(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033074
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】シート群のシート数量を平準化させる装置と方法、および、シート供給ラインとその運転方法
(51)【国際特許分類】
B65B 5/06 20060101AFI20240306BHJP
B65G 60/00 20060101ALI20240306BHJP
B65G 57/03 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B65B5/06
B65G60/00
B65G57/03 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136458
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】上田 達也
(72)【発明者】
【氏名】土居川 範幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 理
【テーマコード(参考)】
3E003
3F029
【Fターム(参考)】
3E003AA01
3E003AB03
3E003BB01
3E003BB03
3E003BD02
3E003DA05
3F029AA01
3F029AA04
3F029AA07
3F029BA09
3F029CA21
3F029CA52
3F029CA64
3F029DA01
3F029EA04
(57)【要約】
【課題】複数のシート群の安定した同時移載、同時切り離しの要件が成立しない場合がある。複数のシート群を同時に安定して取り扱うことを実現し、それによってシート供給ライン停止後の残留シートの自動回収に繋げることを目的とする。
【解決手段】本開示は、積層された複数のシートからなるシート群を搬送する搬送装置に対して、シートの数量が平準化された複数の平準シート群を与えることが可能に構成される装置である。かかる装置は、搬送装置上のシート群のシートの数量を示し、平準シート群を得るために取得される情報に基づき、シート群の数量の平準化が必要な場合には、搬送装置上の複数のシート群間におけるシートの移動を行うことにより、あるいは搬送装置上のシート群を複数のシート群に分割することにより、複数の平準シート群を搬送装置に与える平準化処理部を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のシートからなるシート群を搬送する搬送装置に対して、前記シートの数量が平準化された複数の平準シート群を与えることが可能に構成される装置であって、
前記搬送装置上の前記シート群のシートの数量を示し、前記平準シート群を得るために取得される情報に基づき、前記シート群の数量の平準化が必要な場合には、前記搬送装置上の複数の前記シート群間における前記シートの移動を行うことにより、あるいは前記搬送装置上の前記シート群を複数の前記シート群に分割することにより、前記複数の平準シート群を前記搬送装置に与える平準化処理部を備える、シート数量平準化装置。
【請求項2】
前記情報を取得可能に構成される数量情報取得部を備える、
請求項1に記載のシート数量平準化装置。
【請求項3】
前記情報は、前記シート群の高さに相当する、
請求項1に記載のシート数量平準化装置。
【請求項4】
前記平準化処理部は、位置制御可能に構成されるハンド装置に相当する、
請求項1に記載のシート数量平準化装置。
【請求項5】
前記ハンド装置は、前記情報を取得可能に構成される数量情報取得部を備える、
請求項4に記載のシート数量平準化装置。
【請求項6】
前記平準化処理部は、
前記搬送装置上に隣接して配置される前記複数の平準シート群を同時に支持し、前記搬送装置から前記シート群の供給源へと移載可能に構成される、
請求項1に記載のシート数量平準化装置。
【請求項7】
シートを供給先に供給するシート供給ラインであって、
積層された複数の前記シートからなるシート群の供給源と、
前記シート群を下流へ搬送することで、前記シートを前記供給先に供給可能に構成される搬送装置と、
請求項1から6のいずれか一項に記載され、前記搬送装置に対して前記複数の平準シート群を与える平準化処理が可能に構成されるシート数量平準化装置と、
前記供給源において隣接して配置される複数の前記シート群を前記供給源から同時に取り出して前記搬送装置に移載可能に構成される移載装置と、を備え、
前記シート供給ラインは、前記搬送装置により前記下流から上流に向けて前記シート群を逆送させ、かつ、前記平準化処理部により前記複数の平準シート群を前記搬送装置に与え、さらに、前記搬送装置上に隣接して配置される前記複数の平準シート群を前記移載装置により同時に支持し、前記搬送装置から前記供給源へと移載させるシート回収モードを設定可能に構成される、シート供給ライン。
【請求項8】
積層された複数のシートからなるシート群を搬送する搬送装置に対して、前記シートの数量が平準化された複数の平準シート群を与えることが可能に構成される方法であって、
前記平準シート群を得るために前記搬送装置上の前記シート群のシートの数量を示す情報を取得する第1ステップと、
前記情報に基づき、前記シート群の数量の平準化が必要な場合には、前記搬送装置上の複数の前記シート群間における前記シートの移動を行うことにより、あるいは前記搬送装置上の前記シート群を複数の前記シート群に分割することにより、前記複数の平準シート群を前記搬送装置に与える第2ステップと、を備える、シート数量平準化方法。
【請求項9】
シート供給ラインの運転方法であって、
前記シート供給ラインは、積層された複数の前記シートからなるシート群の供給源において隣接して配置される複数の前記シート群を前記供給源から取り出して搬送装置に移載し、前記搬送装置により前記シート群を下流へ搬送することで、前記シートを供給先に供給可能に構成され、
前記シート供給ラインが停止すると、
前記搬送装置上に残留している前記シート群に相当する残留シート群を前記下流から上流に向けて前記搬送装置により逆送させるステップと、
前記残留シート群に対して請求項8に記載の前記第1ステップおよび前記第2ステップを実施することで前記複数の平準シート群を前記搬送装置に与えるステップと、
前記搬送装置上に隣接して配置される前記複数の平準シート群を前記搬送装置から前記供給源へと同時に移載するステップと、を含む、シート供給ラインの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層された複数のシートからなるシート群を搬送する搬送装置に関する。また、本開示は、シート群を搬送する搬送装置を含んで、シート群供給源からシートの供給先へとシートを供給する供給ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば飲料製品の製造ラインは、包装材として使用されるシートを梱包機に供給する供給ラインを含む。かかる供給ラインは、例えば特許文献1に記載されているように、高く積み重ねられているシートの積層体から複数枚のシート(シート群)を取り出してコンベヤ等に移載し、シート群をコンベヤ等によりシートマガジンに搬送する搬送装置を備えている。梱包機は、マガジンから1枚ずつ供給されるシートを搬送しつつ、シートにより飲料製品を梱包する(特許文献2)。
