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特開2024-331ガスケット付きフレキシブルプリント配線板及びガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000331
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ガスケット付きフレキシブルプリント配線板及びガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/00 20060101AFI20231225BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231225BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H05K7/00 M
B29C45/14
H05K1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099062
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】井上 英一
【テーマコード(参考)】
4E352
4F206
5E338
【Fターム(参考)】
4E352AA07
4E352BB02
4E352BB10
4E352CC04
4E352CC32
4E352CC33
4E352CC34
4E352CC42
4E352CC52
4E352CC56
4E352DD04
4E352DD05
4E352DD11
4E352DR09
4E352DR13
4E352DR40
4E352DR43
4E352EE03
4E352GG11
4E352GG16
4E352GG27
4F206AD19
4F206AD24
4F206AG03
4F206AH36
4F206AR13
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JN11
4F206JN25
5E338AA12
5E338BB02
5E338BB13
5E338BB17
5E338BB71
5E338EE32
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】成形不良の抑制を図ることができるガスケット付きフレキシブルプリント配線板及びガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】FPC100の短手方向である幅方向において、ガスケット200の一方の端にゲート跡が設けられ、FPC100には、ガスケット200によって埋設される領域内において、前記幅方向における他方の端側に片寄った位置に、インサート成形の際におけるガスケット200の材料の流動の仕方を制御するための貫通孔120が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント配線板と、
前記フレキシブルプリント配線板をインサート部品としてインサート成形されることで、前記フレキシブルプリント配線板に一体的に設けられるガスケットと、
を備えるガスケット付きフレキシブルプリント配線板であって、
前記フレキシブルプリント配線板の短手方向である幅方向において、前記ガスケットの一方の端にゲート跡が設けられ、
前記フレキシブルプリント配線板には、前記ガスケットによって埋設される領域内において、前記幅方向における他方の端側に片寄った位置に、前記インサート成形の際における前記ガスケットの材料の流動の仕方を制御するための貫通孔が設けられていることを特徴とするガスケット付きフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記ガスケットには前記フレキシブルプリント配線板を囲むように環状のシール突起が設けられており、
前記フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直に透視した場合に、前記貫通孔は、前記シール突起の短手方向の両側にはみ出すように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット付きフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント配線板には複数の配線が設けられており、前記貫通孔は前記配線と重ならず、かつ前記配線が伸びる方向に長い長孔により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット付きフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
貫通孔を有するフレキシブルプリント配線板を製作する工程と、
フレキシブルプリント配線板を配置する配置部と、前記配置部の両側にそれぞれ設けられるゲート及びベントと、を有する金型の前記配置部に対して、前記貫通孔が前記ゲートよりも前記ベントに近い位置に配されるように前記フレキシブルプリント配線板を配置する工程と、
前記金型を型締めした後に前記ゲートから材料を前記金型のキャビティに注入して前記フレキシブルプリント配線板に対してガスケットを一体的に成形する工程と、
