(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033031
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】多層配線基板および多層配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240306BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20240306BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20240306BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K1/16 D
H01G4/33 102
H01G4/30 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136387
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 優樹
【テーマコード(参考)】
4E351
5E001
5E082
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA03
4E351AA04
4E351AA13
4E351BB03
4E351BB32
4E351CC03
4E351DD04
4E351DD41
4E351DD44
4E351DD45
4E351GG06
4E351GG20
5E001AB01
5E001AC09
5E001AH03
5E001AJ01
5E082AB01
5E082BC35
5E082EE05
5E082EE26
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5E082FF05
5E082FG03
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5E082FG42
5E316AA02
5E316CC09
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5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316HH01
5E316HH40
5E316JJ14
(57)【要約】
【課題】本発明では、キャパシタを一素子で高精度に回路基板内に構成し、かつ耐電圧に優れたキャパシタ構造を形成する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】代表的な本発明の多層配線基板の一つは、キャパシタを内蔵する多層配線基板であって、前記キャパシタのうちの少なくとも一つは、コア基板に近い方から順に下電極、誘電体層および上電極が設けられることによって構成されており、前記下電極は、前記コア基板上に配置され、前記上電極は、前記コア基板の面の法線方向において、前記誘電体層および前記下電極と重なることによってキャパシタを構成する部分と、キャパシタを構成する部分から前記コア基板の面内の下電極と重ならない部分まで延在する部分とを有し、前記下電極は、断面視において、傾きdz/dxが0.02um/um以上かつ0.5um/um以下である傾斜部を有する。
【選択図】
図4F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタを内蔵する多層配線基板であって、
前記キャパシタのうちの少なくとも一つは、コア基板に近い方から順に下電極、誘電体層および上電極が設けられることによって構成されており、
前記下電極は、前記コア基板上に配置され、
前記上電極は、前記コア基板の面の法線方向において、前記誘電体層および前記下電極と重なることによってキャパシタを構成する部分と、キャパシタを構成する部分から前記コア基板の面内の下電極と重ならない部分まで延在する部分とを有し、
前記下電極は、断面視において、傾きdz/dxが0.02um/um以上かつ0.5um/um以下である傾斜部を有することを特徴とした多層配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線基板であって、
前記誘電体層の膜厚が、200nm以上かつ2000nm以下であることを特徴とする多層配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の多層配線基板であって、
前記誘電体層の抵抗値が、1.0×1010Ωcm以上であることを特徴とする多層配線基板。
【請求項4】
請求項1に記載の多層配線基板であって、
前記コア基板がガラス基板であることを特徴とする多層配線基板。
【請求項5】
請求項1に記載の多層配線基板であって、
前記上電極および前記下電極がCuによって構成されることを特徴とする多層配線基板。
【請求項6】
キャパシタを内蔵する多層配線基板の製造方法であって、
スパッタ法によりCu膜をガラス基板に形成し、フォトリソグラフィにより所望のパターンを形成し、ウエットエッチングにより不要なCu膜を除去することで下電極を形成する工程と、
誘電体膜を形成する工程と、
スパッタ法によりCu膜を誘電体膜上に形成し、フォトリソグラフィにより所望のパターンを形成し、ウエットエッチングにより不要なCu膜を除去することで上電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の多層配線基板の製造方法であって
前記下電極を形成する工程において、前記Cu膜とフォトリソグラフィに用いるレジストとの密着強度が0.1kgf/cm以上0.5kgf/cm以下であることを特徴としたキャパシタを内蔵する多層配線基板の製造方法である。
【請求項8】
請求項6に記載の多層配線基板の製造方法であって、
前記下電極を形成する工程における前記Cu膜を形成する前に、密着層を前記ガラス基板に形成する工程を含むことを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の多層配線基板の製造方法であって、
前記下電極を形成する工程において、
