(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033141
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】温感化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240306BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240306BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240306BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/67
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136555
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】板子 典史
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 拓幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC442
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD621
4C083AD622
4C083CC02
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】油溶性有効成分を含み、肌に塗布した際に温感効果が得られる温感化粧料であって、油溶性有効成分の安定性が高められ、油溶性有効成分の効果を向上させることができる温感化粧料の提供。
【解決手段】(A)グリセリンを40~99質量%、(B)油溶性有効成分を0.0001~50質量%、(C)2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位および(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を有する共重合体を0.01~10質量%含有する温感化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グリセリンを40~99質量%、
(B)油溶性有効成分を0.0001~50質量%、
(C)下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体を0.01~10質量%含有する温感化粧料。
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油溶性有効成分を含み、肌に塗布した際に温感効果が得られる温感化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアは一般的に、化粧水による水分補給に始まり、乳液やクリームなどの油分を含有する化粧料を使用することで、皮膚の乾燥や肌荒れを防止する方法が採られている。加えて、美白や抗シワなどの美容効果を得るため、有効成分が配合された化粧料が使用される。特に油溶性の有効成分は、皮膚への浸透性が高いため広く用いられている。これらの有効成分の効果をさらに高めるため、化粧料において様々な方法が提案されている。
例えば特許文献1には、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオールを組み合わせたベシクル組成物を用いて、油溶性の有効成分を皮膚や毛髪への浸透性を高く向上させることが記載されている。
また特許文献2には、ナイルレッドなどの有効成分の浸透性を高めるため、特定のカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、油剤、高級アルコールを組み合わせる方法が記載されている。
【0003】
また有効成分の効果を高める方法として、使用者の血行を促進させる方法があり、一般的な手段としては入浴やマッサージなどが挙げられる。そのため、油溶性有効成分を含む化粧料としては、マッサージの工程に適するものが求められる。
加えて、多価アルコール等の水和熱を利用した温感化粧料は、塗布した肌の温度を温めるので、マッサージによる血行促進の効果をより高めることができる。
温感効果を有し、マッサージに好適な化粧料として、特許文献3や特許文献4などに記載の化粧料が挙げられる。
【0004】
しかしながら、油溶性有効成分を含み、温感効果を有しておりマッサージに適する化粧料はこれまで十分には検討されてこなかった。特に油溶性有効成分は酸化により変臭、変色や機能の低下など品質の劣化を引き起こし易く、特に熱や光によってこれらが促進されるので、化粧品中の油溶性有効成分の品質を維持することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-199669号公報
【特許文献2】特開2017-160236号公報
【特許文献3】特開2013-180997号公報
【特許文献4】特開2013-91619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決すべき課題は、油溶性有効成分を含み、肌に塗布した際に温感効果が得られる温感化粧料であって、油溶性有効成分の安定性が高められ、油溶性有効成分の効果を向上させることができる温感化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、グリセリンと油溶性有効成分をそれぞれ所定量含有する温感化粧料において、特定のアクリル系共重合体を所定量含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0008】
