(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033121
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ操作器具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240306BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61M25/09 530
A61M25/092
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136518
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】美本 和彦
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB07
4C267BB52
4C267CC08
4C267EE03
(57)【要約】
【課題】ガイドワイヤに対する装着位置の変更を容易に行うこと。
【解決手段】基端側に配置される操作部20と、先端側に配置されガイドワイヤGを保持する保持部30と、を含む本体部10を備え、操作部20は、基端から先端までの範囲に、中心軸Cから径方向外側に向かって延びて外周面に開口するように形成されたワイヤ収容部50を有し、保持部30は、外表面が露出しないように埋設された第1磁性部材81を含む基部31と、外表面が露出しないように埋設された第2磁性部材82を含む固定部32と、基部31に対して固定部32を開閉可能に連結するヒンジ部33と、で構成され、第1磁性部材81と第2磁性部材82との磁気吸着により固定部32を閉状態としたとき、ワイヤ収容部50に収容されたガイドワイヤGを保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤ操作器具であって、
基端側に配置される操作部と、先端側に配置され前記ガイドワイヤを保持する保持部と、を含む本体部を備え、
前記操作部は、基端から先端までの範囲に、中心軸から径方向外側に向かって延びて外周面に開口するように形成されるワイヤ収容部を有し、
前記保持部は、外表面が露出しないように埋設された第1磁性部材を含む基部と、外表面が露出しないように埋設された第2磁性部材を含む固定部と、前記基部に対して前記固定部を開閉可能に連結するヒンジ部と、で構成され、前記第1磁性部材と前記第2磁性部材との磁気吸着により前記固定部を閉状態としたとき、前記ワイヤ収容部に収容された前記ガイドワイヤを保持する、ガイドワイヤ操作器具。
【請求項2】
前記固定部は、閉状態において、前記ワイヤ収容部の少なくとも先端側および基端側を周方向に覆うカバー部を備える、請求項1に記載のガイドワイヤ操作器具。
【請求項3】
前記カバー部は、前記ワイヤ収容部の先端から基端までの範囲を周方向に覆う、請求項2に記載のガイドワイヤ操作器具。
【請求項4】
前記基部は、前記ガイドワイヤを前記中心軸と同軸に配置するための角部を有し、
前記固定部は、閉状態において前記角部に前記ガイドワイヤを押し付けるように接触して前記角部との間にガイドワイヤを保持する押付部を有する、請求項1または2に記載のガイドワイヤ操作器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに装着して使用するガイドワイヤ操作器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤは、血管内に生じた病変部の治療を行う各種カテーテルを、病変部に導くために使用される医療器具である。
【0003】
術者は、血管の複雑な湾曲部や分岐部、血管内の狭窄部などを通過させる際に、ガイドワイヤの生体外から露出した基端側の一部を前後方向に移動させたり、外周方向に回転させたりする。このとき、術者は、ガイドワイヤの操作性を向上させるために、操作器具を使用することがある。操作器具は、体外に露出しているガイドワイヤの基端部に装着され、血管内におけるガイドワイヤ先端部の前後あるいは回転操作を容易にする。
【0004】
特許文献1には、ガイドワイヤが載置される溝を軸方向全体に形成した本体と、本体の一側部にヒンジ部を介して開閉自在に連結され溝に載置されたガイドワイヤを本体との間に挟むように本体に側方から被せられる蓋体と、フックと突起とで構成され蓋体を本体に被せた状態に保持させる係止部と、を備えて構成されるガイドワイヤの操作器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の器具は、ガイドワイヤを溝に載置したまま蓋体を本体に被せ、フックを突起に係止させた状態でガイドワイヤを保持する。したがって、特許文献1の器具は、ガイドワイヤに対する器具の装着位置を変更したい場合、一度フックと突起の係止状態を解除し、所望の位置まで摺動させてから再びフックを突起に係止させて蓋体を本体に固定する必要がある。特許文献1の器具は、係止部の構造上、片方の手の指先だけでフックと突起とを係止解除操作および係止操作を行うのは難しい。そのため、術者は、両手で器具の操作を行う必要があり、装着位置の変更作業が煩雑である。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、ガイドワイヤに対する装着位置の変更を容易に行うことができるガイドワイヤ操作器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)基端側に配置される操作部と、先端側に配置され前記ガイドワイヤを保持する保持部と、を含む本体部を備え、前記操作部は、基端から先端までの範囲に、中心軸から径方向外側に向かって延びて外周面に開口するように形成されたワイヤ収容部を有し、前記保持部は、外表面が露出しないように埋設された第1磁性部材を含む基部と、外表面が露出しないように埋設された第2磁性部材を含む固定部と、前記基部に対して前記固定部を開閉可能に連結するヒンジ部と、で構成され、前記第1磁性部材と前記第2磁性部材との磁気吸着により前記固定部を閉状態としたとき、前記ワイヤ収容部に収容された前記ガイドワイヤを保持する、ガイドワイヤ操作器具である。