特許文献2は、第1マガジンから第1コンベヤにシートを供給し、かつ第2マガジンから第2コンベヤにシートを供給しつつ、第2コンベヤから第1コンベヤへとシートを移載することで、各マガジンから各コンベヤへのシート供給速度を変えずに、シート供給能力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4-7543号公報(第9図および第10図)
【特許文献2】特開2020-189682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートの供給ラインには、シート供給能力を担保するため、隣接して配置された複数のシート積層体(以下、第1の積層体および第2の積層体)から、同一の移載装置により所定数量のシートを同時に取り出してコンベヤ等に移載する工程が含まれる場合がある。その場合において、第1の積層体および第2の積層体のそれぞれのパレットからの高さは同一であり、ロボットハンド等の移載装置により第1の積層体および第2の積層体のそれぞれの上面よりも下方の同一の高さでシート群が切り離されるので、第1積層体から取り出された第1シート群のシートの枚数と、第2積層体から取り出された第2シート群のシートの枚数とは、ほぼ同一である。このとき、第1シート群と第2シート群とのそれぞれのシートの数量は平準化されている。
【0005】
シート供給ラインの定常運転時において、移載装置は、数量が平準化された複数のシート群を支持し、コンベヤ等へと移載する。
しかしながら、下流ラインの停止に伴うシート供給ラインの停止や、シートの積層状態に関わる異常発生等によって、移載装置により同時に支持されるべき複数のシート群の数量が平準化されていなかったり、移載装置に支持されるシート群が1つしか存在しなかったりする場合があり得る。こうした場合に、コンベヤ等を定常運転時とは逆向きに動作させて下流から上流へシート群を自動的に回収しようとしても、移載装置によりシート群を安定して移載することの前提を欠くので、シート群を移載装置により支持することが難しい。また、回収先におけるシート群の配置の安定を欠くことにも繋がる。
現状、ライン停止時にはオペレータが、コンベヤ上に残留したシート群を回収先のパレットまで運搬して戻している。しかし、パレット上に戻したシート群を再利用する際には、上述の通り2つのシート積層体から同時にシート群を切り離すので、シート群の残数が「1」であると不都合である。つまり、2つの積層体の一方のみにシート群が戻されることで、2つの積層体の高さが異なってしまうので、切り離し機構により同一高さでシート群を安定して切り離すことの前提を欠く。
つまり、ライン停止時に、同時に扱われるべきシート群の高さが平準化されていないため、同時に同一高さで切り離されたり、同時に支持されたりすることの前提を欠くことが、ライン停止後におけるシート回収作業の自動化に対する障害となっている。
【0006】
以上より、本開示は、複数のシート群の安定した同時移載や同時切り離しの要件が成立しない場合に着目してなされたものであり、複数のシート群を同時に安定して移載して配置したり、同時に安定して切り離したりすることを実現し、それによってシート供給ライン停止後の残留シートの自動回収に繋げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、積層された複数のシートからなるシート群を搬送する搬送装置に対して、シートの数量が平準化された複数の平準シート群を与えることが可能に構成される装置であって、搬送装置上のシート群のシートの数量を示し、平準シート群を得るために取得される情報に基づき、シート群の数量の平準化が必要な場合には、搬送装置上の複数のシート群間におけるシートの移動を行うことにより、あるいは搬送装置上のシート群を複数のシート群に分割することにより、複数の平準シート群を搬送装置に与える平準化処理部を備える。
【0008】
また、本開示は、シートを供給先に供給するシート供給ラインであって、積層された複数のシートからなるシート群の供給源と、シート群を下流へ搬送することで、シートを供給先に供給可能に構成される搬送装置と、上記の構成を備え、搬送装置に対して複数の平準シート群を与える平準化処理が可能に構成されるシート数量平準化装置と、供給源において隣接して配置される複数のシート群を供給源から同時に取り出して搬送装置に移載可能に構成される移載装置と、を備える。
シート供給ラインは、搬送装置により下流から上流に向けてシート群を逆送させ、かつ、平準化処理部により複数の平準シート群を搬送装置に与え、さらに、搬送装置上に隣接して配置される複数の平準シート群を移載装置により同時に支持し、搬送装置から供給源へと移載させるシート回収モードを設定可能に構成される。
【0009】
本開示は、積層された複数のシートからなるシート群を搬送する搬送装置に対して、シートの数量が平準化された複数の平準シート群を与えることが可能に構成されるシート数量平準化方法であって、平準シート群を得るために搬送装置上のシート群のシートの数量を示す情報を取得する第1ステップと、情報に基づき、シート群の数量の平準化が必要な場合には、搬送装置上の複数のシート群間におけるシートの移動を行うことにより、あるいは搬送装置上のシート群を複数のシート群に分割することにより、複数の平準シート群を搬送装置に与える第2ステップと、を備える。
【0010】
さらに、本開示は、シート供給ラインの運転方法であって、シート供給ラインは、積層された複数のシートからなるシート群の供給源において隣接して配置される複数のシート群を供給源から取り出して搬送装置に移載し、搬送装置によりシート群を下流へ搬送することで、シートを供給先に供給可能に構成され、シート供給ラインが停止すると、搬送装置上に残留しているシート群に相当する残留シート群を下流から上流に向けて搬送装置により逆送させるステップと、残留シート群に対して上述の第1ステップおよび第2ステップを実施することで複数の平準シート群を搬送装置に与えるステップと、搬送装置上に隣接して配置される複数の平準シート群を搬送装置から供給源へと同時に移載するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、シート群に含まれるシートの数量の平準化処理が行われることにより、複数のシート群を同時に安定して取り扱うための要件が担保される。そのため、シート供給ラインの運転が停止したときに搬送装置上に残留しているシート群を複数個同時に供給源まで回収して、運転開始後の製品製造に用いることができる。
【0012】
残留シートの回収は、搬送装置や移載装置により自動的に行われるので、オペレータが搬送装置の搬送経路を巡って残留シート群を供給源まで運搬する必要がない。そのため、人手による作業を省いて無人化を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態に係るシート供給ラインを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に模式的に示すロボットアームに備わるハンド装置を示す側面図である。
【
図3】(a)~(c)は、ハンド装置によりシート群が積み下ろされる位置にリフターを使用する場合の説明図である。
