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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033034
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】医療物質及び移送器具セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20240306BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61M 31/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61B 17/29 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61M37/00
A61B17/00
A61M31/00
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136391
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C066
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA01
4C066AA09
4C066BB06
4C066BB07
4C066CC10
4C066DD06
4C066EE11
4C066FF10
4C066GG01
4C066GG20
4C066HH30
4C066LL30
4C160GG24
4C160GG40
4C160MM32
4C267AA74
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC07
4C267CC08
4C267CC19
4C267CC20
4C267CC22
4C267CC23
4C267CC24
4C267GG02
4C267GG04
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG21
4C267GG43
4C267HH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医療物質を外筒内に収容する場合に一対の突出部が互いに接触するように医療物質を湾曲変形させることができ、医療物質を外筒内にコンパクトに収納することができると共に移送器具を簡素な構成にすることができる移送器具セットを提供する。
【解決手段】移送器具セット10は、医療物質12と移送器具14とを備える。移送器具14は、外筒58と、シャフト60と、保持部62とを有する。医療物質12は、保持部62が被保持部24を保持すると共にシャフト60を外筒58に対して基端方向に移動させることにより一対の第1突出部26が互いに接触するように湾曲変形した状態で外筒58内に収納される。外筒58内に収納された医療物質12は、シャフト60を外筒58に対して先端方向に移動させて外筒58から露出することにより復元力により展開する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送器具によって生体の処置対象部に移送される医療物質であって、
前記移送器具は、
前記医療物質を収納するための外筒と、
前記外筒の内腔に挿通されたシャフトと、
前記シャフトの先端部に設けられて前記医療物質を取り外し可能に保持するための保持部と、を有し、
前記医療物質は、可撓性を有し、且つ一方向に延在すると共に第1端部と第2端部とを含むシート状の本体部を備え、
前記本体部は、
前記第1端部から前記第2端部に向かって延びたベース部と、
前記ベース部の両側部から当該ベース部の厚さ方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出した一対の突出部と、
前記ベース部の前記第2端部に位置して前記保持部に保持される被保持部と、を有する、医療物質。
【請求項2】
請求項1記載の医療物質であって、
前記本体部の前記第2端部の幅方向の両側辺は、前記第1端部とは反対方向に向かって幅狭になるようにテーパー状に延在している、医療物質。
【請求項3】
請求項1記載の医療物質であって、
前記本体部は、薬剤のみによって構成されている、医療物質。
【請求項4】
請求項1記載の医療物質であって、
前記本体部は、
補強シートと、
前記補強シートの少なくとも一方の面に設けられた薬剤と、を有する医療物質。
【請求項5】
請求項1記載の医療物質であって、
前記本体部は、
薬剤と、
前記薬剤を収容する室を有するシート状の補強部材と、を有し、
