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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033067
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240306BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240306BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/891
A61K8/34
A61K8/02
A61Q1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136448
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】593084649
【氏名又は名称】日本コルマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 翔
(72)【発明者】
【氏名】榊山 利明
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB052
4C083AB172
4C083AC081
4C083AC082
4C083AD072
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB21
4C083CC14
4C083DD17
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】上記湿式製法は、乾燥工程を必要としないことで製造時間を短縮する方法であったが、さらに使用性に優れた固形粉末化粧料およびその製造方法についての技術が所望されてきた。 従って、本発明は、湿式製法での溶剤除去における乾燥工程を不要とし、さらに使用時の滑らかさおよび透明性に優れた固形粉末化粧料およびその製造方法を提供するものである。
【解決手段】即ち、本発明は、 下記成分(A)~(E)を含有する化粧料基材を、溶剤としてさらに添加した成分(E)と混合してスラリー状とすることを特徴とする固形粉末化粧料およびその製造方法の提供に関する。
(A)架橋型ポリエーテル変性シリコーン:0.05~2.5質量%
(B)架橋型メチルポリシロキサン:3.0~15.0質量%
(C)粉体:20.0~60.0質量%
(D)水溶性成分:0.1~5.0質量%
(E)不揮発性シリコーン油:20.0~60.0質量%



【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(E)を含有する化粧料基材に、溶剤としてさらに成分(E)を添加してスラリー状とし、容器に充填したあと、該溶剤の成分(E)の一部または全量を除去することを特徴とする固形粉末化粧料。
(A)架橋型ポリエーテル変性シリコーン:0.05~2.5質量%
(B)架橋型メチルポリシロキサン:3.0~15.0質量%
(C)粉体:20.0~60.0質量%
(D)水溶性成分:0.1~5.0質量%
(E)不揮発性シリコーン油:20.0~60.0質量%
【請求項2】
請求項1に記載の固形粉末化粧料であって、容器に充填したあと、該溶剤の成分(E)の一部または全量を、容器の開口部に吸収体を押し付け除去することを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記溶剤除去後に乾燥工程が不要である、請求項1または2に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(C)100質量%中に、ポリメチルシルセスキオキサン、シリカ、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマーの中から選ばれる1種または2種以上を30~50質量%含む、請求項3に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)が、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーである、請求項4に記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
前記成分(B)が、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー及び/又はジメチコンクロスポリマーである、請求項5に記載の固形粉末化粧料。
【請求項7】
前記成分(D)が、水及び/又はイソプロピルアルコールである、請求項6に記載の固形粉末化粧料。
【請求項8】
請求項4に記載の固形粉末化粧料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体成分と油性成分で構成される固形粉末化粧料は、ファンデーションや白粉、アイカラー、チークカラー、アイシャドウ、アイブロウなどのメイクアップ化粧料等として広く用いられている。
【0003】
固形粉末化粧料を製造する方法としては、粉体成分と油性成分とを混合し、型に充填してプレスし成型する乾式製法と、粉体と油剤を混合した化粧料基材に溶剤を加えスラリー状にし、得られたスラリーを型に充填し、溶剤を乾燥除去して成型する湿式製法とが知られている。
【0004】
この湿式製法は、柔らかく、滑らかな使用感を有する利点がある一方、溶剤除去における乾燥工程に長時間要し、乾燥設備や乾燥時に加熱工程が必要となる。
【0005】
このような課題を解決するため、少ない溶剤量で十分な流動性のあるスラリーを得て、溶剤を紙や不織布等の吸収体に吸収除去し、乾燥工程を不要とすることで製造時間を短縮する方法(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-86156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記湿式製法は、乾燥工程を必要としないことで製造時間を短縮する方法であったが、さらに使用性に優れた固形粉末化粧料およびその製造方法についての技術が所望されてきた。
