(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003305
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】スイッチ駆動回路、電源制御装置、スイッチング電源
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240105BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240105BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 E
H02M1/00 F
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102348
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好則
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS01
5H730AS13
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE57
5H730FD11
5H730FD26
5H730FD41
5H730XX02
5H730XX03
5H730XX04
5H730XX13
5H730XX15
5H730XX19
5H730XX22
5H730XX26
5H730XX28
5H730XX32
5H730XX33
5H730XX35
5H730XX38
5H730XX42
5H740BA12
5H740BB01
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC02
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM02
5H740MM03
5H740MM12
(57)【要約】
【課題】低ノイズのスイッチ駆動回路を提供する。
【解決手段】スイッチ駆動回路17は、Nチャネル型のスイッチ素子11をオフするときにスイッチ素子11の制御端からシンク電流ILを引き抜いてスイッチ素子11の制御端に印加される駆動電圧G1を低下させるように構成されたシンク電流源171と、駆動電圧G1の低下中において駆動電圧G1が高いほどシンク電流ILの電流値を大きくして駆動電圧G1が低いほどシンク電流ILの電流値を小さくするように構成されたシンク電流調整部172と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nチャネル型のスイッチ素子をオフするときに前記スイッチ素子の制御端からシンク電流を引き抜いて前記スイッチ素子の制御端に印加される駆動電圧を低下させるように構成されたシンク電流源と、
前記駆動電圧の低下中において前記駆動電圧が高いほど前記シンク電流の電流値を大きくして前記駆動電圧が低いほど前記シンク電流の電流値を小さくするように構成されたシンク電流調整部と、
を備える、スイッチ駆動回路。
【請求項2】
前記シンク電流源は、
所定の基準電流を生成するように構成された基準電流源と、
前記基準電流から複数の単位電流を生成するように構成されたカレントミラーと、
前記シンク電流調整部から出力される調整信号に応じた数だけ前記複数の単位電流を足し合わせて前記シンク電流を生成するように構成された電流加算部と、
を含む、請求項1に記載のスイッチ駆動回路。
【請求項3】
前記シンク電流調整部は、それぞれ異なる閾値を持ち前記駆動電圧に応じて出力論理が切り替わるように構成された複数のインバータを含み、前記複数のインバータそれぞれの出力信号を前記調整信号として出力する、請求項2に記載のスイッチ駆動回路。
【請求項4】
前記複数のインバータは、それぞれ異なる閾値が相関を持つように単一の半導体基板に形成されている、請求項3に記載のスイッチ駆動回路。
【請求項5】
前記複数のインバータそれぞれの閾値のうち、少なくとも一つの閾値は、前記スイッチ素子のプラトー電圧よりも高い電圧値に設定されており、少なくとも一つの別の閾値は、前記スイッチ素子の前記プラトー電圧よりも低い電圧値に設定されている、請求項3に記載のスイッチ駆動回路。
【請求項6】
前記スイッチ素子の制御端と前記シンク電流源の出力端との間に接続されるように構成された抵抗をさらに含む、請求項1に記載のスイッチ駆動回路。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のスイッチ駆動回路と、
帰還電圧に応じて前記スイッチ駆動回路を制御するように構成された帰還制御回路と、
を備える、電源制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電源制御装置を備え、前記スイッチ素子をオン/オフすることにより入力電圧から出力電圧を生成する、スイッチング電源。
【請求項9】
トランスを備えるフライバック型であり、前記スイッチ素子の一端は、前記トランスの一次巻線に接続されている、請求項8に記載のスイッチング電源。
【請求項10】
前記帰還制御回路は、前記スイッチ素子のオフ期間に前記スイッチ素子の前記一端に現れるスイッチ電圧をサンプリングすることにより前記帰還電圧を生成するように構成された帰還電圧生成回路を含む、請求項9に記載のスイッチング電源。
【請求項11】