すなわち本発明は、(A)グリセリンを40~99質量%、(B)油溶性有効成分を0.0001~50質量%、(C)下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体を0.01~10質量%含有する温感化粧料である。
【0009】
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0010】
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の温感化粧料は、油溶性有効成分を含み、肌に塗布した際に温感効果が得られる温感化粧料であって、油溶性有効成分の安定性が高められ、油溶性有効成分の効果を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は2以上かつ4以下を表す。
【0013】
本発明の温感化粧料は、下記の(A)、(B)および(C)の各成分を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
なお、本明細書において各成分の含有量は、本発明の温感化粧料の全量を100質量%としたときの含有量である。また、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計含有量を意味する。
【0014】
〔成分(A)〕
本発明で用いられる成分(A)はグリセリンである。グリセリンは、油脂を加水分解して得られる水溶液を蒸留などにより精製する方法で生産することができる。以下、成分(A)をグリセリン(A)とも表記する。
【0015】
本発明の温感化粧料におけるグリセリン(A)の含有量は、温感化粧料全量に対して、40~99質量%であり、好ましくは45~97質量%、より好ましくは50~95質量%である。グリセリン(A)の含有量が少なすぎると、温感効果が弱く、油溶性有効成分の効果を高めにくくなることがある。またグリセリン(A)の含有量が多すぎると、油溶性有効成分の効果が得られにくく、また過度のべたつきが感じられ使用感が低下することがある。
【0016】
〔成分(B)〕
本発明で用いられる成分(B)は油溶性有効成分である。「油溶性」とは、水への溶解性が著しく低く、例えば、室温(25℃)にて水100gに対する溶解度が1g未満であること、またはオクタノール/水分配係数(Log Pow)が1より大きいことを意味する。「有効成分」とは、目的の作用効果を奏する主たる成分を意味する。以下、成分(B)を油溶性有効成分(B)とも表記する。
【0017】
油溶性有効成分(B)としては特に制限はなく、例えば、モノステアリン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、トリイソパルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル等のビタミンCの油溶性誘導体;トコフェロール、酢酸トコフェノール等のビタミンEとその誘導体;レチノール、レチナール、パルミチン酸レチノール等のビタミンAとその誘導体;セラミド或いはその類似物質;グリチルレチン酸ステアリル;イソプロピルメチルフェノール;ヘパリン類似物質等が挙げられる。中でも、有効成分としての効果が高く、品質が劣化しやすい、ビタミンA,ビタミンC,ビタミンEおよびこれらの誘導体である油溶性ビタミン類が好ましい。油溶性有効成分(B)は、一種または二種以上用いることができる。
【0018】
本発明の温感化粧料における油溶性有効成分(B)の含有量は、温感化粧料全量に対して、0.0001~50質量%であり、好ましくは0.005~40質量%、より好ましくは0.001~30質量%である。油溶性有効成分(B)の含有量が少なすぎると、油溶性有効成分(B)の効果が得られ難くなることがある。また油溶性有効成分(B)の含有量が多すぎると、油溶性有効成分(B)によるべたつきにより使用感が低下したり、温感効果が低下したりすることがある。
【0019】
〔成分(C)〕
成分(C)は下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を有する共重合体である。以下、成分(C)を共重合体(C)とも表記する。
【0020】
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0021】
上記式(1)で示される構成単位は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
【0022】
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、mは3~21の整数を示す。)
【0023】
上記式(2)で示される構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位である。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基は、炭素数4~22の直鎖または分岐のアルキル基であり、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等が例示される。なかでも、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル等の直鎖アルキル基が好ましく、オクタデシル基がより好ましい。
