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特開2024-33126制御システム、発電プラント及び発電プラントの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033126
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】制御システム、発電プラント及び発電プラントの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/36 20060101AFI20240306BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240306BHJP
   F01D 17/04 20060101ALI20240306BHJP
   F01D 17/20 20060101ALI20240306BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F01D25/36
F01D25/00 V
F01D17/04
F01D17/20 D
F01D25/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136531
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹友 孝裕
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071AB01
3G071BA02
3G071CA02
3G071FA02
(57)【要約】
【課題】設備の設置コストを増大させることなく、発電機の出力指令値を変更してから発電機の出力実測値が変更されるまでの時間差を短縮し、発電機の出力実測値の出力指令値への追従性を高める。
【解決手段】発電機30の出力指令値を取得する出力指令値取得部61と、発電機30の出力実測値を取得する出力実測値取得部62と、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給されない停止状態において、タービンロータ軸22が回転するようにターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力を制御する駆動制御部64と、を備え、駆動制御部64は、出力指令値取得部61が取得する出力指令値と出力実測値取得部62が取得する出力実測値との偏差が少なくなるように、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力を制御する制御システム60を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラと、前記ボイラで生成される蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転軸に連結される発電機と、前記回転軸を駆動するターニング装置とを備える発電プラントの制御システムであって、
前記発電機の出力指令値を取得する第1取得部と、
前記発電機の出力実測値を取得する第2取得部と、
前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給されない停止状態において、前記回転軸が回転するように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記第1取得部が取得する前記出力指令値と前記第2取得部が取得する前記出力実測値との偏差が少なくなるように、前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する制御システム。
【請求項2】
ボイラ入力指令値に応じて前記ボイラを制御するボイラ制御部を備え、
前記ボイラ制御部は、前記ボイラから前記蒸気タービンに供給される前記蒸気の圧力が設定値となるように前記ボイラを制御し、
前記駆動制御部は、前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給される運転状態において、前記出力指令値よりも前記出力実測値が小さい場合に、前記偏差が少なくなるように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を増加させるよう制御する請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1取得部は、前記停止状態において、前記発電機が電力を供給する電力系統の周波数に応じて設定される前記出力指令値を取得し、
前記駆動制御部は、前記停止状態において、前記出力指令値よりも前記出力実測値が小さい場合に、前記偏差が少なくなるように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を増加させるよう制御する請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記回転軸と前記発電機との間に配置される変速装置を備え、
前記駆動制御部は、前記停止状態において、前記偏差が少なくなるように前記変速装置を制御する請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御システムと、
前記ボイラと、
前記蒸気タービンと、
前記発電機と、
前記ターニング装置と、を備える発電プラント。
【請求項6】
前記停止状態において、前記蒸気タービンへ冷却媒体を注入する注入部を備える請求項5に記載の発電プラント。
【請求項7】
ボイラと、前記ボイラで生成される蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転軸に連結される発電機と、前記回転軸を駆動するターニング装置とを備える発電プラントの制御方法であって、
前記発電機の出力指令値を取得する第1取得工程と、
前記発電機の出力実測値を取得する第2取得工程と、
前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給されない停止状態において、前記回転軸が回転するように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する駆動制御工程と、を備え、
前記駆動制御工程は、前記第1取得工程が取得する前記出力指令値と前記第2取得工程が取得する前記出力実測値との偏差が少なくなるように、前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する発電プラントの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、発電プラント及び発電プラントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気タービンの回転軸から発電機の回転軸に動力を伝達して発電機を回転させて発電を行う蒸気タービン発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、蒸気タービンの運転停止後、ターニング装置を用いて回転軸を低速回転させることにより、回転軸の自重による曲がり変形を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-190398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気タービン発電装置においては、発電機を駆動するタービンを回転させるためのエネルギーとして蒸気を用いるため、発電機の出力指令値を変更する場合には蒸気発生設備(ボイラ等)で蒸気の生成量の変更を開始してから発電機の出力実測値が出力指令値に変更されるまでの時間差が生じてしまう。
【0005】
