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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033118
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】複合プレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240306BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240306BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B32B27/36 102
G09F9/00 302
G09F9/00 313
B32B17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136513
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】520178847
【氏名又は名称】グランツテクノワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 鎮郎
【テーマコード(参考)】
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK45C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EJ323
4F100GB31
4F100GB48
4F100JL13B
4F100JL13D
4F100JL13E
4F100JN01B
5G435AA17
5G435GG43
5G435HH02
5G435HH18
5G435KK07
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】取付作業と複数をまとめて梱包する梱包作業とが容易な複合プレートと、このような複合プレートの製造方法を提供する。
【解決手段】複合プレート13は、ガラス板21と、脂肪族ポリカーボネート系樹脂で形成された樹脂板22と、粘着シート23とを備える。樹脂板22は、粘着シート23を介して、ガラス板21に重ねられている。複合プレート13は第1圧着工程、第2圧着工程、切断工程を有する製造方法で製造される。第1圧着工程及び第2圧着工程は、ガラス板21と粘着シート23と樹脂板材とを厚み方向に重なった状態で圧着して積層体とする。切断工程は、積層体のうち樹脂板材の周縁部の少なくとも一部を切除することにより、樹脂板材を予め定められたサイズにする。脱気処理工程は切断工程を経た積層体を、加圧下かつ加熱下に静置することにより内部に含まれている気泡を除去して複合プレート13とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、
前記ガラス板の一方の板面に配された粘着シートと、
前記粘着シートを介して前記ガラス板に重ねられ、脂肪族ポリカーボネート系樹脂で形成された樹脂板と
を備えることを特徴とする複合プレート。
【請求項2】
前記脂肪族ポリカーボネート系樹脂は、構造の一部に下記式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合プレート。
【化3】
【請求項3】
前記粘着シートは、
透明なシート基材と、
前記シート基材の一方の基材面と他方の基材面とにそれぞれ設けられた粘着層と
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の複合プレート。
【請求項4】
前記樹脂板の厚みは前記ガラス板の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の複合プレート。
【請求項5】
粘着シートとガラス板とを、厚み方向で重なるように圧着する第1圧着工程と、
前記粘着シートの前記ガラス板側とは反対側のシート面に、脂肪族ポリカーボネート系樹脂で前記ガラス板よりも大きいサイズに形成された樹脂板材が厚み方向で重なるように、前記粘着シートと前記樹脂板材とを圧着することにより積層体とする第2圧着工程と、
前記積層体のうち前記樹脂板材の周縁部の少なくとも一部を切除することにより、前記樹脂板材を予め定められたサイズにして、前記ガラス板と前記接着粘着シートと樹脂板とを備える複合プレートとする切断工程と
