以上がシクロアルキルを含む、無置換アクリレートを意味する。
【0025】
成分(a)(ii)のモノマーは、エチメタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート(n-、sec-、tert-、及び/又はiso-形態などの全ての骨格異性体形態を含む)からなる群のうちの1種以上から選択されてもよい。好ましくは、成分(a)(ii)のモノマーは、ブチル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、i-ブチルメタクリレート又はn-ブチルメタクリレートなどのブチルメタクリレートである。
【0026】
成分(a)(ii)は、i-ブチルメタクリレート及びn-ブチルメタクリレートなどの2種以上の高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマーから構成されていてもよい。
架橋剤である成分(a)(iii)は、0.1~5重量%、又は0.2~4重量%などの、アクリル樹脂の0.01~10重量%の量で存在していてもよい。好ましくは、架橋剤は、0.3~3重量%、より好ましくは0.4~2重量%の量で存在する。
【0027】
架橋剤は、多官能性メタクリレートなどの、任意の好適な架橋剤のうちの1種以上から選択されてもよい。例えば、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、1,3-ブタンジオールジメタクリレート(1,3-BDDMA)、及び/又はアリルメタクリレート(ウレタンジ(メタ)アクリレート(UDMA)及び/又はポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)などのオリゴマー状のジ(メタアクリレート)を含む)などのジ若しくはトリ-メタクリレートであってもよい。
【0028】
好ましくは、本発明の組成物、成分のキット、及び合成石は、イオン性架橋剤を含有しない。イオン性架橋剤は、共有結合とは対照的にイオン結合を使用して架橋する架橋剤である。本発明から除外され得るイオン性架橋剤は、水の中で解離して二価又は多価のカチオンを形成することができる金属酸化物若しくは水酸化物などの、二価又は多価のカチオンの塩であってもよい。好適には、二価又は多価のカチオンは、アクリル樹脂のカルボン酸基と反応するために機能することができる。室温で組成物の硬化を生じさせるか固化を有意に増加させるイオン性架橋剤を添加することは回避すべきである(本発明は、最大40℃の周囲温度で達成すべき数時間のポットライフを可能にする)。
【0029】
使用されるフィラーの種類及び量は、最終的な製品で必要とされる審美性及び性能の要件に依存するであろう。アクリル樹脂と相溶性を有する限り、任意のフィラーを使用することができる。好適には、フィラーは、天然の骨材であるかこれを含んでいてもよい。本明細書において、用語「天然の骨材」は、主に破砕若しくは粉砕された天然石または鉱物を意味する。天然の骨材は、炭酸カルシウム、石英、クリストバライト、花崗岩、長石、大理石、珪岩、ドロマイト、玄武岩、及びフェロシリコンからなる群のうちの1種以上から選択されてもよい。大理石、花崗岩、及び石英が特に好ましく、より好ましくは石英である。
【0030】
用語「フィラー」は、多くの場合にポリマー組成物に添加される、他の材料を含むか他の材料から完全になるものであると理解される場合もある。そのようなフィラーとしては、シリカ(例えばフュームドシリカ又は粉砕シリカ)、粘土、フライアッシュ、セメント、破砕セラミック、マイカ、ケイ酸塩フレーク、破砕ガラス、ガラスビーズ、ガラス球、鏡の断片、スチールグリット、アルミニウムグリッド、カーバイド、プラスチックビーズ、ペレット化ゴム、粉砕ポリマー複合材料、ポリマーフレーク、グラファイト、繊維、木材チップ、おがくず、ラミネート紙、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、顔料、着色剤、及びこれらの混合物のうちの1種以上を挙げることができる。
【0031】
好ましくは、フィラー(b)は、石英、フュームドシリカ若しくは粉砕シリカ、及び/又は無機顔料(TiO2等)などの天然の骨材からなる群から選択される。好適には、フィラー(b)は、0.05~3重量%又は0.1~2重量%などの、組成物の0.01~5重量%の顔料を含む。
【0032】