を有することを特徴とするガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット付きフレキシブルプリント配線板及びガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と称する)と、FPCに一体的に設けられるガスケットとを備えるガスケット付きFPCが知られている。このようなガスケット付きFPCは、FPCをインサート部品として、インサート成形によりガスケットを成形することにより得ることができる。図8を参照して、従来技術に係るガスケット付きFPCの製法について説明する。図8は従来技術に係るインサート成形の説明図である。インサート成形用の金型50は、上型510と下型520とを備えている。上型510と下型520にそれぞれ形成された彫り込み部511,521によりキャビティCが設けられる。また、金型50には、FPC600を配置するための配置部が設けられている。この配置部に配置されたFPC600は、キャビティCを貫くように配される。また、上型510には、下型520に対向するように、かつ配置部の両側にそれぞれゲート512とベント513が設けられている。
【0003】
以上のように構成される金型50の配置部にFPC600を配置させた後に型締めを行い、ゲート512から材料を注入してガスケットを成形することで、FPC600に対してガスケットを一体的に設けることができる。
【0004】
しかしながら、従来の製造方法においては、FPC600を介して下型520側の方が上型510側よりも材料が流れ易く、流動性が不均一になり、充填不足が生じ易かった。すなわち、図8(a)中の矢印に示すように、成形材料は上型510側よりも下型520側に流れやすい。そのため、図8(b)の矢印に示すように、下型520側を流れる材料はベント513の入口を通り過ぎてFPC600を回り込むようにして上型510側に流れてしまい、FPC600の上面付近で材料が合流してしまう。そのため、合流部(図中、Xで示す付近)において、材料の充填不足が生じ易い。
【0005】
なお、FPC600は柔軟性が高いため、材料の注入圧力を高めるとFPC600が変形してしまう。そのため、充填不足を解消するために、材料の注入圧力を高めるといった対策には限度がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5354281号公報
【特許文献2】特開2016-100492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、成形不良の抑制を図ることができるガスケット付きフレキシブルプリント配線板及びガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明のガスケット付きフレキシブルプリント配線板は、
フレキシブルプリント配線板と、
前記フレキシブルプリント配線板をインサート部品としてインサート成形されることで、前記フレキシブルプリント配線板に一体的に設けられるガスケットと、
を備えるガスケット付きフレキシブルプリント配線板であって、
前記フレキシブルプリント配線板の短手方向である幅方向において、前記ガスケットの一方の端にゲート跡が設けられ、
前記フレキシブルプリント配線板には、前記ガスケットによって埋設される領域内において、前記幅方向における他方の端側に片寄った位置に、前記インサート成形の際における前記ガスケットの材料の流動の仕方を制御するための貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、成形時において、フレキシブルプリント配線板を介して一方側の材料の流れ方と他方側の材料の流れ方に差異が生じても、流れ方の速い側を流れる材料は、貫通孔を通して、流れ方の遅い側に流れていく。これにより、貫通孔よりもゲート側とは反対側の領域において、貫通孔よりもゲート側の流れ方の差異を解消させることができる。
【0011】
前記ガスケットには前記フレキシブルプリント配線板を囲むように環状のシール突起が設けられており、
前記フレキシブルプリント配線板の表面に対して垂直に透視した場合に、前記貫通孔は、前記シール突起の短手方向の両側にはみ出すように設けられているとよい。
【0012】
環状のシール突起が設けられている部分においては、シール突起が設けられていない部分と比較して、体積が大きくなり、シール突起の突起先端付近で材料の充填不足が生じ易い。これに対して、上記のような構成を採用することで、シール突起が設けられている付近での材料の流れ方の差異を抑制できるため、突起先端付近での材料の充填不足を抑制することができる。
【0013】
前記フレキシブルプリント配線板には複数の配線が設けられており、前記貫通孔は前記配線と重ならず、かつ前記配線が伸びる方向に長い長孔により構成されているとよい。
【0014】
これにより、配線に悪影響を与えることなく、貫通孔の面積を広くすることができる。
【0015】
本発明のガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法は、
貫通孔を有するフレキシブルプリント配線板を製作する工程と、
フレキシブルプリント配線板を配置する配置部と、前記配置部の両側にそれぞれ設けられるゲート及びベントと、を有する金型の前記配置部に対して、前記貫通孔が前記ゲートよりも前記ベントに近い位置に配されるように前記フレキシブルプリント配線板を配置する工程と、
前記金型を型締めした後に前記ゲートから材料を前記金型のキャビティに注入して前記フレキシブルプリント配線板に対してガスケットを一体的に成形する工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、成形不良の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板の平面図の一部である。