ウエットエッチングのエッチングレートを0.3um/min以上1.0um/min以下の範囲にし、エッチングする時間を膜厚/エッチングレート×1.2以上膜厚/エッチングレート×1.7以下の範囲にすることを特徴としたキャパシタを内蔵する多層配線基板の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の多層配線基板の製造方法であって、
キャパシタを無機絶縁膜で覆う工程と、無機絶縁膜を開口し別の層と導通を得る工程と、配線を形成する工程と、有機絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とした多層基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板および多層配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信において、通信帯域を従来の750MHz~2.5GHzから3.5GHz~6GHz(Sub6GHz帯)まで拡張する第5世代通信規格の普及が進められている。第5世代通信規格においては、同期技術として、帯域幅500MHz~900MHzの広帯域TDD方式が採用されている。このような周波数の要件を満たすため、インダクタとキャパシタを使って電気的な共振を利用するLCフィルタが用いられる。周波数フィルタは周波数帯ごとに設ける必要があり、また実装面積も大きいことから、通信モジュールの小型化および薄型化を妨げる一因となっている。
【0003】
これまでに、インダクタやキャパシタ等の受動部品を、配線基板内に内蔵することによって、基板表面を占有する部品を削減し、配線基板を小型化および薄型化する技術が提案されている。特許文献1には、ガラス基板表面にキャパシタを、ガラス基板内にインダクタの一部を形成することで、LCフィルタを構成し、1.4GHzで分波を行うダイプレクサを実現する技術が開示されている。また、特許文献2には、ガラス基板上に形成するキャパシタ構造を実現する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1および2に示されるように、複数の素子を用いてキャパシタを形成することは、素子間の接続部の配線抵抗および寄生容量による特性低下や、加工バラツキの重畳によるキャパシタの容量値のバラツキ、実装面積の増大といった観点では改善の余地がある。特許文献3では、従来に比べより小さい容量値のキャパシタを、一素子で高精度に回路基板内に構成し、性能、実装性、生産性に優れた多層配線基板および多層配線基板を有するモジュールを提供すること方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5982585号公報
【特許文献2】特表2018-534763号公報
【特許文献3】特開2021-190661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に開示された技術を用いる場合、従来に比べより小さい容量値のキャパシタを、一素子で高精度に回路基板内に構成することはできるが、耐電圧が問題となる。誘電体を挟んで段差のできた部分に配線を引き回す為、膜の不均一が発生しやすく、耐電圧が低下する。このような点について検討は十分にされていない。
【0007】
そこで、本発明では、キャパシタを一素子で高精度に回路基板内に構成し、かつ耐電圧に優れたキャパシタ構造を形成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の多層配線基板の一つは、キャパシタを内蔵する多層配線基板であって、前記キャパシタのうちの少なくとも一つは、コア基板に近い方から順に下電極、誘電体層および上電極が設けられることによって構成されており、前記下電極は、前記コア基板上に配置され、前記上電極は、前記コア基板の面の法線方向において、前記誘電体層および前記下電極と重なることによってキャパシタを構成する部分と、キャパシタを構成する部分から前記コア基板の面内の下電極と重ならない部分まで延在する部分とを有し、前記下電極は、断面視において、傾きdz/dxが0.02um/um以上かつ0.5um/um以下である傾斜部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャパシタを一素子で高精度に回路基板内に構成し、かつ耐電圧に優れたキャパシタ構造を形成する技術を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、従来例におけるキャパシタ構造を示す図である。
【
図2】
図2は、従来例におけるキャパシタ構造の他の構造を示す図である。
【
図3】
図3は、キャパシタ構造の形成工程を模式的に示す図である。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態において下電極を形成する工程を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態においてレジストを形成する工程を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態において下電極を形成する工程を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、第1実施形態においてレジストを剥離する工程を示す図である。
【
図4E】
図4Eは、第1実施形態において誘電体層を形成する工程を示す図である。
【
図4F】
図4Fは、第1実施形態において密着層および上電極を形成する工程を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の下電極を形成する工程を説明する図である。
【
図6】
図6は、密着層の有無によって生じる違いを説明する図である。
【
図8A】
図8Aは、ガラス基板に第1支持体を接着する工程を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、レーザ改質部を形成する工程を示す図である。
【
図8C】
図8Cは、密着層および導電層を形成する工程を示す図である。
【
図8H】
図8Hは、第3配線層を形成する工程を示す図である。
【
図8J】
