(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033079
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】芳香装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136465
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】397024199
【氏名又は名称】オズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】上山 超
(72)【発明者】
【氏名】天野 早織
(72)【発明者】
【氏名】上田 恵理香
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA13
4C180CA06
4C180GG19
4C180HH10
(57)【要約】
【課題】香料を染込ませたシート状体を揺れ機構で面方向に揺動させることで香料を拡散させる芳香装置であって、意匠的に優れたものにする。
【解決手段】香料を染込ませたシート状体2を揺れ機構3で面方向4に揺動させることで香料を拡散させる芳香装置1であって、揺れ機構3において、帯状に形成されて、その上端311付近のクリップ33で前記シート状体を把持する揺動部材31は、該上端311付近が厚み方向に延びるピン32によって前後の水平軸線回りに揺動自在に支持される。シート状体2は、たとえば広葉樹の葉が風になびいたような態様に形成される。すると、先端24が中心線5に対して片側にズレて配置されるが、重心21が前記中心線5に位置するようにフォルム調整する。そうすることで、非対称形状で意匠的に優れ、かつ左右の揺れ幅も均等にすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺れ機構と、それによって面方向に揺動されることで、染込ませられている香料を拡散させるシート状体とを備えて構成される芳香装置であって、
前記揺れ機構は、
帯状に形成されて、その上端付近が、厚み方向の水平軸線回りに揺動自在に支持される揺動部材と、
前記揺動部材の下端付近に設けられる磁石と、
前記揺動部材を揺動自在に支持する支持部材と、
前記支持部材において、前記揺動部材の中心線からズレて配置されて前記磁石に対向し、周期的に前記磁石を吸引することで前記揺動部材を揺動させる電磁石とを備えて構成され、
前記シート状体は、前記中心線の両側で非対称形状に形成され、かつ重心が前記中心軸線上に位置することを特徴とする芳香装置。
【請求項2】
前記電磁石は、太陽電池を電源として駆動されることを特徴とする請求項1記載の芳香装置。
【請求項3】
前記シート状体は、前記揺動部材の上端付近に取付けられる基端側の軸部と、その軸部から広がり、前記香料が染込ませられる広幅部分とを備え、前記広幅部分は、その先端になるに連れて収束してゆき、かつその先端が前記中心線の一方側に反っていることで、前記非対称形状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の芳香装置。
【請求項4】
前記シート状体は、前記広幅部分が、その先端になるに連れて収束してゆく広葉樹の葉の形状に形成され、先端が前記中心線の一方側に反った風になびいたような態様であることを特徴とする請求項3記載の芳香装置。
【請求項5】
前記シート状体は、前記香料の吸液性を有する紙から成り、前記軸部の根元の部分が、前記揺動部材の上端付近に形成されたクリップで着脱自在であることを特徴とする請求項3または4記載の芳香装置。
【請求項6】
前記揺れ機構は、筒状に形成され、その外筐における天井部分に形成された開口部から、前記帯状の揺動部材の上端付近が突出しており、
前記筒状の揺れ機構を落とし込む凹所を有するとともに、その凹所の上辺の一部から延設されて、前記揺動部材と予め定める間隔を開けて前記開口部の長辺を係止する係止爪を有し、前記揺れ機構を起立状態で揺動可能に保持する包装材をさらに備えることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の芳香装置。
【請求項7】
前記包装材への収納状態で、前記揺動部材には、前記シート状体よりも低背のダミーのシート状体が設けられることを特徴とする請求項6記載の芳香装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料を染込ませたシート状体を揺動させることで、前記香料を拡散させる芳香装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香装置の典型的な従来技術として、たとえば特許文献1や特許文献2が挙げられる。特許文献1は、帯状の揺動部材の上端付近が、支持部材によって水平軸線回りに揺動自在に支持され、下端付近に設けられた磁石が該揺動部材の中心線からズレて配置された電磁石に周期的に吸引されることで該揺動部材が揺動され(振子運動させられ)、該揺動部材の上端付近に取付けられた香料のブロック(塊)を揺動させることで、香料成分を拡散させるようになっている芳香装置である。そして、前記電磁石の駆動は、太陽電池を電源として行われている。
