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特開2024-3309シート搬送用のローラ対および印刷装置
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  • 特開-シート搬送用のローラ対および印刷装置 図1
  • 特開-シート搬送用のローラ対および印刷装置 図2
  • 特開-シート搬送用のローラ対および印刷装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003309
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】シート搬送用のローラ対および印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240105BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20240105BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B65H5/06 A
B41J11/02
F16C13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102352
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】川田 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 耕一
(72)【発明者】
【氏名】網野 正浩
【テーマコード(参考)】
2C058
3F049
3J103
【Fターム(参考)】
2C058AB07
2C058AB18
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF15
2C058AF31
3F049AA10
3F049CA11
3F049CA12
3F049CA17
3F049DA12
3F049LA07
3F049LB03
3J103AA02
3J103BA41
3J103FA07
3J103FA09
3J103GA02
3J103GA33
3J103GA54
3J103GA58
3J103HA04
3J103HA14
3J103HA19
3J103HA45
3J103HA46
3J103HA60
(57)【要約】
【課題】印刷物の汚染を抑制し、かつローラの摩耗を抑制することができるシート搬送用のローラ対および印刷装置を提供する。
【解決手段】粒子が表面に付着したローラまたはローレット加工されたローラからなる第1のローラ10と、第1のローラ10に対向して設けられ、第1のローラ10とともにシート部材を挟持する、編み物または織物によって被覆された第2のローラ20とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が表面に付着したローラまたはローレット加工されたローラからなる第1のローラと、
前記第1のローラに対向して設けられ、前記第1のローラとともにシート部材を挟持する、編み物または織物によって被覆された第2のローラとを備えたシート搬送用のローラ対。
【請求項2】
前記編み物または織物をなす糸の材質が、ポリアミド、ポリエステルまたはナイロンであって、前記糸の径が、0.1mm以上0.3mm以下である請求項1記載のシート搬送用のローラ対。
【請求項3】
前記第2のローラに被覆された織物をなす糸の延伸方向または前記第2のローラに被覆された編み物の編み目の配列方向が、前記第2のローラの回転軸に対して傾斜している請求項1記載のシート搬送用のローラ対。
【請求項4】
前記第1のローラが駆動ローラであって、前記第2のローラが従動ローラである請求項1記載のシート搬送用のローラ対。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載のシート搬送用のローラ対を備えた印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙などのシート部材を搬送するシート搬送用のローラ対および印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷用紙などのシート部材を搬送する機構として、搬送ローラ対が用いられている。搬送ローラ対としてはゴムローラなどが用いられるが、ゴムローラからなる搬送ローラ対を、たとえば両面印刷を行う印刷装置に用いた場合、片面印刷済みのシート部材を搬送した際、シート部材の表面のインクなどがゴムローラに転写し易く、印刷物を汚してしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5524434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、搬送ローラ対として、酸化アルミニウムや人造ダイヤモンドなどの硬度が高い粒子を表面に付着させたローラを用いることが考えられる。このようなローラを搬送ローラ対として用いることによって、ローラとシート部材とが点接触になり、接触面積を減らすことができるのでローラへの色材の転写を抑制することができ、印刷物の汚染を抑制することができる。
