(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033145
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】昇華型プリンタ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/325 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B41J2/325 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136569
(22)【出願日】2022-08-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月18日に、シチズン・システムズ株式会社が、富士フイルム株式会社に販売 〔刊行物等〕 令和3年12月15日に、シチズン・システムズ株式会社が、フジフィルム・ド・ブラジル・リミターダに販売
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彰
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AB10
2C065DA03
2C065DA08
2C065DA20
2C065DA26
2C065DA37
2C065DA38
(57)【要約】
【課題】部品点数を増やすことなくジャムを防ぐことが可能な昇華型プリンタ及び昇華型プリンタの制御方法を提供する。
【解決手段】プリンタ1は、非印刷時に用紙搬送部23が用紙Pを逆方向RDに搬送してプラテンローラ25及びサーマルヘッド39の間を通過させる際、インクリボンTが用紙Pに接触しなくなるまで、用紙搬送部23による用紙Pの搬送と同期させてリボン繰り出しロール31インクリボンTを繰り出し、且つ、リボン巻き取りロール33で巻き取る。これにより、用紙搬送部23にインクリボンTが巻き込まれることを防止することができる。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を、搬送路に沿って、順方向及び逆方向に搬送する用紙搬送部と、
インクリボンを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールと、繰り出された前記インクリボンを巻き取って巻回するリボン巻き取りロールとを有し、前記リボン繰り出しロールと前記リボン巻き取りロールとの間のガイド部で張られた前記インクリボンの転写面を、前記搬送路に沿って搬送される前記用紙に向けて配置され、前記搬送路に沿って前記逆方向に前記インクリボンを繰り出すインクリボン部と、
前記ガイド部で張られた前記インクリボンの前記転写面とは反対側に配置され、前記ガイド部で張られた前記インクリボンを、前記搬送路を搬送される前記用紙に対して押圧し、熱により、前記転写面のインクを前記用紙に転写して印画を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドにより前記インクリボンが押圧される前記用紙に対して、前記サーマルヘッドが配置された側とは反対側に配置されて、前記インクリボンが押圧された前記用紙を支持するプラテンローラと、
を備え、
前記インクリボン部は、非印画時に前記用紙搬送部が前記用紙を前記逆方向に搬送して前記プラテンローラ及び前記サーマルヘッドの間を通過させる際、前記インクリボンが前記用紙に接触しなくなるまで、前記用紙搬送部による前記用紙の搬送と同期させて前記リボン繰り出しロールで前記インクリボンを繰り出し、且つ、前記リボン巻き取りロールで巻き取って、前記用紙搬送部に前記インクリボンが巻き込まれることを防止する
ことを特徴とする昇華型プリンタ。
【請求項2】
前記搬送路上の前記リボン巻き取りロールよりも前記リボン繰り出しロールに近い側に配置され、前記用紙の端部を検出する端部検出部をさらに備えており、
前記用紙搬送部は、前記インクリボンが前記用紙に接触しなくなるまで前記用紙を前記逆方向に搬送した後、前記端部検出部によって前記用紙の端部が検出されるまで、前記用紙を前記順方向に搬送する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇華型プリンタ。
【請求項3】
前記サーマルヘッドは、非印画時に前記用紙搬送部が前記用紙を前記逆方向に搬送して前記プラテンローラ及び前記サーマルヘッドの間を通過させる際、熱を発しない状態で前記インクリボンを前記用紙に対して押圧する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇華型プリンタ。
【請求項4】
前記インクリボン部は、前記インクリボンが前記用紙に接触しなくなるまで前記用紙を前記逆方向に搬送した後、前記リボン繰り出しロールと前記リボン巻き取りロールを逆回転させて、非印画時に前記リボン巻き取りロールに繰り出した長さ分の前記インクリボンを前記リボン繰り出しロールに巻き戻す