フィラー粒子の大きさは、材料の最終用途に応じて様々であってもよい。フィラーの大きさは、必要とされる審美性次第であってもよい。単純な色は通常はより小さい粒径を有する一方で、花崗岩は必要とされる効果に応じて様々な大きさの組み合わせを含むであろう。いくつかの石は、大きい粒子状のミラーガラスも含み得る。ほとんどの方法では、フィラー(b)粒子の平均径d50は、50mm未満、好ましくは40mm未満、より好ましくは30mm未満である。フィラー成分(b)は、0.01~5mm、0.03~4mm、又は0.03~3mmなどの、0.01~100mmの範囲内の平均粒径を有するフィラーフラクションを含み得る。好適には、これらの大きさはフィラー中の天然骨材に特に適用することができる。
【0033】
フィラー成分(b)は、異なる平均粒径を有するフラクションから形成されていてもよい。フィラー(b)は、0.1~0.3mmなどの0.01~0.3mmの平均粒径を有するフラクションと、0.3~0.8mmの平均粒径を有するフラクションと、0.8~3mm又は0.8~2mmなどの0.8~5mmの平均粒径を有するフラクションとを含み得る。粒径は、Sedigraph III 5120粒径分析装置などのレーザー手法を使用して、又はふるいサイズにより、決定することができる。
【0034】
粗いフィラーフラクションであるとみなされ得る上のフィラーフラクションの大きさに加えて、フィラー成分(b)は、粗いフィラーフラクションの平均粒径よりも小さい平均粒径を有する微細フィラーフラクションも含んでいてもよい。例えば、微細フィラーフラクションの平均粒径は、200μm未満又は100μm未満又は50μm未満などの500μm未満であってもよい。好適には、微細フィラーフラクションは、粉砕シリカ又はフュームドシリカなどのシリカを含む。
【0035】
微細フィラーフラクションは、5~35重量%又は10~30重量%、好ましくは15~25重量%の量などの、フィラー成分の0~40重量%の量で、フィラー(b)の中に含まれていてもよい。粗いフィラーフラクションは、65~95重量%又は70~90重量%、好ましくは75~85重量%などの、フィラー成分の60~100重量%の量で存在していてもよい。
【0036】
組成物は、フィラー成分(b)と樹脂成分(a)との間の付着を促進するために、カップリング剤である成分(c)を更に含有していてもよい。好適には、組成物は、0.5~3重量%又は0.7~2.5重量%、好ましくは0.8~1.5重量%などの、樹脂の0.1~5重量%のカップリング剤を含有する。
【0037】
カップリング剤は、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの、シランカップリング剤であってもよい。
【0038】
組成物は、開始剤系である成分(d)を更に含有していてもよい。好ましくは、開始剤系は、熱的に活性化されるように機能することができる。
開始剤系は、75℃未満、70℃未満、又は65℃未満などの、85℃未満又は80℃未満で最大1時間の半減期を有する少なくとも第1の開始剤を含んでいてもよい。好適には、第1の開始剤は、75℃未満、70℃未満、又は65℃未満などの、85℃未満又は80℃未満で1時間の半減期を有する。好ましくは、第1の開始剤は、少なくとも3か月などの間、最高20℃で貯蔵安定性を有する。好適には、第1の開始剤は、好適には少なくとも3か月の間、最高25℃で、好ましくは最高30℃で、より好ましくは最高35℃で、貯蔵安定性を有する。そのため、好ましくは、開始剤系は、比較的低温であるが周囲温度より高い温度での迅速な重合の開始を可能にする。
【0039】
好適には、開始剤系は2種以上の開始剤の混合物を含む。開始剤系は、第1の開始剤よりも高い温度でアクリル樹脂の重合を開始するために機能することができる第2の開始剤を含んでいてもよい。第2の開始剤は、95℃(90℃又は85℃等)で最大1時間の半減期を有し得る。好適には、第2の開始剤は、95℃未満(90℃未満又は85℃未満等)で最大1時間の半減期を有する。好ましくは、第2の開始剤は、95℃未満(90℃未満又は85℃未満等)で1時間の半減期を有する。好ましくは、第2の開始剤は、最高25℃で貯蔵安定性を有する。より好ましくは、第2の開始剤は最高35℃でなど、最高30℃で貯蔵安定性を有する。
【0040】
好適には、「貯蔵安定性」とは、開始剤が安定であり有効性の喪失が最小限となることを意味する。「最小限」とは、好ましくは、10%(5%未満又は1%未満等)などの25%未満の、未反応のモノマーによって測定される重合反応における開始剤の有効性の喪失を意味する。
【0041】
好適には、開始剤系(d)はラジカル開始剤から構成される。系(d)のラジカル開始剤は、好適には第1の開始剤型としての、過酸化物及び/又はアゾ型の開始剤からなる群から選択される1種以上の開始剤、好ましくは少なくとも1種の過酸化物型開始剤であってもよい。任意選択的には、第2の開始剤型はアゾ開始剤である。
【0042】
