(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033033
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】移送器具
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20240306BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61M31/00
A61M37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136390
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C267AA80
4C267BB27
4C267CC08
4C267DD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シート状物質(医療物質)を処置対象部に効率よく押し付けることができる移送器具を提供する。
【解決手段】移送器具10は、シャフト18と、シャフト18の先端部に設けられて支持面26を有する支持部20と、支持面26に載置されたバルーン28と、流体流通管30とを備える。バルーン28の外表面は、支持面26とは反対方向を向き且つ医療物質を載置可能な医療物質載置部34を有する。バルーン28は、流体流通管30からバルーン28内に拡張用流体が導入されることによって支持面26が向いている方向に拡張可能に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療物質を生体内の処置対象部に移送するための移送器具であって、
シャフトと、
前記シャフトの先端部に設けられて支持面を有する支持部と、
前記支持面に載置されたバルーンと、
前記バルーンに接続されて当該バルーンを拡張させるための拡張用流体が流通する内腔を有する流体流通管と、を備え、
前記バルーンの外表面は、前記支持面とは反対方向を向き且つ前記医療物質を載置可能な医療物質載置部を有し、
前記バルーンは、前記流体流通管から前記バルーン内に前記拡張用流体が導入されることによって前記支持面が向いている方向に拡張可能に形成されている、移送器具。
【請求項2】
請求項1記載の移送器具であって、
前記シャフトが挿通する内腔を有する外筒を備え、
前記支持部は、シート状に形成され、
前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形した状態で前記外筒内に収納され、
前記外筒内に収納された前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させて前記外筒から露出することにより展開する、移送器具。
【請求項3】
請求項1記載の移送器具であって、
前記シャフトは、管状に形成され、
前記流体流通管は、前記シャフトの内腔に挿通されている、移送器具。
【請求項4】
請求項1記載の移送器具であって、
前記バルーンは、前記支持面が向いている方向にドーム状に拡張可能に形成されている、移送器具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の移送器具であって、
前記医療物質載置部には、前記医療物質を載置可能な凹部が形成されている、移送器具。
【請求項6】
請求項1記載の移送器具であって、
前記支持部を収納するための外筒を備え、
前記支持部は、
一方向に延在して前記支持面を有するベース部と、
前記ベース部の両側部から前記支持面が向く方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出した一対の突出部と、を有し、
前記一対の突出部は、前記ベース部の延在方向の中央と当該ベース部の基端部との間に位置し、
前記支持部は、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより前記一対の突出部が互いに接触するように湾曲変形した状態で前記外筒内に収納される、移送器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、治療用のシート状物質を生体の処置対象部に移送するためのデバイスが開示されている。このデバイスは、シャフトと、シャフトの先端部に設けられた支持部とを備える。支持部は、シート状物質を載置するためのシート載置面を有する。このようなデバイスでは、生体の処置対象部にシート載置面を接触させることによりシート状物質を処置対象部に貼り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、シャフトを操作してシート載置面を処置対象部に接触させる必要がある。この場合、シャフトが処置対象部の周囲の組織等と干渉し易く、シート状物質(医療物質)を処置対象部に効率よく押し付けることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、医療物質を生体内の処置対象部に移送するための移送器具であって、シャフトと、前記シャフトの先端部に設けられて支持面を有する支持部と、前記支持面に載置されたバルーンと、前記バルーンに接続されて当該バルーンを拡張させるための拡張用流体が流通する内腔を有する流体流通管と、を備え、前記バルーンの外表面は、前記支持面とは反対方向を向き且つ前記医療物質を載置可能な医療物質載置部を有し、前記バルーンは、前記流体流通管から前記バルーン内に前記拡張用流体が導入されることによって前記支持面が向いている方向に拡張可能に形成されている。
