(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033073
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B25J15/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136457
(22)【出願日】2022-08-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤/サブテーマIIISociety5.0実現のための社会実装技術/CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】名手 一生
(72)【発明者】
【氏名】王 忠奎
(72)【発明者】
【氏名】平井 慎一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS01
3C707ES04
3C707ES07
3C707EU11
3C707EW07
(57)【要約】
【課題】アクチュエータが不要なグリッパを提供する。
【解決手段】屈曲可能なグリッパ本体2と、グリッパ本体2に設けられている第1突起22eと、グリッパ本体2に設けられている弾性を有する弾性部材3と、を有している。そして、グリッパ本体2の下端部22d1が所定箇所Gに接触すると、弾性部材3が弾性変形し、これによって、第1突起22eが弾性部材3にロックされる。そしてさらに、グリッパ本体2の下端部22d1が所定箇所Gにさらに接触すると、弾性部材3が弾性変形し、これによって、第1突起22eが弾性部材3のロックから解除される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲可能なグリッパ本体と、
前記グリッパ本体に設けられているロック機構と、
前記グリッパ本体に設けられている弾性を有する弾性部材と、を有し、
前記グリッパ本体の先端部が所定箇所に接触すると、前記弾性部材が弾性変形し、これによって、前記ロック機構が前記弾性部材にロックされ、
前記グリッパ本体の先端部が前記所定箇所にさらに接触すると、前記弾性部材が弾性変形し、これによって、前記ロック機構が前記弾性部材のロックから解除されてなるグリッパ。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記弾性変形した際の該弾性部材の曲率半径が、前記グリッパ本体の曲率半径と異なるものとなるよう前記グリッパ本体に設けられてなる請求項1に記載のグリッパ。
【請求項3】
前記グリッパ本体には、前記ロック機構が前記弾性部材のロックから解除された際、前記グリッパ本体の先端部が前記所定箇所に接触していないにもかからず、再び前記弾性部材にロックされないようにするロック防止機構が設けられてなる請求項1に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記グリッパ本体の先端部は、内向き方向に傾斜してなる請求項1に記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のロボット普及に伴い、多種多様なグリッパが開発されている。これらグリッパの駆動原理は、モータ駆動や空気圧駆動をはじめ、多岐に渡っている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】小澤隆太:“ワイヤ駆動ロボットハンド”,日本ロボット学会誌,vol.39, no. 9, pp.819-822,2021
【非特許文献2】平井慎一:“食品ハンドリング用ロボットハンド”,計測と制御,vol. 56,no.10,pp.787-791,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなグリッパは、ロボットアームとは別に、モータやコンプレッサなどのアクチュエータを必要とするため、追加のコストを要するという問題があった。さらには、アクチュエータを必要とするため、グリッパの付け替えが煩雑であり、時に、専門的な知識を要する場合もあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、アクチュエータが不要なグリッパを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に係るグリッパは、屈曲可能なグリッパ本体(2)と、
前記グリッパ本体(2)に設けられているロック機構(第1突起22e)と、
前記グリッパ本体(2)に設けられている弾性を有する弾性部材(3)と、を有し、
前記グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)が所定箇所(G)に接触すると、前記弾性部材(3)が弾性変形し、これによって、前記ロック機構(第1突起22e)が前記弾性部材(3)にロックされ、
