(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033037
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】吸液デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20240306BHJP
A61F 2/86 20130101ALI20240306BHJP
A61F 13/00 20240101ALI20240306BHJP
【FI】
A61M27/00
A61F2/86
A61F13/00 301Z
A61F13/00 355Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136394
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA40
4C267BB02
4C267CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低侵襲で生体内の液体を効率よく除去できるデバイスを提供する。
【解決手段】吸液デバイス10Aは、シャフト16、シート部18、外筒14及び吸液部20を備える。吸液部20は、シート部18の一方面である第1面に設けられた吸液構造40を有する。シート部18は、シャフト16を外筒14に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形して外筒14内に収納される。外筒14内に収納されたシート部18は、シャフト16を外筒14に対して先端方向に移動させることにより外筒14から露出して展開する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の表面に付着した液体を除去するための吸液デバイスであって、
シャフトと、
前記シャフトの先端部に設けられて可撓性を有するシート部と、
前記シャフトが挿通すると共に前記シート部を収納するための外筒と、
前記液体を吸液する吸液部と、を備え、
前記吸液部は、前記シート部の一方面に設けられた吸液構造を有し、
前記シート部は、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形して前記外筒内に収納され、
前記外筒内に収納された前記シート部は、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させることにより当該外筒から露出して展開する、吸液デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の吸液デバイスであって、
前記シート部は、
前記外筒内に収納された収納状態で前記外筒の内面を向く前記一方面である第1面と、
前記第1面とは反対方向を向く第2面と、を含み、
前記第2面は、医療物質を載置可能な支持面を有する、吸液デバイス。
【請求項3】
請求項1記載の吸液デバイスであって、
前記吸液構造は、複数の吸引口を含み、
前記吸液部は、
前記シート部の内部に形成されて前記複数の吸引口に連通する吸液室と、
前記吸液室に連通するように前記シャフトに形成された吸引流路と、を有する、吸液デバイス。
【請求項4】
請求項3記載の吸液デバイスであって、
前記シート部は、前記シート部の基端から先端に向かって延在しており、
前記吸液構造は、前記シート部の延在方向に間隔を空けて配列された前記複数の吸引口からなる孔列を備え、
前記シート部の延在方向と直交するシート幅方向に間隔を置いて複数の前記孔列が互いに平行に配列されている、吸液デバイス。
【請求項5】
請求項1記載の吸液デバイスであって、
前記吸液構造は、前記シート部を貫通する貫通孔を含み、
前記吸液部は、前記シート部の前記一方面とは反対方向の面に設けられて前記貫通孔から前記液体を吸引するための吸引チューブを有する、吸液デバイス。
【請求項6】
請求項1記載の吸液デバイスであって、
