IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回転機械 図1
  • 特開-回転機械 図2
  • 特開-回転機械 図3
  • 特開-回転機械 図4
  • 特開-回転機械 図5
  • 特開-回転機械 図6
  • 特開-回転機械 図7
  • 特開-回転機械 図8
  • 特開-回転機械 図9
  • 特開-回転機械 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033114
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20240306BHJP
   F03D 80/70 20160101ALI20240306BHJP
【FI】
H02K7/14 Z
F03D80/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136508
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】西浦 謙佑
【テーマコード(参考)】
3H178
5H607
【Fターム(参考)】
3H178AA20
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB37
3H178DD08X
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD02
5H607DD05
5H607FF12
5H607FF26
5H607GG01
(57)【要約】
【課題】より安定的に運用することが可能な回転機械を提供する。
【解決手段】回転機械は、軸線方向に延びる固定軸と、固定軸に外嵌された軸受と、軸受を介して固定軸に相対回転可能に設けられたロータを有する発電機モータと、固定軸に対して相対回転可能に設けられた回転体と、ロータと回転体との間でトルクを伝達可能な伝達部材と、を備え、ロータは、軸受に固定された内側リングと、内側リングを外周側から囲う外側リングと、内側リングと外側リングとを径方向に接続するとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の径方向部材と、を有し、伝達部材は、ロータにおける径方向部材に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる固定軸と、
前記固定軸に外嵌された軸受と、
前記軸受を介して前記固定軸に相対回転可能に設けられたロータを有する発電機モータと、
前記固定軸に対して相対回転可能に、かつ、前記発電機モータと前記軸線方向に離間して設けられた回転体と、
前記ロータと前記回転体との間でトルクを伝達可能な伝達部材と、
を備え、
前記ロータは、
前記軸受に固定された内側リングと、
前記内側リングを外周側から囲う外側リングと、
前記内側リングと前記外側リングとを径方向に接続するとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の径方向部材と、
を有し、
前記伝達部材は、前記ロータにおける前記径方向部材に接続されている、
回転機械。
【請求項2】
前記伝達部材は、
前記軸線を中心とする筒状の筒体部と、
該筒体部における前記ロータ側の端部に設けられ、前記軸線を中心とする環状のフランジ部と、
を有し、
前記フランジ部は、前記径方向部材に対して固定されている請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記径方向部材には、該径方向部材を前記軸線方向に貫通する孔部が形成され、
前記伝達部材は、
前記軸線を中心とする筒状の筒体部と、
該筒体部における前記ロータ側の端面から前記軸線方向に突出するとともに周方向に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記孔部に挿入されている複数のピンと、
を有する請求項1に記載の回転機械。
【請求項4】
前記孔部、及び前記ピンは、前記軸線方向から見て円形をなし、前記孔部の内径は、前記ピンの外径よりも大きく設定されている請求項3に記載の回転機械。
【請求項5】
前記ピンに外嵌され、前記孔部の内側で前記ピンを三次元的に揺動自在に保持する揺動保持部をさらに備える請求項3又は4に記載の回転機械。
【請求項6】
前記孔部の内周面に嵌め込まれ、前記揺動保持部を外周側から隙間を介して囲う軸受部材をさらに備える請求項5に記載の回転機械。
【請求項7】
周方向に隣り合う一対の前記径方向部材同士の間を塞ぐ充填部材をさらに備える請求項3に記載の回転機械。
【請求項8】
軸線方向に延びる固定軸と、
前記固定軸に外嵌された軸受と、
前記軸受を介して前記固定軸に相対回転可能に設けられたロータを有する発電機モータと、
前記固定軸に対して相対回転可能に、かつ、前記発電機モータと前記軸線方向に離間して設けられた回転体と、
