(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003310
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】脳波測定用ヘッドギア
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20240105BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20240105BHJP
A61B 5/265 20210101ALI20240105BHJP
【FI】
A61B5/256 110
A61B5/291
A61B5/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102353
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000128094
【氏名又は名称】株式会社エヌエフホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】利根 健太郎
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127LL08
4C127LL13
4C127LL15
4C127LL22
(57)【要約】
【課題】装着が容易で、かつ頭皮と電極との接触抵抗が小さくなる脳波測定用ヘッドギアを提供する。
【解決手段】導電性を有する電極41と、電極41を保持する保持部品5とを備えた脳波測定用ヘッドギアであって、保持部品5が、電極41を固定する円柱部材7と、円柱部材7を覆う円筒部材8とを有し、円柱部材7または円筒部材8の下面に電極41が固定され、円柱部材7の外周に設けられた突条部12が、円筒部材8に斜めに設けられたスリット13または溝に嵌合し、電極41が頭皮に押し付けられると、円柱部材7または円筒部材8がその長軸方向に移動すると同時に、その中心長軸を中心に回転するように構成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する電極と、前記電極を保持する保持部品とを備えた脳波測定用ヘッドギアであって、
前記保持部品が、
円柱部材と、
前記円柱部材を覆う円筒部材とを有し、
前記円柱部材または前記円筒部材の下面に前記電極が固定され、
前記円柱部材の外周に設けられた突条部が、前記円筒部材に斜めに設けられたスリットまたは溝に嵌合し、
前記電極が頭皮に押し付けられると、前記円柱部材または前記円筒部材がその長軸方向に移動すると同時に、その中心長軸を中心に回転するように構成される、脳波測定用ヘッドギア。
【請求項2】
導電性を有する電極と、前記電極を保持する保持部品とを備えた脳波測定用ヘッドギアであって、
前記保持部品が、
円柱部材と、
前記円柱部材を覆う円筒部材とを有し、
前記円柱部材または前記円筒部材の下面に前記電極が固定され、
前記円筒部材の内周に設けられた突条部が、前記円柱部材に斜めに設けられたスリットまたは溝に嵌合し、
前記電極が頭皮に押し付けられると、前記円柱部材または前記円筒部材がその長軸方向に移動すると同時に、その中心長軸を中心に回転するように構成される、脳波測定用ヘッドギア。
【請求項3】
導電性を有する電極と、前記電極を保持する保持部品とを備えた脳波測定用ヘッドギアであって、
前記保持部品が、
前記電極を下面に固定した円柱部材と、
前記円柱部材の上面に設けられた円形状のバネ材板金とを有し、
前記バネ材板金の外周から曲げ加工して設けられ、その先端の突出先端部が前記円柱部材に当接する突出部が、前記電極が頭皮に押し付けられて前記円柱部材が前記円柱部材の長軸方向に移動するときに前記曲げ加工前の位置に変位することで、前記円柱部材が前記円柱部材の中心長軸を中心に回転するように構成される、脳波測定用ヘッドギア。
【請求項4】
前記脳波測定用ヘッドギアを頭部に装着するための複数のベルトを備え、
前記ベルトの前記頭部への固定度合いを調整するとともに、前記電極を前記頭皮に押し付けて前記円柱部材または前記円筒部材を回転させるように構成される調整機構を、2個以上備える、請求項1または2に記載の脳波測定用ヘッドギア。
【請求項5】
前記脳波測定用ヘッドギアを頭部に装着するための複数のベルトを備え、
前記ベルトの前記頭部への固定度合いを調整するとともに、前記電極を前記頭皮に押し付けて前記円柱部材を回転させるように構成される調整機構を、2個以上備える、請求項3に記載の脳波測定用ヘッドギア。
【請求項6】