前記吸液構造は、前記液体を吸収可能な液体吸収部材を含む、吸液デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸液デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、細胞シート等の医療物質を生体内の処置対象部に貼付するデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、開胸手術や開腹手術においては、医療物質を処置対象部に貼付する場合、医療物質を処置対象部に密着させ易くするために、大きく形成した切開創を介して体内の術野にガーゼを挿入し、予め処置対象部に付着している液体をガーゼで拭き取ることがある。しかしながら、開胸手術や開腹手術を行わない低侵襲の手技の行う場合、大きな切開創が形成されないため、処置対象部に付着している液体を除去することが難しい。そのため、低侵襲で生体内の液体を効率よく除去できるデバイスの提供が望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、生体内の表面に付着した液体を除去するための吸液デバイスであって、シャフトと、前記シャフトの先端部に設けられて可撓性を有するシート部と、前記シャフトが挿通すると共に前記シート部を収納するための外筒と、前記液体を吸液する吸液部と、を備え、前記吸液部は、前記シート部の一方面に設けられた吸液構造を有し、前記シート部は、前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させることにより湾曲変形して前記外筒内に収納され、前記外筒内に収納された前記シート部は、前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させることにより当該外筒から露出して展開する。
【0007】
(2)項目(1)記載の吸液デバイスであって、前記シート部は、前記外筒内に収納された収納状態で前記外筒の内面を向く前記一方面である第1面と、前記第1面とは反対方向を向く第2面と、を含み、前記第2面は、医療物質を載置可能な支持面を有する。
【0008】
(3)項目(1)又は(2)に記載の吸液デバイスであって、前記吸液構造は、複数の吸引口を含み、前記吸液部は、前記シート部の内部に形成されて前記複数の吸引口に連通する吸液室と、前記吸液室に連通するように前記シャフトに形成された吸引流路と、を有する。
【0009】
(4)項目(3)記載の吸液デバイスであって、前記シート部は、前記シート部の基端から先端に向かって延在しており、前記吸液構造は、前記シート部の延在方向に間隔を空けて配列された前記複数の吸引口からなる孔列を備え、前記シート部の延在方向と直交するシート幅方向に間隔を置いて複数の前記孔列が互いに平行に配列されている。
【0010】
(5)項目(1)又は(2)に記載の吸液デバイスであって、前記吸液構造は、前記シート部を貫通する貫通孔を含み、前記吸液部は、前記シート部の前記一方面とは反対方向の面に設けられて前記貫通孔から前記液体を吸引するための吸引チューブを有する。
【0011】
(6)項目(1)又は(2)に記載の吸液デバイスであって、前記吸液構造は、前記液体を吸収可能な液体吸収部材を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、湾曲変形させたシート部を外筒内に収納した状態で当該外筒を小さい切開創から生体内に挿入することができる。また、生体内でシート部を展開させた状態で、吸液部により生体内の液体を吸液できる。これにより、低侵襲で生体内の液体を効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る吸液デバイスの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の吸液デバイスの使用方法を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿った横断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2実施形態に係る吸液デバイスの一部省略背面図である。
【
図11】
図10の吸液デバイスのシート部を外筒内に収納した状態を示す横断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第3実施形態に係る吸液デバイスの斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の第4実施形態に係る吸液デバイスの一部省略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図9に示すように、本発明の第1実施形態に係る吸液デバイス10Aは、生体内の液体202を除去するためのデバイスである。吸液デバイス10Aは、例えば、生体内の処置対象部200に医療物質Mを載置(貼付)する場合に、医療物質Mを処置対象部200に密着させ易くするために、当該処置対象部200に付着している液体202を除去する。本実施形態に係る吸液デバイス10Aは、医療物質Mを生体内の処置対象部200に移送する移送器具としても機能する。ただし、吸液デバイス10Aは、医療物質Mの移動器具としての機能を有しなくてもよい。なお、吸液デバイス10Aは、生体内(処置対象部200以外の部分)の液体202を除去するために使用してもよい。