特に、石炭等の燃料を燃焼して蒸気の生成量を変更する場合、燃料の投入量の変更を開始してから発電機の出力実測値が出力指令値に変更されるまでに大きな時間差が生じてしまう。また、発電機の出力指令値を変更してから発電機の出力実測値が変更されるまでの発電機の出力の不足分を補うためには、別途の設備(充放電設備等)を設けることが有効となるが、設備の設置コストが増大してしまう。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、設備の設置コストを増大させることなく、発電機の出力指令値を変更してから発電機の出力実測値が変更されるまでの時間差を短縮し、発電機の出力実測値の出力指令値への追従性を高めることが可能な制御システム、発電プラント及び発電プラントの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の手段を採用する。
本開示に係る制御システムは、ボイラと、前記ボイラで生成される蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転軸に連結される発電機と、前記回転軸を駆動するターニング装置とを備える発電プラントの制御システムであって、前記発電機の出力指令値を取得する第1取得部と、前記発電機の出力実測値を取得する第2取得部と、前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給されない停止状態において、前記回転軸が回転するように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記第1取得部が取得する前記出力指令値と前記第2取得部が取得する前記出力実測値との偏差が少なくなるように、前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する。
【0008】
本開示に係る発電プラントの制御方法は、ボイラと、前記ボイラで生成される蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転軸に連結される発電機と、前記回転軸を駆動するターニング装置とを備える発電プラントの制御方法であって、前記発電機の出力指令値を取得する第1取得工程と、前記発電機の出力実測値を取得する第2取得工程と、前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給されない停止状態において、前記回転軸が回転するように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する駆動制御工程と、を備え、前記駆動制御工程は、前記第1取得工程が取得する前記出力指令値と前記第2取得工程が取得する前記出力実測値との偏差が少なくなるように、前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、発電機の出力指令値を変更してから発電機の出力実測値が変更されるまでの時間差を短縮し、発電機の出力実測値の出力指令値への追従性を高めることが可能な制御システム、発電プラント及び発電プラントの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る発電プラントの概略構成を示す図である。
図2】運転状態においてボイラの負荷変化時に、ターニング装置からタービンロータ軸に伝達する駆動力を制御する動作を示すフローチャートである。
図3】タービンガバナ弁の開度を制御する動作を示すフローチャートである。
図4】ボイラ入力指令値を調整する動作を示すフローチャートである。
図5】発電機の出力指令値と出力実測値の時間変化を示すグラフである。
図6】タービンロータ軸に伝達される駆動力の時間変化を示すグラフである。
図7】タービンガバナ弁の開度の時間変化を示すグラフである。
図8】ボイラ入力指令値の時間変化を示すグラフである。
図9】主蒸気圧力の時間変化を示すグラフである。
図10】ボイラの負荷整定時または停止時に、ターニング装置からタービンロータ軸に伝達する駆動力を制御する動作を示すフローチャートである。
図11】ボイラの負荷整定時または停止時に、ターニング装置からタービンロータ軸に伝達する駆動力を制御する動作の変形例を示すフローチャートである。
図12】電力系統の周波数の時間変化を示すグラフである。
図13】タービンロータ軸に伝達される駆動力の時間変化を示すグラフである。
図14】発電機の出力実測値の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の一実施形態に係る発電プラント100について、図1を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の発電プラント100は、ボイラ10と、蒸気タービン20と、発電機30と、ターニング装置40と、変速装置50と、制御システム60と、冷却媒体注入部70と、を備える。本実施形態の発電プラント100は、ボイラ10により蒸気を生成して蒸気タービン20を駆動し、蒸気タービン20のタービンロータ軸22に連結される発電機30により発電を行う設備である。
【0012】
ボイラ10は、微粉燃料を燃焼することで発生した熱を、給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成する蒸気発生設備である。ボイラ10は、例えば、石炭(炭素含有固体燃料)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉燃料をバーナにより燃焼させる石炭焚き(微粉炭焚き)ボイラである。ボイラ10で生成された蒸気は、蒸気供給管11を介して蒸気タービン20に供給される。ボイラ10から蒸気タービン20への蒸気の供給量は、タービンガバナ弁15により調整される。
【0013】
蒸気タービン20は、ボイラ10で生成される蒸気により駆動される設備である。蒸気タービン20は、タービン翼21と、タービンロータ軸(回転軸)22と、車室23と、を有する。タービン翼21は、複数段の静翼と動翼とを配置した構造体である。静翼が車室23に固定され、動翼がタービンロータ軸22に固定される。タービン翼21に導かれる蒸気によりタービン翼21に動力が付与され、タービン翼21に連結されたタービンロータ軸22が回転する。
【0014】
タービンロータ軸22は、直線状に延びる軸体であり、タービン翼21の動翼に連結されている。タービンロータ軸22の第1端部22aは第1カップリング24に連結され、タービンロータ軸22の第2端部22bは第2カップリング25に連結される。
【0015】
発電機30は、第2カップリング25および変速装置50を介してタービンロータ軸22から伝達される駆動力を電力に変換して出力する装置である。発電機30が出力する電力は、変圧器35により所定の電圧に変圧されて電力系統PSに供給される。発電機30は、回転軸31を介して変速装置50に連結され、さらに第2カップリング25を介してタービンロータ軸22に連結されている。
【0016】
ターニング装置40は、第1カップリング24に連結されるとともに第1カップリング24を介して蒸気タービン20のタービンロータ軸22を駆動する装置である。ターニング装置40は、ターニングモータ41と、流体継手42と、変速機43と、を有する。ターニング装置40は、ボイラ10から蒸気供給管11を介して蒸気タービン20に蒸気が供給されない蒸気タービン20の停止状態において、タービンロータ軸22が回転するように制御システム60により制御される。
【0017】
ターニングモータ41は、一定の回転数で回転軸41aを回転させる電動モータである。流体継手42は、流体を介して回転軸41aの駆動力を回転軸42aに伝達する装置である。流体継手42は、回転軸41aから回転軸42aに伝達する駆動力の割合を任意の割合に調整することができる。変速機43は、回転軸42aの回転数を所望の回転数に変換して回転軸43aに伝達する装置である。
【0018】
