(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033116
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】コイルモジュール、渦電流探傷用プローブ、及び渦電流探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/90 20210101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N27/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136510
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 純一朗
(72)【発明者】
【氏名】山口 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】神納 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB21
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053CA18
2G053DA01
2G053DB04
(57)【要約】
【課題】低コスト、かつ短時間で製作することが可能なコイルモジュール、渦電流探傷用プローブ、及び渦電流探傷装置を提供する。
【解決手段】コイルモジュールは、第一軸線を囲う環状をなす第一コイル、及び第一軸線に交差する第二軸線を囲う環状をなすとともに、第一コイルの外周側の一部を覆う第二コイルを有するクロスコイルと、第一軸線と第二軸線がなす面内で、該第一軸線と該第二軸線に交差する方向に延びる配列方向に複数のクロスコイルが配列された状態で複数のクロスコイルを保持する収容凹部が形成されたコイルホルダと、を備え、配列方向に隣り合う一対の前記クロスコイルでは、一方側のクロスコイルの第一コイルが他方側のクロスコイルの第二コイルに対向するとともに、一方側のクロスコイルの第二コイルが他方側のクロスコイルの第一コイルに対向している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸線を囲う環状をなす第一コイル、及び前記第一軸線に交差する第二軸線を囲う環状をなすとともに、前記第一コイルの外周側の一部を覆う第二コイルを有するクロスコイルと、
前記第一軸線と前記第二軸線がなす面内で、該第一軸線と該第二軸線に交差する方向に延びる配列方向に複数の前記クロスコイルが配列された状態で該複数のクロスコイルを保持する収容凹部が形成されたコイルホルダと、
を備え、
前記配列方向に隣り合う一対の前記クロスコイルでは、一方側の前記クロスコイルの前記第一コイルが他方側の前記クロスコイルの前記第二コイルに対向するとともに、一方側の前記クロスコイルの前記第二コイルが他方側の前記クロスコイルの前記第一コイルに対向しているコイルモジュール。
【請求項2】
前記コイルホルダは、前記第一軸線と前記第二軸線とがなす面に沿って広がる板状をなしている請求項1に記載のコイルモジュール。
【請求項3】
前記コイルホルダは、前記配列方向を周方向とする軸線を中心として円環状をなしている請求項1に記載のコイルモジュール。
【請求項4】
前記第一コイルは、前記第一軸線方向から見て、前記軸線に対する径方向内側の部分を上底とし、径方向外側の部分を下底とする台形状をなし、前記上底が前記下底よりも短い請求項3に記載のコイルモジュール。
【請求項5】
前記第一軸線と前記第二軸線は、90°未満の角度で交差している請求項3又は4に記載のコイルモジュール。
【請求項6】
請求項1に記載のコイルモジュールと、
該コイルモジュールを保持する外装と、
を備える渦電流探傷用プローブ。
【請求項7】
請求項6に記載の渦電流探傷用プローブと、
該渦電流探傷用プローブに交流電流を供給する電源部と、
を備える渦電流探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルモジュール、渦電流探傷用プローブ、及び渦電流探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管等における傷や減肉などの欠陥を非破壊で検査する方法として渦電流探傷方法が知られている。この方法では、配管の内面から外面にかけて渦電流を形成させる励磁コイルと、配管の不良個所で生じた渦電流の乱れを検出する検出コイルと、これら励磁コイル、及び検出コイルの巻線を巻き付けるための巻枠と、を有するクロスコイルが用いられることが従来一般的である(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