図2図2は本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板を装置に取り付けた状態を示す概略構成図である。
図3図3は本発明の実施例1に係るフレキシブルプリント配線板の平面図の一部である。
図4図4は本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する図である。
図5図5は本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する図である。
図6図6は本発明の実施例2に係るフレキシブルプリント配線板の平面図の一部である。
図7図7は本発明の実施例2に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する図である。
図8図8は従来技術に係るインサート成形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例1)
図1図5を参照して、本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板及びガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法について説明する。図1は本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板の平面図の一部である。なお、図1においては、平面図中の丸で囲った部分の内部の模式的断面図も示している。図2は本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板を装置に取り付けた状態を示す概略構成図である。図2(a)は装置のケースにガスケット付きフレキシブルプリント配線板を取り付けた状態を示す正面図であり、同図(b)は同図(a)中のAA断面図である。なお、図2においては、ガスケット付きフレキシブルプリント配線板が取り付けられた付近のみを示している。図3は本発明の実施例1に係るフレキシブルプリント配線板の平面図の一部である。なお、図3においては、ガスケットが設けられる位置を破線にて示している。図4及び図5は本発明の実施例1に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する図である。なお、図4(a)は金型にフレキシブルプリント配線板を配置させ、かつ型締めした状態を示す平面図であり、同図(b)は同図(a)中のBB断面図である。図4(a)においては、内部の主要構成を破線にて示している。図5は、インサート成形時の成形材料の流れ方を示したものであり、図5(a)は成形初期の様子を示し、同図(b)は成形後期の様子を示している。
【0021】
<ガスケット付きフレキシブルプリント配線板>
図1を参照して、本実施例に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板10の構成について説明する。ガスケット付きフレキシブルプリント配線板10は、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC100」と称する)と、FPC100に一体的に設けられるガスケット200とを備えている。ガスケット200は、FPC100をインサート部品としてインサート成形されることで、FPC100に一体的に設けられる。
【0022】
FPC100の構造については、公知技術であるので、その詳細な説明は省略し、以下、一般的な構造の一例を簡単に説明する。図1には代表的な構造の2例を断面図にて示している。左側の断面図に示すFPC100は、ベースフィルム101と、ベースフィルム
101上に設けられ、銅箔がエッチングされることで形成される複数の配線102と、複数の配線102を覆うカバーフィルム103とを備えている。カバーフィルム103は、配線102が形成された後に接着剤104によって、ベースフィルム101及び配線102に固定される。また、右側の断面図に示すFPC100は、ベースフィルム101の両面に、それぞれ配線102、接着剤104の層、カバーフィルム103が設けられている。なお、配線102は、銅箔がエッチングされることにより形成される。本発明においては、このような構造のFPCに限らず、各種構造のFPCに適用することができる。
【0023】
FPC100の先端110においては、カバーフィルム103を有しない部分が設けられており、複数の配線102の各先端は露出されている。
【0024】
ガスケット200は、FPC100の一部を埋設するように設けられている。このガスケット200は、ガスケット本体部210と、環状のシール突起220とを備えている。シール突起220は、FPC100を囲むように設けられている。また、本実施例に係るガスケット200は、FPC100を介して両側が対称形状となるように構成されている。
【0025】
<ガスケット付きフレキシブルプリント配線板の使用例>