なお、ターニング装置40は、ターニングモータ41と、流体継手42と、変速機43と、を有するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、ターニング装置40として、VVVF(Variable Voltage Variable Frequency)制御装置を備えた電動機を用いてもよい。
【0019】
変速装置50は、タービンロータ軸22と発電機30との間に配置され、タービンロータ軸22の駆動力を発電機30に伝達する装置である。変速装置50は、流体継手51と、変速機52と、を有する。変速装置50は、制御システム60により、電力系統PSの周波数を維持するように発電機の出力を適切に制御される。
【0020】
流体継手51は、第2カップリング25を介してタービンロータ軸22の第2端部22bに連結される装置である。流体継手51は、第2カップリング25および回転軸51aを介してタービンロータ軸22から変速機52に伝達する駆動力の割合を任意の割合に調整することができる。変速機52は、流体継手51に連結される回転軸52aの回転数を所望の回転数に変換して回転軸31に伝達する装置である。
【0021】
制御システム60は、発電プラント100の各部を制御する装置である。制御システム60は、出力指令値取得部(第1取得部)61と、出力実測値取得部(第2取得部)62と、ボイラ制御部63と、駆動制御部64と、を有する。制御システム60は、記憶部(図示略)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、各種の処理を実行する。
【0022】
出力指令値取得部61は、発電機30が電力系統PSへ出力する電力を定める出力指令値PWtを取得する。出力実測値取得部62は、発電機30がタービンロータ軸22から伝達される駆動力により発生した電力の出力実測値を取得する。
【0023】
ボイラ制御部63は、ボイラ入力指令値BIDに応じて、ボイラ10がボイラ入力指令値BIDに対応する所定の負荷で運転するように、ボイラ10を制御する。駆動制御部64は、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力を制御する。
【0024】
ボイラ入力指令値BIDは、ボイラ制御部63がボイラ10の負荷を制御するための指令値である。ボイラ制御部63は、ボイラ入力指令値BIDに基づいて、ボイラ10へ投入される燃料の供給量、ボイラ10へ供給される給水の供給量、ボイラ10へ投入される燃焼用空気の供給量等を制御する。
【0025】
冷却媒体注入部70は、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給されない停止状態において、蒸気供給管11を介して蒸気タービン20に冷却媒体(例えば、空気)を注入する装置である。冷却媒体注入部70は、蒸気タービン20へ冷却媒体を注入することにより、蒸気タービン20を適切に冷却しつつ、蒸気タービン20が回転する際の摩擦抵抗による損失(風損)を防止または抑制することができる。
【0026】
<ボイラの負荷変化時の動作>
ここで、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させるボイラ10の負荷変化時の発電プラント100の動作について説明する。なお、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させないボイラ10の負荷整定時または停止時の発電プラント100の動作については後述する。
【0027】
最初に、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作について説明する。図2は、ボイラ10の負荷変化時に、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作を示すフローチャートである。図2に示す各処理は、制御システム60により繰り返し実行される。
【0028】
ターニング装置40は、ボイラ10の停止時に、タービンロータ軸22の回転を継続するために用いられる装置である。本実施形態では、ターニング装置40をボイラ10の負荷変化時に動作させることで、発電機30の出力実測値PWaが出力指令値PWtに対して大きく減少することを防止する。また、ターニング装置40をボイラ10の負荷変化時に動作させることにより、後述するタービンガバナ弁15の開度の変化を抑制することができる。
【0029】
ステップS101で、制御システム60は、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させる負荷変化時かどうかを判断し、YESであればステップS102に処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了する。
【0030】
ステップS102で、出力指令値取得部61は、発電機30の出力指令値PWtを取得する。
ステップS103で、出力実測値取得部62は、発電機30の出力実測値PWaを取得する。
【0031】
ステップS104で、制御システム60は、出力指令値PWtから出力実測値PWaを減算した値(偏差)が予め設定した閾値以上であるかどうかを判断し、YESであればステップS105に処理を進め、NOであればステップS107へ処理を進める。
【0032】
出力指令値PWtから出力実測値PWaを減算した値が予め設定した閾値以上である場合、出力実測値PWaが出力指令値PWtよりも閾値以上小さい。そして、出力実測値PWaと出力指令値PWtとの差が更に大きくなると、出力実測値PWaが出力指令値PWtに十分に追従しない状態となる。そこで、本実施形態では、以下のステップS105を実行することにより、発電機30の出力実測値PWaの出力指令値PWtへの追従性を高める。
【0033】
ステップS105で、駆動制御部64は、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、ターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を調整する。駆動制御部64は、出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差に応じて、ターニングモータ41から変速機43に伝達される駆動力を調整するよう、流体継手42を制御する。
【0034】
本実施形態のターニング装置40は、ボイラ10が運転状態である場合に、ターニングモータ41が一定の回転数で回転軸41aを回転させる。そして、ステップS105において、駆動制御部64は、出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、流体継手42による回転軸41aから回転軸42aへの駆動力の伝達割合を制御する。
【0035】
ステップS106で、駆動制御部64は、変速装置50を制御し、電力系統PSに供給する電力に適した回転数となるように発電機30の回転軸31の回転数を調整する。制御システム60は、ステップS106を実行した後は、ステップS102の処理を再び実行する。
【0036】
ステップS107で、駆動制御部64は、出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差が閾値未満であることから、ターニング装置40からタービンロータ軸22への駆動力の伝達を停止させるため、流体継手42による回転軸41aから回転軸42aへの駆動力の伝達割合を0とする。このようにしているのは、出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差が閾値未満である場合、ターニング装置40がタービンロータ軸22に駆動力を伝達する必要がないためである。制御システム60は、ステップS107を実行した後に、本フローチャートの処理を終了させる。
【0037】