【0007】
(2)項目(1)記載の移送器具であって、前記シャフトが挿通する内腔を有する外筒を備え、前記支持部は、シート状に形成され、前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形した状態で前記外筒内に収納され、前記外筒内に収納された前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させて前記外筒から露出することにより展開することが好ましい。
【0008】
(3)項目(1)又は(2)に記載の移送器具であって、前記シャフトは、管状に形成され、前記流体流通管は、前記シャフトの内腔に挿通されていることが好ましい。
【0009】
(4)項目(1)~(3)のいずれか1つに記載の移送器具であって、前記バルーンは、前記支持面が向いている方向にドーム状に拡張可能に形成されていることが好ましい。
【0010】
(5)項目(1)~(4)のいずれか1つに記載の移送器具であって、前記医療物質載置部には、前記医療物質を載置可能な凹部が形成されていることが好ましい。
【0011】
(6)項目(1)~(5)のいずれか1つに記載の移送器具であって、前記支持部を収納するための外筒を備え、前記支持部は、一方向に延在して前記支持面を有するベース部と、前記ベース部の両側部から前記支持面が向く方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出した一対の突出部と、を有し、前記一対の突出部は、前記ベース部の延在方向の中央と当該ベース部の基端部との間に位置し、前記支持部は、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより前記一対の突出部が互いに接触するように湾曲変形した状態で前記外筒内に収納されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バルーンに載置された医療物質を処置対象部に向かい合うように位置させた状態で拡張用流体によってバルーンを拡張させることにより、バルーンの拡張力によって医療物質を処置対象部に効率よく押し付けることができる。これにより、医療物質を処置対象部に密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る移送器具の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の移送器具のIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の移送器具のバルーンを拡張させた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の移送器具の使用方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る移送器具10は、医療物質Mを生体の処置対象部400(
図9参照)に移送するための医療機器である。移送器具10は、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用される。具体的に、移送器具10は、バルーンカテーテル又はステントを用いた冠動脈インターベンションでは治療が困難である冠微小血管機能障害(CMD:Coronary microvascular dysfunction)の治療に使用される。この場合、医療物質Mは、心臓402の処置対象部400に移送される(
図9参照)。ただし、移送器具10は、心臓402以外の臓器(例えば、消化器)の処置対象部400に移送するための医療機器であってもよい。
【0015】
医療物質Mは、液体(ゾルを含む)、固体(ゲルを含む)又は気体であってもよい。医療物質Mは、例えば、医薬品、医療機器及び再生医療等製品を含む。再生医療等製品は、細胞及びエクソソーム等を含む。具体的に、再生医療等製品としては、例えば、シート状細胞培養物又はスフェロイド等が挙げられる。
【0016】
シート状細胞培養物は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。シート状細胞培養物は、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。シート状細胞培養物は、例えば、骨格筋由来の細胞シートである。シート状細胞培養物は、組織接着剤及び局所麻酔剤を含んでもよい。シート状細胞培養物の厚さは、例えば、約100μmであり、シート状細胞培養物の直径は、例えば、40mmである。ただし、シート状細胞培養物の厚さ及び直径は、適宜設定可能である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、移送器具10は、キャリア部材12、バルーン部材14及び外筒16を備える。
