(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033132
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】計測装置、計測システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01F 23/263 20220101AFI20240306BHJP
【FI】
G01F23/263
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136539
(22)【出願日】2022-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】319017054
【氏名又は名称】日本インフラ計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】河西 勇二
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA04
2F014AB02
2F014EA03
(57)【要約】
【課題】水位の計測精度を向上させること。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る計測装置1は、発振回路9と、発振回路9と接続される複数の導線21~27と、を備えるケーブル2と、発振回路9の周波数の情報に基づき、導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置100と、を備え、複数の導線21~27は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードとを有し、第1の導線の群と第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、第1の導線の群と第2の導線の群とで信号の位相とは異なり、第3の導線の群は第4の導線の群により包囲されて設けられ、第3の導線の群と第4の導線の群とで信号の位相とは異なり、制御装置100は、第1のモードと第2のモードとを切り替え可能に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路と、
前記発振回路と接続される複数の導線と、絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、
前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、
を備える計測装置であって、
前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードとを有し、
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、
前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、
前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられる、
計測装置。
【請求項2】
前記複数の導線は、さらに第5の導線の群を含み、
前記第5の導線の群は、前記発振回路を除く回路を有する前記制御装置の接地電位と接続される中性線からなる群である、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、前記第5の導線の群を挟んで対向して設けられる、請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2のモードにおける前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する、請求項1~3のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記制御装置は、切替回路を備え、
前記切替回路により、前記第1のモードと前記第2のモードとが切り替えられる、請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記ケーブルはキャブタイヤケーブルである、請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記制御装置は通信装置を備え、
前記通信装置は、外部装置に前記計測情報を送信する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項8】
計測装置と、情報処理装置とを備える計測システムであって、
前記計測装置は、
発振回路と、
前記発振回路と接続される複数の導線と、
絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、
前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、
を備え、
前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードを有し、
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、
前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、
前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられ、
前記情報処理装置は、
前記第1のモードにおける計測情報と、前記第2のモードにおける計測情報に基づいて、水位に関する情報を出力する、計測システム。
【請求項9】
計測装置により得られる計測情報を情報処理装置により処理する方法であって、
前記計測装置は、
発振回路と、
前記発振回路と接続される複数の導線と、
絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、
前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、
を備え、