【0015】
吸液デバイス10Aは、例えば、腹腔内の臓器(例えば、消化器)の表面の処置対象部200に医療物質Mを載置する治療に使用される。ただし、吸液デバイス10Aは、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用してもよい。具体的に、吸液デバイス10Aは、バルーンカテーテル又はステントを用いた冠動脈インターベンションでは治療が困難である冠微小血管機能障害(CMD:Coronary microvascular dysfunction)の治療に使用してもよい。この場合、医療物質Mは、心臓の処置対象部200に載置される。医療物質Mは、例えば移植物である。
【0016】
医療物質Mは、液体202(ゾルを含む)、固体(ゲルを含む)又は気体であってもよい。医療物質Mは、例えば、医薬品、医療機器及び再生医療等製品を含む。再生医療等製品は、細胞及びエクソソーム等を含む。具体的に、再生医療等製品としては、例えば、シート状細胞培養物又はスフェロイド等が挙げられる。
【0017】
シート状細胞培養物は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。シート状細胞培養物は、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。シート状細胞培養物は、例えば、骨格筋由来の細胞シートである。シート状細胞培養物は、組織接着剤及び局所麻酔剤を含んでもよい。シート状細胞培養物の厚さは、例えば、約100μmであり、シート状細胞培養物の直径は、例えば、40mmである。ただし、シート状細胞培養物の厚さ及び直径は、適宜設定可能である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、吸液デバイス10Aは、デバイス本体12と外筒14とを備える。デバイス本体12は、シャフト16、シート部18、吸液部20及びコネクタ22を有する。
図1において、シャフト16は、一方向(矢印X方向)に延在している。シャフト16には、先端(矢印X1方向の端)から基端(矢印X2方向の端)まで延在した吸引流路24が形成されている(
図3参照)。
【0019】
シャフト16は、例えば、樹脂材料によって構成されている。シャフト16の構成材料としては、特に限定されないがポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。シャフト16は、金属材料によって構成されてもよい。
【0020】
シャフト16は、可撓性を有してもよい。シャフト16は、曲げた形状を保持可能なフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、生体内においてシャフト16を適宜の形状に屈曲させると共にその屈曲形状を保持できる。フレキシブルチューブ部は、例えば、チューブ壁部を蛇腹状に形成することによって構成される。ただし、フレキシブルチューブ部は、曲げた形状を保持可能な材料によって構成されてもよい。具体的に、フレキシブルチューブ部は、例えば、樹脂製のシャフト16のルーメンに曲げた形状を保持可能な線状の金属部材を挿通することにより形成できる。フレキシブルチューブ部は、シャフト16の長手方向の一部分のみを形成する。ただし、フレキシブルチューブ部は、シャフト16の全体を形成してもよい。
【0021】
シート部18は、可撓性を有する。シート部18は、例えば、樹脂材料によって構成されている。シート部18の構成材料としては、特に限定されないがポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等が挙げられる。シート部18は、シート部18の基端から先端に向かって延在している。
【0022】
図7及び
図8に示すように、シート部18は、外筒14内に湾曲変形した状態で収納可能である。シート部18は、外筒14内に収納された収納状態で、外筒14の内面を向く第1面26と、第1面26とは反対方向を向く第2面28とを含む。第2面28は、医療物質Mを支持する支持面30を有する(
図1参照)。
【0023】
図1~
図4において、シート部18は、ベース部32、一対の第1突出部34、一対の第2突出部36及び一対の第3突出部38を有する。