ことを特徴とする請求項1に記載の昇華型プリンタ。
【請求項5】
用紙を、搬送路に沿って、順方向及び逆方向に搬送する用紙搬送部と、
インクリボンを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールと、繰り出された前記インクリボンを巻き取って巻回するリボン巻き取りロールとを有し、前記リボン繰り出しロールと前記リボン巻き取りロールとの間のガイド部で張られた前記インクリボンの転写面を、前記搬送路に沿って搬送される前記用紙に向けて配置され、前記搬送路に沿って前記逆方向に前記インクリボンを繰り出すインクリボン部と、
前記ガイド部で張られた前記インクリボンの前記転写面とは反対側に配置され、前記ガイド部で張られた前記インクリボンを、前記搬送路を搬送される前記用紙に対して押圧し、熱により、前記転写面のインクを前記用紙に転写して印画を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドにより前記インクリボンが押圧される前記用紙に対して、前記サーマルヘッドが配置された側とは反対側に配置されて、前記インクリボンが押圧された前記用紙を支持するプラテンローラと、
を備えた昇華型プリンタの制御方法であって、
非印画時に前記用紙搬送部が前記用紙を前記逆方向に搬送して前記プラテンローラ及び前記サーマルヘッドの間を通過させる通過ステップと、
前記通過ステップと共に実行され、前記インクリボンが前記用紙に接触しなくなるまで、前記用紙搬送部による前記用紙の搬送と同期させて前記インクリボンを繰り出し、且つ、巻き取るインクリボン繰り出しステップと、
を含むことを特徴とする昇華型プリンタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型プリンタ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華型プリンタは、用紙にインクリボンを密着させて加熱することにより、用紙にプリントを行う。そして、プリントを行わないときは、インクリボンを用紙から離した状態とするが、インクリボンの近くを、用紙を搬送した際に、用紙の種類や用紙の状態によって、用紙とインクリボンが接して、インクリボンが用紙に貼り付いてしまうことがあった。こうなると、インクリボンが用紙とともに用紙を搬送するローラまで引き出されて、インクリボンのジャムの原因となることがあった。そこで、ジャムを防ぐための工夫が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、用紙とインクリボンの間にエア(空気)を噴射させて、用紙とインクリボンの貼り付きを防止し、ジャムを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、エアを噴射させるブロアを設けなければならず、昇華型プリンタの部品点数が増加する。また、用紙がインクリボンに貼り付いてしまう原因は複数考えられ、エアを吹き付けるだけでは、十分にジャムを防止できない場合もある。
【0006】
本発明の目的は、部品点数を増やすことなくジャムを防ぐことが可能な昇華型プリンタ及び昇華型プリンタの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のプリンタは、用紙を、搬送路に沿って、順方向及び逆方向に搬送する用紙搬送部と、インクリボンを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールと、繰り出された前記インクリボンを巻き取って巻回するリボン巻き取りロールとを有し、前記リボン繰り出しロールと前記リボン巻き取りロールとの間のガイド部で張られた前記インクリボンの転写面を、前記搬送路に沿って搬送される前記用紙に向けて配置され、前記搬送路に沿って前記逆方向に前記インクリボンを繰り出すインクリボン部と、前記ガイド部で張られた前記インクリボンの前記転写面とは反対側に配置され、前記ガイド部で張られた前記インクリボンを、前記搬送路を搬送される前記用紙に対して押圧し、熱により、前記転写面のインクを前記用紙に転写して印画を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドにより前記インクリボンが押圧される前記用紙に対して、前記サーマルヘッドが配置された側とは反対側に配置されて、前記インクリボンが押圧された前記用紙を支持するプラテンローラと、を備える。
【0008】
そして、前記インクリボン部は、非印画時に前記用紙搬送部が前記用紙を前記逆方向に搬送して前記プラテンローラ及び前記サーマルヘッドの間を通過させる際、前記インクリボンが前記用紙に接触しなくなるまで、前記用紙搬送部による前記用紙の搬送と同期させて前記リボン繰り出しロールで前記インクリボンを繰り出し、且つ、前記リボン巻き取りロールで巻き取って、前記用紙搬送部に前記インクリボンが巻き込まれることを防止する。