前記帰還電圧生成回路は、前記シンク電流の引き下げが完了した時点、又は、その時点から一定の遅延時間が経過した時点で、前記スイッチ電圧のサンプリングを開始するように構成されたサンプル/ホールド回路を含む、請求項10に記載のスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチ駆動回路、電源制御装置及びスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源は、様々なアプリケーションに搭載されている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスイッチング電源は、低ノイズ化について検討の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本明細書中に開示されているスイッチ駆動回路は、Nチャネル型のスイッチ素子をオフするときに前記スイッチ素子の制御端からシンク電流を引き抜いて前記スイッチ素子の制御端に印加される駆動電圧を低下させるように構成されたシンク電流源と、前記駆動電圧の低下中において前記駆動電圧が高いほど前記シンク電流の電流値を大きくして前記駆動電圧が低いほど前記シンク電流の電流値を小さくするように構成されたシンク電流調整部と、を備える。
【0007】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低ノイズのスイッチ駆動回路及びこれを用いた電源制御装置並びにスイッチング電源を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、スイッチング電源の全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、半導体装置の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、ターンオフ挙動の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、出力帰還制御の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、スイッチ駆動回路の第1構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、シンク電流調整動作の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、スイッチ駆動回路の第2構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、スイッチング電源の全体構成を示す図である。本構成例のスイッチング電源1は、一次回路系(GND1系)と二次回路系(GND2系)との間を電気的に絶縁しつつ一次回路系に供給される直流入力電圧Vinを所望の直流出力電圧Voutに変換して二次回路系に供給する絶縁型DC/DCコンバータ(いわゆるフライバック電源)である。
【0011】
スイッチング電源1が搭載されるアプリケーションとしては、車載機器(例えば電動コンプレッサ及び主機インバータ)、民生機器及び産業機械などを挙げることができる。
【0012】
本図に即して述べると、スイッチング電源1は、半導体装置10と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(キャパシタC1~C4、ダイオードD1~D3、抵抗R1~R7、及び、トランスTR)と、を備える。
【0013】
ダイオードD1は、ツェナダイオードであってもよい。ダイオードD2及びD3は、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
【0014】
トランスTRは、一次回路系と二次回路系との間を電気的に絶縁しつつ、互いに磁気結合された一次巻線Lp(巻数Np)と二次巻線Ls(巻数Ns)を含む。巻数Np及びNsについては、所望の直流出力電圧Vout(=Vin×(Ns/Np)×(Ton/Toff)、ただし、Ton及びToffは、後出するスイッチ素子11のオン期間及びオフ期間)が得られるように任意に調整すればよい。例えば、巻数Npが多いほど又は巻数Nsが少ないほど直流出力電圧Voutは低くなり、逆に、巻数Npが少ないほど又は巻数Nsが多いほど直流出力電圧Voutは高くなる。
【0015】
なお、スイッチング電源1に交流入力電圧Vacが供給される場合には、交流入力電圧Vacを直流入力電圧Vinに変換する整流回路(ダイオードブリッジなど)を前段に設けてもよい。
【0016】
半導体装置10は、いわゆる電源制御ICであり、一次回路系に設けられてスイッチング電源1の制御主体となる。なお、半導体装置10は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として複数の外部端子(本図に即して述べると、電源端子VIN、スイッチ端子SW、帰還端子FB、イネーブル端子EN、負荷補償端子LCOMP、基準端子REF、及び、接地端子GND)を備えている。
【0017】
もちろん、半導体装置10には、必要に応じて上記以外の外部端子を適宜設けても構わない。半導体装置10の内部構成については、後ほど説明する。
【0018】
半導体装置10の外部接続について説明する。半導体装置10の電源端子VINと、ダイオードD1のアノードと、キャパシタC1及びC3それぞれの第1端と、抵抗R1の第1端と、トランスTRの一次巻線Lpの第1端(巻終端)は、いずれも直流入力電圧Vinの印加端に接続されている。抵抗R1の第2端と抵抗R2の第1端は、いずれも半導体装置10のイネーブル端子ENに接続されている。キャパシタC1及び抵抗R2それぞれの第2端は、いずれも一次回路系の接地端GND1に接続されている。
【0019】
ダイオードD1のカソードは、ダイオードD2のカソードに接続されている。キャパシタC3の第2端は、抵抗R5の第1端に接続されている。抵抗R6の第1端は、半導体装置10の帰還端子FBに接続されている。ダイオードD2のアノードと、抵抗R5及びR6それぞれの第2端と、トランスTRの一次巻線Lpの第2端(巻始端)は、いずれも半導体装置10のスイッチ端子SWに接続されている。