以上のように、本実施形態の駆動制御部64は、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させる負荷変化時に、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、ターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を調整する。
【0038】
次に、タービンガバナ弁15の開度を制御する動作について説明する。図3は、タービンガバナ弁15の開度を制御する動作を示すフローチャートである。図3に示す各処理は、制御システム60により繰り返し実行される。
【0039】
ステップS201で、制御システム60は、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させる負荷変化時かどうかを判断し、YESであればステップS202に処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了する。
【0040】
ステップS202で、出力指令値取得部61は、発電機30の出力指令値PWtを取得する。
ステップS203で、出力実測値取得部62は、発電機30の出力実測値PWaを取得する。
【0041】
ステップS204で、制御システム60は、出力指令値PWtから出力実測値PWaを減算した値(偏差)が予め設定した閾値以上であるかどうかを判断し、YESであればステップS205に処理を進め、NOであればステップS206に処理を進める。
【0042】
出力指令値PWtから出力実測値PWaを減算した値が予め設定した閾値以上である場合、出力実測値PWaが出力指令値PWtよりも閾値以上小さい。そして、出力実測値PWaと出力指令値PWtとの差が更に大きくなると、出力実測値PWaが出力指令値PWtに十分に追従しない状態となる。そこで、本実施形態では、以下のステップS205を実行することにより、発電機30の出力実測値PWaの出力指令値PWtへの追従性を高める。
【0043】
ステップS205で、制御システム60は、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、タービンガバナ弁15の開度を増加させる。制御システム60は、ステップS205を実行した後は、ステップS202の処理を再び実行する。
【0044】
ステップS206で、制御システム60は、出力実測値PWaから出力指令値PWtを減算した値(偏差)が予め設定した閾値以上であるかどうかを判断し、YESであればステップS207に処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了する。
【0045】
出力実測値PWaから出力指令値PWtを減算した値が予め設定した閾値以上である場合、出力実測値PWaが出力指令値PWtよりも閾値以上大きい。そして、出力実測値PWaと出力指令値PWtとの差が更に大きくなると、出力実測値PWaが出力指令値PWtに十分に追従しない状態となる。そこで、本実施形態では、以下のステップS207を実行することにより、発電機30の出力実測値PWaの出力指令値PWtへの追従性を高める。
【0046】
ステップS207で、制御システム60は、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、タービンガバナ弁15の開度を減少させる。制御システム60は、ステップS207を実行した後は、ステップS202の処理を再び実行する。
【0047】
以上のように、本実施形態の制御システム60は、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給される運転状態において、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、タービンガバナ弁15の開度を調整する。
【0048】
次に、ボイラ入力指令値を調整する動作について説明する。図4は、ボイラ入力指令値を調整する動作を示すフローチャートである。図4に示す各処理は、制御システム60により繰り返し実行される。
【0049】
ステップS301で、制御システム60は、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させる負荷変化時かどうかを判断し、YESであればステップS302に処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了する。
【0050】
ステップS302で、制御システム60は、蒸気供給管11から蒸気タービン20に供給される主蒸気圧力の設定値PRtを取得する。
ステップS303で、制御システム60は、主蒸気圧力の実測値PRaを圧力センサ16から取得する。
【0051】
ステップS304で、制御システム60は、設定値PRtから実測値PRaを減算した値(偏差)が予め設定した閾値以上であるかどうかを判断し、YESであればステップS305に処理を進め、NOであればステップS306に処理を進める。
【0052】
設定値PRtから実測値PRaを減算した値が予め設定した閾値以上である場合、実測値PRaが設定値PRtよりも閾値以上小さい。そして、実測値PRaと設定値PRtとの差が更に大きくなると、実測値PRaが設定値PRtに十分に追従しない状態となる。そこで、本実施形態では、以下のステップS305を実行することにより、実測値PRaの設定値PRtへの追従性を高める。
【0053】
ステップS305で、制御システム60は、設定値PRtと実測値PRaとの偏差が少なくなるように、ボイラ入力指令値BIDを増加させる。ボイラ制御部63は、増加させたボイラ入力指令値BIDに基づいて、ボイラ10へ投入される燃料の供給量、ボイラ10へ供給される給水の供給量、ボイラ10へ投入される燃焼用空気の供給量等をそれぞれ増加させるようボイラ10を制御する。制御システム60は、ステップS305を実行した後は、ステップS302の処理を再び実行する。
【0054】
ステップS306で、制御システム60は、実測値PRaから設定値PRtを減算した値(偏差)が予め設定した閾値以上であるかどうかを判断し、YESであればステップS307に処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了する。
【0055】
実測値PRaから設定値PRtを減算した値が予め設定した閾値以上である場合、実測値PRaが設定値PRtよりも閾値以上大きい。そして、実測値PRaと設定値PRtとの差が更に大きくなると、実測値PRaが設定値PRtに十分に追従しない状態となる。そこで、本実施形態では、以下のステップS307を実行することにより、実測値PRaの設定値PRtへの追従性を高める。
【0056】
ステップS307で、制御システム60は、設定値PRtと実測値PRaとの偏差が少なくなるように、ボイラ入力指令値BIDを減少させる。ボイラ制御部63は、減少させたボイラ入力指令値BIDに基づいて、ボイラ10へ投入される燃料の供給量、ボイラ10へ供給される給水の供給量、ボイラ10へ投入される燃焼用空気の供給量等をそれぞれ減少させるようボイラ10を制御する。制御システム60は、ステップS307を実行した後は、ステップS302の処理を再び実行する。
【0057】
以上のように、本実施形態のボイラ制御部63は、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給される運転状態において、ボイラ10から蒸気タービン20に供給される蒸気の圧力が設定値PRtとなるようにボイラ10を制御する。
【0058】
次に、発電機30の出力指令値PWtと出力実測値PWaの時間変化について説明する。図5は、発電機30の出力指令値PWtと出力実測値PWaの時間変化を示すグラフである。図5では、出力指令値PWtを実線で示し、出力実測値PWaを1点鎖線で示す。図5に点線で示す比較例の出力実測値PWaは、運転状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力を伝達しない例を示す。比較例においては、図2に示すターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作が実行されない。
