(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033071
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】時計モジュール及び電子時計
(51)【国際特許分類】
G04R 60/10 20130101AFI20240306BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240306BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20240306BHJP
G04R 20/26 20130101ALI20240306BHJP
【FI】
G04R60/10
H01Q1/22 Z
G04G21/04
G04R20/26
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136454
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 恭平
(72)【発明者】
【氏名】池田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】張 振也
【テーマコード(参考)】
2F002
5J047
【Fターム(参考)】
2F002AA00
2F002AB02
2F002AB03
2F002AB04
2F002EA01
2F002EB01
5J047AA12
5J047AB06
5J047EF02
(57)【要約】
【課題】表示画面とアンテナとが重なる場合でも、アンテナの受信感度の低減を抑制することのできる時計モジュール及び電子時計を提供する。
【解決手段】時計モジュールは、液晶表示画面(13)と、通信に係るアンテナパターン(112)及びアンテナ部品(111)を有するアンテナ素子(11)と、金属部品(12)と、を備える。アンテナパターン(112)は、平面視で曲線形状を有して、かつ液晶表示画面(13)と重なって位置している。アンテナ素子(11)は、アンテナパターン(112)から伸びたアンテナ部品(111)の延長方向である仮想ライン上の一方側と他方側とのうちいずれかが金属部品(12)と重ならないるように位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル表示画面と、
通信に係るアンテナパターンと、当該アンテナパターンと接続して前記アンテナパターンから伸びたアンテナ部品と、を有するアンテナ素子と、
金属部品と、
を備え、
前記アンテナパターンは、平面視で曲線形状を有して、かつ前記デジタル表示画面と重なって位置しており、
前記アンテナ素子は、前記アンテナパターンから伸びた前記アンテナ部品の延長方向である仮想ライン上の一方側と他方側とのうちのいずれかが前記金属部品と重ならないように位置している
時計モジュール。
【請求項2】
前記アンテナ部品は、平面視で矩形であり、
当該アンテナ部品の延長方向は、前記アンテナ部品の長手方向であり、
前記仮想ライン上の前記一方側及び前記他方側のうち前記金属部品と重ならない方は、外周側である、
請求項1記載の時計モジュール。
【請求項3】
前記アンテナ素子は、近距離無線通信に利用される請求項1記載の時計モジュール。
【請求項4】
前記アンテナパターンは、利用周波数の波長に応じた長さよりも長い請求項1記載の時計モジュール。
【請求項5】
前記利用周波数は、近距離無線通信に係る周波数である請求項4記載の時計モジュール。
【請求項6】
前記金属部品は、前記アンテナパターンから基準距離以上離隔している請求項1記載の時計モジュール。
【請求項7】
前記曲線形状は、円弧形状である請求項1記載の時計モジュール。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の時計モジュールを備える電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計モジュール及び電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
電子時計、特に腕に装着する腕時計には、大きさと重量の制約の中で多くの機能を実行可能なものがある。これらのうち、電波の受信や通信を行うことのできる電子時計は、当該電波の送受信に用いられるアンテナを有する。このアンテナは、他の金属部品などにより干渉を受けると適切な感度での電波のやり取りが困難になる。したがって、アンテナは、送受信感度がなるべく低下しないように他の金属部品との位置関係が定められる。
【0003】
しかしながら、電子時計では、サイズの増加を抑えながらより多くの機能を実行するために、アンテナを理想的な位置に位置させるのが難しい場合がある。特許文献1は、衛星信号を受信するアンテナが当該液晶表示画面と重なる場合でも、表示電極や接続配線の一部以外とは重ならないようにアンテナを配置する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多数の表示画素を有する表示画面などに対してアンテナの位置関係を調整するのが難しい場合がある。
