(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033036
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】拡張デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20240306BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61M37/00
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136393
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD31
4C267AA80
4C267BB02
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC04
4C267GG07
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG21
4C267HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体内の狭い空間での医療物質の移送作業(載置作業又は回収作業)を行うための作業空間を十分に確保する拡張デバイスを提供する。
【解決手段】拡張デバイス10Aは、生体内の組織(壁側心膜)を押圧して作業空間を形成する。拡張デバイス10Aは、シャフト18、支持部20、バルーン30及び流体流通部32を備える。バルーン30は、支持面28に固定されている。支持部20の支持面28には、医療物質Mが載置可能である。バルーン30は、流体流通部32からバルーン30内に拡張用流体が導入されることによって支持面28が向いている方向に拡張可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の組織を押圧して作業空間を形成するための拡張デバイスであって、
シャフトと、
前記シャフトの先端部に設けられて支持面を有する支持部と、
前記支持面に固定されたバルーンと、
前記バルーンに接続されて当該バルーンを拡張させるための拡張用流体が流通する内腔を有する流体流通部と、を備え、
前記支持面には、医療物質が載置可能であり、
前記バルーンは、前記流体流通部から当該バルーン内に前記拡張用流体が導入されることによって前記支持面が向いている方向に拡張可能に形成されている、拡張デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の拡張デバイスであって、
前記支持部は、当該支持部の基端部から先端方向に向かって延在すると共に前記支持面を含むベース部を有し、
前記バルーンは、前記ベース部の幅方向の両側部に一対配置されている、拡張デバイス。
【請求項3】
請求項2記載の拡張デバイスであって、
一対の前記バルーンは、前記ベース部の延在方向に沿って互いに平行に延びている、拡張デバイス。
【請求項4】
請求項1記載の拡張デバイスであって、
前記シャフトは、管状に形成され、
前記流体流通部は、前記シャフトの内腔に挿通されている、拡張デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の拡張デバイスであって、
前記シャフトが挿通する内腔を有する外筒を備え、
前記支持部は、シート状に形成され、
前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形した状態で前記外筒内に収納され、
前記外筒内に収納された前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させて前記外筒から露出することにより展開する、拡張デバイス。
【請求項6】
請求項2記載の拡張デバイスであって、
前記支持部は、前記ベース部の幅方向の両側部から前記支持面が向く方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出した一対の突出部を有し、
一対の前記バルーンは、前記一対の突出部の各々と前記ベース部との間に位置し、且つ当該バルーンの拡張時に前記一対の突出部を前記支持面が向く方向に押し上げる、拡張デバイス。
【請求項7】
請求項6記載の拡張デバイスであって、
前記支持部は、前記一対の突出部の突出端部を互いに連結する連結部を有する、拡張デバイス。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の拡張デバイスであって、
前記シャフトが挿通する内腔を有する外筒を備え、
前記支持部は、シート状に形成され、
