(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032999
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ゲル組成物、並びに、その調製方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20240305BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240305BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/06
A61K47/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015680
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2022031772の分割
【原出願日】2019-02-07
(31)【優先権主張番号】62/628,709
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ホルヤー、マシュー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】レイビン、サミュエル
(57)【要約】
【課題】組織切除処置に有用なゲルなどの組成物、この組成物を含む医療装置、及びこの組成物を調製する方法を開示する。
【解決手段】組成物は、ジェランガム、複数の塩及び水を含有する。いくつかの態様では、組成物は、ジェランガムと水とを組み合わせて予備混合物を形成する工程と、予備混合物を加熱する工程と、加熱した予備混合物に複数の塩を添加して混合物を形成する工程と、混合物をリザーバーの中に導入する工程と、リザーバー内で混合物をゲルにする工程とによって調製される。ゲルは、連続した3次元構造を備え、所望するゲル強度と粘度とを有する。組成物は、生体適合性を有し、リザーバーから針の中を通過して患者の体内の標的部位に注入される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の標的部位に送達する為のゲルの調製方法において、
ジェランガムと水とを組み合わせて予備混合物を形成する工程と、
前記予備混合物を加熱する工程と、
1価カチオンを含む第1の塩と2価カチオンを含む第2の塩とを前記予備混合物に添加して混合物を形成する工程と、
前記混合物をリザーバーに導入する工程と、
前記混合物を冷却して前記リザーバー内でゲルを形成する工程と
を備え、
前記ゲルは生体適合性を有し、且つ、前記リザーバーから針の中を通過して前記標的部位に注入される、方法。
【請求項2】
前記ゲルは、前記ゲルの総重量に対して重量比で0.01%~2.0%の前記ジェランガムと0.01%~0.1%の前記第2の塩とを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物の前記1価カチオンの前記2価カチオンに対するモル比は、5~200である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の塩の前記1価カチオンは、ナトリウム又はカリウムであり、前記第2の塩の前記2価カチオンは、カルシウム又はマグネシウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の塩は、塩化ナトリウム又はその水和物からなり、前記第2の塩は、塩化カルシウム又はその水和物からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲルは、130s-1のせん断力で0.005Pa・s~0.050Pa・sの粘度を有し、768s-1のせん断力で0.004Pa・s~0.010Pa・sの粘度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物は、240mOsmol/kg~340mOsmol/kgの浸透圧を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記予備混合物は、約50℃~約130℃の温度で加熱される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物は、前記リザーバーに導入された際、約50℃~約130℃の温度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物は、前記リザーバーに導入される前に約50℃以下の温度に冷却され、前記方法は、前記リザーバー内で前記混合物を約50℃~約130℃の温度で加熱する工程をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲルは、前記リザーバーの断面全体に亘って延びる連続した3次元構造を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記予備混合物又は前記混合物に少なくとも1つの着色剤を添加する工程をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲルのエンドトキシンレベルは、20エンドトキシンユニット(EU)以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記リザーバーは、シリンジのバレルであるか、又は前記リザーバーは、可撓性を有するチューブを介して前記針に連結される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記予備混合物は、約50℃~約90℃に加熱され、前記混合物は、前記予備混合物の前記温度よりも高い温度まで加熱される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者の体内に注入する為の組成物、その調製方法及び使用方法、ならびにそのような組成物を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組織の診断や治療には、様々な医療装置が使用される。例えば、病理学的な評価や治療目的、例えば前癌性粘膜組織や腫瘍の検出や除去などの治療目的で、胃腸(GI)管や他の臓器系から組織サンプルを採取する為に内視鏡を用いた処置が実施されることがある。しかしながら、患者の体内からその下にある生体構造への負担を最小限にしながら組織の選択した部分を除去することは依然として困難である。
【0003】
内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)等の医療処置では、液体を組織に注入して異なる組織層を分離して病変の除去を支援することが行われる。例えば、流体を注入して粘膜組織から粘膜下組織を分離することができる。注入された流体は一般に下にある組織層から標的組織を持ち上げて、医師が標的組織を容易に切除可能にする。しかし、生理食塩水など、この目的で使用される液体は、数分以内に消散する傾向があり、手順全体を通して標的組織を確実に持ち上げたまま維持する為には、繰り返し注入をする必要がある。粘度の高い注射溶液が知られているが、このような代案はコストが高かったり、注入が困難であったり、注入後にすぐに消散/分解する傾向がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、組織の切除処置に有用な組成物及びそのような組成物の調製方法に関する。本開示のいくつかの実施態様によれば、組成物は、ジェランガムなどの多糖類、水、一価カチオンの供給源としての第1の塩、及び二価カチオンの供給源としての第2の塩から形成されたげゲルを含む。ゲルは、例えば、リザーバー内で乱されずに固められ、リザーバーから患者の体内に注入する前に連続的な3次元ネットワークを形成する。連続的な3次元ネットワークは、ゲルの均質な構造を提供することができる。
【0005】