前記ロータと前記回転体との間でトルクを伝達可能な伝達部材と、
を備え、
前記ロータは、
前記軸受に固定された内側リングと、
前記内側リングを外周側から囲う外側リングと、
前記内側リングと前記外側リングとを径方向に接続するとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の径方向部材と、
周方向に隣り合う一対の前記径方向部材同士の間を塞ぐ充填部材と、
を有し、
前記伝達部材は、前記ロータにおける前記径方向部材に接続され、
前記径方向部材には、該径方向部材を前記軸線方向に貫通する孔部が形成され、
前記伝達部材は、
前記軸線を中心とする筒状の筒体部と、
該筒体部における前記ロータ側の端面から前記軸線方向に突出するとともに周方向に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記孔部に挿入されている複数のピンと、
を有する回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、風力発電装置に内蔵されている発電機や、その他の大型機械に用いられる電動機では、回転しない固定軸の外周側を覆うようにして配置された円環状のロータ、及びステータが用いられる。軸受を介してロータが固定軸の周囲を回転する。風車の場合には、ブレードが装着されたロータヘッドの回転力(トルク)が、継手機構を介して発電機に伝達される。
【0003】
この種の継手機構として、例えば下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1に係る装置では、ロータヘッドと発電機を接続する継手機構に弾性部材が併設されている。これにより、外力によって生じるロータの軸線方向、又は径方向の変位や、ロータの軸線に対する傾きが弾性部材によって吸収できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8994205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように弾性部材を用いた場合、大きな外力が加わった際には、ロータヘッドの変位に基づくロータの変位量や傾き量が弾性部材の弾性変形可能な量を越えてしまう。その結果、トルク以外の外力がロータとロータヘッドとの間で不要に伝達されてしまい、装置の安定的な運用に支障を来たす虞がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より安定的に運用することが可能な回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械は、軸線方向に延びる固定軸と、前記固定軸に外嵌された軸受と、前記軸受を介して前記固定軸に相対回転可能に設けられたロータを有する発電機モータと、前記固定軸に対して相対回転可能に、かつ、前記発電機モータと前記軸線方向に離間して設けられた回転体と、前記ロータと前記回転体との間でトルクを伝達可能な伝達部材と、を備え、前記ロータは、前記軸受に固定された内側リングと、前記内側リングを外周側から囲う外側リングと、前記内側リングと前記外側リングとを径方向に接続するとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の径方向部材と、を有し、前記伝達部材は、前記ロータにおける前記径方向部材に接続されている。
【0008】
本開示に係る回転機械は、軸線方向に延びる固定軸と、前記固定軸に外嵌された軸受と、前記軸受を介して前記固定軸に相対回転可能に設けられたロータを有する発電機モータと、前記固定軸に対して相対回転可能に、かつ、前記発電機モータと前記軸線方向に離間して設けられた回転体と、前記ロータと前記回転体との間でトルクを伝達可能な伝達部材と、を備え、前記ロータは、前記軸受に固定された内側リングと、前記内側リングを外周側から囲う外側リングと、前記内側リングと前記外側リングとを径方向に接続するとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の径方向部材と、周方向に隣り合う一対の前記径方向部材同士の間を塞ぐ充填部材と、を有し、前記伝達部材は、前記ロータにおける前記径方向部材に接続され、前記径方向部材には、該径方向部材を前記軸線方向に貫通する孔部が形成され、前記伝達部材は、前記軸線を中心とする筒状の筒体部と、該筒体部における前記ロータ側の端面から前記軸線方向に突出するとともに周方向に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記孔部に挿入されている複数のピンと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より安定的に運用することが可能な回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る回転機械の構成を示す断面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るロータを軸線方向から見た図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る回転機械の構成を示す断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る伝達部材を軸線方向から見た図である。