【0020】
このように接続されたダイオードD1並びにD2、キャパシタC3及び抵抗R5は、トランスTRの一次巻線Lpに流れる一次電流Ipが遮断されたときに生じるサージ電圧を抑制するためのスナバ回路(クランパ回路の一種)を形成している。
【0021】
半導体装置10の負荷補償端子LCOMPは、キャパシタC2及び抵抗R3それぞれの第1端に接続されている。半導体装置10の基準端子REFは、抵抗R4の第1端に接続されている。半導体装置10の接地端子GND、キャパシタC2の第2端、及び、抵抗R3並びにR4それぞれの第2端は、いずれも接地端GND1に接続されている。
【0022】
トランスTRの二次巻線Lsの第1端(巻始端)は、ダイオードD3のアノードに接続されている。ダイオードD3のカソードとキャパシタC4及び抵抗R7それぞれの第1端は、いずれも直流出力電圧Voutの印加端に接続されている。トランスTRの二次巻線Lsの第2端(巻終端)と、キャパシタC4及び抵抗R7それぞれの第1端は、いずれも二次回路系の接地端GND2に接続されている。
【0023】
このように接続されたダイオードD3及びキャパシタC4は、トランスTRの二次巻線Lsに現れる誘起電圧を整流及び平滑して直流出力電圧Voutを生成するための整流平滑回路を形成している。
【0024】
<半導体装置>
図2は、半導体装置10の一構成例を示す図である。本構成例の半導体装置10は、スイッチ素子11と、帰還電圧生成回路12と、ソフトスタート回路13と、コンパレータ14と、コントローラ15と、スイッチ駆動回路16と、最大周波数設定回路17と、負荷補償回路18と、スペクトラム拡散回路19と、内部レギュレータ1Aと、低入力保護回路1Bと、過熱保護回路1Cと、短絡/オープン保護回路1Dと、過電流/天絡保護回路1Eと、を集積化して成る。
【0025】
スイッチ素子11は、直流入力電圧Vinの印加端からトランスTRの一次巻線Lpを介して接地端GND1に至る電流経路を、ゲート駆動信号G1(=駆動電圧に相当)に応じて導通/遮断することにより、一次巻線Lpに流れる一次電流Ipをオン/オフする。
【0026】
なお、本図においては、スイッチ素子11の一例として、NMOSFET[N-channel type metal oxide semiconductor field effect transistor]が用いられている。この場合、スイッチ素子11のドレインは、スイッチ端子SW(延いてはトランスTRの一次巻線Lpの第2端(巻始端))に接続される。一方、スイッチ素子のソースは、接地端子GNDに接続される。スイッチ素子11は、ゲート駆動信号G1がハイレベルであるときにオン状態となり、ゲート駆動信号G1がローレベルであるときにオフ状態となる。
【0027】
また、スイッチ素子11として、GaNデバイス又はSiCデバイスを用いてもよい。
【0028】
帰還電圧生成回路12は、スイッチ素子11のオフ期間Toffにおいて、帰還端子FBの端子電圧(延いてはスイッチ素子11のドレインに現れるスイッチ電圧Vsw)をサンプリングすることにより帰還電圧V1を生成する。本図に即して述べると、帰還電圧生成回路12は、電圧検出回路121と、サンプル/ホールド回路122と、を含む。
【0029】
電圧検出回路121は、電源端子VIN及び帰還端子FBの端子間電圧(=Vin-Vsw)に応じたモニタ電流IREFを基準端子REFに流すことにより、モニタ電圧V0(=IREF×R4)を生成する。なお、スイッチ素子11のオフ期間Toffに得られるスイッチ電圧Vswは、トランスTRのフライバック電圧(延いては直流出力電圧Voutの情報)を含む。従って、スイッチ電圧Vswをモニタすることにより、フォトカプラなどを用いることなく、一次回路系のみで出力帰還制御を行うことが可能となる。
【0030】
サンプル/ホールド回路122は、所定のタイミングでモニタ電圧V0をサンプリングすることにより帰還電圧V1を生成する。
【0031】
ソフトスタート回路13は、半導体装置10の起動時に0Vから緩やかに上昇するソフトスタート電圧V3を生成する。なお、ソフトスタート回路13は、低入力保護、過熱保護及び短絡/オープン保護のいずれか一つが掛かった時点でソフトスタート電圧V3を0Vにリセットする。
【0032】
コンパレータ14は、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧V1と、2つの反転入力端(-)にそれぞれ入力される基準電圧V2及びソフトスタート電圧V3の低い方とを比較して比較信号S0を生成する。基準電圧V2は、例えばパルス信号を鈍らせたスロープ波形であってもよい。比較信号S0は、帰還電圧V1が基準電圧V2よりも高いときにハイレベルとなり、帰還電圧V1が基準電圧V2よりも低いときにローレベルとなる。
【0033】
コントローラ15は、比較信号S0に応じてスイッチ素子11のオン/オフ制御を行うようにゲート制御信号S1を生成する。例えば、コントローラ15は、比較信号S0のパルスエッジ(例えば立下りエッジ)をトリガとしてスイッチ素子11のオンタイミングを決定する。また、コントローラ15は、スイッチ素子11をオンしてから所定のオン期間Tonが経過したことをトリガとしてスイッチ素子11のオフタイミングを決定する。なお、コントローラ15は、各種の異常検出時(例えば、短絡/オープン異常又は過電流/天絡異常の検出時)にスイッチ素子11を強制的にオフ状態とする機能も備えている。
【0034】
スイッチ駆動回路16は、ゲート制御信号S1に応じてスイッチ素子11のゲート駆動信号G1を生成する。例えば、スイッチ駆動回路16は、ゲート制御信号S1がローレベルであるときにゲート駆動信号G1をハイレベルとしてスイッチ素子11をオン状態とする。また、スイッチ駆動回路16は、ゲート制御信号S1がハイレベルであるときにゲート駆動信号G1をローレベルとしてスイッチ素子11をオフ状態とする。