従って、本発明は、湿式製法での溶剤除去における乾燥工程を不要とし、さらに使用時の滑らかさおよび透明性に優れた固形粉末化粧料およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、 下記成分(A)~(E)を含有する化粧料基材を、溶剤としてさらに添加した成分(E)と混合してスラリー状とすることを特徴とする固形粉末化粧料およびその製造方法の提供に関する。
(A)架橋型ポリエーテル変性シリコーン:0.05~2.5質量%
(B)架橋型メチルポリシロキサン:3.0~15.0質量%
(C)粉体:20.0~60.0質量%
(D)水溶性成分:0.1~5.0質量%
(E)不揮発性シリコーン油:20.0~60.0質量%
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固形粉末化粧料の湿式製法において、溶剤除去における乾燥工程を不要とすることで、製造時間を大幅に縮小することができ、さらに使用時の滑らかさおよび透明性に優れた固形粉末化粧料およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における(A)架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、三次元の結合を含むポリエーテル変性シリコーン類であり、ジメチコンポリオールクロスポリマーとして知られている。これらのシリコーンは既知の化合物であり、常法に従って製造することができる。又、この様な架橋型ポリエーテル変性シリコーンについては、既に市販されているものがあり、この様な市販品を利用することもできる。好ましい市販品としては、架橋型ポリエーテル変性シリコーンの低粘度シリコーン油膨潤タイプである、KSG-210或いはKSG-240(何れも信越化学工業社製)等が例示できる。このほか、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーンの油剤膨潤タイプである、KSG-310、KSG-320、KSG-330(何れも信越化学工業社製)なども使用することができる。
【0011】
ここで、「KSG-210」は、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリ
マー25%とジメチコン75%の混合物であり、「KSG-240」は、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー20%とシクロペンタシロキサン80%の混合物であり、「KSG-310」は、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー30%とミネラルオイル70%の混合物であり、「KSG-320」は、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー25%とイソドデカン7%の混合物であり、「KSG-330」は、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー20%とトリエチルヘキサノイン80%の混合物である。
【0012】
この架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、1種または2種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の固形粉末化粧料における架橋型ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、固形粉末化粧料全量に対して、総量で0.05~2.5質量%であり、好ましくは0.1~1.5質量%であり、特に好ましくは0.2~1.0質量%である。
【0013】
本発明における(B)架橋型メチルポリシロキサンは、オルガノポリシロキサンを架橋結合させた三次元架橋構造を有する重合物で特公平8-6035号公報に記載されているものが挙げられる。又、この様な架橋型メチルポリシロキサンについては、既に市販されているものがあり、この様な市販品を利用することもできる。好ましい市販品としては、低粘度シリコーン油と混合して膨潤させたエラストマー形状のKSG-15、KSG-16、KSG-18(何れも信越化学工業社製)、あるいは粉体形状のガンツパール SIG-070(アイカ工業社製)等が例示できる。
【0014】
ここで「KSG-15」は、架橋型メチルポリシロキサン5%とシクロペンタシロキサン95%の混合物であり、「KSG-16」は、架橋型メチルポリシロキサン25%とジメチコン75%の混合物であり、「ガンツパール SIG-070」は、架橋型メチルポリシロキサン100%である。
【0015】
この架橋型メチルポリシロキサンは、1種または2種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の固形粉末化粧料における架橋型メチルポリシロキサンの含有量は、固形粉末化粧料全量に対して、総量で3.0~15.0質量%であり、好ましくは4.0~14.0質量%であり、特に好ましくは5.0~13.0質量%である。
【0016】
本発明における(C)粉体は、通常、化粧料に用いられる粉体であれば、特に限定なく用いることができ、例えば、体質粉体、白色顔料、着色顔料等が挙げられる。粉体の形状についても特に限定されず、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造を有していてもよい。ただし、成分(B)である(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーは除く。
【0017】