【発明の効果】
【0009】
このようにすることで、本発明では、インクリボンを用紙の搬送と同期して進めるようにリボン巻き取りロールがインクリボンを巻き取るため、仮に、インクリボンが用紙に接触することで、用紙に貼りついて用紙とともに搬送されても、インクリボンは、強制的に、リボン巻き取りロールに巻き取られる経路に進むことで、用紙から離される。したがって、本発明では、用紙搬送部にインクリボンが巻き込まれることがない。そのため、部品点数を増やすことなく、ジャムを防止することができる。
【0010】
なお、この非印画時におけるインクリボンの、リボン巻き取りロールへの同期した巻き取り動作は、少なくとも、インクリボンが用紙に接触しなくなる範囲または期間だけ行えばよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2A】プリンタの幅方向の中心を通り、前後方向に沿った鉛直面による断面図である。
【
図2B】外装カバーから本体部を引き出した状態を示す断面図である。
【
図5A】印画を行う際の流れを示す簡略断面図である。
【
図5B】印画を行う際の流れを示す簡略断面図である。
【
図5C】印画を行う際の流れを示す簡略断面図である。
【
図5D】印画を行う際の流れを示す簡略断面図である。
【
図5E】印画を行う際の流れを示す簡略断面図である。
【
図5F】印画を行う際の流れを示す簡略断面図である。
【
図6A】印画後、待機状態に移行するまでの流れを示す簡略断面図である。
【
図6B】印画後、待機状態に移行するまでの流れを示す簡略断面図である。
【
図6C】印画後、待機状態に移行するまでの流れを示す簡略断面図である。
【
図6D】印画後、待機状態に移行するまでの流れを示す簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る昇華型プリンタの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
<構成>
図1は、昇華型プリンタ1(以下、プリンタ1という)の外観を示す斜視図、
図2Aは、プリンタ1の幅方向Wの中心を通り、前後方向Lに沿った鉛直面による断面図、
図2Bは、外装カバーから本体部を引き出した状態を示す断面図、
図3は、プリンタ1のリボン機構部の左側面図である。
【0014】
プリンタ1は、
図1に示すように、全体として直方体状に形成されていて、本体部3と、ゴミ箱5とを備えている。本実施の形態では、
図1に示すように、左右方向(幅方向)W、前後方向(長さ方向)L、上下方向(高さ方向)Hを定義している。
【0015】
本体部3は、金属製のフレームの外側を金属製の外装カバー7及び樹脂製のフロントケース9で覆って形成されている。本体部3の内部には、
図2Aに示すように、ロール紙10を収容する用紙収容室11と、インクリボンユニット12を収容するリボン収容室13とが形成されている。
【0016】
フロントケース9は、本体部3の前上部に配置されている。フロントケース9は、本体部3の前上部に配置されたカッターユニット15に対向して配置され、カッターユニット15を覆っている。
【0017】
フロントケース9の前面には、本体部3の内部から搬送された用紙Pを外部に排出する排出口17が形成されている。排出口17は、用紙Pの幅よりも長い寸法で形成されている。
【0018】
本体部3は、これら用紙収容室11及びリボン収容室13の他、電源、用紙搬送部、リボン搬送部、カッターユニット15及び制御部等を備えている。
【0019】
ゴミ箱5は、本体部3の前面開口を塞ぐように、本体部3に着脱可能に設けられている。ゴミ箱5は、
図1に示すように、閉じた状態で本体部3と係合して閉じた状態を維持しており、前方に引っ張ることで係合が外れて本体部3から取り外すことができる。また、ゴミ箱5を本体部3から取り外した状態から、後方Rに押し付けることで、ゴミ箱5は本体部3に係合して取り付けられ、取り付けられた状態に維持される。
【0020】
ゴミ箱5は、上端が開口し、内部空間5aを有する箱状に形成されている。ゴミ箱5の上端の開口5bは、フロントケース9の排出口17とカッターユニット15との間に形成された隙間Kの下方に形成されている。
【0021】
カッターユニット15により、用紙Pの余白部が、用紙Pの幅方向Wに細長い短冊状の用紙片として切り落とされると、その用紙片が落下して、排出口17とカッターユニット15との間の隙間Kを通過し、開口5bを通じてゴミ箱5の内部空間5aに収容される。
【0022】
用紙収容室11には、長尺帯状の用紙Pをロール状に巻いたロール紙10が収容される。用紙Pは、例えば、普通紙より厚みがあってコシ(剛性)のある写真用紙が用いられる。ロール紙10は、