前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードを有し、
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、
前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、
前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられ、
前記情報処理装置が、前記第1のモードにおける計測情報と、前記第2のモードにおける計測情報に基づいて、水位に関する情報を出力する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置、計測システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水位を計測するために、圧力式や抵抗式、静電容量式のものが知られている。例えば、下記特許文献1には、洗濯機における水位を測定するための装置に関して開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されるような技術では、ケーブルの温度変化の影響を受けやすく、水位の推定精度が十分担保されない。
【0005】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水位の計測精度を向上させることが可能な、計測装置、計測システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、発振回路と、前記発振回路と接続される複数の導線と、絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、を備える計測装置であって、前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードとを有し、前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられる、計測装置が提供される。
【0007】
また、本開示によれば、計測装置と、情報処理装置とを備える計測システムであって、前記計測装置は、発振回路と、前記発振回路と接続される複数の導線と、絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、を備え、前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードを有し、前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられ、前記情報処理装置は、前記第1のモードにおける計測情報と、前記第2のモードにおける計測情報に基づいて、水位に関する情報を出力する、計測システムが提供される。
【0008】
また、本開示によれば、計測装置により得られる計測情報を情報処理装置により処理する方法であって、前記計測装置は、発振回路と、前記発振回路と接続される複数の導線と、絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、を備え、前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードを有し、前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられ、前記情報処理装置が、前記第1のモードにおける計測情報と、前記第2のモードにおける計測情報に基づいて、水位に関する情報を出力する、方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、水位の計測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る計測システム1000の概要を示す図である。
【
図2】同実施形態に係るケーブル2の断面構造の一例を示す図である。
【
図3】同実施形態に係る計測装置1の構成例を示す図である。
【
図4】同実施形態に係る制御装置100のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】同実施形態に係る回路群13の一例を示す図である。
【
図6】同実施形態に係るケーブル2の導線の群の第1のモードの一例を示す図である。
【
図7】同実施形態に係るケーブル2の導線の群の第2のモードの一例を示す図である。
【
図8】同実施形態に係る計測システム1000を用いた計測方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】同実施形態の一変形例に係るケーブル2の導線の群の第1のモードの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係る計測システム1000の概要を示す図である。図示するように、本実施形態に係る計測システム1000は、計測装置1を備える。かかる計測システム1000は、例えばマンホール4の内側に設けられ、下水道における水位WLを計測するために用いられる。なお、計測システム1000の応用先は、下水道の水位の計測には限定されず、種々の配管や容器、河川、湖、池、海洋など、水等の液体のレベルを計測することに用いられ得る。
【0013】
計測装置1は、マンホール4の内部に設けられる。本実施形態では計測装置1は例えばマンホール4の蓋6に設けられているが、設置位置は特に限定されない。例えば、計測装置1は、マンホール4のステップ4Aに設けられていてもよいし、マンホール4の外側に設けられていてもよい。
【0014】
計測装置1からはケーブル2が吊り下げられている。
図2は、ケーブル2の断面構造の一例を示す図である。ケーブル2は、例えばキャブタイヤケーブルである。ケーブル2は、複数の導線21、22、23、24、25、26、27を有する。導線の数は複数であれば特に限定されない。導線21、22、23、24、25、26、27は、絶縁体により形成される被覆部(シース)20に覆われている。導線21は、導体211と、導体211を覆う絶縁体212により構成される。導線22~27も同様の導体および絶縁体を有している。シース20、導体211、絶縁体212の仕様は、公知の仕様であってもよい。ケーブル2はキャブタイヤケーブル以外でも、上記の被覆部、導体、絶縁体としての機能を果たすものであれば、特に限定されない。