を有する複合プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合プレート及び複合プレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ装置などの表示装置は、電車内、駅の構内、エレベータの中など、オフィスビルのロビー等、多くの場所に設置されている。このような表示装置には、表面を保護するために透明なカバーが取り付けられることがある。カバーは取り付け易いものであることが好ましく、例えば、特許文献1には、薄板ガラスからなる本体部と、この本体部の裏面側にねじ止めのためのボス部を設けたカバーガラスが記載されている。ボス部は上記裏面側の周縁部の複数箇所に設けられ、ボス部の中央部分には雌ねじ部が形成されている。このボス部は、表示装置の取り付け部分である筐体に形成した取付孔に挿入され、ボス部の上記雌ねじ部にねじが嵌められることにより、カバーガラスは筐体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-004959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるカバーガラスは、上記取付孔をボス部の形状及び大きさに合わせて筐体に形成する必要があるので、このような筐体側の加工を含めた取付作業に手間がかかる。また、ボス部は本体部から突出しているので、例えば複数のカバーガラスを運搬する等のためにまとめて梱包する作業に手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、取付作業と複数をまとめて梱包する梱包作業とが容易な複合プレートと、このような複合プレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合プレートは、ガラス板と、脂肪族ポリカーボネート系樹脂で形成された樹脂板と、粘着シートとを備える。粘着シートはガラス板の一方の板面に配される。樹脂板は、粘着シートを介してガラス板に重ねられ、脂肪族ポリカーボネート系樹脂で形成されている。
【0007】
脂肪族ポリカーボネート系樹脂は、構造の一部に下記式(1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【化1】
【0008】
粘着シートは、透明なシート基材と、シート基材の一方の基材面と他方の基材面とにそれぞれ設けられた粘着層とを有することが好ましい。
【0009】
樹脂板の厚みはガラス板の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0010】
本発明の複合プレートの製造方法は、第1圧着工程と、第2圧着工程と、切断工程とを有する。第1圧着工程は、粘着シートとガラス板とを、厚み方向で重なるように圧着する。第2圧着工程は、粘着シートのガラス板側とは反対側のシート面に、脂肪族ポリカーボネート系樹脂でガラス板よりも大きいサイズに形成された樹脂板材が厚み方向で重なるように、粘着シートと樹脂板材とを圧着することにより積層体とする。切断工程は、積層体のうち樹脂板材の周縁部の少なくとも一部を切除することにより、樹脂板材を予め定められたサイズにして、ガラス板と粘着シートと樹脂板とを備える複合プレートとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合プレートによれば、取付作業と複数をまとめて梱包する梱包作業とが容易であり、このような複合プレートが本発明の複合プレートの製造方法により得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態である表示ユニットの概略図である。
図2】複合プレートの積層構造の説明図である。
図3】複合プレートの斜視図である。
図4】複合プレートの説明図である。
図5】圧着装置の概略図である。
図6】レーザカッタ装置の概略図である。
図7】脱気処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、表示ユニット10は、電車(図示無し)の中に設けられており、画像を表示する表示装置11と、表示装置11を収容する筐体(ハウジング)12と、表示装置11を保護する複合プレート13とを備える。表示装置11は、電車内の人(乗客)に、次に停車する駅名などの案内、電車内または駅構内などにおける注意事項、広告などの画像を表示するためのものである。