本開示は、例えば、患者の標的部位に送達する為のゲルを調製する方法を含み、方法は、ジェランガムと水とを組み合わせて予備混合物を形成する工程と、予備混合物を加熱する工程と、1価カチオンを含有する第1の塩と、2価カチオンを含有する第2の塩とを予備混合物に添加して混合物を形成する工程と、混合物をリザーバーの中に導入する工程と、混合物を冷却してリザーバー内でゲルを形成する工程とを有する。ゲルは、生体適合性があり、且つ、リザーバーから針を介して標的部位に注入できる。例えば、ゲルは、リザーバーの断面寸法全体に亘って延びる連続した3次元構造であり得る。いくつかの場合には、方法は、少なくとも1つの着色剤を予備混合物又は混合物に添加する工程をさらに含み得る。
【0006】
いくつかの態様によれば、ゲルは、ゲルの総重量に対して、重量で0.01%~2.0%のジェランガムを含有する。代替的に又は追加的に、ゲルは、ゲルの総重量に対して、0.01%~0.1%の第2の塩を含有する。いくつかの例では、混合物の1価カチオンの2価カチオンに対するモル比は5~200である。いくつかの例では、第1の塩の1価カチオンは、ナトリウム又はカリウムであり、第2の塩の二価カチオンは、カルシウム又はマグネシウムである。少なくとも1つの例では、第1の塩は、塩化ナトリウム又はその水和物を含有し、第2の塩は、塩化カルシウム又はその水和物を含有する。いくつかの例では、ゲルのエンドトキシンレベルは、20エンドトキシン単位(EU)以下である。
【0007】
ゲルは、130s-1のせん断速度で、0.005Pa・s~0.050Pa・sの粘度を有し得る。代替的に又は追加的に、ゲルは、768s-1のせん断速度で、0.004Pa・s~0.010Pa・sの粘度を有し得る。例えば、ゲルは、130s-1のせん断速度で、0.015Pa・s~0.020Pa・sの粘度、及び768s-1秒のせん断速度で、0.004Pa・s~0.010Pa・sの粘度を有し得る。いくつかの例では、混合物は、240mOsmol/kg~340mOsmol/kgの浸透圧を有する。
【0008】
いくつかの態様では、予備混合物は、約50℃~約130℃の範囲の温度で加熱され得る。いくつかの例では、混合物は、リザーバーの中に導入された時、約50℃~約130℃の温度を有し得る。少なくとも1つの例では、混合物は、混合物をリザーバーの中に導入する前に約50℃以下の温度に冷却され、方法は、リザーバー内で約50℃~130℃の温度で混合物を加熱する工程をさらに含んでもよい。少なくとも1つの例では、リザーバーはシリンジのバレルでもよいし、又は、リザーバーは可撓性チューブを介して針に連結されていてもよい。
【0009】
いくつかの態様によれば、患者の標的部位に送達する為の組成物の調製方法は、ジェランガムと水とを組み合わせて予備混合物を形成する工程と、予備混合物を加熱する工程と、1価カチオンを含有する第1の塩と2価カチオンを含有する第2の塩を予備混合物に添加して混合物を形成する工程であって、混合物の1価カチオンの2価カチオンに対するモル比が5~200である1価カチオンを含有する第1の塩と2価カチオンを含有する第2の塩を予備混合物に添加して混合物を形成する工程と、混合物を加熱する工程と、混合物を冷却して連続した3次元構造を有する均質なゲルを形成する工程とを含む。ゲルは生体適合性があり且つリザーバーから針を介して標的部位に注入し得る。
【0010】
いくつかの例では、予備混合物は約50℃~90℃の温度に加熱され、混合物は、予備混合物の温度よりも高い温度まで加熱される。いくつかの例では、ゲルは、130s-1のせん断速度で0.005Pa・s~0.050Pa・sの範囲の粘度と、768s-1のせん断速度で0.004Pa・s~0.010Pa・sの粘度とを有する。
【0011】
本開示は、例えば、針及び針に連結されたリザーバーを備える医療装置と、リザーバー内のゲルであって、ジェランガムと、1価カチオンを含有する第1の塩と、2価カチオンを含有する第2の塩と、水とを含んでなり、生体適合性を有し且つ針を介して注入可能であり、130s-1のせん断速度で0.005Pa・s~0.050Pa・sの粘度を有するゲルとを更に含む。いくつかの例では、ゲルは、ゲルの総重量に対して0.1%未満の重量の第2の塩を含んでもよい。少なくとも1つの例では、リザーバーは、シリンジのバレルであってもよく、又はリザーバーは、可撓性チューブを介して針に連結される。
【0012】
いくつかの態様では、第1の塩の1価カチオンは、ナトリウム又はカリウムであり、第2の塩の2価カチオンは、カルシウム又はマグネシウムである。いくつかの例では、ゲル内の第1の塩の第2の塩に対するモル比は、5~200の範囲であってよい。
【0013】
いくつかの例では、ゲルは連続した3次元構造を有し、リザーバーの断面全体に延びる。いくつかの例では、ゲルは、ゲルの総重量に対して0.01%~2.0%の重量のジェランガムを含有し、ゲルのエンドトキシンレベルは、20エンドトキシン単位(EU)以下である。
【0014】
いくつかの態様では、ゲルは、FD&C Blue1などの少なくとも1つの着色剤をさらに含有してもよい。いくつかの態様では、ゲルは、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、又はリン酸カルシウムなどの少なくとも1つの金属イオン封鎖剤をさらに含有する。
【0015】
本明細書の中に組み込まれその一部を構成する添付の図面は、本開示の様々な例示の態様を示し、説明とあわせて本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本開示の特定の態様にかかる例示の医療装置を示す図。
【
図1B】本開示の特定の態様にかかる例示の医療装置を示す図。
【
図1C】本開示の特定の態様にかかる例示の医療装置を示す図。
【
図2A】本開示の特定の態様にかかる例示の組織切除法を示す図。
【
図2B】本開示の特定の態様にかかる例示の組織切除法を示す図。
【
図2C】本開示の特定の態様にかかる例示の組織切除法を示す図。
【
図2D】本開示の特定の態様にかかる例示の組織切除法を示す図。
【
図2E】本開示の特定の態様にかかる例示の組織切除法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の具体的な態様について、以下により詳細に説明する。本明細書で用いる用語及び定義が引用により援用する用語や定義と矛盾する場合には、本明細書の用語及び定義が優先する。
【0018】
本明細書で用いるように、「備える(comprise)」、「備える(comprising)」、又はその他の任意の変形は、所定の要素を含む工程、方法、組成物、物品、又は装置が、それらの要素のみを含むが、明示的にリストされていない、すなわち、そのような工程、方法、組成物、物品、又は装置に固有のその他の要素も含み得るという非排他的な包含をカバーすることを意図している。「例示的」という用語は、「理想的」という意味ではなく、「例」という意味で使用する。
【0019】
「ひとつの(a)」、「ひとつの(an)」、「その(the)」の単数形には、文脈が別の指示しない限り。複数の指示対象を含む。「約」、「およそ」という用語は、表記された数字又は数値とほぼ同じであることを示す。本明細書で使用されているように、「約」、「およそ」という用語は、特定されている量又は数値の±5%を包含すると理解しなければならない。
【0020】
本明細書は、患者に注入する為の組成物、例えばゲルを提供する。組成物は、患者の組織、例えば組織の少なくとも一部を切除する為に注入され得る。本開示のいくつかの態様によれば、組成物は、少なくとも1つのゲル化剤と、複数の塩と、水とを含有し得る。いくつかの例では、組成物は、注入(例えば針を介して)に適した生体適合性を有するゲルなどの所望するゲル強度や粘度を備えたゲルであり、又はそのようなゲルを含有し得る。少なくとも1つの例では、組成物は、せん断力の下においてより低い粘度を備え、静止時においてより高い粘度を有する偽塑性材料であってよい。
【0021】
組成物中のゲル化剤は、天然(植物性ガムや微生物性ガムなどの天然ガムなど)又は合成に由来するものであり、アニオン性、カチオン性、又は中性であり得る。ゲル化剤の非限定的な例には、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩、及びカラギーナンなどの多糖類が含まれる。
【0022】