前記グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)が前記所定箇所(G)にさらに接触すると、前記弾性部材(3)が弾性変形し、これによって、前記ロック機構(第1突起22e)が前記弾性部材(3)のロックから解除されてなることを特徴としている。
【0008】
請求項2に係るグリッパは、上記請求項1に記載のグリッパ(1)において、前記弾性部材(3)は、前記弾性変形した際の該弾性部材(3)の曲率半径(R1)が、前記グリッパ本体(2)の曲率半径(R2)と異なるものとなるよう前記グリッパ本体(2)に設けられてなることを特徴としている。
【0009】
請求項3に係るグリッパは、上記請求項1に記載のグリッパ(1)において、前記グリッパ本体(2)には、前記ロック機構(第1突起22e)が前記弾性部材(3)のロックから解除された際、前記グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)が前記所定箇所(G)に接触していないにもかからず、再び前記弾性部材(3)にロックされないようにするロック防止機構(第2突起22f)が設けられてなることを特徴としている。
【0010】
請求項4に係るグリッパは、上記請求項1に記載のグリッパ(1)において、前記グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)は、内向き方向に傾斜してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1に係る発明によれば、グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)が所定箇所(G)に接触すると、弾性部材(3)が弾性変形し、これによって、ロック機構(第1突起22e)が弾性部材(3)にロックされるようになっている。そして、グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)が所定箇所(G)にさらに接触すると、弾性部材(3)が弾性変形し、これによって、ロック機構(第1突起22e)が弾性部材(3)のロックから解除されるようになっている。これにより、従来のようにアクチュエータを搭載しなくとも、グリッパ(1)のロックとロック解除を同時に実現することが可能となる。
【0013】
したがって、本発明によれば、アクチュエータを不要とすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、弾性部材(3)は、弾性変形した際の該弾性部材(3)の曲率半径(R1)が、グリッパ本体(2)の曲率半径(R2)と異なるものとなるようグリッパ本体(2)に設けられているから、弾性部材(3)がグリッパ本体(2)に対して相対的に前進可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、ロック防止機構(第2突起22f)が設けられているから、グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)が所定箇所(G)に接触していないにも関わらず、グリッパ(1)が意図せずロックされてしまうことがないため、グリッパ(1)を元の位置に戻すことが可能となる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、グリッパ本体(2)の先端部(下端部22d1)は、内向き方向に傾斜しているから、内側に力が働きやすくなり、これによって、ワーク(W)をグリッパ(1)にて掴み持ちし易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るグリッパを固定台に複数対向配置するように取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、同実施形態に係るグリッパ本体の斜視図、(b)は、同実施形態に係る弾性部材の正面図である。
【
図3】(a)は、同実施形態に係るグリッパ本体の第1可動部を示す斜視図、(b)は、同実施形態に係るグリッパ本体の第2可動部を示す斜視図、(c)は(b)の側面図である。
【
図4】(a)は、同実施形態に係るグリッパが屈曲していない状態を示す簡易説明図、(b)は、同実施形態に係るグリッパが屈曲した状態を示す簡易説明図である。
【
図5】(a)~(c)は、同実施形態に係るグリッパをロックする手順を説明する説明図である。
【
図6】(a)~(c)は、同実施形態に係るグリッパのロックを解除する手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るグリッパを、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0019】