【
図4】シート供給ラインの停止後における搬送装置上へのシート群の残留状況を示す図である。
【
図5】残留シート群をハンド装置による積み下ろし位置まで搬送装置により逆送させた状態を示す図である。
【
図6】(a)は、シート数量情報に基づき、ハンド装置により2つの平準シート群を搬送装置に与える平準化処理の一例を説明するための模式図である。(b)は、平準化処理の他の例を説明するための模式図である。
【
図7】(a)は、搬送装置上の積み下ろし位置まで最下流の残留シート群を逆送させた状態を示す図である。(b)は、最下流の残留シート群を2つのシート群に分割する平準化処理を示す図である。
【
図8】ハンド装置により積み下ろし位置で2つのシート群を保持し、シート群の供給源としての2つのシート積層体上に回収することを説明するための図である。
【
図9】(a)は、シート群の搬送面からの高さを取得することで、シート群のシートの数量を示す情報が取得されることを説明するための模式図である。(b)は、(a)に代替可能な方法によりシート群の搬送面からの高さを取得することを説明するための模式図である。
【
図10】シート供給ラインのシート回収モードの運転例を示すフロー図である。
【
図11】本開示の変形例に係るシート供給ラインを模式的に示す斜視図である。かかるシート供給ラインは、2つのシート積層体からシート群を取り出して搬送装置に移載する移載装置とは別に、シートの数量の平準化処理が可能に構成される平準化処理部としての装置を備える。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。
〔全体構成〕
図1に示すシート供給ライン1は、製品製造ラインの一部に相当し、包装材として使用されるダンボール製のシート2を梱包機(ケーサ)、箱詰め装置等の下流装置9に供給する。下流装置9は、例えば、飲料の充填された容器等の図示しない物品をシート2により梱包する。
所謂ラップラウンド式の梱包機にシート2が供給される場合、各シート2は、シート2上に供給される物品を包み込むように箱型に成形される。これに限らず、シート2は、既に箱型に成形されて平坦な状態に折り畳まれることでシートの形状を呈するものであってもよい。
【0015】
シート供給ライン1は、
図1に構成の一例を示しているように、多数のシート2の積層体200を含む供給源10と、積層体200から取り出されるシート群20を上流uから下流dへと搬送する搬送装置30と、供給源10から搬送装置30へのシート群20の移載装置としてのハンド装置40(
図2)と、少なくとも装置10,30,40を制御可能に構成される制御装置5とを備えている。
制御装置5により各装置10,30,40の動作が制御されることで、シート供給ライン1は、下流装置9が要求する能力に対して若干高い能力にてシート2を下流装置9に供給する。
【0016】
〔シート供給源の構成および作用〕
供給源10は、2つの積層体200が載せられた状態で搬入されるパレット12を取り出し位置P1に搬送するパレットコンベヤ11と、積層体200から全てのシート2が取り出されて空の状態となった空パレット12Eを取り出し位置P1から排出させるパレット排出コンベヤ13とを備えている。
【0017】
パレットコンベヤ11により取り出し位置P1に向けて搬送されているパレット12上の積層体200は、結束バンドが解かれ、図示しない天板により押さえられて安定した姿勢を保っている。パレット12上で隣接する2つの積層体200の上面の全域に亘り1つの天板が載せられる。
空パレット12Eが取り出し位置P1からパレット排出コンベヤ13により排出されると、取り出し位置P1に積層体200を載せたパレット12が到達し、天板は積層体200の上面から取り外される。
【0018】
取り出し位置P1に配置されるパレット12上の2つの積層体200は、パレットコンベヤ11の搬送方向yに隣接している。2つの積層体200のそれぞれのパレット12からの高さは同一である。2つの積層体200は、シート群20が繰り返し取り出されることでそれぞれの高さが減少する間に亘り、高さが同じ状態を保つ。
【0019】
〔ハンド装置の構成および作用〕
ハンド装置40(
図2)は、供給源10のパレットコンベヤ11上の取り出し位置P1で隣接する2つの積層体200から同時にシート群20を取り出し、搬送装置30上の積み下ろし位置P2へと移載可能に構成されている。本実施形態において、パレットコンベヤ11と、搬送装置30のコンベヤ31,32,34とは平行に配置されている。
【0020】
ハンド装置40は、
図1に移動軌跡Tを示すロボットアーム4のアーム部4Aに備えられる。アーム部4Aおよびハンド装置40の可動部の動作は、制御装置5により制御される。アーム部4Aは、
図1に示す回転軸4Xを中心に回転する動作と、上下方向zに昇降する動作とが可能となっている。
【0021】
ハンド装置40は、取り出し位置P1に配置されている2つの積層体200から同時に、積層体200の上面よりも下方の所定高さ(切り離し位置)で、重なっているシート2とシート2とを切り離す。2つの積層体200のそれぞれの上面から切り離し位置までの間に位置する複数のシート2からなるシート群20が、ハンド装置40の可動部の動作と、アーム部4Aの上昇とにより、
図1に矢印M1で示すように同時に上方へと持ち上げられ、
図1に示す回転軸4Xを中心にアーム部4Aが回転するのに伴い水平方向に移動する。
【0022】
ハンド装置40が搬送装置30上の積み下ろし位置P2の上方まで移動すると、アーム部4Aの下降と、ハンド装置40の動作とにより、2つのシート群20が矢印M2に示すように積み下ろし位置P2に積み下ろされる。
2つのシート群20は、同一の高さの2つの積層体200から同じ高さで積層体200の残部200Rから切り離されているので、2つのシート群20のそれぞれが含むシート2の数量は同等であって、2つのシート群20のシート数量は平準化されていると言える。
後述するように本実施形態は、シート供給ライン1が停止した後、ハンド装置40を用いて、搬送装置30上に残留しているシート群20に対してシート数量の平準化処理を行う。
【0023】
ハンド装置40は、
図2に示すように、アーム部4A(
図1)に支持される基部41と、アーム部4Aに軸線Lを中心に回転自在に設けられる回転軸部42と、基部41に対して移動自在に設けられ、連携した動作によりシート群20を積層体200の残部200Rから切り離して取り出すための複数の可動部401~404とを備えている。
図2には、取り出し位置P1でパレットコンベヤ11の搬送方向yに隣接する2つの積層体200(
図1に示す第1積層体200-1および第2積層体200-2)のうちの一方である積層体200(第2積層体200-2)のみが示されている。パレットコンベヤ11の幅方向xは、搬送方向yに対して直交している。
【0024】
基部41は、水平方向に延在する部材41A,41B,41C等がフレーム状に組み付けられることで、ハンド装置40に必要な強度を有している。
可動部401~404は、ストッパ401、針挿入部402、第1支持部403、および第2支持部404に相当する。ストッパ401、針挿入部402、第1支持部403、および第2支持部404は、第1積層体200-1および第2積層体200-2のいずれに対しても作用し、必要に応じて、第1積層体200-1に作用する部材と、第2積層体200-2に作用する部材とを別々に備えている。