前記補強部材には、前記薬剤を外方に放出させるための孔が形成されている、医療物質。
【請求項6】
請求項5記載の医療物質であって、
前記孔は、前記医療物質が前記外筒内に収納された時に前記一対の突出部のうち互いに重なる面にのみ形成されている、医療物質。
【請求項7】
請求項1記載の医療物質であって、
前記本体部は、
シート本体と、
前記シート本体から外方に放出するように前記シート本体の内部に分散された薬剤と、を有する、医療物質。
【請求項8】
請求項1記載の医療物質であって、
前記本体部は、シート材を折り曲げることにより形成されている、医療物質。
【請求項9】
請求項8記載の医療物質であって、
前記医療物質が展開した展開状態で、前記一対の突出部が前記ベース部の幅方向外方に広がることを阻止する係止部材を備える、医療物質。
【請求項10】
医療物質と、当該医療物質を生体の処置対象部に移送するための移送器具と、を備えた移送器具セットであって、
前記移送器具は、
外筒と、
前記外筒の内腔に挿通されたシャフトと、
前記シャフトの先端部に設けられて前記医療物質を取り外し可能に保持するための保持部と、を有し、
前記医療物質は、請求項1~9のいずれか1項に記載の医療物質であり、
前記医療物質は、前記保持部が前記被保持部を保持すると共に前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより前記一対の突出部が互いに接触するように湾曲変形した状態で前記外筒内に収納され、
前記外筒内に収納された前記医療物質は、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させて前記外筒から露出することにより復元力により展開する、移送器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療物質及び移送器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、治療用のシート状物質を生体の処置対象部に移送するためのデバイスが開示されている。このデバイスは、外筒と、外筒の内腔に挿通されたシャフトと、シャフトの先端部に設けられたシート状の支持部とを備える。
【0003】
支持部には、シート状物質が載置される。支持部及びシート状物質は、シャフトを外筒に対して基端方向に移動させることにより、丸まりながら外筒内に収納される(特許文献1の図20参照)。この時、支持部及びシート状物質は、外筒の内周面に設けられた突出片に支持されることによりらせん状に湾曲変形する。外筒内に収納された支持部及びシート状物質は、シャフトを外筒に対して先端方向に移動させて外筒から露出することにより展開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/080459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来技術では、シート状物質を支持部に載せているため、支持部及びシート状物質を展開させた状態でシート状物質が支持部から滑り落ち易い。また、支持部及びシート状物質をらせん状に湾曲変形させるための突出片を外筒に設ける必要があるため、移送器具が複雑になる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、移送器具によって生体の処置対象部に移送される医療物質であって、前記移送器具は、前記医療物質を収納するための外筒と、前記外筒の内腔に挿通されたシャフトと、前記シャフトの先端部に設けられて前記医療物質を取り外し可能に保持するための保持部と、を有し、前記医療物質は、可撓性を有し、且つ一方向に延在すると共に第1端部と第2端部とを含むシート状の本体部を備え、前記本体部は、前記第1端部から前記第2端部に向かって延びたベース部と、前記ベース部の両側部から当該ベース部の厚さ方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出した一対の突出部と、前記ベース部の前記第2端部に位置して前記保持部に保持される被保持部と、を有する。
【0008】
(2)項目(1)記載の医療物質であって、前記本体部の前記第2端部の幅方向の両側辺は、前記第1端部とは反対方向に向かって幅狭になるようにテーパー状に延在していることが好ましい。
【0009】
(3)項目(1)又は(2)に記載の医療物質であって、前記本体部は、薬剤のみによって構成されていることが好ましい。
【0010】
(4)項目(1)又は(2)に記載の医療物質であって、前記本体部は、補強シートと、前記補強シートの少なくとも一方の面に設けられた薬剤と、を有することが好ましい。
【0011】