図5】本開示の第二実施形態に係るピンと孔部の拡大図である。
図6】本開示の第三実施形態に係るピンと揺動保持部の拡大断面図である。
図7】本開示の第三実施形態に係るピンと揺動保持部の変形例を示す拡大断面図である。
図8】本開示の第三実施形態に係るロータの変形例を示す図である。
図9】本開示の各実施形態に共通するロータの第一変形例を示す図である。
図10】本開示の各実施形態に共通するロータの第二変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
(回転機械の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る回転機械1について、図1図2を参照して説明する。この回転機械1は、例えば風力発電用の風車や、船舶用機械の発電機/モータに適用される。図1に示すように、回転機械1は、固定軸10と、軸受20と、発電機モータ30と、回転体40と、伝達部材50と、を備える。
【0012】
固定軸10は、軸線O方向に延びるとともに、当該軸線Oを中心とする柱状をなしている。固定軸10は、不図示の床面や他の装置に回転不能かつ移動不能に固定されている。固定軸10の外周面には、複数の軸受20が外嵌されている。これら複数の軸受20のうち、軸線O方向一方側に配置された一対の軸受20は、後述する発電機モータ30のロータ31を軸線O回りに回転可能に支持するために設けられている。軸線O方向他方側に配置された一対の軸受20は、回転体40を回転可能に支持するために設けられている。これら軸受20は、いずれも径方向の荷重を支持するためのジャーナル軸受である。4つの軸受20は、軸線O方向に間隔をあけて配列されている。
【0013】
発電機モータ30は、ロータ31と、ステータ32と、を有する。ロータ31は、上述した軸受20によって固定軸10に対して軸線O回りに相対回転可能に支持されている。ロータ31は、内側リング33と、外側リング34と、ディスク部材35と、径方向部材36と、を有する。内側リング33は、第一内側リング33aと、第二内側リング33bと、を有する。第一内側リング33aと第二内側リング33bは、軸線Oを中心とする円筒状をなしている。第一内側リング33aと、第二内側リング33bは、軸線O方向に間隔をあけて配列されている。第一内側リング33a、及び第二内側リング33bの内周面は、軸受20の外輪に固定されている。第一内側リング33aは、第二内側リング33bの軸線O方向一方側に位置している。
【0014】
外側リング34は、軸線Oを中心とする円筒状をなすことで、これら内側リング33を外周側から囲っている。外側リング34の内部には、永久磁石37が内蔵されている。詳しくは図示しないが、永久磁石37は、軸線Oに対する周方向に間隔をあけて、又は周方向に当接するようにして複数配列されている。
【0015】
ディスク部材35は、第一内側リング33aと外側リング34の軸線O方向一方側の端縁とを接続している。ディスク部材35は、軸線Oを中心とする円環状をなしている。つまり、第一内側リング33aと外側リング34との間は、周方向、及び径方向の全域にわたってディスク部材35によって閉塞されている。ディスク部材35は、ロータ31が回転した際に、外側リング34に作用する遠心力を負担するために設けられている。
【0016】
径方向部材36は、第二内側リング33bと、外側リング34の軸線O方向他方側の端縁とを接続している。図2に示すように、径方向部材36は、第二内側リング33bの外周面から径方向外側に向かって延びるとともに、周方向に間隔をあけて複数(一例として8つ)設けられている。つまり、周方向に隣接する一対の径方向部材36同士の間には扇形状の間隙が形成されている。径方向部材36の周方向における寸法(つまり、太さ)は、径方向の全域にわたって一定である。
【0017】
ステータ32は、軸線Oを中心とする筒状をなすことで、上記のロータ31を外周側から隙間を介して覆っている。ステータ32は、複数のコイル38を有する。ロータ31が回転すると、ロータ31の永久磁石37とコイル38との間で誘導起電力が発生する。この誘導起電力を外部に取り出すことによって、発電機モータ30は発電装置として機能する。反対に、コイル38に電流を供給することによって、当該コイル38とロータ31の永久磁石37との間に電磁力が発生する。この電磁力によってロータ31は軸線O回りに回転駆動される。つまり、この場合、発電機モータ30は駆動力源として機能する。
【0018】