少なくとも1つの例では、ゲル化剤は、ジェランガムを含有しうる。本明細書で用いるように、「ジェランガム」という用語は、多糖を指し(例えば、スフィンゴモナス菌によって生産される)、2つのD-ガラクトース残基と1つのL-ラムノース残基と、1つのD-グルクロン酸の1つの残基の4つの糖が結合した繰り返し単位で形成された一般的な構造を有する。ゲル化剤は、1種類以上のジェランガム、例えば天然ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、又はそれらの混合物を含み得る。天然ジェランガムは、グルクロン酸残基に隣接したグルコース残基に結合された2つのアシル基(例えば、アセテートとグリセレート)とを含み得る。2つのアシル基は、アルカリ性条件の下で除去されて、脱アシル化ジェランガムを生成し、脱アシル化ジェランガムは、天然ジェランガムと比較して異なる安定性及び可塑性を備える。例えば、天然ジェランガムは、一般に、熱可逆性を備えた軟らかい弾性の高いゲルを形成するが、脱アシル化ジェランガムは一般に耐熱性の高い硬く非弾性のゲルを形成する。少なくとも1つの実施形態では、組成物は脱アシル化ジェランガムを含有する。
【0023】
特定の微生物抽出物は、エンドトキシン、例えば、多糖構造と結合するようになる細菌由来のリポ多糖を含みうる。いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、組成物へのエンドトキシンの混入を最小限に又は排除するように選択し得る。いくつかの例では、ゲル化剤のエンドトキシンレベルは、20エンドトキシンユニット(EU)以下であり、例えば、0EU~約20EU、0EU~約10EU、0EU~約5EU、1EU~約20EU、約1EU~約10EU、又は約1EU~約5EUであり得る。したがって、例えば、ゲル化剤を含有する組成物のエンドトキシンレベルは20EU以下であり、例えば、0EU~約20EU、0EU~約10EU、0~約5EU、約1EU~約20EU、約1EU~約10EU、又は約1EU~約5EUであり得る。使用時には、組成物、例えばゲルは、好適な医療装置(例えば、シリンジ又は注入針に連結された流体リザーバー)を介して患者の標的部位に送達され得る。したがって、例えば、医療装置のエンドトキシンレベルは、20EU以下であり、例えば、0EU~約20EU,0EU~約10EU、0EU~約5EU、約1EU~約20EU,約1EU~約10EU、約1EU~約5EUであり得る。細菌のエンドトキシンレベルは、例えばリムルスアメーバトライセート(LAL)テストを使用して測定し得る。代替的に又は追加的には、ゲル化剤は、本明細書に開示する組成物に使用する前にエンドトキシンの濃度を低下又は除去する目的で処理され得る。例えば、組成物は、キサンタンガムなどの細菌由来の多糖を含有し、エンドトキシンの存在量を低下させるために処理されるため、得られる組成物は、薬学的に許容可能であり、適用される政府規制基準に準拠するものである。
【0024】
組成物中のゲル化剤の濃度は、組成物の総重量に対して約0.01%~約2.0%の範囲であり、例えば、組成物の総重量に対して、重量比で約0.02%~約1.5%、約0.05%~約1.0%、約0.05%~約0.50%、約0.05%~約0.15%、約0.10%~約0.20%、約0.15%~約0.25%、約0.20%~約0.30%、約0.25%~約0.35%、約0.30%~約0.40%、約0.35%~約0.45%、約0.40%~約0.50%。約0.1%~約0.5%又は約0.1%~約0.15%であり得る。少なくとも1つの例では、組成物中のゲル化剤の総濃度は、組成物の総重量に対して約0.05%~約0.5%の範囲であり得る。
【0025】
本開示のいくつかの態様によれば、本明細書の組成物は、1つ以上の塩、例えば、生理学的に適合性を有する塩を含有し得る。例えば、本明細書の組成物は、複数の、例えば、2,3,4,5又はそれ以上の異なる塩を含有し得る。少なくとも1つの例では、組成物は2つの塩を含有し得る。
【0026】
いくつかの例では、組成物は、1価カチオンを含有する少なくとも1つの塩を含有し得る。そのような塩の限定でない例には、ナトリウムカチオンやカリウムカチオンを含有する塩、例えば塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、リン酸2水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素カリウム(K2HPO4)、グルコン酸ナトリウム(C6H11NaO7)、酢酸ナトリウム3水和物(C2H9NaO5・3H2O)、それらの水和物、及びそれらの混合物が含まれ得る。少なくとも1つの例では、一価カチオンを含む塩は、塩化ナトリウムを含む。
【0027】
代替的に又は追加的に、組成物は、2価カチオンを含有する塩を含有し得る。そのような塩の非限定的な例には、カルシウムやマグネシウムカチオンを含む塩、例えば塩化カルシウム(CaCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、それらの水和物、及びそれらの混合物が含まれ得る。少なくとも1つの例には、2価カチオンを有する塩は、塩化カルシウム、又はその水和物、例えば塩化カルシウム2水和物であり得る。
【0028】
いくつかの場合には、組成物は、1価カチオンを含有する少なくとも1つの塩と、2価カチオンを含有する少なくとも1つの塩とを含有し得る。例えば、組成物は、少なくとも1つのナトリウム又はカリウム塩と、少なくとも1つのカルシウム又はマグネシウム塩を含有し、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カルシウム(CaCl2)、又は塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カリウム(KCl)及び塩化カルシウム(CaCl2)、又は塩化カリウム(KCl)及び塩化マグネシウム(MgCl2)を含有し得る。さらに、例えば、組成物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、グルクロン酸ナトリウム、又は酢酸ナトリウム3水和物から選択される少なくとも1つの塩と、塩化カルシウム、硫化マグネシウム、又は塩化マグネシウムから選択される少なくとも1つの塩との組み合わせを含有し得る。
【0029】
理論に拘束されるつもりはないが、2価カチオンを含む塩は、一般に1価カチオンのみを含む塩と比較してより強いゲル(例えば、比較的高いゲル強度を有するゲル)を形成すると考えられる。組成物中の1つ以上の塩の各塩の濃度は、組成物の総重量に対して重量比で約0.01%~約2.0%であり、例えば、組成物の全重量に対して約0.01%~0.50%、約0.01%~約0.20%、約0.25%~約1.0%、約0.5%~約1.5%、約0.50%~約1.0%、又は約1.0%~約2.0%であってよい。いくつかの例では、組成物中に存在する塩の総量は、組成物の総重量に対して重量比で約0.1%~約4.0%の範囲であってよい。
【0030】
いくつかの例では、組成物は、組成物の総重量に対して重量比で約0.10%~約2.0%、約0.1%~約0.5%、約0.25%~約0.75%、約0.50%~約1.0%、約0.75%~約1.25%、約1.0%~約1.5%、約1.25%~約1.75%、又は約1.5%~約2.0%、例えば、約0.80%、約0.85%、又は約0.90%の1価カチオンを含む塩を含有し得る。
【0031】
代替的に又は追加的に、組成物は、組成物の総重量に対して、重量比で約0.010%~約0.200%、約0.010%~0.050%、約0.025%~約0.075%、約0.050%~約0.100%、約0.075%~約0.125%、約0.100%~約0.150%、約0.125%~約0.175%、約0.150%~約0.200%、例えば約0.035%、約0.040%、約0.045%、約0.050%の2価カチオンを含む塩を含有し得る。少なくとも1つの例では、組成物は、組成物の総重量に対して重量比で約0.85%の塩化ナトリウムと、約0.034%の塩化カルシウムとを含有し得る。
【0032】