(5)項目(1)又は(2)に記載の医療物質であって、前記本体部は、薬剤と、前記薬剤を収容する室を有するシート状の補強部材と、を有し、前記補強部材には、前記薬剤を外方に放出させるための孔が形成されていることが好ましい。
【0012】
(6)項目(5)記載の医療物質であって、前記孔は、前記医療物質が前記外筒内に収納された時に前記一対の突出部のうち互いに重なる面にのみ形成されていることが好ましい。
【0013】
(7)項目(1)又は(2)に記載の医療物質であって、記本体部は、シート本体と、前記シート本体から外方に放出するように前記シート本体の内部に分散された薬剤と、を有することが好ましい。
【0014】
(8)項目(1)~(7)のいずれか1つに記載の医療物質であって、前記本体部は、シート材を折り曲げることにより形成されていることが好ましい。
【0015】
(9)項目(8)記載の医療物質であって、前記医療物質が展開した展開状態で、前記一対の突出部が前記ベース部の幅方向外方に広がることを阻止する係止部材を備えることが好ましい。
【0016】
(10)本発明の一態様は、医療物質と、当該医療物質を生体の処置対象部に移送するための移送器具と、を備えた医療機器セットであって、前記移送器具は、外筒と、前記外筒の内腔に挿通されたシャフトと、前記シャフトの先端部に設けられて前記医療物質を取り外し可能に保持するための保持部と、を有し、前記医療物質は、項目(1)~(9)のいずれか1つに記載の医療物質であり、前記医療物質は、前記保持部が前記被保持部を保持すると共に前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより前記一対の突出部が互いに接触するように湾曲変形した状態で前記外筒内に収納され、前記外筒内に収納された前記医療物質は、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させて前記外筒から露出することにより復元力により展開する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、医療物質を外筒内に収容する場合に一対の突出部が互いに接触するように医療物質を湾曲変形させることができるため、医療物質を外筒内にコンパクトに収納することができると共に移送器具を簡素な構成にすることができる。また、移送器具の保持部が医療物質の被保持部を取り外し可能に保持するため、医療物質を外筒から露出して展開させた状態で医療物質が移送器具から脱落することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る医療物質を備えた医療機器セットの斜視図である。
図2図2Aは、図1の医療物質の平面図である。図2Bは、図2Aの医療物質を形成するシート材の折り曲げ前の状態を示す平面図である。
図3図3は、図2AのIII-III線に沿った医療物質の縦断面図である。
図4図4は、図2AのIV-IV線に沿った医療物質の横断面図である。
図5図5は、図1に示す医療機器セットの使用方法を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、収納工程の説明図である。
図7図7は、医療物質が外筒内に収納された収納状態を示す説明図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線に沿った横断面図である。
図9図9は、第1変形例に係る医療物質の断面図である。
図10図10は、第2変形例に係る医療物質の断面図である。
図11図11は、第3変形例に係る医療物質の断面図である。
図12図12は、図11に示す医療物質を外筒内に収納した状態を示す断面図である。
図13図13は、第4変形例に係る医療物質の断面図である。
図14図14Aは、第5変形例に係る医療物質の平面図である。図14Bは、図14Aの医療物質を形成するシート材の折り曲げ前の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る移送器具セット10は、医療物質12と、医療物質12を生体の処置対象部に移送するための移送器具14とを備える。移送器具セット10は、例えば、腹腔内の臓器(例えば、消化器)の表面の処置対象部に医療物質12を載置する治療に使用される。ただし、移送器具セット10は、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用してもよい。具体的に、移送器具セット10は、バルーンカテーテル又はステントを用いた冠動脈インターベンションでは治療が困難である冠微小血管機能障害(CMD:Coronary microvascular dysfunction)の治療に使用してもよい。この場合、医療物質12は、心臓の処置対象部に載置される。医療物質12は、例えば移植物である。