前記円柱部材または前記円筒部材をその長軸方向であって前記電極側に付勢する付勢手段を備え、前記突条部の前記スリットまたは溝内の移動に伴い、前記付勢手段の付勢力が変化すると、前記円柱部材または前記円筒部材が約30°~50°回転するように構成される、請求項1または2に記載の脳波測定用ヘッドギア。
【請求項7】
前記電極が、導電性を有する柔軟な素材で構成された支持面から略垂直に伸びて導電性を有する柔軟な素材で構成された複数の突起を有し、前記突起の先端部に塩化銀がコーティングされている、請求項1~3のいずれか1項に記載の脳波測定用ヘッドギア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波を測定する脳波計装置に用いる、脳波測定用ヘッドギアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電極端子が斜めに突出して設けられ、電極がヘッドバンドに向かって押圧された場合に押圧力を回動運動に変換する機械的機構、または、モータ等の回転動力源により、電極を回動させるヘッドギアが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、電極を固定する複数のアームとバンドを接続し、折り返し長の調整により各アームの頭部への固定度合いを調節する伸縮性部材の支持体を備えたヘッドギアが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-110535号公報
【特許文献2】特開2016-214608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のヘッドギアでは、電極の頭部に対する固定度合いを調節する調整機構がないため、ヘッドギアの装着が容易でない課題があった。
【0006】
また、特許文献2のヘッドギアでは、アームの頭部への固定度合いを調節する調整機構があるものの、伸縮性部材の支持体によるものであるため、電極の頭部への接触具合の調節が柔軟にできない課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、装着が容易で、かつ頭皮と電極との接触抵抗が小さくなるヘッドギアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するため、導電性を有する電極と、前記電極を保持する保持部品とを備えた脳波測定用ヘッドギアであって、前記保持部品が、円柱部材と、前記円柱部材を覆う円筒部材とを有し、前記円柱部材または前記円筒部材の下面に前記電極が固定され、前記円柱部材の外周に設けられた突条部が、前記円筒部材に斜めに設けられたスリットまたは溝に嵌合し、前記電極が頭皮に押し付けられると、前記円柱部材または前記円筒部材がその長軸方向に移動すると同時に、その中心長軸を中心に回転するように構成される、脳波測定用ヘッドギアを提供する。
【0009】
また本発明は、導電性を有する電極と、前記電極を保持する保持部品とを備えた脳波測定用ヘッドギアであって、前記保持部品が、円柱部材と、前記円柱部材を覆う円筒部材とを有し、前記円柱部材または前記円筒部材の下面に前記電極が固定され、前記円筒部材の内周に設けられた突条部が、前記円柱部材に斜めに設けられたスリットまたは溝に嵌合し、前記電極が頭皮に押し付けられると、前記円柱部材または前記円筒部材がその長軸方向に移動すると同時に、その中心長軸を中心に回転するように構成される、脳波測定用ヘッドギアを提供する。
【0010】
また本発明は、導電性を有する電極と、前記電極を保持する保持部品とを備えた脳波測定用ヘッドギアであって、前記保持部品が、前記電極を下面に固定した円柱部材と、前記円柱部材の上面に設けられた円形状のバネ材板金とを有し、前記バネ材板金の外周から曲げ加工して設けられ、その先端の突出先端部が前記円柱部材に当接する突出部が、前記電極が頭皮に押し付けられて前記円柱部材が前記円柱部材の長軸方向に移動するときに前記曲げ加工前の位置に変位することで、前記円柱部材が前記円柱部材の中心長軸を中心に回転するように構成される、脳波測定用ヘッドギアを提供する。
【0011】
前記脳波測定用ヘッドギアでは、前記脳波測定用ヘッドギアを頭部に装着するための複数のベルトを備え、前記ベルトの前記頭部への固定度合いを調整するとともに、前記電極を前記頭皮に押し付けて前記円柱部材または前記円筒部材を回転させるように構成される調整機構を、2個以上備える、としてもよい。
【0012】