【0009】
ここで、本発明の実施形態は、
(2)上記(1)のガイドワイヤ操作器具において、前記固定部は、閉状態において、前記ガイドワイヤ収容部の少なくとも先端側および基端側を周方向に覆うカバー部を備える構成とするのが好ましい。
【0010】
(3)上記(1)または(2)のガイドワイヤ操作器具において、前記カバー部は、前記ガイドワイヤ収容部の先端から基端までの範囲を周方向に覆うように構成するのが好ましい。
【0011】
(4)上記(1)~(3)の何れかに記載のガイドワイヤ操作器具において、前記基部は、前記ガイドワイヤを前記中心軸と同軸に配置するための角部を有し、前記固定部は、閉状態において前記角部に前記ガイドワイヤを押し付けるように接触して前記角部との間にガイドワイヤを保持する押付部を有する構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、保持部を構成する基部と固定部は、ヒンジ部を介して基部と固定部が開閉可能に、かつ磁気吸着によって係合されている。したがって、術者は、片手で固定部を基部から離隔する方向に回転させるだけで保持部によるガイドワイヤの保持を解除できる。そのため、ガイドワイヤ操作器具は、ガイドワイヤに対する装着位置を容易に変更することができる。また、ガイドワイヤ操作器具は、ワイヤ収容部が中心軸から径方向外側に向かって延びて外周面に開口するように形成されているため、本体部の外周面からガイドワイヤの着脱を行うことができる。これにより、術者は、全長の長いガイドワイヤへのガイドワイヤ操作器具の着脱をガイドワイヤの任意の位置で容易に行うことができる。さらに、第1磁性部材と第2磁性部材は、共に外表面が露出しないように基部または固定部に埋設されるため、血液に触れることがない。そのため、ガイドワイヤ操作器具は、生体に対する安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具において固定部を開状態としたときの平面図である。
【
図4】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具において固定部を閉状態としたときの平面図である。
【
図6A】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の保持部でガイドワイヤを保持するまでの動作を示す概念図である。
【
図6B】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の保持部でガイドワイヤを保持するまでの動作を示す概念図である。
【
図7A】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の保持空間を説明するための部分拡大断面図である。
【
図7B】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具でガイドワイヤを保持した状態を示す部分概略斜視図である。
【
図9A】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程の一例を示す概略構成図である。
【
図9B】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程の一例を示す概略構成図である。
【
図9C】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程の一例を示す概略構成図である。
【
図9D】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程により成形された部品(基部)を示す概略構成図である。
【
図10A】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程の他の例を示す概略構成図である。
【
図10B】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程の他の例を示す概略構成図である。
【
図10C】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程の他の例を示す概略構成図である。
【
図10D】本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具の製造方法に含まれる成形工程により成形された部品(基部)を示す概略構成図である。
【
図11】本実施形態に係る変形例1のガイドワイヤ操作器具を示す概略構成図である。
【
図13】本実施形態に係る変形例2のガイドワイヤ操作器具を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0015】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