【0025】
積層体200からシート群20を取り出す際は、まず、アーム部4Aを下降させてハンド装置40の全体を下降させる。そして、ストッパ401を幅方向xの一方側(x+側)から他方側(x-側)に向けて積層体200の端面200Aの位置まで移動させることで端面200Aを押さえる(ステップS1-1)。それと並行して、針挿入部402をストッパ401の移動の向きとは逆向きに移動させて積層体200の反対側の端面200Bに近接させ、第2積層体200-2に対して切り離し位置200Pで針402Aを突き刺すとともに、第1積層体200-1に対しても、切り離し位置200Pで針402Aと同様の針を突き刺す(ステップS1-2)。なお、針402Aは、切り離し位置200Pと、200Pよりも上方の位置との2箇所に配置されている。
【0026】
次いで、針挿入部402を上昇させると、針挿入部402によりx-側の端部が支持されているシート群20と積層体200の残部200Rとの間に図示しない隙間ができる(ステップS2)。そこで、第1支持部403の幅方向xのx-側からx+側への変位、および水平方向の軸の回転方向r+の変位によりシート群20の下方の隙間に第1支持部403の爪403Aを挿入し、爪403Aによりシート群20を下側から支持する(ステップS3)。
【0027】
その状態で第2支持部404をx-側からx+側に、所定位置まで移動させることでシート群20と残部200Rとを切り離すとともに、第2支持部404によりシート群20を下側から支持する(ステップS4)。このとき、ハンド装置40は、第1積層体200-1から取り出された第1シート群20-1と、第2積層体200-2から取り出された第2シート群20-2とをそれらが隣接した状態で支持している。
その後、アーム部4Aの上昇によりハンド装置40全体を上昇させ、アーム部4Aを回動させる。このとき、ハンド装置40に支持されている2つのシート群20-1,20-2の向きを搬送装置30の搬送方向yに対して合わせるため、回転軸部42により基部41をアーム部4Aに対して回転させる。
【0028】
積み下ろし位置P2では、アーム部4Aを下降させてシート群20-1,20-2の下面を搬送装置30の搬送面30Aに対向させる。その状態で、第2支持部404をx+側からx-側へと、針挿入部402の針402Aや第1支持部403の爪403Aの近くまで移動させてシート群20-1,20-2をx+側から搬送面30Aに下ろすと、針挿入部402および第1支持部403を動作させてシート群20-1,20-2から針や爪(402A,403A等)を抜き取る。さらに、第2支持部404をx-側に向けてシート群20-1,20-2を超える位置まで移動させるとともに、ストッパ401をx+側に退避させると、シート群20-1,20-2は、その下面全体が搬送面に配置された状態に積み下ろされる。
【0029】
〔シート群搬送装置の構成および作用〕
搬送装置30は、各シート群20を所定ピッチで下流dへ搬送してシートマガジン8に供給し、シートマガジン8を介して下流装置9にシート2を供給する。
積み下ろし位置P2で隣接して配置される2つのシート群20-1,20-2間に所定ピッチを与えるため、搬送装置30の上流u側には、第1コンベヤ31と第2コンベヤ32とが直列に配置される。搬送装置30は、第1コンベヤ31および第2コンベヤ32の他、積み下ろし位置P2からシートマガジン8の位置までの間に配置される複数のコンベヤ33,34と、シート群20を90°回転させる方向切替部35とを備えていてもよい。第3コンベヤ33は、第2コンベヤ32および第4コンベヤ34に対して直交している。
【0030】
搬送装置30は、コンベヤ31~34等を駆動する図示しないモータを定常運転時の回転方向に対して逆回転させることで、下流dから上流uに向けてシート群20を逆送可能に構成されている。後述するように、シート供給ライン1の停止時に搬送装置30に残留したシート群20を供給源10に回収する際に搬送装置30を逆送させる。
【0031】
第1コンベヤ31の上流u側の端部付近には、逆送時にシート群20を積み下ろし位置P2に位置決めするための図示しないストッパが必要に応じて設けられていてもよい。ハンド装置40は、積み下ろし位置P2に置かれたシート群20に対して位置決め可能であるため、ストッパは必ずしも必要ない。
【0032】
積み下ろし位置P2に積み下ろされる2つのシート群20のうち、上流u側の第2シート群20-2は第1コンベヤ31上に配置され、下流d側の第1シート群20-1は第2コンベヤ32上に配置される。第1、第2シート群20-1,20-2が積み下ろされるとき、第1コンベヤ31および第2コンベヤ32のうち少なくとも第1コンベヤ31は、制御装置5から発せられる指令に基づき搬送動作を停止している。
第1コンベヤ31による搬送動作が停止している状態で、第2コンベヤ32により第1シート群20-1が下流dに向けて移動した後に、第1コンベヤ31による搬送動作を開始すると、第1シート群20-1が第1コンベヤ31から第2コンベヤ32へと乗り移り、第2コンベヤ32上で第1シート群20-1と第2シート群20-2との間に搬送方向yの所定のピッチを与えることができる。
【0033】
第1コンベヤ31および第2コンベヤ32に代えて単一のコンベヤを使用するとともに、
図3(a)~(c)に示すように個別に昇降動作が可能に構成される第1リフター61および第2リフター62上にシート群20-1,20-2を積み下ろすこともできる。
この場合は、
図3(a)に示すように、コンベヤの搬送面30Aよりも上方に位置する第1リフター61の支持面61Aに第2シート群20-2を積み下ろすとともに、同じく搬送面30Aよりも上方に位置する第2リフター62の支持面62Aに第1シート群20-1を積み下ろす。そして、
図3(b)に示すように、下流d側に位置する第2リフター62により第1シート群20-1を搬送面30Aまで下降させると、第1シート群20-1が、第1リフター61上の第2シート群20-2よりも先に下流dに向けて移動を開始する。その後、
図3(c)に示すように、第1リフター61により第2シート群20-2を搬送面30Aまで下降させると良い。
【0034】
搬送装置30により積み下ろし位置P2からシートマガジン8の位置まで搬送されたシート群20は、シート群20を支持する図示しない揺動機構によりシートマガジン8の内側に供給される。シートマガジン8は、シート2を積層された状態で蓄え、供給口からシート2を1枚ずつ下流装置9に供給する。
【0035】
〔残留シートの自動回収モードに必要な処理〕
さて、下流装置9の停止に伴いシート供給ライン1が停止したり、あるいはシート供給ライン1が異常停止したりすることで、搬送装置30上にシート群20が残留したとする。例えば、
図4は、下流装置9の停止に伴いシート供給ライン1が停止した例を示している。この例において、搬送装置30の第4コンベヤ34と、方向切替部35と、第2コンベヤ32とには、1つずつシート群20が残留している。つまり、下流装置9の処理能力とシート供給ライン1の供給能力との差に応じた数の、ここでは3つのシート群20A,20B,20Cが残留している。
【0036】
