(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003308
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/02 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
D06F58/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102351
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今成 正雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 麻理
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】野上 洋登
(72)【発明者】
【氏名】曽我 丈
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA02
3B166AA04
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3B166JM03
(57)【要約】
【課題】熱交換器に付着したリントの除去性能を向上させる。
【解決手段】本発明の洗濯乾燥機(ドラム式洗濯乾燥機100)は、循環空気を除湿し加熱するヒートポンプユニット300を備える。ヒートポンプユニット300は、圧縮機307と、循環空気が流れる通風経路内に配置された凝縮器301と、循環空気が流れる通風経路内であって凝縮器301の上流側に配置された蒸発器302と、凝縮器301と蒸発器302を接続する配管内に設けた膨張弁308と、を備える。通風経路には蒸発器302を回避させて凝縮器301に連通するバイパス風路255を備える。ヒートポンプユニット300には、バイパス風路255を開閉し、バイパス風路255と蒸発器302に流入する通風経路とを切り替えるダンパー256を備えた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯溜可能な外槽と、前記外槽内に回転可能に支持され、洗濯物が収容されるドラムと、前記ドラムに送風し空気を循環させる送風ファンと、循環空気を除湿し加熱するヒートポンプユニットとを備え、
前記ヒートポンプユニットは、圧縮機と、循環空気が流れる通風経路内に配置された凝縮器と、循環空気が流れる前記通風経路内であって前記凝縮器の上流側に配置された蒸発器と、前記凝縮器と前記蒸発器を接続する配管内に設けた膨張手段と、を備えた洗濯乾燥機において、
前記通風経路には前記蒸発器を回避させて前記凝縮器に連通するバイパス風路を備え、
前記ヒートポンプユニットには、前記バイパス風路を開閉し、前記バイパス風路と前記蒸発器に流入する通風経路とを切り替える切替手段を備えたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1において、
前記蒸発器を凍結させる凍結運転時は、循環空気が前記バイパス風路を通風可能なように、前記切替手段で前記バイパス風路を開放することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項2において、
前記蒸発器を凍結させる凍結運転時は、洗濯物の乾燥運転時よりも前記膨張手段を絞ることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項1において、
凍結した前記蒸発器を解氷させる解氷運転時は、循環空気が前記蒸発器に流入するように、前記切替手段で前記バイパス風路を閉鎖することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項4において、
前記解氷運転時は、前記圧縮機を停止させることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項において、
前記ヒートポンプユニットは、前記通風経路の側面の形成する仕切板を備え、
前記蒸発器のベント部を前記仕切板から突出させて前記通風経路外に露出させ、
前記通風経路外に露出させた前記ベント部に加熱手段を接触するように配置したことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項において、
前記ヒートポンプユニットは、前記凝縮器、前記蒸発器、前記膨張手段を収容するケース部と、前記ケース部を前記通風経路と側面部風路とに仕切る仕切壁と、前記側面部風路と連通し前記圧縮機を収容する圧縮機ケースと、前記側面部風路と連通し連通ファンを収容する連通ファンケースと、を備え、
前記圧縮機ケースは外部と連通する流入開口を備え、
前記連通ファンケースは外部と連通する通風口を備え、
前記蒸発器のベント部を前記側面部風路に露出させたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項において、
前記ヒートポンプユニットは、前記凝縮器、前記蒸発器、前記膨張手段を収容するケース部と、前記ケース部を前記通風経路と側面部風路とに仕切る仕切壁と、前記側面部風路と連通し前記圧縮機を収容する圧縮機ケースと、前記蒸発器に下部に配置され解氷された前記蒸発器からのドレン水を受けるドレンパンと、前記圧縮機の側面胴部に巻き付けられた第1パイプと、前記ドレンパンと前記第1パイプの間に配置され、前記ドレンパンのドレン水を吸い上げ前記第1パイプに送水するポンプと、前記第1パイプと接続され前記側面部風路に露出された前記蒸発器のベント部に接触して配置された第2パイプと、を備えたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯及び乾燥を行う洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯から乾燥までを連続して行う洗濯乾燥機がある。洗濯乾燥機の乾燥工程では、送風ファンと熱源により高温・低湿度の空気を作り、これを洗濯槽内に吹込む。洗濯層内の衣類は温度が上昇し、衣類から水分が蒸発する。蒸発した水分を含んだ空気は、除湿手段により水分が除湿される。蒸発した水分の除去方法としては、循環空気を冷却除湿する方式と、循環空気を周囲の低湿な空気と入れ替える方式がある。さらに冷却除湿の冷熱源としては、ヒートポンプを用いる方式と冷却水を用いる方式がある。