<グリッパの説明>
図1に示す本実施形態に係るグリッパ1は、矩形状の固定台Kに取り付け固定されて使用されるもので、図示では、3本、対向配置されて、固定台Kに取り付け固定されている。なお、この固定台Kには、図示はしないがロボットアームが取り付けられ、使用されるようになっている。
【0020】
このグリッパ1は、
図1に示すように、屈曲可能なグリッパ本体2と、弾性を有する弾性部材3と、で構成されている。以下、各構成について詳しく説明することとする。
【0021】
<グリッパ本体の説明>
グリッパ本体2は、
図2(a)に示すように、多関節状に形成された指状に形成されている。より詳しく説明すると、
図2(a)に示すように、グリッパ本体2は、固定部20と、第1可動部21と、第2可動部22と、で構成されている。固定部20は、
図2(a)に示すように、肉厚矩形状で起立状の垂直部20aと、この垂直部20aの上面20a1に、垂直部20aと直角となるように外方向(図示左方向に)に一体的に突出して設けられている水平部20bとで、主に構成されている。この垂直部20aには、
図2(a)に示すように、右側面20a2から左側面20a3に向かって取付孔20a4が貫通して設けられている。そして、
図2(a)に示すように、垂直部20aの右側面20a2下面20a5側には、内方向(図示右方向)に向かって、矩形状のガイド片20cが一体的に突出して設けられている。なお、このガイド片20cには、
図2(a)に示すように、上下方向に向かって矩形状のガイド孔20c1が貫通して設けられている。
【0022】
一方、
図2(a)に示すように、垂直部20aの下面20a5には、半楕円状の取付部20dが下方向に一体的に突出して設けられている。なお、取付部20dには、図示はしないが、
図2(a)に示す下部20d1側に、前後方向に向かって取付孔が貫通して設けられている。
【0023】
また一方、水平部20bの左側面20b1側には、上下方向に向かって、一対の取付孔20b2が貫通して設けられている。なお、この取付孔20b2には、
図1に示すビスB1が取り付けられるようになっており、これによって、固定部20が、
図1に示す固定台Kに取り付け固定されるようになっている。
【0024】
第1可動部21は、
図3(a)に示すように、肉厚矩形状で起立状の本体部21aを、主に備えている。
図3(a)に示すように、この本体部21aの右側面21a1下面21a2側には、内方向(図示右方向)に向かって、矩形状のガイド片21bが一体的に突出して設けられている。なお、このガイド片21bには、
図3(a)に示すように、上下方向に向かって矩形状のガイド孔21b1が貫通して設けられている。
【0025】
一方、
図3(a)に示すように、本体部21aの上面21a3には、前側面21a4と後側面21a5からそれぞれ、半楕円状の連結部21cが上方向に一体的に突出して設けられている。そして、この連結部21cには、それぞれ、前後方向に向かって取付孔21c1が貫通して設けられている。これにより、一対の連結部21c間に、
図2(a)に示すように、固定部20の取付部20dを載置し、
図1及び
図2(a)に示すビスB2を取付孔21c1、及び、固定部20の取付孔(図示せず)に挿入して固定することで、第1可動部21を固定部20に取り付けることができる。なお、この際、第1可動部21は、ビスB2を基点として、可動できるように固定部20に取り付けられている。
【0026】
また一方、
図3(a)に示すように、本体部21aの下面21a2には、半楕円状の取付部21dが下方向に一体的に突出して設けられている。なお、取付部21dには、
図3(a)に示す下部21d1側に、前後方向に向かって取付孔21d2が貫通して設けられている。
【0027】
かくして、このように構成される第1可動部21は、
図2(a)に示すように、第1可動部21同士を連結することができる。すなわち、
図2(a)に示すように、一方の第1可動部21(
図2(a)に示す下側の第1可動部21)の連結部21c間に、他方の第1可動部21(
図2(a)に示す上側の第1可動部21)の取付部21dを載置し、
図1及び
図2(a)に示すビスB3を取付孔21c1、及び、取付孔21d2に挿入して固定することで、第1可動部21同士を連結することができる。なお、この際、一方の第1可動部21(
図2(a)に示す下側の第1可動部21)は、ビスB3を基点として、可動できるように他方の第1可動部21(
図2(a)に示す上側の第1可動部21)に取り付けられている。
【0028】
第2可動部22は、
図3(b)に示すように、肉厚台形状で起立状の本体部22aを、主に備えている。