【0005】
しかしながら、複数枚のシート部材を所定の紙間で搬送して印刷を行う場合には、紙間において、搬送ローラ対の2つのローラ(たとえば駆動ローラと従動ローラ)が直接接触するため、お互い表面に接着された粒子によって傷付け合い摩耗する問題がある。たとえば一方のローラの粒子の硬度を下げたとしても、その硬度を下げた側のローラが急速に摩耗する。
【0006】
また、酸化アルミニウムや人造ダイヤモンドは研磨材に使われる素材と同一なため、摩耗によって割れて脱落したものは、軸受けやインクジェットヘッドなど精密基材を傷つけて故障の一因となる。
【0007】
また、上述したような粒子を表面に付着させたローラは、印刷を重ねることによって、粒子間の谷部に紙粉とインクが堆積し、点接触の構造が失われて印刷物を汚染する問題がある。
【0008】
なお、特許文献1には、編み物によって被覆されたローラが提案されているが、上述したような印刷物の汚染やローラの摩耗を抑制するようなローラ対の構成については何も提案されていない。
【0009】
本発明は、印刷物の汚染を抑制し、かつローラの摩耗を抑制することができるシート搬送用のローラ対および印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシート搬送用のローラ対は、粒子が表面に付着したローラまたはローレット加工されたローラからなる第1のローラと、第1のローラに対向して設けられ、第1のローラとともにシート部材を挟持する、編み物または織物によって被覆された第2のローラとを備える。
【0011】
本発明の印刷装置は、上記本発明のシート搬送用のローラ対を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート搬送用のローラ対および印刷装置によれば、粒子が表面に付着したローラまたはローレット加工されたローラからなる第1のローラと、編み物または織物によって被覆された第2のローラとを備えるようにしたので、第1のローラおよび第2のローラともにシート部材に対して点接触とすることができるので、印刷物の汚染を抑制することができる。さらに、第2のローラは、編み物または織物によって被覆されているので、2つのローラの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のシート搬送用のローラ対の一実施形態を用いた搬送ローラ対の概略構成を示す図
図2】本発明のシート搬送用のローラ対のその他の形態を用いた搬送ローラ対の概略構成を示す図
図3図1または図2に示す搬送ローラ対を備えたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明のシート搬送用のローラ対の一実施形態を用いた搬送ローラ対について詳細に説明する。図1は、本実施形態の搬送ローラ対1の概略構成を示す斜視図である。
【0015】
本実施形態の搬送ローラ対1は、図1に示すように、第1のローラ10と、第2のローラ20とを備えている。第1のローラ10と第2のローラ20は対向して設けられ、第1のローラ10と第2のローラ20は、その間に印刷用紙などのシート部材を挟持して搬送可能な間隔で設置される。
【0016】
第1のローラ10は、粒子が表面に付着したローラである。具体的には、第1のローラ10は、ローラの表面に、酸化アルミニウムなどのセラミック粒子やダイヤモンド粒子などの粒子を接着したローラである。このようにローラの表面に粒子を接着することによって、シート部材との接触を点接触にすることができ、接触面積を減らすことができる。したがって、印刷済みのシート部材の色材が、第1のローラ10の表面へ付着するのを抑制することができる。
【0017】
なお、本実施形態においては、第1のローラ10として、上述したように表面に粒子が付着したローラを用いるようにしたが、これに限らず、たとえば綾目ローレットローラや平目ローレットローラのようなローレット加工されたローラを用いるようにしてもよい。ローレット加工には、転造式と切削式があるがどちらの方式でもよい。
【0018】
第2のローラ20は、編み物または織物によって被覆されたローラである。編み物とは、糸を編んで作った布地であり、織物とは、糸を縦横に組み合わせて作った布地である。編み物としては、横編や丸編のような緯編(よこあみ)でも良いし、トリコット編、ダブルラッセル編およびシングルラッセル編のような経編(たてあみ)でも良い。第2のローラ20は、上述したような編み物または織物を表面全体に被覆したローラである。
【0019】