【0003】
ヒートポンプ方式では、循環空気の除湿とその後の加熱に対して、熱伝達性能を確保するためにフィンチューブタイプの熱交換器が用いられる。
【0004】
また、洗濯乾燥機の乾燥工程では、洗濯槽内での衣類の攪拌により、衣類同士の接触時に、細かい繊維の屑であるリントが発生する。このリントは通常、循環空気風路内に設けた乾燥フィルタで取り除かれながら、空気を循環させて乾燥を行うが、一部のリントは乾燥フィルタをすり抜けてしまい、フィンチューブ熱交換器のフィン隙間において捕獲されやすい。そのため、乾燥フィルタで捕獲しきれなかったリントは、ヒートポンプの上流側に位置する蒸発器のフィン隙間に付着しやすい。
【0005】
リントが付着された熱交換器では、伝熱管を流れる冷媒とフィン隙間を流れる空気との熱交換に対して、堆積したリントは熱抵抗となり熱交換が進まず、さらに堆積が進めばフィン隙間を埋めてしまうので、通風抵抗となり空気循環自体も妨げられてしまう。リントが堆積していくメカニズムとしては、初期に付着したリントが核となり、このリントに後から通過してくるリントが絡まる形で、堆積が進んでいく。このためリントは常に取り除いて、付着してない状態としておくのが良い。
【0006】
リントを除去する方法として、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、ヒートポンプ装置を備えた洗濯乾燥機において、ヒートポンプ装置の除湿部に付着した塵埃を除去する洗浄機構を備えた技術が開示されている。洗浄機構は散水部を備えており、この散水部から除湿部に向けて水道水を出射し、除湿部を洗浄する。
【0007】
また、空気調和機の熱交換を洗浄する技術として特許文献2に記載の技術がある。特許文献2では、熱交換器を別筐体である室内機、室外機のそれぞれに備え、一方を蒸発器、他方を凝縮器として使用し、室内の冷暖房を行う。
【0008】
例えば、室内機側の熱交換器の洗浄を行う場合には、熱交換の温度を下げる運転を行って熱交換器のフィンの表面に霜若しくは氷を付着させ、その後熱交換器の温度を上げる運転を行い、霜若しくは氷を解凍させる。熱交換器に付着した塵埃は、霜若しくは氷が解凍され落下する水の勢いにより除去される。特許文献2では、熱交換の温度を下げる運転と熱交換器の温度を上げる運転は、熱交換器に流れる冷媒の温度を変えて行う。そのため、特許文献2では、熱交換器に流れる冷媒を切り替えるための四方弁を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5994453号公報
【特許文献2】特開2018-189270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の技術においては、熱交換器の外表面から散水するため、熱交換器の配管表面とリントの隙間、およびフィン表面とリントの隙間まで浸水できないため、熱交換器の配管表面およびフィン表面からリントを剥離させることが困難であった。特に、熱交換器の配管表面、フィン表面の付着するリントは、送風ファンの風圧により圧着されているので、リントを剥離させることが困難である。
【0011】
また、特許文献2に記載の空気調和機における洗浄機構では、蒸発器に結氷させた霜を溶かすために四方弁を切り替えて、蒸発器と凝縮器を熱的に入れ替えて、配管表面およびフィンを加熱するようにしているので、ヒートポンプの構成要素として四方弁および熱交換器とを連結させる配管を必要とし、搭載できる設置空間に限りのある洗濯乾燥機には搭載が困難であった。また、特許文献2に記載の技術では、結氷運転時にくみ上げた熱を蓄えておき、別途利用する機構もなく、効率が劣るものであった。
【0012】
本発明の目的は、熱交換器に付着したリントの除去性能を向上させた洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、内部に液体を貯溜可能な外槽と、前記外槽内に回転可能に支持され、洗濯物が収容されるドラムと、前記ドラムに送風し空気を循環させる送風ファンと、循環空気を除湿し加熱するヒートポンプユニットとを備え、前記ヒートポンプユニットは、圧縮機と、循環空気が流れる通風経路内に配置された凝縮器と、循環空気が流れる前記通風経路内であって前記凝縮器の上流側に配置された蒸発器と、前記凝縮器と前記蒸発器を接続する配管内に設けた膨張手段と、を備えた洗濯乾燥機において、前記通風経路には前記蒸発器を回避させて前記凝縮器に連通するバイパス風路を備え、前記ヒートポンプユニットには、前記バイパス風路を開閉し、前記バイパス風路と前記蒸発器に流入する通風経路とを切り替える切替手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱交換器に付着したリントの除去性能を向上させた洗濯乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構造を右側面の概略断面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部基本構造を示す右斜め前方から見た斜視図、及びヒートポンプユニット300を抽出した拡大斜視図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る蒸発器302の凍結運転時における空気の流れを示す模式図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る蒸発器302の解氷運転時における空気の流れを示す模式図である。