組成物は、組成物に所望する特性(例えば粘度、3次元構造、及び/又はゲル強度)を付与する割合で2つの異なる塩を含有し得る。いくつかの例では、組成物は、第1の塩(例えば1価カチオンを含む塩)と第2の塩(例えば2価カチオンを含む塩)とを約5~約200、約50~約150、約80~約120、約5~約50、約25~約75、約50~約100、約75~約125、約100~約150、約125~約175、約150~約200のモル比で含有し得る。少なくとも1つの例では、組成物は、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムを約5~約50、約10~約20、又は約15~約35のモル比で含有し得る。例えば、組成物は、約15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25のモル比(塩化ナトリウム対塩化カルシウム)で塩化ナトリウム及び塩化カルシウムを含有し得る。
【0033】
いくつかの例では、組成物は、生理学的に適合した生理食塩水、例えば塩化ナトリウム溶液を含有し得る。例えば、組成物は、ナトリウムカチオンを形成して3次元の固体ゲルネットワークの形成を支援し得る0.9重量%の塩化ナトリウム溶液を含有する。いくつかの場合には、組成物は等張性である。例えば、生理食塩水は、適切な濃度の1価カチオンや2価カチオンを含有する為、組成物は、組織液や血液と等張である。好適なイオン濃度を備える別の生理学的に適合する溶液も等張性を調製する為に使用され得る。
【0034】
本明細書の組成物は、1つ以上の添加物をさらに含有し得る。本開示のいくつかの態様によれば、組成物は1つ以上の生体適合性を有する染料又は着色剤を含有し得る。いくつかの例では、染料又は着色剤により、組織の中に注入した際、粘膜下の組織面を同定可能になる。例えば、除去すべき組織の量を判断したり、穿孔のリスクを評価したりすることができる。例えば、染料又は着色剤の例には、限定ではないが、ブリリアントブルー(例えば、FD&C Blue1としても知られる、Brilliant BlueFCF)、インディゴカルミン(FD&Blue2としても知られる)、インディゴカルミンレーク、FD&C Blue1レーク、メチレンブルー(塩化メチルチオニニウムとしても知られる)、又はそれらの混合物が含まれる。特に、着色剤としてFD&C Blue1を用いることにより、メチレンブルーなどの別の着色剤と比較して、長期間に亘って組成物の色を維持することが分かっている。組成物の着色を維持することにより、医療処置中において標的組織の同定を容易にし得る。
【0035】
組成物中の着色剤の濃度は、組成物の総重量に対して、重量比で約0.0001%~約0.0100%、約0.0001%~約0.0050%、約0.0005%~約0.0030%、約0.0001%~約0.0020%、約0.0010%~約0.0030%、約0.0020%~約0.0040%、約0.0030%~約0.0050%、約0.0040%~約0.0060%、約0.0050%~約0.0070%、約0.0060%~約0.0080%、約0.0070%~約0.0090%、又は約0.0080%~約0.0100%であってよい。いくつかの例では、組成物中の着色剤の濃度は、組成物の総重量に対して、重量比で約0.0005%~約0.0030%であってよい。少なくとも1つの例では、組成物中の着色剤の濃度は、組成物の総重量に対して重量比で約0.001%であってよい。
【0036】
本明細書で使用されているように、「金属イオン封鎖剤」という用語は、少なくとも1つの金属(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移金属)イオンと複合体を形成することができる物質を指す。理論に拘束されるつもりはないが、金属イオン封鎖剤は、所望の特性(例えば、3次元構造、ゲル強度、及び/又は粘度)を有するゲルの形成を促進することが可能である。いくつかの場合には、例えば、金属イオン封鎖剤を加えることにより、加熱工程がなくても、例えば室温又はそれに近い温度(約20℃~約25℃)でゲルを形成することができる。例えば、金属イオン封鎖剤により、室温又は室温に近い温度でゲル化剤の水和が可能になり得る。本明細書の組成物に好適な金属イオン封鎖剤の例には、限定ではないが、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0037】
別の任意の好適な生体適合性を有する薬剤も組成物中に含有され、例えば、組織の中に注入するのに適するように、組成物のpHや浸透圧を調節する。例えば、組成物は、1つ以上の安定化剤や保存剤を含有してもよい。本開示のいくつかの態様によれば、組成物は、表面の出血を抑制するためにエピネフリンなどの添加剤を含有し得る。組成物は、病的な組織の可視性を高める1つ以上の添加剤や、治療効果を有する1つ以上の添加剤を含み得る。例えば、添加剤は、薬理学的に活性であり、例えば、癌細胞に有効に作用し得る。
【0038】
組成物は、注入に適した粘度を有し得る。上記のように、いくつかの例では、組成物は、偽可塑性であり得る。偽可塑性は一般に、せん断力を付与した際、粘度が低下する性質のことを指す。したがって、例えば、組成物は、せん断力が高い条件(例えば、針の中に装填される間や針を介して注入する間)よりも静止時又はせん断力が低い条件(例えば容器内に収容されている間)にはより高い粘度を有する。偽可塑性を示す材料の例には、ジェランガムやキサンタンガムなどの多糖類が含まれる。
【0039】
例えば、組成物は、第1のせん断速度で第1の粘度を有し、第2のせん断速度で第2の粘度を有し、第1のせん断速度が第2のせん断力よりも高い時、第1の粘度は第2の粘度よりも低い。組成物の粘度は、粘度計、例えばレオメーターで計測し得る。いくつかの例では、組成物は、130s-1のせん断力で0.001Pa・s~0.100Pa・s、例えば130s-1のせん断力で約0.005Pa・s~約0.050Pa・s、約0.010Pa・s~約0.050Pa・s、約0.010Pa・s~約0.030Pa・s、又は約0.010PA・s~0.020Pa・s、又は約0.020Pa・s~約0.030Pa・s、又は約0.020Pa・s~約0.040Pa・sの粘度を有し得る。したがって、例えば、組成物は、130s-1のせん断力で約0.005Pa・s、約0.006Pa・s、0.008Pa・s、約0.010Pa・s、約0.011Pa・s、約0.012Pa・s、約0.013Pa・s、約0.014Pa・s、約0.015Pa・s、約0.016Pa・s、約0.017Pa・s、約0.018Pa・s、約0.019Pa・s、約0.020Pa・s、約0.022Pa・s、約0.024Pa・s、約0.026Pa・s、約0.028Pa・s、約0.030Pa・s、約0.032Pa・s、約0.034Pa・s、約0.036Pa・s、約0.038Pa・s、約0.040Pa・s、約0.042Pa・s、約0.044Pa・s、約0.046Pa・s、約0.048Pa・s、又は約0.050Pa・sの粘度を有し得る。少なくとも1つの例では、組成物は、130s-1のせん断力で0.0050Pa・sより大きな粘度を有し、例えば、130s-1のせん断力で約0.0050Pa・s~約0.050Pa・sの粘度を有し得る。少なくとも1つの例では、組成物は、130s-1のせん断速度で0.010Pa・sより大きな粘度を有し、例えば、130s-1のせん断速度で約0.010Pa・s~約0.030Pa・sの粘度を有し得る。
【0040】
代替的に又は追加的には、組成物は、768s-1のせん断力で0.001Pa・s~0.050Pa・sの粘度を有し得る。例えば、約0.002Pa・s~約0.030Pa・s、約0.003Pa・s~約0.020Pa・s、約0.004Pa・s~約0.010Pa・s、約0.004Pa・s~約0.006Pa・s、約0.005Pa・s~約0.007Pa・s、約0.006Pa・s~約0.008Pa・s、約0.007Pa・s~約0.009Pa・s、又は約0.008Pa・s~約0.01Pa・sの粘度を有し得る。したがって、例えば、組成物は、768s-1のせん断力で約0.003Pa・s、約0.004Pa・s、約0.005Pa・s、約0.006Pa・s、約0.007Pa・s、約0.008Pa・s、約0.009Pa・s、約0.010Pa・sの粘度を有するゲルであるか、又はそのようなゲルを含み得る。少なくとも1つの例では、組成物は、768sー1のせん断速度で0.010Pa・s未満の粘度、例えば768sー1のせん断速度で約0.005Pa・s~約0.009Pa・sの粘度を有し得る。少なくとも1つの例では、組成物は、768s-1のせん断力で約0.004Pa・s~0.010Pa・sの粘度を有し得る。さらに、例えば、組成物は、130s-1のせん断力で約0.010Pa・s~約0.030Pa・s、例えば、約0.017Pa・sの粘度を有し、768s-1のせん断力で約0.004Pa・s~約0.010Pa・s、例えば0.007Pa・sの粘度を有し得る。