【0035】
最大周波数設定回路17は、スイッチング周波数fsw(=1/Tsw=1/(Ton+Toff))の最大値を設定するようにコントローラ15を制御する。
【0036】
負荷補償回路18は、スイッチ素子11(延いてはトランスTRの一次巻線Lp)に流れる一次電流Ipに応じた補正電流IREFCOMPを生成し、これをモニタ電流IREFに足し合わせることにより、ダイオードD3に生じる順方向降下電圧Vfの変化を補償する。なお、補正電流IREFCOMPは、負荷補償端子LCOMPに外付けされる抵抗R3及びキャパシタC2により任意に調整することが可能である。
【0037】
スペクトラム拡散回路19は、スイッチング周波数fswを周期的に又は乱数的にスペクトラム拡散するようにコントローラ15を制御する。
【0038】
内部レギュレータ1Aは、電源端子VINに印加される直流入力電圧Vinから所定の内部電源電圧Vregを生成する。なお、内部レギュレータ1Aは、例えば、イネーブル端子ENがハイレベルであるときにイネーブル状態となり、イネーブル端子ENがローレベルであるときにディセーブル状態となる。
【0039】
低入力保護回路1Bは、電源端子VINに印加される直流入力電圧Vinの低入力状態(いわゆるUVLO[under-voltage locked out]状態)を検出し、その検出結果をソフトスタート回路13に出力する。なお、低入力保護回路1Bは、例えば、イネーブル端子ENがハイレベルであるときにイネーブル状態となり、イネーブル端子ENがローレベルであるときにディセーブル状態となる。
【0040】
過熱保護回路1Cは、半導体装置10(特にスイッチ素子11)の過熱状態を検出し、その検出結果をソフトスタート回路13に出力する。
【0041】
短絡/オープン保護回路1Dは、基準端子REFに印加されるモニタ電圧V0を監視することにより、基準端子REFの短絡/オープン異常を検出し、その検出結果をソフトスタート回路13及びコントローラ15それぞれに出力する。
【0042】
過電流/天絡保護回路1Eは、スイッチ素子11(延いてはトランスTRの一次巻線Lp)に流れる一次電流Ipを監視することにより、一次電流Ipの過電流状態又はスイッチ端子SWの天絡状態を検出し、その検出結果をコントローラ15に出力する。
【0043】
なお、上記した各種機能ブロックのうち、少なくとも帰還電圧生成回路12、コンパレータ14及びコントローラ15は、帰還電圧V1に応じてスイッチ駆動回路16を制御する帰還制御回路の構成要素として理解され得る。
【0044】
<基本動作>
スイッチング電源1の基本動作について簡単に説明する。スイッチ素子11のオン期間Tonには、直流入力電圧Vinの印加端から一次巻線Lp及びスイッチ素子11を介して接地端GND1に向けた一次電流Ipが流れる。従って、一次巻線Lpに電気エネルギが蓄えられる。
【0045】
一方、スイッチ素子11のオフ期間Toffには、一次巻線Lpと磁気結合された二次巻線Lsに誘起電圧が発生し、二次巻線LsからダイオードD3及びキャパシタC4を介して接地端GND2に向けた二次電流Isが流れる。このとき、二次巻線Lsの誘起電圧を整流及び平滑した直流出力電圧Voutが出力される。
【0046】
以降も、スイッチ素子11がオン/オフされることにより、上記と同様のスイッチング出力動作が繰り返される。
【0047】
このように、本実施形態のスイッチング電源1によれば、一次回路系と二次回路系との間を電気的に絶縁しつつ、直流入力電圧Vinから所望の直流出力電圧Voutを生成することができる。
【0048】
<直流出力電圧Voutの計算>
ところで、スイッチング電源1で生成される直流出力電圧Voutは、次の(1a)式又は(1b)式で算出することができる。
【0049】
【0050】
なお、(1a)式は、負荷補償端子LCOMPが接地端GND1にショートされている場合(すなわちIREFCOMP=0である場合)に相当する。一方、(1b)式は、負荷補償端子LCOMPを用いてダイオードD3の順方向降下電圧Vfを補償する場合に相当する。また、両式中における符号VINTREFは、半導体装置10の内部で設定される基準電圧(例えば0.54V)である。
【0051】
上記した直流出力電圧Voutの誤差要因としては、抵抗比(R6/R4)及び巻線比(Ns/Np)のばらつきに加えて、ダイオードD3の順方向降下電圧Vfの変化(=温度及び負荷電流による誤差)が挙げられる。また、スイッチング電源1の軽負荷時には、トランスTRの二次巻線Lsに生じるサージ電圧がキャパシタC4に充電されることにより、直流出力電圧Voutの上昇を生じ得る。なお、このような直流出力電圧Voutの上昇は、キャパシタC4の大容量化又は出力抵抗の追加により低減することができる。
【0052】
<ターンオフ挙動>
図3は、スイッチ素子11のターンオフ挙動の一例を示す図であり、上から順に、ゲート駆動信号G1とスイッチ電圧Vswが描写されている。本図で示すように、ゲート駆動信号G1がハイレベルからローレベルに立ち下がり、スイッチ素子11がオン状態からオフ状態に切り替わるタイミング、つまり、スイッチ電圧Vswがローレベルからハイレベルに立ち上がるタイミングでは、スイッチ電圧Vswにリンギング(サージ)が生じる。
【0053】
<出力帰還制御>
図4は、半導体装置10による出力帰還制御の一例を示す図であり、上から順に、直流出力電圧Vout、スイッチ電圧Vsw、モニタ電圧V0、サンプル/ホールド回路122の動作状態、帰還電圧V1、基準電圧V2及びゲート駆動信号G1が描写されている。
【0054】
時刻t1において、ゲート駆動信号G1がハイレベルからローレベルに立ち下げられると、スイッチ素子11がオン状態からオフ状態に切り替わる。その結果、スイッチ電圧Vswがローレベルからハイレベルに上昇する。このとき、直流出力電圧Voutは、低下から上昇に転じる。