【
図6】本発明に実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100における洗濯乾燥運転(洗い~乾燥)の動作を説明するフローチャートである。
【
図8】本発明の実施例2に係るヒートポンプユニット300の一部を断面した斜視図である。
【
図9】本発明の実施例3に係るヒートポンプユニット300の一部を断面した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例1について説明する。なお、同一の要素については、全ての図において、原則として同一の符号を付している。また、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。なお、以下に説明する構成はあくまで実施例に過ぎず、本発明に係る実施様態が、以下の具体的様態に限定されることを意図する趣旨ではない。
【0017】
また、以下の実施例では、ドラム式洗濯乾燥機に適用した例で説明するが、本発明は縦型の洗濯乾燥機にも適用可能である。以下の説明では、
図1の矢印で示すように、ドラム式洗濯乾燥機を正面から見た状態を基準とし、ドラム式洗濯乾燥機を正面の右側を「右」、左側を「左」、上側を「上」、下側を「下」と定義する。
【実施例0018】
図1は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の外観斜視図である。
図2は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構造を右側面の概略断面図である。
図3は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部基本構造を示す右斜め前方から見た斜視図、及びヒートポンプユニット300を抽出した拡大斜視図である。
図3のヒートポンプユニット300の拡大斜視図では、圧縮機307を省略している。
【0019】
まず、ドラム式洗濯乾燥機100の外観について説明する。ドラム式洗濯乾燥機100は、ベース1hの上部に、主に鋼板と樹脂成形品で作られた側板1a及び補強材(図示せず)を組み合わせて骨格を構成し、さらにその上に前面カバー1c、上面カバー1eを取り付けることで筐体1を形成している。前面カバー1cには洗濯物30を出し入れするドア9が設けられており、背面には背面カバー1d(
図2)が取り付けられている。
【0020】
次にドラム式洗濯乾燥機100の概略構造について簡単に説明する。筐体1内には、内部に水(液体)を貯溜可能な外槽20が備えられる。外槽20は下部の複数個のサスペンション5により支持されている。外槽20内には、回転可能に支持され、洗濯物30が収容されるドラム29が備えられている。外槽20には開閉可能なドア9が備えられ、ドア9を開けてドラム29に洗濯物30を投入する。ドラム29の開口部の外周には脱水時の洗濯物30のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサー31が設けられている。
【0021】
また、ドラム29の内側には洗濯物30を掻き揚げる複数個のリフター33が設けられている。ドラム29は回転ドラム用金属製フランジ34に連結された主軸35を介してドラム駆動用モータ36に直結されている。ドラム29の駆動方式は、例えば主軸に固定されたプーリと外槽に固定したモータとをベルトを介して連結させて回転ドラムを駆動させる所謂ベルト駆動構成であってもよい。
【0022】
外槽20の開口部には弾性体からなるゴム系のベローズ10が取付けられている。このベローズ10は外槽20内とドア9との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い、すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。
【0023】
ドラム29は、側壁に遠心脱水および通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。外槽20の水受け部54に開口した排水口37は、排水弁V1を介して排水ホース26に接続される。またオーバーフローホース17は外槽前面に取り付けられており、排水弁V1よりも下流側で排水ホース26と合流している。即ち、排水弁V1の開閉状態に関係なく排水ホース26と連通される構成となっている。オーバーフローホース17が取り付けてある所定の水位よりも水量が増えてしまった場合には、いかなる場合でも強制的に排水できる構成としている。ただし、排水弁V1よりも上流で排水ホース26と合流させる構成としても機能上は何ら差し支えない。
【0024】
洗濯水を外槽20の上部までくみ上げて、ドラム29内の洗濯物30に散布するための循環ポンプ18は、外槽20よりも下部のベース1h側に固定されている。洗濯水は、外槽下部に設けられた水受け部54の排水口37から、糸屑フィルタ222を通して循環ポンプ18の吸込口側に入り、循環ポンプ18で昇圧されたのち、散水ノズル223からドラム29内に向けて散水される。また水受け部54の底部に排水のために設けた排水口37は、糸屑フィルタ222と排水弁V1を介して、排水ホース26に通じており、水受け部54内の水を排水できる。
【0025】
実施例1では、ドラム29とヒートポンプユニット300との間を、送風ファン2により空気を循環させて乾燥させる温風乾燥方式としている。実施例1の乾燥機構は、空気を循環させる送風ファン2と、循環空気を除湿してその後加熱するヒートポンプユニット300と、温風をドラム29内に吹き出すために外槽20に設けた吹出ノズル203に導く温風ダクト251と、ドラム29から出た湿った空気をヒートポンプユニット300まで戻す送風ダクト部252から主に構成される。そして、送風ファン2、ヒートポンプユニット300、温風ダクト251、送風ダクト部252によって通風経路が形成され、通風経路内を循環空気が流れる。