開始剤系(d)は、ジ-(t-ブチル-シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、アゾ-ジ-イソブチロニトリル、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)、及び/又はジセチルペルオキシジカーボネートからなる群から選択される1種以上の開始剤を含んでいてもよい。
【0043】
好ましくは、開始剤系(d)は、第1の開始剤としてのジ-(t-ブチル-シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートと、第2の開始剤としてのアゾ-ジ-イソブチロニトリルと、任意選択的な第3の開始剤とから構成される。第3の開始剤はtert-ブチルペルオキシベンゾエートであってもよい。
【0044】
有利には、本発明の開始剤系は、周囲温度で延長されたポットライフをもたらすが、大部分のMMAが失われ得る温度である80℃以上などの温度にこれがオーブン中で到達する前に、スラブの大半を迅速に硬化させる。そのため、本発明の開始剤系は、有意な硬化を開始させることなしに、活性化された樹脂の調製及び取り扱い並びにフィラーフラクションとのその混合を可能にする。これは、方法が高い周囲温度の領域で行われる場合に、混合物のモールドへの移動及びモールドの充填を可能にするために特に有利である。
【0045】
開始剤系(d)は、アクリル樹脂(a)及び/又はフィラー(b)と予め混合されていてもよい。開始剤系(d)は、処理の直前のみにアクリル樹脂(a)及びフィラー(b)と一緒にされてもよい。
【0046】
したがって、本発明の別の態様によれば、合成石を形成するための成分のキットが提供され、キットは、・本発明の第1の態様若しくは代替の第1の態様のアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂を含み、任意選択的には本発明の第1の態様のカップリング剤(c)も更に含むアクリル樹脂成分;・本発明の第1の態様のフィラー(b)にかかるフィラーを含むフィラー成分;並びに・本発明の第1の態様の開始剤系(d)にかかる開始剤系を含む開始剤成分;を含む。
【0047】
任意選択的には、アクリル樹脂成分は、好ましくはシランカップリング剤の後に、開始剤成分と予め混合されてもよい。典型的には、この液体相は、その後予め混合されたフィラー及び顔料組成物の中に混合される。
【0048】
本発明の任意の態様にかかる組成物は、UV安定剤、阻害剤、又は調整剤などの他の添加剤も更に含有していてもよい。更に、組成物は、消泡剤、レオロジー添加剤、レベリング剤、濡れ剤、及び/又は分散剤などの他の補助剤を含んでいてもよい。
【0049】
好ましくは、組成物は、0.5~4重量%又は1~3重量%などの、樹脂の0.1~5重量%の量でUV安定化剤を含む。
本発明の態様にかかる組成物は、特に、テーブルの天板、調理台、建築物の外装材、歩道、テラスの家具、装飾用石材、屋外用タイル、床材、覆い、壁の外装材、及び模造石構造体の製造のためなどの、屋外で使用するための合成石の製造に特に好適である。
【0050】
有利には、本発明の高MMA含有率合成石組成物は、通常の処理方法に適合させる必要なしに、脆さが減少したアクリル合成石を合成するために使用することができる。更に、低MMA含有率アクリル合成石組成物と比較して、本発明の組成物は、より低いコストとの組み合わされた、改善された相溶性制御の容易さももたらす。また更には、本発明の組成物は、熱膨張及び収縮に対する耐性も示す。
【0051】
本発明の合成石は、有利には改善された染色耐性、及び/又は例えば合成石の上に熱い物体を置くことによって生じる高温衝撃などの高温衝撃に対する耐性を付与する。したがって、本発明の合成石は、調理台などの製造のためなどの、屋内用途のための優れた特性を付与するために使用することができる。
【0052】
本発明の追加的な態様によれば、次の工程を含む合成石の製造方法が提供される:a.本発明の第1の態様若しくは代替の第1の態様のアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂、本発明の第1の態様のフィラー(b)にかかるフィラー、並びに任意選択的なカップリング剤(c)及び任意選択的な開始剤系(d)を混合する工程、好ましくは成分が樹脂と均一になるまで混合する工程;b.混合物をモールドに入れ、好ましくは真空、圧縮、及び/又は振動をかけながら、混合物を実質的に脱気する工程;c.加熱することにより、好ましくは85℃~125℃などの75℃~130℃の温度に加熱することにより、混合物を硬化させる工程;並びにd.任意選択的な、硬化した混合物を研磨する工程。
【0053】