【0014】
表示装置11は、電車の内壁(図示無し)に形成された開口(図示無し)より奥まった位置に、画像を表示する表示画面11Sを電車内に向けた姿勢で設けられ、これにより、電車内の人が表示画面11Sを見ることができる。表示装置11は、画像の表示を制御する制御部16の下で、表示画面11Sに画像を表示する。制御部16は、電車の車掌室など、いずれの場所に設けられていてもよい。
【0015】
筐体12は、例えば箱状とされており、矩形状の表示画面11Sが電車内において見えるように、矩形状の開口12aが形成されている。筐体12は、複合プレート13を支持する枠材(フレーム)としても機能し、筐体12と複合プレート13とは表示装置11を保護する保護アセンブリを構成している。複合プレート13は、本発明の一実施形態であり、表示装置11を保護するためのカバープレートとして用いている。そのため、複合プレート13も開口12aと同様に矩形状に形成されている。複合プレート13は、開口12aを塞ぐように筐体12に固定される。筐体12は、電車の内壁の上記開口に配されることにより、複合プレート13を起立した姿勢で支持する。これにより、複合プレート13は表示装置11を、埃などの異物の付着、及び物がぶつかった際の衝撃などから保護する。
【0016】
表示装置11はバスやタクシーなどの車内、駅の構内やオフィスビルのロビー、エレベータの内部などの屋内、ビルの外壁などの屋外などに備えられてもよい。筐体12及び複合プレート13は、表示装置11とともに上記各所に備えられる。
【0017】
複合プレート13は、ガラス板21、樹脂(ポリマー)で形成された樹脂板22、粘着シート23を備える。粘着シート23は、ガラス板21の一方の板面21aに配され、樹脂板22は粘着シート23を介してガラス板21に重ねられている。複合プレート13は、ガラス板21が筐体12の外部空間である電車の乗車空間側、また、樹脂板22が表示装置11側となるように筐体12に固定される。ガラス板21は開口12aの開口面積よりもごくわずかに小さな板面積に形成されており、これにより開口12aに嵌められてこの開口12aを塞ぐ。複合プレート13はガラス板21が開口12aを塞ぐので、電車内の難燃化に寄与するとともに、例えばひっかき硬度(鉛筆法)などで評価される耐擦傷性に優れる。
【0018】
図2に示すように、粘着シート23は、ガラス板21と樹脂板22とを厚み方向で重なる状態に貼り合わせている。これにより複合プレート13は、ガラス板21、粘着シート23、樹脂板22が順に重なった積層構造を有する。このように複合プレート13は、ガラスよりも密度が小さい樹脂で形成された樹脂板22を備える積層構造を有するから、ガラスのみの単層構造で同じ厚みに形成されているプレート(図示無し)に比べて、軽量である。例えば本例の複合プレート13の質量は1275gであり、同じ厚みに形成したガラス製のプレートの質量である約1875gよりも極めて小さい。そのため、運搬や施工におけるハンドリング性(取り扱い性)に優れ、その結果、容易に取り付けられる。
【0019】
ガラス板21は、溶解した金属の上に溶解したガラスを薄く浮かべることにより製造されたフロートガラスと、フロートガラスよりも強度が大きい強化ガラスとのいずれでもよい。強化ガラスは、例えば熱強化により表層としての圧縮層を形成した物理強化ガラスと、例えばイオン交換により圧縮層を表層として形成した化学強化ガラスとのいずれでもよい。本例ではガラス板21として化学強化ガラスを用いている。
【0020】
樹脂板22は、脂肪族ポリカーボネート系樹脂で形成されている。これにより、ねじ孔26(図3参照)が容易に形成され、ねじ27(図4参照)により筐体12に固定される。このように樹脂板22は例えば割れなど生じることなくねじ孔26の形成が容易であり、筐体12に対してねじで固定することができるから、複合プレート13は筐体12に容易に取り付けられる。また、樹脂板22にねじ孔26を形成することができるから、ボス部のような突起を設ける必要もない。そのため、複合プレート13は、樹脂板22側のプレート面がガラス板21側のプレート面とともに平坦となっており、複数枚を重ね合わせて梱包しやすい。さらに、樹脂板22は、脂肪族ポリカーボネート系樹脂で形成されているから、ガラス板21の透明性を損なうことなく、ガラス板21よりも曲げ弾性率が小さく、かつ、耐衝撃性に優れた複合プレート13を形成する。
【0021】