【0003】
一方、特許文献2も芳香装置であるが、車載用であり、吸盤で、板バネ状の揺動部材の下端側を窓に取付け、上端側に設けた香料の板を、車体の振動を用いて揺動させることで、香料成分を拡散させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4922578号公報
【特許文献2】実用新案登録第3064705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、香料は板状のブロック(塊)に成型されており、一方、揺動は板の面方向であるので、厚み方向に数カ所、貫通孔を設け、また前記揺動部材の上端付近に取付けられて該香料ブロックを保持するホルダには、前記貫通孔に対応して、厚み方向に拡がるフィンが設けられて、揺動によって前記貫通孔内に風を取込み、香料成分の拡散の促進を図っている。したがって、特許文献1は、香料を長期間発散させることができるが、意匠的には見劣りする面がある。
【0006】
一方、そのようなブロック(塊)ではなく、香りの持続時間が短くてよければ、香料を垂らしたようなシート状体を用いることも可能である。しかしながら、たとえば単純な団扇のようなシート状体でも、同様に意匠的には見劣りする面がある。
【0007】
この点、車両の振動を利用して板バネ状の揺動部材を揺動させる特許文献2は、特許文献1と同様に電源を必要とはしないが、そのまま室内に設置すると、揺れが止まってしまい、香料成分の拡散ができなくなってしまうとともに、意匠的にも見劣りしてしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、シート状体を揺動させることで香料を拡散させるにあたって、意匠的に優れた芳香装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の芳香装置は、揺れ機構と、それによって面方向に揺動されることで、染込ませられている香料を拡散させるシート状体とを備えて構成される芳香装置であって、前記揺れ機構は、帯状に形成されて、その上端付近が、厚み方向の水平軸線回りに揺動自在に支持される揺動部材と、前記揺動部材の下端付近に設けられる磁石と、前記揺動部材を揺動自在に支持する支持部材と、前記支持部材において、前記揺動部材の中心線からズレて配置されて前記磁石に対向し、周期的に前記磁石を吸引することで前記揺動部材を揺動させる電磁石とを備えて構成され、前記シート状体は、前記中心線の両側で非対称形状に形成され、かつ重心が前記中心軸線上に位置することを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、香料が染込ませられているシート状体を揺れ機構で面方向に揺動させることで香料を拡散させる芳香装置であって、前記揺れ機構とシート状体との関係を工夫する。具体的には、前記揺れ機構は、帯状に形成されて、その上端付近が、厚み方向の水平軸線回りに揺動自在に支持される揺動部材と、前記揺動部材の下端付近に設けられる磁石と、前記揺動部材を揺動自在に支持する支持部材と、前記支持部材において、前記揺動部材の中心線からズレて配置されて前記磁石に対向し、周期的に前記磁石を吸引することで前記揺動部材を揺動させる電磁石とを備えて構成されることで、周期的に前記揺動部材の下端付近を引張り上げて揺動させ(揺動部材に振子運動をさせ)、前記揺動部材の上端付近に取付けられるシート状体を前記面方向に揺動させて、香料を拡散させる。ここで本発明で注目すべきは、前記シート状体は、前記中心線の両側で非対称形状に形成されるものの、重心が前記中心軸線上に位置することである。
【0011】
したがって、シート状体は、非対称な形状であっても、揺れ機構に取付けると、鉛直に起立し、左右の揺れ幅も均等にすることができる。こうして、非対称な形状で、意匠的に優れた芳香装置を実現することができる。また、使用者の違和感が無ければ、シート状体の取付けの際、或いは該シート状体を取付けた揺れ機構の設置の際、表裏を選ぶこともない。さらにまた、左右のバランスが取れているので、シート状体が、たとえば団扇のように大きくなるなどして負荷が大きくなっても、動かし易く、少ないパワー(電力)で、揺動を継続させ易い、すなわち香料を拡散させ易い芳香装置を実現することができる。
【0012】