【0015】
図1に示すように、ケーブル2は、計測装置1の有する各種回路から延長して吊り下げられる。ケーブル2の計測装置1とは反対側の端部3は、絶縁体等によりキャップされ、防水加工されている。ケーブル2の一部は水5に浸かっている。ケーブル2は発振回路と接続されている。このケーブル2の一部が水5に浸かることにより、ケーブル2から漏れ出る電気力線の状態が変化する。すると、ケーブル2に含まれる導線21~27のそれぞれの間での静電容量が変化する。この静電容量の変化量は、水位と相関がある。また、静電容量の変化は、発振回路の周波数の変化に対応する。すなわち、発振回路の周波数から、静電容量が求められ、それにより水位を推定することができる。
【0016】
ケーブル2は、マンホール4において、マンホール4の壁部により適宜支持されていてもよい。ケーブル2の長さは特に限定されず、計測領域における計測対象の深さ(例えば下水道の深さ)等に応じて適宜設定され得る。
【0017】
図3は、本実施形態に係る計測装置1の構成例を示す図である。図示するように、計測装置1は、制御装置100と、ケーブル2と、接続端子7とを備える。
【0018】
図4は、本実施形態に係る制御装置100のハードウェア構成例を示す図である。制御装置100は、少なくとも、制御部101、メモリ102、ストレージ103、通信部104および入出力部105等を備える。これらはバス106を通じて相互に電気的に接続される。なお、制御装置100は、図示せぬ電源(バッテリ等)を有していてもよい。
【0019】
制御部101は、制御装置100全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えば制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサであり、ストレージ103に格納されメモリ102に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0020】
メモリ102は、制御部101のワークエリア等として使用され、また、制御装置100の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0021】
ストレージ103は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベースがストレージ103に構築されていてもよい。
【0022】
通信部104は、制御装置100をネットワークに接続する。通信部104は、例えば、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、Wi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、LPWA(Low Power Wide Area)、近距離または非接触通信等の方式で、外部機器と直接またはネットワークアクセスポイントを介して通信する。なお、通信装置12は、通信部104により実現される。
【0023】
入出力部105は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。また、入出力部105は、信号入出力機能を有する。入出力部105は、例えば、
図3に示す回路群13とケーブル2とを接続する接続端子7としての機能を実現する。
【0024】
バス106は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0025】
図3に戻ると、制御装置100は、センサ回路8と、発振回路9と、切替回路10と、演算部11と、通信装置12とを備える。また、切替回路10は(切替回路10が設けられていない場合は発振回路9は)接続端子7と接続する。接続端子7は、この回路とケーブル2の各導線とを接続するための端子である。センサ回路8と、発振回路9と、切替回路10との群を、回路群13と本明細書では規定する。
【0026】
センサ回路8は、後述する発振回路9に対して電力を供給し、発振回路9からの信号を取得する機能を有する。センサ回路8は、例えば上述した制御部101、メモリ102、ストレージ103等により実現しうる。センサ回路8が取得した信号は、演算部11に出力される。
【0027】
発振回路9は、センサ回路8と接続されている。発振回路9の周波数は、ケーブル2の導線間の静電容量の変化に基づいて変化する。そのため、この周波数の信号がセンサ回路8に出力されることで、後述する演算部11により静電容量を算出することができる。発振回路9の構成は特に限定されないが、LC共振回路のQ値が低下しても安定した発振状態を維持することができるクラップ型発振回路が用いられることが好ましい。
【0028】
センサ回路8と発振回路9との間の接続部14の電気的な接続態様は特に限定されない。ただし、ケーブル2の周囲は接地電位であり、ケーブル2のコモンモード電圧も接地電位であるため、発振回路9はケーブル2のコモンモード電圧の影響を避けることが好ましい。そのため、発振回路9は、周囲から静電容量的に絶縁された状態(すなわちフロート状態)であることが好ましい。
図5は、本実施形態に係る回路群13の一例を示す図である。
図5を参照すると、例えば、接続部14は、発振回路9に電力を供給するためのコモンモードチョークコイル14Aと、発振回路9から出力される信号を取得するための高周波トランス14Bとにより構成されることが好ましい。
【0029】
切替回路10は、ケーブル2の導線21~27の複数の導線の群に切り替える機能を有する。例えば、切替回路10は、7つの導線を、3つの動線の群のいずれかに切り替えることができる。