クロスコイルを製作するに当たっては、上記の巻枠に励磁コイルと検出コイルの巻線を交互に巻き付けていく方法が採られる。つまり、励磁コイルの巻線を巻き付けた後に、検出コイルの巻線を励磁コイルと交差する方向から巻き付ける、という作業を繰り返して行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の巻枠を用いてクロスコイルを製作する場合、作業を自動化することが難しく、製作に要するコスト増大と、製作期間の長期化が問題となっていた。特に、多数のクロスコイルを要する渦電流探傷用のアレイプローブを作成する際には、クロスコイルの製作に要する期間が顕著なボトルネックとなっていた。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、低コスト、かつ短時間で製作することが可能なコイルモジュール、渦電流探傷用プローブ、及び渦電流探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るコイルモジュールは、第一軸線を囲う環状をなす第一コイル、及び前記第一軸線に交差する第二軸線を囲う環状をなすとともに、前記第一コイルの外周側の一部を覆う第二コイルを有するクロスコイルと、前記第一軸線と前記第二軸線がなす面内で、該第一軸線と該第二軸線に交差する方向に延びる配列方向に複数の前記クロスコイルが配列された状態で該複数のクロスコイルを保持する収容凹部が形成されたコイルホルダと、を備え、前記配列方向に隣り合う一対の前記クロスコイルでは、一方側の前記クロスコイルの前記第一コイルが他方側の前記クロスコイルの前記第二コイルに対向するとともに、一方側の前記クロスコイルの前記第二コイルが他方側の前記クロスコイルの前記第一コイルに対向している。
【0008】
本開示に係る渦電流探傷用プローブは、上記のコイルモジュールと、該コイルモジュールを保持する外装と、を備える。
【0009】
本開示に係る渦電流探傷装置は、上記の渦電流探傷用プローブと、該渦電流探傷用プローブに交流電流を供給する電源部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、低コスト、かつ短時間で製作することが可能なコイルモジュール、渦電流探傷用プローブ、及び渦電流探傷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る渦電流探傷装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る渦電流探傷用プローブの構成を示す側面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係るコイルモジュールの構成を示す側面図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係るコイルホルダの構成を示す斜視図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係るクロスコイルを第一軸線方向から見た図である。
【
図6】本開示の第一実施形態に係るクロスコイルを第二軸線方向から見た図である。
【
図7】本開示の第一実施形態に係るクロスコイルの第一変形例を示す斜視図である。
【
図8】本開示の第一実施形態に係るクロスコイルの第二変形例を示す斜視図である。
【
図9】本開示の第一実施形態に係るクロスコイルの第三変形例を示す斜視図である。
【
図10】本開示の第一実施形態に係るクロスコイルの第四変形例を示す図である。
【
図11】本開示の第二実施形態に係るコイルモジュールの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
(渦電流探傷装置の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る渦電流探傷装置1、渦電流探傷用プローブ10、及びコイルモジュール20について、
図1から
図6を参照して説明する。
【0013】
渦電流探傷装置1は、例えば原子力発電プラントの蒸気発生器の伝熱管や、その他の各種配管、ダクト等(以下、配管等と呼ぶ。)の内部に挿入された状態で、対象物の表面を走査することで当該対象物に生じた不良(割れや減肉)を発見するための装置である。