本実施形態の搬送ローラ対1によれば、上述したように粒子が表面に付着した第1のローラ10と編み物または織物によって被覆された第2のローラ20から構成するようにしたので、第1のローラ10および第2のローラ20ともにシート部材に対して点接触とすることができるので、印刷物の汚染を抑制することができる。さらに、第2のローラ20は、編み物または織物によって被覆されているので第1のローラと互いに傷つけ合うことが起こりにくく、2つのローラの摩耗を抑制することができる。
【0020】
また、上述したように粒子を表面に付着させたローラは、粒子間の谷部に紙粉とインクが堆積し、点接触の構造が失われて印刷物の汚染を生じる可能性があるが、上記実施形態の搬送ローラ対1によれば、第1のローラ10に対向するローラとして、編み物または織物を被覆した第2のローラ20を設けるようにしたので、編み物または織物の凸部が、第1のローラ10の表面をブラシの様になぞるので、紙粉とインクを堆積させないようにすることができる。なお、編み物または織物は突起の頂点と底の深さがあるため、または柔軟に動くため紙粉とインクの堆積が生じにくい。
【0021】
また、第2のローラ20を被覆する編み物または織物をなす糸の材質としては、ポリアミド、ポリエステルまたはナイロンであることが好ましい。また、糸の径は、0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましい。糸の径を0.1mm以上とすることによって、糸の切断を抑制することができる。たとえば糸の径が0.17mmの場合には、厚さ0.22mmのA4サイズの印刷用紙を搬送した場合、200万頁を超える耐久性を有した。また、糸の径を0.3mm以下とすることによって、印刷済みのシート部材の色材の糸への付着を抑制することができる。
【0022】
また、図1では、織物を表面に被覆した第2のローラ20を示しており、第2のローラ20の回転軸21に対して織物の糸の延伸方向が平行または直交する例について示しているが、これに限らず、図2に示すように、第2のローラ20の回転軸21に対して、織物をなす糸の延伸方向が傾斜していることが好ましい。また、第2のローラ20の表面に編み物を被覆した場合には、編み物の編み目の配列方向が、第2のローラ20の回転軸21に対して傾斜していることが好ましい。
【0023】
ここで、たとえば第2のローラ20の織物の糸の延伸方向が、第2のローラ20の回転軸21に対して平行である場合、第2のローラ20によってシート部材が搬送される際、回転軸21の方向に延びる糸が同時にシート部材に接触するため、その接触音が大きくなってしまう。また、第2のローラ20の編み物の編み目の延伸方向が、第2のローラ20の回転軸21に対して平行である場合も同様に、第2のローラ20によってシート部材が搬送される際、回転軸21の方向に配列された複数の編み目が同時にシート部材に接触するため、その接触音が大きくなってしまう。
【0024】
そこで、上述したように第2のローラ20の回転軸21に対して、織物をなす糸の延伸方向を傾斜させることによって、糸が同時にシート部材に接触することがなくなり、シート部材に順次接触することになるので、音の発生を抑制することができる。また、糸がシート部材に衝突する振動を軽減することができる。また、第2のローラ20の回転軸21に対して、第2のローラ20の編み物の編み目の配列方向を傾斜させることによって、上記と同様の効果を得ることができる。
【0025】
また、第2のローラ20において、織物または編み物を第2のローラ20の本体に固定する方法としては、たとえば第2のローラ20の本体の両端のフランジによって織物または編み物を保持するようにしてもよい。または、接着剤などを用いて、第2のローラ20の本体の表面に対して織物または編み物を接着するようにしてもよい。
【0026】
第2のローラ20の本体の両端のフランジによって織物または編み物を保持するようにした場合には、編み目がある程度動くので、第1のローラ10の表面に蓄積した汚れの除去能力を向上させることができる。
【0027】
また、第2のローラ20の本体の表面に対して織物または編み物を接着するようにした場合には、織物または編み物が引っ張られて伝線が発生するのを防止することができ、耐久性を向上することができる。
【0028】
また、本実施形態の搬送ローラ対1においては、第1のローラ10を駆動モータ(図示省略)によって駆動される駆動ローラとし、第2のローラ20を第1のローラ10の回転に伴って回転する従動ローラとすることが好ましい。粒子を付着した第1のローラ10を駆動ローラとすることによって、高い搬送力(グリップ力)を加えることができる。また、第2のローラ20を従動ローラとすることによって、紙間において第1のローラ10と第2のローラ20とが直接接触したとしても、第2のローラ20の編み物または織物は柔軟に動くため、駆動側の第1のローラ10を傷めることがない。
【0029】
次に、上記実施形態の搬送ローラ対1を備えたインクジェット印刷装置2について説明する。図3は、インクジェット印刷装置2の概略構成を示す図である。
【0030】