前記支持部は、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより前記一対の突出部が互いに接触するように湾曲変形した状態で前記外筒内に収納される、拡張デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、治療用のシート状物質(医療物質)を生体内の処置対象部に移送するためのデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医療物質を生体内の狭い空間(例えば、心膜腔等)を形成する表面に載置したり当該狭い空間から医療物質を回収しようとしたりする場合、移送作業(載置作業又は回収作業)を行うための作業空間を十分に確保できないことがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、生体内の組織を押圧して作業空間を形成するための拡張デバイスであって、シャフトと、前記シャフトの先端部に設けられて支持面を有する支持部と、前記支持面に固定されたバルーンと、前記バルーンに接続されて当該バルーンを拡張させるための拡張用流体が流通する内腔を有する流体流通部と、を備え、前記支持面には、医療物質が載置可能であり、前記バルーンは、前記流体流通部から当該バルーン内に前記拡張用流体が導入されることによって前記支持面が向いている方向に拡張可能に形成されている。
【0007】
(2)項目(1)記載の拡張デバイスであって、前記支持部は、当該支持部の基端部から先端方向に向かって延在すると共に前記支持面を含むベース部を有し、前記バルーンは、前記ベース部の幅方向の両側部に一対配置されていることが好ましい。
【0008】
(3)項目(2)記載の拡張デバイスであって、一対の前記バルーンは、前記ベース部の延在方向に沿って互いに平行に延びていることが好ましい。
【0009】
(4)項目(1)~(3)のいずれか1つに記載の拡張デバイスであって、前記シャフトは、管状に形成され、前記流体流通部は、前記シャフトの内腔に挿通されていることが好ましい。
【0010】
(5)項目(1)~(4)のいずれか1つに記載の拡張デバイスであって、前記シャフトが挿通する内腔を有する外筒を備え、前記支持部は、シート状に形成され、前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形した状態で前記外筒内に収納され、前記外筒内に収納された前記支持部及び前記バルーンは、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させて前記外筒から露出することにより展開することが好ましい。
【0011】
(6)項目(2)記載の拡張デバイスであって、前記支持部は、前記ベース部の幅方向の両側部から前記支持面が向く方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出した一対の突出部を有し、一対の前記バルーンは、前記一対の突出部の各々と前記ベース部との間に位置し、且つ当該バルーンの拡張時に前記一対の突出部を前記支持面が向く方向に押し上げることが好ましい。
【0012】
(7)項目(6)記載の拡張デバイスであって、前記支持部は、前記一対の突出部の突出端部を互いに連結する連結部を有することが好ましい。
【0013】
(8)項目(6)又は(7)に記載の拡張デバイスであって、前記シャフトが挿通する内腔を有する外筒を備え、前記支持部は、シート状に形成され、前記支持部は、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより前記一対の突出部が互いに接触するように湾曲変形した状態で前記外筒内に収納されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生体内の狭い空間(例えば、心膜腔等)に拡張デバイスを挿入する場合であっても、バルーンを拡張させることにより生体内の組織を支持面が向く方向に押し上げることができるため、支持面の上方に十分な作業空間を確保できる。これにより、医療物質の移送作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る拡張デバイスの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の拡張デバイスにおいてバルーンを拡張させた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の拡張デバイスの使用方法を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿った横断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2実施形態に係る拡張デバイスの斜視図である。
【
図12】
図12は、