【0014】
図1に示すように、渦電流探傷装置1は、渦電流探傷用プローブ10と、スイッチ部30と、電源部40と、探傷装置本体50と、を備えている。
【0015】
渦電流探傷用プローブ10は、配管の内部に挿入されて使用される。電源部40は、渦電流探傷用プローブに交流電圧を印加して、後述するコイルモジュール20から磁場を発生させる。渦電流探傷用プローブ10を配管の表面に沿って走査することで、不良個所を通過した際には、コイルモジュール20からの磁場によって配管に発生する渦電流(つまり、コイルモジュール20に発生させた交流電流によって配管の材料中に発生した渦電流)に乱れが生じる。探傷装置本体50は、この渦電流の乱れを数値化、又は画像化して作業者に視覚的に伝える装置である。スイッチ部30は、コイルモジュール20に流れる交流電流の供給状態(動作モード)を切り替えるための装置である。
【0016】
(渦電流探傷用プローブの構成)
図2に示すように、渦電流探傷用プローブ10は、外装11と、ケーブル12と、コイルモジュール20と、保持リング13と、を有する。
【0017】
外装11は、配管の内部で自在に湾曲可能な可撓性を有する材料で形成されている。外装11の内部には、上記の電源部40等に接続されたケーブル12から延びる各種の配線材料が収容されている。外装11の延在中途位置には、コイルモジュール20と、一対の保持リング13と、が設けられている。保持リング13は、コイルモジュール20を外装11の延在方向の両側から移動不能に保持している。
【0018】
図3に示すように、コイルモジュール20は、複数のクロスコイル21と、コイルホルダ22と、を有する。クロスコイル21は、コイルホルダ22によって、その姿勢と形状が保持されている。
図3、又は
図4に示すように、コイルホルダ22は、軸線Oを中心とする円環状をなしている。コイルホルダ22の外周面には、複数のクロスコイル21を収容するための収容凹部23が形成されている。収容凹部23は、コイルホルダ22の外周面から内周側に向かって凹むとともに周方向に連続して形成されている。収容凹部23に収容された状態で、クロスコイル21は、周方向に互いに当接した状態で配列されている。以下では、クロスコイル21の配列されている方向(つまり、コイルホルダ22の周方向)を単に「配列方向」と呼ぶことがある。コイルホルダ22は、例えば樹脂を用いて三次元積層造形によって形成されていることが望ましい。
【0019】
図5、及び
図6に示すように、クロスコイル21は、第一コイル61と、第二コイル62と、を有する。第一コイル61は、第一軸線A1を中心とする環状をなしている。なお、第一コイル61は、第一軸線A1を外側から囲う環状をなしていればよく、当該第一コイル61の中心が必ずしも第一軸線A1上に位置していなくてもよい。第一軸線A1は、上記の軸線Oに対してコイルホルダ22の外周面に沿う面内で交差する方向に延びている。また、第一コイル61は、第一軸線A1方向から見て、軸線Oに対する径方向内側を上底とし、径方向外側を下底とする等脚台形状をなしている。また、上底が下底よりも短くなるように構成されている。つまり、第一コイル61は、径方向内側を向く端面が、径方向外側を向く端面よりも小さく形成されている。なお、上記の「台形」とは必ずしも「上底と下底が完全に平行な矩形状」を指すものではない。つまり、上底と下底が、製造上の誤差や設計上の公差に起因して、わずかに平行からずれていてもよい。「等脚」との表現についても同様であり、脚と上底、又は下底がなす角度が左右でわずかに異なっていてもよい。
【0020】
第二コイル62は、第一軸線A1に交差する第二軸線A2を中心とする矩形環状をなしている。なお、第二コイル62は、第二軸線A2を外側から囲う環状をなしていればよく、当該第二コイル62の中心が必ずしも第二軸線A2上に位置していなくてもよい。第一軸線A1と第二軸線A2は、一例として直交している。第一コイル61は、第二コイル62の内側にはめ込まれている。言い換えると、第二コイル62は、第一コイル61の外周面の一部を覆っている。したがって、第二コイル62の内側の開口寸法は、第一コイル61の外形寸法と同等かわずかに大きく設定されている。つまり、第一コイル61は、第二コイル62の内側の開口に挿入された状態となっている。
【0021】