図2Bに示すように、外装カバー7から本体部3を引き出してから、フロントケース9を備えた本体部3の前上部を跳ね上げ、ゴミ箱5を取り外すことで、交換可能になっている。
【0023】
本体部3には、用紙収容室11に収容されたロール紙10から用紙Pを巻き解いて搬送路CPに沿って搬送する搬送機構19が設けられている。搬送路CPは、
図2Aに示した、ロール紙10の位置から排出口17まで延びる一点鎖線の経路である。本実施の形態では、ロール紙10の位置から排出口17への搬送向きを順方向FDとし、その逆を逆方向RDと定義する。用紙Pは、搬送機構19により、搬送路CPを順方向・逆方向に搬送されて、最終的に、排出口17から排出される。ロール紙10は、用紙Pを搬送路CPの順方向FDに搬送する際、
図2Aに示す反時計回りに回転し、逆方向RDに搬送する際、時計周りに回転する。
【0024】
搬送機構19は、搬送路CPに沿って配置されている。搬送機構19は、搬送路CPに沿って、用紙収容室11から順に並ぶ、ロール紙繰り出しローラ21、グリップローラ(用紙搬送部)23、プラテンローラ25、送りローラ27とを備えている。
【0025】
ロール紙繰り出しローラ21は、駆動ローラ21Aと従動ローラ21Bを有しており、駆動ローラ21Aと従動ローラ21Bとが用紙Pを挟み、駆動ローラ21Aが回転することにより用紙Pが搬送される。また、グリップローラ23は、駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bを有しており、同様に、駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bとが用紙Pを挟み、駆動ローラ23Aが回転することにより用紙Pが搬送される。プラテンローラ25は、後述のサーマルヘッドと対向する位置に配置されており、インクリボンが押圧された用紙Pを支持する。送りローラ27は、用紙Pを搬送し、排出口17から用紙Pを排出する。駆動ローラ21A、駆動ローラ23A、送りローラ27の回転は、制御部に制御されている。制御部は、電源から供給された電力により駆動されている。
【0026】
また、本体部3には、リボン収容室13に収容されたインクリボンユニット12のインクリボンTを搬送するインクリボン部IRが設けられている。インクリボンTは、イエローY、マゼンタM及びシアンCの各インク領域、並びにオーバーコートOPの領域が、長手方向に繰り返し交互に配置された帯状のシートである。インクリボンTは、
図2Aに二点鎖線で示してある。インクリボンユニット12は、
図2Bに示すように、外装カバー7から本体部3を引き出すことで、交換可能になっている。インクリボンユニット12は、リボン繰り出しロール31と、リボン巻き取りロール33と、2つの従動ローラ35,37を備えている。
【0027】
リボン繰り出しロール31は、長尺帯状のインクリボンTを繰り出し可能にロール状に巻回している。リボン巻き取りロール33は、リボン繰り出しロール31よりもグリップローラ23に近い側に配置され、繰り出されたインクリボンTを巻き取って巻回する。
【0028】
2つの従動ローラ35,37は、リボン繰り出しロール31と、リボン巻き取りロール33との間のガイド部の役割を果たしている。2つの従動ローラ35,37並びにリボン繰り出しロール31及びリボン巻き取りロール33は、リボン繰り出しロール31から従動ローラ35に向かってインクリボンTが搬送路CPに近づき、2つの従動ローラ35,37の間で張られたインクリボンTの転写面が、搬送路に沿って搬送される用紙に向き、従動ローラ37からリボン巻き取りロール33に向かってインクリボンTが搬送路CPから離れるように配置されている。これにより、インクリボンTは、プラテンローラ25とサーマルヘッド39の間は通過するが、従動ローラ37よりも逆方向RD側の位置に存在するグリップローラ(用紙搬送部)23の駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bの間は通過しないようになっている。すなわち、用紙Pが逆方向RDに進む際、従動ローラ37の位置が、用紙PとインクリボンTの分岐箇所になっている。
【0029】
リボン繰り出しロール31は、
図2Aに示す時計回りに回転してインクリボンTを繰り出し、同期して時計回りに回転するリボン巻き取りロール33に巻き取られることで、搬送路CPに沿って逆方向RDにインクリボンTが繰り出されるようになっている。印画時は、搬送路CPを逆方向RDに進む用紙Pと同期して、搬送路CPに沿って逆方向RDにインクリボンTが繰り出される。
【0030】
図3を参照して、リボン繰り出しロール31と、リボン巻き取りロール33の駆動機構を説明する。リボン繰り出しロール31の駆動機構DM1は、繰り出し側モータ31Aと、複数のギアを有する輪列31Bと、リボン繰り出し軸31Cを備えている。リボン繰り出し軸31Cは、輪列31Bのギアの1つの中心に固定されており、トルクリミッタを備えている。
【0031】