したがって、合成石は、本発明にかかる組成物から、Breton法として一般的に知られている真空下での振動-圧縮の通常の方法、及びその後の樹脂の硬化のための加熱によって、製造することができる。
【0054】
使用される振動機は、当業者に公知のBreton法において典型的に使用されるものである。
本発明の追加的な態様によれば、次の工程を含む合成石の製造方法が提供される:a.本発明の第1の態様若しくは代替の第1の態様のアクリル樹脂(a)にかかるアクリル樹脂、本発明の第1の態様のフィラー(b)にかかるフィラー、並びに任意選択的なカップリング剤(c)及び任意選択的な開始剤系(d)を混合する工程、好ましくは成分が樹脂と均一になるまで混合する工程;b.混合物を実質的に脱気する工程;c.混合物を、例えばダブルベルトなどのプレスに入れる工程;d.加熱することにより、好ましくは85℃~125℃などの75℃~130℃の温度に加熱することにより、混合物を硬化させる工程;並びにe.任意選択的な、硬化した混合物を研磨する工程。
【0055】
好適には、混合物を脱気するためにインラインミキサーが使用される。
本発明の任意の態様にかかる方法においては、(a)(i)のMMA残基成分は、工程a中で(b)と最初に混合された際に、アクリル樹脂の少なくとも20重量%の量で存在していてもよい。
【0056】
好ましくは、本発明の方法は、本明細書で定義したイオン性架橋剤の使用を含まない。
本発明の追加的な態様によれば、本発明の任意の他の態様にかかる組成物又はキットから形成される合成石が提供される。
【0057】
本発明の追加的な態様によれば:(a)
i.50重量%超~最大95重量%の、メチルメタクリレートモノマー残基、
ii.4~40重量%の、高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマー残基、
iii.任意選択的な、0~10重量%の他のアクリレート又はビニルコモノマー残基、及び
iv.架橋剤残基、を含有する、3~25重量%のアクリル樹脂;(b)70~95重量%のフィラー;並びに(c)任意選択的なカップリング剤残基;を含有する合成石が提供される。
【0058】
本発明の合成石のアクリル樹脂である成分(a);メチルメタクリルモノマー残基である成分(a)(i);高沸点物モノ(アルク)アクリレートモノマー残基である成分(a)(ii);他のアクリレート又はビニルコモノマー残基である成分(a)(iii);架橋剤残基である成分(a)(iv);フィラーである成分(c);及びカップリング剤残基である成分(c);は、本発明の第1又は任意の他の態様のそれぞれの成分において定義される。具体的には、本発明の第1又は任意の他の態様の、それぞれアクリル樹脂である成分(a);MMA及びMMA残基である成分(a)(i);高沸点モノ(アルク)アクリレートモノマーである成分(a)(ii);他のアクリレート又はビニルコモノマー残基である成分(a)(iii);架橋剤である成分(a)(iv);フィラー成分である成分(c);及びカップリング剤である成分(c);についての定義の通りである。用語「残基」は、合成石の製造後に本発明の第1又は他の態様で定義された通りのそれぞれの成分から形成された合成石中の部分の存在を意味することが明白になる。本明細書における「第1の態様」についての言及は、別段の提示がない限り、第1の態様又は代替の第1の態様のいずれかを意味する。
【0059】
本発明の追加的な態様によれば、本発明のいずれかの態様にかかる方法によって製造される合成石が提供される。
本発明の追加的な態様によれば、合成石の製造における本発明のいずれかの態様にかかる組成物又はキットの使用が提供される。
【0060】
本発明で使用される樹脂はアクリル樹脂である。本明細書における定義に影響を及ぼすものではないが、本発明の石組成物は、通常、最終的に重合した石組成物の樹脂組成物中に、50重量%超、より具体的には54重量%超、より好ましくは60重量%超、又は70重量%超、又は90重量%超のアクリル残基を有する樹脂を有する石組成物とみなすべきである。そのため、本発明は、最終的に重合した石組成物の樹脂組成物中に、50重量%超、より好ましくは60重量%超、又は70重量%超、又は90重量%超のポリエステル繰り返し単位を有する樹脂を有するとみなされ得るポリエステルを主成分とする樹脂の石組成物には及ばない。そのため、通常、本発明のアクリル樹脂成分は、組成物中の全樹脂の95重量%超、より典型的には98重量%超、最も典型的には、石組成物中の全樹脂の約100重量%を構成する。
【0061】
本発明の任意の態様の2つ以上の任意選択的な特徴は組み合わされてもよく、あるいはしかるべき変更を加えた上で本発明の任意の他の態様との組み合わされてもよいことは明白であろう。
【0062】