本実施形態のシート供給ライン1は、運転が停止すると、残留シート群20A,20B,20Cを搬送装置30から供給源10へと自動的に回収するシート回収モードを設定可能に構成されている。このシート回収モードにおいては、例えば
図5に示すように、搬送装置30により、定常運転時とは逆向きに、残留シート群20A,20B,20Cを積み下ろし位置P2まで逆送させる。さらに、ハンド装置40およびアーム部4Aの動作により、積み下ろし位置P2から供給源10の取り出し位置P1まで、同時に2つのシート群20を支持しつつ定常時とは逆向きに移動させて積層体200上またはパレット12上に積み戻す。
【0037】
ここで、ハンド装置40により2つのシート群20を同時に支持するため、積み下ろし位置P2には、いずれも同等の数量のシート2からなる2つのシート群20が隣接して配置されている必要がある。2つのシート群20は、第1支持部403と第2支持部404とにより下側から同時に支持される。第1支持部403および第2支持部404は、積み下ろし位置P2にシート2の数量が同等の2つのシート群20が隣接して配置されていることを前提に安定して動作する。積み下ろし位置P2に配置された2つのシート群20のシート数量が同等でない場合は、仮に、ハンド装置40により2つのシート群20を支持できたとしても、ハンド装置40からシート群20が戻された積層体200の姿勢の安定を欠く。
【0038】
そこで、シート供給ライン1のシート回収モードにおいては、残留シート群20A,20B,20Cに対してシート数量を平準化させる平準化処理が行われる。本実施形態の平準化処理は、積み下ろし位置P2においてハンド装置40を用いて行われる。つまり、ハンド装置40は、供給源10と搬送装置30との間でシート群20を移載する移載装置と、平準化処理部70とを兼ねている。
ここで、
図5に示すように積み下ろし位置P2に配置される残留シート群20Cと残留シート群20Bとのそれぞれのシート2の数量が同等である場合は、平準化処理が行われない。平準化処理は、シート群20に含まれるシート2の数量を示す数量情報2Qに基づき、シート群20の数量の平準化が必要な場合に行われる。
【0039】
シート群20のシート2の「数量」は、例えば、シート群20に含まれるシート2の枚数、シート群20の重量、シート群20の下面から上面までの高さに相当する。
2つのシート群20をハンド装置40により安定して支持し、また、シート群20が戻された積層体200の姿勢の安定を保つ上で、2つのシート群20の間には、例えば、数枚程度に相当する数量の差が許容される。したがって、数量が「同等」であることは、ハンド装置40により同時に支持される複数のシート群20に含まれるシート2の数量が同一であることの他、複数のシート群20に含まれるシート2の数量の差が許容範囲であることをも意味する。
【0040】
数量情報2Qは、後述するように、例えば、シート群20の高さ等を検知可能なセンサを用いて取得することができる。高さは、周囲環境の湿度等の影響を受け難いので、通年、数量情報2Qを安定して取得することができる。
なお、数量情報2Qは、制御装置5とは別の制御系により取得されて制御装置5に送信されるものであってもよい。
【0041】
シート供給ライン1の停止後に搬送装置30に残留している各シート群20が一定の数量のシート2を含んでいることは保証されていない。そのため、搬送装置30により積み下ろし位置P2に2つのシート群20を逆送させても、積み下ろし位置P2に配置された2つのシート群20のそれぞれのシート2の数量が同等でない場合がある。
【0042】
〔平準化処理の具体例〕
平準化処理の一例を説明する。平準化処理は、例えば、
図6(a)に示すように、積み下ろし位置P2に配置されるシート群20-3のシート2の数量を示す数量情報2Q-3と、シート群20-3に隣接して配置されるシート群20-4のシート2の数量を示す数量情報2Q-4とに基づき、平準化処理部70としてのハンド装置40により、シート群20-3,20-4間におけるシート2の移動を行うことにより行われる。
【0043】
平準化処理を行うにあたり、ハンド装置40を制御する制御装置5は、数量情報2Q-3が示す数量と数量情報2Q-4が示す数量との差分Δ2Qに基づき、平準化処理の要否を判定する(ステップS11)。判定の結果、平準化処理が必要である場合は、制御装置5から発せられる制御指令に基づき、ハンド装置40は、シート2の数量が相対的に多いシート群20-3から、差分Δ2Qの1/2に相応の数量のシート2を、積層体200からシート群20を取り出す際と同様にして取り出す(ステップS12)。
シート群20-3から取り出された1枚以上のシート2は、積層体200から取り出されたシート群20が積み下ろし位置P2に運ばれるときと同様の要領で、アーム部4Aおよびハンド装置40の動作によりシート群20-4の位置へと移動され、シート群20-4の上に積み重ねられる(ステップS13)。
【0044】
ハンド装置40による平準化処理は、積み下ろし位置P2にシート群20-3,20-4を停止させた状態で行うこともできるし、移動しているシート群20-3,20-4に対して行うこともできる。
【0045】
図5に示す例とは異なり、残留しているシート群20の数n1が偶数であって、ハンド装置40によりシート群20が同時に支持される数n2で割り切れる場合を想定する。この場合は、複数の残留シートに、シート2の数量が異なるシート群20が含まれているとしても、上記のような平準化処理を1回以上行うことで、搬送装置30上に残留していた全てのシート群20をハンド装置40により供給源10へと戻すことができる。
【0046】
上記とは異なり、残留しているシート群20の数n1が
図5に示す例のように奇数であって、ハンド装置40によりシート群20が同時に支持される数n2では割り切れず剰余が出る場合も想定される。この場合は、
図7(a)に示すように、残留シート回収の最終段階で、積み下ろし位置P2には1つのシート群20Aのみが配置されることになる。
【0047】
こうした場合の平準化処理としては、例えば、
図6(b)および
図7(b)に示すように、積み下ろし位置P2に配置される単一のシート群20Aのシート2の数量を示す数量情報2QAと、シート群20Aに隣接する位置にシート群20が存在していないことを示す情報(数量0を示す数量情報2QB)とに基づき、平準化処理部70としてのハンド装置40によりシート群20Aをシート群20-A1と20-A2とに分割する。
【0048】
この場合も、制御装置5は、数量情報2QAが示す数量と、同時に2つのシート群20を支持するためにシート群20が配置されるべき位置にシート群20が存在していないことの情報が示す数量「0」との差分Δ2Qに基づき、平準化処理の要否を判定する(ステップS11)。ここで、数量情報2QAが示す数量が「1」である場合は、シート群20Aを分割できないので、平準化処理は必要ない。
判定の結果、平準化処理が必要である場合は、制御装置5から発せられる制御指令に基づき、ハンド装置40は、シート群20Aから、差分Δ2Qの1/2に相応の数量のシート2を取り出す(ステップS12)。
【0049】
シート群20Aから取り出された1枚以上のシート2は、アーム部4Aおよびハンド装置40の動作によりシート群20Aの隣の位置で搬送面30Aまたはリフター上に配置される(ステップS13)。そうすると、元のシート群20Aは、シート群20A1と、シート群20A2とに二等分されることとなる。