図1に示すように、回転体40は、上記の発電機モータ30に対して軸線O方向に離間した位置に設けられている。回転体40は、例えば風力発電用の風車である場合には、風を受けるためのブレードが装着されるロータヘッドである。回転体40は、上記の軸受20のうち、軸線O方向他方側の一対の軸受20によって、固定軸10の外周面上で軸線O回りに回転可能に支持されている。
【0019】
伝達部材50は、上記のロータ31と回転体40とを、相互にトルクの伝達が可能な状態で接続している。伝達部材50は、筒体部51と、フランジ部52と、を有する。筒体部51は、軸線Oを中心とする円筒状をなしている。筒体部51は、固定軸10よりも大きな内径寸法、及び外径寸法を有している。つまり、固定軸10は、筒体部51によって外周側から覆われている。筒体部51の径方向寸法は、軸線O方向の全域にわたって一定である。
【0020】
フランジ部52は、筒体部51の軸線O方向一方側の端部に一体に設けられている。フランジ部52は、筒体部51の外周面から径方向外側に張り出す円環状をなしている。フランジ部52は、ロータ31の径方向部材36のそれぞれに対して、不図示のボルト・ナット等の締結部材によって固定されている。また、詳しくは図示しないが、伝達部材50の軸線O方向他方側の端部は、回転体40に対して相対回転不能に固定されている。これにより、ロータ31と回転体40との間で相互にトルクの伝達が可能となっている。
【0021】
(作用効果)
次に、上記の回転機械1の動作について説明する。例えば風力発電用の風車である場合には、風力を得たブレードを介して、回転体40としてのロータヘッドに回転エネルギーが与えられて、当該回転体40が軸線O回りに回転する。この回転に伴うトルクは、伝達部材50を通じて発電機モータ30のロータ31に伝達される。具体的には、伝達部材50の筒体部51、及びフランジ部52を介してロータ31の径方向部材36にトルクが伝達される。これにより、ロータ31は回転体40と同一の方向に軸線O回りに回転駆動される。ロータ31の回転に伴って、ステータ32と永久磁石37との間で誘導起電力が発生する。この電力を外部に取り出すことで、風力発電を行うことができる。
【0022】
ところで、風車のような回転機械1の場合、風向や風速の変化に伴って、回転体40としてのロータヘッドに、軸線O回りのトルク以外の外力が加わることがある。例えば、軸線O方向の力や、径方向の力、又は回転体40を軸線Oに対して傾斜させるような力である。これらの外力がロータ31に伝達されてしまうと、ロータ31の安定的な回転が妨げられ、発電能力に影響が及んでしまう。そこで、本実施形態では上述の各構成を採っている。
【0023】
上記構成によれば、トルク以外の外力が加わることによって、回転体40に軸線O方向、又は径方向の変位や軸線O方向に対する傾斜が生じた場合、当該変位は、まず伝達部材50によって径方向部材36に伝達される。径方向部材36は、軸線Oに対する径方向に延びていることから、軸線O回りのトルクは受け止める一方で、軸線O方向の力や、径方向の力に対しては柔な構造となっている。つまり、これらの方向の力に対しては径方向部材36の剛性は低いと言える。したがって、トルク以外の外力が生じた際には、当該径方向部材36に優先的にたわみが生じる。外力から解放された際には、当該たわみは、径方向部材36の弾性復元力によって解消する。このように、径方向部材36によって、回転体40の不用意な変位を吸収することができる。その結果、ロータ31にトルク以外の外力成分が伝達されてしまうことを回避することができる。よって、発電機モータ30をより円滑かつ安定的に運用し続けることが可能となる。
【0024】
また、ロータ31の一部に上記の径方向部材36を適用することのみによって上記のような作用効果を得ることができる。つまり、部品点数を増やすことなく、上記のような外力に抗する構造を実現することができる。これにより、装置の大型化を回避することができるとともに、製造コストやメンテナンスコストの削減も図ることができる。
【0025】
さらに、上記構成によれば、軸線Oを中心とする環状のフランジ部52が径方向部材36に固定され、筒状の筒体部51が回転体40に接続されている。これにより、軸線O回りのトルクを、ロータ31と回転体40との間で、余すことなく効率的に伝達することができる。他方で、伝達部材50が筒状をなさず、周方向に間隔をあけて配列された複数の棒状をなしている場合等には、トルクによって当該部材に変形を生じ、トルクの効率的な伝達が阻害されてしまう可能性がある。上記構成によれば、このような可能性を大きく低減することが可能となる。