図8Jは、第2支持体を接着する工程を示す図である。
【
図8K】
図8Kは、第1支持体を剥離する工程を示す図である。
【
図8L】
図8Lは、ガラス基板に貫通孔を形成する工程を示す図である。
【
図8M】
図8Mは、第4配線層を形成する工程および絶縁樹脂層を形成する工程を示す図である。
【
図8N】
図8Nは、第2支持体を剥離する工程を示す図である。
【
図8O】
図8Oは、ビルドアップ層を形成する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0012】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0013】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。なお、「上面」、「下面」については、「第1面」、「第2面」と称することもある。
【0014】
また、「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚みの部分を意味する。さらに、面の一部及び側面を合わせて「端部」ということがある。
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸プラス方向」、「Z軸マイナス方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
【0015】
また、「ガラス基板に設けた貫通電極」とは、ガラス基板を多層配線基板の一部として用いる場合に、ガラス基板の第1面及び第2面を電気的に導通するために設けた導電経路を意味し、必ずしも、ガラス基板を単一の導電材料で完全に貫通している必要はない。第1面からの導電通路と第2面からの導電通路が接続されていれば、貫通電極に含まれる。さらに、貫通電極の形態は、貫通孔(有底のものも、完全な貫通のもののいずれの形態も含む)を導電材料で埋め込んだフィルド型でもよいし、貫通孔の側壁部分のみを導電材料で覆ったコンフォーマルのいずれをも含む。
【0016】
また、「平面形状」、「平面視」とは、上方から面又は層を視認した場合の形状を意味する。さらに、「断面形状」、「断面視」とは、板状部材又は層を特定の方向で切断した場合の水平方向から視認した場合の形状を意味する。
【0017】
[従来例]
まず、
図1から
図3を参照して従来例を説明する。
【0018】
図1は、従来例におけるキャパシタ構造を示す図である。
図1は、第1配線L1aと第2配線L2aを交差するように配置させた場合を示す。
図1(a)は平面図を模式的に示す図であり、
図1(b)は
図1(a)の線Caに沿う断面図を模式的に示す図である。ここでは、ガラス基板Ga上に、第1配線L1a、誘電体層DLa、第2配線L2aが、順に重ねて形成されている。第1配線L1aとガラス基板Gaの間には、接着層ALaが形成されている。
図1(a)の平面図においては、第1配線L1aの第1電極L1apと第2配線L2aの第2電極L2apが最表面に表れている。
【0019】
図1に示されるキャパシタ構造では、耐電圧が問題となる。
図1(b)の点線で囲まれた領域Raは、耐電圧のリスク、つまりリーク電流が発生する可能性がある箇所である。領域Raにおいて、誘電体層DLaを挟んで段差のできた部分に第2配線L2aを引き回し、第1配線L2aと誘電体層DLaと第2配線L2aの間で誘電体を挟み込む構造を形成している。このような構造においては、誘電体層DLaは不均一な膜になりやすい。このため、耐電圧が低下する。
【0020】
図2は、従来例におけるキャパシタ構造の他の構造を示す図である。
図2は、第1配線L1が延びる方向と第2配線L2が延びる方向を同じにして、配線の端部をずらすように配置させた場合を示す。
図2(a)は平面図を模式的に示す図であり、
図2(b)は
図2(a)の線C2に沿う断面図を模式的に示す図である。ここでは、ガラス基板Gb上に、第1配線L1b、誘電体層DLb、第2配線L2bが、順に重ねて形成されている。第1配線L1bとガラス基板Gbの間には、接着層ALbが形成されている。
【0021】
図2に示されるキャパシタ構造においても、
図1の場合と同様に耐電圧が問題となる。
図2(b)の点線で囲まれた領域Rbは、耐電圧のリスク、つまりリーク電流が発生する可能性がある箇所である。領域Rbにおいて、誘電体層DLbを挟んで段差のできた部分に第2配線L2bを引き回、第1配線L2aと誘電体層DLaと第2配線L2aの間で誘電体を挟み込む構造を形成している。このような構造においては、誘電体層DLaは不均一な膜になりやすい。このため、耐電圧が低下する。
【0022】
図3を参照して、耐電圧の問題が発生する原因を考察する。
図3は、キャパシタ構造の形成工程を模式的に示す図である。
【0023】
図3(a)は、従来のキャパシタ構造の形成工程において、誘電体層が形成される前の構造を示す図である。ここでは、ガラス基板Gc上に接着層ALcと第1配線L1cが形成されている。
【0024】
図3(b)は、従来のキャパシタ構造の形成工程において、誘電体層を形成する工程を模式的に示す図である。ここで、誘電体層を形成する際は、一般的には、例えばプラズマCVDによりSiN、SiO
2、TaO
x等を形成する方法が採用される。プラズマCVDは直進性の高いプロセスである。このため、誘電体を成膜すると、矢印に示される方向には成膜がされやすくなるが、第1配線L1c側壁に成膜がされにくい。
【0025】
図3(c)は、従来のキャパシタ構造の形成工程において、誘電体層を形成する工程後の構造を模式的に示す図である。第1配線層L1cの上面およびガラス基板Gcの上面に形成される膜は膜厚が均一で安定して形成される。これに対し、第1配線層L1cの側面に形成される膜は、膜厚が薄い傾向があり、また膜厚のばらつきも大きく、安定した膜が形成されにくい。
【0026】
図3(d)は、従来のキャパシタ構造の形成工程において、第2配線L2cが形成された構造を示す。第1電極L1cの側面におけるキャパシタ構造が形成された領域Rcにおいて、誘電体層DLcは十分な膜厚を得にくく、さらには欠陥も発生しやすくなる場合もある。このような構造が形成されるため、キャパシタ構造の耐電圧が低下し、リーク電流の発生や、場合によってはショートが発生する。
【0027】