前記脳波測定用ヘッドギアでは、前記円柱部材または前記円筒部材をその長軸方向であって前記電極側に付勢する付勢手段を備え、前記突条部の前記スリットまたは溝内の移動に伴い、前記付勢手段の付勢力が変化すると、前記円柱部材または前記円筒部材が約30°~50°回転するように構成される、としてもよい。
【0013】
前記脳波測定用ヘッドギアでは、前記電極が、導電性を有する柔軟な素材で構成された支持面から略垂直に伸びて導電性を有する柔軟な素材で構成された複数の突起を有し、前記突起の先端部に塩化銀がコーティングされている、としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の脳波測定用ヘッドギアによれば、簡単な機械的構造により、脳波測定用ヘッドギアを容易に装着することができ、かつ頭皮と電極との接触抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係る脳波測定用ヘッドギアの全体構成を示す前方斜視図である。
【
図2】本発明の好適な実施形態に係る脳波測定用ヘッドギアの全体構成を示す後方斜視図である。
【
図3】本発明の好適な実施形態に係る電極部の押し下げ前の状態を示す写真図である。
【
図4】本発明の好適な実施形態に係る電極部の押し下げ後の状態を示す写真図である。
【
図5】本発明の好適な実施形態に係る電極が頭皮に押し付けられた部分を拡大した写真図である。
【
図6】本発明の好適な実施形態に係る電極部の側方断面図である。
【
図7】本発明の好適な実施形態に係る電極部の押し下げ前の状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の好適な実施形態に係る突条部とスリットの嵌合状態を示す上方部分断面図である。
【
図9】本発明の好適な実施形態に係る電極部の押し下げ後の状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の好適な実施形態に係る突条部と溝の嵌合状態を示す上方部分断面図である。
【
図11】本発明の好適な実施形態に係る突条部とスリットの嵌合状態を示す上方部分断面図である。
【
図12】本発明の好適な実施形態に係る突条部と溝の嵌合状態を示す上方部分断面図である。
【
図13】本発明の好適な実施形態に係る電極部の別な構成例を示す側方断面図である。
【
図14】本発明の好適な実施形態に係る、ベルトの側頭部への固定度合いを調整する調整機構の分解組立斜視図である。
【
図15】本発明の好適な実施形態に係る、ベルトの前頭部への固定度合いを調整する調整機構の分解組立斜視図である。
【
図16】本発明の好適な実施形態に係る曲げ加工を行う前のバネ材板金の平面図である。
【
図17】本発明の好適な実施形態に係る曲げ加工を行った後のバネ材板金の平面図である。
【
図18】本発明の好適な実施形態に係るバネ材板金を組み合わせた押し下げ前の状態を示す斜視図である。
【
図19】本発明の好適な実施形態に係るバネ材板金を組み合わせた押し下げ後の状態を示す斜視図である。
【
図20】本発明の好適な実施形態に係る別な例のバネ材板金を組み合わせた押し下げ前の状態を示す斜視図である。
【
図21】本発明の好適な実施形態に係る別な例のバネ材板金の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または、発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。そのような変形や変更もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0017】
〔第1実施形態〕
まず、
図1~
図3を参照しながら、本実施形態のヘッドギア1の概略構成について説明する。ヘッドギア1は、脳波測定用のヘッドギアである。
図1および
図2は、それぞれ、本実施形態のヘッドギア1の全体構成を示す前方斜視図および後方斜視図である。ヘッドギア1は、ヘッドギア1を頭部に装着するための複数のベルト2で繋がれた複数のユニット部3を備える。脳波を測定する部分に位置するユニット部3には、導電性を有する電極40、41を備えた電極部4が設けられる。頭髪がある部分の頭皮の脳波を測定する電極41は、頭皮に向かって略垂直に伸びる複数の突起42を有する。突起42が頭髪や皮脂を掻き分け、電極41の突起42の先端部43が頭皮に接触して、脳波を測定する。
【0018】
本実施形態では、電極41を保持する保持部品5は、