【0026】
ヒートポンプユニット300は、冷媒を圧縮する圧縮機307と、循環空気が流れる通風経路内に配置された凝縮器301と、循環空気が流れる通風経路内であって凝縮器301の上流側に配置された蒸発器302と、凝縮器301と蒸発器302を接続する配管内に設けた膨張弁308(膨張手段)を備えている。換言すると、ヒートポンプユニット300は、送風ダクト部252側から蒸発器302、凝縮器301を、各々のフィン303の間を循環空気が通風できる向きにして、順に並べた配置としている。蒸発器302、凝縮器301、膨張弁308はケース部261に収容されている。ケース部261は、ヒートポンプユニット300の外郭を構成する。
【0027】
ケース部261の側面は仕切板253で構成される。ケース部261の内部には通風経路が形成され、ケース部261に形成したダクト接続部254を介して送風ダクト部252と連通する。仕切板253は、通風経路の側面を形成している。
【0028】
そして、ケース部261の内部の通風経路内には、蒸発器302、凝縮器301を配置している。またフィン303と直交する伝熱管304のベント部305は、仕切板253から外部に突出している。すなわち、ベント部305は、通風経路の外に配置されている。蒸発器302には、ベント部305に接触するように配置されたヒータ306(加熱手段)が備えられている。
【0029】
ヒータ306は、蒸発器302の氷結を解氷させるために設けられている。また、ヒータ306は、ベント部305と同様、通風経路の外に配置されている。よって、乾燥工程時のヒートポンプユニット300内の通風経路への通風に対して、ヒータ306が通風抵抗となることもなく、さらに解氷時にヒータ306に通電した際に、伝熱管304に伝える熱の一部が、循環空気を直接温めてしまうこともないので、効率よく伝熱管304を加熱できる。
【0030】
また、ヒータ306は、乾燥時の循環空気が蒸発器302に流入した際にリントが付着しやすい箇所の伝熱管304のベント部305に接触固定させるのが好ましい。このような構成とすることにより、四方弁を切り替えて蒸発器全体を高圧にして加熱する方式に対して、リント除去に効果が得られる箇所の伝熱管304のみ、重点的に加熱できるので効率よく解氷ができ、その後の乾燥運転も遅滞なく実施できる。
【0031】
さらに、ヒータ306は通風経路外のベント部305に取り付けてあるため、乾燥工程中にヒータ306表面へのリントの堆積が起こりにくく、電極部(図示せず)でのショートカットの要因となることによる漏電の危険性も減らすことができる。また、ベント部305は直管部と異なり曲率をもった形状のため、蒸発器302の列方向に弧を描くような形状で配置した場合、同じく蒸発器302の列方向にヒータ306の軸を向けた配置とすれば、接触部を点接触よりもある程度有限の長さを有する接触にできるため、ヒータ306から伝熱管304への接触熱抵抗を減らすことができるので、効率よく熱を伝えることができる。
【0032】
次にドラム式洗濯乾燥機100内部の空気の流れについて説明する。
図4は、本発明の実施例1に係る蒸発器302の凍結運転時における空気の流れを示す模式図である。
図5は、本発明の実施例1に係る蒸発器302の解氷運転時における空気の流れを示す模式図である。
【0033】
ヒートポンプユニット300の通風経路には、蒸発器302を回避させて凝縮器301に連通するバイパス風路255が備えられている。バイパス風路255は、蒸発器302の上部に位置しており、蒸発器302のフィン303間を通過せずに凝縮器301へ通風する。さらにヒートポンプユニット300のバイパス風路255には、バイパス風路255を開閉し、バイパス風路255と蒸発器302に流入する通風経路とを切り替えるダンパー256(切替手段)が備えられている。
【0034】
蒸発器302を凍結させる凍結運転時は、循環空気が蒸発器302よりも通風抵抗の少ないバイパス風路255を通風可能なように、ダンパー256でバイパス風路255を開放する。ヒートポンプユニット300は膨張弁308の開度を絞った状態で運転する。圧縮機307の吸引に対して、蒸発器302には膨張弁308側から冷媒が供給されず低圧となり、さらに蒸発器302には通風されないため、蒸発器302の伝熱管304内の冷媒温度は急激に低下し、伝熱管304の表面温度が氷点下となった時点から、蒸発器302周囲の空気内の湿気が凍結し始める。散水と異なり雰囲気中の保有水蒸気が結露して氷結するため、リント外表面に加えて、リントと伝熱管304やフィン303との隙間にも結氷できる。また凝縮器301を出た温風は乾燥運転時と同様に、吹出ノズル203を介してドラム29内に吹き出されるため、外槽20から出て送風ダクト部252からヒートポンプユニット300へ戻るまでに、熱容量の大きい外槽20やドラム29に熱を奪われる。換言すれば外槽などに熱を蓄えていく。
【0035】
一方、凍結した蒸発器302を解氷させる解氷運転時は、圧縮機307を停止させて送風ファン2のみ駆動させる。このときダンパー256はバイパス風路255を閉鎖させる側に制御することで、循環空気を蒸発器302に通風させる。もし氷結量が多い場合やベント部305の周囲雰囲気から伝熱管304への熱供給が少ない場合は、ヒータ306に通電して加熱するのが好ましい。循環空気がドラム29や外槽20内を通過する際に、凍結運転時に蓄えた熱を奪い加温された状態で蒸発器302に流入するため、結氷外表面からも解氷が進む。よって伝熱管304やフィン303と接触する内表面側からの解氷と氷外表面からの解氷により、短時間で解氷できる。
【0036】
リントと伝熱管304やフィン303との隙間の結氷を解氷する際に、氷から水への体積変化に伴いリントの摺動が促され、リント繊維の内部までの解水の浸透が進み、リントは伝熱管304やフィン303表面から浮きやすくなりやがて剥離され、解氷水とともに流下される。