図3(b)に示すように、この本体部22aの右側面22a1上面22a2側には、内方向(図示右方向)に向かって、矩形状のガイド片22bが一体的に突出して設けられている。なお、このガイド片22bには、
図3(b)に示すように、上下方向に向かって矩形状のガイド孔22b1が貫通して設けられている。
【0029】
一方、
図3(b)に示すように、本体部22aの上面22a2には、前側面22a3と後側面22a4からそれぞれ、半楕円状の連結部22cが上方向に一体的に突出して設けられている。そして、この連結部22cには、それぞれ、前後方向に向かって取付孔22c1が貫通して設けられている。これにより、一対の連結部22c間に、
図2(a)に示すように、第1可動部21の取付部21dを載置し、
図1及び
図2(a)に示すビスB4を取付孔22c1、及び、第1可動部21の取付孔21d2に挿入して固定することで、第2可動部22を第1可動部21に取り付けることができる。なお、この際、第2可動部22は、ビスB4を基点として、可動できるように第1可動部21に取り付けられている。
【0030】
また一方、
図3(b)に示すように、ガイド片22bの右側面22b2には、下方向に向かって、舌片状の掴持片22dが一体的に突出して設けられている。そして、この掴持片22dは、
図3(c)に示すように、下端部22d1が内方向(
図3(c)に示す右方向)に向かって傾斜している。
【0031】
ところで、上記のように構成される第2可動部22は、
図3(c)に示すように、本体部22aの右側面22a1下面22a5側には、内方向(図示右方向)に向かって、側面視爪状の第1突起22eが一体的に突出して設けられている。そして、
図3(c)に示すように、掴持片22dの左側面22d2には、第1突起22eよりも下方に位置する箇所(下端部22d1側)に、外方向(図示左方向)に向かって、側面視T字状の第2突起22fが一体的に突出して設けられている。なお、第2突起22fは、
図3(c)に示すように、先端部分22f1(図示左側部分)が円形状に形成され、基端部分22f2(図示右側部分)が円柱状に形成されている。
【0032】
かくして、グリッパ本体2は、上記のように構成されることにより、多関節状に形成されると共に、屈曲可能となっている。
【0033】
<弾性部材の説明>
弾性部材3は、弾性を有する板バネなどで形成されているものであって、
図2(b)に示すように、正面視縦長矩形状の本体部30を主に備えている。
図2(b)に示すように、この本体部30の上面30a側には、円形状の取付孔31が貫通して設けられている。そして、
図2(b)に示すように、本体部30の下部30b側には、矩形状のロック孔32が貫通して設けられている。そしてさらに、
図2(b)に示すように、本体部30の下部30bは、尻窄まり状に形成されており、ロック孔32より下方に位置する箇所に、円形状の第1係止孔33が貫通して設けられている。そして、
図2(b)に示すように、この第1係止孔33と連通するように下方向に向かって、正面視矩形状の第2係止孔34が貫通して設けられている。なお、この第2係止孔34の下面34aは開放されている。
【0034】
かくして、このように構成される弾性部材3は、本体部30が、
図2(a)に示す、ガイド片20cのガイド孔20c1、及び、ガイド片21bのガイド孔21b1、並びに、ガイド片22bのガイド孔22b1に挿入される。この際、本体部30の取付孔31は、
図2(a)に示す固定部20の取付孔20a4に位置している。それゆえ、この取付孔31及び取付孔20a4に
図1に示すビスB5を挿入して固定するようにすれば、グリッパ本体2の内側(
図2(a)では、図示右側)に弾性部材3を配置することができる。なお、このビスB5には、
図1に示すように、ナットNが取り付け固定されている。
【0035】
したがって、このように、グリッパ本体2の内側(
図2(a)では、図示右側)に弾性部材3を配置するようにすれば、
図4(a)に示すように、グリッパ1が屈曲していない状態から、
図4(b)に示すような状態、すなわち、グリッパ本体2を屈曲(図示では、右方向に屈曲)させた状態にすると、弾性部材3もそれに応じて弾性変形、すなわち、屈曲(図示では、右方向に屈曲)することとなる。この際、
図4(b)に示すように、弾性部材3の曲率半径R1と、グリッパ本体2の曲率半径R2とは異なっている(図示では、曲率半径R1よりも曲率半径R2の方が大きくなっている)から、弾性部材3がグリッパ本体2に対して相対的に前進することとなる。これにより、後述するグリッパ本体2のロックとロック解除を実現させることができる。
【0036】
この点、詳しく説明すると、
図1に示すようなワークWを、上記のように構成されるグリッパ1を用いて掴み持ちするにあたっては、
図1に示すように、グリッパ1を固定台Kに複数対向配置するように取り付けることとなる。これにより、これらグリッパ1にて、