図5を参照すると、具体的には、3つの導線の群は、接続線15Aを介して発振回路9と接続され第1の位相の信号を有する第1の導線の群と、接続線15Bを介して発振回路9と接続され第1の位相とは異なる(例えば差動出力により正負で逆転している)位相の信号を有する第2の導線の群と、発振回路9には接続せず、接続線15Cを介してセンサ回路8(すなわち発振回路9を除く回路)の接地電位に接続される第5の導線の群とからなる(第3の導線の群と第4の導線の群については後述する)。第5の導線の群における導線は、いわゆる中性線としての機能を有する。かかる中性線からなる第5の導線の群を設けることで、ケーブル2のコモンモード電圧の影響を低減することができる。これらの導線の群の具体的な構成については後述する。この3つの導線の群からなる状態を、本明細書では「第1のモード」とよぶ。
【0030】
また、本実施形態では、切替回路10によって、さらに7つの導線を、第1のモードとは異なる、2つの導線の群のいずれかに切り替えることができる。具体的には、2つの導線の群は、接続線15Aを介して発振回路9と接続され第1の位相の信号を有する第3の導線の群と、接続線15Bを介して発振回路9と接続され第1の位相とは異なる(例えば正負で逆転している)位相の信号を有する第4の導線の群とからなる。この2つの導線の群からなる状態を、本明細書では「第2のモード」とよぶ。
【0031】
本実施形態に係る切替回路10は、例えばPINダイオードにより実現され得る。切替回路10による切替は、所定の間隔により実行され得る。所定の間隔は、第1のモードと第2のモードとで同じであってもよいし、異なっていてもよい。所定の間隔は、数秒から数十秒程度であってよい。
【0032】
演算部11は、センサ回路8により取得された信号の周波数に基づいて、ケーブル2における静電容量の計測情報を出力する機能を有する。かかる静電容量の算出は、公知の方法により実現され得る。また、演算部11は、得られた静電容量の計測情報に基づいて、ケーブル2が設けられているマンホール4など、ケーブル2が設けられている空間における水位に関する情報を出力してもよい。例えば、演算部11は、得られた計測情報である静電容量の値と、予め得られた静電容量と水位との関係から、マンホール4の水位を推定することができる。具体的な推定方法の一例については後述する。なお、演算部11の機能は、計測装置1に備えられていてもよいし、計測装置1とは異なる外部の情報処理装置により実現されてもよい。
【0033】
通信装置12は、演算部11により出力された計測情報(例えば、静電容量の値やかかる静電容量に基づいて推定される水位に関する情報)を外部装置に有線又は無線により出力する機能を有する。通信装置12は、例えば、外部のサーバや、コンピュータ、スマートフォン、タブレット、公衆のディスプレイ等の機器に計測情報を出力してもよい。計測情報を取得した外部装置は、例えばかかる計測情報を表示したり、計測情報を加工して他の情報を出力することができる。
【0034】
ここで、切替回路10により切り替えられる導線の群について説明する。
図6は、本実施形態に係るケーブル2の導線の群の第1のモードの一例を示す図である。図示するケーブル2は、
図2で示したケーブル2と同じ構成である。
図6に示す例では、導線21、22は第1の導線の群であり、「+」で示されている。導線26、27は第2の導線の群であり、「-」で示されている。第1の導線の群と、第2の導線の群とは、同一の群において導線が互いに隣接し、かつ互いに包囲関係とならないように設けられる。この2つの導線の群は、発振回路9による差動出力により、位相が反転している。これにより、外来ノイズや寄生容量によるノイズの影響を受けにくくすることができる。なお、第1の導線の群と第2の導線の群は、互いに隣接しているとは限らず、第1の導線の群を構成する導線と、第2の導線の群を構成する導線との間で生じる電気力線が、ケーブル2の外部に漏れ出るように構成されていればよい。第5の導線の群が設けられている場合も同様に、第1の導線の群を構成する導線と、第5の導線の群を構成する導線との間で生じる電気力線、および/または第2の導線の群を構成する導線と、第5の導線の群を構成する導線との間で生じる電気力線が、ケーブル2の外部に漏れ出るように構成されていれば、各導線の配置は特に限定されない。
【0035】
導線23、24、25は第5の導線の群であり、「0」で示される中性線である。このように、例えば、第1の導線の群と第2の導線の群とは、第5の導線の群を挟んで対向して設けられる。そうすると、
図6に示すように、電気力線EFが、第1の導線の群から第2の導線の群へ、第1の導線の群から第5の導線の群へ、および第5の導線の群から第2の導線の群へ流れることになる。このとき、電気力線EFがケーブル2の外側に発生することにより、これらの静電容量がケーブル2の外側の水の影響を受けて変化する。水への浸水量(すなわち水位)によって、この静電容量が変化するので、水位を静電容量の変化から求めることができる。
【0036】
このとき、第5の導線の群である中性線は、発振回路9ではなくセンサ回路8の接地するよう接続されているため、ケーブル2の各導線や、発振回路9とセンサ回路8の間に発生している寄生容量による静電容量への影響を抑制することができる。これにより、ケーブル2の静電容量に対するコモンモードノイズの影響を抑え、より計測精度を上げることができる。
【0037】
次に、
図7は、本実施形態に係るケーブル2の導線の群の第2のモードの一例を示す図である。
図7に示す例では、導線24が第3の導線の群であり、導線21、22、23、25、26、27が、第3の導線の群とは異なる位相の信号を示す第4の導線の群である。
図7に示すように、第3の導線の群は、第4の導線の群を包囲して設けられる。
【0038】
第2のモードでは、ケーブル2の中心にある導線24と、その周囲にある各導線との間においてしか電気力線EFが発生しない。そのため電気力線EFはケーブル2の外に漏れないため、周囲の水の影響を受けない。ここでケーブル2の各導線間で生じる静電容量はケーブル2に起因するものであり、特にケーブル2の温度に依存する。例えば、ケーブル2を構成するシース等が塩化ビニル等であれば、誘電率に対する温度の影響が大きいため、静電容量の値は水温により大きく変動しうる。
【0039】
この水温等に起因するケーブル2の誘電率の変化を、第2のモードにおける発振回路9の周波数(すなわちケーブル2における静電容量)からとらえることができる。すなわち、第1のモードで得られる発振回路9の周波数は、水位だけではなく、ケーブル2等の温度の影響が含まれている。そこで、第2のモードに切り替えて温度の影響のみを受けた周波数(静電容量)の値を得ることで、温度補償が可能となる。これにより、水位の推定精度をより向上させることができる。