本明細書において、説明の便宜上、以下の方向について定義する。
図2において、「長軸方向」は、ガイドワイヤ操作器具100の長手方向であって、ガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cに沿う方向とする。「径方向」は、ガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cを基準軸とした本体部10の軸直交断面(横断面)において、ガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cに対して離隔または接近する方向とする。「周方向」は、ガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cを基準軸とした回転方向とする。なお、ガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cは、本体部10の中心軸と一致する。
【0017】
図2において、「先端側」は、保持部30が設けられ、ガイドワイヤGをガイドワイヤ操作器具100から引き出して血管へ挿入する側(図中左側)とし、先端側と反対側(図中右側の操作部20が配置される側)を「基端側」とする。また、先端(最先端)から長軸方向に沿う一定の範囲を含む部分を「先端部」とし、基端(最基端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「基端部」とする。
【0018】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0019】
本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100は、血管内治療を行うためのカテーテルやステントを狭窄部まで導くために血管内に挿入するガイドワイヤGに装着して、ガイドワイヤGの操作性向上を図るための器具である。ガイドワイヤGは、治療目的に応じて血管以外の他の生体管腔(脈管、尿管、胆管、卵管、肝管など)に挿入して使用することもできる。
【0020】
[構成]
図1、
図2、
図4に示すように、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100は、基端側に配置される操作部20と、先端側に配置される保持部30と、保持部30の先端側に配置される延在部40と、ガイドワイヤGを本体部10の外周面側から収容および脱離するためのワイヤ収容部50と、を含む本体部10を備える。ガイドワイヤ操作器具100は、ワイヤ収容部50の少なくとも先端側および基端側(第1収容部51の基端側および第2収容部52の先端側)を周方向に覆うカバー部60を備える。
【0021】
〈本体部〉
本体部10は、基端側に配置される操作部20と、先端側に配置される保持部30と、保持部30の先端側に延びるように配置される延在部40と、ガイドワイヤGを本体部10に収容および脱離するためのワイヤ収容部50と、を備える。
【0022】
本体部10は、
図1に示すように、術者の把持のし易さや回転操作などの操作性の観点から、全体として円柱形状をなしている。但し、本体部10の形状は、円柱形状に限らず多角柱形状や楕円柱形状とすることもできる。
【0023】
〈操作部〉
操作部20は、
図1、
図2、
図4に示すように、本体部10の基端側に配置され、ガイドワイヤGを操作する際に使用される。操作部20は、把持部21と、連結部22と、を備える。
【0024】
把持部21は、ガイドワイヤGを操作する際に術者により把持される。把持部21の外径は、特に制限されないが、操作性の観点からガイドワイヤGの操作に支障をきたさず操作し易いサイズとするのが好ましい。
【0025】
把持部21の外周面には、滑り止めとして機能し得る突条部(長軸方向に沿う凸条部や把持部21の外周面に沿う螺旋状の凸条部)や、複数の突起部を設けることができる。これにより、ガイドワイヤ操作器具100は、術者によってガイドワイヤGの基端に加えられた力を先端まで確実に伝達できる。
【0026】
連結部22は、把持部21の先端に設けられ、保持部30の基部31と連結される。連結部22は、
図2などに示すように、把持部21よりも外径が拡径して形成される。
【0027】
操作部20は、先端から基端まで延びるように第1収容部51が形成される。第1収容部51は、後述する第2収容部52と共にワイヤ収容部50を構成する。
【0028】
操作部20の構成材料は、収容するガイドワイヤGの外表面に損傷を与えない材料であれば特に制限されないが、成形容易性などを勘案すると医療分野で適用可能な合成樹脂などを採用するのが好ましい。
【0029】
なお、操作部20は、連結部22を設けず、把持部21の先端面と保持部30の基端面とを直接連結することもできる。
【0030】
〈保持部〉
保持部30は、ワイヤ収容部50に収容されたガイドワイヤGの一部を保持する。保持部30は、
図2~
図5に示すように、基部31と、固定部32と、ヒンジ部33と、を備える。保持部30は、基部31と操作部20の連結部22とを連結して組み付けられる。
【0031】
保持部30は、基部31と固定部32に外表面が露出しないように埋設された磁性部材80(第1磁性部材81、第2磁性部材82)による磁気吸着力を利用して、基部31と固定部32との係合状態を維持可能なように構成される。