【0059】
図5に示す例では、時刻T0から時刻T1までは出力指令値PWtがPW1で一定であり、時刻T1から時刻T2まで出力指令値PWtがPW1からPW2まで一定の勾配で漸次増加する。また、時刻T2から時刻T3までは出力指令値PWtがPW2で一定であり、時刻T3から時刻T4まで出力指令値PWtがPW2からPW1まで一定の勾配で漸次減少する。時刻T4以降は出力指令値PWtがPW1で一定である。
【0060】
図5に示す比較例の出力実測値PWaは、時刻T1から時刻T2より前の時刻T1aまでの期間、時刻T2より後の時刻T2aから時刻T3より前の時刻T2bまでの期間、時刻T4の直後から時刻T4aまでの期間において、出力指令値PWtを下回っている。一方、図5に示す本実施形態の出力実測値PWaは、時刻T1から時刻T1aまでの期間、時刻T2aから時刻T2bまでの期間、時刻T4の直後から時刻T4aまでの期間において、出力指令値PWtに略一致するように追従している。
【0061】
次に、タービンロータ軸22に伝達される駆動力の時間変化について説明する。図6は、タービンロータ軸22に伝達される駆動力の時間変化を示すグラフである。図6では、本実施形態でタービンロータ軸22に伝達される駆動力を1点鎖線で示し、比較例でタービンロータ軸22に伝達される駆動力を点線で示す。図6に点線で示す比較例は、運転状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力を伝達しない例を示す。
【0062】
図6に示すように、本実施形態では、時刻T1から時刻T1aまでの期間、時刻T2aから時刻T2bまでの期間、時刻T4の直後から時刻T4aまでの期間において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力が伝達される。各時刻における駆動力の大きさは、出力指令値PWtから出力実測値PWaを減算した偏差に応じた値となっている。その他の時刻においては、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力が伝達されずに駆動力が0となっている。図6に示すように、比較例では、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力は、時刻T0以降で常に0となっている。
【0063】
次に、タービンガバナ弁15の開度の時間変化について説明する。図7は、タービンガバナ弁15の開度の時間変化を示すグラフである。図7では、本実施形態のタービンガバナ弁15の開度を1点鎖線で示し、比較例のタービンガバナ弁15の開度を点線で示す。図7に点線で示す比較例は、運転状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力を伝達しない例を示す。
【0064】
図7に示すように、比較例では、時刻T1から時刻T3の手前までの期間でタービンガバナ弁15の開度がOP1を大きく上回っている。一方、本実施形態では、時刻T1から時刻T3の手前までの期間でタービンガバナ弁15の開度がOP1と略一致するように追従している。
【0065】
次に、ボイラ入力指令値BIDの時間変化について説明する。図8は、ボイラ入力指令値BIDの時間変化を示すグラフである。図8では、本実施形態のボイラ入力指令値BIDを1点鎖線で示し、比較例のボイラ入力指令値BIDを点線で示す。図8に点線で示す比較例は、運転状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力を伝達しない例を示す。
【0066】
図8に示すように、比較例では、時刻T1から時刻T3の手前までの期間でボイラ入力指令値BIDが大きく変動している。一方、本実施形態では、時刻T1から時刻T3の手前までの期間でボイラ入力指令値BIDが比較例ほど大きく変動してはいない。ボイラ入力指令値BIDは、主蒸気圧力の設定値PRtと主蒸気圧力の実測値PRaとの差分が0となるようにボイラ制御部63により決定される。
【0067】
本実施形態では、出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差に応じてターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動が調整されるため、主蒸気圧力の設定値PRtと主蒸気圧力の実測値PRaとの差分が小さくなり、ボイラ入力指令値BIDが主蒸気圧力の設定値PRtに応じた値に近いものとなる。
【0068】
一方、比較例では、出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差があってもターニング装置40がタービンロータ軸22に駆動力を伝達しないため、主蒸気圧力の設定値PRtと主蒸気圧力の実測値PRaとの差分が大きくなり、ボイラ入力指令値BIDが主蒸気圧力の設定値PRtに応じた値から大きく変動する。
【0069】
次に、主蒸気圧力の時間変化について説明する。図9は、主蒸気圧力の時間変化を示すグラフである。図9では、本実施形態の主蒸気圧力の設定値PRtを実線で示し、本実施形態の主蒸気圧力の実測値PRaを1点鎖線で示し、比較例の主蒸気圧力の実測値PRaを点線で示す。図9に点線で示す比較例は、運転状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力を伝達しない例を示す。
【0070】
図9に示す比較例の実測値PRaは、時刻T1から時刻T2までの一部の期間、時刻T2から時刻T3までの一部の期間、および時刻T4以降の一部の期間において、設定値PRtを下回っている。一方、図9に示す本実施形態の実測値PRaは、時刻T1から時刻T2までの一部の期間、時刻T2から時刻T3までの一部の期間、および時刻T4以降の一部の期間において、設定値PRtと略一致するように追従している。
【0071】
<ボイラの負荷整定時または停止時の動作>
次に、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させないボイラ10の負荷整定時または停止時の発電プラント100の動作について説明する。具体的には、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作について説明する。
【0072】
図10は、ボイラ10の負荷整定時または停止時に、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作を示すフローチャートである。図10に示す各処理は、制御システム60により繰り返し実行される。本実施形態では、ターニング装置40をボイラの負荷整定時または停止時において以下のように動作させることで、電力系統PSの周波数の変動を抑制する。
【0073】
ステップS401で、制御システム60は、ボイラ10の負荷整定時または停止時であるかどうかを判断し、YESであればステップS402に処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了する。
【0074】
ステップS402で、制御システム60は、電力系統PSの周波数の目標値を取得する。
ステップS403で、制御システム60は、電力系統PSの周波数の実測値を取得し、ステップS402で取得した目標値と実測値の偏差を取得する。
【0075】
ステップS404で、駆動制御部64は、電力系統PSの周波数の目標値と電力系統PSの周波数の実測値との偏差が少なくなるように、ターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を決定する。駆動制御部64は、決定された駆動力がターニングモータ41から変速機43に伝達されるよう、流体継手42を制御する。
【0076】