望ましくは、第一コイル61と第二コイル62は、第一軸線A1方向、及び第二軸線A2方向の中央部で直交している。ただし、これら第一コイル61と第二コイル62の中央部がわずかにずれていても検出精度には影響が及ばないか、極わずかな影響が及ぶのみである。したがって、コイルホルダ22の寸法精度にも、このようなずれを許容するだけの製造誤差が生じていてもよい。
【0022】
これにより、第一コイル61と第二コイル62とが互いに交差した状態で組み合わされて、クロスコイル21が構成される。一例として第一コイル61は検出コイルとして機能し、第二コイル62は励磁コイルとして機能する。励磁コイルは、配管等の内面から外面にかけての領域で渦電流を発生させる。検出コイルは、この渦電流が割れや減肉等の欠陥によって乱された場合に、当該乱れ成分を検出する。また、他の例として、第二コイル62を検出コイルとして機能させ、第一コイル61を励磁コイルとして機能させることも可能である。
【0023】
上記のクロスコイル21は、第一コイル61の第一軸線A1と第二コイル62の第二軸線A2がなす面内で、第一軸線A1と第二軸線A2に公差する方向(つまり、上述の「配列方向」に複数配列される。コイルホルダ22に収容された状態で、周方向に互いに隣接する一対のクロスコイル21では、一方側のクロスコイル21の第一コイル61が他方側のクロスコイル21の第二コイル62に当接している。また、一方側のクロスコイル21の第二コイル62が他方側のクロスコイル21の第一コイル61に当接している。これにより、各クロスコイル21の中心間距離は、クロスコイル21の周方向における外形寸法の50%程度に抑えられている。さらに、コイルホルダ22上では、配列方向に対して第一軸線A1、及び第二軸線A2がそれぞれ45°の角度をなしている。なお、一方側のクロスコイル21の第一コイル61は、他方側のクロスコイル21の第二コイル62に当接していなくてもよく、隙間をあけて対向していてもよい。同様に、一方側のクロスコイル21の第二コイル62は、他方側のクロスコイル21の第一コイル61に当接していなくてもよく、隙間をあけて対向していてもよい。つまり、上記の「当接」とは、「隙間がゼロのもとで対向している」状態を指す。
【0024】
(作用効果)
次に、上述した渦電流探傷装置1、渦電流探傷用プローブ10の使用方法の一例について説明する。渦電流探傷装置1を使用するに当たっては、まず電源部40によって渦電流探傷用プローブ10の各コイルモジュール20に交流電流を供給する。また、スイッチ部30によって、順次励磁するコイルを切り替える。この状態で、渦電流探傷用プローブ10を配管等の内面、又は外面に沿って走査させる。各コイルモジュール20が不良個所を検出した場合には、探傷装置本体50によって当該不良の位置の特定と、深さや長さ等の性状の確認に資する信号の採取とが行われる。
【0025】
ここで、従来、クロスコイル21を製作するに当たっては、巻枠に励磁コイルと検出コイルの巻線を交互に巻き付けていく方法が採られていた。つまり、励磁コイルの巻線を巻き付けた後に、検出コイルの巻線を励磁コイルと交差する方向から巻き付ける、という作業を繰り返して行う必要があった。
【0026】
しかしながら、上記の巻枠を用いてクロスコイル21を製作する場合、作業を自動化することが難しく、製作に要するコスト増大と、製作期間の長期化が問題となっていた。特に、多数のクロスコイル21を要する渦電流探傷用のアレイプローブを作成する際には、クロスコイル21の製作に要する期間が顕著なボトルネックとなっていた。そこで、本実施形態では上述の各構成を採っている。
【0027】
上記構成によれば、第一コイル61を第二コイル62の内側に挿入してクロスコイル21を組み立てた後、コイルホルダ22の収容凹部23に当該クロスコイル21を順次挿入することで、コイルモジュール20を容易に製造することができる。加えて、環状の単純な形状のコイルは、自動化によって低コストかつ短納期で多数製作することが可能である。これにより、従来のように巻枠に対して巻線を交互に巻き付ける作業を行う必要がなくなる。その結果、製造コストの削減と納期の短縮とを両立することができる。
【0028】
また、巻枠を用いないことから、クロスコイル21同士の間の離間距離をさらに短くすることができる。このため、1つのコイルホルダ22に多数のクロスコイル21を密に並べることができ、より広い範囲を細かいデータピッチで探傷検査を行うことが可能となる。具体的には、円環状のコイルホルダ22を軸線O方向に複数配列することなく、1つのみのコイルモジュール20によって十分な検出精度を確保することができる。その結果、渦電流探傷用プローブ10の製造コストや運用コストをさらに低減することができる。