【0032】
基部31は、
図3や
図5に示すように、外形が連結部22の外径とほぼ等しい外径を有する円柱部材の一部を切り欠いた形状を有する。基部31は、先端面に延在部40が連結され、基端面に操作部20が連結される。
【0033】
基部31は、
図3、
図5に示すように、固定部32との当接面となる第1当接面31aを有し、第1当接面31aと対向する基部31の内部には外表面が露出しないように磁性部材80を構成する第1磁性部材81が埋設されている。
【0034】
第1磁性部材81は、固定部32に埋設される第2磁性部材82と磁気吸着可能に構成される。第1磁性部材81は、第2磁性部材82と磁極の異なる磁石若しくは第2磁性部材82を磁石としたときに第2磁性部材82と磁気吸着可能な磁性体(強磁性体など)などの磁気吸着体で構成することができる。
【0035】
第1磁性部材81は、外表面が露出しないように基部31に埋設されているため、血液に触れることがない。そのため、ガイドワイヤ操作器具100は、生体に対する安全性が高い。
【0036】
基部31は、
図3、
図5に示すように、ワイヤ収容部50に収容されたガイドワイヤGをガイドワイヤ操作器具100の中心軸C上に配置するための角部34を有する。
【0037】
角部34は、
図3、
図5に示すように、ガイドワイヤGを載置する載置面34aと、載置面34aの縁部から外周面に向かって載置面34aに直交するように立ち上がる壁部34bと、で構成される。角部34は、載置面34aと壁部34bにガイドワイヤGの外周面を接触させてガイドワイヤGを配置したとき、ガイドワイヤGの中心軸がガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cと一致するように基部31の所定箇所に形成される。
【0038】
固定部32は、
図2~
図5に示すように、基部31の外周面にヒンジ部33を介して開閉可能(基部31に対して固定部32の少なくとも一部が近接・離隔可能)に取り付けられる。固定部32は、ヒンジ部33を回転軸として基部31に近接・離隔可能に回動する。
【0039】
固定部32は、
図3、
図5に示すように、基部31の第1当接面31aとの当接面となる第2当接面32aを有する。第2当接面32aと対向する固定部32の内部には、外表面が露出しないように第2磁性部材82が埋設されている。
【0040】
第2磁性部材82は、基部31に埋設される第1磁性部材81と磁気吸着可能に構成される。第2磁性部材82は、第1磁性部材81と磁極の異なる磁石若しくは第1磁性部材81を磁石としたときに第1磁性部材81と磁気吸着可能な磁性体(強磁性体など)などの磁気吸着体で構成することができる。
【0041】
第2磁性部材82は、第1磁性部材81と同様、外表面が露出しないように固定部32に埋設されているため、血液に触れることがない。そのため、ガイドワイヤ操作器具100は、生体に対する安全性が高い。
【0042】
固定部32の外周には、術者の手指を引っ掛けて固定部32の開閉操作を行うための指掛け部36を備える。指掛け部36は、
図3、
図5に示すように、保持部30と隣接する操作部20や延在部40の外周面よりも径方向に突出して設けられる。固定部32に指掛け部36を設けることにより、術者は、ガイドワイヤGに対するガイドワイヤ操作器具100の装着位置を変更する際、片手で固定部32を開状態とすることができる。また、基部31と固定部32とは、磁気吸着力により係合するため、術者は、指掛け部36に指を掛けて固定部32を基部31から離隔する方向に回転させるだけで保持部30によるガイドワイヤGの保持を解除できる。そのため、ガイドワイヤ操作器具100は、ガイドワイヤGに対する装着位置を容易に変更することができる。
【0043】
固定部32は、
図3、
図5に示すように、基部31との間でガイドワイヤGを保持する際、ガイドワイヤGを角部34に押し付けるようにガイドワイヤGの外周面と接触する押付部35を備える。押付部35は、固定部32の一部を切り欠いて形成される面状部分(切欠き面)で構成される。
【0044】
術者は、保持部30でワイヤ収容部50に収容されたガイドワイヤGを保持する場合、
図6A~
図6Cに示すように固定部32を動作させて保持する。術者は、
図6Aに示すように、基部31に近接するように固定部32を回転させる。次に、保持部30は、
図6Bに示すように、ガイドワイヤGの外周面の一部と押付部35とを接触させつつ、ガイドワイヤGの外周面の他部を角部34の載置面34aおよび壁部34bに押し付けるように接触させた状態でガイドワイヤGを保持する。また、保持部30は、固定部32を閉状態とすると、基部31と固定部32が磁性部材80により磁気吸着して係合するため、ガイドワイヤGの保持状態は維持される。
【0045】
保持部30は、
図7A、
図7Bに示すように、角部34と押付部35とで画定される保持空間XにガイドワイヤGの一部を収容した状態で保持する。保持空間Xは、本体部10のワイヤ収容部50と連通し、ガイドワイヤGを保持するための空間である。
【0046】
保持部30は、
図7Bに示すように、保持空間X内のガイドワイヤGの外周面に対し、長軸方向に沿って複数箇所(図中では3箇所)で線接触する。これにより、保持部30は、ガイドワイヤGの外周面にかかる保持力を分散できるので、ガイドワイヤGの外周面の損傷を低減できる。また、保持部30とガイドワイヤGとは、ガイドワイヤGに対する一定の保持力が得られるよう、保持部30の長軸方向の長さの全長に亘って接触することが好ましい。これにより、ガイドワイヤ操作器具100は、ガイドワイヤGを強固に保持できる。