ステップS405で、駆動制御部64は、変速装置50を制御し、電力系統PSに供給する電力に適した回転数となるように発電機30の回転軸31の回転数を調整する。制御システム60は、ステップS405を実行した後は、ステップS401の処理を再び実行する。
【0077】
以上のように、本実施形態の駆動制御部64は、ボイラ制御部63がボイラ入力指令値BIDを変化させないボイラ10の負荷整定時または停止時に、電力系統PSの周波数の目標値と電力系統PSの周波数の実測値との偏差が少なくなるように、ターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する。
【0078】
なお、以上で説明したターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作に加え、更に制御システム60により変速装置50を制御するようにしてもよい。具体的には、制御システム60は、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給されない停止状態において、出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、変速機52の回転軸52aの回転数を制御してもよい。
【0079】
また、以上の説明においては、周波数の偏差に応じてターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を直接的に決定するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、図11の変形例に示すように、周波数の偏差に応じて発電機30の出力指令値PWtを設定し、発電機30の出力実測値PWaと出力指令値PWtとの偏差に応じてターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を決定してもよい。
【0080】
図11は、ボイラ10の負荷整定時または停止時に、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作の変形例を示すフローチャートである。図11のステップS501~ステップS503は図10のステップS401~ステップS403と同様であるため、以下での説明を省略する。
【0081】
ステップS504で、出力指令値取得部61は、ステップS503で取得した周波数の偏差に応じて発電機30の出力指令値PWtを設定する。
ステップS505で、出力実測値取得部62は、発電機30の出力実測値PWaを取得する。
【0082】
ステップS506で、制御システム60は、出力指令値PWtから出力実測値PWaを減算した値(偏差)が予め設定した閾値以上であるかどうかを判断し、YESであればステップS507に処理を進め、NOであればステップS509に処理を進める。
【0083】
出力指令値PWtから出力実測値PWaを減算した値が予め設定した閾値以上である場合、出力実測値PWaが出力指令値PWtよりも閾値以上小さい。そして、出力実測値PWaと出力指令値PWtとの差が更に大きくなると、出力実測値PWaが出力指令値PWtに十分に追従しない状態となる。そこで、本実施形態では、以下のステップS407を実行することにより、発電機30の出力実測値PWaの出力指令値PWtへの追従性を高める。
【0084】
ステップS507で、駆動制御部64は、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、ターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を増加させる。駆動制御部64は、ターニングモータ41から変速機43に伝達される駆動力を増加させるよう、流体継手42を制御する。
【0085】
ステップS508で、駆動制御部64は、変速装置50を制御し、電力系統PSに供給する電力に適した回転数となるように発電機30の回転軸31の回転数を調整する。制御システム60は、ステップS508を実行した後は、ステップS501の処理を再び実行する。
【0086】
ステップS509で、制御システム60は、出力実測値PWaから出力指令値PWtを減算した値(偏差)が予め設定した閾値以上であるかどうかを判断し、YESであればステップS510に処理を進め、NOであれば本フローチャートの処理を終了する。
【0087】
出力実測値PWaから出力指令値PWtを減算した値が予め設定した閾値以上である場合、出力実測値PWaが出力指令値PWtよりも閾値以上大きい。そして、出力実測値PWaと出力指令値PWtとの差が更に大きくなると、出力実測値PWaが出力指令値PWtに十分に追従しない状態となる。そこで、本実施形態では、以下のステップS510を実行することにより、発電機30の出力実測値PWaの出力指令値PWtへの追従性を高める。
【0088】
ステップS510で、駆動制御部64は、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、ターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を減少させる。駆動制御部64は、ターニングモータ41から変速機43に伝達される駆動力を減少させるよう、流体継手42を制御する。
【0089】
ステップS511で、駆動制御部64は、変速装置50を制御し、電力系統PSに供給する電力に適した回転数となるように発電機30の回転軸31の回転数を調整する。制御システム60は、ステップS511を実行した後は、ステップS501の処理を再び実行する。
【0090】
以上のように、本実施形態の変形例の駆動制御部64は、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給されない停止状態において、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、ターニング装置40がタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する。
【0091】
次に、電力系統PSの周波数の時間変化について説明する。図12は、電力系統PSの周波数の時間変化を示すグラフである。図12では、電力系統PSの周波数の目標値を実線で示し、本実施形態の発電プラント100における実測値を1点鎖線で示す。図12に点線で示す比較例の実測値は、停止状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を変化させない例を示す。比較例においては、図10または図11に示すターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を制御する動作が実行されない。
【0092】
図12に示す例では、時刻T5から時刻T9を経過した後までの全期間において、電力系統PSの周波数の目標値はFQ1で一定である。図12に示す比較例の周波数の実測値は、時刻T6から時刻T7までの期間の一部では目標値よりも低く、時刻T8から時刻T9までの期間では目標値よりも高い。一方、図12に示す本実施形態の実測値は、時刻T5から時刻T9を経過した後までの全期間において、目標値に略一致するように追従している。
【0093】
次に、タービンロータ軸22に伝達される駆動力の時間変化について説明する。図13は、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力の時間変化を示すグラフである。図13では、本実施形態でタービンロータ軸22に伝達される駆動力を1点鎖線で示し、比較例でタービンロータ軸22に伝達される駆動力を点線で示す。図13に点線で示す比較例は、停止状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を変化させない例を示す。
【0094】