【0037】
また、凍結運転時に循環空気の湿度が所定値よりも低い場合は、乾燥運転時の循環空気の一部を排気する排気口257のフィルタ258や排気口257周辺に付着したリントを水で洗い流すための洗浄手段259を動作させて洗浄させる操作を連続させることで、循環空気の湿度を上げるのが好ましい。
【0038】
実施例1では、時短乾燥運転への対応から、乾燥運転時に循環空気の一部を排気口257から排気し、それと同量の周囲空気を蒸発器302と凝縮器301との間から吸気する構成となっているので、
図4に示す凍結運転時にはドラム29や外槽20を循環空気により温めておくために、ダンパー256によりバイパス風路255を開放させる際に、ダンパー256により吸気口260を塞ぐ構成としている。このような構成とすることにより、循環空気を周囲外気と入れ替えずに済むため、効率よくドラム29や外槽20へ熱を蓄えることができる。吸気口260とダンパー256の位置が離れている構成では、2つのダンパーもしくは吸気口260を個別に閉鎖させる手段を設けても、本来の機能には何ら差し支えない。
【0039】
次に、ドラム式洗濯乾燥機100の制御装置90の構成について説明する。
図6は、本発明に実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の制御装置の構成を示すブロック図である。
【0040】
図6に示すように、制御装置90は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と称する)110を備える。マイコン110は、使用者の操作(操作スイッチ12,13)や、洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号(温度センサT1,T2,T3,T4、電導度センサ4)を取得する。また、マイコン110は、駆動回路を介して、モータM10、給水電磁弁16、排水弁V1、循環ポンプ18、送風ファン2、圧縮機307、膨張弁308、ダンパー256に接続され、これらの開閉、回転、通電を制御する。また、マイコン110は、使用者にドラム式洗濯乾燥機100に関する情報を知らせるために、表示器14やブザー(図示せず)等を制御する。また、マイコン110は、運転パターンデータベース111、工程制御部112、回転速度算出部113、衣類重量算出部114、電導度測定部115、洗剤量・洗い時間決定部116、濁度判定部117、閾値記憶部118を備える。
【0041】
マイコン110は、電源スイッチ47が押されて電源が投入されると起動し、
図7に示すような洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。
【0042】
図7は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100における洗濯乾燥運転(洗い~乾燥)の動作を説明するフローチャートである。以下、ドラム式洗濯乾燥機における洗濯から乾燥までの工程について説明する。
【0043】
図7に示すように、ドラム式洗濯乾燥機100の制御装置90は、ステップS1において、運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム29内に洗濯する洗濯物30を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12,13を操作することにより、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12,13が操作されることにより、選択された運転工程のコースが制御装置90に入力される。制御装置90は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベース111から対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、蒸発器302の洗浄工程を含む標準コース(洗い~すすぎ2回~脱水~乾燥)が選択されたものとして説明する。
【0044】
ステップS2において、制御装置90は、ドラム29に投入された洗濯物30の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、工程制御部112が、モータM10を駆動してドラム29を回転させるとともに、衣類重量算出部114が注水前の洗濯物30の重量(布量)を算出する。
【0045】
ステップS3において、制御装置90は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する。電導度測定部115は、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、外槽20の下部(例えば、排水口37)に設けた温度センサT1で、給水された水の温度を検出する。洗剤量・洗い時間決定部116は、検出した布量、電導度測定部115において電導度センサ4からの検出値を用いて求めた水の電導度(硬度)、水の温度に基づいてマップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。そして、工程制御部112は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。
【0046】
ステップS4において、制御装置90は、所定時間待機して(洗剤投入待ち工程)、ステップS5に進む。使用者は、待機中に表示器14に表示された洗剤量を参考に、洗剤類投入部(図示せず)内に洗剤類を投入する。もし洗剤自動投入が設定されていれば、洗剤の投入動作は省ける。
【0047】