【0047】
なお、角部34や押付部35の外表面には、ガイドワイヤGを保持した際にガイドワイヤGの外周面との摩擦係数を高める処理を施すことができる。角部34や押付部35の外表面とガイドワイヤGの外周面との摩擦係数を高める処理は、角部34や押付部35の外表面に複数の凹凸部を形成する処理や、角部34や押付部35の外表面にシリコーンゴムなどの弾性部材を設け、弾性部材の弾性変形によりガイドワイヤGとの接触面積を増加させる処理などが挙げられる。
【0048】
ヒンジ部33は、基部31に中心軸Cと平行に設けられる軸部材で構成される。ヒンジ部33は、固定部32の端部に配置され、基部31の第1当接面31aに対して固定部32の第2当接面32aを近接および離隔可能に回転移動させるための回転軸として機能する。ヒンジ部33は、
図3、
図5に示すように、2本の軸部材で構成しているが、1本の軸部材を採用してもよい。
【0049】
このように、保持部30は、ヒンジ部33を介して基部31の第1当接面31aと固定部32の第2当接面32aが開閉可能に、かつ磁気吸着によって係合されている。そのため、術者は、指を指掛け部36に引っ掛け、片手で固定部32の第2当接面32aを基部31の第1当接面31aから離隔させて保持部30を開状態とすることにより、保持部30によるガイドワイヤGの保持を解除できる。したがって、術者は、ガイドワイヤ操作器具100の装着位置を容易に変更できる。
【0050】
〈延在部〉
延在部40は、
図2、
図4に示すように、保持部30の先端側に配置される。延在部40は、
図2や
図4に示すように、外形が連結部22の外径とほぼ等しい外径を有する円柱形状をなしている。
【0051】
延在部40は、先端から基端まで延びるように第2収容部52が形成される。第2収容部52は、第1収容部51と共にワイヤ収容部50を構成する。
【0052】
〈ワイヤ収容部〉
ワイヤ収容部50は、ガイドワイヤGの一部を長軸方向に沿って収容する。ワイヤ収容部50は、中心軸Cに沿って延在する凹溝であり、中心軸Cから径方向外側に向かって延びて本体部10の外周面に開口するように形成される。ワイヤ収容部50は、
図2、
図4に示すように、操作部20に形成された第1収容部51と、延在部40に形成された第2収容部52と、で構成される。
【0053】
ワイヤ収容部50は、ガイドワイヤGを着脱するための開口50aを備えている。また、ワイヤ収容部50は、ガイドワイヤGを収容した状態、かつ指掛け部36の操作により押付部35のガイドワイヤGへの押付力を弱めた状態で、ガイドワイヤGをガイドワイヤ操作器具100の長軸方向に摺動させることにより、ガイドワイヤGを移動可能である。
【0054】
ワイヤ収容部50は、
図1、
図2、
図4に示すように、本体部10の外周面に開口する第1収容部51および第2収容部52の開口部分で構成される。ワイヤ収容部50に収容したガイドワイヤGは、第1収容部51および第2収容部52を通って本体部10を貫通するように中心軸Cに沿って収容される(
図4を参照)。
【0055】
ワイヤ収容部50は、開口50aを備えているため、ガイドワイヤGを、ガイドワイヤ操作器具100の外周面から中心軸Cに向けて挿入(すなわち、ガイドワイヤ操作器具100の径方向への挿入)および脱離できる。また、ワイヤ収容部50は、ガイドワイヤGを収容した状態、かつ指掛け部36の操作により押付部35のガイドワイヤGへの押付力を弱めた状態で長軸方向に摺動させることにより、ガイドワイヤGを移動できる。したがって、ガイドワイヤ操作器具100は、ガイドワイヤGの任意の位置に着脱でき、かつガイドワイヤGから脱離することなく摺動により装着位置の変更が可能となるため、取り回しが容易となり周囲のものからの汚染リスクも低減できる。
【0056】
ワイヤ収容部50に収容されたガイドワイヤGは、
図6A、
図6Bに示した固定部32の動作により、ガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cと同軸に配置された状態で保持部30に保持される。
【0057】
〈カバー部〉
カバー部60は、固定部32の閉状態において、ワイヤ収容部50の少なくとも先端側および基端側を周方向に覆う。カバー部60は、
図2、
図4に示すように、固定部32の基端面から基端側へ延びるように設けられ第1収容部51を周方向に覆う第1カバー部61と、固定部32の先端面から先端側へ延びるように設けられ第2収容部52を周方向に覆う第2カバー部62と、で構成される。カバー部60は、固定部32の開閉動作に追従して移動する。
【0058】
カバー部60は、カバー格納部70に進退可能に格納される。カバー格納部70は、固定部32側かつ操作部20に長軸方向に沿って設けられた第1カバー格納部71と、固定部32側かつ延在部40の長軸方向に沿って設けられた第2カバー格納部72と、基部31側かつ操作部20に長軸方向に沿って設けられた第3カバー格納部73と、基部31側かつ延在部40の長軸方向に沿って設けられた第4カバー格納部74と、で構成される。カバー格納部70(第1カバー格納部71、第2カバー格納部72、第3カバー格納部73、第4カバー格納部74)は、少なくとも格納対象となるカバー部60(第1カバー部61、第2カバー部62)の全体が格納可能なサイズや形状を有していればよい。
【0059】
カバー部60の形状は、特に制限されないが、固定部32の開閉操作に追従して進退するため、固定部32の回転軌道に沿うように中心軸Cと直交する横断面形状を円弧形状とするのが好ましい。