また、本発明の芳香装置では、前記電磁石は、太陽電池を電源として駆動されることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、太陽電池は、比較的発電量が小さいけれど、上記のような省電力のシート状体の揺れ機構に適用することで、電源供給を不要にすることができる。
【0014】
さらにまた、本発明の芳香装置では、前記シート状体は、前記揺動部材の上端付近に取付けられる基端側の軸部と、その軸部から広がり、前記香料が染込ませられる広幅部分とを備え、前記広幅部分は、その先端になるに連れて収束してゆき、かつその先端が前記中心線の一方側に反っていることで、前記非対称形状に形成されることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、シート状体の非対称形状を容易に実現することができるとともに、軸部に香料の染込みが少なく、着脱時に使用者の指を汚す可能性を小さくすることができる。そして、前記広幅部分のフォルム調整で、前記重心位置を調整することができる。
【0016】
また、本発明の芳香装置では、前記シート状体は、前記広幅部分が、その先端になるに連れて収束してゆく広葉樹の葉の形状に形成され、風になびいたような態様であることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、シート状体の非対称形状を容易に実現することができるとともに、意匠的な効果も得ることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の芳香装置では、前記シート状体は、前記香料の吸着性の良好な紙から成り、前記軸部の根元の部分が、前記揺動部材の上端付近に形成されたクリップで着脱自在であることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、シート状体が汚れて香料が染込み難くなったり、違う香りに変えたりする際に、該シート状体を容易に交換することができる。
【0020】
また、本発明の芳香装置では、前記揺れ機構は、筒状に形成され、その外筐における天井部分に形成された開口部から、前記帯状の揺動部材の上端付近が突出しており、前記筒状の揺れ機構を落とし込む凹所を有するとともに、その凹所の上辺の一部から延設されて、前記揺動部材と予め定める間隔を開けて前記開口部の長辺を係止する係止爪を有し、前記揺れ機構を起立状態で揺動可能に保持する包装材をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、包装材の凹所に筒状の揺れ機構を落とし込むことで、輸送の際の位置固定をすることができる。しかも、その筒状の揺れ機構であっても、外筐の天井部分には、帯状の揺動部材の上端付近が突出するための開口部が形成されているので、この開口部に包装材の一部(係止爪)を、揺動部材と接触しないように挿し込むことで、前記揺れ機構を起立状態で保持しても、外れなくなるとともに(前に倒れて来ない)、揺動自在に支持することができる。
【0022】
したがって、前方に被る包装材を、たとえば透明な材料で、舟形に形成することで、起立状態で保持、すなわち、揺動可能な状態で揺れ機構を展示することができ、商品をアピールすることができる。シート状体は、包装材の大きさの関係で、揺れ機構に取付けられたままでも、外された状態でも、任意である。
【0023】
さらにまた、本発明の芳香装置では、前記包装材への収納状態で、前記揺動部材には、前記シート状体よりも低背のダミーのシート状体が設けられることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、シート状体は、香料を拡散させるために或る程度の面積が必要で、背も高くなる。そこで、包装状態で、シート状体の代わりに、低背のダミーのシート状体を取付けておくことで、特に太陽電池のように電源が供給されていれば、実際に揺動している状態を購入者に分かり易く見せて販売促進を図りながら、販売スペースを縮小することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の芳香装置は、以上のように、香料が染込ませられているシート状体を揺れ機構で面方向に揺動させることで香料を拡散させる芳香装置であって、前記揺れ機構において、前記シート状体を保持する揺動部材を帯状として、上端付近で前記シート状体を保持する一方、下端付近に設けた磁石を電磁石で周期的に吸引することで揺動(振子運動)させ、その揺動部材の幅方向の中心線に対して、前記シート状体を左右非対称形状に形成するものの、重心を前記中心軸線上に位置させる。
【0026】