[第1実施形態]
図4Aから
図4Fを参照して、第1実施形態に係るキャパシタ構造の形成方法を説明する。キャパシタ構造は、コア基板に近い方から順に下電極、誘電体層および上電極が設けられることによって構成されており、下電極は、コア基板上に配置され、上電極は、前記コア基板の面の法線方向において、誘電体層および下電極と重なることによってキャパシタを構成する部分と、キャパシタを構成する部分から面内の下電極と重ならない部分まで延在する部分とを有している。第1実施形態において、コア基板としてガラス基板を用いる。
【0028】
図4Aは、第1実施形態において下電極を形成する工程を示す図である。ここでは、ガラス基板1上に、d、導電層3が形成される。密着層2は、ガラス基板1と導電層3の間の密着性を高めるために形成されている。
【0029】
図4Bは、第1実施形態においてレジストを形成する工程を示す図である。レジスト4は、所望の下電極の形状が形成されるようにパターニングがされている。レジストのパターニングは、例えばフォトリソグラフィによって行われる。
【0030】
図4Cは、第1実施形態において下電極を形成する工程を示す図である。例えばウエットエッチングによって、導電層3および密着層2がエッチングされる。下電極5は、導電層3のうちエッチングを経て残った部分である。ここに示されるように、下電極5は、上面の端部の角が取れて傾斜している。これは直進性のあるプラズマエッチングに代えて、等方性のウエットエッチングを行ったためである。これには、導電層3とレジスト4の間の密着度とエッチングレート等の条件が必要である。これについては後述する。
【0031】
図4Dは、第1実施形態においてレジストを剥離する工程を示す図である。レジストの種類に合わせて、剥離液が選択される。これにより、下電極5は、断面視において、上面に傾斜部Slを持つ形状となる。傾斜部Slの傾斜角dz/dxは、0.02um/um以上0.5um/um以下の範囲とすることが望ましい。
【0032】
なお、傾斜部Slの傾斜角dz/dxの範囲の上限は、0.5um/um以下、さらに望ましくは0.3um/um以下とするのが望ましい。これは本構成の製造プロセスにおいて、パターニング用のドライフィルムレジストが導電層3のエッチングによる形状変化に十分追従できず、ドライフィルムレジストと導電層3の間に隙間もしくは密着の不十分な箇所が発生する。その場所からエッチング液が侵入し、導電層3が必要以上にエッチングされてしまうためである。レジストの追従性については、レジストの種類にもよるが、一定の角度よりも大きい傾斜部においては隙間の発生もしくは密着の不安定な箇所が発生し、下電極5の形状ばらつきの原因となる。また、傾斜角の大きな領域においては角度のばらつきが発生した際の傾斜部の誘電体膜厚のばらつきが大きくなり個体ごとの容量ばらつきの原因となる。
【0033】
また、傾斜角dz/dxの下限について、0.02um/um未満であると、下電極5の形成ばらつきが発生し、容量ばらつきが大きくなる。下電極5をエッチングしてパターニングする際に導電層3の端部は薄い膜がエッチングされるような状態となり、Cuの結晶状態等によっては島状にCuが残る領域が発生する。傾斜角が大きすぎるとこの領域が広くなり、またこの領域の制御は困難であるため、容量ばらつきの原因となる。
【0034】
図4Eは、第1実施形態において誘電体層を形成する工程を示す図である。誘電体層6は例えばスパッタによって形成される。下電極5の上面に傾斜部が形成されているため、誘電体層6は下電極5の上に十分な膜厚を有するように形成される。また、下電極5の上面から側壁にわたって、膜厚の安定した誘電体層6が得られるので、キャパシタ構造の耐電圧が向上する。
【0035】
図4Fは、第1実施形態において密着層および上電極を形成する工程を示す図である。密着層7と第2電極8はそれぞれスパッタ法などを用いてガラス基板1上に形成され、フォトリソグラフィ法によって所定の形状となるようにパターニングされる。
【0036】
(レジストの密着性)
ここで、
図5を参照して、導電層3とレジスト4の間の密着性について説明する。
図5は、第1実施形態の下電極を形成する工程を説明する図である。
図5(a)は、ウエットエッチングが行われる前の状態を示す。レジスト4はフォトリソグラフィ法により下電極を形成するためにパターニングされており、ここでは開口部が形成されている。
【0037】
図5(b)は導電層3とレジスト4の間の密着性が所定値より大きい場合を示す。エッチング液が開口部に到達すると、等方的にエッチングが進行する。導電層3の厚さ(Z軸方向)の部分のエッチングの進行が早く、密着層2側の界面およびレジスト4側の界面の部分のエッチングは進行が遅い。
【0038】
図5(c)は、導電層3とレジスト4の間の密着性が所定値以下である場合を示す。この場合、導電層3のレジスト4の界面にエッチング液が侵入し、先行的にエッチングが進む。このようにすること、上面に曲線形状を有する下電極5を形成することができる。
【0039】
(密着層の作用)
また、
図6を参照して、ガラス基板1と導電層3の間にある密着層2の作用について説明する。
図6は、密着層の有無によって生じる違いを説明する図である。
【0040】
図6(a1)は、密着層がない場合のウエットエッチング工程後の構造を示す図である。
図6(a2)は、密着層がない場合に誘電体層および上電極が形成される構造を示す図である。
図6(a2)において、誘電体層と上電極との間の密着層は表示が省略されている。密着層がない場合、ウエットエッチング工程においてガラス基板1と導電層3の間にエッチング液が侵入し、領域Rpに示されるようにガラス基板1側の導電層3の界面が先行してエッチングされ、いわゆるアンダーカットが発生する。誘電体層6は領域Rpにも形成されてしまうように、アンダーカットが発生すると誘電体層6の成膜が不安定になり、キャパシタの耐電圧が低下する原因になる。
【0041】
図6(b1)は、密着層がある場合のウエットエッチング工程後の構造を示す図である。
図6(b2)は、密着層がある場合に誘電体層および上電極が形成される構造を示す図である。