脂肪族ポリカーボネート系樹脂は、耐候性の観点から脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造が含まれるものであってもよい。脂肪族ポリカーボネート系樹脂は、構造の一部に下記の式(1)で表される構造単位を含むことが好ましい。これにより、式(1)で表される構造単位を構造の一部に含まない脂肪族ポリカーボネート系樹脂と比べて、透明性により優れるとともに、耐候性により優れ、長期に渡り優れた透明性を維持するので、表示装置等のカバープレートとして長期使用する複合プレート13に好適である。本例における脂肪族ポリカーボネート系樹脂は三菱ケミカル(株)製のデュラビオ(登録商標)であり、樹脂板22は、三菱ケミカルインフラテック(株)製のBIOPLATE(登録商標)である。
【0022】
【化2】
【0023】
ガラス板21と樹脂板22との間に配される粘着シート23は、透明なシート基材31と、第1粘着層32A及び第2粘着層32Bとを備える。なお、以降の説明において第1粘着層32Aと第2粘着層32Bとを区別しない場合には粘着層32と記載する。シート基材31は粘着層32を支持する支持体である。シート基材31は、アクリル系樹脂(アクリル系ポリマー)で形成されているが、シート基材31の素材は公知の透明な樹脂(ポリマー)でもよく、市販品でもよい。
【0024】
第1粘着層32Aは、シート基材31の一方の第1基材面31aに備えられ、ガラス板21の板面21aと密着している。第2粘着層32Bは、シート基材31の他方の第2基材面31bに備えられ、樹脂板22の板面と密着している。粘着層32はアクリル系樹脂で形成されており、これにより高い透明性をもつ。粘着層32の素材は、ウレタン系樹脂(ポリウレタン)、シリコーン系樹脂など、他の樹脂であってもよい。なお、粘着シート23は、シート面の面積がガラス板21の板面の面積と同じまたは板面の面積よりもわずかに小さく形成されている。粘着シート23は、市販の両面粘着シートでもよく、市販品としては後述の剥離紙RP(図5参照)が各粘着層32の表面に付与されている例えば三菱ケミカル(株)製のクリアフィット(登録商標)、王子ホールディングス(株)製の両面粘着シートEA41、MP3A、MP37などを用いることができる。シート基材31と第1粘着層32Aと第2粘着層32Bとの3層構造を有する粘着シート23の代わりに、粘着剤(接着剤を含む)で単層構造のシート状に形成された粘着シート(図示無し)であってもよい。単層構造のものとしては、例えば紫外線(UV)硬化型の樹脂(アクリル樹脂等)でシート状とされたものなどがある。また、単層構造の場合には、この複合プレート13を製造するための材料が、シート状に形成されていなくてもよく、例えば紫外線硬化型の液状の粘着剤(接着剤を含む)をガラス板21と樹脂板22との間にシート状に介在させた状態で、紫外線を照射することにより粘着シート23を形成することができる。なお、複合プレート13に、ガラス板21側の表面から衝撃が加わった場合などの割れにくさ(破損しにくさ)をより確実にする観点では、粘着シート23は、紫外線硬化型の単層構造のものよりも、本例のようにシート基材の両基材面に粘着層を有する3層構造のものの方が好ましい。複合プレート13としてのしなやかさにより優れる、及び、複合プレート13の製造がより容易であるからである。
【0025】
複合プレート13は、ガラス板21と樹脂板22とが粘着シート23により貼り合わされているから、ガラス板21よりも曲げ弾性率が確実に小さく、かつ、耐衝撃性に優れる。また、衝撃により仮にガラス板21が割れた場合でも、ガラスの破片の飛散が抑えられる。樹脂板22、シート基材31、粘着層32は、可塑剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0026】
ここで、ガラス板21の厚みをT21、樹脂板22の厚みをT22、粘着シート23の厚みをT23、シート基材31の厚みをT31、第1粘着層32Aの厚みをT32A、第2粘着層32Bの厚みをT32Bとする。ガラス板21の厚みT21は特に限定されないが、好ましくは1.0mm以上3.0mm以下の範囲内である。樹脂板22の厚みT22も同様に特に限定されないが、好ましくは2.0mm以上5.0mm以下の範囲内である。樹脂板22の厚みT22とガラス板21の厚みT21との大小関係は特に限定されないが、樹脂板22の厚みT22はガラス板21の厚みT21よりも大きいことが好ましく、本例でもそのようにしている。これによりガラス板21を備えることの難燃性及び耐擦傷性等の利点を確保しながらも、樹脂板22による軽量化がより生きた複合プレート13が構成される。また、樹脂板22の厚みT22が大きいほど、より大きなねじ27を用いることができるから、筐体12に対する固定の耐久性がより向上し、固定のためのねじ27の数を抑えることもできる。ねじ27の数を少なく抑えられることにより、取付作業はより容易となる。この例ではガラス板21の厚みT21は1.1mmであり、樹脂板22の厚みT22は2.0mmである。