それゆえ、シート状体が非対称な形状であっても、揺れ機構に取付けると、鉛直に起立し、左右の揺れ幅も均等にすることができる。こうして、非対称な形状で、意匠的に優れた芳香装置を実現することができる。また、使用者の違和感が無ければ、シート状体の取付けの際、或いは該シート状体を取付けた揺れ機構の設置の際、表裏を選ぶこともない。さらにまた、左右のバランスが取れているので、シート状体が、たとえば団扇のように大きくなるなどして負荷が大きくなっても、動かし易く、少ないパワー(電力)で、揺動を継続させ易い、すなわち香料を拡散させ易い芳香装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る芳香装置の斜視図である。
【
図2】前記芳香装置の取扱い状況を説明する斜視図である。
【
図3】前記芳香装置における揺れ機構の六面図である。
【
図4】前記揺れ機構の外筐を除いて示す分解斜視図である。
【
図5】前記揺れ機構と、シート状体との関係を模式的に示す正面図である。
【
図6】前記芳香装置のパッケージを説明する分解斜視図である。
【
図7】前記芳香装置の他のパッケージを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は本発明の実施の一形態に係る芳香装置1の斜視図であり、
図2はその取扱い状況を説明する斜視図である。この芳香装置1は、香料が染込ませられているシート状体2を、揺れ機構3によって、参照符号4で示すような面方向に揺動させることで、前記香料を拡散させるものである。
図3(a)は揺れ機構2の正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。揺れ機構2は、
図3(a)の正面視で略帯状に形成される揺動部材31の上端311付近が、ピン32で左右方向に揺動可能であり、それによって前記上端311付近に形成されたクリップ33で掴んだ前記シート状体2を前記矢符4方向に揺動させるようになる。
【0029】
図4は、前記揺れ機構3の外筐34を除いて示す分解斜視図である。外筐34は、
図1~3で示すように、本実施形態では、有蓋円筒状体で、開口端342から、揺れ機構2の基体35およびその基体35上の後述する内部構造体に被せられて、適宜係合突起などで抜け止めが行われる。天井部分341の中央には、前記揺動部材31が遊挿する長孔状の開口343が形成されるとともに、中央からズレて、後述する太陽電池36の露出孔344が形成される。
【0030】
図4を参照して、基体35は、本実施形態では、円柱状で、前記シート状体2の揺動に対して、安定して支持可能な所定の重量を備えるブロックである。本実施形態では、前記太陽電池36を使用するので用いないが、基体35に電池などが内蔵されてもよい。基体35上には、前後一対の支持板37が立設される。一対の支持板37には、相互に対向する内方に延びるボス38が形成されている。本実施形態では、ボス38は略90°の円弧状の筒であり、このボス38の内側は前記支持板37を貫通する孔371と連通している。これらのボス38および貫通孔371には、前記揺動部材31の上端311付近において、前後(厚み方向)一対に延びる前記ピン32が遊挿する。本実施形態では、ピン32は、前記円弧状のボス38および貫通孔371に対応して、三角柱に形成され、その頂角321のナイフエッジが支持されて、揺動部材31は、左右方向に(振子のように)揺動自在となる。ピン32が円柱状で、対応してボス38が円筒状で、貫通孔371が円形に形成されてもよい。それらのピン32ならびにボス38および貫通孔371は、ピン32によって、前後の水平軸線回りに、揺動部材31を揺動自在に支持すればよい。これらの基体35、支持板37、ボス38およびピン32は、揺動部材31を揺動自在に支持する支持部材を構成する。
【0031】
クリップ33は、揺動部材31の前記上端311付近に設けられ、シート状体2を、
図2のように着脱自在に把持するものである。本実施形態では、揺動部材31は、矩形の板を型抜きして、所定の隙間を有する一対の外枠331と、内板332とを組合わせたように形成されているが、互い違いの歯を有するフォーク状に形成されてもよく、或いはバネなどを備えた鋏の形状に形成されてもよい。本実施形態では、揺動部材31は、樹脂成型品で形成される。内板332の遊端側の隅角部には、掴んだシート状体2が外れないように、内向きの突起333が形成されている。
【0032】
また、揺動部材31には、その下端312付近において、一方の(本実施形態では表)面には磁石41が設けられ、他方の(本実施形態では裏)面には錘42,43が設けられる。揺動部材31は、前記磁石41や錘42,43を収容したりするために、適宜、収納凹所313,314が設けられてもよく、また薄肉で、狭幅で、所定の強度を持たせるためにリブ立てされていてもよい。凹所314には、係合凹所316が設けられており、1段目の錘42の係合突起421が嵌り込んで抜け止めされる。2段目の錘43は、1段目の錘42よりも若干、幅広の部分431を有し、その幅広の部分431は、凹所314の切れ目317からはみ出して下端312付近の外周面と面一となることで、該凹所314に嵌め込まれながら、重量が稼がれている。さらに本実施形態では、揺動部材31の上下方向で、奥行き方向に凹む凹所315も形成されている。