ここで、シート群20A1とシート群20A2との一方または両方が、1枚のシート2からなる場合がある。1枚のシートからなる場合でも、「シート群」と称するものとする。
【0050】
シート群20A1,20A2は、ハンド装置40により同時に支持され、
図8に示すように、アーム部4Aおよびハンド装置40の動作により、供給源10の積層体200の上へと、あるいは空のパレット12Eへと再利用可能に回収される。シート供給ライン1の運転が開始された後に供給源10から取り出されるシート群20には、搬送装置30から戻されたシート群20A1,20A2が含まれている。
再利用時には、供給源10の2つの積層体200の高さが同一である。そのため、2つの積層体200の上面よりも下方の同一の高さで、2つの積層体200から同時にシート群20を安定して切り離すことができる。
【0051】
シート群20の回収に備え、制御装置5は、パレット12が空の状態になっても、取り出し位置P1に留めておくことが好ましい。
シート群20A1,20A2が戻された積層体200を載せたパレット12は、
図8に示すようにパレットコンベヤ11を逆向きに駆動することで排出させるようにしても良い。
【0052】
2つのシート群のシートの数量が異なる場合の平準化処理としては、2つのシート群のそれぞれを
図6(b)に示すように分割してもよい。
その場合は、例えば、
図6(a)に示すシート群20-3を数量情報2Q-3に基づき、ハンド装置40の動作により二等分し、搬送方向yに隣接するように第2コンベヤ32上に配置する。同様に、
図6(a)に示すシート群20-4を数量情報2Q-4に基づき、ハンド装置40の動作により二等分し、シート群20-3を分割したものである2つのシート群が配置されている場所よりも例えば下流d側で第2コンベヤ32上に配置する。
【0053】
〔数量情報取得部の構成〕
シート群20に含まれるシート2の数量を示す数量情報2Qを取得するために、例えば、
図9(a)に示す接触式の変位センサ81,82や、
図9(b)に示す光電センサ801~805等を用いることができる。変位センサ81,82、光電センサ801~805等は、数量情報取得部に相当する。
平準化処理部70を含む本実施形態の平準化処理装置7は、平準化処理部70としてのハンド装置40と、数量情報2Qを取得する数量情報取得部としてのセンサ等とを備えている。
【0054】
接触式の変位センサ81,82は、例えばハンド装置40に設けられる。
変位センサ81は、エアシリンダ81Aによりシート群20Cに向けてスピンドル81Bを伸長し、シート群20Cの上面に接触子81Cを接触させる。変位センサ81は、そのときのスピンドル81Bの変位量を電磁気的あるいは光学的に読み取ることができる。そのため、例えばハンド装置40が示している現在位置の情報を参照することで、基準位置(例えば搬送装置30の搬送面30A)に対するシート群20Cの上面の高さh1を取得することができる。
【0055】
変位センサ82は、シート群20Cに隣接するシート群20Bに向けてスピンドル82Bを伸長し、シート群20Bの上面に接触子81Cを接触させることで、変位センサ81と同様にして、シート群20Bの上面の高さh2を取得することができる。
変位センサ81により取得された高さh1は、シート群20Cの数量を示す数量情報に相当する。変位センサ82により取得された高さh2は、シート群20Bの数量を示す数量情報に相当する。
変位計81,82は、オン/オフの状態を検知するセンサとして利用することができる。そのため、シート群20Cの上面への接触子81Cの接触時(オン時)にハンド装置40が示している現在位置の情報から高さh1を取得するとともに、シート群20Bの上面への接触子82Cの接触時(オン時)にハンド装置40が示している現在位置の情報から高さh2を取得することができる。
制御装置5は、変位センサ81,82により取得された高さh1,h2の差分Δhに基づき、平準化処理が必要と判定する場合には、上述の平準化処理を実施する。
【0056】
接触式の変位センサ81,82に代えて、レーザー式の変位センサを用いることも可能である。レーザー式の変位センサは、例えばシート群20Cに向けてレーザーを出射し、出射したレーザーと、反射したレーザーとの相関情報からシート群20Cの上面までの距離を導き、例えばハンド装置40が示している現在位置の情報を参照することで、基準位置に対するシート群20Cの上面の高さを取得することができる。レーザー式変位センサを用いて、シート群20C,20Bのそれぞれの高さを取得することにより、平準化処理の要否を判定することができる。
【0057】
図9(b)に示す光電センサ801~805は、例えば、第1コンベヤ31の周辺に設けられ、シート群20Cの上面の高さh1を取得することが可能である。なお、図示を省略するが、第2コンベヤ32の周辺にも、光電センサ801~805と同様に複数の光電センサが設けられ、複数の光電センサによりシート群20Bの上面の高さを取得することが可能である。
【0058】
光電センサ801は、一対の投光器801Aおよび受光器801Bを備えている。光電センサ801は、例えば、投光器801Aから発せられる光が受光器801Bにより受光された場合にはオンの信号を出力し、投光器801Aから発せられる光が障害物により遮蔽され、受光器801Bにより受光されない場合にはオフの信号を出力する。他の光電センサ802~805も、光電センサ801と同様に構成されている。光電センサ801~805のそれぞれの破線で示す光軸は、いずれも水平に設定されている。
【0059】
光電センサ801は、高さの基準面である搬送面30Aの位置に設置される。光電センサ805は、供給源10の積層体200から取り出されて搬送装置30に積み下ろされるシート群20の最大の高さにマージンを加えたh
maxの位置に設置されている。複数の光電センサ801~805は、基準面から最大高さh
maxの位置までの異なる高さに設置されている。
図8(b)に示す例では、光電センサ804,805からオン信号が出力され、他の光電センサ801~803からはオフ信号が出力される。こうした光電センサ801~805のオン/オフの信号に基づいてシート群20Cの上面の高さh1を段階的に取得することができる。
制御装置5は、光電センサ801~805により取得されたシート群20Cの高さh1と、高さh1と同様にして取得されたシート群20Bの高さh2との差分に基づき、平準化処理が必要と判定する場合には、上述の平準化処理を実施する。
【0060】
シート群20Cの高さを取得する光電センサ801~805、および、シート群20Bの高さを取得する光電センサがそれぞれ設置される場所は、必ずしも積み下ろし位置P2である必要はない。例えば、
図4に示すシート群20Cの周辺に光電センサ801~805を設置し、シート群20Cから1ピッチ分離れて配置されるシート群20Bの周辺に他の複数の光電センサを設置することができる。
【0061】
複数の光電センサに代えて、二次元形状を計測可能なレーザー式の変位センサを使用することもできる。その場合は、シート群20B,20Cのそれぞれの高さh1,h2を精度良く取得することができる。
【0062】