図13に示すように、比較例でタービンロータ軸22に伝達される駆動力は、時刻T5から時刻T9を経過した後までの全期間において、DF1で一定である。一方、本実施形態でタービンロータ軸22に伝達される駆動力は、時刻T6から時刻T7までの期間の一部ではDF1よりも高く、時刻T8から時刻T9までの期間ではDF1よりも低い。
【0095】
時刻T6から時刻T7までの期間の一部において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力をDF1よりも高くしているのは、電力系統PSの周波数の目標値に対する実測値の不足分を補うためである。一方、時刻T8から時刻T9までの期間において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に駆動力をDF1よりも低くしているのは、電力系統PSの周波数の目標値に対する実測値の余剰分を相殺するためである。
【0096】
次に、発電機30の出力実測値PWaの時間変化について説明する。図14は、発電機30の出力実測値PWaの時間変化を示すグラフである。図14では、出力実測値PWaを1点鎖線で示す。図14に点線で示す比較例は、停止状態において、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達する駆動力を変化させない例を示す。
【0097】
図14に示すように、比較例における出力実測値PWaは、時刻T5から時刻T9を経過した後までの全期間において、PW3で一定である。一方、本実施形態における出力実測値PWaは、時刻T6から時刻T7までの期間の一部ではPW3よりも大きく、時刻T8から時刻T9までの期間ではPW3よりも小さい。
【0098】
時刻T6から時刻T7までの期間の一部において、出力実測値PWaをPW3よりも大きくしているのは、電力系統PSの周波数の目標値に対する実測値の不足分を補うためである。一方、時刻T8から時刻T9までの期間において、出力実測値PWaをPW3よりも小さくしているのは、電力系統PSの周波数の目標値に対する実測値の余剰分を相殺するためである。
【0099】
以上で説明した本実施形態の発電プラント100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の発電プラント100の制御システム60によれば、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給されない停止状態において、タービンロータ軸22が回転するようにターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力が制御される。ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給されない停止状態において、蒸気タービン20のタービンロータ軸22が回転を継続するため、タービンロータ軸22の自重による曲がり変形を防止することができる。
【0100】
また、本実施形態の制御システム60によれば、出力指令値取得部61が取得する出力指令値PWtと出力実測値取得部62が取得する出力実測値PWaとの偏差が少なくなるように、ターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力が制御される。蒸気タービン20の停止状態において蒸気タービン20のタービンロータ軸22の回転を継続するために用いられるターニング装置40を利用するため、設備の設置コストを増大させることなく、発電機の30出力指令値を変更してから発電機30の出力実測値が変更されるまでの時間差を短縮し、発電機30の出力実測値の出力指令値への追従性を高めることができる。
【0101】
本実施形態の制御システム60によれば、制御システム60は、ボイラ10から蒸気タービン20に供給される蒸気の圧力が設定値PRtとなるようボイラ10及びタービンガバナ弁15を制御する。ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給される運転状態において、発電機30の出力指令値PWtよりも出力実測値PWaが小さい場合に、出力指令値PWtと出力実測値PWaの偏差が少なくなるようにターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力が増加する。蒸気タービン20の停止状態において蒸気タービン20のタービンロータ軸22の回転を継続するために用いられるターニング装置40を運転状態において動作させるため、設備の設置コストを増大させることなく、発電機30の出力実測値PWaの出力指令値PWtへの追従性を高めることができる。
【0102】
本実施形態の制御システム60によれば、ボイラ10から蒸気タービン20に蒸気が供給されない停止状態において、電力系統PSの周波数に応じて設定される発電機30の出力指令値PWtよりも出力実測値PWaが小さい場合に、出力指令値PWtと出力実測値PWaの偏差が少なくなるようにターニング装置40からタービンロータ軸22に伝達される駆動力が増加する。これにより、電力系統の周波数を維持するように発電機の出力を適切に調整することができる。
【0103】
本実施形態の制御システム60によれば、停止状態において、発電機30の出力指令値PWtと出力実測値PWaとの偏差が少なくなるようにタービンロータ軸22と発電機30との間に配置される変速装置50が制御される。これにより、電力系統PSの周波数を維持するように発電機30の出力を適切に調整することができる。
【0104】
本実施形態の発電プラント100によれば、設備の設置コストを増大させることなく、発電機30の出力指令値PWtを変更してから発電機30の出力実測値PWaが変更されるまでの時間差を短縮し、発電機30の出力実測値PWaの出力指令値PWtへの追従性を高めることができる。
【0105】
本実施形態の発電プラント100によれば、停止状態において、蒸気タービン20へ冷却媒体を注入することにより、蒸気タービン20を適切に冷却しつつ、蒸気タービン20が回転する際の摩擦抵抗による損失(風損)を防止または抑制することができる。また、冷却媒体の注入により蒸気タービン20のタービンロータ軸22の回転数が過度に増加したとしても、変速機52を制御することにより、電力系統PSの周波数を維持するように発電機30の出力を適切に調整することができる。
【0106】
以上説明した各実施形態に記載の制御システムは例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る制御システム(60)は、ボイラ(10)と、前記ボイラで生成される蒸気により駆動される蒸気タービン(20)と、前記蒸気タービンの回転軸に連結される発電機(30)と、前記回転軸を駆動するターニング装置(40)とを備える発電プラントの制御システムであって、前記発電機の出力指令値を取得する第1取得部(61)と、前記発電機の出力実測値を取得する第2取得部(62)と、前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給されない停止状態において、前記回転軸が回転するように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する駆動制御部(64)と、を備え、前記駆動制御部は、前記第1取得部が取得する前記出力指令値と前記第2取得部が取得する前記出力実測値との偏差が少なくなるように、前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する。
【0107】
本開示の第1態様に係る制御システムによれば、ボイラから蒸気タービンに蒸気が供給されない停止状態において、回転軸が回転するようにターニング装置から回転軸に伝達される駆動力が制御される。ボイラから蒸気タービンに蒸気が供給されない停止状態において、蒸気タービンの回転軸が回転を継続するため、回転軸の自重による曲がり変形を防止することができる。
【0108】