【0026】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、軸受20の設けられる個数や位置は、上記第一実施形態によっては限定されず、設計や仕様に応じて適宜決定されてよい。また、上記第一実施形態では、外側リング34と第一内側リング33aとがディスク部材35によって接続されている例について説明した。しかしながら、遠心力に抗することができる限りにおいて、ディスク部材35に代えて、径方向部材36を用いることも可能である。つまり、この場合、第一内側リング33a、及び第二内側リング33bと、外側リング34とがともに径方向部材36によって接続されている。このような構成によっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態について、図3から図5を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図3に示すように、本実施形態に係る回転機械101では、主に伝達部材150の構成が上記第一実施形態とは異なっている。
【0028】
伝達部材150は、筒体部51と、複数のピン53と、を有している。筒体部51は、第一実施形態と同様の構成を有する。ピン53は、筒体部51の軸線O方向一方側の端面から軸線O方向に突出している。図4に示すように、ピン53は、軸線Oに対する周方向に間隔をあけて複数(一例として8つ)設けられている。ピン53は、軸線O方向から見て円形の断面形状を有する。さらに、ロータ31の径方向部材36には、これらピン53と対応する径方向位置に、それぞれ孔部39が形成されている。孔部39は、径方向部材36を軸線O方向に貫通する円形の孔である。図5に示すように、孔部39の内径寸法は、ピン53の外径寸法よりも大きく設定されている。それぞれのピン53は、この孔部39に軸線O方向他方側から挿入されている。
【0029】
(作用効果)
上記構成によれば、回転体40が回転した際には、これらピン53が孔部39の内周面に当接することで回転体40のトルクをロータ31に伝達する。また、ロータ31が駆動力源として機能する際には、ロータ31のトルクが、孔部39の内周面からピン53を通じて伝達部材150に伝達される。このように、ピン53が孔部39の内周面に当接することで、軸線O回りのトルクを効率的に回転体40とロータ31との間で相互に伝達することができる。また、伝達部材150とロータ31を接続するに当たってボルト等の締結部材を必要としないことから、部品点数の削減も実現することができる。
【0030】
さらに、上記構成によれば、孔部39の内径がピン53の外径よりも大きいことから、ロータ31又は回転体40に軸線O方向の変位が生じた場合には、ピン53が孔部39内で軸線O方向に進退動することが可能である。同様に、径方向の変位が生じた場合にもピン53が孔部39内で径方向にわずかに変位することができる。また、ピン53が軸線Oに対して傾斜するように変位した場合も同様である。これにより、外力による変位がロータ31と回転体40との間で不用意に伝達されてしまうことを回避することができる。したがって、回転機械1をより安定的に運用することが可能となる。
【0031】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、ピン53、及び径方向部材36の個数は、上記第二実施形態によっては限定されず、設計や仕様に応じて適宜決定されてよい。
【0032】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図6に示すように、本実施形態では、第二実施形態で説明したピン53に、揺動保持部60が外嵌されている。揺動保持部60は、孔部39内で、ピン53を三次元的に揺動可能に保持する部材である。揺動保持部60として具体的には、自動調心ころ軸受や、球面座軸受が好適に用いられる。図6の例では、揺動保持部60として自動調心ころ軸受を用いた構成を示している。
【0033】
より詳細には、この揺動保持部60は、内輪61と、外輪62と、複数のころ63と、を有する。内輪61は、ピン53の中心軸Xを中心とする円筒状をなしている。内輪61は、ピン53の外周面に相対移動不能に固定されている。外輪62は、内輪61を外周側から間隔をあけて覆っている。内輪61と外輪62との間には、複数のころ63が配置されている。ころ63は中心軸X方向に間隔をあけて2列にわたって設けられている。また、ころ63は周方向にも複数配列されている。ころ63は、樽型をなしている。また、ころ63の軸方向はピン53の中心軸Xに対して傾斜している。内輪61の外周面、及び外輪62の内周面は、これら複数のころ63が摺動可能なように円弧状をなしている。また、外輪62と孔部39の内周面との間には隙間が形成されている。
【0034】
(作用効果)
上記構成によれば、回転体40、又はロータ31に外力が加わった際に当該回転体40、又はロータ31が軸線Oに対して傾斜するように変位した場合には、ピン53に外嵌された揺動保持部60の外輪62が孔部39の内周面に対して当接する。これにより、外輪62がピン53の中心軸Xに対して揺動する。つまり、ピン53が傾斜しても外輪62の姿勢は変化せずに維持される。このため、ピン53が孔部39内で揺動するように保持される。これにより、ロータ31、又は回転体40の一方の傾斜や変位が揺動保持部60に吸収され、他方側に当該変位の影響が伝わることを回避することができる。また、揺動保持部60の調心機能によってピン53の姿勢を自律的に維持することもできる。これにより、効率的にトルクを伝達することができることに加えて、トルク以外の外力による影響を抑えて、より安定的に回転機械1を運用することが可能となる。