【0060】
カバー部60は、
図8Aに示すように、ガイドワイヤGの収容前(または脱離後)は第1カバー格納部71および第2カバー格納部72に格納される。カバー部60は、
図8Bに示すように、ガイドワイヤGをワイヤ収容部50に収容し、保持部30で保持する際、固定部32の閉動作に追従して第1カバー格納部71および第2カバー格納部72からワイヤ収容部50に進出し、一部が第3カバー格納部73および第4カバー格納部74に格納される。これにより、ガイドワイヤGは、保持部30に保持されていない部分がカバー部60により覆われるため、ワイヤ収容部50から脱落しない。また、ガイドワイヤGは、指掛け部36の操作により、押付部35のガイドワイヤGへの押付力を弱めた状態でも、カバー部60により覆われるため、ガイドワイヤGがワイヤ収容部50から脱落せず、ガイドワイヤ操作器具100の装着位置を変更できる。
【0061】
仮に、ガイドワイヤ操作器具100のカバー部60を除く構成とした場合、ガイドワイヤ操作器具100を回転操作した際などに、ガイドワイヤGがワイヤ収容部50から脱落してしまうことがある。ガイドワイヤGは、ワイヤ収容部50ら脱落すると、ガイドワイヤGの長軸がガイドワイヤ操作器具100の中心軸Cから外れてしまう。そのため、カバー部60を除いたガイドワイヤ操作器具100は、術者によってガイドワイヤGの基端に加えられた力を先端まで十分に伝達できない。これに対し、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100は、ガイドワイヤGを収容した状態のワイヤ収容部50の少なくとも先端側と基端側がカバー部60によって覆われているため、回転操作を行った際でもガイドワイヤGがワイヤ収容部50から脱落せず、ガイドワイヤGをガイドワイヤ操作器具100と同軸に配置した状態が維持できる。したがって、ガイドワイヤ操作器具100は、術者によってガイドワイヤGの基端に加えられた力を先端まで十分かつ確実に伝達できる。
【0062】
カバー部60は、少なくともワイヤ収容部50の先端側および基端側を覆うように設けられていれば、ガイドワイヤGの脱落防止効果を奏することができる。但し、カバー部60は、ガイドワイヤGの脱落防止の観点からすると、
図2や
図4に示すようにワイヤ収容部50の先端から基端までの範囲を全体的に覆うことがより好ましい。
【0063】
[製造方法]
次に、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100の製造方法について説明する。ガイドワイヤ操作器具100の製造方法は、成形工程と、組み付け工程と、を少なくとも含む。
【0064】
ガイドワイヤ操作器具100は、組み付け容易性の観点から、複数の部品に分けて成形される。例えば、ガイドワイヤ操作器具100は、「操作部20(第1部品)」と、「基部31および延在部40を一体成形したもの(第2部品)」と、「固定部32およびカバー部60を一体成形したもの(第3部品)」の3部品とし、ヒンジ部33を介して第2部品に第3部品を組み付けた後、第1部品を組み付けることにより製造できる。
【0065】
各部品は、公知の樹脂成形方法(射出成形法、インサート成形法など)により製造できる。
【0066】
〈成形工程〉
成形工程は、第1部品~第3部品を、それぞれの形状に則した金型を用いて成形する。第1部品は、第1部品用の金型に溶融した樹脂Yを射出して成形する。第1部品は、磁性部材80を埋設しないため、公知の射出成形法により成形することができる。
【0067】
第2部品と第3部品は、内部に磁性部材80を埋設するため、公知のインサート成形法により成形することができる。
【0068】
図9A~
図9Dは、基部31に第1磁性部材81をインサート成形して第2部品を成形する際の成形工程を示す。
【0069】
インサート成形の一形態として、
図9Aに示すように、分離式の金型200を用意し、固定側の金型(雌型210)の第1磁性部材81の配置位置に台座91を置き、その上に第1磁性部材81を載置する。
【0070】
次に、
図9Bに示すように、可動側の金型(雄型220)を雌型210に近付けてキャビティ230(空洞部)を形成する。次に、
図9Cに示すように、キャビティ230内に溶融した樹脂Yを射出する。そして、キャビティ230内に射出した樹脂Yを冷却により固化した後、雄型220を雌型210から離隔し、成形品を雌型210から離型させ、
図9Dに示すように、第2部品を製造する。第1磁性部材81は、台座91を介してインサート成形されたため、外表面が露出せず基部31の内部に埋設される。
【0071】
【0072】
図10Aに示すように、雌型210の第1磁性部材81の配置位置には、キャビティ230に向かって突出したピン92が形成される。第1磁性部材81は、ピン92の上に載置される。
図10Aにおいて、ピン92は3つ形成されているが、少なくとも磁性部材80の外表面が露出しないように支持可能であれば、その形状、形成数、サイズなどは制限されない。
【0073】
次に、
図10Bに示すように、雄型220を雌型210近付けてキャビティ230を形成する。次に、
図10Cに示すように、キャビティ230内に溶融した樹脂Yを射出する。次に、キャビティ230内に射出した樹脂Yを冷却により固化した後、雄型220を雌型210から離隔し、成形品を雌型210から離型させる。成形品には、ピン92による孔93が形成される。そして、