洗い工程は、洗剤溶かし工程(ステップS5)、前洗い工程(ステップS6)、本洗い工程(ステップS7)に大別される。さらに、本洗い工程は、第1本洗い工程(本洗い1工程)とそれにつづく第2本洗い工程(本洗い2工程)に分けられるが、運転経過に対して各々の工程に明確に区別されていなくても機能上はなんら差し支えない。また、後述する工程中の動作の一部を省略しても洗濯工程全体としての機能に変わりはない。
【0048】
ステップS5において、制御装置90は、洗剤溶かし工程を実行する。給水電磁弁16の所定の電磁弁が開かれ、給水される。給水は洗剤投入口に導かれたのち、外槽20に投入される。外槽20に投入された洗剤液は、給水経路(図示せず)を通って、ドラム29の底部に位置する水受け部54(
図2、
図4参照)に供給される。洗剤液が投入された後、循環ポンプ18(
図2、
図3参照)を駆動すると、水受け部54の水は、排水口37から糸屑フィルタ222を介して循環ポンプ18の吸込口(図示せず)に入る。循環ポンプ18で昇圧された洗濯水は、循環ポンプ18の出口と連通する散水ノズル(
図3参照)から再び水受け部54に戻される(洗剤溶かし工程の循環経路)。
【0049】
制御装置90は、この時点で水受け部54内にある電導度センサ4(判別手段)において、電導度を検出し、高濃度洗剤水溶液のときの電導度データベースと柔軟剤水溶液のときの電導度データベースとの照合を行う。
【0050】
循環を繰り返すことで、少ない水で洗剤を溶かした均一な高濃度洗剤液を生成する。高濃度洗剤液は衣類に散布される。このときドラム29を回転させて、洗濯物30を攪拌させながら循環ポンプ18にて満遍なく散布する。
【0051】
ステップS6において、制御装置90は、前洗い工程を実行する。この工程では、通常、外槽20内には洗剤液のしみこんだ洗濯物30と、外槽20の底部の水受け部54に少量の洗剤液が存在する。ドラム29を回転させることで、洗濯物30をドラム29の上部に持ち上げた後、重力により底部まで落下させるタンブリング動作に基づくたたき洗いを行う。これにより、洗濯物30に浸み込んだ洗剤液が搾り出てくるので、必要に応じて間欠的に循環ポンプ18を駆動させて、再び洗濯物30に洗剤液を散布する。この動作中においても、洗濯水と洗濯物の洗浄温度を上げると、洗浄性能を向上できるので、必要に応じて送風ファン2からの気流を、ヒートポンプユニット300にて温めた後に吹き付ける。洗浄温度レベルを上げることで、洗濯物30への高濃度洗剤液の浸透を促進させることもできる。送風ファン2からの気流の吹出ノズル203は
図3に示すように、散水ノズル223や給水口271とは外槽20の円周上において対向する位置に設けているため、高濃度洗剤液の散布と浸み込みを促進させるための温風の干渉を防ぐことで、効率よく洗浄できる。洗濯物30は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗濯物30の繊維隙間を空気が占めるよりも熱伝導は良く、効率よく加熱できる。これにより繊維から、より多くの汚れを短時間で分離できる。分離できた汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。
【0052】
また、循環ポンプ18よりも小流量の循環ポンプ(図示せず)を別に設置してもよい。この場合、水受け部54から汲み上げて送風機出口近傍にて温風内に散布することで、温風に液滴を混ぜて、洗濯物30に散布させてもよい。洗濯工程の途中で、通常の循環量レベルを確保できるまで追加給水して、循環ポンプ18にて散布させると、洗濯物30の温度は急激に低下する。そこで、前記のような構成にして、より少量の循環水を温風にのせて散布させれば、洗濯物30に含まれる水を満遍なく且つ僅かずつ入れ替えることができる。このため、洗濯物30の急激な温度低下も抑えることができるので、より洗浄性能を向上させることができる。
【0053】
ヒートポンプユニット300の駆動において、蒸発器302の洗浄工程を重ねることもできる。この場合、バイパス風路255を解放する側にダンパー256を切り替えて、凝縮器301を通過した循環空気は温風となるので、吹出ノズル203からドラム29内に吹き出した際に洗濯物30を温めることができる。前洗い工程にてドラム内雰囲気が温まっているので、本洗い工程(後述)に入る前に圧縮機307を止めて送風のみとする解氷運転を実施するのが好ましい。
【0054】
ステップS7において、制御装置90は、本洗い工程を実行する。本洗い工程では、前洗い工程が終了した時点で追加給水して、水受け部54の水量を増やして、水位を上げる。この水位は、循環ポンプ18により水受け部54から洗濯水をくみ上げて、外槽20の上部の散水ノズル223から連続して散布するのに十分な水位を保つものとする。
【0055】
散水ノズル223からの散布は、連続であっても間欠であってもよい。具体的には、洗濯物30の裏側などに多くの汚れがまだ付着している間は、連続で散布して洗濯水の攪拌を促進する。これにより、洗濯物30が保水する洗濯水を、常に汚れ濃度の低い洗濯水に入れ替えることができる。その後、汚れがほとんど落ちた後は、たたき洗いの機械力を主として、残りの汚れを落とすほうが洗浄効率がよい。よって、後半の散布は、機械力を妨げないように間欠散布とするのが好ましい。また、循環ポンプ18の駆動力を間欠とすることで、消費電力量を抑えられるので、省エネルギーの面からも好ましい。
【0056】
なお、散水ノズル223は、外槽20に、ドラム式洗濯乾燥機100の正面からみて回転可能なドラム29の中心軸よりも上側、且つ、ドラム式洗濯乾燥機100側面からみて、正面寄りの前側に位置している。これにより、散水ノズル223からの噴出範囲を、ドラム29の半径方向に対して広角にして散布する構造としている。この第1本洗い工程では、広範囲の散布とともに、ドラム29の回転によってドラム29の下方に溜まった洗濯物30を持ち上げて、ドラム29内の上方から落下させることにより、洗濯物30に機械的な力を与えてたたき洗いをする。ドラム径が大きいほど、広範囲の散布とたたき洗いの相乗効果が得られ、本洗い工程の時間を短縮できる。