図3に示すように、電極41を下面に固定した円柱部材7と、円柱部材7を覆う円筒部材8とを有する。保持部品5は、電極41が頭皮に押し付けられると、円柱部材7または円筒部材8がその長軸方向に移動すると同時に、その中心長軸を中心に回転する回転機構を有する。長軸方向は、電極部4が頭皮に押し当てられた場合に、頭皮に略垂直な方向であり、例えば
図9の方向Aである。中心長軸は、円柱部材7および円筒部材8の円形断面の中心を通り、円形断面に垂直な軸である。保持部品5が回転機構を有することで、突起42が頭髪や皮脂を掻き分けやすくなり、電極41の突起42の先端部43が頭皮に接触しやすくなる。
【0019】
ヘッドギア1は、ベルト2の頭部への固定度合いを調整するとともに、電極41を頭皮に押し付けて回転機構を動作させる調整機構6を備える。調整機構6は2個以上設けられる。ここでは頭部周囲および前頭部用の、ユニット部、ベルトや調整機構等を例示しているが、必要に応じてさらに、後頭部用のユニット部や、頭頂部用などのユニット部、ベルトや調整機構等を設けることも可能である。
【0020】
次に、
図1~
図15を参照しながら、ヘッドギア1の一実施例について、より詳細に説明する。
【0021】
ユニット部3は、電極40、41からの電気信号を処理する電子部品(図示せず)と、電子部品を搭載する基板(図示せず)と、電子部品を駆動させるための電力源(図示せず)と、これらを保持するための外装10、11(
図6を参照)とを有する。
【0022】
ユニット部31は、ヘッドギア1を頭部に装着したときに額部に位置し、電極部4の電極40を額部の皮膚に押し当てて脳波を測定するためのものである。ユニット部31に設けられる電極40は、測定箇所に頭髪がないため、突起を有さない構成となっている。
【0023】
ユニット部32は、ヘッドギア1を頭部に装着したときに側頭部に位置し、電極部4の電極41を頭皮に押し当てて脳波を測定するためのものである。ユニット部32は、左右に1個ずつ設けられ、ベルト21でユニット部31とともに互いに接続される。ベルト21に接続された筐体15に設けられた調整機構61によりベルト21の長さを調整して、ベルト21の側頭部への固定度合いが調整される。ベルト21が締め付けられて固定度合いが高められると、電極41が頭皮に押し付けられる。
【0024】
ユニット部33は、ヘッドギア1を頭部に装着したときに前頭部に位置し、電極部4の電極41を頭皮に押し当てて脳波を測定するためのものである。ユニット部33は、ベルト22でユニット部32に接続される。ベルト22が接続されたユニット部32の筐体15’に設けられた調整機構62によりベルト22の長さを調整して、ベルト22の前頭部への固定度合いが調整される。ベルト22が締め付けられて固定度合いが高められると、電極41が頭皮に押し付けられる。
【0025】
電極部4は、通常、頭皮に押し付けられる前、
図3の状態である。電極部4が押圧されて電極41が頭皮に押し付けられると、
図4に示すように、円柱部材7が円柱部材7の長軸方向に移動する。このとき、円柱部材7は、円柱部材7の長軸方向に移動すると同時に、円柱部材7の中心長軸を中心に回転する。回転する角度は、一例として約30°~50°である。電極部4の支持面44は、一例として導電性を有するエラストマー等の柔軟な素材で構成されている。突起部42は支持面44から略垂直に伸びており、一例として導電性を有するエラストマー等の柔軟な素材(一例として支持面44と同じ素材)で構成されており、支持面44と電気的に接続されている。突起42の先端部43は、一例として塩化銀がコーティングされており、頭皮との接触抵抗をより小さくしている。円柱部材7が回転することで、
図5に示すようにコーティングされた先端部43の側面部も頭皮へ接触させることができ、頭皮との接触面積が増えて、頭皮と電極41との接触抵抗を小さくすることができる。
【0026】
図6の断面図に示すように、電極4の支持面44は、基板9に圧入されて、基板9は円柱部材7の下面に固定される。電極41は支持面44と基板9を介して、電極41からの電気信号を処理する電子部品を搭載する基板に接続される。なお、基板9を設けずに、電極4の支持面44を直接円柱部材7に固定してもよい。円筒部材8は、ユニット部3の外側外装10と内側外装11とに挟まれて、ユニット部3に固定される。
図7および
図8に示すように、円柱部材7の外周の外表面には突条部12が設けられる。円筒部材8には、円筒部材8の長軸方向に対して斜めにスリット13が設けられ、円柱部材7が円筒部材8で覆われる際に、突条部12がスリット13に嵌合する。突条部12とスリット13とで、回転機構を構成する。
【0027】