図6(b2)において、誘電体層と上電極との間の密着層は表示が省略されている。密着層があるため、ウエットエッチング工程においてガラス基板1と導電層3の間にエッチング液が侵入することがない。導電層3とガラス基板1との間の密着を維持したまま、ウエットエッチング工程を通じて下電極5を形成することができる。アンダーカットが発生しないため、誘電体層6を安定して形成することができる。
【0042】
なお、密着層のガラス基板1に形成する場合、前処理として水酸化カリウムを含む洗浄液を用いガラスを洗浄しておく。それから、密着層として例えばTi、Cr、パラジウム膜等の導電性の層を形成し、その上にCuを成膜することで密着性に優れ、かつ導電率の高い下電極を形成することができる。
【0043】
(下電極の他の例)
下電極5として上面に曲線形状を有するものを示したが、下電極の形状はこれに限定されない。
図7は、下電極の他の形状を示す図である。
図7(a)は逆テーパー形状、
図7(b)はアンダーカット形状、
図7(c)は丸みを帯びた形状、
図7(d)はくびれ形状である。いずれの形状も、エッチング条件を変更することによって実現することが可能である。また、誘電体層を形成する場合、成膜の不安定を解消することができる。
【0044】
[実施例]
図8Aから
図8Oを参照して、第1実施形態にかかるキャパシタ構造を有する多層配線基板の製造方法を説明する。
図8Aから
図8Oにおいては、多層配線基板の断面形状を模式的に示している。多層配線基板はキャパシタを内蔵し、すくなくとも1つは第1実施形態に係るキャパシタ構造を有する。
【0045】
図8Aは、ガラス基板10に第1支持体12を接着する工程を示す図である。第1接着層11を使用して、ガラス基板10に第1支持体12を貼り合わせ、ガラス基板10、第1接着層11、第1支持体12からなる積層構造体を形成する。
【0046】
第1接着層11は、ガラス基板10に対して第1支持体を仮固定するための接着層である。ガラス基板10に第1支持体12を貼り合わせるためには、例えば、ラミネーター、真空加圧プレス、減圧貼り合わせ機等を使用することができる。ガラス基板10としてはAGC製の無アルカリガラスEN-A1の150um厚を用いた。また第1支持体12には同ガラスの500um厚のものを用いた。多層配線基板に用いる基材には、ガラス基板を用いることが望ましく、さらには無アルカリガラスであることがより望ましい。ガラスであることで、平坦な面が得られ平坦な下電極を得られる。また、所望の抵抗値を得る為の誘電体を成膜する温度に耐えうることができるためである。また、無アルカリガラスであるとイオンマイグレーションを抑制し、誘電体とガラスの界面からのリークを抑制でき、耐電圧に優れたキャパシタを含む多層配線基板を形成することができる。第1実施形態はこれらに限定されるわけではない。また第1支持体12はガラス基板10と同程度の平坦性および熱膨張係数を有するものが望ましいが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
図8Bは、レーザ改質部を形成する工程を示す図である。積層構造体に対し、レーザを照射し、貫通孔の起点となるレーザ改質部13を形成する。レーザ改質部13は、ガラス基板10に対し、例えば垂直方向、つまりガラス基板10法線方向に延在し、ガラス基板10の面内であればほぼ所望の位置に形成することができる。
【0048】
次に
図8Cから
図8〇を参照して、第1配線層(下電極)を形成する工程を説明する。第1配線層を形成する工程は、要約すると、スパッタ法によりCu膜をガラス基板に形成し、フォトリソグラフィにより所望のパターンを形成し、ウエットエッチングにより不要なCu膜を除去する工程である。
図8Cは、密着層14および導電層15を形成する工程を示す図である。
【0049】
まず、前処理として水酸化カリウムを含む洗浄液を用いガラス基板10の第1支持体12が形成されている面に対向する面を洗浄し、ガラス基板上にスパッタ法にて密着層14としてクロム膜を50nm形成した。なお、密着層14としてはTi、Ni等他の金属を用いてもよく、厚みは10nm以上1,000nm以下の範囲に形成することができる。なお密着層14の厚みは30nm以上100nm以下であるとなおよい。密着層14が薄いと連続膜が得られず密着性にばらつきが発生し、厚いと密着層14の厚み方向の形状制御が困難となり、いずれの場合でも耐電圧低下の要因となり得るためである。なお、密着層14の厚みは、これに限定されるものではない。
【0050】
その後、導電層15としてCu膜を1um厚でスパッタ法にて形成した。導電層15の膜厚は、厚すぎると所望の傾斜を確保するために線幅を太くする必要が出てくる。また、薄すぎると配線抵抗、すなわちESR(等価直列抵抗:Equivalent Series Resistance)の原因となる。このため、導電層15の膜厚は、50nm以上5um以下が望ましい。さらに望ましくは200nm以上2um以下である。Cu膜の表面粗さSq(二乗平均平方根高さ)は30nmであった。なお導電層15の膜厚は、これに限定されるものではない。
【0051】
なお、第1実施形態では導電層15の他にも電極の材料としてCuを用いる。これは、導電率の高いCuを電極として用いることで、寄生抵抗が小さくなり、特性に優れたキャパシタを得ることができるためである。
【0052】
続いて、導電層15の表面を6%の硫酸で処理した。なお表面処理についてはこれに限定されるものではなく、表面粗さ・レジストとの密着性の観点から適宜選択して良い。例えば微粗化処理、化学密着によりレジストとの密着性を向上させる処理などがある。
【0053】
図8Dは、レジストを形成する工程を示す図である。日立化成社製のドライフィルムレジスト(DFR)RD1215を用いてフォトリソグラフィによりレジストのパターニングを実施した。一般的には、ドライフィルムレジストを用いるが、液体のレジストを使用しても構わない。導電層15上に形成したレジスト層に露光および現像し、所望のパターンを有するレジスト16を形成した。なお、このときのDFRの密着強度は、0.2kgf/cmであった。
【0054】
ここで、後述するウエットエッチングにてパターンを形成する際、一般的には等方的にエッチングが進行する。しかし、レジスト16と導電層15といったように2種類の膜を含む場合に行われるパターンエッチングにおいては、2種類の膜の境界部分にエッチング液が侵入し、エッチング液が侵入した箇所から先行的にエッチングが進行する。導電層15とレジスト16の間の密着強度を制御することで、下電極の上面の傾斜を制御することができる。