【0027】
粘着シート23の厚みT23は特に限定されないが、ガラス板21と樹脂板22とが互いに貼り合わせられる貼り合わせ面積と、粘着層32の硬さとに応じて決定することが好ましい。ガラス21と樹脂板22との線膨張係数とは異なるので、ガラス板21と樹脂板22との貼り合わせ面積が大きいほど、外気温度の変化に応じて変化するガラス板21と樹脂板22との板面の寸法の変化量の差が大きい。そのため、ガラス板21と樹脂板22との間に気泡が生じやすい。そこで、上記貼り合わせ面積が大きいほど、粘着シート23の厚みT23を大きく設定することが、ガラス板21と樹脂板22との寸法の変化量の差を緩衝するので好ましい。また、粘着層32の弾性が小さいほど、粘着シート23の厚みT23を大きく設定することが、同様の理由により好ましい。粘着シート23の厚みT23は小さくとも100μmであることが好ましく、小さくとも150μmであることがより好ましく、小さくとも175μmであることがさらに好ましい。本例の厚みT23は250μmである。
【0028】
本例では、厚みT32A及び厚みT32Bは厚みT31よりも小さいが、厚みT32A及び厚みT32Bと、厚みT31との大小関係はこの例に限られない。
【0029】
ガラス板21と樹脂板22との常温(概ね25℃)以上60℃以下の温度範囲における線膨張係数の差はできるだけ小さいことが好ましい。これにより、使用中における粘着シート23とガラス板21または樹脂板22との間における気泡の発生がより抑制される。本例のガラス板21の常温以上60℃以下の温度範囲における線膨張係数は8.5×10-6/℃以上9×10-6/℃以下の範囲内であり、樹脂板22の20℃以上60℃以下の温度範囲における線膨張係数は、7.1×10-5/℃以上7.8×10-5/℃以下の範囲内である。
【0030】
粘着シート23は、常温(概ね25℃)以上60℃以下の温度範囲における線膨張係数がガラス板21の線膨張係数と樹脂板22の線膨張係数との当該温度範囲における各線膨張係数の間であることがより好ましい。このような線膨張係数であることで、粘着シート23とガラス板21または樹脂板22との間における気泡の発生がより確実に抑制される。
【0031】
図3に示すように、本例ではねじ孔26は、矩形状の樹脂板22の四隅に形成されている。ただし、ねじ孔26の数及び形成される位置は本例に限られない。樹脂板22の板面積はガラス板21の板面積よりも大きい。これにより、図4に示すように、ガラス板21が開口12a(図1参照)に嵌め込まれ、樹脂板22と筐体12とが密着する状態でねじ27により固定される。その結果、複合プレート13は筐体12と強固に固定され、固定の強度が長期に渡り保持される。なお、粘着シート23は、樹脂板22とガラス板21とを貼り合わせるものであるから、粘着シート23のサイズは、より小さい方であるガラス板21と同じまたはガラス板21の板面よりもわずかに小さければよい。
【0032】
複合プレートは、ガラス板21と粘着シート23との間に、金属、例えばアルミニウムで形成されたアルミニウム層(図示無し)を有していてもよい。アルミニウム層により、電車内の乗車空間側から入射する光の一部を反射し、残りの一部を透過させる。このようにすることにより、ガラス板21とアルミニウム層とは、乗車空間側と表示装置11からの明るさの高低関係に応じて乗車空間側から鏡として、または表示装置11の画像を視認するハーフミラーとして機能する。すなわち、表示装置11が画像を表示していない例えば黒色を呈している場合には鏡として機能し、表示装置11に画像が表示されている場合には画像の光を透過して画像が視認される。
【0033】
複合プレート13は第1圧着工程と、第2圧着工程と、切断工程と、脱気処理工程とをこの順に有する製造方法により製造している。第1圧着工程は、粘着シート23とガラス板21とを、厚み方向で重なるように圧着する工程である。
【0034】