また、回転機構は、円柱部材7を円柱部材7の長軸方向であって電極41側に付勢する付勢手段14を備える。付勢手段14は、通常の状態では伸びた状態であり、電極41が頭皮に押し付けられると、円柱部材7の長軸方向に押し縮められ、付勢力が強まる。他方、電極41の頭皮への押し付けが解放されると、付勢手段14は、通常の伸びた状態に戻る。付勢手段14は、
図6ではコイルバネであるが、板バネや、空気バネ、磁気反発等、円柱部材7を円柱部材7の長軸方向であって電極41側に付勢するものであれば、特に限定されない。
図9に示すように、電極部4が頭皮に向かって方向Aに押圧されて電極41が頭皮に押し付けられ、突条部12がスリット13内の方向Bへ移動すると、付勢手段14の付勢力が強められるとともに、円柱部材7が方向Cに一例として約30°~50°回転する。他方、電極41の頭皮への押し付けが解放されると、付勢手段14の付勢力により円柱部材7は方向Aに押圧され、突条部12のスリット13内の方向Bと反対方向への移動に伴い、円柱部材7は方向Cと反対方向に回転し、通常の状態に戻る。
【0028】
スリット13は、
図10に示すように、円筒部材8の外表面が覆われた溝14としてもよい。溝14は、スリット13と同様に、円筒部材8にその長軸方向に対して斜めに設けられる。突条部12は、溝14内に嵌合され、溝14内を移動する。突条部12の溝14内の移動に伴い、円柱部材7が回転する。溝とすることで、スリットとする場合に比べて、円筒部材8の強度を高めることができる。
【0029】
図11に示すように、突条部12’を円筒部材8の内表面に設け、スリット13’を円柱部材7に設けるようにしてもよい。スリット13’は、円柱部材7にその長軸方向に対して斜めに設けられる。突条部12’は、スリット13’に嵌合され、スリット13’内を移動する。突条部12’のスリット13’内の移動に伴い、円柱部材7が回転する。
【0030】
また、
図12に示すように、スリット13’は、円柱部材7の内表面が覆われた溝14’としてもよい。溝14’は、円柱部材7にその長軸方向に対して斜めに設けられる。突条部12’は、溝14’に嵌合され、溝14’内を移動する。突条部12’の溝14’内の移動に伴い、円柱部材7が回転する。溝とすることで、スリットとする場合に比べて、円柱部材7の強度を高めることができる。
【0031】
図10から
図12では、円筒部材8にスリット13による開口部がないので、円筒部材8と円柱部材7の間に異物(ごみ、ふけなど)が入りにくいという利点がある。
【0032】
図6の構成では、円筒部材8が固定されており、円柱部材7が円柱部材7の長軸方向に移動すると同時に、円柱部材7の中心長軸を中心に回転する。一方、
図13に示すように、この逆の構成、即ち、円柱部材7が外側外装10に固定され、円筒部材8が円筒部材8の長軸方向に移動すると同時に、円筒部材8の中心長軸を中心に回転する構成も可能である。この場合、電極41および基板9は円筒部材8の下面に固定される。また、付勢手段14は、円筒部材8を円筒部材8の長軸方向であって電極41側に付勢する。
【0033】
図14は、ベルト21の側頭部への固定度合いを調整する調整機構61の一例の、分解組立斜視図である。固定部品63は、ヘッドギア1の筐体15に固定される。ダイヤル64は、筐体15および固定部品63を貫通して、可動部品65に接続される。可動部品65の外周は、一例としてスナップフィット形状を有し、固定部品63の内歯車66に接している。さらに可動部品65は、ギア形状を備えている。ベルト211は下方にギア部161を有し、ベルト212は上方にギア部162を有し、ギア部161およびギア部162は、可動部品65のギア形状と噛み合う。ベルト211とベルト212を重ね合わせて可動部品65を装着することにより、ベルト21をラック、可動部品65をピニオンとして、ベルト21および可動部品65はラック&ピニオンで回転運動を直線運動に変換する。このような構成により、ダイヤル64を回転させることで、ベルト21の長さが調整される。ベルト21が締め付けられると、ユニット部32の電極41が頭皮に押し付けられる。
【0034】
図15は、ベルト22の前頭部への固定度合いを調整する調整機構62の一例の、分解組立斜視図である。固定部品63は、ユニット部32の筐体15’に固定される。ダイヤル64’は、筐体15’および固定部品63’を貫通して、可動部品65’に接続される。可動部品65’の外周は、一例としてスナップフィット形状を有し、固定部品63’の内歯車66’に接している。さらに可動部品65’は、ギア形状を備えている。ベルト22はギア部16’を有し、ギア部16’は可動部品65’のギア形状と噛み合う。ベルト22をラック、可動部品65’をピニオンとして、ベルト22および可動部品65’はラック&ピニオンで回転運動を直線運動に変換する。このような構成により、ダイヤル64’を回転させることで、ベルト22の長さが調整される。ベルト22が締め付けられると、ユニット部33の電極41が頭皮に押し付けられる。