【0057】
また必要に応じて制御装置90は第2本洗い工程を実行する。前述の本洗い工程(第1本洗い工程)の終了時に給水することで、第2本洗い工程の水量を、第1本洗い工程の水量よりも多くする。また、第2本洗い工程の循環ポンプ18の循環流量は、第1本洗い工程での循環ポンプ18の循環流量よりも多くする。さらに、第2本洗い工程においてドラム29のモータM10の回転速度は、第1本洗い工程におけるモータM10の回転速度よりも低くする。第1本洗い工程と第2本洗い工程の組み合わせは、洗濯物30の黒ずみ、ごわつきを抑制させる運転アルゴリズムとしている。
【0058】
第1本洗い工程もしくは第2本洗い工程の一部もしくは全行程においては、循環ポンプ18にてくみ上げた洗濯水を散水ノズル223から散水しつつ、ドラム29を洗濯物30がタンブリング動作に至らずドラム29の側内壁に張り付いた状態にて回転させる洗い動作としてもよい。このような動作により、洗濯物30に含まれる洗濯水は遠心力にて押し出されるとともに、散水ノズル223からの散水で常に振りかけられて供給されるような洗濯水の繊維内流動による洗いとすれば、洗濯物30同士の擦れ合いによるリントの発生を抑えることができ、乾燥工程における循環空気に伴うリントの循環量を減らせることができ、蒸発器の洗浄工程を軽減できる。
【0059】
以上のようにドラム式洗濯乾燥機の場合、ドラム29の回転に伴って、リフター33により洗濯物30をドラム上部に持ち上げた後、重力によりドラム底部に落とすたたき洗いが主流となる。オーバーフローホース17が外槽の前部に接続されているため、場合によってはオーバーフローホース17の位置まで洗濯水は流入してくる。また洗濯工程中に、過去の洗濯乾燥により内装フィルタに付着したリントを洗い流すために、送風ダクト部252に設けた注水具(図示せず)より送風ダクト部252内に注水する場合もある。
【0060】
ステップS8において、制御装置90は、第1すすぎ工程(すすぎ1工程)を実行する。この工程では、排水弁V1を開けて、洗濯水を排出した後、排水弁V1を閉じて、外槽20内に所定の水位まですすぎ水を供給する。その後、ドラム29を回転させて、洗濯物30とすすぎ水を攪拌してすすぐ。
【0061】
ステップS9において、制御装置90は、第2すすぎ工程(すすぎ2工程)を実行する。第2すすぎ工程では、第1すすぎ工程と同様にして、排水弁V1を開けて、すすぎ水を排出した後、排水弁V1を閉じて、外槽20内に所定の水位まですすぎ水を供給する。その後、ドラム29を回転させて、洗濯物30とすすぎ水を攪拌してすすぐ。
【0062】
第1すすぎ工程もしくは第2すすぎ工程の一部もしくは全行程においては、循環ポンプ18にてくみ上げたすすぎ水を散水ノズル223から散水しつつ、ドラム29を洗濯物30がタンブリング動作に至らずにドラム29の内壁に張り付いた状態にて回転させるすすぎ動作としてもよい。このような動作により、洗濯物30に含まれるすすぎ水は遠心力にて押し出されるとともに、散水ノズル223からの散水で常に振りかけられて供給されるすすぎとすれば、洗濯物30同士の擦れ合いによるリントの発生を抑えることができ、乾燥工程における循環空気に伴うリントの循環量を減らせることができ、蒸発器の洗浄工程を軽減できる。
【0063】
ステップS10において、制御装置90は、脱水工程を実行する。この工程では、排水弁V1を開いて外槽20内のすすぎ水を排水した後、ドラム29を回転させて洗濯物30を遠心脱水する。脱水の回転速度は、洗濯物30のバランスがとれずにモータM10の電流値が上限を超えるなどの不具合がない限り、負荷に応じた設定回転速度まで上昇させる。脱水の回転速度を上げて、ドラム29が高速回転すると、外槽20にも振動が伝わり、外槽20自身も僅かながら振動する。また、ドラム29の高速回転に伴って、振動がドア9側にも伝わることをベローズ10にて吸収できる。送風機も、各々ベローズにより外槽20の吹出口と接続されているため、振動を吸収できる。
【0064】
またこの脱水工程内において、蒸発器302の洗浄工程を重ねることもできる。この場合、バイパス風路255を解放する側にダンパー256を切り替えて、凝縮器301を通過した循環空気は温風となるので、吹出ノズル203からドラム29内に温風を吹き出した際に洗濯物30を温めることができる。前洗い工程にてドラム内雰囲気が温まっているので、乾燥工程(後述)に入る前に圧縮機307を止めて送風のみとする解氷運転を実施するのが好ましい。また蒸発器302の洗浄工程を脱水工程内で行うことにより、圧縮機307のいわゆる暖気運転を兼ねることができるので、乾燥工程における温風の立ち上げを促進することができる。
【0065】
ステップS11において、制御装置90は、乾燥工程を実行する。乾燥工程では、まず送風ファン2を駆動し、続いてヒートポンプユニット300内の圧縮機307を駆動させる。膨張弁308は一度全開状態として原点調整をした後、圧縮機307の吸込配管に設けたサーミスタ(図示せず)が低温とならないように、開度が調整される。圧縮機307の回転数は、吐出配管に設けたサーミスタ(図示せず)と送風ファン出口に設けた温風サーミスタとの差が所定の温度以上となるように調整される。このようにヒートポンプユニット300で高温となった空気を送風ファン2により昇圧した後、ドラム29内へ吹出ノズル203を通して送風して、洗濯物30と熱交換させるとともに洗濯物30から水分を蒸発させる。洗濯物30から蒸発した水分を含む循環空気は、外槽20の出口の送風ダクト部252部を介してヒートポンプユニット300へ戻される。
【0066】
ヒートポンプユニット300では、風上側に配置された蒸発器302により、循環空気は冷却され露点温度以下となり、除湿される。続けて凝縮器301において昇温されて、低湿な温風とされる。
【0067】