具体的には、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化アルミニウムマグネシウム等の体質顔料類、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱剤類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、セルロースパウダー、N-アシルリジンパウダー等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化チタン被覆ナイロン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸が挙げられる。
【0018】
着色顔料としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機性着色顔料、赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等の有機性着色顔料、雲母チタン、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムフレーク等のパール顔料、カルミン、ベニバナ等の天然色素などが挙げられる。
【0019】
この粉体は、1種または2種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の固形粉末化粧料における粉体の含有量は、固形粉末化粧料全量に対して、総量で20.0~60.0質量%であり、好ましくは25.0~55.0質量%であり、特に好ましくは30.0~50.0質量%である。また、伸びの良さ、成型性の良さの点で粉体成分100%中にポリメチルシルセスキオキサン、シリカ、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマーから選ばれる1種または2種以上を30.0~50.0質量%含むことが好ましく、35.0~45.0質量%含むことが特に好ましい。
【0020】
本発明における(D)水溶性成分とは、水又は、水に可溶である成分であれば特に制限はなく、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低沸点アルコール、植物エキス、グリセリン等の保湿成分等が例示される。さらに、スラリーの流動性を高める点で、水又はイソプロピルアルコール単独、およびイソプロピルアルコール水溶液がより好ましい。
【0021】
これら水溶性成分は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の固形粉末化粧料における水溶性成分の含有量は、固形粉末化粧料全量に対して、総量で0.1~5.0質量%であり、好ましくは0.2~4.0質量%であり、特に好ましくは0.3~3.0質量%である。
【0022】
本発明における(E)不揮発性シリコーン油とは、溶剤1gを直径48mmのガラスシャーレに広げ、25℃、常圧で24時間放置後の質量減少率が1%以下の、25℃で液状を呈するシリコーン油剤をいう。このような不揮発性シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(5mm2/s以上、25℃)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸等のシリコーン油等が挙げられる。又、この様な不揮発性シリコーン油については、既に市販されているものがあり、この様な市販品を利用することもできる。好ましい市販品としては、シリコーン KF-96Aシリーズ(信越化学工業社製)等が例示できる。
【0023】
これら不揮発性シリコーン油は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の固形粉末化粧料における不揮発性シリコーン油の含有量は、固形粉末化粧料全量に対して、総量で20.0~60.0質量%であり、好ましくは25.0~55.0質量%であり、特に好ましくは30.0~50.0質量%である。
【0024】
本発明の固形粉末化粧料は、上記必須成分の他に通常化粧料に用いられる成分を本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて適宜含有することができる。例えば、成分(B)、(E)以外の油性成分、多価アルコール、成分(A)以外の界面活性剤、被膜形成高分子、水溶性高分子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、美容成分、清涼剤、色素、香料等が挙げられる。
【0025】
例えば油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等が挙げられる。具体的には、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラ等のロウ類、パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプスワックス等の炭化水素類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンのシリコーン類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油類等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0026】
界面活性剤としては、化粧料に一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものでも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0027】