【0055】
スイッチ素子11のオフ期間Toff(=時刻t1~t4)には、電源端子VINと帰還端子FBの端子間電圧(=Vin-Vsw)に応じたモニタ電圧V0が生成される。モニタ電圧V0は、スイッチ電圧Vswに含まれるトランスTRのフライバック電圧(延いては直流出力電圧Voutの情報)に相当する。
【0056】
時刻t2~t3では、モニタ電圧V0のサンプル/ホールド処理により帰還電圧V1が生成(更新)される。
【0057】
時刻t4において、スロープ波形の基準電圧V2が帰還電圧V1よりも高くなり、ゲート駆動信号G1がローレベルからハイレベルに立ち上げられると、スイッチ素子11がオフ状態からオン状態に切り替わる。その結果、スイッチ電圧Vswがハイレベルからローレベルに低下する。このとき、直流出力電圧Voutは、上昇から低下に転じる。
【0058】
時刻t4以降も上記一連の出力帰還制御が繰り返される。その結果、帰還電圧V1が所定の基準電圧VINTREF(例えば0.54V)と一致するように直流出力電圧Voutが安定化される。
【0059】
ところで、本図で示すように、スイッチ電圧Vswがローレベルからハイレベルに立ち上がるタイミング(=時刻t1)では、トランスTRの漏れインダクタンスにより、スイッチ電圧Vswにリンギング(サージ)が発生する。このような挙動は、先出の
図3でも説明した通りである。
【0060】
そのため、出力帰還制御に支障を来さないように、電圧検出回路121では、遅延時間T3(本図では時刻t1~t2、例えば最大270ns)の設定により、スイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)を除去してモニタ電圧V0を生成することが望ましい。
【0061】
また、半導体装置10では、サンプル/ホールド回路122で安定したモニタ電圧V0の電圧値を読み取ることができるように、スイッチ素子11のターンオフタイミングを起点として、サンプリングマスク期間T1(本図では時刻t1~t2、例えば最小150ns)とサンプリング終了時間T2(本図では時刻t1~t3、例えば最小300ns)が設定されている。
【0062】
サンプリングマスク期間T1では、サンプル/ホールド回路122によるモニタ電圧V0のサンプリング処理が内部的にマスクされる。サンプリング終了時間T2は、モニタ電圧V0のサンプリング終了タイミング(=ホールドタイミング)を決定する。従って、モニタ電圧V0のサンプリング処理は、サンプリングマスク期間T1が満了してからサンプリング終了時間T2が経過するまで実施される(本図では時刻t2~t3)。
【0063】
ただし、サンプリング終了時間T2の経過後もスイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)が残っている場合には、帰還電圧V1が安定しないおそれがある。このような状況に陥ると、一次回路系のみで出力帰還制御を行う絶縁型のスイッチング電源1では、スイッチング挙動が不安定となり、延いては、直流出力電圧Voutが不安定となり得る。このような不具合を回避するためには、スイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)をサンプリング終了時間T2未満に制限しなければならない。
【0064】
また、一次回路系のみで出力帰還制御を行う絶縁型のスイッチング電源1に限らず、スイッチング回路全般において、低EMI[electro-magnetic interference]は重要な課題の一つである。また、スイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)が大きいと、これに耐え得るようにスイッチ素子11のドレイン・ソース間耐圧を高めなければならない。
【0065】
これらの課題を鑑みると、スイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)自体を低減することが重要である。以下では、スイッチ駆動回路16による低ノイズ化を提案する。
【0066】
<スイッチ駆動回路(第1構成例)>
図5は、スイッチ駆動回路16の第1構成例を示す図である。第1構成例のスイッチ駆動回路16は、基準電流源CSと、ドライバDRVH及びDRVLと、トランジスタN1~N6(NMOSFET)と、トランジスタP1~P12(PMOSFET[P-channel type MOSFET])と、を含む。
【0067】
トランジスタP1のソースは、内部電源電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタP1及びN1それぞれのドレインは、いずれもスイッチ素子11のゲート(=ゲート駆動信号G1の印加端)に接続されている。トランジスタP1のゲートは、ドライバDRVHの出力端(=上側ゲート駆動信号GHの印加端)に接続されている。トランジスタN1のゲートは、ドライバDRVLの出力端(=下側ゲート駆動信号GLの印加端)に接続されている。
【0068】
トランジスタP2~P6それぞれのソースは、いずれも内部電源電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタP2~P6それぞれのゲートは、いずれもトランジスタP2のドレインに接続されている。トランジスタP2のドレインは、基準電流源CSの第1端に接続されている。基準電流源CSの第2端は、接地端子GNDに接続されている。
【0069】