【0040】
なお、発振回路9の温度変化によっても、発振周波数が変化しうる。本実施形態では、第1のモードと第2のモードのそれぞれにおいて、発振回路9の温度変化の影響による周波数変化が加算されるが、第2のモードにおける周波数の情報を用いて温度補償を行うことから、発振回路9の温度の影響は低減される。また、より高精度の温度補償を行うには、発振回路9を実装した回路基板の温度を計測することが好ましい。その温度情報により、より正確な温度補償が可能となる。
【0041】
次に、本実施形態に係る計測システム1000を用いた計測方法の処理の流れの一例について説明する。
図8は、本実施形態に係る計測システム1000を用いた計測方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、制御装置100は、切替回路10により第1のモードに切り替える(ステップSQ101)。次に、制御装置100は、センサ回路8により発振回路9の周波数等の計測情報を取得する(ステップSQ103)。ここで取得される計測情報は、水位WLの影響および水温の影響を受けたケーブル2の第1の導線の群と第2の導線の群との間における静電容量C1である。かかる計測情報の取得は所定時間連続的に行われ得る。取得間隔については特に限定されない。また、所定時間取得された計測情報は、平均化など、適宜所定の統計的手法で加工されてもよい。
【0042】
計測情報の取得の開始から所定時間経過すると(ステップSQ105)、制御装置100は、切替回路10により第1のモードから第2のモードに切り替える(ステップSQ107)。次に、制御装置100は、センサ回路8により発振回路9の周波数や静電容量等の計測情報を取得する(ステップSQ109)。ここで取得される計測情報は、水温の影響を受けたケーブル2の第3の導線の群と第4の導線の群との間に静電容量C2である。かかる計測情報の取得は所定時間連続的に行われ得る。取得間隔については特に限定されない。また、所定時間取得された計測情報は、平均化など、適宜所定の統計的手法で加工されてもよい。第2のモードにおける計測情報の取得の開始から所定時間経過すると(ステップSQ111)、制御装置100は、再び切替回路10により第2のモードから第1モードに切り替える(ステップSQ101)。
【0043】
制御装置100は、センサ回路8が取得した計測情報を出力し(ステップSQ113)、演算部11はかかる計測情報をもとに、水位の演算を行う(ステップSQ115)。水位の演算の例について説明する。
【0044】
まず、予めケーブル2が浸水していない状態での、第1のモードにおける静電容量(ここではC01とする)と第2のモードにおける静電容量(ここではC02とする)を計測しておく。ケーブル2が浸水していない状態の静電容量C01と静電容量C02との間には、定数倍の比例関係がある。かかる比例定数kは、ケーブル2の各導線の配置や、各モードにおける導線の群の割り当て方により定まる。この関係を予め調べておくことで、第1のモードにおける基準静電容量CBを、第2のモードにおける静電容量C2から求めることができる。静電容量C2はケーブル2の温度により変化するが、それに応じた第1のモードにおける基準静電容量を求めておくことが重要である。
【0045】
次に、ケーブル2が浸水しているとき状態での第1のモードにおける静電容量C1と第2のモードにおける静電容量C2を計測したとき、水位は静電容量C1と基準静電容量CBとの差に比例する。よって、水位FLは、C1-kC2に比例する。よって、静電容量C1と静電容量C2をそれぞれのモードで算出することによって、温度補償を加味した水位を推定することができる。
【0046】
なお、演算された水位に関する情報は、適宜外部の装置に送信されてもよいし、計測装置1のストレージ等に適宜記憶されてもよい。
【0047】
<変形例>
次に、本実施形態に係る一変形例について説明する。
図9は、本実施形態の一変形例に係るケーブル2の導線の群の第1のモードの一例を示す図である。図示する例では、中性線に相当する第5の導線の群は設けられず、第1の導線の群(導線21、22、23)と第2の導線の群(導線25、26、27)のみにより構成される。なお、導線24はいずれの回路とも接続されていない。
【0048】
このような中性線が設けられていない場合にあっては、多少寄生容量の影響は受けるものの、上述したモードの切り替えにより、温度補償を考慮した水位の推定が可能となる。
【0049】
以上、本実施形態に係る計測システム、計測装置について説明した。かかる計測システム等によれば、ケーブルに含まれる第1の導線の群と第2の導線の群との間で信号の位相を異ならせる(例えば差動出力とする)ことで、ケーブル2への外部ノイズの影響を抑制することができる。これにより、静電容量に基づく水位の推定精度を向上させることができる。また、第5の導線の群として中性線を設け、発振回路9から独立した接地電位を与えることで、発振回路9をフロー状態とすることができ、さらに水位の推定精度を向上させることができる。また、切替回路10により、電気力線がケーブル2の外部に出ないような他の構成(第3の導線の群、第4の導線の群)となるモードとの切り替えを行うことで、ケーブル2の温度が静電容量に与える影響を考慮することができる。このような水位計測モード(第1のモード)と温度補償モード(第2のモード)との間で切り替え可能とすることで、温度変化が大きい環境においてもより確実に水位を計測することができる。このような計測システムは、例えばマンホール等に設けられ、増水時におけるマンホールの水位上昇をリアルタイムに、かつ簡便な構成で実現することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