本実施形態のインクジェット印刷装置2は、給紙ローラ30と、レジストローラ31と、4つのラインヘッド32と、搬送ベルト33と、循環搬送路CRと、第1~第5循環搬送ローラ34~38と、排紙ローラ39と、第1反転搬送ローラ40と、反転ローラ41と、第2反転搬送ローラ42とを備えている。
【0031】
インクジェット印刷装置2においては、図示省略した給紙台から最上位置のシート部材Pが給紙ローラ30によって繰り出され、レジストローラ31まで搬送される。
【0032】
給紙ローラ30から搬送されたシート部材Pの先端がレジストローラ31に当接してシート部材Pを一旦停止させることによって弛みが形成され、これにより斜行補正が行われる。
【0033】
そして、レジストローラ31は、所定のタイミングで回転を開始し、シート部材Pを搬送ベルト33に向けて搬送する。
【0034】
搬送ベルト33に到達したシート部材Pは、搬送ベルト33に吸着してラインヘッド32の下を搬送される。そして、各ラインヘッド32からシート部材Pに対してインクが吐出され、これによりシート部材Pの表面に対して印刷処理が施される。各ラインヘッド32は、インクジェットヘッドをシート部材Pの搬送方向に直交する方向に複数配列したものであり、搬送ベルト33によって搬送されるシート部材Pに対してインクを吐出するものである。4つのラインヘッド32は、図5に示すように、シート部材Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。4つのラインヘッド32は、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(ブラック)のインクを吐出する。
【0035】
4つのラインヘッド32によって印刷処理が施されたシート部材Pは、循環搬送路CR上に配置された第1~第5循環搬送ローラ34~38によって循環搬送路CR上を搬送される。
【0036】
そして、第5循環搬送ローラ38の先には、シート部材Pを排紙ローラ39側へ案内するか、または第1反転搬送ローラ40側へ案内するかを切り替える切り替え機構43が設けられている。
【0037】
片面印刷を行う際には、片面印刷済みのシート部材Pが切り替え機構43によって排紙ローラ39側へ案内され、排紙台44に排紙される。一方、両面印刷を行う際には、片面印刷済みのシート部材Pが切り替え機構43によって第1反転搬送ローラ40側へ案内される。
【0038】
切り替え機構43によって第1反転搬送ローラ40に案内されたシート部材Pは、第1反転搬送ローラ40によって反転ローラ41に向けて搬送される。
【0039】
反転ローラ41は、シート部材Pを反転台45に向けて搬送し、反転台45から再び戻すことによって、表裏が反転した状態でシート部材Pを第2反転搬送ローラ42に向けて搬送する。
【0040】
そして、表裏が反転されたシート部材Pは、第2反転搬送ローラ42によって再びレジストローラ31まで搬送され、レジストローラ31によって所定のタイミングで再びラインヘッド32に向けて搬送される。そして、ラインヘッドによってシート部材Pの裏面に印刷処理が施される。
【0041】
裏面に印刷処理が施されたシート部材Pは、第1~第5循環搬送ローラ34~38によって搬送され、切り替え機構43を経由して排紙ローラ39によって排紙台44まで搬送される。
【0042】
本実施形態では、第1~第5循環搬送ローラ34~38、排紙ローラ39、第1反転搬送ローラ40、反転ローラ41、第2反転搬送ローラ42など、印刷処理済みのシート部材Pを搬送するローラ対として、上記実施形態の搬送ローラ対1を用いられる。これにより、これらのローラ対における汚れの蓄積を抑制することができ、印刷物の汚染を抑制することができる。
【0043】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0044】
本発明のシート搬送用のローラ対において、編み物または織物をなす糸の材質は、ポリアミド、ポリエステルまたはナイロンであって、糸の径は、0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
【0045】
本発明のシート搬送用のローラ対において、第2のローラに被覆された織物をなす糸の延伸方向または第2のローラに被覆された編み物の編み目の配列方向は、第2のローラの回転軸に対して傾斜していることが好ましい。
【0046】
本発明のシート搬送用のローラ対において、第1のローラは駆動ローラであって、第2のローラは従動ローラであることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 搬送ローラ対
2 インクジェット印刷装置
10 第1のローラ
20 第2のローラ
21 回転軸
30 給紙ローラ
31 レジストローラ
32 ラインヘッド
33 搬送ベルト
39 排紙ローラ
40 第1反転搬送ローラ
42 第2反転搬送ローラ
41 反転ローラ
43 切り替え機構
44 排紙台
45 反転台
CR 循環搬送路
P シート部材
図1
図2
図3