図1に示すようなワークWを掴み持ちすることとなる。この際、従来においては、グリッパ1にアクチュエータを搭載し、そのアクチュエータを駆動させることによって、ワークWを掴み持ちしたグリッパ1の位置をロックし、さらに、ワークWを所定位置(所望位置)に載置するにあたっては、そのアクチュエータを駆動させることによって、グリッパ1のロックを解除するようにしていた。
【0037】
しかしながら、これでは、上記説明したように、追加のコストを要するという問題があるばかりか、アクチュエータを必要とすると、グリッパ1の付け替えが煩雑となり、時に、専門的な知識を要する場合もあるという問題があった。
【0038】
そこで、本実施形態においては、上記のような問題を解決すべく、グリッパ1を上記のような構成とすることで、従来のようにアクチュエータを搭載しなくとも、グリッパ1のロックとロック解除を実現できるようにしている。以下、このグリッパ1のロックとロック解除の方法を
図5及び
図6を用いて説明することとする。
【0039】
<グリッパのロック方法の説明>
まず、グリッパ1のロック方法について説明する。
【0040】
図1に示す状態のグリッパ1を下降させ、
図5(a)に示すように、グリッパ本体2の第2可動部22に設けられている掴持片22dの下端部22d1を、例えば、地面などの所定箇所Gに接触させる。これにより、第2可動部22が内側(図示右側)に屈曲することとなるから、弾性部材3が図示下方向に前進することとなる。この際、
図5(a)に示すように、第1突起22eは、弾性部材3の第1係止孔33内に位置することとなり、弾性部材3に物理的に接触しないこととなる。それゆえ、
図5(a)に示すように、弾性部材3の下部30bは、第2突起22fよりも外側(図示左側)に位置することとなる。
【0041】
次いで、
図5(a)に示す状態から、さらに、グリッパ1を降下させると、
図5(b)に示すように、掴持片22dの下端部22d1が所定箇所Gにさらに接触し、弾性部材3は、図示下方向にさらに前進することとなる。この際、
図5(b)に示すように、第1突起22eは、弾性部材3の第1係止孔33とロック孔32との間の本体部30に接触することとなる。そのため、第2可動部22が内側(図示右側)に屈曲していることから、第1突起22eは、弾性部材3を図示右方向に弾性変形させようとする。しかしながら、第2突起22fは、第1突起22eよりも下方に位置し、さらに、先端部分22f1の径が第2係止孔34の幅方向の径より大きいことから、先端部分22f1が第2係止孔34内に挿入されないため、弾性部材3の下部30bは、
図5(b)に示すように左方向に湾曲しながら、先端部分22f1に乗り上げることとなる。
【0042】
次いで、
図5(b)に示す状態から、さらに、グリッパ1を降下させると、
図5(c)に示すように、掴持片22dの下端部22d1が所定箇所Gにさらに接触し、弾性部材3は、図示下方向にさらに前進することとなる。この際、第1突起22eがロック孔32内に嵌り込み、グリッパ1の位置がロックされることとなる。なお、この際、
図5(c)に示すように、弾性部材3の下部30bは、第2突起22fよりも外側(図示左側)に位置することとなる。
【0043】
したがって、このようにグリッパ1の位置がロックされると、
図1に示すようなワークWを、グリッパ1によって掴み持ちすることができる。この際、第1突起22eがロック孔32内に嵌り込んでいるため、弾性部材3が、図示上方向に後退することはない。そのため、ワークWの荷重がグリッパ1の内側にかかったとしても、グリッパ1のロック状態を維持することができる。すなわち、弾性部材3によって、グリッパ1のロック状態を維持することができるため、弾性部材3が破損するまでその状態を維持することができる。
【0044】
<グリッパのロック解除方法の説明>
次に、上記のようにロックされたグリッパ1のロック解除方法について説明する。
【0045】
図5(c)に示すように、グリッパ1の位置がロックされると、上記説明したように、弾性部材3が、図示上方向に後退することはない。しかしながら、前進することはできる。そこで、グリッパ1がロックされた状態で、グリッパ1を下降させ、
図6(a)に示すように、グリッパ本体2の第2可動部22に設けられている掴持片22dの下端部22d1を所定箇所Gに再び接触させる。これにより、弾性部材3は、図示下方向にさらに前進することとなる。この際、第1突起22eは、ロック孔32内より抜け出し、ロック孔32の上部側の本体部30に接触することとなる。そのため、第2可動部22が内側(図示右側)に屈曲していることから、第1突起22eは、弾性部材3を図示右方向に弾性変形させようとする。ところが、この際、先端部分22f1の径は、第1係止孔33の径よりも小さいものの、まだ先端部分22f1が第1係止孔33に係止できていないことから、弾性部材3の下部30bが、