第1圧着工程は、例えば図5に示す圧着装置51により行う。圧着装置51は、圧着の対象物であるガラス板21と粘着シート23とを搬送する搬送路に、これらガラス板21と粘着シート23とを厚み方向に重ねた状態でニップするローラ53A、53B、54A、54Bを備える。ローラ53Aとローラ53Bとは第1のローラ対を、ローラ54Aとローラ54Bとは第2のローラ対を構成している。圧着の対象物をともにニップするローラ対の数は本例の2対に限られない。第1のローラ対、第2のローラ対を構成する各ローラ53A、53B、54A、54Bは駆動ローラとしており、各回転軸RSにはそれぞれモータ56が備えられている。モータ56は、駆動コントローラ(図示無し)を有し、この駆動コントローラの制御によって、回転軸RSを所定の速度で周方向に回転させてローラ53A、53B、54A、54Bは周方向に回転する。これにより、第1のローラ対、第2のローラ対にニップされたガラス板21と粘着シート23とは下流側へ搬送される。なお、図5においては、図の煩雑化を避けるために、モータ56をローラ54Aにのみ描いている。
【0035】
この例の粘着シート23は、加熱により粘着する粘着層(図示無し)を有し、この粘着層が複層プレート13(図2参照)の粘着層32となる。第1のローラ対及び第2のローラ対のうち、少なくとも上流側の第1のローラ対を構成するローラ53A及びローラ53Bは、周面の温度を所定の温度に調整する温調機58を備える。温調機58により周面の温度が例えば50℃等に昇温された第1のローラ対にガラス板21と粘着シート23とが接触することにより粘着シート23の上記粘着剤が加熱され、ガラス板21と密着した第1粘着層32A(図2参照)を形成する。この例の第1圧着工程は、上記のようにホット(加熱)ラミネート方式としているが、粘着シート23の構成に応じて、コールド(冷却)ラミネートまたは温度非調整の常温ラミネートの各方式としてもよい。なお、材料としての粘着シート23には各粘着層の表面に剥離紙RPが設けられている。粘着シート23のガラス板21と貼り付ける側の剥離紙は剥離(除去)し、ローラ53A、54Aに接する側の剥離紙RPは設けられた状態で、第1圧着工程に供する。
【0036】
この例の圧着装置51は、搬送方向において第1のローラ対の上流側に、粘着シート23を第1のローラ対に案内するローラ対58をさらに備える。このローラ対58は、回転自在に備えられているが非駆動のフリーローラで構成されており、第1のローラ対により下流側に移動している粘着シート23との接触により、周方向に回転する。圧着装置51は、市販のラミネータでよく、本例でも市販品であるロール式ラミネート機RSL-27025(日本オフィスラミネーター(株)製)を用いている。
【0037】
第2圧着工程は、第1圧着工程において設けられていた剥離紙RPを粘着シート23から剥離して実施する。第2圧着工程は、粘着シート23のガラス板21側が設けられる第1シート面23aとは反対側の第2シート面23bに、樹脂板22の材料である樹脂板材41(図6参照)が厚み方向で重なるように圧着する。この第2圧着工程により、ガラス板21と粘着シート23と樹脂板材41とが厚み方向で重なった積層体43(図6参照)が得られる。樹脂板材41は、ガラス板21よりも大きいサイズ、かつ樹脂板22よりも大きなサイズに形成されている。
【0038】
第2圧着工程も、第1圧着工程と同様に、圧着装置51により実施することができる。すなわち、圧着装置51を用いた第2圧着工程は、第1圧着工程におけるガラス板21をガラス板21と粘着シート23との積層体(図示無し)に、粘着シート23を樹脂板材41に、それぞれ置き換える。なお、第2圧着工程では、ローラ対58は用いない。
【0039】
切断工程は、積層体43のうち樹脂板材41の周縁部の少なくとも一部を切除することにより、樹脂板材41を予め定められたサイズの樹脂板22にする。ねじ孔26(図3図4参照)も切断工程で形成してもよく、本例でもそのようにしている。切断工程は、例えば図6に示すレーザカッタ装置61を用いて実施する。
【0040】
レーザカッタ装置61は、パターンデータに基づきレーザ62の照射を行い、照射した位置で樹脂板材41を切断する。レーザカッタ装置61は、レーザ照射部63と、載置ステージ66と、駆動部67と、記憶部68と、入力部71と、制御部72とを備える。レーザ照射部63はレーザ62を射出する。載置ステージ66はレーザの照射の対象である積層体43が載せられ、この積層体43の樹脂板材41にレーザ62が照射される。駆動部72は、レーザ照射部63を駆動してレーザ62の射出の向きやレーザ62の出力等を調整する。なお、載置ステージ66は、鉛直方向において移動自在とされており、これによりワークである積層体43の鉛直方向における位置が調整される。