本発明の化粧料基材は、通常の粉末化粧料を製造する装置を使用し、上記成分を攪拌混合して、調製される。具体的には、まず成分(A)、(B)および一部の(E)を含む油剤相の成分を均一に攪拌混合する。一部の成分(E)の割合は、成分(E)全体量の4割から7割程度を使用する。必要に応じて加熱溶解してもよい。一方、成分(C)を含む粉体相の成分と成分(D)を均一に混合する。次いで、油剤相にこの粉体相を加えて均一に分散、必要に応じて粉砕することにより化粧料基材が調製される。このようにして得られた化粧料基材と溶剤として残りの成分(E)とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、開口部に吸収体を押し付け、該溶剤を除去することにより、固形粉末化粧料を得ることができる。
【0028】
また、成型の方法は、通常公知の方法、例えばスラリー状混合物を充填後に加圧し、該溶剤を紙や不織布等の吸収体を用いて、あるいはプレス型等に設けられた排出孔を通して、プレス時に除去する方法等の通常公知の方法を用いることができる。このような方法を用いると、乾燥設備や防爆設備を必要とせず、製造時間を大幅に短縮することができる。
【0029】
本発明の固形粉末化粧料は、アイカラー、チークカラー、ファンデーション、プレストパウダー、白粉、ボディパウダー、リップカラー等に用いられ、塗布時の滑らかさおよび塗布時の透明感のよさの点からアイカラー、チークカラー、ファンデーションにより好適に用いられる。
【実施例0030】
次に、実施例をあげて、本発明をより詳細に説明する。本発明はこれにより制限されるものではない。なお、表中の数値は、含有量(質量%)を示す。
実施例1~10及び比較例1~5:アイカラー
表1に示す処方及び下記製造方法により、アイカラーを調製し、以下に示す評価方法及び判定基準により評価した。これらの結果と、充填量と溶剤除去後の充填量から求めた充填率の結果も併せて表1に記載した。充填率については、一つの実施例および比較例につき3gを充填した12個のサンプルの平均値を算出した。
【0031】
【表1】
【0032】
[製造方法]実施例1~10、比較例1~5
(1):成分(A)、(B)および一部の(E)を含む油剤相の成分を混合機で均一に攪拌混合する。
(2):粉体相の成分(C)と水溶性成分(D)をディスパーで均一に攪拌混合する。
(3):(1)に(2)を加えて均一分散させ、化粧料基材を得る。
(4):(3)に溶剤として残りの成分(E)を加えてスラリーを調整する。
(5):(4)を充填皿に充填し、不織布を挟み真空吸引をしながら圧縮成型し、アイカラーを得る。
【0033】
(評価方法1:滑らかさ、透明感)
得られた各実施例・比較例のアイカラーについて、塗布時の滑らかさ、目視による塗布時の透明感について比較した。
塗布時の滑らかさ、目視による塗布時の透明感に関しては、10名の女性パネラーにより、各実施例・比較例のアイカラーを通常の使用方法で上瞼に塗布した。塗布時の滑らかさ、塗布時の透明感について、以下の評価基準により5段階評価して評点を付し、アイカラーごとに評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
<判定基準>
〔使用感〕 〔評点〕
非常に良い :5
良い :4
普通 :3
やや悪い :2
悪い :1
<判定基準>
〔評点の平均点〕 〔判定〕
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満 :○
2以上3.5未満 :△
2未満 :×
【0034】
(評価方法2:成型性)
得られた各実施例・比較例のアイカラーの成型性について、以下の判定基準に従って判定した。
<判定基準>
◎ : 成型・充填ともに問題なくアイカラーを得ることが出来る。
○ : 成型表面にヒビ・色ムラが若干あるが目立たない。
△ : 充填時にノズル詰まりが起きたり、成型表面にヒビ・色ムラが目立つ。
× : 成型できずアイカラーを得ることが出来ない。
【0035】
表1に示す通り、本発明の実施例1~10のアイカラーは比較品1~3に比べ、塗布時の滑らかさ、塗布時の透明感、および成型性が優れているものであった。
実施例1、2、5、9は塗布時の滑らかさ、塗布時の透明感、および成型性が特に優れているものであった。
一方、(A)架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含まない比較例1は成型性が劣り、(B)架橋型メチルポリシロキサンを含まない比較例2は使用性および成型性が共に劣り、(D)水溶性成分を含まない比較例3は成型性が劣るものであった。また、比較例4および5においては、粉体成分が10.0質量%以下、70.0質量%以上であるとアイカラーとして成型できない結果となった。
【0036】
本発明は、「物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当する。従って、本発明において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在することを下記に説明する。
【0037】
乾式製法と比較して、湿式製法で得られる固形粉末化粧料が塗布時の柔らかさ、なめらかさにおいて優れる理由として、板状粉末が平行に配向することが挙げられる。しかしながら、湿式製法および乾式製法で得られた固形粉末化粧料は、外観状全く同じであり、目視で区別することはできない。ここで、固形粉末化粧料に含まれる粉末の配向状態を確認する方法として、固形粉末化粧料の表面もしくは切断面を走査型電子顕微鏡で観察する方法が知られている。しかしながら、当該物をその構造により直接特定するために、個々の固形粉末化粧料の表面または切断面を走査型電子顕微鏡で確認する作業は、相当の労力と時間を要するため、およそ実際的ではない。そのため、本発明では当該物を、化粧料基剤と溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去する製造方法によって特定している。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の固形粉末化粧料の湿式製法において、溶剤除去における乾燥工程を不要とすることで、製造時間を大幅に短縮することができ、さらに使用時の滑らかさおよび透明感に優れた固形粉末化粧料およびその製造方法を提供することができる。