【0033】
そして、揺動部材31の揺動は、一方の(本実施形態では表面側の)支持板37の内側において、前記磁石41に対向して設けられる電磁石47で、該磁石41を周期的に吸引することで行われる。電磁石47の駆動は、前記太陽電池36を電源として、基板44に搭載された図示しないスイッチング素子などによって行われる。基板44には、その太陽電池36の発電電力の貯蔵用のコンデンサ45や、スイッチングのサージ吸収用などのコンデンサ46も搭載されており、それらのコンデンサ45,46は、前記凹所315に嵌り込んでおり、揺動部材31の揺動の際にも、干渉することはない。太陽電池36は、他方の(本実施形態では裏面側の)支持板37の頂部に搭載され、前記露出孔344から露出している。
【0034】
図5は、前記揺れ機構3と、シート状体2との関係を模式的に示す正面図である。本実施形態の芳香装置1は、上述のように、香料が染込ませられているシート状体2を揺れ機構3で面方向4に揺動させることで、前記香料を拡散させる芳香装置である。そして注目すべきは、本実施形態の芳香装置1は、揺れ機構3とシート状体2との関係を工夫するものである。具体的には、揺れ機構3において、帯状に形成されて、その上端311付近が、厚み方向に延びるピン32によって、支持部材である支持板37の貫通孔371やボス38に水平軸線回りに揺動自在に支持される揺動部材31には、その下端312付近に設けられる磁石41に対して、前記支持板37に設けられる電磁石47が、該揺動部材31の幅方向の中心線5に対して、片側にズレて配置されることで、前記磁石41を周期的に引張り上げる。そして、シート状体2は、前記中心線5の両側で非対称形状に形成されるものの、重心21が前記中心線5上に位置することである。
【0035】
したがって、シート状体2は、非対称な形状であっても、揺れ機構3に取付けると、鉛直に起立し、左右の揺れ幅4a,4bも均等にすることができる。こうして、非対称な形状で、意匠的に優れた芳香装置を実現することができる。また、使用者の違和感が無ければ、シート状体2の取付けの際、或いは該シート状体2を取付けた揺れ機構3の設置の際、表裏を選ぶこともない。さらにまた、左右のバランスが取れているので、シート状体2が、たとえば団扇のように大きくなるなどして負荷が大きくなっても、動かし易く、少ないパワー(電力)で、揺動を継続させ易い、すなわち香料を拡散させ易い芳香装置を実現することができる。
【0036】
前記重心21を上部側とすることで、揺れの速度を遅くすることができ、前記揺動部材31、すなわち振り子の長さを長くすることで、また錘42,43を重くすることでも、揺れの速度を遅くすることができ、芳香装置として、使用者の心地良い周期に定められればよい。
【0037】
また、本実施形態の芳香装置1では、電磁石47は、太陽電池36を電源としている。したがって、太陽電池36は、比較的発電量が小さいけれど、上記のような省電力のシート状体2の揺れ機構3に適用することで、電源供給を不要にすることができる。
【0038】
さらにまた、本実施形態の芳香装置1では、前記シート状体2は、前記揺動部材31の上端311付近に取付けられる基端側の軸部22と、その軸部22から広がり、前記香料が染込ませられる広幅部分23とを備え、前記広幅部分23は、その先端24になるに連れて収束してゆき、かつその先端24が前記中心線5の一方側に反り、前記広幅部分23のフォルム調整で、前記重心21の位置が調整されている。そうすることで、シート状体2の非対称形状を容易に実現することができるとともに、軸部22に香料の染込みが少なく、着脱時に使用者の指を汚す可能性を小さくすることができる。
【0039】
また、本実施形態の芳香装置1では、前記シート状体2は、前記広幅部分23が、その先端24になるに連れて収束してゆく広葉樹の葉の形状に形成され、前記先端24が中心線5から反っていることで、風になびいたような態様に形成される。そうすることで、シート状体2の非対称形状を容易に実現することができるとともに、意匠的な効果も得ることができる。
【0040】
また、本実施形態の芳香装置1では、前記シート状体2は、前記香料の吸液性の良好な紙から成り、前記軸部22の根元の部分25が、前記クリップ33に挟まれて、着脱自在となっている。したがって、該シート状体2が汚れて香料が染込み難くなったり、違う香りに変えたりする際に、該シート状体2を容易に交換することができる。なお、香料は、アロマオイルなどで使用されているドロッパー付のオイル瓶から、1滴ずつ滴下することで、シート状体2に染込ませられる。したがって、多少、浸潤して拡がるが、該シート状体2の全面にまで拡がる程に滴下するようなことはなく、特に狭幅の軸部22を通過し難く、前記のように交換の際に使用者の指を汚したり、クリップ33に残って香りを出し続けるようなこともない。
【0041】