上記に例示したセンサ81,82,801~805の他、例えば、カメラによりシート群20を側方から撮像し、撮像されたデータを画像処理することにより、シート群20に含まれるシート2の枚数を計数することができる。その場合の数量情報取得部は、カメラと、画像処理が可能なコンピュータとを備えている。制御装置5は、2つのシート群20のそれぞれのシート2の数の差分に基づき、平準化処理の要否を判定することができる。
【0063】
また、シート群20のシート2の数量を示す数量情報2Qを取得するために、シート群20の重量を計測することもできる。その場合の数量情報取得部は、例えば、電子天秤、ロードセル等に相当する。制御装置5は、2つのシート群20のそれぞれの重量の差分に基づき、平準化処理の要否を判定することができる。
なお、高さおよび重量など、シート2の数量を示す複数の物理量に基づく演算により数量情報2Qを取得するようにしてもよい。
【0064】
〔シート回収モードの運転例〕
シート供給ライン1のシート回収モードの運転例を説明する。梱包機等の下流装置9の制御系又はより上位の制御系からの信号によりシート回収指令が発せられると、シート供給ライン1はシート回収モードに切り替えられる(ステップ21)。
すると、搬送装置30上に残留しているシート群20A,20B,20Cが搬送装置30により逆送されることで、例えば
図5に示すように、シート群20B,20Cが積み下ろし位置P2に配置される(ステップS22)。
【0065】
制御装置5は、例えば光電センサ801~805等を用いて、積み下ろし位置P2に配置されているシート群の数を判定する(ステップS23)。判定の結果、積み下ろし位置P2に2つのシート群が配置されている場合であって(ステップS23でYes)、2つのシート群のシートの数量が同等である場合は(ステップS24でYes)、平準化処理は行わずに、ハンド装置40により2つのシート群を積層体200上またはパレット12上に移載する(ステップS27)。
【0066】
積み下ろし位置P2に2つのシート群が配置されている場合であって(ステップS23でYes)、2つのシート群間のシートの数量の差が許容範囲を逸脱している場合は(ステップS24でNo)、積み下ろし位置P2に配置される残留シート群に対して、例えば
図9(a)または(b)に示すように、接触式の変位センサ81,82や光電センサ801~805等を用いて数量情報2Qを取得する(ステップS25)。
そして、取得された数量情報2Qに基づいて、例えば
図6(a)に示すように、平準化処理部70により平準化処理を行う(ステップS26)。その結果、積み下ろし位置P2には複数の平準シート群(20A1,20A2等)が与えられる。
【0067】
積み下ろし位置P2に単一のシート群が配置されている場合にも(ステップS23でNo)、積み下ろし位置P2に配置される残留シート群に対して数量情報2Qを取得する(ステップS25)。そして、数量情報2Qに基づいて、例えば
図6(b)に示すように、平準化処理部70により平準化処理を行う(ステップS26)。
【0068】
ステップS23~S26を経ることで、平準化されている状態の2つの平準シート群が積み下ろし位置P2に配置されているから、例えば
図8に示すように、2つの平準シート群をハンド装置40により供給源10の積層体200上またはパレット12上へと同時に移載する(ステップS27)。
【0069】
さらに、パレットコンベヤ11を逆向きに動作させ、残留シート群を供給源10から回収することができる(ステップS28)。
【0070】
〔実施形態の作用効果〕
以上で説明した本実施形態によれば、シート群20に含まれるシート2の数量の平準化処理が行われることにより、複数のシート群20を同時に安定して取り扱うための要件が担保される。そのため、シート供給ライン1の運転が停止したときに搬送装置30上に残留しているシート群20を搬送装置30およびハンド装置40の動作により2つ同時に供給源10へと回収して、運転開始後の製品製造に用いることができる。
【0071】
残留シートの回収は、シート供給ライン1の動作モードをシート回収モードに設定することで、搬送装置30およびハンド装置40により自動的に行われるので、オペレータが搬送装置30の搬送経路を巡って残留シート群を回収する必要がない。人手により残留シート群を供給源10まで運搬する作業は、特に製造ラインのレイアウトの都合により供給源10の設置されるフロアと搬送装置30の設置されるフロアとが異なっていたり、搬送装置30が複数のフロアに亘り設置されていたりする場合には労力が大きい。
本実施形態によれば、少なくともシート供給ライン1の運転に関し、人手による作業を省いて無人化を促進させることができる。
【0072】
〔変形例〕
シート回収モード時には、搬送装置30に加えてマガジン8の動作も逆向きに切り替えることにより、シートマガジン8の内部から搬送装置30へとシート2を戻すことができる。例えば、シートマガジン8の内部で積層されて蓄えられているシート2をハンド装置40に備わる切り離し機構(401~404)と類似の図示しない切り離し機構により所定の数量ずつ切り離しては図示しない揺動機構により搬送装置30の搬送面30Aまで持ち上げることを繰り返すことで、シートマガジン8の内部の全シート2を搬送装置30およびハンド装置40を介して供給源10に回収することが可能である。
この場合も、上記実施形態と同様に、ハンド装置40により同時に支持される2つのシート群20のシート数量に差異が出たり、
図7(a)に示す例と同様に積み下ろし位置P2に単一のシート群20が配置されたりする可能性がある。そうした場合でも、上記実施形態と同様に、変位センサ等を用いて取得されたシート群20の数量情報2Qに基づいて、シート2の数量が同等の2つの平準シート群を搬送装置30に与えることにより、シート群20を支障なく供給源10に回収することができる。
【0073】
また、
図11に示すシート供給ライン1-1は、供給源10-1から搬送装置30-1へとシート群20を移載する移載装置50と、移載装置50とは別に、ハンド装置に相当する平準化処理部70とを備えている。平準化処理部70は、上記実施形態のロボットアーム4に備わるハンド装置40と同様に構成されている。
【0074】
移載装置50は、供給源10-1の積層体200の上面よりも下方の所定の切り離し位置で積層体200から2つのシート群20を切り離して水平方向に取り出す取出装置51と、2つのシート群20を昇降可能に構成される昇降装置52とを備えている。この移載装置50により、積層体200から搬送装置30-1へとシート群20が同時に移載される。
【0075】
供給源10-1は、パレットコンベヤ11と、パレット排出コンベヤ13と、昇降装置55とを備えている。パレットコンベヤ11の幅方向に隣接してパレット12上に配置されている2つの積層体200の上面には、天板Bが載せられている。
パレット12が昇降装置55により取り出し位置P1に向けて上昇することで、パレット12上の積層体200が取り出し位置P1に配置される。取り出し位置P1で積層体200から全てのシート2が取り出されると、空パレット12Eが下降し、パレット排出コンベヤ13により排出される。
【0076】
搬送装置30-1は、第1コンベヤ31と、第1コンベヤ31に対して直交配置される第2コンベヤ32とを備えている。
【0077】
シート供給ライン1-1が停止し、例えば、シート群20A,20B,20Cが搬送装置30-1上に残留したとする。その場合は、運転モードをシート回収モードに切り替え、変位センサ81,82等を用いて取得された数量情報2Qに基づき、平準化処理部70により平準化処理を行う。例えば、