【0020】
図1及び図2Aに示すように、医療物質12は、シート材16を折り曲げることにより所定形状に形成されている。医療物質12は、可撓性を有すると共に所定形状を保持できる程度の剛性を有する。医療物質12は、一方向(矢印X方向)に沿って延在した本体部13を有する。
【0021】
本体部13は、延在方向に第1端部18及び第2端部20を有する。本体部13は、薬剤15のみによって構成されている、薬剤15は、処置対象部の治療物質である。薬剤15は、固体である。薬剤15は、例えば、医薬品及び再生医療等製品を含む。再生医療等製品は、細胞及びエクソソーム等を含む。具体的に、再生医療等製品としては、例えば、シート状細胞培養物又はスフェロイド等が挙げられる。
【0022】
本体部13は、ベース部22、被保持部24、一対の第1突出部26及び一対の第2突出部28を含む。ベース部22は、矢印X方向に延在した平面部である。ベース部22は、医療物質12の第1端部18から第2端部20に向かって矩形状に延在している。被保持部24は、医療物質12の第2端部20に位置する。被保持部24は、移送器具14の後述する保持部62(図1参照)によって保持される。
【0023】
被保持部24は、ベース部22から矢印X2方向に向かってベース部22の厚さ方向に傾斜するように延びている(図3参照)。被保持部24(医療物質12の第2端部20)の幅方向の両側辺30は、ベース部22とは反対方向(矢印X2方向)に向かって被保持部24が幅狭になるようにテーパー状に延在している。
【0024】
一対の第1突出部26は、ベース部22の幅方向の両側部からベース部22の厚さ方向に向かってベース部22の幅方向内方に傾斜するように突出している。一対の第1突出部26は、ベース部22の矢印X2方向の端部からベース部22の延在方向の中央部まで延在している。図4において、第1突出部26とベース部22とのなす角度θは、90°未満である。当該なす角度θは、0°以上60°以下に設定されるのが好ましい。なお、なす角度θは、図2AのIV-IV線に沿った断面(図4)の位置での第1突出部26とベース部22とのなす角度をいう。
【0025】
図1及び図2Aに示すように、一対の第2突出部28は、ベース部22の幅方向の両側部からベース部22の厚さ方向に向かってベース部22の幅方向外方に傾斜するように突出している。一対の第2突出部28は、ベース部22の延在方向の中央部からベース部22の矢印X1方向の端部まで延在している。第2突出部28は、第1突出部26に繋がっている。
【0026】
図2Bに示すように、シート材16は、所定形状に折り曲げられる前(初期状態)において、平面状に延在している。
【0027】
シート材16の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上500μm以下に設定されるのが好ましい。シート材16は、第1部位34と第2部位36とを含む。第1部位34は、矩形状に形成されている。第2部位36は、台形状に形成されている。すなわち、第2部位36は、シート材16の矢印X2方向の端部に向かって幅狭に形成されている。
【0028】
シート材16の外周は、第1端辺38、一対の第1側辺40、一対の第2側辺42及び第2端辺44を含む。第1端辺38は、第1部位34のうち第2部位36とは反対方向(矢印X1方向)の端に位置する。第1端辺38は、シート材16の幅方向(シート材16の延在方向と直交する方向)に延在している。第1端辺38は、矢印X1方向に円弧状に突出してもよい。一対の第1側辺40は、第1部位34の側辺である。第1側辺40は、第1端辺38の端から矢印X2方向に向かって直線状に延在している。
【0029】
一対の第2側辺42は、第2部位36の側辺である。一対の第2側辺42は、一対の第1側辺40から矢印X2方向に向かって互いに近接する方向に傾斜している。つまり、一対の第2側辺42は、テーパー状に形成されている。第2端辺44は、第2部位36のうち第1部位34とは反対方向(矢印X2方向)の端に位置する。第2端辺44は、シート材16の幅方向(シート材16の延在方向と直交する方向)に延在している。
【0030】
図2A及び図2Bに示すように、医療物質12は、シート材16を図2Bに示す折目線46に沿って谷折りすることにより所定形状に形成される。折目線46は、一対の第1折目線48、一対の第2折目線50、一対の第3折目線52及び第4折目線54を含む。
【0031】
第1折目線48は、シート材16の幅方向の両側部に位置する。第1折目線48は、第1端辺38から第2側辺42まで矢印X方向に沿って直線状に延在している。第2折目線50は、第2端辺44の端から矢印X1方向に直線状に延在している。第3折目線52は、第2折目線50の端と第1折目線48の端とを互いに直線状に結ぶように延在している。第4折目線54は、一対の第2折目線50の端を互いに結ぶように直線状に延在している。