図2を参照して、本実施例に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板10の使用例について説明する。本実施例に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板10は、各種装置に適用することができる。例えば、装置内部から装置外部にFPC100を引き出すように、ガスケット付きフレキシブルプリント配線板10は各種装置に設けられる。図2に示す例の場合、装置のケース20には、ケース20の一部が凹むように設けられるガスケット装着部21と、ガスケット装着部21とケース内部とを連通する連通孔22が設けられている。このように構成されるケース20に対して、連通孔22を通るようにFPC100の先端110が差し込まれ、かつ、ガスケット装着部21にガスケット200が装着される。これにより、装置(ケース20)に対してガスケット付きフレキシブルプリント配線板10が取り付けられる。なお、FPC100の先端110においては、複数の配線102に対して、装置内部に設けられた各種配線や回路基板などが電気的に接続される。以上の構成により、装置の内部から外部へ、又は装置の外部から内部に電気を送ることが可能となる。また、ガスケット200によって、連通孔22を塞ぐことができ、装置外部からの異物が装置内に侵入してしまうことを抑制することができる。
【0026】
<FPC>
図3を参照して、本実施例に係るFPC100について、より詳細に説明する。以下、FPC100における短手方向である幅方向において、図中右側の端を「一方の端」と称し、左側の端を「他方の端」と称する。FPC100には、貫通孔120が設けられている。この貫通孔120は、FPC100において、幅方向の他方の端側に片寄った位置に設けられている。また、FPC100には複数の配線102が設けられている。上記の貫通孔120は、これらの配線102と重ならず、かつ配線が伸びる方向に長い長孔により構成されている。また、貫通孔120は、FPC100のうちガスケット200によって埋設される領域内に設けられている。より具体的には、FPC100の表面に対して垂直に透視した場合に、貫通孔120は、その一部がシール突起220と重なるように設けられている。更に具体的には、FPC100の表面に対して垂直に透視した場合に、貫通孔120は、シール突起220の短手方向の両側にはみ出すように設けられている。つまり、シール突起220の短手方向の幅よりも、貫通孔120の長手方向の幅の方が広くなるように構成されている。
【0027】
<配線の製造方法>
図4及び図5を参照して、本実施例に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板
10の製造方法について説明する。
【0028】
<<FPC100の製作工程>>
FPC100の製作方法自体は公知技術であるので、ここでは簡単に説明する。まず、ベースフィルム101上に設けられた銅箔がエッチングされて、所望の配線102が形成される。その後、接着剤104によってカバーフィルム103が貼り付けられる。そして、本実施例の場合においては、カバーフィルム103が貼り付けられた後に、上記の貫通孔120が設けられる。
【0029】
<<インサート成形工程>>
インサート成形に用いる金型50の構成について説明する。金型50は、上型510と下型520とを備えている。上型510と下型520にそれぞれ形成された彫り込み部511,521によりキャビティCが設けられる。また、金型50には、FPC100を配置するための配置部50Xが設けられている。この配置部50Xは、例えば、下型520に、FPC100の外形に合わせた溝を形成することにより設けることができる。この配置部50Xに配置されたFPC100は、キャビティCを貫くように配される。
【0030】
そして、上型510には、下型520に対向するように、かつ配置部50Xの両側にそれぞれゲート512とベント513が設けられている。本実施例に係るゲート512は、サイドゲートであり、金型50のパーティングラインから材料を注入する方式のゲートである。ベント513はキャビティCを介してゲート512とは反対側に設けられる。
【0031】
以上のように構成される金型50の配置部50XにFPC100が配置される。このとき、貫通孔120がゲート512よりもベント513に近い位置に配されるように、FPC100は配置部50Xに配される。その後、型締めが行われ、ゲート512から材料が注入されてガスケット200が成形されることで、FPC100に対してガスケット200が一体的に設けられる。
【0032】
その後、型が開かれて、ガスケット200を一体的に備えるFPC100が取り出され、バリを切除するなどの後処理が施されて、ガスケット付きフレキシブルプリント配線板10が得られる。以上の製造方法により得られるガスケット付きフレキシブルプリント配線板10においては、FPC100の短手方向である幅方向において、ガスケット200の一方の端にゲート跡222が設けられる(図1参照)。このゲート跡222はパーティングライン跡221上に設けられる。なお、パーティングライン跡211,221は、ガスケット本体部210とシール突起220上にそれぞれ形成される。そして、FPC100における貫通孔120は、ガスケット200によって埋設される領域内において、FPC100の幅方向における他方の端側に片寄った位置に設けられることになる。この貫通孔120は、インサート成形の際におけるガスケット200の材料の流動の仕方を制御するために設けられている。
【0033】
<本実施例に係る配線及び配線の製造方法の優れた点>
本実施例においては、FPC100に、上記のように構成される貫通孔120を設けることで、成形材料(ガスケット200の材料)の流動の仕方を制御することができる。図5(a)においては、成形初期における材料の流れる様子を矢印にて示し、同図(b)は成形後期における材料の流れる様子を矢印にて示している。図5(a)に示すように、ゲート512からキャビティCに注入される成形材料は、重力により上型510側よりも下型520側の方に流れていき易いため、下型520側の方が流れが速くなる。本実施例においては、FPC100における幅方向の他方側(ゲート512よりもベント513に近い側)に貫通孔120が設けられているため、貫通孔120の位置まで達した材料の一部は貫通孔120を通して上型510側に流れていく。これにより、下型520側を流れて