【0029】
さらに、上記構成によれば、コイルホルダ22が円環状をなしていることで、クロスコイル21の形状と姿勢を保ったまま、これらクロスコイル21を円環状に精緻に配列することができる。これにより、当該コイルモジュール20を、配管の検査用に用いられる渦電流探傷用プローブ10等に容易に適用することが可能となる。
【0030】
加えて、上記構成によれば、台形状をなす第一コイル61の径方向内側の部分が外側の部分よりも短い。これにより、コイルホルダ22上で複数のクロスコイル21を配列した際に、当該径方向内側の部分同士が干渉することがなくなる。その結果、コイルモジュール20の組立作業中にクロスコイル21同士の干渉を避けるための特別な工夫をすることなく、単純にクロスコイル21をコイルホルダ22に挿入するだけで済むようになる。したがって、組立作業を容易にできるとともに、組立に伴うクロスコイル21の変形や損傷を回避することができる。
【0031】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0032】
例えば、
図7に第一変形例として示すように、第一コイル61の幅(第一軸線A1方向における寸法:巻き数)を、第二コイル62の幅(第二軸線A2方向における寸法)よりも大きくしてもよい。これにより、信号強度を高めることができる。
【0033】
また、第二変形例として
図8に示すように、第一コイル61を円環状に形成し、第二コイル62を矩形環状に形成してもよい。この場合、第一コイル61の一部が隣接する第二コイル62の内側にも入り込むため、さらに信号強度を高めることができる。
【0034】
さらに、第三変形例として
図9に示すように、第二変形例よりも第一コイル61の幅を大きくしてもよい。この構成によっても、信号強度を向上させることが可能である。
【0035】
加えて、
図10に第四変形例として示すように、第一コイル61と第二コイル62とが、90°未満の角度で交差する構成を採ることも可能である。つまり、第一軸線A1と第二軸線A2とがなす角度θが、90°未満である。ここで、第一軸線A1と第二軸線A2とが直交している場合、配管の形状等によっては、配管の中心軸方向に生じた欠陥の検出精度が低下する場合がある。上記構成によれば、第一軸線A1と第二軸線A2とが90°未満の角度で交差していることから、当該中心軸方向の欠陥を横切る渦電流成分が増加する。これにより、検出精度を十分に確保することができる。
【0036】
さらに、上記第一実施形態では、1つのみのコイルホルダ22を有する構成について説明したが、コイルホルダ22の数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
【0037】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態について、
図11を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態に係るコイルモジュール120では、コイルホルダ122の形状が第一実施形態とは異なっている。
【0038】
コイルホルダ122は、第一軸線A1と第二軸線A2がなす面に沿って形成された板状をなしている。コイルホルダ122には、複数のクロスコイル21を収容するための収容凹部123が形成されている。つまり、コイルホルダ122は、クロスコイル21の寸法よりも大きな厚さを有している。コイルホルダ122上で複数のクロスコイル21は直線状に配列されている。
【0039】
上記構成によれば、コイルホルダ122が板状をなしていることから、平面状の検査対象物に対して隙間なくコイルモジュール120を当接させることができる。これにより、当該平面状の検査対象物に対して精度の高い探傷検査を行うことができる。また、上記第一実施形態と同様に、コイルホルダ122を用意すれば、クロスコイル21を当該コイルホルダ122にはめ込んでいくことで容易にコイルモジュール120を製作することができる。これにより、製造コストや運用コストの大幅な削減を実現することが可能となる。
【0040】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0041】
<付記>