【0032】
本体部13の一対の第1突出部26と一対の第2突出部28とは、シート材16の幅方向の両側部を一対の第1折目線48に沿ってベース部22の幅方向内方に向けて折り曲げることにより形成される。この場合、シート材16の側部のうちベース部22の延在方向の中央よりも矢印X2方向の部分の第1屈曲角度は、シート材16の側部のうちベース部22の延在方向の中央よりも矢印X1方向の部分の第2屈曲角度よりも大きい。第1屈曲角度は、90°よりも大きい。第2屈曲角度は、90°未満である。なお、第1屈曲角度となす角度θとの関係は、第1屈曲角度=180°-θ°である。
【0033】
本体部13の被保持部24は、シート材16を一対の第2折目線50、一対の第3折目線52及び第4折目線54に沿って谷折りすることにより形成される。
【0034】
図1に示すように、移送器具14は、保持デバイス56及び外筒58を有する。保持デバイス56は、シャフト60及び保持部62を含む。シャフト60は、一方向(矢印X方向)に延在している。シャフト60の先端部(矢印X1方向の端部)には、保持部62が接続されている。シャフト60の基端部(矢印X2方向の端部)には、保持部62の動きを操作するための図示しない操作部を設けられている。
【0035】
保持部62は、医療物質12を取り外し可能に保持する。具体的に、保持部62は、医療物質12を把持可能な把持部である。保持部62は、一対の把持片64を有する。一対の把持片64は、図示しない操作部の操作により開閉する。移送器具14は、一対の把持片64が閉じることにより医療物質12を挟持できる。また、移送器具14は、一対の把持片64が開くことにより医療物質12を離すことができる。
【0036】
外筒58は、内腔59を有する円筒部材である。内腔59は、外筒58の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に外筒58の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒58は、樹脂材料又は金属材料によって構成されている。
【0037】
外筒58の内周面の周長は、医療物質12のベース部22の幅W(図2A参照)と同一(実質的に同一)である。ただし、幅Wは、外筒58の内周面の円周長さよりも大きくても小さくてもよい。
【0038】
次に、医療物質12を生体の処置対象部に移送する移送方法について説明する。医療物質12は、例えば、腹腔鏡下手術により消化器の表面の処置対象部に移送される。図5に示すように、本実施形態に係る移送方法は、準備工程、収納工程、配置工程、展開工程、載置工程、抜去工程を含む。
【0039】
まず、準備工程(ステップS1)において、図2Aに示す医療物質12を準備する。そして、移送器具14の保持部62によって医療物質12の被保持部24を保持(把持)する(図6参照)。
【0040】
続いて、収納工程(図5のステップS2)において、図7に示すように、医療物質12を外筒58内に収納する。具体的に、保持デバイス56を外筒58に対して基端方向に移動させる。そうすると、医療物質12の被保持部24が外筒58の先端開口から基端方向に引き込まれる。この時、医療物質12のテーパー状の両側辺30が外筒58の先端面に接触することにより、医療物質12の第2端部20には医療物質12を外筒58の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、医療物質12の第2端部20は、丸まりながら外筒58内にスムーズに引き込まれる。
【0041】
医療物質12の第2端部20が変形すると、医療物質12のベース部22に外筒58の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、ベース部22は、丸まりながら外筒58内に引き込まれる。そうすると、図7及び図8に示すように、一対の第1突出部26の外面が互いに接触すると共にベース部22が外筒58の内周面に沿って円筒状に変形する。この時、医療物質12は、一対の第1突出部26の変形に追従して一対の第2突出部28の外面が互いに接触するように変形する。なお、第1突出部26及び第2突出部28の各々の突出端面は、ベース部22に接触しない。収納工程は、医療物質12が外筒58内に完全に収納されることにより完了する。
【0042】
その後、配置工程(ステップS3)において、腹部の切開創から腹腔内に医療物質12を挿入する。この時、消化器の処置対象部の近くに外筒58の先端を位置させる。
【0043】