【0006】
この発明の目的は、表示画面とアンテナとが重なる場合でも、アンテナの受信感度の低減を抑制することのできる時計モジュール及び電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
デジタル表示画面と、
通信に係るアンテナパターンと、当該アンテナパターンと接続して前記アンテナパターンから伸びたアンテナ部品と、を有するアンテナ素子と、
金属部品と、
を備え、
前記アンテナパターンは、平面視で曲線形状を有して、かつ前記デジタル表示画面と重なって位置しており、
前記アンテナ素子は、前記アンテナパターンから伸びた前記アンテナ部品の延長方向である仮想ライン上の一方側と他方側とのうちのいずれかが前記金属部品と重ならないように位置している
時計モジュール。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、表示画面とアンテナとが重なる場合でも、アンテナの受信感度の低減を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】時計モジュールにおけるアンテナ素子の位置関係を説明する底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の時計モジュール100におけるアンテナ素子11の位置関係を説明する底面図である。
図2は、断面線AAにおける時計モジュール100の断面図である。
【0011】
図1では、金属部品12に対するアンテナ素子11及び液晶表示画面13(デジタル表示画面)の位置関係が破線で示されている。時計モジュール100を用いる電子時計は、例えば、指針表示と液晶表示とを併用するものである。このため、液晶表示画面13は、図示略の指針の回転軸となる中心位置Oに対して一方の側、ここでは
図1において左下側にある。この
図1は、時計の底面図(裏面側から見た図)であるので、液晶表示画面13は、3時方向から6時方向に主な位置を占めている。
図2に示すように、液晶表示画面13は、樹脂部品16により固定されている。液晶表示画面13は、例えばドットマトリクスによるデジタル表示を行う。
【0012】
アンテナ素子11は、アンテナ部品111とアンテナパターン112とを有する。
図1に示すように、アンテナ部品111は、通信に係るアンテナパターン112と接続されており、アンテナパターン112から伸びている。アンテナパターン112(アンテナエレメント)は、液晶表示画面13の上方(
図2の+z側)から見た平面視(他の部品などにより隠されて一部又は全部が見えない場合には透視した形状)でその長さに比して曲率半径の大きい緩やかな円弧形状(曲線形状)を有するモノポールアンテナ(逆Lなどを含む)などである。これにより、アンテナパターン112の実際の長さは、送受信(いずれか一方であってもよい)に係る周波数(利用周波数)の波長に応じた長さ(例えば、波長の1/8など)よりも若干(数%~数十%)長くなっている。この長さの増加により、電波の送受信周波数を大きく異ならせないようにしつつ電波の送受信面積を拡大して感度の向上を図っている。ここでは、アンテナ素子11は近距離無線通信、特に、ブルートゥース(登録商標)による2.4GHz帯の通信に利用される。
【0013】
アンテナ素子11は、時計モジュール100内に位置する図示略のキャパシタの容量を調整することにより、上記アンテナパターン112の長さが増加している分を含めて受信周波数を調整するトリミング設定が可能となっている。
【0014】
アンテナ部品111は、特には限られないが、例えば、液晶表示画面13の上方から見た平面視で矩形状であり、アンテナパターン112の端部付近に当該アンテナパターン112を含む面から突出するように位置している。アンテナ部品111は、その長手方向がアンテナパターン112との接触面に垂直な方向に沿った向きで位置している。また、
図2に示すように、アンテナ部品111は、基板15に接続固定され、送受信データが基板15の信号線との間で入出力される。
【0015】
図1に示すように、アンテナ素子11は、平面視で液晶表示画面13と重なって位置している。この場合でも、アンテナ素子11は、可能な限り時計モジュール100の外縁近くに位置するのがよい。この結果、アンテナ素子11は、時計モジュール100の外縁よりも若干内側に位置している。一方で、アンテナ素子11の周囲は、電波の送受信に対する干渉を低減するように金属部品12との間に距離(クリアランス)が取られている。
【0016】
金属部品12は、時計の筐体内で時計モジュール100の全体を固定する押さえ部材121と、バッテリを適切な位置で固定するための部材122とを含む。押さえ部材121により固定される対象には、基板15とハウジングとが含まれる。