【0041】
記憶部68は、樹脂板材41における切断位置のパターンデータを記憶する。本例の切断工程は前述のようにねじ孔26の形成も行うので、記憶部68は、ねじ孔26の形成パターンデータ、例えばねじ孔26の形状、大きさ、樹脂板材41の板面における形成位置のパターンデータをさらに記憶する。入力部71は、パターンデータの設定やレーザ62の出力等の設定の入力操作が行われる。制御部72は、入力部71からの入力情報に基づいて、記憶部68からパターンデータを読み出し、駆動部67を介してレーザ照射部63を制御する。これにより、セットされた積層体43の樹脂板材41が切断されて樹脂板22とされる。さらに、本例では、樹脂板材41の切断と併せてねじ孔26の形成を切断工程で行うから、ねじ孔26がより精度よく形成された樹脂板22が得られる。なお、本例のねじ孔26は、通し穴(ばか穴と呼ばれることもある)としている。切断工程は、本例のようにレーザ62による手法に限定されず、例えばNC(Numerical Control)工作機器(NC旋盤機器)などを用いた公知の切断手法で実施してもよい。
【0042】
脱気処理工程は、切断工程を経た積層体43を、加圧下かつ加熱下に静置することにより、内部に含まれる気泡を除去する。なお、内部に気泡が生じないように積層体43が得られる場合には脱気処理工程は実施しなくてよく、切断工程で得られた積層体43を複合プレート13として用いてよい。脱気処置工程は、例えば図7に示す脱気処理装置81により実施するが、脱気処理装置81の代わりに、プレート状の積層体から気泡を除去する公知の装置を用いてよい。脱気処理装置81は、積層体43を収容する装置本体82と、装置本体82の内部に設けられた複数の載置トレイ83と、温度調整部86と、圧力調整部87とを備える。装置本体82は、処理空間を外部空間と仕切る。載置トレイ83は、処理の対象物である積層体43を載置するためのものである。載置トレイ83は、厚み方向に貫通した孔83aが複数形成された多孔質部材であり、これにより、装置本体82の内部は、温度及び圧力がそれぞれ均一になるので、複数の載置トレイ83の各々に静置された積層体43は、同じ温度かつ同じ圧力で処理される。
【0043】
脱気処理装置81は、温度調整部86及び圧力調整部87を統括的に制御する制御部(図示無し)を備える。温度調整部86は、制御部による制御の下で、装置本体82の内部を目的とする温度に調整する。圧力調整部87も同様に制御部による制御の下で、装置本体82の内部を目的とする圧力に調整する。本例では、温度調整部86により装置本体82の内部の温度を、常温(概ね25℃)よりも高い温度にし、圧力調整部87により、装置本体82の内部の圧力を大気圧よりも高い圧力にする。これにより、載置トレイ83に静置された積層体43は、加熱下かつ加圧下での処理、すなわち加熱加圧処理がなされ、樹脂板22とガラス板21との間、具体的にはガラス板21と粘着シート23との間及び粘着シート23と樹脂板22との間の気泡が除去される。この脱気処理工程により、複合プレート13が得られる。
【0044】
複合プレート13は、表示装置11をカバーするカバープレートとして用いることができる他に、他のものをカバーするカバープレートとしても用いることができる。例えば、防犯カメラなどの各種撮像装置や、灯火機器(燈火機器)などをカバーするカバープレートとして用いることができる。この場合には、前述のアルミニウム層などをさらに設けてハーフミラー機能をもたせた複合プレートとし、これら撮像装置や灯火機器が視認されにくい(目立たない)ようにこれら装置及び機器の例えば視認側に設置するなどの態様で使用してもよい。このようにカバープレートとして用いる複合プレート13は、撮像装置や灯火機器を必ずしも覆う必要はない。
【符号の説明】
【0045】
10 表示ユニット
12 筐体
13 複合プレート
21 ガラス板
21a 板面
22 樹脂板
23 粘着シート
23a 第1シート面
23b 第2シート面
31 シート基材
31a 第1基材面
31b 第2基材面
32A 第1粘着層
32B 第2粘着層
41 樹脂板材
43 積層体
51 圧着装置
61 レーザカッタ装置
81 脱気処理装置
86 温度調整部
87 圧力調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7