mは3~21の整数であり、好ましくは5~21、より好ましくは10~21、更に好ましくは15~20の整数である。
【0024】
共重合体(C)において、上記式(1)で示される構成単位と、上記式(2)で示される構成単位のそれぞれの含有量の比(式(1)で示される構成単位]:[式(2)で示される構成単位])(n1:n2)は、モル比にて、好ましくは9:1~1:9であり、より好ましくは8:2~2:8である。
【0025】
式(1)で示される構成単位の含有量に対する式(2)で示される構成単位の含有量の比(n2/n1)(モル比)が小さすぎると、油溶性有効成分(B)の可溶化力が低下し、温感化粧料の安定性が低下することがある。一方、前記比(n2/n1)が大きすぎると、疎水性が高すぎて、グリセリン(A)に対する溶解性が低下し、温感化粧料の安定性が低下することがある。
【0026】
共重合体(C)の重量平均分子量は、通常10,000~1,000,000であり、好ましくは30,000~900,000であり、より好ましくは50,000~800,000、更に好ましくは100,000~700,000、特に好ましくは200,000~600,000である。共重合体(C)の重量平均分子量が低すぎると、使用感が低下してべたつきが生じることがあり、一方、共重合体(C)の重量平均分子量が高すぎると、取り扱いが困難になることがある。
なお、共重合体(C)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され、ポリエチレングリコール換算の分子量で示される。
【0027】
共重合体(C)の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
また、共重合体(C)は、通常、上記式(1)で示される構成単位と、上記式(2)で示される構成単位とからなる二元共重合体であるが、式(1)および式(2)で示される構成単位以外に、他の構成単位を含む共重合体であってもよい。
共重合体(C)に含まれていてもよい他の構成単位は、通常、本発明の効果に影響を与えない範囲で、共重合体(C)の構成単位となり得るものから適宜選択することができる。他の構成単位を形成する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の炭素数が1~3の低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体等を挙げることができる。
これら他の構成単位は1種または2種以上を含むことができ、共重合体(C)中におけるその含有量は、式(1)および式(2)で表される構成単位の合計量に対して、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。
【0028】
共重合体(C)は、自体公知の製造方法により製造することができる。例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび(メタ)アクリル酸アルキル、ならびに必要に応じて上記他の構成単位に相当する単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させて製造することができる。その際の各単量体の含有量比は、共重合体(C)中における各構成単位の所望の含有量比に相当する比とすればよい。
【0029】
本発明の温感化粧料には、上記共重合体(C)から選ばれる1種を単独で、または2種以上を組み合わせて含有させることができる。共重合体(C)は、上記した重合方法により製造したものを用いることもできるが、「リピジュア(登録商標)-PMB(Ph10)」(ポリクオタニウム-51)、「リピジュア(登録商標)-S」、「リピジュア(登録商標)-NR」(ポリクオタニウム-61)(いずれも日油株式会社製)等の市販の製品を用いることもできる。
【0030】
本発明の温感化粧料における共重合体(C)の含有量は、温感化粧料全量に対して、0.01~10質量%であり、好ましくは0.1~7質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。共重合体(C)の含有量が少なすぎると、油溶性有効成分(B)の安定化が不十分となり、また温感化粧料のチキソトロピー性が過度に高くなりマッサージ性が低下することがある。また共重合体(C)の含有量が多すぎると、使用感が低下することがある。
【0031】
共重合体(C)に対する油溶性有効成分(B)の重量比(B/C)は、0.01~10が好ましく、0.1~7がより好ましく、0.5~5が更に好ましく、1~3が特に好ましい。重量比(B/C)が小さすぎると、共重合体(C)に対する油溶性有効成分(B)の量が少なすぎ、油溶性有効成分(B)の有する機能が得られにくいことがある。重量比(B/C)が大きすぎると、油溶性有効成分(B)に対する共重合体(C)の量が少なすぎ、油溶性有効成分(B)の安定化が不十分となることがある。
【0032】
〔温感化粧料〕
本発明の温感化粧料は、上記のグリセリン(A)、油溶性有効成分(B)および共重合体(C)を少なくとも含有し、油溶性有効成分(B)と共重合体(C)とが会合体として油滴を形成し、溶媒であるグリセリン(A)中に分散する形態をとる。
油溶性有効成分(B)と共重合体(C)との会合体からなる油滴は、体積基準の50%積算粒度分布の粒径(D50)が500nm以下であることが好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。また体積基準の10%積算粒度分布の粒径(D10)と90%積算粒度分布の粒径(D90)との比D90/D10は10以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。粒径(D50)や比D90/D10が大きすぎると、油滴の凝集が発生しやすく均一性が低下することがあり、また油溶性有効成分(B)の安定化効果が十分得られないことがある。