【0035】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、図7に変形例として示すように、孔部39の内周面に軸受部材70を設けることも可能である。軸受部材70は、孔部39の内周面に嵌め込まれている。軸受部材70は、耐摩耗性の高い材料で形成されていることが望ましい。この構成によれば、外輪62が孔部39の内周面に直接的に接触することがないため、孔部39の内周面の摩耗や変形を回避することができる。また、軸受部材70が摩耗した際には、当該軸受部材70のみを交換することで、容易かつ低廉に装置のリフレッシュを行うことができる。これにより、長期にわたってさらに安定的に回転機械1を運用することができる。
【0036】
また、図8に示すように、径方向部材36同士の間を塞ぐ充填部材80をこれら径方向部材36と一体に設けることも可能である。つまり、この場合、外側リング34と第二内側リング33bとがディスク状の部材によって接続されている。ピン53が孔部39に挿入されている構成を採ることで、上述のような外力による変位や傾斜を吸収できることから、必ずしも径方向部材36のたわみによる変位や傾斜の吸収は必要とならないためである。また、これにより、ロータ31の剛性が確保されることから、軸線O回りのトルクによるロータ31の変形を防ぐこともできる。この構成を第二実施形態の構成に組み合わせて適用することも可能である。
【0037】
<各実施形態に共通する変形例>
また、各実施形態に共通する変形例として、図9図10に示す各構成を採ることが可能である。図9の例では、径方向部材36の周方向の寸法が、径方向内側から外側に向かうに従って次第に減少している。この構成によれば、大きなトルクが付加される内周側では当該トルクを安定的に受け止めつつ、外周側ではたわみが生じやすくなることで外力の吸収を効果的に行うことができる。また、図10の例では、径方向部材36として、内側リング33の接線方向に延びる複数の棒状部材が用いられている。これら棒状部材は、スポーク状に互いに交差している。この構成によっても上記したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
<付記>
各実施形態に記載の回転機械1は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係る回転機械1は、軸線O方向に延びる固定軸10と、前記固定軸10に外嵌された軸受20と、前記軸受20を介して前記固定軸10に相対回転可能に設けられたロータ31を有する発電機モータ30と、前記固定軸10に対して相対回転可能に、かつ、前記発電機モータ30と前記軸線O方向に離間して設けられた回転体40と、前記ロータ31と前記回転体40との間でトルクを伝達可能な伝達部材50と、を備え、前記ロータ31は、前記軸受20に固定された内側リング33と、前記内側リング33を外周側から囲う外側リング34と、前記内側リング33と前記外側リング34とを径方向に接続するとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の径方向部材36と、を有し、前記伝達部材50は、前記ロータ31における前記径方向部材36に接続されている。
【0040】
上記構成によれば、外力によって回転体40に軸線O方向、又は径方向の変位や軸線O方向に対する傾斜が生じた場合には、径方向部材36に優先的にたわみを生じることでこれらの変位を吸収することができる。また、部品点数を増やすことなく、上記のような外力に抗する構造を実現することができる。これにより、装置の大型化を回避することもできる。
【0041】
(2)第2の態様に係る回転機械1は、(1)の回転機械1であって、前記伝達部材50は、前記軸線Oを中心とする筒状の筒体部51と、該筒体部51における前記ロータ31側の端部に設けられ、前記軸線Oを中心とする環状のフランジ部52と、を有し、前記フランジ部52は、前記径方向部材36に対して固定されている。
【0042】
上記構成によれば、軸線Oを中心とする環状のフランジ部52が径方向部材36に固定され、筒状の筒体部51が回転体40に接続されている。これにより、軸線O回りのトルクを、回転体40とロータ31との間で余すことなく相互に伝達することができる。
【0043】
(3)第3の態様に係る回転機械1は、(1)の回転機械1であって、前記径方向部材36には、該径方向部材36を前記軸線O方向に貫通する孔部39が形成され、前記伝達部材50は、前記軸線Oを中心とする筒状の筒体部51と、該筒体部51における前記ロータ31側の端面から前記軸線O方向に突出するとともに周方向に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記孔部39に挿入されている複数のピン53と、を有する。