図10の拡張デバイスにおいてバルーンを拡張させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る拡張デバイス10Aは、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用される。具体的に、拡張デバイス10Aは、バルーンカテーテル又はステントを用いた冠動脈インターベンションでは治療が困難である冠微小血管機能障害(CMD:Coronary microvascular dysfunction)の治療に使用される。この場合、拡張デバイス10Aは、狭い空間である心膜腔202を形成する心臓204に医療物質Mを載置したり(
図9参照)、当該心臓204から医療物質Mを回収したりするために用いられる。ただし、拡張デバイス10Aは、心膜腔202以外の狭い空間を形成する表面に医療物質Mを載置したり当該表面から医療物質Mを回収したりするために使用されてもよい。
【0017】
医療物質Mは、液体(ゾルを含む)、固体(ゲルを含む)又は気体であってもよい。医療物質Mは、例えば、医薬品、医療機器及び再生医療等製品を含む。再生医療等製品は、細胞及びエクソソーム等を含む。具体的に、再生医療等製品としては、例えば、シート状細胞培養物又はスフェロイド等が挙げられる。
【0018】
シート状細胞培養物は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。シート状細胞培養物は、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。シート状細胞培養物は、例えば、骨格筋由来の細胞シートである。シート状細胞培養物は、組織接着剤及び局所麻酔剤を含んでもよい。シート状細胞培養物の厚さは、例えば、約100μmであり、シート状細胞培養物の直径は、例えば、40mmである。ただし、シート状細胞培養物の厚さ及び直径は、適宜設定可能である。
【0019】
図1に示すように、拡張デバイス10Aは、デバイス本体12、拡張構造14及び外筒16を備える。デバイス本体12は、シャフト18及び支持部20を有する。シャフト18は、一方向(矢印X方向)に延在している。シャフト18は、内腔19を有する円管部材である。内腔19は、シャフト18の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共にシャフト18の基端(矢印X2方向の端)に開口する。
【0020】
シャフト18は、例えば、樹脂材料によって構成されている。シャフト18の構成材料としては、特に限定されないがポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。シャフト18は、金属材料によって構成されてもよい。
【0021】
シャフト18は、可撓性を有してもよい。シャフト18は、曲げた形状を保持可能なフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、生体内においてシャフト18を適宜の形状に屈曲させると共にその屈曲形状を保持できる。フレキシブルチューブ部は、例えば、チューブ壁部を蛇腹状に形成することによって構成される。ただし、フレキシブルチューブ部は、曲げた形状を保持可能な材料によって構成されてもよい。具体的に、フレキシブルチューブ部は、例えば、樹脂製のシャフト18のルーメンに曲げた形状を保持可能な線状の金属部材を挿通することにより形成できる。フレキシブルチューブ部は、シャフト18の長手方向の一部分のみを形成する。ただし、フレキシブルチューブ部は、シャフト18の全体を形成してもよい。
【0022】
支持部20は、可撓性を有する。支持部20は、例えば、樹脂材料によって構成されている。支持部20の構成材料としては、特に限定されないがポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0023】
支持部20は、シート状に形成されている。支持部20の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上200μm以下に設定されるのが好ましい。
【0024】
図2及び
図3に示すように、支持部20は、接合部22及び支持本体24を有する。
図3において、接合部22は、シャフト18の先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。接合部22は、シャフト18の内周面に熱融着されてもよい。接合部22をシャフト18の先端部の内周面に接合する場合、シャフト18の外周面に接合部22による段差が形成されないため、シャフト18を外筒16内に円滑に挿入させることができる。なお、接合部22は、シャフト18の先端部の外周面に接合されてもよい。
【0025】
図2及び
図3に示すように、支持本体24は、一方向に(矢印X方向に沿って)延びたベース部26を含む。ベース部26は、支持部20の基端部から先端方向に向かって延在している。ベース部26は、接合部22に連なる基端部と、基端部とは反対方向の端部である先端部を有する。
図2において、ベース部26の基端部は、接合部22から先端方向に向かって幅広に形成されている。ベース部26の基端部の幅方向の両側辺は、接合部22に向かってテーパー状に傾斜している。ベース部26は、平坦な支持面28を有する。支持面28には、医療物質Mが載置可能である(