【0041】
本開示は、本明細書の組成物を備える医療装置も提供する。医療装置は、患者の組織に組成物を注入するため、例えば、組織の少なくとも一部を切除する為に使用される。
本開示のいくつかの態様によれば、医療装置は1つ以上のリザーバーを備える。リザーバーは、本明細書の組成物用の容器として機能し得る。好適なリザーバーは、例えば、シリンジ(例えば、手動又は自動注入システムに適合するシリンジバレル)、プラスチックバッグなどの可撓性のポーチ、及び好適な注入針とともに使用するように構成された別の流体容器を含み得る。リザーバーに好適な材料の例は、限定ではないが、環状オレフィンコポリマー、環状オレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ガラスなどが含まれる。
【0042】
本明細書の医療装置は、1つ以上の針を備え得る。いくつかの例では、医療装置のリザーバーは、針に対して直接的に、例えばルアーアダプター又は別の好適な連結により連結されるか、又は針に間接的に、例えばカテーテルなど可撓性チューブを介して連結され得る。可撓性チューブを介してリザーバーに連結される針の非限定的な例には、ボストンサイエンティフィック社のインタージェクト(Interject)(登録商標)硬化療法針が含まれる。いくつかの例では、針は、皮下針であり、7ゲージ(4.57mmの外径、3.81mmの内径)から33ゲージ(0.18mmの外径、0.08mmの内径)の範囲、例えば、16ゲージ(1.65mmの外径、1.19mmの内径)、21ゲージ(0.82mmの外径、0.51mmの内径)、22ゲージ(0.72mmの外径、0.41mmの内径)、23ゲージ(0.64mmの外径、0.33mmの内径)、24ゲージ(0.57mmの外径、0.31mmの内径)である。針の材料の例には、限定ではないが、ステンレス鋼やニチノール(登録商標)などの金属や金属製合金、及びポリマーが含まれ得る。針の遠位端は、鋭利にされていてもよいし、斜めにされた形状にされていてもよい。針の近位端は、シリンジ又は別のリザーバーとの係合に適したフィッティング/アダプタ(例えば、ルアーアダプタ)を備えてもよい。いくつかの例では、針は、針の尖端と近位側のフィッティング/アダプターの間に長尺状のチューブ又はカテーテルを含んでもよい。
【0043】
組成物及び装置の形成方法についてさらに説明する。一般に、方法は、ゲル化剤と水とを組み合わせて予備混合物を形成する工程と、予備混合物を加熱する工程と、予備混合物に塩を添加して混合物を形成する工程と、混合物をリザーバーに導入する工程とを含みうる。いくつかの例では、混合物は、リザーバー内でゲルを形成し得る。
【0044】
少なくとも1つの例では、方法は、1つ以上のゲル化剤(例えば、ジェランガム)をゲル化剤と水とを組み合わせる(例えば、本明細書では予備混合物とも呼ばれる)ことにより水和する工程、水和したゲル化剤を加熱する工程、水和したゲル化剤に少なくとも2つの塩(例えば、1価カチオンを含有する塩と2価カチオンを含有する塩)を添加して混合物を形成する工程、ゲル化剤と水と塩とからなる混合物をリザーバーに導入する工程、及び混合物を冷却して混合物をリザーバーの中に導入する前又は後でゲルを形成する工程のうちの1つ以上の工程を含みうる。別例では、方法は、ゲル化剤と水とを組み合わせることにより1つ以上のゲル化剤(例えばジェランガム)を水和する工程と、水和したゲル化剤を加熱する工程と、少なくとも2つの異なる塩(例えば1価カチオンからなる塩と2価カチオンからなる塩)を水和したゲル化剤に添加して混合物を形成する工程であって任意に混合物の1価カチオンの2価カチオンに対するモル比が5~200の範囲である、少なくとも2つの異なる塩(例えば1価カチオンからなる塩と2価カチオンからなる塩)を水和したゲル化剤に添加して混合物を形成する工程と、混合物を冷却して連続した3次元構造を有する均質なゲルを形成する工程とのうちの1つ以上の工程を含み得る。このような例では、得られるゲルは、生体適合性があり且つリザーバー、例えば、シリンジバレル、IVバッグ、又は医療組成物用の別の好適なリザーバーから針の中を通過して患者の標的組織に注入可能である。
【0045】
本開示のいくつかの態様によれば、ゲル化剤と水の予備混合物(例えば、水和されたゲル化剤)は、塩を加える前に加熱される。いくつかの例では、予備混合物は、約50℃~約130℃の温度で、例えば、約70℃~約130℃、約80℃~約125℃、約90℃~約115℃、約95℃~約105℃、又は約70℃~約90℃で、例えば、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃、又は約130℃の温度である。いくつかの例では、約90℃未満の温度、例えば、約50℃~約60℃又は約70℃~約85℃の温度が使用される。いくつかの例では、予備混合物は、沸騰するまで、例えば、100℃以上の温度に加熱される。予備混合物は、ゲル化剤を水和するのに十分な時間をかけて加熱される。例えば、ゲル化剤と水の予備混合物は、約1分~約90分、又は約5分~約60分、又は約15分~約45分、又は約20分~約30分、約15分~約20分、例えば約15分、約20分、約30分、又は約45分かけて加熱される。
【0046】
金属イオン封鎖剤を使用する場合には、方法は、ゲル化剤を水和して予備混合物を形成する為に1つ以上のゲル化剤を少なくとも1つの金属イオン封鎖剤と水と組み合わせる工程を含む。いくつかの例では、ゲル化剤、金属イオン封鎖剤、及び水を含有する予備混合物は加熱されない。
【0047】
本明細書の方法は、水和したゲル化剤に1つ以上の塩を添加して混合物を形成する工程を含んでもよい。例えば、塩は、予備混合物を少なくとも50℃に加熱した後に添加される。少なくとも1つの例では、塩は、予備混合物が約10分間加熱された後、及び/又は予備混合物が少なくとも70℃に達した時に添加される。いくつかの例では、塩は、加熱中に予備混合物に添加され、得られた混合物は。同一条件で加熱され続ける(例えば、同一温度で、攪拌しながら)。代替的には、加熱された予備混合物は、塩が添加される前に冷却され、又は予備混合物は、50℃未満の温度、例えば室温又は室温に近い温度、例えば、上記のように金属イオン封鎖剤が用いられる時の温度であり得る。
【0048】
いくつかの例では、本明細書の方法は、1価カチオンを含む第1の塩、2価カチオンを含む第2の塩、又はそれらの組み合わせを添加する工程を含みうる。第1の塩と第2の塩の両方を添加する際、2つの塩はまず混合され、その後、予備混合物に添加され得る。代替的には、第1の塩及び第2の塩は、順番に予備混合物に添加される。例えば、第1の塩を添加した後に第2の塩が添加され、又はその逆に第2の塩を添加した後に第1の塩が添加される。
【0049】
本開示のいくつかの態様によれば、1つ以上の着色剤、1つ以上の金属イオン封鎖剤、及び/又は1つ以上の添加剤を加えて混合物を形成する工程もさらに含まれてもよい。例えば、方法は、混合物を形成する為に1つ以上の塩を添加した後1つ以上の着色剤を添加する工程を含み得る。代替的に又は追加的に、別例では、方法は、混合物を形成する為に1つ以上の塩が添加される前に1つ以上の着色剤を添加する工程を含みうる。
【0050】
得られた混合物は、生理学的に適合性があり、例えば、混合物がゲルを形成すると、混合物は患者の体内への注入に適したレベルの電解質、浸透圧、及びpHを有し得る。いくつかの例では、混合物は、約240mOsmol/kg~約340mOsmol/kg(例えば、290mOsmol/kg±50mOsmol/kg)、例えば約250mOsmol/kg~約320mOsmol/kg、又は約280mOsmol/kg~約300mOsmol/kgの浸透圧を有し得る。少なくとも1つの例では、混合物は、約290mOsmol/kgの浸透圧を有し得る。