本明細書において説明した装置は、単独の装置として実現されてもよく、一部または全部がネットワークで接続された複数の装置(例えばクラウドサーバ)等により実現されてもよい。例えば、制御装置100の制御部101およびストレージ103は、互いにネットワークで接続された異なるサーバにより実現されてもよい。制御装置100の機能の全部または一部は、図示しないマイコン等のIC(Integrated Curcuit)や、他の端末において発揮されてもよい。また、計測装置1等に設けられる各種計測器やセンサから得られる情報は、計測装置1の筐体の外部に設けられる制御装置が取得する構成であってもよい。すなわち、計測システム1000は、制御装置100とケーブル2とが分離した構成であってもよい。
【0052】
本明細書において説明した装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。本実施形態に係る制御装置100の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、PC等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0053】
また、本明細書においてフローチャート図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0054】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0055】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
発振回路と、
前記発振回路と接続される複数の導線と、絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、
前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、
を備える計測装置であって、
前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードとを有し、
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、
前記第1の導線の群における信号の位相と第2の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、
前記第3の導線の群における信号の位相と第4の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられる、
計測装置。
(項目2)
前記複数の導線は、さらに第5の導線の群を含み、
前記第5の導線の群は、前記発振回路を除く回路を有する前記制御装置の接地電位と接続される中性線からなる群である、項目1に記載の計測装置。
(項目3)
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、前記第5の導線の群を挟んで対向して設けられる、項目2に記載の計測装置。
(項目4)
前記制御装置は、前記第2のモードにおける前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する、項目1~3のいずれか1項に記載の計測装置。
(項目5)
前記制御装置は、切替回路を備え、
前記切替回路により、前記第1のモードと前記第2のモードとが切り替えられる、
項目1~4のいずれか1項に記載の計測装置。
(項目6)
前記ケーブルはキャブタイヤケーブルである、項目1~5のいずれか1項に記載の計測装置。
(項目7)
前記制御装置は通信装置を備え、
前記通信装置は、外部装置に前記計測情報を送信する、項目1~6のいずれか1項に記載の計測装置。
(項目8)
計測装置と、情報処理装置とを備える計測システムであって、
前記計測装置は、
発振回路と、
前記発振回路と接続される複数の導線と、
絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、
前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、
を備え、
前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードを有し、
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、
前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、
前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられ、
前記情報処理装置は、
前記第1のモードにおける計測情報と、前記第2のモードにおける計測情報に基づいて、水位に関する情報を出力する、計測システム。
(項目9)
計測装置により得られる計測情報を情報処理装置により処理する方法であって、
前記計測装置は、
発振回路と、
前記発振回路と接続される複数の導線と、
絶縁体により形成され、前記複数の導線を被覆する被覆部と、を備えるケーブルと、
前記発振回路の周波数の情報に基づき、前記導線間の静電容量の計測情報を出力する制御装置と、
を備え、
前記複数の導線は、少なくとも第1の導線の群と第2の導線の群とにより構成される第1のモードと、該第1のモードとは異なり、第3の導線の群および第4の導線の群とにより構成される第2のモードを有し、
前記第1の導線の群と、前記第2の導線の群とは、互いに包囲関係とならないように設けられ、
前記第1の導線の群における信号の位相と前記第2の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記第3の導線の群は、前記第4の導線の群により包囲されて設けられ、
前記第3の導線の群における信号の位相と前記第4の導線の群における信号の位相とは異なり、
前記制御装置は、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能に設けられ、
前記情報処理装置が、前記第1のモードにおける計測情報と、前記第2のモードにおける計測情報に基づいて、水位に関する情報を出力する、方法。
【符号の説明】
【0056】
1 計測装置
2 ケーブル
8 センサ回路
9 発振回路
10 切替回路
11 演算部
12 通信装置
20 被覆部(シース)
21~27 導線
211 導体
212 絶縁体
1000 計測システム