本発明をより深く理解するために、そして本発明の実施形態を実施し得る方法を示すために、ここで以降の実験データについて例示の目的で言及する。
【実施例0063】
相対的な脆さを示す製造した実施例:-
実施例1:44.2%のメチルメタクリレート(MMA)、5.4%のi-ブチルメタクリレート、8.8%のn-ブチルメタクリレート、0.6%のエチレングリコールジメタクリレート、38.8%のポリメチルメタクリレート(Elvacite 4071)(全て重量%)、並びに2.2重量%の、UV安定剤と分散剤と分散担体との組み合わせ(0.09重量%の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(UV安定剤)、0.04%のビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(ヒンダードアミン光安定剤)、0.1重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(安定化剤)、1重量%のグリセロールトリアセテート、及び1重量%のソルビタントリオレエート)を、室温で終夜ローラーにかけることで均一な混合物を形成した。樹脂の粘度はブルックフィールド粘度計(60rpm、スピンドル2)を使用して21Cで654センチポアズで測定した。樹脂に、1重量%の3-メタクリルオキシ-n-プロピルトリメトキシシランを添加し、完全に混合した後、0.4重量%のジ-(t-ブチル-シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート及び0.5重量%のアゾ-ジ-イソブチロニトリルを添加した。
【0064】
その後、0.5重量%の無機着色顔料(例えばDuPont TiPure R960)、21.6重量%の粉砕シリカ(45ミクロン未満)、21.4重量%の石英(0.1~0.3mm)、23.8重量%の石英(0.3~0.8mm)、及び23.8重量%の石英(0.8~2mm)と共に、8.9重量%の活性化された樹脂を使用して、石英充填混合物を調製した。完全に混合した組成物は濡れた砂の外観を有していた。
【0065】
組成物を、離型剤(Lucite MR12)で処理した上下の鋼板からなるモールドに移した。組成物を下側のプレートの上に広げ、上面に上側のプレートを下げた。組成物に水槌ポンプからの圧力(3bar)と真空(22mmHg)の組み合わせをかえることで空気を除去した。
【0066】
スラブを125℃に設定したオーブンの中に入れ、そのまま35分間硬化させた。その後スラブをモールドから出し、表面品質及び砕けやすいエッジについて検査した。サンプルは、きめが細かく砕けにくいエッジを有することに基づいて5段階のうち相対的に5であると評価した。すなわち、エッジは完全なままであり、スラブの大半に付いていた。
【0067】
比較例1:実施例1で示したものと同じ手順及びパラメーターを使用して、58.4%のメチルメタクリレート、0.6%のエチレングリコールジメタクリレート、及び38.8%のポリメチルメタクリレート(Elvacite 4071)を含むアクリル樹脂(全て重量%)、並びに2.2重量%の、UV安定剤と分散剤と分散担体との組み合わせ(0.09重量%の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(UV安定剤)、0.04%のビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(ヒンダードアミン光安定剤)、0.1重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(安定化剤)、1重量%のグリセロールトリアセテート、及び1重量%のソルビタントリオレエート)を含む比較例を調製し、その後これを使用してスラブを製造した。
【0068】
スラブをモールドから出した後、これをエッジの砕け易さについて5段階のうち相対的に1のスコアをつけたと評価した。すなわち、これは脆くてスラブの大半から容易に取れるエッジを有していた。相溶性
実施例2:実施例1に記載した樹脂を、0.020%のアゾ-ジ-イソブチロニトリル及び0.025%の2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)と十分に混合し、これを100mlのポリプロピレン製ビーカーの中に約100mlの深さまで注ぎ、重さを記録した。
【0069】
次いで、60℃の水浴の中でサンプルを24時間硬化させた。モノマーを確実に完全に硬化させるために、サンプルをエアオーブン中で80℃で2時間、その後105℃で更に2時間加熱した。その後、サンプルをビーカーから取り出し、目視で検査した。5から0のスケール(5は見た目に完全に透明かつ無色であり、3は許容可能であり、0はほぼ不透明である)を使用すると、サンプルは5の評価の透明性を有する。