【0051】
代替的に又は追加的に、方法は、水和したゲル化剤(予備混合物)及び/又は混合物のpHを調整する工程を含んでもよい。予備混合物及び/又は混合物のpHは、酸(例えば塩酸)又は塩基(例えば水酸化ナトリウム)を用いて、又は生体適合性の組成物を形成する別の物質を用いて調整され得る。
【0052】
理論に拘束されるつもりはないが、ジェランガムなどの多糖類であるゲル化剤に関して、多糖分子は、温度の低下と共に、コイルから二重らせんに転移を起こす可能性があり、例えば、溶液のイオン強度やpHに応じてゲルを形成させる可能性があると考えられている。例えば、ジェランガムのコイル分子は、温度が低下するにしたがって二重らせんを形成して、このらせんは凝集して接合部を形成してゲル化することがある。水中であって、低イオン強度、中性pHでは、らせんの凝集は、ジェランガム分子の負に帯電したカルボキシル基間の静電反発力により防止され得る。塩を添加したりpHを調整したり(例えばpHを低下させる)すると、らせん間の分子間の反発が減少して、接合部の形成が促進される結果、ゲル強度が高まる。したがって、塩を添加することにより、凝集に類似する過程で物理的な架橋が促進されて連続した3次元のゲルネットワークが形成され得る。この連続した3次元ネットワークは、開いた容器内で逆さにした時でさえ、3次元形態を維持することができる固体又は準固体ゲルを形成し得る。
【0053】
代替的に又は追加的に、塩を添加した後、得られた混合物は加熱される。混合物は、予備混合物を加熱した時と同一の条件で加熱され得る。代替的には、混合物は、予備混合物とは異なる条件で加熱されてもよい(例えば、金属イオン封鎖剤を用いる際などの予備混合物が加熱されない時)。例えば、混合物は、予備混合物よりも高い温度で加熱されてもよい。いくつかの例では、混合物は、約50℃~約130℃の温度で、例えば、約70℃~約130℃、約80℃~約125℃、約90℃~約115℃、約95℃~約105℃、又は約70℃~約90℃の温度、例えば、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃、約130℃の温度で加熱されてもよい。いくつかの例では、約50℃~約60℃の最低温度が使用される。いくつかの例では、約70℃~約85℃の最低温度が使用される。いくつかの例では、混合物は、沸騰するまで、例えば約100℃以上に加熱される。いくつかの例では、混合物は、約5分間~約90分間、約10分間~約60分間、約15分間~約45分間、又は約20分間~約30分間、例えば15分間、約20分間、約30分間、約45分間加熱される。混合物や予備混合物は、例えば磁気スターラー又は別の適切な混合装置を使用して持続的に又は断続的に攪拌しながら加熱されてもよい。
【0054】
本明細書の方法、混合物を冷却する工程をさらに備え得る。一定の温度以上に加熱されると、混合物は、粘度の低い流体を形成し得る。一定の温度又は温度範囲以下に冷却されると、混合物の粘度及び/又はゲル強度は上昇して、ゲルになる。少なくとも1つの例では、混合物は冷却されて、連続した3次元構造を有する均質なゲルを形成し得る。いくつかの例では、混合物は、約55℃又は約50℃に又はそれ以下の温度、例えば室温(約20℃~約25℃)に冷却される。冷却工程は、所定の時間、混合物を室温(例えば、約20℃~約25℃)で、又は室温以下の温度(例えば約4℃)で静置することにより実施され得る。
【0055】
いくつかの例では、混合物は、攪拌することなく冷却されてもよい。そのような場合には、混合物は、ほぼ均質なゲル、例えば連続した固体を形成し得る。したがって、例えば、得られたゲルは、ゲル粒子の凝集体又はコロイド混合物とは対照的に、ほぼ連続した3次元構造の固体又は準固体のゲルネットワークを有し得る。代替的に又は追加的に、混合物は、冷却時に、例えば、持続的又は断続的な攪拌により攪拌されてもよい。そのような場合には、攪拌は、少なくとも部分的にゲルの構造を破壊する可能性があり、例えば、3次元ネットワークをばらばらにして、個別のゲル粒子又はゲル断片を形成することがある。代替的に又は追加的に、ゲルの構造は、例えば、容器間で組成物を攪拌したり、振盪させたり、移動させたりすることにより、組成物の冷却後に少なくとも部分的に破壊され得る。
【0056】
本開示のいくつかの態様によれば、本明細書の方法は、医療装置(例えば、注入装置又は注入システムの収容容器)のリザーバーの中に混合物(例えば、上記の混合物)を導入する工程を含み得る。混合物は、約70℃~約130℃の温度、例えば、約90℃~約110℃の範囲の温度で加熱された後、リザーバーに導入されてもよい。例えば、混合物は、バイアルなどの最初の収容容器の中で加熱及び冷却されて、その後。混合物がその内部から患者の体内に注入される好適なリザーバーの中に移動されてもよい。そのような場合には、混合物は、最初の容器で冷却する間に攪拌されて、小さなゲル粒子からなる凝集物又はゲル状の流体を形成し得る。
【0057】
代替的に又は追加的に、混合物は、リザーバーの中に導入された後に加熱されてもよい。例えば、混合物は、冷却後、攪拌、せん断、押出し、又は他の方法で破砕されて、収容容器に収容されてもよい。ゲル粒子の凝集物又はゲル様の流体は、次に、ゲルが固化した後、追加の液体成分(例えば、粘性形態のジェランガムなどの別の粘性剤)と混合されてもよい。混合物は、その後、収容容器から好適なリザーバーに移動され、加熱後、冷却されて、リザーバー内で均質なゲルにされ得る。混合物は、次にリザーバーから針を介して患者の標的部位に直接的に注入され得る。いくつかの態様によれば、ゲルは、患者の体内に注入する前に最小限のせん断力や別の力にさらされ得る。注入前に、リザーバー内でゲルになる混合物の粘度は、ゲル化剤の特性や混合物の別の成分に対するゲル化剤の濃度に依存し得る。
【0058】
混合物は、次に、冷却され、粘度が増して、リザーバー内で均質な固体又は準固体のゲルにされ得る。いくつかの場合には、混合物は、リザーバーの中に導入後に再加熱されたあと冷却されて固体又は準固体の3次元ゲル形態にされてもよい。例えば、混合物は、リザーバーの中に導入されたあと、1回以上の加熱/冷却サイクルを受けてもよい。いくつかの態様によれば、例えば、混合物は、ゲル化剤と塩と水(例えば、確実に水和させるために)とからなる混合物をまず加熱して、次に、混合物をリザーバーであって混合物がそこから注入されるリザーバーの中に導入後に混合物を加熱することによって2回加熱され、冷却させて連続した3次元構造を有するゲルにされてもよい。本開示のいくつかの態様によれば、混合物は、リザーバーから患者の標的部位に直接注入される前にリザーバーから別の容器に移動されない。
【0059】
本願の方法は、混合物を滅菌する工程を更に含む。例えば、混合物は、約121℃の温度で又はそれに近い温度で混合物を加熱することによりリザーバーの中でオートクレーブされてもよい。代替的に又は追加的に、混合物は、リザーバーの中に導入した後にγ線照射や電子ビームにより滅菌されてもよい。
【0060】
理論に拘束されるつもりはないが、様々な力(例えば、せん断力、圧縮力、応力、摩擦力など)を付与すると、3次元ゲルネットワークの連続性に影響を与え、それにより、組織切除などの医療処置で使用する前にゲルの特性に影響を与え得ると考えられる。例えば、注入の前に容器間で組成物を移動することにより、患者の体内に注入される時にはゲルの3次元構造をせん断している可能性がある。いくつかの場合には、これにより、例えば、組織の中に拡散又は吸収される前に、ゲルが組織層を分離する能力を低下させたり、組織内(例えば粘膜な組織内)にゲルが留まる時間を減少させたりすることにより、組成物の効果は制限され得る。
【0061】