トランジスタP7~P9それぞれのソースは、それぞれ、トランジスタP3~P5それぞれのドレインに接続されている。トランジスタP7~P9それぞれのゲートは、それぞれ、調整信号G7~G9の印加端に接続されている。トランジスタP6~P9それぞれのドレインは、いずれもトランジスタN2のドレインに接続されている。トランジスタN2及びN3それぞれのゲートは、いずれもトランジスタN2のドレインに接続されている。トランジスタN3のドレインは、トランジスタN1のソースに接続されている。トランジスタN2及びN3それぞれのソースは、いずれも接地端子GNDに接続されている。
【0070】
トランジスタP10~P12それぞれのソースは、いずれも内部電源電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタP10~P12それぞれのゲート及びトランジスタN4~N6それぞれのゲートは、いずれもスイッチ素子11のゲート(=ゲート駆動信号G1の印加端)に接続されている。
【0071】
トランジスタP10及びN4それぞれのドレインは、いずれもトランジスタP9のゲート(=調整信号G9の印加端)に接続されている。トランジスタP11及びN5それぞれのドレインは、いずれもトランジスタP8のゲート(=調整信号G8の印加端)に接続されている。トランジスタP12及びN6それぞれのドレインは、いずれもトランジスタP7のゲート(=調整信号G7の印加端)に接続されている。トランジスタN4~N6それぞれのソースは、いずれも接地端子GNDに接続されている。
【0072】
ドライバDRVH及びDRVLは、それぞれ、ゲート制御信号S1に応じて上側ゲート駆動信号GH及び下側ゲート駆動信号GLを生成する。上側ゲート駆動信号GH及び下側ゲート駆動信号GLは、ゲート制御信号S1がハイレベルであるときにいずれもハイレベルとなり、ゲート制御信号S1がローレベルであるときにいずれもローレベルとなる。
【0073】
従って、ゲート制御信号S1がローレベルであるときには、トランジスタP1がオン状態となり、トランジスタN1がオフ状態となる。その結果、ゲート駆動信号G1がハイレベルとなるので、スイッチ素子11がオン状態となる。
【0074】
一方、ゲート制御信号S1がハイレベルであるときには、トランジスタP1がオフ状態となり、トランジスタN1がオン状態となる。その結果、ゲート駆動信号G1がローレベルとなるので、スイッチ素子11がオフ状態となる。
【0075】
上記構成要素のうち、基準電流源CS、トランジスタP2~P9、及び、トランジスタN2並びにN3は、Nチャネル型のスイッチ素子11をオフするときにスイッチ素子11のゲートからシンク電流ILを引き抜いてスイッチ素子11のゲートに印加されるゲート駆動信号G1を低下させるシンク電流源161を形成している。
【0076】
なお、基準電流源CSは、所定の基準電流I0を生成する。
【0077】
トランジスタP2~P6は、基準電流I0から複数の単位電流I1~I4を生成するカレントミラーCMを形成している。なお、複数の単位電流I1~I4は、同一の電流値であってもよいし、異なる電流値であってもよい。
【0078】
トランジスタP7~P9、N2及びN3は、調整信号G7~G9に応じた数だけ複数の単位電流I1~I4を足し合わせた加算電流I5を生成し、これをミラーすることによりシンク電流ILを生成する電流加算部ADDを形成している。なお、トランジスタN2及びN34それぞれのゲートと接地端子GNDとの間にキャパシタを挿入してもよい。
【0079】
調整信号G7~G9がいずれもローレベルであるときには、トランジスタP7~P9がいずれもオン状態となる。従って、加算電流I5は、単位電流I1~I4を全て足し合わせた電流値(=I1+I2+I3+I4)となる。このとき、シンク電流ILは、これが取り得る最大値となる。
【0080】
調整信号G7及びG8がローレベルで調整信号G9がハイレベルであるときには、トランジスタP7及びP8がオン状態でトランジスタP9がオフ状態となる。従って、加算電流I5は、単位電流I1、I2及びI4を足し合わせた電流値(=I1+I2+I4)となる。このとき、シンク電流ILは、最大値から1段階引き下げられた状態となる。
【0081】
調整信号G7がローレベルで調整信号G8及びG9がハイレベルであるときには、トランジスタP7がオン状態でトランジスタP8及びP9がオフ状態となる。従って、加算電流I5は、単位電流I1及びI4を足し合わせた電流値(=I1+I4)となる。このとき、シンク電流ILは、最大値から2段階引き下げられた状態となる。
【0082】
調整信号G7~G9がいずれもハイレベルであるときには、トランジスタP7~P9がいずれもオフ状態となる。従って、加算電流I5は、単位電流I4と等しくなる。このとき、シンク電流ILは、これが取り得る最小値となる。
【0083】
また、上記構成要素のうち、トランジスタP10~P12及びN4~N6は、ゲート駆動信号G1の低下中においてゲート駆動信号G1が高いほどシンク電流ILの電流値を大きくしてゲート駆動信号G1が低いほどシンク電流ILの電流値を小さくするシンク電流調整部162を形成している。
【0084】
トランジスタP10及びN4は、インバータINV1を形成している。インバータINV1は、閾値Vth1を持ちゲート駆動信号G1に応じて出力論理が切り替わる。なお、インバータINV1の出力信号は、先出の調整信号G9として出力される。従って、調整信号G9は、ゲート駆動信号G1が閾値Vth1よりも高いときにローレベルとなり、ゲート駆動信号G1が閾値Vth1よりも低いときにハイレベルとなる。
【0085】
トランジスタP11及びN5は、インバータINV2を形成している。インバータINV2は、閾値Vth1とは異なる閾値Vth2(例えばVth2<Vth1)を持ち、ゲート駆動信号G1に応じて出力論理が切り替わる。なお、インバータINV2の出力信号は、先出の調整信号G8として出力される。従って、調整信号G8は、ゲート駆動信号G1が閾値Vth2よりも高いときにローレベルとなり、ゲート駆動信号G1が閾値Vth2よりも低いときにハイレベルとなる。
【0086】