続いて、展開工程(ステップS4)において、医療物質12を外筒58から展開させる。具体的に、展開工程では、シャフト60を外筒58に対して先端方向に移動させる。そうすると、外筒58の先端開口から露出した医療物質12は、復元力によって元の形状に復帰する。
【0044】
次いで、載置工程(ステップS5)において、シャフト60を操作して医療物質12を処置対象部に載置する。そして、一対の把持片64を開くことにより保持部62から医療物質12を取り外す。
【0045】
その後、抜去工程(ステップS6)において、移送器具14を腹部から抜去する。なお、本体部13は、薬剤15のみによって構成されているため、後で医療物質12を回収しなくてもよい。ただし、医療物質12は、処置対象部に載置されてから所定時間経過した後で、図示しない回収機構によって体外に回収されてもよい。
【0046】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0047】
本実施形態によれば、医療物質12を外筒58内に収容する場合に一対の第1突出部26が互いに接触するように医療物質12を湾曲変形させることができるため、医療物質12を外筒58内にコンパクトに収納することができると共に移送器具14を簡素な構成にすることができる。また、移送器具14の保持部62が医療物質12の被保持部24を取り外し可能に保持するため、医療物質12を外筒58から露出して展開させた状態で医療物質12が移送器具14から脱落することを抑えることができる。
【0048】
本体部13の第2端部20の幅方向の両側辺30は、第1端部18とは反対方向に向かって幅狭になるようにテーパー状に延在している。
【0049】
このような構成によれば、シャフト60を外筒58に対して基端方向に移動させることにより、第2端部20の幅方向の両側辺30が外筒58の先端面に当たるため医療物質12に外筒58の周方向に丸まろうとする力を効率よく作用させることができる。これにより、医療物質12を外筒58内に収容し易くなる。
【0050】
本体部13は、薬剤15のみによって構成されている。
【0051】
このような構成によれば、薬剤15を処置対象部に効率よく供給できる。
【0052】
本体部13は、シート材16を折り曲げることにより形成されている。
【0053】
このような構成によれば、本体部13に第1突出部26を簡単に形成することができる。
【0054】
移送器具セット10は、上述した医療物質12に代えて以下に示す第1~第5変形例に係る医療物質12a~12eを備えてもよい。なお、これら変形例において、上述した医療物質12と同一の構成には同一の参照符号を付し、当該同一の構成の詳細な説明は省略する。
【0055】
(第1変形例)
図9に示すように、第1変形例に係る医療物質12aの本体部13aは、補強シート70と薬剤72とを有する。薬剤72は、補強シート70の一方の面に設けられている。なお、薬剤72は、補強シート70の他方の面に設けられていない。ただし、薬剤72は、補強シート70の両方の面に設けられてもよい。
【0056】
補強シート70の構成材料は、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等が挙げられる。薬剤72は、上述した薬剤15と同様である。このような医療物質12aは、処置対象部に載置されてから所定時間経過した後で、図示しない回収機構によって体外に回収される。
【0057】
本変形例において、本体部13aは、補強シート70と、補強シート70の少なくとも一方の面に設けられた薬剤72と、を有する。
【0058】
このような構成によれば、適度な強度を有する医療物質12aを簡単に得ることができる。
【0059】
(第2変形例)
図10に示すように、第2変形例に係る医療物質12bの本体部13bは、薬剤74と、薬剤74を収容する室76を有するシート状の補強部材78とを有する。薬剤74は、液体(ゾルを含む)、固体(ゲルを含む)又は気体であってもよい。薬剤74は、例えば、医薬品及び医療機器及び再生医療等製品を含む。再生医療等製品は、細胞及びエクソソーム等を含む。具体的に、再生医療等製品としては、例えば、シート状細胞培養物又はスフェロイド等が挙げられる。
【0060】
補強部材78の構成材料としては、上述した補強シート70の構成材料と同様の材料が挙げられる。補強部材78の両方の面の全体には、薬剤74を外部に放出するための複数の孔80が貫通形成されている。ただし、複数の孔80は、補強部材78の片方の面にのみ形成されてもよい。このような医療物質12bは、処置対象部に載置されてから所定時間経過した後で、図示しない回収機構によって体外に回収される。
【0061】
本変形例において、本体部13bは、薬剤74と、薬剤74を収容する室76を有するシート状の補強部材78と、を有する。補強部材78には、薬剤74を外方に放出させるための孔80が形成されている。