本開示のいくつかの態様によれば、本願の組成物、例えば、本開示の方法で調製された組成物は、十分な強度、例えば、ゲル強度を有し、力に耐えて力が3次元ゲルネットワークの連続性に与える影響を最小限にし得る。一方、十分な強度を有する組成物は、注入に適した粘度、例えば、組成物を医療装置のリザーバー又は針に詰まらせないような粘度を有し得る。代替的に又は追加的に、組成物は、医療装置、例えば注入装置のリザーバー内で連続した3次元ゲルネットワークに固化するよう調製される。組成物は、収容容器間で移動することによってゲル構造が破壊されることなくリザーバー内でほぼ均質なゲルの固体又は準固体を形成し得る。
【0062】
従って、構造が元の連続した3次元ネットワークの断片を形成する時であるゲルが針を貫通して注入されるまで、組成物は3次元構造を維持し得る。ゲルの断片は、注入針の直径に対応する直径を有し得るため、断片は、生体内で可能な限り大きく、ゲルの3次元構造のできるだけ多くを保持し得る。このより大きな粒子又は断片を注入することにより、ゲルが組織内に留まる時間は長くなると考えられる。
【0063】
被検者(例えば、ヒトの患者)から組織の少なくとも一部を切除する方法についてさらに説明する。方法は、上記組成物を被検者の組織に注入する工程と、患者の体内から組織の少なくとも一部を切除する工程とを含みうる。いくつかの例では、組成物は、粘膜下剥離剤であり得る。
【0064】
図1Aは、上記のゲル組成物用のリザーバーを形成する例示のシリンジ10を示す。シリンジ10は、バレル12、プランジャー14、及び1つ以上のストッパー16を備える。組成物15は、上記のように調製されて、バレル12の直径に亘って連続した3次元構造を有する固体ゲルに固化される。バレル12は、例えば、可撓性を有するカテーテル29を介して注入針50に取り付ける為に、バレル12の遠位端18にルアーアダプター(又は別の好適なアダプター/コネクター)を備える。カテーテル29の近位端は、バレル12を受承する為に好適な連結体を有する。別例では、バレル12は、注入針50に直接的に連結されてもよい。シリンジバレル12は、リザーバーとして機能し、針50を介して注入する為のゲル組成物15を収容し得る。
【0065】
図1Bは、自動注入システム45と共に使用する為の例示のシリンジ30を示す。シリンジ30は、
図1Aのシリンジ10の任意の特徴、例えば、バレル32、プランジャー34、及びバレル32の遠位端38にルアーアダプター(又は別の好適なアダプター/コネクター)を備える。組成物15は、上記の様に調製されて、バレル32内でゲルに固化され、シリンジ30は、注入されるゲルの量を自動で制御する為の注入システム45のチャンネル47の中に挿入される。シリンジ30の遠位端38は、カテーテル39を介して注入針(例えば、
図1Aの注入針50に類似する)に連結される。本開示のいくつかの態様によれば、プランジャー34は、注入システム45の一部を形成し、バレル32は、例えば、注入システム45に連結される別体の構成要素、例えば、交換可能なカートリッジであってもよい。例えば、組成物15は、注入システム45のプランジャー構成要素と互換性のある近位アタッチメントを有する交換可能なカートリッジとしてバレル32内で調製されてもよい。
【0066】
図1Cは、本開示のいくつかの態様にかかる例示のリザーバー60を示す。リザーバー60は、可撓性を有するポーチ又はバッグ、例えば、IVバッグにより設けられる。組成物15は、上記のように調製され、リザーバー60内でゲルに固化される。リザーバー60は、滅菌されて、ポリ塩化ビニル(PVC)などのプラスチック素材(例えば、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DEHP))又は非PVCプラスチック素材などからなり得る。ポーチは、組成物15を患者の体内に注入する為に、カテーテル69や針(上記のように任意の適したゲージ寸法を有する)に取り付ける為にルアーアダプター63を備えてもよい。リザーバー60は、リザーバー60を圧縮することによりカテーテル69及び/又は針を介して組成物を送達できるように圧縮可能であってもよい。
【0067】
図1A~1Cに示す以外のリザーバー及び注入方法も本開示に従って使用され得る。例えば、組成物は、電気焼灼装置又はシステムの一部を形成する流体チャンネルや針に連結されたリザーバーに収容されてもよい。したがって、医師は、電気焼灼ナイフ又はスネアなどの装置又はシステムの別の部分を同時又は続いて操作しながら、流体チャンネルを介して組成物を注入し得る。
【0068】
組成物を針の穴を介して移動させるのに必要とされる力の量(一般に「ピーク負荷」力と説明される)は、組成物の粘度、針の寸法(内径、外径、及び/又は長さ)、針が形成される材料に依存し得る。例えば、33ゲージの針を用いて組成物を注入する際には、7ゲージの針に比べてより大きな力が加えられる。組成物を注入する為に付与される力の量に影響を与え得る追加的な要因には、リザーバーを針に連結するカテーテルの寸法(内径、外径、及び/又は長さ)も含まれ得る。片手又は両手での注入する為に適するピーク負荷は、約5lbf(約22N)~約25lbf(約111N)、例えば約10lbf(約44N)~約20lbf(約89N)、例えば約15lbf(約67N)である。所定のゲル濃度で計測される負荷は、針や流速によって異なり得る。
【0069】
本開示のいくつかの態様によれば、針の寸法は、組成物の粘度や成分に基づいて選択することができ、又は逆に組成物の粘度や成分は、針の寸法に基づいて選択することができる。加えて、カテーテルチューブがある場合には、カテーテルチューブの寸法(内径、外径、及び/又は長さ)は、注入中に組成物に加えられる力の種類や量に影響を与え得る。これらのパラメータは、組成物の特性や患者のニーズに基づいて考慮に入れられ得る。本開示のいくつかの態様によれば、針の寸法は、23ゲージ又は25ゲージであってよい。いくつかの態様では、20ゲージ、21ゲージ、22ゲージなどより大きな寸法も、本願の組成物を注入する為に使用され得る。
【0070】
本願の組成物は、胃腸管系、呼吸器系、及び/又は泌尿生殖器系の組織の切除処置などの様々な医療処置で使用され得る。そのような医療処置で切除された組織は、病的又は損傷した組織と、病的でない組織、又はそれらの組み合わせを含みうる。例示の組織切除処置には、内視鏡的粘膜切除術(EMR)及び内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)が含まれる。これらの処置では、内視鏡は、患者の食道の中に一般に挿入されて、胃腸管系の中を進められ、食道、胃、又は小腸の標的組織に到達される。EMRは、直径2cm未満の組織の除去、例えば組織の生検の為、又は損傷又は病的な組織(例えば癌性病変)を除去する為に一般に用いられ、ESDは、より大きな病変の除去に一般に用いられる。
【0071】
いくつかの態様では、連続した固体又は準固体のゲル組成物は、上記のように調製されて、組織の2つの層の間、例えば、標的治療部位における上部粘膜層と下部固有筋層の間に注入される。組成物は、組織の一部の下の粘膜下スペース(粘膜下層)内に注入されて、注入されたゲルは、粘膜組織を固有筋層から分離させて、粘膜組織層を持ち上げ得る。次に、適した切断装置、例えば、ナイフなどの電気焼灼装置、スネア、はさみ、又は鉗子などを使用して組織の一部を除去することができる。より大きな組織部分を除去する為に(例えば、ESDを用いて)、組成物は、組織の一部の下に注入されて、ゲルは、組織の上部層を下部層から持ち上げる。その後、切断装置を用いて組織の一部の周囲に切込みを入れて、除去することができる。組成物を粘膜下層内に注入して、組織の更なる部分の除去を支援し得る、
いくつかの態様では、組成物は、全体の切除処置に亘って組織層の分離を維持し得る。ゲル組成物の一部は、切除工程により除去され得る。組織を切除した後、ゲル組成物の残った部分は、水又は生理食塩水を用いてその部位から洗い流されるか、又は、自然に組織の中に拡散し得る。
【0072】
図2A~2Eは、本開示のいくつかの態様に係る例示の切除処置を示す。例えば、上記のEMR又はESD、又は組織を切除する為の別の好適な医療処置である。
図2Aは、組織又は組織層80,82の2つの部分の断面を示し、組織又は組織層80,82は、組織の中間層81によって分離されている(例えば、中間の粘膜下組織層によって分離されている上部粘膜層と下部固有筋層が分離されている)。組織80,82の一方又は双方は、除去されるべき組織85を含む。例えば、組織85の部分は、損傷又は病的な組織を含み、又は生検して分析する対象とされる組織を含む。