各実施形態に記載のコイルモジュール20、渦電流探傷用プローブ10、及び渦電流探傷装置1は、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)第1の態様に係るコイルモジュール20は、第一軸線A1を囲う環状をなす第一コイル61、及び前記第一軸線A1に交差する第二軸線A2を囲う環状をなすとともに、前記第一コイル61の外周側の一部を覆う第二コイル62を有するクロスコイル21と、前記第一軸線A1と前記第二軸線A2に交差する方向に延びる配列方向に複数の前記クロスコイル21が配列された状態で該複数のクロスコイル21を保持する収容凹部23が形成されたコイルホルダ22と、を備え、前記配列方向に隣り合う一対の前記クロスコイル21では、一方側の前記クロスコイル21の前記第一コイル61が他方側の前記クロスコイル21の前記第二コイル62に対向するとともに、一方側の前記クロスコイル21の前記第二コイル62が他方側の前記クロスコイル21の前記第一コイル61に対向している。
【0043】
上記構成によれば、第一コイル61を第二コイル62の内側に挿入してクロスコイル21を組み立てた後、コイルホルダ22の収容凹部23に当該クロスコイル21を順次挿入することで、コイルモジュール20を容易に製造することができる。これにより、製造コストの削減と製造に要する期間の短縮とを両立することができる。
【0044】
(2)第2の態様に係るコイルモジュール20は、(1)のコイルモジュール20であって、前記コイルホルダ22は、前記第一軸線A1と前記第二軸線A2とがなす面に沿って広がる板状をなしている。
【0045】
上記構成によれば、コイルホルダ22が板状をなしていることから、平面状の検査対象物に対して隙間なく当該コイルモジュール20を当接させて、精度の高い探傷検査を行うことができる。
【0046】
(3)第3の態様に係るコイルモジュール20は、(1)のコイルモジュール20であって、前記コイルホルダ22は、前記配列方向を周方向とする軸線Oを中心として円環状をなしている。
【0047】
上記構成によれば、コイルホルダ22が円環状をなしていることで、クロスコイル21を円環状に精緻に配列することができる。これにより、当該コイルモジュール20を、配管の検査用に用いられる渦電流探傷用プローブ10等に容易に適用することが可能となる。
【0048】
(4)第4の態様に係るコイルモジュール20は、(3)のコイルモジュール20であって、前記第一コイル61は、前記第一軸線A1方向から見て、前記軸線Oに対する径方向内側の部分を上底とし、径方向外側の部分を下底とする台形状をなし、前記上底が前記下底よりも短い。
【0049】
上記構成によれば、台形状をなす第一コイル61の径方向内側の部分が外側の部分よりも短いため、コイルホルダ22上で複数のクロスコイル21を配列した際に、当該径方向内側の部分同士が干渉することがない。これにより、組立作業を容易にできるとともに、組立に伴うクロスコイル21の変形や損傷を回避することができる。
【0050】
(5)第5の態様に係るコイルモジュール20は、(3)又は(4)のコイルモジュール20であって、前記第一軸線A1と前記第二軸線A2は、90°未満の角度で交差している。
【0051】
ここで、第一軸線A1と第二軸線A2とが直交している場合、配管の形状等によっては、配管の中心軸方向に生じた欠陥の検出精度が低下する場合がある。上記構成によれば、第一軸線A1と第二軸線A2とが90°未満の角度で交差していることから、当該中心軸方向の欠陥を横切る渦電流成分が増加する。これにより、欠陥検出精度を十分に確保することができる。
【0052】
(6)第6の態様に係る渦電流探傷用プローブ10は、(1)から(5)のいずれか一態様に係るコイルモジュール20と、該コイルモジュール20を保持する外装11と、を備える。
【0053】
上記構成によれば、低コスト、かつ短時間で製作することが可能な渦電流探傷用プローブ10を提供することができる。
【0054】
(7)第7の態様に係るコイルモジュール20は、(6)の渦電流探傷用プローブ10と、該渦電流探傷用プローブ10に交流電流を供給する電源部40と、を備える。
【0055】
上記構成によれば、低コスト、かつ短時間で製作することが可能な渦電流探傷装置1を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…渦電流探傷装置
10…渦電流探傷用プローブ
11…外装
12…ケーブル
13…保持リング
20…コイルモジュール
21…クロスコイル
22…コイルホルダ
23…収容凹部
30…スイッチ部
40…電源部
50…探傷装置本体
61…第一コイル
62…第二コイル
120…コイルモジュール
122…コイルホルダ
123…収容凹部
A1…第一軸線
A2…第二軸線
O…軸線