【0035】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、保持部品5の円柱部材7を回転させる回転機構が第1実施形態と異なる。ベルト2やユニット部3、調整機構6等のその他の構成は、第1実施形態と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0036】
保持部品5は、
図16および
図17に示す、平面視が円形状のバネ材板金17を備える。保持部品5は、第1実施形態と同様に電極41を固定する円柱部材7と、バネ材板金17とで構成される。バネ材板金17は、外周から曲げ加工され、その先端の突出先端部23が円柱部材7に当接する複数の突出部18を備える。突出部18は、それぞれの根元部20が中心環19に接続されて円周方向に伸び、根元部20付近で同じ方向に曲げ加工されて構成される。
図16が曲げ加工を行う前の状態を示し、
図17が曲げ加工を行った後の状態を示す。バネ材板金17は、薄く延ばした例えばステンレス鋼等の金属のバネ材で構成された板金であり、曲げ加工前の状態から曲げ加工後の状態に弾性で戻るバネ性を有する。
【0037】
本実施形態では、円柱部材7が円柱部材7の長軸方向に移動するときに、突出部18が曲げ加工後の位置から曲げ加工前の位置に変位する弾性力を利用することで、回転機構を構成する。回転機構についてより詳細に説明すると、
図18に示すように、バネ材板金17は、円柱部材7の上面に設けられる。
図18に示すように突出部18の突出先端部23が円柱部材7の上面に当接した状態から、電極部4が頭皮に向かって方向Dに押圧されて電極41が押し付けられると、
図19に示すようにバネ材板金17が押圧され、突出部18が曲げ加工前の位置に変位するとともに、突出先端部23が円柱部材7を方向Eに押して回転させる。回転する角度は、一例として約30°~50°である。電極41の頭皮への押し付けが解放されると、バネ材板金17は弾性により曲げ加工後の状態に戻り、円柱部材7は方向Eと反対方向に回転して、通常の状態に戻る。本実施形態では、突出部18は3つであるが、その数や形状は限定されない。
【0038】
図20に示すように、中心環19を設けずに、突出部18がそれぞれ独立して構成されるようにしてもよい。
【0039】
本実施形態のさらに別の例を、
図21に示す。
図21では、通常の状態で突出部18’の突出先端部23’が下側リング24に当接しており、上側リング25が下側リング24に対しF方向に押圧されると、突出部18’の突出先端部23’が下側リング24を押圧して方向Gに回転させる。なお、下側リング24または上側リング25の一方は、なくてもよい。
【0040】
以上のように、本発明のヘッドギア1によれば、調整機構6の操作だけで、電極41の突起42が頭髪や皮脂を掻き分けて、電極41の突起42の先端部43が頭皮に広く接触するため、接触不良が減り、電極41を何度もセットし直す必要がなくなるので、ユーザの手間やストレスが軽減される。他方、モータ等の回転動力源による回転の場合、順回転および逆回転の小幅な繰り返しや、ギアによる回転速度および角度の制限、パルスモータによる回転角度制御等の対応が必要であり、いずれもコストアップとなる。本発明のヘッドギア1によれば、こうした対応が必要ないため、コストが削減できるとともに、軽量化および小型化も可能となる。また、モータ等の強制駆動ではないため、頭髪の巻き込みや引き抜きの事故の発生が抑えられる。
【0041】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。種々の変形実施も本発明の範囲に含まれる。例えば、上記実施形態では、脳波を測定するためのユニット部3は4つであるが、その数や位置は限定されない。また、電極部4の数や形状も限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1 ヘッドギア
2、21、22、211、212 ベルト
3、31、32、33 ユニット部
4 電極部
41 電極
42 突起
43 先端部
44 支持面
5 保持部品
6、61、62 調整機構
7 円柱部材
8 円筒部材
12 突条部
13、13’ スリット
14、14’ 溝
17 バネ材板金
18、18’ 突出部
23、23’ 突出先端部