図2Aの例では、組織85の部分は、組織表面に向かって位置しているが、本開示の装置及び組成物を使用して内部組織層から組織を除去され得る。
【0073】
図2Bに示すように、1つ以上のルーメン(例えば、図示の3つ以上のルーメン)を形成する内視鏡100は、針70を標的部位に搬送する為に使用される。針70は、中空のルーメンと、組織表面を穿刺する為の鋭利で傾斜した針先端72を有し、針尖端72は、組織80,82の上部と下部の間の中間層81内にある。針のルーメンは、上記のように調製された連続した固体のゲル組成物90を収容するシリンジ又は別のリザーバーなどの流体リザーバーと連通状態にある。シリンジは、
図2Bに示すように、組成物90を組織80,82の部分の間の中間層81の中に組成物90を注入してゲルのクッション又はブレッブを形成する為に用いられる。組成物90が注入されると、ゲル90の体積により、組織80,82の上部と下部は分離されて、組織85の部分は、その下の組織から持ち上げられる。
図2C,2Dに示すように、電気焼灼スネア74又はその他の切断装置74(例えば、別の適する切断装置の中でも、電気焼灼ナイフ、はさみ、又は鉗子など)を使用して組織85の部分を切断し除去される。
図2Eに示すように、組織85の部分が除去されると、ゲルの90の部分は、組織層80,81,82の1つ以上の中に自然に拡散する。
【0074】
本開示の別の態様及び実施形態は、明細書を考慮して本開示の実施形態を実施することにより当業者であれば理解できる。本開示の所定の特徴は、例示の組織切除処置の文脈で説明されているが、組成物、システム、及び方法は、上記の一般的な原理の基づいて別の医療装置にも使用され得る。(実施例)
以下の実施例は、限定ではなく、本開示を例示することを意図したものである。本開示は、上記説明及び以下の実施例に一致する追加の態様及び実施形態を包含することが理解できる。
【0075】
(実施例1)
この実施例は、本開示の実施形態に係るゲル組成物を調製する為の例示の方法について説明する。1.125gのKelcogelCG-LAジェランガムと、0.01gのFD&C Blue1とを899gの水に加えて予備混合物を形成した。予備混合物は75℃になるまで攪拌しながら加熱した。次に、加熱した予備混合物に、8.1gの塩化ナトリウムと、0.132gの塩化カルシウム2水和物とを添加して混合して、混合物を形成した。次に、混合物を10ccのシリンジのバレルの中に導入した。充填したシリンジは、約122℃で約30分間オートクレーブすることにより滅菌した。
【0076】
01:01:01度:分:秒のコーン角度を有する60mmのコーンと、28μmのトランケーションギャップ(truncation gap)とを有するコーンプレートレオメーター(DHR-1:TA-インスツルメンツ社(TA-Instruments))を使用してシリンジ内の粘度をテストした。テストする前に、最低1.00379mLのテストサンプルを23ゲージのオリフィスからペルチェプレートに注入して、プレートを37℃で最低60秒保持した。次に、粘度データが毎秒1回記録される状況で、コーンを最低30秒間各せん断速度で保持して、各せん断速度で収集した粘度データの値の平均をそのせん断速度における粘度として使用した。
【0077】
せん断速度130s-1で得られた平均粘度は0.0205Pa・sであり、せん断速度768s-1で得られた平均粘度は、0.0086Pa・sであった。
本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮されることを意図したものであり、本開示の真の範囲及び主旨は、以下の請求項の記載により示される。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の標的部位に送達する為のゲルの調製方法において、
ジェランガムと水とを組み合わせて予備混合物を形成する工程と、
前記予備混合物を加熱する工程と、
1価カチオンを含む第1の塩と2価カチオンを含む第2の塩とを前記予備混合物に添加して混合物を形成する工程と、
前記混合物をリザーバーに導入する工程と、
前記混合物を冷却して前記リザーバー内でゲルを形成する工程と
を備え、
前記ゲルは生体適合性を有し、且つ、前記リザーバーから針の中を通過して前記標的部位に注入される、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
せん断速度130s-1で得られた平均粘度は0.0205Pa・sであり、せん断速度768s-1で得られた平均粘度は、0.0086Pa・sであった。
本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮されることを意図したものであり、本開示の真の範囲及び主旨は、以下の請求項の記載により示される。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
患者の体内の標的部位に送達する為のゲルの調製方法において、
ジェランガムと水とを組み合わせて予備混合物を形成する工程と、
前記予備混合物を加熱する工程と、
1価カチオンを含む第1の塩と2価カチオンを含む第2の塩とを前記予備混合物に添加して混合物を形成する工程と、
前記混合物をリザーバーに導入する工程と、
前記混合物を冷却して前記リザーバー内でゲルを形成する工程と
を備え、
前記ゲルは生体適合性を有し、且つ、前記リザーバーから針の中を通過して前記標的部位に注入される、方法。
(付記2)
前記ゲルは、前記ゲルの総重量に対して重量比で0.01%~2.0%の前記ジェランガムと0.01%~0.1%の前記第2の塩とを含有する、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記混合物の前記1価カチオンの前記2価カチオンに対するモル比は、5~200である付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記第1の塩の前記1価カチオンは、ナトリウム又はカリウムであり、前記第2の塩の前記2価カチオンは、カルシウム又はマグネシウムである、付記1~3のいずれか一つに記載の方法。
(付記5)
前記第1の塩は、塩化ナトリウム又はその水和物からなり、前記第2の塩は、塩化カルシウム又はその水和物からなる、付記1~4のいずれか一つに記載の方法。
(付記6)
前記ゲルは、130s
-1
のせん断力で0.005Pa・s~0.050Pa・sの粘度を有し、768s
-1
のせん断力で0.004Pa・s~0.010Pa・sの粘度を有する、付記1~5のいずれか一つに記載の方法。
(付記7)
前記混合物は、240mOsmol/kg~340mOsmol/kgの浸透圧を有する、付記1~6のいずれか一つに記載の方法。
(付記8)
前記予備混合物は、約50℃~約130℃の温度で加熱される、付記1~7のいずれか一つに記載の方法。
(付記9)
前記混合物は、前記リザーバーに導入された際、約50℃~約130℃の温度を有する、付記1~8のいずれか一つに記載の方法。
(付記10)
前記混合物は、前記リザーバーに導入される前に約50℃以下の温度に冷却され、前記方法は、前記リザーバー内で前記混合物を約50℃~約130℃の温度で加熱する工程をさらに備える、付記1~9のいずれか一つに記載の方法。
(付記11)
前記ゲルは、前記リザーバーの断面全体に亘って延びる連続した3次元構造を有する、付記1~10のいずれか一つに記載の方法。
(付記12)
前記予備混合物又は前記混合物に少なくとも1つの着色剤を添加する工程をさらに備える、付記1~11のいずれか一つに記載の方法。
(付記13)
前記ゲルのエンドトキシンレベルは、20エンドトキシンユニット(EU)以下である、付記1~12のいずれか一つに記載の方法。
(付記14)
前記リザーバーは、シリンジのバレルであるか、又は前記リザーバーは、可撓性を有するチューブを介して前記針に連結される、付記1~13のいずれか一つに記載の方法。
(付記15)
前記予備混合物は、約50℃~約90℃に加熱され、前記混合物は、前記予備混合物の前記温度よりも高い温度まで加熱される、付記1~14のいずれか一つに記載の方法。