図2において、キャリア部材12は、シャフト18及び支持部20を有する。シャフト18は、一方向(矢印X方向)に延在している。シャフト18は、内腔18aを有する円管部材である。内腔18aは、シャフト18の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共にシャフト18の基端(矢印X2方向の端)に開口する。
【0018】
シャフト18は、例えば、樹脂材料によって構成されている。シャフト18の構成材料としては、特に限定されないがポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、等が挙げられる。シャフト18は、金属材料によって構成されてもよい。
【0019】
シャフト18は、可撓性を有してもよい。シャフト18は、曲げた形状を保持可能なフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、生体内においてシャフト18を適宜の形状に屈曲させると共にその屈曲形状を保持できる。フレキシブルチューブ部は、例えば、チューブ壁部を蛇腹状に形成することによって構成される。ただし、フレキシブルチューブ部は、曲げた形状を保持可能な材料によって構成されてもよい。具体的に、フレキシブルチューブ部は、例えば、樹脂製のシャフト18のルーメンに曲げた形状を保持可能な線状の金属部材を挿通することにより形成できる。フレキシブルチューブ部は、シャフト18の長手方向の一部分のみを形成する。ただし、フレキシブルチューブ部は、シャフト18の全体を形成してもよい。
【0020】
支持部20は、可撓性を有する。支持部20は、例えば、樹脂材料によって構成されている。支持部20の構成材料としては、特に限定されないがポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0021】
支持部20は、シート状に形成されている。支持部20の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上200μm以下に設定されるのが好ましい。
【0022】
図3及び
図4に示すように、支持部20は、接合部22及び支持本体24を有する。
図4において、接合部22は、シャフト18の先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。接合部22は、シャフト18の内周面に熱融着されてもよい。接合部22をシャフト18の先端部の内周面に接合する場合、シャフト18の外周面に接合部22による段差が形成されないため、シャフト18を外筒16内に円滑に収納させることができる。なお、接合部22は、シャフト18の先端部の外周面に接合されてもよい。
【0023】
図3に示すように、支持本体24は、ベース部21、一対の第1突出部23、一対の第2突出部25及び一対の第3突出部27を有する。ベース部21は、バルーン部材14の後述するバルーン28を支持するための平坦な支持面26を有する。ベース部21は、一方向に延びている。ベース部21は、接合部22に連なる基端部と、基端部とは反対方向の端部である先端部を有する。ベース部21の基端部は、接合部22から先端方向に向かって幅広に形成されている。ベース部21の基端部の幅方向の両側辺は、接合部22に向かってテーパー状に傾斜している。
【0024】
図2及び
図3において、一対の第1突出部23は、ベース部21の基端部の両側辺から上方に突出している。一対の第2突出部25は、一対の第1突出部23の先端にそれぞれ繋がっている。ただし、一対の第2突出部25は、一対の第1突出部23に繋がらずに離間してもよい。一対の第2突出部25は、ベース部21の延在方向の中間部における幅方向の両側辺から上方に向かって幅方向内方に傾斜するように突出している。一対の第3突出部27は、一対の第2突出部25の先端にそれぞれ繋がっている。一対の第3突出部27は、ベース部21の中間部における幅方向の両側辺から上方に向かって幅方向外方に傾斜するように突出している。
【0025】
図1~
図4において、バルーン部材14は、バルーン28、流体流通管30及びコネクタ32を有する。バルーン28は、支持部20の支持面26に載置されている。なお、バルーン28は、支持面26に接合されてもよい。バルーン28は、袋状に構成されている(
図4参照)。バルーン28は、支持面26が向いている方向から見て円形状に形成されている(
図3参照)。バルーン28は、バルーン28の内部に拡張用流体が導入されることによって支持面26が向いている方向にドーム状に拡張可能(膨張可能)に形成されている(
図5参照)。
【0026】
バルーン28は、伸縮する樹脂材料によって構成されている。バルーン28の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、等が挙げられる。
【0027】
バルーン28の外表面は、支持面26とは反対方向を向き且つ医療物質Mを載置可能な医療物質載置部34を有する。医療物質載置部34には、医療物質Mを配置可能な凹部36が形成されている。凹部36は、医療物質Mが医療物質載置部34から滑り落ちることを抑制する。凹部36は、バルーン28の中央部に位置する。凹部36は、例えば、円形状に形成されている。ただし、凹部36の形状、大きさ及び位置は、適宜設定可能である。