図1参照)。
【0026】
図1において、拡張構造14は、一対のバルーン30と、流体流通部32及びコネクタ34を有する。
図1、
図2及び
図4に示すように、一対のバルーン30は、支持本体24の延在方向と直交する幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。一対のバルーン30は、支持面28の幅方向の両側部に位置する。各バルーン30は、支持面28に固定(接合)されている。一対のバルーン30は、支持本体24の延在方向に沿って互いに平行に延在している。各バルーン30は、内部に拡張用流体が導入されることにより支持面28が向いている方向に拡張(膨張)する(
図5参照)。
【0027】
図1及び
図2において、バルーン30は、円筒状の胴部36と、胴部36の先端部に設けられた第1端部38と、胴部36の基端部に設けられた第2端部40とを含む。胴部36は、径方向外方に拡張可能である。第1端部38は、胴部36の先端開口を閉塞する。
【0028】
バルーン30は、伸縮する樹脂材料によって構成されている。バルーン30の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。バルーン30の形状、大きさ、位置等は、適宜設定可能である。一対のバルーン30は、基端部が互いに連結されることによりU字状に形成されてもよい。また、支持面28には、1つ又は3つ以上のバルーン30が設けられてもよい。
【0029】
流体流通部32は、バルーン30を拡張させるための拡張用流体を各バルーン30に導く。流体流通部32は、一対の拡張用チューブ42を含む。各拡張用チューブ42は、拡張用流体が流通する内腔43を有する。一対の拡張用チューブ42の一端は、一対のバルーン30の第2端部40にそれぞれ接続している。一対の拡張用チューブ42の他端は、コネクタ34に接続している(
図1参照)。一対の拡張用チューブ42は、シャフト18の内腔19に挿通している。
【0030】
流体流通部32は、シャフト18の内周面に接合されていてもよい。流体流通部32は、外筒16とシャフト18との間に通された状態でシャフト18の外周面に接合されていてもよい。流体流通部32は、1本のチューブが途中から2つに分岐して各バルーン30に接続するように構成されていてもよい。
【0031】
図1において、コネクタ34は、流体流通部32の基端部に接続されている。コネクタ34には、拡張用流体を注入及び吸引可能な図示しないデバイス(例えば、シリンジ)及び、拡張状態が維持可能な図示しないデバイス(例えば、逆止弁)が接続可能である。
【0032】
外筒16は、内腔17を有する円筒部材である。内腔17は、外筒16の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に外筒16の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒16は、可撓性を有する。外筒16の構成材料は、上述したシャフト18の構成材料と同様の材料が挙げられる。なお、シャフト18がフレキシブルチューブ部を有する場合、外筒16は、シャフト18の屈曲形状に沿って曲がる。また、本実施形態において、外筒16は、上述したようなフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、シャフト18は、フレキシブルチューブ部を有しなくてもよい。
【0033】
外筒16の内腔17には、シャフト18が挿通されている。外筒16の全長は、シャフト18の全長よりも短い。
図2及び
図3において、外筒16の内径Dは、ベース部26の中間部の幅Wよりも小さい。ベース部26の中間部の幅Wは、支持部20を外筒16の内周面の周方向に沿って筒状に丸められた状態で外筒16内に収納できるような長さに設定されている(
図8参照)。
【0034】
外筒16の基端部及びシャフト18の基端部には、図示しない弁体が設けられている。これにより、例えば、生体内が外筒16の内腔17又はシャフト18の内腔19を介して生体外に連通することを抑制できる。
【0035】
次に拡張デバイス10Aの使用方法について説明する。
図6に示すように、当該使用方法は、医療物質載置工程、収納工程、配置工程、展開工程、拡張工程、移送工程、抜去工程を含む。
【0036】
まず、医療物質載置工程(ステップS1)において、支持部20の支持面28に医療物質Mを載置する。その後、収納工程(ステップS2)において、支持部20及び医療物質Mを外筒16内に収納する。具体的に、シャフト18及び流体流通部32を外筒16に対して基端方向に移動させる。
【0037】
そうすると、支持部20が外筒16の先端開口から基端方向に引き込まれる。この時、ベース部26の基端部のテーパー状の両側辺が外筒16の先端面に接触することにより、ベース部26の基端部には、ベース部26を外筒16の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、ベース部26の基端部は、丸まりながら外筒16内にスムーズに引き込まれる。