【0070】
実施例3:40.9%のメチルメタクリレート、17.5%のn-ブチルメタクリレート、0.6%のエチレングリコールジメタクリレート、及び38.8%のポリメチルメタクリレート(Elvacite 4071)(全て重量%)、並びに2.2重量%の、UV安定剤と分散剤と分散担体との組み合わせ(0.09重量%の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(UV安定剤)、0.04%のビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(ヒンダードアミン光安定剤)、0.1重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(安定化剤)、1重量%のグリセロールトリアセテート、及び1重量%のソルビタントリオレエート)を含む樹脂を、上の方法に従って調製した。
【0071】
硬化したサンプルをモールドから取り出した後、これは3の評価の透明性を有していた。
比較例2:31.2%のメチルメタクリレート。40%のi-ブチルメタクリレート、0.6%のエチレングリコールジメタクリレート、及び26%のポリメチルメタクリレート(Elvacite 4071)(全て重量%)、並びに2.2重量%の、UV安定剤と分散剤と分散担体との組み合わせ(0.09重量%の2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(UV安定剤)、0.04%のビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(ヒンダードアミン光安定剤)、0.1重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(安定化剤)、1重量%のグリセロールトリアセテート、及び1重量%のソルビタントリオレエート)を含む樹脂を、上の方法に従って調製した。
【0072】
硬化したサンプルをモールドから取り出した後、これは1の評価の透明性を有していた。
本出願と関連する本明細書と同時又はそれ以前に提出され本明細書と共に公衆の縦覧に供されている全ての論文及び文献に注意が向けられ、全てのそのような論文及び文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本明細書(任意の添付の請求項、要約、及び図面を含む)の中に開示されている全ての特徴、及び/又はそのように開示されている任意の方法及び手順の全ての工程は、そのような特徴及び/又は工程のうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。
【0074】
本明細書(任意の添付の請求項、要約、及び図面を含む)の中に開示されている各特徴は、明示的にそうでないとの言及がある場合を除き、同じ、均等な、又は同様な目的に役立つ代替の特徴によって置き換えることができる。そのため、明示的にそうでないとの言及がある場合を除き、開示されている全ての特徴は、均等な又は同様な特徴の包括的なシリーズのうちの1つの例示にすぎない。
【0075】
本発明は、前述した実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の請求項、要約、及び図面を含む)で開示した特徴の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法または手順の工程の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせにまで及ぶ。
成分(a)(i)の前記MMA残基が、MMA残基含有(コ)ポリマーの形態で前記アクリル樹脂中に存在し、前記MMA残基含有(コ)ポリマーは前記(コ)ポリマーの少なくとも70重量%のMMAの残基を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
成分(a)(ii)のモノマー(群)が、エチルメタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート(全ての骨格異性体を含む)からなる群のうちの1種以上から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
前記フィラーが天然の骨材を含み、前記天然の骨材は、炭酸カルシウム、石英、クリストバライト、花崗岩、長石、大理石、珪岩、ドロマイト、玄武岩、及びフェロシリコンからなる群のうちの1種以上から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。