また、本開示の第1態様に係る制御システムによれば、第1取得部が取得する出力指令値と第2取得部が取得する出力実測値との偏差が少なくなるように、ターニング装置から回転軸に伝達される駆動力が制御される。蒸気タービンの停止状態において蒸気タービンの回転軸の回転を継続するために用いられるターニング装置を利用するため、設備の設置コストを増大させることなく、発電機の出力指令値を変更してから発電機の出力実測値が変更されるまでの時間差を短縮し、発電機の出力実測値の出力指令値への追従性を高めることができる。
【0109】
本開示の第2態様に係る制御システムは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、ボイラ入力指令値に応じて前記ボイラを制御するボイラ制御部(63)を備え、前記ボイラ制御部は、前記ボイラから前記蒸気タービンに供給される前記蒸気の圧力が設定値となるよう前記ボイラを制御し、前記駆動制御部は、前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給される運転状態において、前記出力指令値よりも前記出力実測値が小さい場合に、前記偏差が少なくなるように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を増加させるよう制御する。
【0110】
本開示の第2態様に係る制御システムによれば、ボイラ制御部は、ボイラから蒸気タービンに供給される蒸気の圧力が設定値となるようボイラを制御する。ボイラから蒸気タービンに蒸気が供給される運転状態において、発電機の出力指令値よりも出力実測値が小さい場合に、出力指令値と出力実測値の偏差が少なくなるようにターニング装置から回転軸に伝達される駆動力が増加する。蒸気タービンの停止状態において蒸気タービンの回転軸の回転を継続するために用いられるターニング装置を運転状態において動作させるため、設備の設置コストを増大させることなく、発電機の出力実測値の出力指令値への追従性を高めることができる。
【0111】
本開示の第3態様に係る制御システムは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第1取得部は、前記停止状態において、前記発電機が電力を供給する電力系統の周波数に応じて設定される前記出力指令値を取得し、前記駆動制御部は、前記停止状態において、前記出力指令値よりも前記出力実測値が小さい場合に、前記偏差が少なくなるように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を増加させるよう制御する。
【0112】
本開示の第3態様に係る制御システムによれば、ボイラから蒸気タービンに蒸気が供給されない停止状態において、電力系統の周波数に応じて設定される発電機の出力指令値よりも出力実測値が小さい場合に、出力指令値と出力実測値の偏差が少なくなるようにターニング装置から回転軸に伝達される駆動力が増加する。これにより、電力系統の周波数を維持するように発電機の出力を適切に調整することができる。
【0113】
本開示の第4態様に係る制御システムは、第3態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記回転軸と前記発電機との間に配置される変速装置(50)を備え、前記駆動制御部は、前記停止状態において、前記偏差が少なくなるように前記変速装置を制御する。
【0114】
本開示の第4態様に係る制御システムによれば、停止状態において、発電機の出力指令値と出力実測値との偏差が少なくなるように回転軸と発電機との間に配置される変速装置が制御される。これにより、電力系統の周波数を維持するように発電機の出力を適切に調整することができる。
【0115】
本開示の第5態様に係る発電プラントは、上記のいずれかの態様に記載の制御システムと、前記ボイラと、前記蒸気タービンと、前記発電機と、前記ターニング装置と、を備える。
本開示の第5態様に係る発電プラントによれば、設備の設置コストを増大させることなく、発電機の出力指令値を変更してから発電機の出力実測値が変更されるまでの時間差を短縮し、発電機の出力実測値の出力指令値への追従性を高めることができる。
【0116】
本開示の第6態様に係る発電プラントは、第5態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記停止状態において、前記蒸気タービンへ冷却媒体を注入する注入部(70)を備える。
【0117】
本開示の第6態様に係る発電プラントによれば、停止状態において、蒸気タービンへ冷却媒体を注入することにより、蒸気タービンを適切に冷却しつつ、蒸気タービンが回転する際の摩擦抵抗による損失(風損)を防止または抑制することができる。また、冷却媒体の注入により蒸気タービンの回転軸の回転数が過度に増加したとしても、変速機を制御することにより、電力系統の周波数を維持するように発電機の出力を適切に調整することができる。
【0118】
本開示の第7態様に係る発電プラントの制御方法は、ボイラと、前記ボイラで生成される蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンの回転軸に連結される発電機と、前記回転軸を駆動するターニング装置とを備える発電プラントの制御方法であって、前記発電機の出力指令値を取得する第1取得工程と、前記発電機の出力実測値を取得する第2取得工程と、前記ボイラから前記蒸気タービンに前記蒸気が供給されない停止状態において、前記回転軸が回転するように前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する駆動制御工程と、を備え、前記駆動制御工程は、前記第1取得部が取得する前記出力指令値と前記第2取得部が取得する前記出力実測値との偏差が少なくなるように、前記ターニング装置から前記回転軸に伝達される駆動力を制御する。
【0119】
本開示の第7態様に係る発電プラントの制御方法によれば、ボイラから蒸気タービンに蒸気が供給されない停止状態において、回転軸が回転するようにターニング装置から回転軸に伝達される駆動力が制御される。ボイラから蒸気タービンに蒸気が供給されない停止状態において、蒸気タービンの回転軸が回転を継続するため、回転軸の自重による曲がり変形を防止することができる。
【0120】
また、本開示の第7態様に係る発電プラントの制御方法によれば、第1取得工程が取得する出力指令値と第2取得工程が取得する出力実測値との偏差が少なくなるように、ターニング装置から回転軸に伝達される駆動力が制御される。蒸気タービンの停止状態において蒸気タービンの回転軸の回転を継続するために用いられるターニング装置を利用するため、設備の設置コストを増大させることなく、発電機の出力指令値を変更してから発電機の出力実測値が変更されるまでの時間差を短縮し、発電機の出力実測値の出力指令値への追従性を高めることができる。
【符号の説明】
【0121】
10 ボイラ
11 蒸気供給管
15 タービンガバナ弁
16 圧力センサ
20 蒸気タービン
21 タービン翼
22 タービンロータ軸
22a 第1端部
22b 第2端部
23 車室
24 第1カップリング
25 第2カップリング
30 発電機
31 回転軸
35 変圧器
40 ターニング装置
41 ターニングモータ
41a 回転軸
42 流体継手
42a 回転軸
43 変速機
43a 回転軸
50 変速装置
51 流体継手
51a 回転軸
52 変速機
52a 回転軸
60 制御システム
61 出力指令値取得部(第1取得部)
62 出力実測値取得部(第2取得部)
63 ボイラ制御部
64 駆動制御部
70 冷却媒体注入部
100 発電プラント
PRa 実測値
PRt 設定値
PS 電力系統
PWa 出力実測値
PWt 出力指令値
図1
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図3
図4
図5
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