【0017】
ハウジングには、樹脂部品16が含まれる。ハウジング内には、上記液晶表示画面13を含むデジタル表示に係る構成と、指針、歯車列(輪列機構)及びステッピングモータなどの指針表示に係る構成などが収容される。また、金属部品12は、時計側面に位置する押しボタンスイッチの弾性応力を生じさせる板バネなどを有する。金属部品12は、筐体接地面としても機能し、基板15上の接地面と電気的に接続されていてもよい。金属部品12には、その他図示略のねじ、スプリング(ばね)や、バッテリ自体などが含まれ得る。バッテリは、ボタン型電池であり、二次電池であってもよい。
【0018】
図2に示す断面図の断面線AAは、アンテナ部品111の向きに垂直に伸びている。この断面線AA上において、時計モジュール100は、
図2の下方、すなわち上面側(+z方向)から液晶表示画面13、樹脂部品16、アンテナ素子11、基板15、絶縁シート14及び金属部品12の順に重なっている。
図2における金属部品12の押さえ部材121は、
図1においてアンテナパターン112の左側に位置する部分であり、
図2における金属部品12の部材122は、
図1においてアンテナパターン112の右上側に位置する部分である。なお、
図2においてハッチングが施された領域は、該当する各部材の断面を示しており、ハッチングが施されていない部材である
図2の左側の絶縁シート14、押さえ部材121及び部材122の領域は、断面よりも後方に位置する部分である。また、
図2において押さえ部材121の右側に位置する凸状部は、
図1に4箇所ある板ばねのうち左上に位置する板ばねである。
【0019】
基板15は、電子時計を動作させるための各種電子部品、例えば、ICチップ、大容量コンデンサ、水晶振動子、物理センサ、通信制御(変復調処理を含み得る)回路などが搭載されていてもよい。また、基板15は、当該電子部品間をつなぐ配線及び接地面を有している。基板15は、特には限られないが、複数層の基板面を有する積層基板であってもよい。
【0020】
絶縁シート14は、基板15上の配線や接地面に他の金属部品12などが接触して短絡するのを防ぐ。絶縁シート14は、金属部品12と平面視で重なる領域を含み、当該金属部品12の外周よりも若干大きな面積で設けられている。
【0021】
図1の一点鎖線で示したアンテナ部品111の向きに沿った方向(
図2の面に垂直な方向)は、アンテナパターン112からの電波放射方向及び/又はアンテナパターン112への電波入射方向を代表する向きである。時計モジュール100では、このアンテナ部品111の外向きの一方側(時計モジュール100の外周側)の延長方向に金属部品12が位置しない。金属部品12は、アンテナ部品111の外周側の延長線上のそれぞれ左右に位置している。また、ここでは、湾曲しているアンテナパターン112の側面(時計モジュール100の外面側、アンテナパターン112の曲率中心側)の側面の各箇所に垂直な方向は、原則的に金属部品12が存在しない状態で開放されている。すなわち、アンテナ素子11は、アンテナパターン112から伸びたアンテナ部品111の延長方向である仮想ライン(
図1の一点鎖線)上の一方側と他方側のうちいずれかが金属部品12に重ならないように位置している。仮想ラインの一方側と他方側のうち、金属部品12と重ならない一方が外周側である。
【0022】
アンテナパターン112と押さえ部材121とは、アンテナパターン112の一端で最も距離が近い(最短距離の)位置関係となっている。このときの最短距離は、基準値以上となるように定められている。ここでは、基準値は、0.6~0.7mmである。アンテナパターン112の端部との距離についても、ある程度の距離(基準距離以上)の間隔を確保しておく(離隔させる)ことで、金属部品12による電波送受信への干渉を抑えることができる。
【0023】
なお、基板15上の配線、接地面及び電子部品の金属成分などは、本実施形態の金属部品12には含まれない。しかしながら、これらも可能な限り上記範囲に含めないことが好ましい。ただし、アンテナ部品111と接続する信号線などを含め、上記範囲から除外するのが難しいものについてはこの限りではない。
【0024】
なお、ここでは金属部品12の開放領域に合わせて絶縁シート14も開放しているが、絶縁シート14は電波に干渉するわけではないので、合わせる必要はない。上記開放領域でも基板15に沿って絶縁シート14が広がっていてもよい。
【0025】
本実施形態の電子時計は、上記の時計モジュール100が外装部材(筐体やベゼル)内に収容され、上面が風防ガラス、下面が裏蓋によってそれぞれ覆われて封止される。これら外装部材の側面には押しボタンスイッチなどが貫通して突出しており、外部からの入力操作により内部の上記金属部品12における板ばねを動かす。これにより、時計モジュール100は入力操作を検出して当該入力操作に応じた動作を行う。
【0026】