【0044】
上記構成によれば、ピン53が孔部39の内周面に当接することで、軸線O回りのトルクを効率的に回転体40に伝達することができる。また、伝達部材50とロータ31を接続するに当たってボルト等の締結部材を必要としないことから、部品点数の削減も実現することができる。
【0045】
(4)第4の態様に係る回転機械1は、(3)の回転機械1であって、前記孔部39、及び前記ピン53は、前記軸線O方向から見て円形をなし、前記孔部39の内径は、前記ピン53の外径よりも大きく設定されている。
【0046】
上記構成によれば、孔部39の内径がピン53の外径よりも大きいことから、ロータ31又は回転体40に軸線O方向の変位が生じた場合には、ピン53が孔部39内で軸線O方向、又は径方向に移動することで、当該変位を吸収することができる。
【0047】
(5)第5の態様に係る回転機械1は、(3)又は(4)の回転機械1であって、前記ピン53に外嵌され、前記孔部39の内側で前記ピン53を三次元的に揺動自在に保持する揺動保持部60をさらに備える。
【0048】
上記構成によれば、ロータ31又は回転体40に外力が加わった際に当該ロータ31又は回転体40が軸線Oに対して傾斜するように変位した場合には、ピン53に外嵌された揺動保持部60が孔部39の内周面に対して当接することで、当該ピン53が孔部39内で揺動するように保持される。これにより、ロータ31又は回転体40の変位が揺動保持部60に吸収され、回転体40側に当該変位の影響が伝わることを回避することができる。
【0049】
(6)第6の態様に係る回転機械1は、(5)の回転機械1であって、前記孔部39の内周面に嵌め込まれ、前記揺動保持部60を外周側から隙間を介して囲う軸受部材70をさらに備える。
【0050】
上記構成によれば、孔部39の内周面に軸受部材70が設けられていることから、揺動保持部60と孔部39の内周面とが直接的に摺接することによる孔部39の内周面の摩耗や損傷を防ぐことができる。また、軸受部材70が摩耗した際には、当該軸受部材70のみを交換することで、容易かつ低廉に装置のリフレッシュを行うことができる。
【0051】
(7)第7の態様に係る回転機械1は、(3)から(6)のいずれか一態様に係る回転機械1であって、周方向に隣り合う一対の前記径方向部材36同士の間を塞ぐ充填部材80をさらに備える。
【0052】
上記構成によれば、径方向部材36同士の間が充填部材80によって塞がれていることによって、ロータ31は実質的に円盤状をなしている。これにより、軸線O回りのトルクによるロータ31の変形を防ぐことができる。
【0053】
(8)第8の態様に係る回転機械1は、軸線O方向に延びる固定軸10と、前記固定軸10に外嵌された軸受20と、前記軸受20を介して前記固定軸10に相対回転可能に設けられたロータ31を有する発電機モータ30と、前記固定軸10に対して相対回転可能に、かつ、前記発電機モータ30と前記軸線O方向に離間して設けられた回転体40と、前記ロータ31と前記回転体40との間でトルクを伝達可能な伝達部材50と、を備え、前記ロータ31は、前記軸受20に固定された内側リング33と、前記内側リング33を外周側から囲う外側リング34と、前記内側リング33と前記外側リング34とを径方向に接続するとともに周方向に間隔をあけて設けられた複数の径方向部材36と、周方向に隣り合う一対の前記径方向部材36同士の間を塞ぐ充填部材80と、を有し、前記伝達部材50は、前記ロータ31における前記径方向部材36に接続され、前記径方向部材36には、該径方向部材36を前記軸線O方向に貫通する孔部39が形成され、前記伝達部材50は、前記軸線Oを中心とする筒状の筒体部51と、該筒体部51における前記ロータ31側の端面から前記軸線O方向に突出するとともに周方向に間隔をあけて設けられ、それぞれ前記孔部39に挿入されている複数のピン53と、を有する。
【0054】
上記構成によれば、ピン53が孔部39の内周面に当接することで、軸線O回りのトルクを効率的に回転体40に伝達することができる。また、伝達部材50とロータ31を接続するに当たってボルト等の締結部材を必要としないことから、部品点数の削減も実現することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…回転機械
10…固定軸
20…軸受
30…発電機モータ
31…ロータ
32…ステータ
33…内側リング
33a…第一内側リング
33b…第二内側リング
34…外側リング
35…ディスク部材
36…径方向部材
37…永久磁石
38…コイル
39…孔部
40…回転体
50…伝達部材
51…筒体部
52…フランジ部
53…ピン
60…揺動保持部
61…内輪
62…外輪
63…ころ
70…軸受部材
80…充填部材
101…回転機械
150…伝達部材
O…軸線
X…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10