また乾燥終盤において、洗濯物30の乾燥が進行するに従い循環空気の湿度が低下してくる。この場合蒸発器302では、ドラム29から戻ってくる循環空気が比較的低湿度のため循環空気の顕熱を汲み上げて、下流側の凝縮器301において、再び循環空気に戻す(再加熱する)動作となる。そこでバイパス風路255側を循環空気の一部が流れるように、ダンパー256の開度を調節して蒸発器302に流入する戻り空気量を減らす。冷媒循環量を保持し、蒸発器302における吸熱量が確保できていれば、風量を減らすことで、蒸発器302を通過する循環空気温度はより低温にできるため、露点温度まで下げて除湿することができる。凝縮器301入口側において、バイパス風路255側を通過してきた残りの循環空気と蒸発器302を通過した空気とを合流させるため、凝縮器301入口側では循環空気温度と風量を回復させることができるため、凝縮器301での熱交換量が確保でき、温風も確保できる。もし洗濯物30の温度を高温としたい場合や、乾燥時間を短くしたい場合には、以上の制御を組み入れるのが良い。以上のように、低湿度の循環空気でも蒸発器302での除湿量を確保できることで、くみ上げる熱量も保持できて凝縮器301での空気加熱量も堅持できる。
【0068】
乾燥判定は、乾燥開始時もしくはある運転開始からの規定時間において外槽の送風ダクト部252に設けた温度センサT1(図示せず)によって外槽20の排気温度T1aと送風ファン2の出口側に設けた温度センサT4によって温風温度T4aを測定する(初期温度の設定)。その後、負荷に見合った規定時間経過後に終了判定のための外槽20の排気温度T1bと温風温度T4bを測定し、各々初期温度と終了判定温度との差を求める(ΔT1=T1a-T1b、ΔT4=T4a-T4b)。さらにそれらの温度差(ΔT1-ΔT4)が規定温度以上であるかどうかを確認して乾燥終了を判定する。
【0069】
乾燥工程の終了時には蒸発器302の洗浄工程を実施する。洗浄工程は、乾燥の終盤において洗濯物30の温度を上げて除菌する工程が設定されていれば、洗浄工程においても温風を生成させるため、その工程とオーバーラップさせても良い。また洗浄工程は予め蒸発器302表面を凍結できる時間を見定めて置き、一定時間の行程としても良いし、もし蒸発器302に設けてあるサーミスタ(図示せず)が氷点下も測定可能なものであれば、サーミスタの温度が所定の温度に達したことを確認して凍結運転を終了させてもよい。
【0070】
引き続きダンパー256を切り替えて解氷運転を実施する。乾燥からの連続した工程のため、圧縮機307の排熱も十分に確保できているので、必要な場合のみヒータ306へ通電して解氷運転を実施する。解氷運転の時間に対しても予め蒸発器302表面を解氷できる時間を見定めて置き、一定時間の行程としても良いし、もし蒸発器302に設けてあるサーミスタ(図示せず)が氷点下も測定可能なものであれば、サーミスタの温度が所定の温度に達したことを確認して解氷運転を終了させてもよい。
【0071】
蒸発器302の洗浄工程は、乾燥工程とは別に実施できる設定でもよく、例えば洗濯コースのみ運転後に選択できるなど、リント付着具合を反映しての実施が選択できるのが好ましい。
【0072】
なお、コース選択(ステップS1)において乾燥工程が設定されていない場合は、ステップS10において運転を終了する。
【0073】
実施例1によれば、以下のような効果が期待できる。
(1)実施例1では、乾燥に用いるヒートポンプの基本構成要素を増やすことなく、結氷時にくみ上げた熱を外槽に蓄えて置き、解氷時に循環空気で回収させるようにしているので、効率よく解氷熱に利用でき、消費電力を抑えることができる。
(2)実施例1では、解氷時にフィンから伝熱管に温風の熱を伝えることができるので、伝熱管の表面側からも解氷でき、リントを伝熱管表面から剥離させることができる。また、温風が直接当たる霜の外表面側からの解氷と合わせて伝熱管の表面側からも解氷しているので、解氷時間も短縮でき、効率よく洗浄できる。
(3)実施例1では、通風経路に蒸発器302を回避させて凝縮器301に通風させるバイパス風路255を設けるようにしているので、乾燥工程途中においても、蒸発器302への結氷とその後の解氷運転が可能であり、伝熱性能を低下させることなく乾燥を行うことができる。
(4)実施例1では、蒸発器302に風が流れるのを回避するバイパス風路255を備え、このバイパス風路255を開閉するダンパー256を備えるようにしているので、蒸発器302を洗浄するために蒸発器302に流れる冷媒を切り替える四方弁が不要となり、ドラム式洗濯乾燥機の大型化を抑制できる。
実施例2では、ケース部261の一部を構成する仕切板253の外側に、側面部風路264が形成されている。側面部風路264には、ベント部305が露出している。また、ケース部261には圧縮機307を収容する圧縮機ケース265と、連通ファン263を収容する連通ファンケース266が隣接して備えらえている。圧縮機ケース265の内部空間、および連通ファンケース266の内部空間は、側面部風路264と連通している。
圧縮機ケース265には、外部と連通するスリット262(流入開口)が形成されている。同様に連通ファンケース266には、外部と連通する通風口(図示せず)が形成されている。
凍結した蒸発器302を解氷させる解氷運転時は、循環空気が蒸発器302に流入するように、ダンパー256でバイパス風路255を閉鎖すると共に、連通ファン263を動作させる。解氷運転時に連通ファン263を動作させると、圧縮機ケース265のスリット262から外気(空気)が取り込まれ、取り込まれた外気は圧縮機307の放熱により加温される。加温された外気は側面部風路264を流れ、側面部風路264に露出したベント部305と接触し、ベント部305に熱を与える。ベント部305に熱を与えた外気は連通ファンケース266に流入し、連通ファン263によって通風口から外部に排気される。
実施例2によれば、実施例1の効果に加え、比較的簡易的な構成で、蒸発器302への加熱に圧縮機307の放熱を利用することができ、消費電力を削減することができる。