図10Dに示すように、離型させた成形品に形成された孔93に、後処理として非磁性部材からなる樹脂を溶融して流し込み、冷却により固化して第2部品を製造する。
図10Dでは、キャビティ230内に流し込んだ樹脂Yと同材料のものを使用しているが、異なる樹脂でもよい。第1磁性部材81は、孔93が非磁性部材によって充填されることで、外表面が露出せず基部31の内部に埋設される。
【0074】
また、第3部品についても、上記のようにインサート成形を用いることで、第2磁性部材82の外表面が露出しないように固定部32内に埋設された状態で製造できる。
【0075】
上記何れかの製法で成形された第2部品および第3部品に埋設される磁性部材80と、基部31の第1当接面31a(または固定部32の第2当接面32a)との間には、台座91や孔93に充填された樹脂が介在する。
【0076】
なお、第2部品および第3部品に磁性部材80を埋設するインサート成形の方法は、上記に示した形態に限定されず、磁性部材80の外表面が露出しないように基部31および固定部32の内部に埋設可能なインサート成形方法であればよい。例えば、台座91やピン92を用いず、金型200内でインサート部品である磁性部材80を複数の支持棒で支持し、キャビティ230内に磁性部材80を浮かせた状態で金型200を閉じて1回目の樹脂を射出し、磁性部材80が樹脂に埋没した状態で支持棒による支持を所定タイミングで解除した後、2回目の樹脂を射出して成形する方法でもよい。
【0077】
〈組み付け工程〉
続いて、成形した第1部品~第3部品を順次組み立てる。まず、第1部品と第2部品を組み付ける。この際、固定部32の基端面と操作部20の先端面とを突き合せた状態で、固定部32に設けられた第1カバー部61を、操作部20に形成された第1カバー格納部71に挿入しながら組み付ける。
【0078】
次に、第3部品を組み付ける。この際、第3部品の延在部40に形成された第2カバー格納部72に第2カバー部62を挿入しつつ、ヒンジ部33を介して基部31に固定部32を取り付ける。これにより、製造工程が終了する。
【0079】
なお、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100の製造方法は、上記工程以外の他の工程を必要に応じて適宜含めることができる。他の工程とは、例えば、器具表面に塗装や抗菌加工などを施す塗布工程、部品形状や表面を整えるための切削・研削を施す仕上げ工程などが挙げられる。
【0080】
また、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100の製造方法では、追加される工程を含め、ガイドワイヤ操作器具100の機能を損なわずに製造可能であれば、工程順は特に問わない。
【0081】
[変形例]
本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100は、以下に示す各変形例のように適宜変更して実施することもできる。なお、以下の変更点は、本発明の要旨を逸脱しない範囲の中において、各変形例で示した構成のうち必要な構成を適宜選択して他の変形例と組み合わせて実施することもできる。
【0082】
以下の変形例1、変形例2に示す各実施形態は、磁性部材80による磁気吸着力を高めるための形態を示している。
【0083】
〈変形例1〉
変形例1のガイドワイヤ操作器具100Aは、
図11、
図12に示すように、磁性部材80の磁気吸着力を高めるため、磁性部材80の外表面に磁性体からなるヨーク83を設けた構成である。
【0084】
ヨーク83は、
図11に示すように、第1磁性部材81と第2磁性部材82の先端面および基端面を覆うように設けることができる。また、ヨーク83は、第1磁性部材81における第2磁性部材82との対向面および第2磁性部材82における第1磁性部材81との対向面を除いた外周面を覆うように設けることもできる。
【0085】
変形例1のガイドワイヤ操作器具100によれば、磁性部材80の周囲にヨーク83を設けることにより、磁束の方向を制御して第1磁性部材81および第2磁性部材82の磁気吸着力を高めることができる。これにより、ガイドワイヤ操作器具100Aは、保持部30の磁気吸着力が高められ、保持部30の保持状態が操作中に意図せず解除されるのを防止できる。また、ガイドワイヤ操作器具100Aは、ヨーク83により磁気吸着力が高められるため、磁性部材80を小型化することもできる。
【0086】
〈変形例2〉
変形例2のガイドワイヤ操作器具100Bは、
図13、
図14に示すように、基部31および固定部32の内部に複数の磁性部材80を埋設した形態である。
【0087】
図13は、変形例2のガイドワイヤ操作器具100Bを開口50a側から平面視した図である。第1磁性部材81は、
図13に示すように、矩形板形状をなす2つの磁気吸着体で構成され、外周面が露出しないように基部31の第1当接面31aの裏側に埋設される。第1磁性部材81は、長軸方向に沿って一方の磁気吸着体の主平面81aと他方の磁気吸着体の主平面81aが対向して配置されると共に、第1当接面31a側から第1当接面31aと直交する方向に離れるにつれて主平面81a同士の対向距離が大きくなるようにV字状に配置される。第2磁性部材82は、
図13に示すように、矩形板形状をなす2つの磁気吸着体で構成され、外周面が露出しないように固定部32の第2当接面32aの裏側に埋設される。第2磁性部材82は、長軸方向に沿って一方の磁気吸着体の主平面82aと他方の磁気吸着体の主平面82aが対向して配置されると共に、第1当接面31a側から第1当接面31aと直交する方向に離れるにつれて主平面81a同士の対向距離が大きくなるようにV字状に配置される。