【0055】
なお、密着強度が0.5kgf/cm以上である場合、境界部分において先行的なエッチングは進行せず、十分な傾斜が得られない。また、0.1kgf/cm以下である場合、境界部分のエッチングが進行しすぎてしまい、導電層15の配線幅が細い場合にレジストが剥離してしまう。したがって、密着強度は0.1kgf/cm以上0.5kgf/cm以下の範囲であることが望ましい。
【0056】
なお、密着力の測定は室温下、1mm/minの速度、剥離角度90°の条件で引き剥がしたときの荷重を測定して求めることができる。測定は、例えば、TSE社製のAC-50C-SL等の引っ張り試験機を使用して実施することができる。
また、密着力を制御する方法は、スパッタ膜の表面粗さを変える方法、レジストを選択する方法、レジスト形成する前に表面処理を用いる方法などがあるが限定されるものではない。例えばスパッタ膜の表面粗さSqを10~100nmとし、アクリル系樹脂、エチレングリコ-ルモノメチルエ-テル、N,N-ジメチルホルムアミド、スチレン等を含むドライフィルムレジストを用い、スパッタ膜の表面を6%の硫酸で処理することで所望の密着力を得ることができる。
【0057】
図8Eは、下電極を形成する工程を示す図である。ここでは、エッチングにより、導電層15のパターニングを実施した。硫酸、過酸化水素を含むエッチング液を用い、スプレー処理によりエッチング液を塗布した。エッチングレートを0.7um/minに制御し、エッチングする時間を膜厚/エッチングレート×1.5倍とした。このとき下電極の端部の断面形状の傾きdz/dxは0.1um/umであった。一定の傾斜角を超えた箇所が存在すると、上電極の形状が不安定となり、くびれが生じ、容量精度が低下する。
【0058】
なお、エッチングレートに関し、エッチングレートを1.0um/min以下にすることでレジストと導電層15の間の境界箇所へのエッチングを促進し、傾斜を得ることができた。0.3um/min以下では傾斜が大きくなりすぎ、場合によってはプロセス中にレジストが剥離してしまう。エッチング時間を制御することでガラスと下電極界面のアンダーカットを抑制することができる。エッチング時間が短すぎると、残渣が発生し、場合によってはショートが発生する。またショートに至らない場合であっても寄生容量の原因となり、容量精度ばらつきの原因となる。このような観点から、ウエットエッチングのエッチングレートは0.3um/min以上1.0um/min以下の範囲とし、エッチングする時間は膜厚/エッチングレート×1.2以上膜厚/エッチングレート×1.7以下の範囲とすることが望ましい。
【0059】
次にDFRを剥離して、パターニングされた密着層14および導電層15によって構成される第1配線層(下電極)を出現させる。DFRの剥離には三菱ガス化学社製のアミン系剥離液R-100を用いたが、剥離方法および剥離液は限定されるものではない。
【0060】
図8Fは、誘電体層を形成する工程を示す図である。誘電体層17は、プラズマCVD装置を用いてSiN
x膜を800nmの膜厚で成膜することによって形成される。
【0061】
なお、誘電体の種類は限定されるものではないが、誘電体層17の抵抗値が、1.0×1010Ωcm以上であることが望ましい。誘電体膜を高抵抗の膜とすることで耐電圧を担保できる。誘電体としては他にもSiOx、Ta2O3を用いることができる。
【0062】
また、誘電体層17の膜厚は、200nm以上2000nm以下が望ましい。傾斜を有した下電極であっても、表面に微細な凹凸および粗さを有しておりその程度は面内・基板間で異なる。誘電体層17の膜厚を200nm以上とすることで凹凸および粗さの影響を抑制することができ、耐電圧に優れたキャパシタを含む多層配線基板を安定して製造することができる。2000nm以上では誘電体にクラックが発生しやすくなり、容量ばらつきの原因や、場合によっては耐電圧の低下につながる。また、多層配線基板において誘電体は別の層との接続を阻害する為、必要な箇所以外を除去(エッチング)する必要がある。必要以上に誘電体層17を厚くする場合、エッチングする際に時間を要し、製造コストの増大につながる。
【0063】
なお、誘電体の抵抗値は成膜方法、同一の成膜方法であっても用いるガスの種類や、電力、成膜圧力、温度によって変動する。例えばプラズマCVDにて0.5KW~2.5kWの出力にてNH3とSiH4を含むガスを用い、100℃~350℃の範囲で成膜することや、0.5kW~2.5kWの出力にてN2OとSiH4を含むガスを用い、100℃~350℃の範囲で成膜すること所望の誘電体膜を得ることができる。
【0064】
また、誘電体の抵抗値は体積固有抵抗値である。誘電体層の体積固有抵抗の測定方法は、ガラスにTi/Cuスパッタ膜を成膜しフォトリソグラフィによりパターニングし、誘電体の下電極となる部分と測定電極を形成する。誘電体層および導電層3を成膜し、フォトリソグラフィによりパターニングすることで上電極となる部分と測定電極を形成する。ドライエッチングにより測定電極上の誘電体を除去し、電極に挟まれた誘電体を得ることができる。電極に挟まれた誘電体の面積は1mm□とし、誘電体層の膜厚は400nmを形成する。パラメータ・アナライザ(例えばケースレー4200A)にて電圧と電流の関係を測定し抵抗値(Ω)を得て、面積と膜厚との関係から体積固有抵抗値(Ωcm)を得ることができる。
【0065】
次に第2配線層(上電極)を形成する。第2配線層を形成する工程は、要約すると、スパッタ法によりCu膜を誘電体膜上に形成し、フォトリソグラフィにより所望のパターンを形成し、ウエットエッチングにより不要なCu膜を除去する工程である。
図8Gは、第2配線層の形成工程を示す図である。
図8Gは、要約すると、キャパシタを無機絶縁膜で覆う工程と、無機絶縁膜を開口し別の層と導通を得る工程と、配線を形成する工程を示す。
【0066】
まず、誘電体層17上にスパッタ法にて密着層18としてTi膜を50nm形成した。なお、密着層18としては他にCr、Ni等でもよく、厚みは10nm以上1,000nm以下の範囲で形成することができる。また、密着層18は設けなくてもよい。なお密着層18の厚みは30nm以上100nm以下であると望ましい。密着層18は薄いと連続膜が得られず密着性にばらつきが発生し、厚いと密着層の厚み方向の形状制御が困難となり、耐電圧低下の要因となり得る。