【0028】
図4において、バルーン28のうち凹部36の底面を形成する壁部は、バルーン28のうち医療物質載置部34以外の部分の肉厚よりも薄い薄肉部38である。この場合、バルーン28の内部に導入される拡張用流体の拡張力をバルーン28の薄肉部38に効率よく作用させることができる。そのため、バルーン28が拡張する時に薄肉部38は、バルーン28の薄肉部38以外の部分よりも外方に突出する。ただし、バルーン28の肉厚は、適宜設定可能である。
【0029】
図2及び
図4に示すように、流体流通管30は、バルーン28を拡張させるための拡張用流体が流通する内腔30aを有するチューブである。拡張用流体は、例えば、生理食塩水を使用できる。流体流通管30は、例えば、樹脂材料によって構成されている。流体流通管30の先端部は、バルーン28に接続されている。流体流通管30は、シャフト18の内腔18aに挿通されている。なお、流体流通管30は、シャフト18に固定されてもよい。流体流通管30の全長は、シャフト18の全長よりも長い。
【0030】
図1及び
図2において、コネクタ32は、流体流通管30の基端部に接続されている。コネクタ32には、拡張用流体を注入及び吸引可能な図示しないデバイス(例えば、シリンジ)が接続可能である。
【0031】
外筒16は、内腔16aを有する円筒部材である。内腔16aは、外筒16の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に外筒16の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒16は、可撓性を有する。外筒16の構成材料は、上述したシャフト18の構成材料と同様の材料が挙げられる。なお、シャフト18がフレキシブルチューブ部を有する場合、外筒16は、シャフト18の屈曲形状に沿って曲がる。また、本実施形態において、外筒16は、上述したようなフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、シャフト18は、フレキシブルチューブ部を有しなくてもよい。
【0032】
外筒16の内腔16aには、シャフト18が挿通されている。外筒16の全長は、シャフト18の全長よりも短い。
図3及び
図4において、外筒16の内径D1は、ベース部21の中間部の幅W1よりも小さい。ベース部21の中間部の幅W1は、支持部20を外筒16の内周面の周方向に沿って筒状に丸められた状態で外筒16内に収納できるように、外筒16の内面の円周長さと実質的に同じ長さである。なお、支持部20を外筒16内に収納した収納状態で、一対の第2突出部25は、互いに接触した状態で丸まったベース部21の内側に位置する(
図8参照)。ただし、幅W1は、支持部20を外筒16内に収納可能であれば、外筒16の内面の円周長さよりも短くても長くてもよい。なお、幅W1が外筒16の内面の円周長さよりも長い場合であっても、ベース部21の幅方向の両側部は、一対の第2突出部25に追従して変形するため、支持部20を外筒16内にスムーズに収納できる。
【0033】
外筒16の基端部及びシャフト18の基端部には、図示しない弁体が設けられている。これにより、例えば、胸腔が外筒16の内腔16a又はシャフト18の内腔18aを介して体外に連通することを抑制できる。
【0034】
次に、
図9に示すように、胸腔鏡下手術により医療物質Mを心臓402の処置対象部400(生体の処置対象部400)に移送する移送方法について説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る移送方法は、医療物質載置工程、収納工程、配置工程、展開工程、拡張工程、抜去工程を含む。
【0035】
まず、医療物質載置工程(ステップS1)において、バルーン28の凹部36に医療物質Mを載置する。その後、収納工程(ステップS2)において、支持部20及びバルーン28を外筒16内に収納する。具体的に、シャフト18と流体流通管30とを一緒に外筒16に対して基端方向に移動させる。
【0036】
そうすると、支持本体24が外筒16の先端開口から基端方向に引き込まれる。この時、支持本体24の基端部のテーパー状の両側辺が外筒16の先端面に接触することにより、支持本体24の基端部には、支持本体24を外筒16の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、支持本体24の基端部は、丸まりながら外筒16内にスムーズに引き込まれる。
【0037】
支持本体24の基端部が変形すると、支持本体24の中間部に外筒16の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、支持本体24の中間部は、丸まりながら外筒16内に引き込まれる。この時、支持本体24の中間部の幅W1が外筒16の内面の円周長さと実質的に同じ長さであるため、支持本体24は、外筒16の内面に沿って円筒状に変形する。バルーン28は、支持本体24の形状に対応した形状に変形した状態で外筒16内に収納される。収納工程は、
図7に示すように、支持本体24の全体が外筒16内に完全に収納されることにより完了する。
【0038】