トランジスタP12及びN6は、インバータINV3を形成している。インバータINV3は、閾値Vth1及びVth2のいずれとも異なる閾値Vth3(例えばVth3<Vth2)を持ち、ゲート駆動信号G1に応じて出力論理が切り替わる。なお、インバータINV3の出力信号は、先出の調整信号G7として出力される。従って、調整信号G7は、ゲート駆動信号G1が閾値Vth3よりも高いときにローレベルとなり、ゲート駆動信号G1が閾値Vth3よりも低いときにハイレベルとなる。
【0087】
インバータINV1~INV3それぞれの閾値Vth1~Vth3を調整する手法としては、例えば、トランジスタP10~P12及びトランジスタN4~N6それぞれのチャネルサイズ(W/L[width/length])を任意に設計すればよい。
【0088】
なお、インバータINV1~INV3は、それぞれ異なる閾値Vth1~Vth3が相関を持つように、単一の半導体基板に形成しておくとよい。このような構成であれば、閾値Vth1~Vth3それぞれに製造ばらつきが生じたとしても、そのばらつき特性が一致する。従って、閾値Vth1~Vth3それぞれの高低関係が崩れにくくなる。
【0089】
<シンク電流調整動作>
図6は、スイッチ駆動回路16におけるシンク電流調整動作の一例を示す図であり、上から順に、ゲート駆動信号G1及びスイッチ電圧Vswが描写されている。なお、本図中の破線は対策前の挙動(=シンク電流源161及びシンク電流調整部162が設けられていない一般的な構成の場合)を示しており、本図中の実線は対策後の挙動を示している。
【0090】
なお、インバータINV1の閾値Vth1は、スイッチ素子11のプラトー電圧Vpよりも高い電圧値に設定されている。また、インバータINV2及びINV3それぞれの閾値Vth2及びVth3は、それぞれ、スイッチ素子11のプラトー電圧Vpよりも低い電圧値に設定されている。
【0091】
時刻t11において、ゲート駆動信号G1がハイレベルから低下し始めると、スイッチ素子11のターンオフ遷移期間となる。このとき、ゲート駆動信号G1は、閾値Vth1よりも高い状態である。従って、調整信号G7~G9がいずれもローレベルとなる。その結果、シンク電流ILは、これが取り得る最大値に設定される。すなわち、ターンオフ遷移期間の開始当初には、ゲート駆動信号G1が最も大きい低下速度(スルーレート)で急峻に引き下げられる。
【0092】
時刻t12において、ゲート駆動信号G1が閾値Vth1を下回ると、調整信号G9がハイレベルとなる。その結果、シンク電流ILは、これが取り得る最大値から1段階引き下げられる。すなわち、ゲート駆動信号G1は、プラトー電圧Vpまで低下する前にその低下速度(スルーレート)が1段階緩やかとなる。
【0093】
時刻t13において、ゲート駆動信号G2が閾値Vth2を下回ると、調整信号G9に続いて調整信号G8もハイレベルとなる。その結果、シンク電流ILは、これが取り得る最大値から2段階引き下げられる。すなわち、ゲート駆動信号G1は、プラトー電圧Vpを下回った後にその低下速度(スルーレート)がさらに1段階緩やかとなる。
【0094】
時刻t14において、ゲート駆動信号G2が閾値Vth3を下回ると、調整信号G9及びG8に続いて調整信号G7もハイレベルとなる。その結果、シンク電流ILは、これが取り得る最小値まで引き下げられる。すなわち、ターンオフ遷移期間の終了前には、ゲート駆動信号G1が最も小さい低下速度(スルーレート)で緩やかに引き下げられる。
【0095】
上記一連のシンク電流調整動作によれば、スイッチ素子11のターンオフ時に生じるスイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)を大幅に低減することが可能となる。従って、スイッチ電圧Vswを精度良く検出することができるようになるので、出力帰還制御の安定性を高めることが可能となる。
【0096】
なお、帰還電圧生成回路12は、シンク電流ILの引き下げが完了した時点、又は、その時点から一定の遅延時間が経過した時点で、スイッチ電圧Vsw(延いてはモニタ電圧V0)のサンプリングを開始してもよい。このようなサンプリングタイミングの設定により、安定したモニタ電圧V0の電圧値を読み取ることが可能となる。
【0097】
また、上記一連のシンク電流調整動作によれば、スイッチング電源1の低EMI化及びスイッチ素子11の低耐圧化も実現することができる。さらに、スイッチング損失(特に無効電流とサージ電圧との乗算成分)を低減する効果についても期待することができる。
【0098】
なお、スイッチ素子11のターンオフ遷移期間に一定のシンク電流ILを引き抜く構成とするだけでも、スイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)を抑えることはできる。ただし、そのような構成では、スイッチング速度が一律的に遅くなり、ゲート駆動信号G1の波形が鈍るので、スイッチ素子11の正常駆動に支障を来すおそれがある。
【0099】
一方、上記一連のシンク電流調整動作によれば、スイッチ素子11のターンオフ遷移期間において、開始当初は大きいシンク電流ILで急峻にゲート駆動信号G1が引き下げられ、その後にシンク電流ILが段階的に絞られてゲート駆動信号G1の低下速度が緩やかとされる。従って、スイッチング速度の低下を最小限に抑えつつ、スイッチ電圧Vswのリンギング(サージ)を低減することが可能となる。
【0100】
<スイッチ駆動回路(第2構成例)>
図7は、スイッチ駆動回路16の第2構成例を示す図である。第2構成例のスイッチ駆動回路16は、先出の第1構成例(
図5)を基本としつつ、さらに、抵抗RGを含む。
【0101】
抵抗RGは、スイッチ素子11のゲートと、トランジスタP1及びN1それぞれのドレイン(=シンク電流源161の出力端に相当)との間に接続されている。従って、シンク電流ILの電流値と抵抗RGの抵抗値により、ゲート駆動信号G1のスルーレートを調整することが可能となる。