図6(a)に示す手順と同様にしてシート群20C,20Bのそれぞれのシート2の数量を平準化させたり、
図6(b)に示す手順と同様にしてシート群20Aを二等分することで2つの平準シート群を搬送装置30-1に与えたりすることができる。
そのため、上記実施形態と同様に、搬送装置30-1を逆送させるとともに移載装置50を逆向きに動作させることにより、供給源10-1の積層体200上またはパレット12上に残留シート群を回収することが可能となる。
【0078】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
供給源10から搬送装置30へとシート群を移載する装置は、2つ以上の数のシート群20を同時に支持するものであってもよい。その場合は、供給源10には同数の積層体200が用意される。そうした場合でも、シート群毎の数量情報2Qに基づいて制御装置5から発生される指令に基づき特定されるシート群20から、演算処理により求められた数量のシート2を取り出して他のシート群20へと移動させる動作を1回以上繰り返すことで、各シート群20のシート数量を平準化させることができる。
【0079】
〔付記〕
以上の開示によれば、以下に記す構成が把握される。
〔1〕積層された複数のシート2からなるシート群20を搬送する搬送装置30に対して、シートの数量が平準化された複数の平準シート群20を与えることが可能に構成される装置であって、
搬送装置30上のシート群20のシート2の数量を示し、平準シート群20を得るために取得される情報2Qに基づき、シート群20の数量の平準化が必要な場合には、搬送装置30上の複数のシート群20間におけるシートの移動を行うことにより、あるいは搬送装置30上のシート群20を複数のシート群20に分割することにより、複数の平準シート群20を搬送装置30に与える平準化処理部70を備える、シート数量平準化装置7。
【0080】
〔2〕情報2Qを取得可能に構成される数量情報取得部81,82,801~805を備える、
〔1〕項に記載のシート数量平準化装置7。
【0081】
〔3〕情報2Qは、シート群20の高さh1,h2に相当する、
〔1〕または〔2〕に記載のシート数量平準化装置7。
【0082】
〔4〕平準化処理部70は、位置制御可能に構成されるハンド装置40に相当する、
〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載のシート数量平準化装置7。
【0083】
〔5〕ハンド装置40は、情報2Qを取得可能に構成される数量情報取得部81,82を備える、
〔4〕項に記載のシート数量平準化装置7。
【0084】
〔6〕平準化処理部70は、
搬送装置30上に隣接して配置される複数の平準シート群20を同時に支持し、搬送装置30からシート群20の供給源10へと移載可能に構成される、
〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のシート数量平準化装置7。
【0085】
〔7〕シート2を供給先9に供給するシート供給ライン1であって、
積層された複数のシート2からなるシート群20の供給源10と、
シート群20を下流dへ搬送することで、シートを供給先9に供給可能に構成される搬送装置30と、
〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載され、搬送装置30に対して複数の平準シート群20を与える平準化処理が可能に構成されるシート数量平準化装置7と、
供給源10において隣接して配置される複数のシート群20を供給源10から同時に取り出して搬送装置30に移載可能に構成される移載装置40と、を備え、
シート供給ライン1は、搬送装置30により下流dから上流uに向けてシート群20を逆送させ、かつ、平準化処理部70により複数の平準シート群20を搬送装置30に与え、さらに、搬送装置30上に隣接して配置される複数の平準シート群20を移載装置40により同時に支持し、搬送装置30から供給源10へと移載させるシート回収モードを設定可能に構成される、シート供給ライン1。
【0086】
〔8〕積層された複数のシート2からなるシート群20を搬送する搬送装置30に対して、シートの数量が平準化された複数の平準シート群20を与えることが可能に構成される方法であって、
平準シート群20を得るために搬送装置30上のシート群20のシートの数量を示す情報2Qを取得する第1ステップS21と、
情報2Qに基づき、シート群20の数量の平準化が必要な場合には、搬送装置30上の複数のシート群20間におけるシートの移動を行うことにより、あるいは搬送装置30上のシート群20を複数のシート群20に分割することにより、複数の平準シート群20を搬送装置30に与える第2ステップS22と、を備える、シート数量平準化方法。
【0087】
〔9〕シート供給ラインの運転方法であって、
シート供給ライン1は、積層された複数のシート2からなるシート群20の供給源10において隣接して配置される複数のシート群20を供給源10から取り出して搬送装置30に移載し、搬送装置30によりシート群20を下流dへ搬送することで、シート2を供給先9に供給可能に構成され、
シート供給ライン1が停止すると、
搬送装置30上に残留しているシート群20に相当する残留シート群20を下流dから上流uに向けて搬送装置30により逆送させるステップS21と、
残留シート群20に対して〔8〕項に記載の第1ステップおよび第2ステップを実施することで複数の平準シート群20を搬送装置30に与えるステップS22,S23と、
搬送装置30上に隣接して配置される複数の平準シート群20を搬送装置30から供給源へと同時に移載するステップS24と、を含む、シート供給ラインの運転方法。
【符号の説明】
【0088】
1 シート供給ライン
2 シート
2Q,2QA,2QB 数量情報
4 ロボットアーム
4A アーム部
4X 回転軸
5 制御装置
7 平準化処理装置
8 シートマガジン
9 下流装置(供給先)
10 供給源
11 パレットコンベヤ
12 パレット
12E 空パレット
13 パレット排出コンベヤ
20 シート群
20A,20B,20C 残留シート群
20A1,20A2 シート群
30 搬送装置
30A 搬送面
31 第1コンベヤ
32 第2コンベヤ
33 第3コンベヤ
34 第4コンベヤ
35 方向切替部
40 ハンド装置(平準化処理部)
41 基部
41A,41B,41C 部材
42 回転軸部
50 移載装置
51 取出装置
52 昇降装置
55 昇降装置
61 第1リフター
61A 支持面
62 第2リフター
62A 支持面
70 平準化処理部
81,82 変位センサ(数量情報取得部)
81A エアシリンダ
81B スピンドル
81C 接触子
82B スピンドル
200 積層体
200A,200B 端面
200P 切り離し位置
200R 残部
401 ストッパ
402 針挿入部
402A 針
403 第1支持部
403A 爪
404 第2支持部
801~805 光電センサ(数量情報取得部)
801A 投光器
801B 受光器
B 天板
u 上流
d 下流
P1 取り出し位置
P2 積み下ろし位置
T 移動軌跡
x 幅方向
y 搬送方向
z 上下方向