【0062】
このような構成によれば、適度な強度を有する医療物質12bを簡単に得ることができる。また、薬剤74を固体だけでなく、液体(ゾルを含む)又は気体にすることもできる。
【0063】
(第3変形例)
図11に示すように、第3変形例に係る医療物質12cの本体部13cは、孔80の構造以外、第2変形例に係る医療物質12bの本体部13bと同様に構成されている。図11及び図12において、孔80は、医療物質12cが外筒58内に収納された時に医療物質12cの一対の第1突出部26のうち互いに重なる面にのみ形成されている。このような医療物質12cは、処置対象部に載置されてから所定時間経過した後で、図示しない回収機構によって体外に回収される。
【0064】
本変形例において、孔80は、医療物質12cが外筒58内に収納された時に一対の突出部のうち互いに重なる面にのみ形成されている。
【0065】
このような構成によれば、適度な強度を有する医療物質12cを簡単に得ることができる。また、医療物質12cを外筒58内に収納した状態で、補強部材78の室76内の薬剤74が外部に漏れることを抑制できる。
【0066】
(第4変形例)
図13に示すように、第4変形例に係る医療物質12dの本体部13dは、シート本体82と、シート本体82から外部に放出可能なようにシート本体82の内部に分散された薬剤84とを有する。シート本体82の構成材料としては、上述した補強シート70の構成材料と同様の材料が挙げられる。薬剤84は、上述した薬剤15と同様の物質が挙げられる。このような医療物質12dは、処置対象部に載置されてから所定時間経過した後で、図示しない回収機構によって体外に回収される。
【0067】
本変形例において、本体部13dは、シート本体82と、シート本体82から外方に放出可能なようにシート本体82に分散された薬剤84と、を有する。
【0068】
このような構成によれば、適度な強度を有する医療物質12dを簡単に得ることができる。
【0069】
(第5変形例)
図14Aに示すように、第5変形例に係る医療物質12eは、医療物質12eが展開した状態(医療物質12eが外筒58から露出した状態)で、一対の第1突出部26がベース部22の幅方向外方に広がることを阻止する係止部材86を備える。医療物質12eは、係止部材86以外、上述した医療物質12と同様に構成されている。係止部材86は、複数の返し部88が設けられた糸90である。糸90としては、例えば、吸収性縫合糸が用いられる。糸90の一端部は、一方の第1突出部26に留められている。
【0070】
複数の返し部88は、糸90の延在方向に間隔を空けて並んでいる。複数の返し部88は、糸90から径方向外方に向かって糸90の一端部が位置する方向に傾斜するように延在している。返し部88は、他方の第1突出部26に引っ掛かっている。これにより、第1突出部26とベース部22とのなす角度θは、係止部材86によって90°未満に保持される。
【0071】
このような医療物質12eを製造する場合、図14Bに示すようにシート材16の一方の側部に糸90の一端部を留めた状態でシート材16の他方の側部に糸90を挿通させる。その後、糸90の他端部を糸90の一端部とは反対方向に引っ張り、複数の返し部88を他方の側部の外方(外面側)に位置させる。これにより、シート材16に一対の第1突出部26を簡単に折り曲げ形成することができる。このような医療物質12eは、処置対象部に載置されてから所定時間経過した後で、図示しない回収機構によって体外に回収される。
【0072】
本変形例において、医療物質12eは、医療物質12eが展開した展開状態で、一対の第1突出部26がベース部22の幅方向外方に広がることを阻止する係止部材86を備える。
【0073】
このような構成によれば、第1突出部26とベース部22とのなす角度θを係止部材86によって90°未満に簡単に保持できる。
【0074】
本変形例において、医療物質12eは、本体部13に代えて本体部13a~13dを備えてもよい。
【0075】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0076】
10…移送器具セット 12、12a~12e…医療物質
13、13a~13d…本体部 14…移送器具
15、72、74、84…薬剤 18…第1端部
20…第2端部 24…被保持部
26…第1突出部(突出部) 30…両側辺
58…外筒 59…内腔
60…シャフト 62…保持部
70…補強シート 76…室
78…補強部材 80…孔
82…シート本体 86…係止部材
θ…なす角度
図1
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