以上のように、本実施形態の時計モジュール100は、液晶表示画面13と、通信に係るアンテナパターン112及びアンテナ部品111を有するアンテナ素子11と、金属部品12と、を備える。アンテナパターン112は、平面視で曲線形状を有して、かつ液晶表示画面13と重なって位置している。アンテナ素子11は、アンテナ部品111の延長方向である仮想ライン上の一方側と他方側とのうちいずれかが金属部品12と重ならないように位置している。
このような構造により、液晶表示画面などにより上方が覆われる位置にアンテナ素子11を配置せざるを得ない場合であっても、金属部品12とアンテナパターン112との干渉を抑え、受信感度の低下を抑制することができる。これにより、時計モジュール100は、アンテナ素子11を含む配置の自由度を向上させることができる。したがって、時計モジュール100は、より効率的に多くの機能に係る構成を有するものとすることができる。
【0027】
また、アンテナ部品111は、平面視で矩形であり、その延長方向は、アンテナ部品111の長手方向である。上記仮想ライン上の一方側及び他方側のうち金属部品12と重ならない方は、時計モジュール100の外周側である。
すなわち、電波が入射/出射されやすい外周方向で金属部品12と重ならないようにすることで、時計モジュール100は、より電波の送受信感度を向上させることができる。
【0028】
また、アンテナパターン112は、利用周波数の波長に応じた長さよりも長くてもよい。上記のように曲線形状を取ることで、同一幅でも若干アンテナパターン112を長くすることができる。この長さの延長分をキャパシタによりトリミングすることで、同調周波数を所望の利用周波数に維持することができる。これにより、時計モジュール100は、受信感度を向上させることができる。
【0029】
また、利用周波数は、近距離無線通信、特にブルートゥースに係る周波数であってもよい。すなわち、アンテナ素子11は、近距離無線通信に利用されるものであってもよい。2.4GHz帯のように時計モジュール100内で平面視ほぼ直線形状のアンテナを配置できる場合に、本発明が好適に適用可能である。
【0030】
また、金属部品12は、アンテナパターン112から基準距離以上離隔しているとよい。アンテナ部品111の延長線上だけではなく、アンテナパターン112と金属部品12との間の距離を全体として確保することで、電波送受信に係る干渉を効果的に抑制することができる。
【0031】
また、アンテナパターン112の曲線形状は、円弧形状であってもよい。大きく複雑に曲がり過ぎないことで、受信効率の低下を抑えつつアンテナ長を稼いで受信感度の向上を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態の電子時計は、上記の時計モジュール100を備える。この電子時計では、サイズの増大と電波送受信感度の低下を抑制しつつ、効率的により多様な構成を備えて利用可能とすることができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、近距離無線通信には、同周波数帯のWiFiなどが含まれていてもよいし、他の通信規格に従ったものであってもよい。
【0034】
また、アンテナパターン112は、平面視で円弧形状ではなくてもよい。他の曲線、例えば、二次曲線や双曲線の一部分の形状などであってもよい。
【0035】
また、上記実施の形態では、デジタル表示画面として液晶表示画面を例に挙げて説明したが、これに限られない。有機EL(Electro-Luminescent)画面などであってもよい。また、デジタル表示画面は、ドットマトリクス方式での表示に限られるものではない。
【0036】
また、アンテナ部品111の延長方向(仮想ラインの延長方向)のうち他方側、すなわち時計モジュール100の内側にどの程度広い金属部品12の開放スペースを有するかについては、適宜定められてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態では、アンテナパターン112の一端が金属部品12との最短距離の位置となっていたが、これに限られるものではない。アンテナパターン112の上方又は下方などに上記最短距離となる点が位置していてもよい。
【0038】
また、アンテナ素子11が液晶表示画面13と重なる位置は、上記実施の形態で示した位置に限られない。他の電子部品や金属部品12などとの関係に応じて適宜定められてもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、構造及び位置関係などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0039】
11 アンテナ素子
111 アンテナ部品
112 アンテナパターン
12 金属部品
121 押さえ部材
122 部材
13 液晶表示画面
14 絶縁シート
15 基板
16 樹脂部品
100 時計モジュール