図2に示すように、ベース部32は、一方向に延びている。ベース部32は、シャフト16の先端に繋がる基端部と、基端部とは反対方向の端部である先端部を有する。ベース部32の基端部は、シャフト16の先端から先端方向に向かって幅広に形成されている。ベース部32の基端部の幅方向の両側辺は、シャフト16に向かって(基端方向に向かって)テーパー状に傾斜している。
【0024】
一対の第1突出部34は、ベース部32の基端部の両側辺から支持面30が向いている方向(上方)に突出している。一対の第2突出部36は、一対の第1突出部34の先端にそれぞれ繋がっている。ただし、一対の第2突出部36は、一対の第1突出部34に繋がらずに離間してもよい。一対の第2突出部36は、ベース部32の延在方向の中間部における幅方向の両側辺から支持面30が向いている方向(上方)に向かって幅方向内方に傾斜するように突出している(
図1、
図2及び
図4参照)。一対の第3突出部38は、ベース部32の中間部における幅方向の両側辺から支持面30が向いている方向(上方)に向かって幅方向外方に傾斜するように突出している。
【0025】
図3~
図5に示すように、吸液部20は、液体202を吸液する吸液構造40と、吸液室44と、吸引流路24とを有する。吸液構造40は、シート部18の一方面である第1面26に設けられている。吸液構造40は、複数の吸引口42を含む。
図5において、複数の吸引口42は、第1面26にランダムに配置されている。各吸引口42は、円形状に形成されている。吸引口42の数、形状、大きさ、位置等は、適宜設定可能である。
【0026】
吸液室44は、ベース部32の内部に形成されている。吸液室44は、複数の吸引口42と吸引流路24とを互いに連通する。吸液室44は、1つの繋がった空間である。ただし、吸液室44は、隔壁によって互いに分離された複数の空間から構成されてもよい。この場合、各空間は、シャフト16の吸引流路24に連通する。
【0027】
図1において、コネクタ22は、シャフト16の基端部に接続されている。コネクタ22には、吸引流路24の流体を吸引するための図示しない吸引デバイスが接続可能である。当該吸引デバイスとしては、例えば、ポンプ及びシリンジ等が挙げられる。
【0028】
外筒14は、内腔15を有する円筒部材である。内腔15は、外筒14の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に外筒14の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒14は、可撓性を有する。外筒14の構成材料は、上述したシャフト16の構成材料と同様の材料が挙げられる。なお、シャフト16がフレキシブルチューブ部を有する場合、外筒14は、シャフト16の屈曲形状に沿って曲がる。また、本実施形態において、外筒14は、上述したようなフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、シャフト16は、フレキシブルチューブ部を有しなくてもよい。
【0029】
外筒14の内腔15には、シャフト16が挿通されている。外筒14の全長は、シャフト16の全長よりも短い。
図2及び
図3において、外筒14の内径Dは、ベース部32の中間部の幅Wよりも小さい。ベース部32の中間部の幅Wは、シート部18を外筒14の内周面の周方向に沿って筒状に丸められた状態で外筒14内に収納できるように、外筒14の内面の円周長さと実質的に同じ長さである。なお、シート部18を外筒14内に収納した収納状態で、一対の第2突出部36は、互いに接触した状態で丸まったベース部32の内側に位置する(
図8参照)。
【0030】
幅Wは、シート部18を外筒14内に収納可能であれば、外筒14の内面の円周長さよりも短くても長くてもよい。なお、幅Wが外筒14の内面の円周長さよりも長い場合であっても、ベース部32の幅方向の両側部は、一対の第2突出部36に追従して変形するため、シート部18を外筒14内にスムーズに収納できる。
【0031】
外筒14の基端部には、図示しない弁体が設けられている。これにより、例えば、生体内が外筒14の内腔15を介して生体外に連通することを抑制できる。
【0032】
次に、吸液デバイス10Aの使用方法について説明する。
図6に示すように、当該使用方法は、医療物質載置工程、収納工程、配置工程、展開工程、液体除去工程、移送工程、抜去工程を含む。
【0033】
まず、医療物質載置工程(ステップS1)において、シート部18の支持面30に医療物質Mを載置する。その後、収納工程(ステップS2)において、シート部18及び医療物質Mを外筒14内に収納する。具体的に、シャフト16を外筒14に対して基端方向に移動させる。
【0034】