図6は、上述のように構成される芳香装置1のパッケージ(包装材)6を説明する分解斜視図である。このパッケージ6は、台紙61と、前カバー62とを備えて構成される。台紙61は、たとえば厚紙が、型抜きされて形成されており、筒状の揺れ機構3を落とし込む凹所611を備え、また両側部にはフランジ612を備えている。上述の例では、揺れ機構3は円筒状であるので、前記凹所611はラウンド形状に形成されるが、角筒状の場合は、その形状で嵌り込む形状に形成されればよい。前記揺れ機構3の外筐34における天井部分341には、前記帯状の揺動部材31の上端311付近が突出する前記長孔状の開口部343が形成されており、これに対応して、台紙61には、凹所611の上辺6111の一部から延設されて、前記揺動部材31と予め定める間隔を開けて(接触しないように)、前記開口部343の長辺を係止する係止爪613が形成されている。
【0042】
したがって、前記凹所611に筒状の揺れ機構3を落とし込むことで、輸送の際の位置固定をすることができる。しかも、外筐34の天井部分341の開口部343に係止爪613を挿し込むことで、該揺れ機構3を起立状態で保持しても、外れなくすることができる(前に倒れて来ない)。
【0043】
そのため、前カバー62を透明な材料で、
図6のように舟形に形成することで、起立状態で保持、すなわち揺動部材31が揺動可能な状態で揺れ機構3を展示することができ、商品をアピールすることができる。シート状体2は、パッケージ6の大きさの関係で、揺れ機構3に取付けられたままでも、
図6のように外された状態でも、任意である。前カバーの両側の折返部621で前記フランジ612を鋏込むことで、台紙61と前カバー62とを一体化することができる。前カバー62の上部には、吊下げ片622が形成され、それに形成された孔623に陳列棚のフックを通すことで、該芳香装置1を吊下げ状態で陳列することができる。
【0044】
図7は、前記芳香装置1の他のパッケージ(包装材)7を説明する斜視図である。このパッケージ7は、上述のパッケージ6に類似している。このパッケージ7は、台紙71と、カバー72と、箱体73とを備えて構成される。台紙71は、台紙61と同様に、たとえば厚紙が、型抜きおよび折曲げられて形成されており、筒状の揺れ機構3を落とし込む凹所711を備え、また該凹所711の上辺7111の一部から延設されて、前記揺動部材31と予め定める間隔を開けて前記開口部343の長辺を係止する係止爪713が形成されている。台紙71の下端は、揺れ機構3を押さえ込むとともに、ドロッパー付のオイル瓶を収容した箱8を押さえ込む折返し部715に形成される。
【0045】
箱体73は、直方体の一面が開放した舟形に形成されており、内部に、前記揺れ機構3および箱8を保持した台紙71が落とし込まれる。そして、透明な角筒状のカバー72に嵌め込まれ、このパッケージ7は、上述のパッケージ6と同様に、揺れ機構3を起立状態で保持、すなわち揺動部材31が揺動可能な状態で、かつその揺れている状態を視認可能に展示することができる。また、起立状態では、箱8内のオイル瓶の蓋と、オイルとの接触を避けることもできる。本実施形態では、シート状体2は、複数(本実施形態では3)枚が別途販売可能な袋20に収容された状態で、箱体73の隅に差込まれている。箱体73のカバー72への固定は、箱体73の上面または底面(好ましくは、開け方が分かり易いように上面)で、テープ止めなどによって行われてもよい。
【0046】
また、本実施形態のパッケージ7で注目すべきは、揺れ機構3を収納した状態で、揺動部材31に、ダミーのシート状体9が設けられることである。ここで、シート状体2は、香料を拡散させるために或る程度の面積が必要で、背も高くなる。そこで、包装状態で、シート状体2の代わりに、低背のこのダミーのシート状体9を取付けておくことで、特に太陽電池36のように電源が供給されていれば、実際に揺動している状態を購入者に分かり易く見せて販売促進を図りながら、販売スペースを縮小することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 芳香装置
2 シート状体
20 袋
21 重心
22 軸部
23 広幅部分
24 先端
25 根元の部分
3 揺れ機構
31 揺動部材
311 上端
312 下端
32 ピン
321 頂角
33 クリップ
331 外枠
332 内板
333 突起
34 外筐
35 基体
36 太陽電池
37 支持板
371 貫通孔
38 ボス
41 磁石
42,43 錘
45,46 コンデンサ
47 電磁石
5 中心線
6 パッケージ(包装材)
61 台紙
611 凹所
612 フランジ
613 係止爪
62 前カバー
621 折返部
622 吊下げ片
623 孔
7 パッケージ(包装材)
71 台紙
711 凹所
713 係止爪
715 折返し部
72 カバー
73 箱体
8 箱
9 ダミーのシート状体