【0038】
ベース部26の基端部が変形すると、ベース部26の中間部に外筒16の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、ベース部26の中間部は、丸まりながら外筒16内に引き込まれる。これにより、ベース部26は、外筒16の内面に沿って円筒状に変形する。医療物質Mは、ベース部26の形状に対応した形状に変形した状態で外筒16内に収納される(
図8参照)。収納工程は、
図7に示すように、支持部20及び医療物質Mの全体が外筒16内に完全に収納されることにより完了する。
【0039】
続いて、配置工程(
図6のステップS3)において、胸部の切開創から胸腔内(生体内)に拡張デバイス10Aを挿入した後、当該拡張デバイス10Aを壁側心膜200の切開創から心膜腔202に挿入する。この時、心臓204の表面(処置対象部)の近くに拡張デバイス10Aの先端を位置させる。
【0040】
その後、展開工程(ステップS4)において、支持部20及び医療物質Mを展開させる。具体的に、展開工程では、シャフト18及び流体流通部32を外筒16に対して先端方向に移動させる。そうすると、外筒16の先端開口から露出した支持部20は、復元力によって元の形状に復帰する。支持部20が展開すると、医療物質Mは、平面形状に広がる。この時、支持面28は、壁側心膜200を向いている。
【0041】
次いで、拡張工程(ステップS5)において、
図9に示すように、一対のバルーン30を拡張させる。すなわち、コネクタ34から一対の拡張用チューブ42を介して各バルーン30内に拡張用流体を導入する。そうすると、各バルーン30は、支持面28が向いている方向(壁側心膜200が位置する方向)に向かって拡張(膨張)する。そのため、一対のバルーン30は、壁側心膜200を心臓204とは反対方向に向かって押し上げる。これにより、支持面28の上方に広い作業空間206が形成される。
【0042】
そして、移送工程(
図6のステップS6)において、図示しない鉗子等を用いて支持面28に載置されている医療物質Mを心臓204の表面に移送する。この時、バルーン30によって広い作業空間206が確保されているため、医療物質Mの移送を効率よく行うことができる。
【0043】
その後、抜去工程(ステップS7)において、各バルーン30内から拡張用流体を吸引することにより当該バルーン30を収縮させて支持部20を外筒16内に収納した状態で拡張デバイス10Aを生体から抜去する。
【0044】
なお、拡張デバイス10Aは、生体内の医療物質Mを回収する場合にも使用できる。この場合、上述した医療物質載置工程は、行われない。また、移送工程では、図示しない鉗子等を用いて心臓204の表面に載置(貼付)されている医療物質Mを支持面28に移送する。この時、鉗子等を用いずに、ベース部26を医療物質Mと心臓204との間に滑り込ませることにより医療物質Mを支持面28に載せてもよい。拡張デバイス10Aは、胸腔鏡手術又は腹腔鏡手術に用いられる例に限定されず、開胸手術又は開腹手術に用いられてもよい。
【0045】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0046】
本実施形態によれば、生体内の狭い空間(例えば、心膜腔202)に拡張デバイス10Aを挿入する場合であっても、バルーン30を拡張させることにより生体内の組織(壁側心膜200)を支持面28が向く方向に押し上げることができるため、支持面28の上方に十分な作業空間206を確保できる。これにより、医療物質Mの移送作業を円滑に行うことができる。
【0047】
支持部20は、当該支持部20の基端部から先端方向に向かって延在すると共に支持面28を含むベース部26を有する。バルーン30は、ベース部26の幅方向の両側部に一対配置されている。
【0048】
このような構成によれば、ベース部26の支持面28の上方に広い作業空間206を形成し易くなる。
【0049】
一対のバルーン30は、ベース部26の延在方向に沿って互いに平行に延びている。
【0050】
このような構成によれば、作業空間206をベース部26の延在方向に沿って形成できる。
【0051】
シャフト18は、管状に形成され、流体流通部32は、シャフト18の内腔19に挿通されている。
【0052】
このような構成によれば、流体流通部32をシャフト18の外側に配置する場合と比較して拡張デバイス10Aをコンパクトにできる。
【0053】
拡張デバイス10Aは、シャフト18が挿通する内腔17を有する外筒16を備える。支持部20は、シート状に形成されている。支持部20及びバルーン30は、シャフト18を外筒16に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形した状態で外筒16内に収納される。外筒16内に収納された支持部20及びバルーン30は、シャフト18を外筒16に対して先端方向に移動させて外筒16から露出することにより展開する。