【0067】
その後、導電層19としてCu膜を1um厚でスパッタ法にて形成した。導電層19の膜厚は限定されるものではないが、厚すぎるとプロセスコストの増大につながり、薄すぎると配線抵抗、ESRの原因となるため、50nm以上10um以下が望ましい。さらに望ましくは200nm以上5um以下である。
【0068】
次にスパッタ膜の表面を6%の硫酸で処理し、次に、DFR(RD1215)を塗布してフォトリソグラフィを行いレジストのパターニングを実施する。エッチングにより導電層19のパターニングを実施した後、DFRを剥離し、パターニングされた密着層18および導電層19から構成される第2配線層を出現させる。
【0069】
なお、第1配線層(下電極)と第2配線層(上電極)は、平面視した場合、重なるように配置される。言い換えると、第1配線層(下電極)と第2配線層(上電極)は垂直方向、つまりガラス基板10の面の法線方向において、交差する、つまり重なる部分を有するように配置される。第1配線層(下電極)と第2配線層(上電極)が交差した箇所にキャパシタを形成し、配線自体は面内に引き回すことによって、上下にある層との導通を得ることが容易になる。また、キャパシタの上下に層間接続のためのビアを配置せずに済むため、小さい容量値のキャパシタを、一素子で高精度に配置することができる。
【0070】
次に絶縁層20を形成した。絶縁膜19としてはプラズマCVD装置にてSiNx膜を800nm成膜した。なお絶縁膜19については上記に限定されるものではなく、例えば絶縁樹脂を用いてもよい。その場合は後述する層間導通を得るプロセスについても材料に適した方法を取ればよい。望ましくはキャパシタを無機絶縁膜(SiN、SiO、TaOx)で覆うことによって、樹脂に比べ寄生抵抗が小さくなりキャパシタ特性が向上する。また耐湿性が向上し、吸湿によるキャパシタ特性の劣化を抑制できる。
【0071】
次に層間導通を得る為に絶縁層20の一部をエッチングした。フォトリソグラフィを用いてパターニングし、ドライエッチングプロセスにて絶縁層20の一部を除去しエッチング開口部Apを設けた。
【0072】
図8Hは、第3配線層を形成する工程を示す図である。絶縁層20にスパッタ法にて給電用のシード層21を形成し、レジストによるパターン形成を行う。2μm以上20μm以下のめっき処理をする。その後、不要となったレジストパターンを剥離し、シード層21を除去し、第3配線層22を形成した。
【0073】
図8Iは、絶縁樹脂層23を形成する工程を示す。
図8Iは、有機絶縁膜を形成する工程を示すとも言うことができる。絶縁樹脂層23は、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂の少なくとも一種類以上を含み、シリカ、酸化チタン、ウレタン等のフィラーを含む材料であり、液状、もしくはフィルム状の材料であることが望ましい。例えば、シリカフィラーを含んだエポキシ樹脂である有機絶縁樹脂である。。液状樹脂の場合は、スピンコート法、フィルム状樹脂の場合は、真空ラミネーターを用いて、真空下で加熱および加圧を行って絶縁樹脂層を形成することができる。絶縁樹脂層23の材料は、必要に応じて適宜選択することができる。仮に無機材料を用いる場合、多層配線基板を構成するとインダクタや配線の厚みを確保するのが難しく、また脆くなるため機械強度が低下する。そのため、絶縁樹脂を用いた絶縁樹脂層23を形成することが望ましい。
【0074】
図8Jは、第2支持体を接着する工程を示す図である。積層構造体上に第2接着層24を形成し、第2接着層24を用いて第2支持体25を接着した。
【0075】
第2接着層24については、第1接着層11と同様にUV光などの光を吸収して発熱、昇華、または変質によって剥離可能となる樹脂、熱によって発泡により剥離可能となる樹脂、もしくは、コア基板、第1支持体12を仮固定する官能基を含む材料等から、適宜選択することができるが、第1接着層11と異なる材料であることが望ましい。
【0076】
図8Kは、第1支持体を剥離する工程を示す図である。第1支持体12を剥離し、また第1接着層11を除去する。第1支持体12を剥離するにあたっては、第1接着層11に使用した材料に応じて、UV光の照射、加熱処理、物理剥離等から使用材料に応じた適宜の剥離方式を選択することができる。
【0077】
図8Lは、ガラス基板に貫通孔を形成する工程を示す図である。ガラス基板10のレーザ改質部13をエッチングで選択的に除去し、貫通孔26を形成する。エッチングはフッ化水素水溶液を使用した湿式エッチングが適している。エッチングの方法はこれに限定されない。
【0078】
図8Mは、第4配線層を形成する工程および絶縁樹脂層を形成する工程を示す図である。貫通孔26およびガラス基板10表面に給電用のシード層を形成し、レジストによるパターン形成を行う。2μm以上20μm以下のめっき処理をした後に、不要となったレジストパターンを剥離し、シード層を除去し、第4配線層27を形成した。第4配線層27を形成した後、絶縁樹脂層28を形成した。
【0079】
図8Nは、第2支持体25を剥離する工程を示す図である。第2支持体25を剥離し、また第2接着層24を除去する。第2支持体25を剥離するにあたっては、第2接着層24に使用した材料に応じて、UV光の照射、加熱処理、物理剥離等から使用材料に応じた適宜の剥離方式を選択することができる。
【0080】
図8Oは、ビルドアップ層を形成する工程を示す図である。絶縁樹脂層23および28にレーザでビアを形成した後、ビア上にシード層を形成し、その後、セミアディティブ工法(すなわち、レジストパターン形成、めっき処理、レジスト剥離、シード層除去、絶縁樹脂層の形成を含む一連の工程)を用い、ビルドアップ層29を形成する。なお、ビルドアップ層29内には、少なくとも1層以上の配線層が積層されており、必要に応じて、適宜の層数を設定することができる。
【0081】
次に、ソルダーレジスト等の外層保護膜を形成した後に、半導体素子用接合パッド30および基板用接合パッド31を形成する。Ni/Au、Ni/Pd/Au、IT、OSP(水溶性プリフラックス)等の表面処理を施し、必要に応じて半導体素子接合用のはんだ、基板接合用はんだを形成し、多層配線基板を完成させる。