図6(a)に示すように図示左方向に湾曲しながら、先端部分22f1に乗り上げることとなる。
【0046】
次いで、先端部分22f1を第1係止孔33に係止させるため、
図6(a)に示す状態から、わずかに、グリッパ1を降下させる。これにより、
図6(b)に示すように、掴持片22dの下端部22d1が所定箇所Gにさらに接触し、弾性部材3は、図示下方向にわずかに前進することとなる。この際、弾性部材3には、第1突起22eによって、図示右方向に弾性変形させる力が加わっているから、
図6(b)に示すように、先端部分22f1が第1係止孔33に係止されることとなる。これにより、グリッパ1のロックが完全に解除されることから、掴み持ちしたワークWがグリッパ1より解放され、これによって、所定位置(所望位置)にワークWを載置することができる。なお、
図6(b)に示す状態がグリッパ1の最下点である。
【0047】
次いで、グリッパ1を元の状態に戻すため、
図6(b)に示す状態から、グリッパ1を上昇させると、
図6(c)に示すように、弾性部材3が、図示上方向に後退することとなる。この際、第2突起22fの基端部分22f2の径は、第1係止孔33と連通している第2係止孔34の径よりも小さいことから、弾性部材3が、図示上方向に後退するに伴い、基端部分22f2が第2係止孔34に係止されることとなる。これにより、弾性部材3が、図示左方向に移動しようとしても、第2突起22fの先端部分22f1によって移動が阻害されることとなる。そのため、弾性部材3は、第1突起22eの図示右側に必ず位置することとなるから、
図6(c)に示すように、ロック孔32が第1突起22e側に位置したとしても、第1突起22eがロック孔32に嵌り込むことはない。そのため、このような第2突起22fを設けることにより、所定箇所Gに掴持片22dの下端部22d1を接触させていないにもかかわらず、グリッパ1が意図せずロックされてしまうことがないため、グリッパ1を元の位置に戻することが可能となる。すなわち、グリッパ1の上昇が阻害されてしまう事態を低減させることができる。そして、このような上昇を続けていけば、
図6(c)に示す第2係止孔34の下面34aから第2突起22fの基端部分22f2が抜け出し、
図5(a)に示すように、第1係止孔33及び第2係止孔34の係止から第2突起22fが解放されることとなる。これにより、最終的に、
図1及び
図4(a)に示すようなグリッパ1が屈曲していない状態、すなわち、元の位置に戻ることとなる。
【0048】
かくして、上記のようにすれば、従来のようにアクチュエータを搭載しなくとも、グリッパ1のロックとロック解除を同時に実現することが可能となる。
【0049】
したがって、以上説明した本実施形態のようなグリッパ1の構成にすれば、アクチュエータを不要とすることができる。しかるに、このようにアクチュエータを不要とすれば、コストが削減できるばかりか、グリッパ1自体の重量を減らすこともできる。さらには、アクチュエータが不要、すなわち、電力が不要となるため、グリッパ1を水没させることができることから、水中でも使用することができる。
【0050】
<変形例の説明>
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態において示した第1突起22e及び第2突起22fの形状はあくまで一例であり、どのような形状でも良い。ただし、この場合、グリッパ1のロックやロック解除ができるように、弾性部材3のロック孔32及び第1係止孔33並びに第2係止孔34の形状も変更する必要がある。
【0051】
また、本実施形態においては、掴持片22dの下端部22d1が内方向(
図3(c)に示す右方向)に向かって傾斜している例を示したが、それに限らず、直線状にしても良い。しかしながら、傾斜させた方が好ましい。内側に力が働きやすくなり、これによって、ワークWをグリッパ1にて掴み持ちし易くすることができるためである。
【0052】
また、本実施形態においては、グリッパ本体2として多関節状に形成された指状ものを例示したが、それに限らず、グリッパ本体2は、屈曲可能であれば、どのような形状でも良い。
【0053】
また、本実施形態においては、所定箇所Gとして地面を例示したが、それに限らず、机や壁など、ワークW以外の箇所であれば、どこでも良い。
【0054】
また、本実施形態においては、弾性部材3として板バネを例示したが、それに限らず、弾性を有るものであれば、どのようなものでも良い。
【符号の説明】
【0055】
1 グリッパ
2 グリッパ本体
22d1 下端部(先端部)
22e 第1突起(ロック機構)
22f 第2突起(ロック防止機構)
3 弾性部材
G 所定箇所
W ワーク
R1 (弾性部材の)曲率半径
R2 (グリッパ本体の)曲率半径