そうすると、シート部18が外筒14の先端開口から基端方向に引き込まれる。この時、ベース部32の基端部のテーパー状の両側辺が外筒14の先端面に接触することにより、ベース部32の基端部には、ベース部32を外筒14の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、ベース部32の基端部は、丸まりながら外筒14内にスムーズに引き込まれる。
【0035】
ベース部32の基端部が変形すると、ベース部32の中間部に外筒14の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、ベース部32の中間部は、丸まりながら外筒14内に引き込まれる。この時、ベース部32の中間部の幅Wが外筒14の内面の円周長さと実質的に同じ長さであるため、ベース部32は、外筒14の内面に沿って円筒状に変形する。医療物質Mは、ベース部32の形状に対応した形状に変形した状態で外筒14内に収納される。収納工程は、
図7に示すように、シート部18の全体が外筒14内に完全に収納されることにより完了する。
【0036】
シート部18及び医療物質Mを外筒14内に収納した収納状態では、一対の第2突出部36の外面が互いに接触する(
図8参照)と共に一対の第3突出部38の外面が互いに接触する。一対の第3突出部38の突出端面は、医療物質Mから離間している。医療物質Mは、ベース部32の形状に沿って変形するため、外筒14内で折れて二重に重なることがない。
【0037】
続いて、配置工程(
図6のステップS3)において、腹部の切開創から腹腔内(生体内)に吸液デバイス10Aを挿入する。この時、生体内の処置対象部200の近くに吸液デバイス10Aの先端を位置させる。
【0038】
その後、展開工程(ステップS4)において、シート部18及び医療物質Mを展開させる。具体的に、展開工程では、シャフト16を外筒14に対して先端方向に移動させる。そうすると、外筒14の先端開口から露出したシート部18は、復元力によって元の形状に復帰する。シート部18が展開すると、医療物質Mは、平面形状に広がる。
【0039】
次いで、液体除去工程(ステップS5)において、処置対象部200に付着している液体202を吸液(除去)する。すなわち、コネクタ22に吸引デバイス(ポンプ又はシリンジ等)を接続し、
図9に示すように、シート部18の第1面26を処置対象部200に付着している液体202に接触させる。そして、吸引デバイスを操作して吸引流路24の空気を吸引する。そうすると、処置対象部200に付着している液体202は、複数の吸引口42から吸液室44及び吸引流路24を介して吸引デバイスに吸引される。すなわち、処置対象部200に付着している液体202は、生体外に除去される。液体202が除去された処置対象部200には、医療物質Mが密着し易くなる。
【0040】
続いて、移送工程(
図6のステップS6)において、シート部18の支持面30にある医療物質Mを処置対象部200に移送(載置)する。具体的に、図示しない鉗子等を用いて支持面30の上にある医療物質Mを処置対象部200に向けてスライドさせることにより当該処置対象部200に医療物質Mを移送する。これにより、医療物質Mは、処置対象部200に密着する(貼付される)。
【0041】
そして、抜去工程(ステップS7)において、シート部18を外筒14内に収納した状態で、吸液デバイス10Aを生体から抜去する。
【0042】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0043】
本実施形態によれば、湾曲変形させたシート部18を外筒14内に収納した状態で当該外筒14を小さい切開創から生体内に挿入することができる。また、生体内でシート部18を外筒14から露出させることによりシート部18を展開させた状態で、吸液部20により生体内の液体202を吸液できる。これにより、低侵襲で生体内の液体202を効率よく除去できる。
【0044】
シート部18は、外筒14内に収納された収納状態で外筒14の内面を向く第1面26と、第1面26とは反対方向を向く第2面28と、を含む。第2面28は、医療物質Mを載置可能な支持面30を有する。
【0045】
このような構成によれば、生体内の液体202の除去と医療物質Mの移送との両方を1つの吸液デバイス10Aによって実施できる。
【0046】
吸液構造40は、複数の吸引口42を含む。吸液部20は、シート部18の内部に形成されて複数の吸引口42に連通する吸液室44と、吸液室44に連通するようにシャフト16に形成された吸引流路24とを有する。
【0047】