【0082】
(実施例と比較例)
第1実施形態の実施例として下電極の端部の断面形状の傾きと誘電体抵抗値、誘電体厚の異なるキャパシタを作成し、容量をLCRメーターにて、耐電圧をパラメータアナライザにて評価、比較した。容量値については平均値(Ave.)と標準偏差(σ)を算出し、ばらつき3σ/Ave.を比較した。1基板に形成された複数のキャパシタ構造について、次の評価値を取得した。
【0083】
耐電圧評価方法について、条件は次の通りである。
・測定装置 :パラメータアナライザ(4200A-SCS型 ケースレー製)
・試験電圧 :15V
・印可時間 :5秒間
・測定項目 :電流値 I(A)
・判定基準 :電流値(充放電電流) 50mA以下
また、容量ばらつき評価方法については、条件は次のとおりである。
・測定装置 : LCRメーター(4287A キーサイトテクノロジー製)
・測定周波数:1MHz
・判定基準 :ばらつき3σ(シグマ)/Ave.(平均値) 0.03 以下
【0084】
【0085】
項目「判定」〇は、ばらつきおよび耐電圧の点で所定の水準を満たすことができた場合を示す。実施例1から実施例16に示されるように、下電極の傾斜部の傾きdz/dxが0.5um/um以下である場合かつ誘電体の膜厚容量が200nm以上2000nm以下である場合、キャパシタ容量のばらつきが抑えることができ、かつ耐電圧の低下を抑えることができた。
【0086】
(作用・効果)
スパッタ法にて下電極を形成することで平坦な電極面を得られ、フォトリソグラフィによる電極形状形成によりキャパシタを一素子で高精度に形成でき、ウエットエッチングによりパターン形成することで配線端部の形状を制御し傾斜を形成することができる。傾斜を有した下電極上に誘電体を形成することで耐電圧が向上する。上電極をスパッタ法によるCu膜形成とフォトリソグラフィ、ウエットエッチングにて形成することでキャパシタ構造が得られる。スパッタ膜へのウエットエッチングを用いることで小さい容量値のキャパシタを、高精度に形成することができる。
このように、本発明では、キャパシタ一素子で高精度に回路基板内に構成し、かつ耐電圧に優れたキャパシタ構造を形成することができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0088】
本開示は次の態様も含む。
(態様1)
キャパシタを内蔵する多層配線基板であって、
前記キャパシタのうちの少なくとも一つは、コア基板に近い方から順に下電極、誘電体層および上電極が設けられることによって構成されており、
前記下電極は、前記コア基板上に配置され、
前記上電極は、前記コア基板の面の法線方向において、前記誘電体層および前記下電極と重なることによってキャパシタを構成する部分と、キャパシタを構成する部分から前記コア基板の面内の下電極と重ならない部分まで延在する部分とを有し、
前記下電極は、断面視において、傾きdz/dxが0.02um/um以上かつ0.5um/um以下である傾斜部を有することを特徴とした多層配線基板。
(態様2)
態様1に記載の多層配線基板であって、
前記誘電体層の膜厚が、200nm以上かつ2000nm以下であることを特徴とする多層配線基板。
(態様3)
態様1または2に記載の多層配線基板であって、
前記誘電体層の抵抗値が、1.0×1010Ωcm以上であることを特徴とする多層配線基板。
(態様4)
態様1から3のいずれか1つに記載の多層配線基板であって、
前記コア基板がガラス基板であることを特徴とする多層配線基板。
(態様5)
態様1から4のいずれか1つに記載の多層配線基板であって、
前記上電極および前記下電極がCuによって構成されることを特徴とする多層配線基板。
(態様6)
キャパシタを内蔵する多層配線基板の製造方法であって、
スパッタ法によりCu膜をガラス基板に形成し、フォトリソグラフィにより所望のパターンを形成し、ウエットエッチングにより不要なCu膜を除去することで下電極を形成する工程と、
誘電体膜を形成する工程と、
スパッタ法によりCu膜を誘電体膜上に形成し、フォトリソグラフィにより所望のパターンを形成し、ウエットエッチングにより不要なCu膜を除去することで上電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
(態様7)
態様6に記載の多層配線基板の製造方法であって
前記下電極を形成する工程において、前記Cu膜とフォトリソグラフィに用いるレジストとの密着強度が0.1kgf/cm以上0.5kgf/cm以下であることを特徴としたキャパシタを内蔵する多層配線基板の製造方法である。
(態様8)
態様6または7に記載の多層配線基板の製造方法であって、
前記下電極を形成する工程における前記Cu膜を形成する前に、密着層を前記ガラス基板に形成する工程を含むことを特徴とする多層配線基板の製造方法。
(態様9)
態様6から8のいずれか1つに記載の多層配線基板の製造方法であって、
前記下電極を形成する工程において、
ウエットエッチングのエッチングレートを0.3um/min以上1.0um/min以下の範囲にし、エッチングする時間を膜厚/エッチングレート×1.2以上膜厚/エッチングレート×1.7以下の範囲にすることを特徴としたキャパシタを内蔵する多層配線基板の製造方法。
(態様10)
態様6から9のいずれか1つに記載の多層配線基板の製造方法であって、
キャパシタを無機絶縁膜で覆う工程と、無機絶縁膜を開口し別の層と導通を得る工程と、配線を形成する工程と、有機絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とした多層基板の製造方法。
【符号の説明】
【0089】
1、10:ガラス基板
2、7、14、18:密着層
3、15、19:導電層
4、16:レジスト
5:下電極
6、17:誘電体層
11:第1接着層
12:第1支持体
13:レーザ改質部
20:絶縁層
21:シード層
23、28:絶縁樹脂層
24:第2接着層
25:第2支持体
26:貫通孔
27:第4配線層
29:ビルドアップ層
30:半導体素子用接合パッド
31:基板用接合パッド
ALa、ALb:接着層
Ap:エッチング開口部
DLa、DLb、DLc:誘電体層
Ga、Gb、Gc:ガラス基板