【0088】
変形例2のガイドワイヤ操作器具100Bによれば、基部31および固定部32の限られたスペース内に複数の磁性部材80を配置することができる。これにより、ガイドワイヤ操作器具100Bは、サイズを大きくすることなく保持部30の磁気吸着力を高めることができる。
【0089】
なお、変形例2に示した磁性部材80の配置形態、第1磁性部材81や第2磁性部材82の形状や設置数は一例であり、基部31や固定部32の内部に外表面が露出しないように複数配置可能な形態を有していればよい。
【0090】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100は、基端側に配置される操作部20と、先端側に配置されガイドワイヤGを保持する保持部30と、を含む本体部10を備え、操作部20は、基端から先端までの範囲に、中心軸Cから径方向外側に向かって延びて外周面に開口するように形成されたワイヤ収容部50を有し、保持部30は、外表面が露出しないように埋設された第1磁性部材81を含む基部31と、外表面が露出しないように埋設された第2磁性部材82を含む固定部32と、基部31に対して固定部32を開閉可能に連結するヒンジ部33と、で構成され、第1磁性部材81と第2磁性部材82との磁気吸着により固定部32を閉状態としたとき、ワイヤ収容部50に収容されたガイドワイヤGを保持する。
【0091】
このような構成により、保持部30を構成する基部31と固定部32は、ヒンジ部33を介して基部31と固定部32が開閉可能に、かつ磁気吸着によって係合されている。したがって、術者は、片手で固定部32を基部31から離隔する方向に回転させるだけで保持部30によるガイドワイヤGの保持を解除できる。そのため、ガイドワイヤ操作器具100は、ガイドワイヤGに対する装着位置を容易に変更することができる。また、ガイドワイヤ操作器具100は、ワイヤ収容部50が中心軸Cから径方向外側に向かって延びて外周面に開口するように形成されているため、本体部10の外周面からガイドワイヤGの着脱を行うことができる。これにより、術者は、全長の長いガイドワイヤGへのガイドワイヤ操作器具100の着脱をガイドワイヤGの任意の位置で容易に行うことができる。さらに、第1磁性部材81と第2磁性部材82は、共に外表面が露出しないように基部31または固定部32に埋設されるため、血液に触れることがない。そのため、ガイドワイヤ操作器具100は、生体に対する安全性が高い。
【0092】
また、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100は、固定部32が、閉状態において、ワイヤ収容部50の少なくとも先端側および基端側を周方向に覆うカバー部60を備えるように構成してもよい。また、カバー部60は、ワイヤ収容部50の先端から基端までの範囲を周方向に覆うように構成されてもよい。
【0093】
このような構成により、ガイドワイヤGが保持部30に保持された状態において、ワイヤ収容部50に収容されたガイドワイヤGは、少なくとも先端側および基端側がカバー部60により覆われる。そのため、ガイドワイヤ操作器具100は、ガイドワイヤGの操作中にガイドワイヤGがワイヤ収容部50から脱落することを防止できる。また、ガイドワイヤ操作器具100は、カバー部60によってワイヤ収容部50の先端から基端までの範囲を周方向に全体的に覆うようにすれば、ガイドワイヤGのワイヤ収容部50からの脱落を確実に防止できる。
【0094】
また、本実施形態に係るガイドワイヤ操作器具100において、基部31は、ガイドワイヤGを中心軸Cと同軸に配置するための角部34を有し、固定部32は、閉状態において角部34にガイドワイヤGを押し付けるように接触して角部34との間にガイドワイヤGを保持する押付部35を有する構成としてもよい。
【0095】
このような構成により、ガイドワイヤ操作器具100は、固定部32の閉状態において、角部34にガイドワイヤGを押し付けるように接触してガイドワイヤGを保持するため、ガイドワイヤGを強固に保持できる。また、ガイドワイヤ操作器具100は、角部34と押付部35によってガイドワイヤGを保持するため、保持部30内のガイドワイヤGの外周面に対し、長軸方向に沿って複数箇所で線接触する。これにより、保持部30は、ガイドワイヤGの外周面にかかる保持力を分散できるので、ガイドワイヤGの外周面の損傷を低減できる。
【符号の説明】
【0096】
10 本体部、
20 操作部、
21 把持部、
22 連結部、
30 保持部、
31 基部(31a 第1当接面)、
32 固定部(32a 第2当接面)、
33 ヒンジ部、
34 角部、
35 押付部、
36 指掛け部、
40 延在部、
50 ワイヤ収容部(50a 開口)、
51 第1ワイヤ収容部、
52 第2ワイヤ収容部、
60 カバー部、
61 第1カバー部、
62 第2カバー部、
70 カバー格納部、
71 第1カバー格納部、
72 第2カバー格納部、
73 第3カバー格納部、
74 第4カバー格納部、
80 磁性部材、
81 第1磁性部材(81a 主平面)、
82 第2磁性部材(82a 主平面)、
83 ヨーク、
91 台座、
92 ピン、
100 ガイドワイヤ操作器具、
200 金型、
210 雌型、
220 雄型、
230 キャビティ(空洞部)、
C 中心軸、
G ガイドワイヤ、
X 保持空間
Y 樹脂。