支持本体24及びバルーン28を外筒16内に収納した収納状態では、一対の第2突出部25の外面が互いに接触すると共に一対の第3突出部27の外面が互いに接触する。一対の第3突出部27の突出端面は、医療物質Mから離間している。医療物質Mは、バルーン28の形状に沿って変形する。医療物質Mは、外筒16内で折れて二重に重なることがない。
【0039】
続いて、配置工程(
図6のステップS3)において、胸部の切開創から胸腔及び壁側心膜408の切開創を介して心膜腔404に移送器具10を挿入する。この時、処置対象部400の近くに移送器具10の先端を位置させる。
【0040】
その後、展開工程(ステップS4)において、支持本体24及びバルーン28を展開させる。具体的に、展開工程では、シャフト18及び流体流通管30を外筒16に対して先端方向に移動させる。そうすると、外筒16の先端開口から露出した支持本体24は、復元力によって元の形状に復帰する。支持本体24が展開すると、バルーン28は、平面形状に広がる。
【0041】
次いで、拡張工程(ステップS5)において、
図9に示すように、バルーン28を拡張させる。すなわち、医療物質Mを心臓402の処置対象部400に向けた状態で、流体流通管30からバルーン28内に拡張用流体を導入させる。そうすると、バルーン28は、処置対象部400に向かってドーム状に拡張(膨張)する。そのため、バルーン28の拡張力によって医療物質Mが処置対象部400に押し付けられる。これにより、医療物質Mが処置対象部400に貼付される。
【0042】
続いて、抜去工程(
図6のステップS6)において、バルーン28内から拡張用流体を吸引し、移送器具10を生体から抜去する。
【0043】
本発明の一実施形態は、以下の効果を奏する。
【0044】
本実施形態によれば、医療物質Mを処置対象部400に向けた状態で拡張用流体によってバルーン28を拡張させることにより、バルーン28の拡張力によって医療物質Mを処置対象部400に効率よく押し付けることができる。これにより、医療物質Mを処置対象部400に密着させることができる。
【0045】
移送器具10は、シャフト18が挿通する内腔18aを有する外筒16を備える。支持部20は、シート状に形成されている。支持部20及びバルーン28は、シャフト18を外筒16に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形した状態で外筒16内に収納される。外筒16内に収納された支持部20及びバルーン28は、シャフト18を外筒16に対して先端方向に移動させて外筒16から露出させることにより展開する。
【0046】
このような構成によれば、生体を小さく切開し、当該小さい切開創を介して医療物質Mを処置対象部400に移送することができるため、開胸手術を行う場合よりも低侵襲な手技を実現することができる。
【0047】
シャフト18は、管状に形成されている。流体流通管30は、シャフト18の内腔18aに挿通されている。
【0048】
このような構成によれば、流体流通管30をシャフト18の外側に配設する場合と比較して移送器具10をコンパクトにできる。
【0049】
バルーン28は、支持面26が向いている方向にドーム状に拡張可能に形成されている。
【0050】
このような構成によれば、医療物質Mを処置対象部400に一層効率よく押し付けることができる。
【0051】
医療物質載置部34には、医療物質Mを載置可能な凹部36が形成されている。
【0052】
このような構成によれば、医療物質Mが医療物質載置部34から落下することを抑制できる。
【0053】
移送器具10は、支持部20を収納するための外筒16を備える。支持部20は、ベース部21と一対の第2突出部25とを有する。ベース部21は、一方向に延在して支持面26を有する。一対の第2突出部25は、ベース部21の両側部から支持面26が向く方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出している。一対の第2突出部25は、ベース部21の延在方向の中央とベース部21の基端部との間に位置する。支持部20は、シャフト18を外筒16に対して基端方向に移動させることにより一対の第2突出部25が互いに接触するように湾曲変形した状態で外筒16内に収納される。
【0054】
このような構成によれば、支持部20を外筒16内にコンパクトに収納できる。
【0055】
移送器具10は、上述した構成に限定されない。
図10及び
図11に示すように、流体流通管30は、シャフト19に一体的に設けられてもよい。すなわち、流体流通管30は、シャフト19の内周面に19aに固定されている。この場合、キャリア部材12とバルーン部材14とをシャフト19の軸線方向に沿って外筒16に対して簡単に一緒に移動させることができる。
【0056】
また、上述した移送器具10において、バルーン28には、凹部36が形成されていなくてもよい。
【0057】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0058】
10…移送器具 16…外筒
16a…外筒の内腔 18、19…シャフト
18a…シャフトの内腔 20…支持部
21…ベース部 25…第2突出部(突出部)
26…支持面 28…バルーン
30…流体流通管 30a…流体流通管の内腔
34…医療物質載置部 36…凹部
400…処置対象部 M…医療物質