【0102】
<総括>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0103】
例えば、本明細書中に開示されているスイッチ駆動回路は、Nチャネル型のスイッチ素子をオフするときに前記スイッチ素子の制御端からシンク電流を引き抜いて前記スイッチ素子の制御端に印加される駆動電圧を低下させるように構成されたシンク電流源と、前記駆動電圧の低下中において前記駆動電圧が高いほど前記シンク電流の電流値を大きくして前記駆動電圧が低いほど前記シンク電流の電流値を小さくするように構成されたシンク電流調整部と、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0104】
なお、上記第1の構成によるスイッチ駆動回路において、前記シンク電流源は、所定の基準電流を生成するように構成された基準電流源と、前記基準電流から複数の単位電流を生成するように構成されたカレントミラーと、前記シンク電流調整部から出力される調整信号に応じた数だけ前記複数の単位電流を足し合わせて前記シンク電流を生成するように構成された電流加算部と、を含む構成(第2の構成)にしてもよい。
【0105】
また、上記第2の構成によるスイッチ駆動回路において、前記シンク電流調整部は、それぞれ異なる閾値を持ち前記駆動電圧に応じて出力論理が切り替わるように構成された複数のインバータを含み、前記複数のインバータそれぞれの出力信号を前記調整信号として出力する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0106】
また、上記第3の構成によるスイッチ駆動回路において、前記複数のインバータは、それぞれ異なる閾値が相関を持つように単一の半導体基板に形成されている構成(第4の構成)にしてもよい。
【0107】
また、上記第3又は第4の構成によるスイッチ駆動回路において、前記複数のインバータそれぞれの閾値のうち、少なくとも一つの閾値は、前記スイッチ素子のプラトー電圧よりも高い電圧値に設定されており、少なくとも一つの別の閾値は、前記スイッチ素子の前記プラトー電圧よりも低い電圧値に設定されている構成(第5の構成)にしてもよい。
【0108】
また、上記第1~第5いずれかの構成によるスイッチ駆動回路は、前記スイッチ素子の制御端と前記シンク電流源の出力端との間に接続されるように構成された抵抗をさらに含む構成(第6の構成)にしてもよい。
【0109】
また、例えば、本明細書中に開示されている電源制御装置は、上記第1~第6いずれかの構成によるスイッチ駆動回路と、帰還電圧に応じて前記スイッチ駆動回路を制御するように構成された帰還制御回路と、を備える構成(第7の構成)とされている。
【0110】
また、例えば、本明細書中に開示されているスイッチング電源は、上記第7の構成による電源制御装置を備え、前記スイッチ素子をオン/オフすることにより入力電圧から出力電圧を生成する構成(第8の構成)とされている。
【0111】
なお、上記第8の構成によるスイッチング電源は、トランスを備えるフライバック型であり、前記スイッチ素子の一端は、前記トランスの一次巻線に接続されている構成(第9の構成)にしてもよい。
【0112】
また、上記第9の構成によるスイッチング電源において、前記帰還制御回路は、前記スイッチ素子のオフ期間に前記スイッチ素子の前記一端に現れるスイッチ電圧をサンプリングすることにより前記帰還電圧を生成するように構成された帰還電圧生成回路を含む構成(第10の構成)にしてもよい。
【0113】
また、上記第10の構成によるスイッチング電源において、前記帰還電圧生成回路は、前記シンク電流の引き下げが完了した時点、又は、その時点から一定の遅延時間が経過した時点で前記スイッチ電圧のサンプリングを開始する構成(第11の構成)にしてもよい。
【0114】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0115】
例えば、上記実施形態では、ゲート駆動信号G1と閾値Vth1~Vth3との比較結果に応じてシンク電流ILの切替制御を行う例を挙げたが、例えば、ターンオフ開始からの経過時間に応じてシンク電流ILの切替制御を行ってもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、絶縁型(フライバック型)のDC/DCコンバータを例示したが、非絶縁型(降圧型、昇圧型、昇降圧型など)であってもよいし、AC/DCコンバータであってもよい。
【0117】
このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解され得る。
【符号の説明】
【0118】
1 スイッチング電源
10 半導体装置
11 スイッチ素子(NMOSFET)
12 帰還電圧生成回路
121 電圧検出回路
122 サンプル/ホールド回路
13 ソフトスタート回路
14 コンパレータ
15 コントローラ
16 スイッチ駆動回路
161 シンク電流源
162 シンク電流調整部
17 最大周波数設定回路
18 負荷補償回路
19 スペクトラム拡散回路
1A 内部レギュレータ
1B 低入力保護回路
1C 過熱保護回路
1D 短絡/オープン保護回路
1E 過電流/天絡保護回路
C1~C4 キャパシタ
CS 基準電流源
D1~D3 ダイオード
DRVH、DRVL ドライバ
EN イネーブル端子
FB 帰還端子
GND 接地端子
INV1~INV3 インバータ
LCOMP 負荷補償端子
Lp 一次巻線
Ls 二次巻線
N1~N6 トランジスタ(NMOSFET)
P1~P12 トランジスタ(PMOSFET)
R1~R7、RG 抵抗
REF 基準端子
SW スイッチ端子
TR トランス
VIN 電源端子