油溶性有効成分(B)と共重合体(C)との会合体からなる油滴の粒度分布は、市販の粒度分布計等で計測することができる。粒度分布の測定法としては、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。油滴の一次粒子の粒度分布を測定するため、温感化粧料を適当な濃度で水に希釈して測定することが望ましい。
【0033】
(温感化粧料のチキソトロピー性)
本発明の温感化粧料は、マッサージ中の液だれ等を抑制し、塗布による厚み感を向上させる観点から、チキソトロピー性が低いことが好ましい。チキソトロピー性は、せん断粘度のせん断速度依存性として、回転数の異なる条件下で測定された2つの粘度値の比であるTI(チキソトロピーインデックス)値として表現される。温感化粧料のTI値は、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましい。TI値が高すぎると、マッサージ中の粘度低下が著しく、使用性が低下することがある。
【0034】
(その他の成分)
本発明の温感化粧料は、上記成分(A)~(C)を必須成分として調製されるが、これらの必須成分以外にも本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧料に一般的に配合されるその他の成分を目的に応じて配合することができる。
上記のような他の成分としては、水、保湿剤、増粘剤、植物エキス類、着色剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、キレート剤などが挙げられる。
その他の成分のうち、水の含有割合は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。
なお、グリセリン(A)、油溶性有効成分(B)および共重合体(C)の総含有量は、温感化粧料全量に対して、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上である。
【0035】
(温感化粧料の調製方法)
本発明の温感化粧料の調製方法は特に限定されず、スターラ、インペラー攪拌、ホモミキサなどの通常の乳化装置のほかに、マントン-ゴーリン型高圧ホモジナイザ、ジェット水流反転型高圧乳化機、マイクロフルイダイザ、ナノマイザ、スターバースト、湿式微粒化装置などの高圧乳化機も使用でき、これらのうち1つを単独で、または2つ以上を組み合わせて必要な粒子径を得ることができる。油溶性有効成分(B)の小粒径化の観点から、高圧乳化機の利用が好ましい。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
(ポリマーの重量平均分子量の測定)
メタノール/クロロホルム(重量比4/6)を溶離液とし、単分散ポリメチルメタクリレートを標準物質として、屈折率を用いて検出したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量を評価した。
【0038】
(共重合体の合成)
合成例1
MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)3. 57g、オクタデシルメタクリレート(C18MA)16. 43g(単量体組成モル比、MPC/C18MA=30/70)をn-ブタノール180gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹込んだ後、60℃でアゾビスイソブチロニトリル0.82gを加えて8時間重合反応させた。
重合液を3リットルのアセトン中にかき混ぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末15. 8gを得た。得られた共重合体は、重量平均分子量で326,000であった。これをポリマー1とした。
【0039】
(共重合体の合成)
合成例2~4
合成例1のポリマー1の合成に準じて、表1に示すように単量体の種類、組成比を変更し、合成例1と同様の操作により、ポリマー2~ポリマー4を得た。得られた共重合体の組成比、重量平均分子量を表1に示した。なお、ポリマー3の合成で用いたC2MAはエチルメタクリレートである。
【0040】
【0041】
(温感化粧料の調製)
実施例1
表2の実施例1の組成になるように原料を配合し、温感化粧料100gを調製した。すなわち、実施例1の原料を容器にとり、室温で卓上ホモミキサー(みづほ工業社製)を用いて予備乳化した。これを室温でシステマイザー(ミューチュアル社製、C17)を用いて180MPaの圧力で2回処理することにより温感化粧料を得た。
【0042】
実施例2~4、比較例1~4
実施例1と同様の方法で調製した。
【0043】
実施例5
実施例5の原料を容器にとり、室温で卓上ホモミキサー(みづほ工業社製)を用いて温感化粧料を得た。
【0044】
上記実施例および比較例で得られた温感化粧料について、下記のとおり粒度分布測定を行い、更に下記の評価を行った。なお、以下では油溶性有効成分を油剤と表記することもある。
【0045】
(温感化粧料0.1%水溶液の粒度)
得られた温感化粧料0.1gと精製水9.9gとを10gのスクリュー管にとり、攪拌して温感化粧料0.1%水溶液を調製した。得られた水溶液の粒度分布測定を行った。粒度分布の測定には、粒径・分子量測定システム(大塚電子社製、ELSZ-2000)を用いた。