いた材料の流れが遅くなり、上型510側を流れる材料が下型520側を流れる材料の流れに追いつく。これにより、下型520側を流れる材料と上型510側を流れる材料がベント513の入口付近で合流する。
【0034】
以上のように、貫通孔120よりもゲート512側とは反対側(ベント513側)の領域において、貫通孔120よりもゲート512側の流れ方の差異を解消させることができる。すなわち、上型510側を流れる材料と下型520側を流れる材料の流れ方の不均一を解消させることができる。従って、材料の充填不足が生じてしまうことを抑制することができ、成形不良の抑制を図ることができる。なお、ガスケット200の材料が、ミラブルゴムや樹脂材などの流動性の低い材料でも、本実施例の構成を採用することで、成形不良を抑制することができる。従って、ガスケット200の材料として、各種ゴム材料、各種樹脂材料、及び各種熱可塑性エラストマー材料を採用することができるため、材料選択の幅を拡げることができる。また、ガスケット200は、貫通孔120を通った部分を通じて、FPC100の両側で繋がる構成となるため、FPC100から抜け落ちてしまうことを抑制することもできる。なお、本実施例においては、従来と同じ金型をそのまま採用できるので、製造費のコストアップを抑制することもできる。
【0035】
また、本実施例においては、ガスケット200にはFPC100を囲むように環状のシール突起220が設けられている。そして、FPC100の表面に対して垂直に透視した場合に、貫通孔120は、シール突起220の短手方向の両側にはみ出すように設けられている。すなわち、環状のシール突起220が設けられている部分においては、シール突起220が設けられていない部分と比較して、体積が大きくなり、シール突起220の突起先端付近で材料の充填不足が生じ易い。これに対して、上記のような構成を採用することで、シール突起220が設けられている付近での材料の流れ方の差異を抑制できるため、突起先端付近での材料の充填不足を抑制することができる。
【0036】
更に、本実施例に係る貫通孔120においては、FPC100における配線102と重ならず、かつ配線102が伸びる方向に長い長孔により構成されている。これにより、配線に悪影響を与えることなく、貫通孔120の面積を広くすることができる。
【0037】
(実施例2)
図6及び図7には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、上記実施例1の構成に加えて、FPCに対して、更に貫通孔を設ける構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0038】
図6は本発明の実施例2に係るフレキシブルプリント配線板の平面図の一部である。なお、図6においては、ガスケットが設けられる位置を破線にて示している。図7は本発明の実施例2に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する図である。なお、図7は、インサート成形時の成形材料の流れ方を示したものであり、図7(a)は成形初期の様子を示し、同図(b)は成形後期の様子を示している。
【0039】
本実施例に係るガスケット付きフレキシブルプリント配線板においては、FPC100Aにおいて、上記実施例1で示した貫通孔120だけでなく、ガスケット200によって埋設される領域内であって、FPC100Aにおける幅方向の中央にも貫通孔120Aが設けられている点が異なっている。ガスケット200の構成については、上記実施例1と同一である。
【0040】
上記実施例1で示すガスケット付きフレキシブルプリント配線板10において、下型520側を流れる材料と上型510側を流れる材料の流れ方の差異が顕著な場合、貫通孔1
20を一つ設けるだけでは、ベント513の付近で、両側を流れる材料を合流させることが難しい。この場合には、本実施例に係るFPC100Aの構成を採用するとよい。本実施例の場合には、下型520側を流れる材料の一部は、中央の貫通孔120Aを通って上型510側に流れていき(図7(a)参照)、更に、ベント513に近い貫通孔120も通って上型510側に流れていく(図7(b)参照)。これにより、両側を流れる材料を、ベント513付近で合流させることができる。
【0041】
以上より、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、貫通孔の個数については、3つ以上設けても構わない。
【符号の説明】
【0042】
10:ガスケット付きフレキシブルプリント配線板
20:ケース
21:ガスケット装着部
22:連通孔
50:金型
50X:配置部
100,100A:FPC
101:ベースフィルム
102:配線
103:カバーフィルム
104:接着剤
110:先端
120,120A:貫通孔
200:ガスケット
210:ガスケット本体部
211,221:パーティングライン跡
220:シール突起
222:ゲート跡
510:上型
511:彫り込み部
512:ゲート
513:ベント
520:下型
521:彫り込み部
C:キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8