このような構成によれば、生体内の液体202を複数の吸引口42から吸液室44及び吸引流路24を介して生体外に排出できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る吸液デバイス10Bについて説明する。本実施形態において、上述した吸液デバイス10Aと同一の構成については、同一の参照符号を付し詳細な説明を省略する。また、本実施形態において、上述した吸液デバイス10Aと同一の構成については、同一の作用効果を奏する。
【0049】
図10に示すように、吸液デバイス10Bのデバイス本体12aは、上述した吸液部20に代えて吸液部20aを備える。吸液部20aは、吸液構造40aと、吸液室44aとを有する。吸液構造40aは、シート部18の延在方向と直交するシート幅方向に間隔を置いて配列された複数の吸引口42からなる孔列50を複数含む。複数の孔列50は、ベース部32の幅方向に間隔をおいて互いに平行に配列されている。
【0050】
複数の吸引口42は、矢印X方向に等間隔に並んでいる。ただし、複数の吸引口42は、矢印X方向に異なる間隔で並んでいてもよい。複数の吸引口42(複数の孔列50)は、ベース部32の幅方向に等間隔に並んでいる。ただし、複数の吸引口42(複数の孔列50)は、ベース部32の幅方向に異なる間隔で並んでいてもよい。
【0051】
吸液室44aは、複数の第1空間52と、第2空間54とを含む。各第1空間52は、各孔列50を形成する複数の(全ての)吸引口42に連通する。各第1空間52は、ベース部32の延在方向(矢印X方向)に延在している。複数の第1空間52は、ベース部32の幅方向に間隔を空けて並んでいる。ベース部32の幅方向に互いに隣り合う第1空間52の間には、ベース部32の壁部が隔壁として位置する。第2空間54は、複数の第1空間52の矢印X2方向の端部に繋がっている。第2空間54は、ベース部32の基端部に設けられている。第2空間54は、シャフト16の吸引流路24に連通している。
【0052】
本実施形態において、シート部18は、シート部18の基端から先端に向かって延在している。吸液構造40aは、シート部18の延在方向に間隔を空けて配列された複数の吸引口42からなる孔列50を備える。シート部18の延在方向と直交するシート幅方向に間隔を置いて複数の孔列50が互いに平行に配列されている。
【0053】
このような構成によれば、複数の孔列50がシート幅方向に間隔を置いて平行に配列されているため、ベース部32を外筒14の周方向に沿って湾曲変形させ易くなる(
図11参照)。これにより、シート部18を外筒14内に一層収納し易くなる。
【0054】
本実施形態は、上述した構成に限定されない。吸液デバイス10Bは、吸液室44aに代えて上述した吸液室44を有してもよい。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る吸液デバイス10Cについて説明する。本実施形態において、上述した吸液デバイス10Aと同一の構成については、同一の参照符号を付し詳細な説明を省略する。また、本実施形態において、上述した吸液デバイス10Aと同一の構成については、同一の作用効果を奏する。
【0056】
図12に示すように、吸液デバイス10Cのデバイス本体12bは、シャフト16a、シート部18a及び吸液部20bを有する。
図12及び
図13において、シャフト16aは、上述したシャフト16と同様の材料によって構成される。シャフト16aは、内腔17を有する円管部材である。シャフト16aの内腔17は、シャフト16aの先端(矢印X1方向の端)に開口すると共にシャフト16aの基端(矢印X2方向の端)に開口する。シャフト16aは、上述したフレキシブルチューブ部を有していてもよいし、当該フレキシブルチューブ部を有していなくてもよい。
【0057】
シート部18aは、ベース部32、一対の第1突出部34、一対の第2突出部36、一対の第3突出部38及び接合部60を有する。なお、ベース部32の内部には、上述した吸液室44が形成されていない。接合部60は、ベース部32の基端部に設けられている。
【0058】
図13において、接合部60は、シャフト16aの先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。接合部60は、シャフト16aの内周面に熱融着されてもよい。接合部60をシャフト16aの先端部の内周面に接合する場合、シャフト16aの外周面に接合部60による段差が形成されないため、シャフト16aを外筒14内に円滑に収納させることができる。なお、接合部60は、シャフト16aの先端部の外周面に接合されてもよい。
【0059】
図12及び