【0054】
このような構成によれば、支持部20を外筒16内にコンパクトに収納できる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る拡張デバイス10Bについて説明する。本実施形態において、上述した拡張デバイス10Aと同一の構成については、同一の参照符号を付し詳細な説明を省略する。また、本実施形態において、上述した拡張デバイス10Aと同一の構成については、同一の作用効果を奏する。
【0056】
図10に示すように、拡張デバイス10Bのデバイス本体12aは、上述した支持部20に代えて支持部20aを備える。支持部20aの支持本体24aは、接合部22、ベース部26、一対の第1突出部60及び一対の第2突出部62を有する。一対の第1突出部60は、ベース部26の延在方向の中間部における幅方向の両側辺から支持面28が向いている方向(上方)に向かって幅方向内方に傾斜するように突出している。一対の第2突出部62は、一対の第1突出部60の先端にそれぞれ繋がっている。一対の第2突出部62は、ベース部26の幅方向の両側辺から支持面28が向いている方向(上方)に向かって幅方向外方に傾斜するように突出している。
【0057】
図10及び
図11に示すように、一対のバルーン30は、一対の第1突出部60に対してベース部26の幅方向に隣接する位置に配置されている。バルーン30は、一対の第1突出部60の各々とベース部26との間に位置する。すなわち、バルーン30は、第1突出部60によって上方から覆われている。バルーン30は、拡張用流体によって拡張することにより支持面28が向く方向に第1突出部60を押し上げる(
図12及び
図14参照)。
【0058】
本実施形態において、支持部20a及び医療物質Mを外筒16内に収納した収納状態では、
図13に示すように、一対の第1突出部60の外面が互いに接触すると共に一対の第2突出部62の外面が互いに接触している。一対の第2突出部62の突出端面は、医療物質Mから離間している。
【0059】
また、本実施形態では、拡張工程において、各バルーン30内に拡張用流体が導入すると、
図14に示すように、一対のバルーン30は、一対の第1突出部60を介して壁側心膜200を心臓204とは反対方向に向かって押し上げる。この時、一対の第1突出部60は、第1突出部60とベース部26とのなす角度が広がるように傾動する。換言すれば、一対の第1突出部60は、壁側心膜200をベース部26の幅方向外方に向かって押し上げる。そのため、支持面28の上方に作業空間206を効率よく形成できる。
【0060】
本実施形態において、支持部20aは、ベース部26の幅方向の両側部から支持面28が向く方向に向かって幅方向内方に傾斜するように突出した一対の第1突出部60を有する。バルーン30は、一対の第1突出部60の各々とベース部26との間に位置し、且つバルーン30の拡張時に一対の第1突出部60を支持面28が向く方向に押し上げる。
【0061】
このような構成によれば、支持面28が向く方向に位置する組織(壁側心膜200)を一対の第1突出部60によってベース部26の幅方向外方に向かって押し上げることができるため、支持面28の上方に作業空間206を効率よく形成できる。
【0062】
支持部20aは、シャフト18を外筒16に対して基端方向に移動させることにより一対の第1突出部60が互いに接触するように湾曲変形した状態で外筒16内に収納される。
【0063】
このような構成によれば、支持面28の幅寸法を比較的大きくしつつ支持部20aを外筒16内にコンパクトに収納できる。
【0064】
本実施形態は、上述した構成に限定されない。
図15に示すように、支持部20aは、一対の第1突出部60の突出端部を互いに連結する連結部70を有してもよい。連結部70は、一対の第1突出部60の突出端部に接合されている。連結部70は、バルーン30の拡張時に一対の第1突出部60がベース部26の幅方向外方に傾動できるように、伸縮可能な材料(例えば、ゴム材料)等で構成される。ただし、連結部70の構成材料は適宜設定可能である。連結部70は、一対の第1突出部60に一体成形されていてもよい。
【0065】
この変形例において、支持部20aは、一対の第1突出部60の突出端部を互いに連結する連結部70を有する。このような構成によれば、支持面28の上方に位置する組織(壁側心膜200)を連結部70によって支持できるため、作業空間206を一層効率よく形成できる。
【0066】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0067】
10A、10B…拡張デバイス 16…外筒
18…シャフト 20、20a…支持部
26…ベース部 28…支持面
30…バルーン 32…流体流通部
60…第1突出部(突出部) 70…連結部
206…作業空間 M…医療物質