表2に、体積基準の10%積算粒度分布の粒径(D10)、体積基準の50%積算粒度分布の粒径(D50)および90%積算粒度分布の粒径(D90)とともに、比D90/D10を示す。
【0046】
(温感化粧料の使用時の温感)
20名の女性をパネラーとし、温感化粧料を目尻周辺に塗布した時の温感について下記のように判定した。
2点:十分に温感があると感じた。
1点:やや十分に温感があると感じた。
0点:温感が不十分であると感じた。
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表中に表示した。
◎:合計点が35点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない。
○:合計点が30点以上35点未満、または、合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーがいる。
△:合計点が20点以上30点未満である。
×:合計点が20点未満である。
【0047】
(温感化粧料の蛍光暴露による油剤の残存率評価)
得られた温感化粧料10gをスクリュー管に保管し、照明付きインキュベーター(EYELA FLZ-2000)で25℃の条件で保管した。保管開始から1日後と3日後にそれぞれ取り出し、油溶性有効成分の量をHPLCで測定した。
保管開始前に対する油剤量を油剤の残存率とし、残存率を以下のように評価した。なお、残存率は少数第一位の数字を四捨五入して整数値とした。
<保管1日後の残存率>
◎:80%以上残存していた。
○:70~79%残存していた。
△:60~69%残存していた。
×:59%以下残存していた。
<保管3日後の残存率>
◎:55%以上残存していた。
○:45~54%残存していた。
△:35~44%残存していた。
×:34%以下残存していた。
【0048】
(温感化粧料のチキソトロピー性)
レオメーター(AntonPaar 社製、MCR302)を用いて、25℃の条件下でせん断速度10/sおよび500/sの時のせん断粘度をそれぞれ測定し、以下の式よりTI値を算出した。
TI値=(10/sでのせん断粘度(mPa・s))/(500/sでのせん断粘度(mPa・s))
【0049】
(温感化粧料1%水溶液の日光暴露による油剤の残存率評価)
得られた温感化粧料1gと精製水9gとを10gのスクリュー管にとり、攪拌して温感化粧料1%水溶液を調製した。これを直射日光の当たる窓辺に静置した。静置開始から30分後と60分後にそれぞれ取り出し、油溶性有効成分の量をHPLC(日立製作所社製、Lachrom ELITE)で測定した。
静置開始前に対する油剤量を油剤の残存率とし、残存率を以下のように評価した。なお、残存率は少数第一位の数字を四捨五入して整数値とした。
<静置30分後の残存率>
◎:70%以上残存していた。
○:60~69%残存していた。
△:50~59%残存していた。
×:49%以下残存していた。
<静置60分後の残存率>
◎:40%以上残存していた。
○:35~39%残存していた。
△:30~34%残存していた。
×:29%以下残存していた。
【0050】
(温感化粧料1%水溶液の使用感の評価)
得られた温感化粧料1gと精製水9gとを10gのスクリュー管にとり、攪拌して温感化粧料1%水溶液を調製した。パネラー20名(25才~45才、男女10名ずつ)が、得られた水溶液(約1g)を全顔に塗り広げて使用し、使用後のべたつきについて、下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25点~34点の場合を「○」(良)、15点~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。
2点:使用後、きしみがなく、みずみずしさを感じた場合。
1点:使用後、きしみが少なく、みずみずしさを少し感じた場合。
0点:使用後、きしみがあり、みずみずしさを感じなかった場合。
【0051】
(温感化粧料0.1%水溶液の透過率評価)
得られた温感化粧料0.1gと精製水9.9gとを10gのスクリュー管にとり、攪拌して温感化粧料0.1%水溶液を調製した。得られた水溶液の透過率測定を行い、下記の判断基準に従って評価した。透過率の測定には、紫外可視分光光度計(日立製作所社製、U-3010)を用いた。
◎:透過率が75%以上であった。
○:透過率が50%以上75%未満であった。
△:透過率が25%以上50%未満であった。
×:透過率が25%未満であった。
【0052】
【0053】
※1:BASF社製、Retinol 15D(レチノールとトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの15:85溶液)
※2:日油社製、NOFABLE ESO-8520
【0054】
実施例1~5の温感化粧料は、塗布した時に温感が得られるとともに、蛍光灯や日光による暴露によっても油溶性有効成分であるレチノールの品質を維持することができ、使用後のべたつきがなく、使用感が良好であった。
一方、比較例1~3では、共重合体(C)が請求項1に規定のものと異なるため、蛍光灯や日光による暴露によるレチノールの品質が低下し、使用感も不良であった。また、共重合体(C)の含有量が少なすぎる比較例4も同様であった。
本発明の温感化粧料は、肌に塗布した際に温感効果が得られるとともに、美白や抗シワなどの美容効果を得るための油溶性有効成分の品質を維持することができるので、マッサージクリーム、洗顔クリーム、パック等に好適に使用することができる。