図13に示すように、吸液部20bは、吸液構造40b、突起部64、吸引チューブ66及びコネクタ68を有する。吸液構造40bは、シート部18aを貫通する貫通孔62を含む。貫通孔62は、ベース部32の延在方向の基端部よりも先端方向に位置する。貫通孔62は、シート部18aの第1面26から第2面28まで貫通する。貫通孔62は、円形状の形成されている。貫通孔62の大きさ、形状及び位置は、適宜設定可能である。
【0060】
突起部64は、第1面26から第2面28とは反対方向に向かって突出している。突起部64は、貫通孔62を囲むように環状に延在している。本実施形態において、突起部64は、円環状に延在している。突起部64は、ベース部32を外筒14内の周方向に湾曲変形可能なような大きさ及び形状を有する。貫通孔62は、突起部64で囲まれた空間の中央に位置する。
【0061】
吸引チューブ66は、第2面28に設けられて貫通孔62から液体202を吸引する。吸引チューブ66は、先端から基端まで延在する内腔67を有する。吸引チューブ66は、吸引チューブ66の先端開口が貫通孔62に気密及び液密に連通するようにシート部18aの第2面28に接合されている。吸引チューブ66は、シャフト16aの内腔17に挿通されている。吸引チューブ66は、シャフト16aよりも長尺に延びている。すなわち、吸引チューブ66の基端部は、シャフト16aの基端よりも基端方向に位置する。
【0062】
吸引チューブ66は、吸引チューブ66がシャフト16aに対して相対移動しないように、シャフト16aの内周面に固定されてもよい。吸引チューブ66は、外筒14とシャフト16aとの間に通されてもよい。この場合、吸引チューブ66は、シャフト16aの外周面に固定されてもよい。
【0063】
図12において、コネクタ68は、吸引チューブ66の基端部に接続されている。コネクタ68には、吸引チューブ66の内腔67の流体を吸引するための図示しない吸引デバイスが接続可能である。当該吸引デバイスとしては、例えば、ポンプ及びシリンジ等が挙げられる。
【0064】
本実施形態において、吸液構造40bは、シート部18aを貫通する貫通孔62を含む。吸液部20bは、シート部18aの一方面とは反対方向の面(第2面28)に設けられて貫通孔62から液体202を吸引するための吸引チューブ66を有する。
【0065】
このような構成によれば、生体内の液体202を貫通孔62から吸引チューブ66を介して生体外に吸引できる。
【0066】
本実施形態は、上述した構成に限定されない。吸液デバイス10Cの吸液部20bは、突起部64を有していなくてもよい。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る吸液デバイス10Dについて説明する。本実施形態において、上述した吸液デバイス10A~10Cと同一の構成については、同一の参照符号を付し詳細な説明を省略する。また、本実施形態において、上述した吸液デバイス10A~10Cと同一の構成については、同一の作用効果を奏する。
【0068】
図14に示すように、吸液デバイス10Dのデバイス本体12cは、シャフト16a、シート部18a及び吸液部20cを有する。
【0069】
吸液部20cは、吸液構造40cを有する。吸液構造40cは、液体202を吸収可能な液体吸収部材70を含む。液体吸収部材70は、シート部18aの第1面26に接合されたシート状の部材である。液体吸収部材70は、可撓性を有する。液体吸収部材70としては、例えば、高分子吸収材(高分子ポリマー)を含むポリオレフィン不織布が用いられる。ただし、液体吸収部材70は、これに限定されず、スポンジ、樹脂シート、ガーゼ等の布、紙等であってもよい。
【0070】
液体吸収部材70の大きさ、形状及び位置等は、適宜設定可能である。
【0071】
本実施形態において、吸液構造40cは、液体202を吸収可能な液体吸収部材70を含む。
【0072】
このような構成によれば、吸液デバイス10Dの構成を簡素にできる。
【0073】
吸液デバイス10Dは、医療物質Mを移送するための移送器具として機能しなくてもよい。すなわち、吸液デバイス10Dにおいて、第2面28には、医療物質Mが載置されなくてもよい。液体吸収部材70は、上述した吸液デバイス10Cに設けられてもよい。吸液デバイス10A~10Dは、医療物質Mを回収する回収デバイスとして機能してもよい。
【0074】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0075】
10A~10D…吸液デバイス 14…外筒
15…内腔 16、16a…シャフト
18、18a…シート部 20、20a~20c…吸液部
24…吸引流路 26…第1面
28…第2面 30…支持面
42…吸引口 44、44a…吸液室
50…孔列 62…貫通孔
66…吸引チューブ 70…液体吸収部材
202…液体