リボン巻き取りロール33の駆動機構DM2は、巻き取り側モータ33Aと、ウォームギアとウォームホイールを有する輪列33Bと、リボン巻き取り軸33Cを備えている。リボン巻き取り軸33Cは、輪列33Bのウォームホイールの中心に固定されており、巻き取り側モータ33Aが回転することで回転し、インクリボンTを巻き取る。ウォームギアとウォームホイールの間にはセルフロックが生じており、リボン巻き取り軸33C(すなわち、ウォームホイール)を回転させてもウォームギアは回転しないようになっている。
インクリボンTをリボン繰り出しロール31側からリボン巻き取りロール33側に繰り出す際には、巻き取り側モータ33Aを回転させ、リボン巻き取り軸33Cが回転することで、リボン繰り出しロール31からインクリボンTが引き出される。このとき、トルクリミッタを働かせて、一定のトルクでインクリボンTを送り出すようにするため、繰り出し側モータ31Aを逆回転させる。
インクリボンTをリボン巻き取りロール33側からリボン繰り出しロール31側に巻き戻す際には、巻き取り側モータ33Aを逆回転させ、リボン巻き取り軸33Cを逆回転させてインクリボンTを繰り出し、これと同期させながら繰り出し側モータ31Aを逆回転させ、リボン繰り出し軸31Cを逆回転させ、インクリボンTを巻き取る。
【0032】
リボン繰り出しロール31と、リボン巻き取りロール33の駆動機構DM1及びDM2は、制御部に制御されている。
【0033】
サーマルヘッド39は、ガイド部(2つの従動ローラ35,37)で張られたインクリボンTの転写面とは反対側に配置され、ガイド部で張られ、用紙Pと同期して繰り出されたインクリボンTを、搬送路CPを搬送される用紙Pに対して押圧し、熱により、転写面のインクを用紙Pに転写して印画を行う。サーマルヘッド39によりインクリボンTを用紙Pに対して押圧する状態をヘッドダウン、押圧しない状態をヘッドアップともいう。サーマルヘッド39のヘッドダウン及びヘッドアップは、制御部に制御されている。また、サーマルヘッド39は、制御部により通電されることで発熱する。サーマルヘッド39のヘッドダウン、ヘッドアップ及び発熱の制御を、インクリボンT及び用紙Pの搬送の制御と並行して行うことにより、用紙Pに、インクリボンTのインクを転写した印画を行う。
【0034】
搬送路CP上には、リボン巻き取りロール33よりもリボン繰り出しロール31に近い側に用紙Pの先端位置を検出する端部検出部41を備えている。プリンタ1は、端部検出部41がロール紙10から巻き解かれた用紙Pの先端位置を検出した状態で、印画指令を待つ待機状態となっている。
【0035】
<印画処理>
図4、
図5A~
図5F、
図6A~
図6Dは、プリンタ1が、ロール紙10から巻き解かれた用紙Pに印画を行う際の用紙P及びインクリボンTの動きを模式的に示した簡略断面図である。これらを用いて印画処理の流れを説明する。
【0036】
[待機状態]
図4は、上述の、印画指令を待つ待機状態を示す図である。図示の通り、用紙Pの先端位置が端部検出部41の位置に存在している。
【0037】
[印画]
図5A~
図5Fは、プリンタ1で印画を行う際の流れを示す図である。プリンタ1に画像データが入力されて印画指令が出され、印画動作が開始されると、
図5Aに示すように、ロール紙10が反時計回りに回転して、用紙Pが順方向FDに繰り出され、搬送機構19と同期して、印刷開始位置の位置出しを行う。この際、必要に応じて、カッターユニット15により、用紙Pの余白部が切り落とされる。
【0038】
印刷開始位置に到達したら、
図5B及び
図5Cに示すように、ロール紙10が反転し、時計回りに回転して用紙Pを逆方向RDに進め、且つ、リボン繰り出しロール31及びリボン巻き取りロール33が時計回りに回転して、インクリボンTを繰り出し、且つ、巻き取る。この間、サーマルヘッド39は、通電して発熱した状態で、インクリボンTを、搬送路CPを搬送される用紙Pに対して押圧し(ヘッドダウン)、熱により、転写面のインクを用紙Pに転写して印画を行う。印画が済むと、サーマルヘッド39をヘッドアップし、各色(イエローY、マゼンタM、シアンC、オーバーコートOP)の画像の形成に合わせて、
図5D及び
図5Eが繰り返され、用紙Pが繰り返し往復して搬送され、用紙Pの同一領域に各色を組み合わせた画像が形成される。
【0039】
図5Fに示すように、印画が完了したら、ロール紙10が反時計回りに回転し、用紙Pが順方向FDに繰り出される。そして、用紙Pの印画済み部分が排出口17から排出され、カッターユニット15によりロール紙10から切り離され、印画済み用紙P(写真)が得られる。
【0040】
[待機状態への移行]
図6A~
図6Dは、プリンタ1による印画後、待機状態に移行するまでの流れを示す図である。
【0041】
図6Aに示すように、印画済み用紙Pを排出口17から排出したら、ロール紙10が反転し時計回りに回転し用紙Pを逆方向RDに進める(通過ステップ)。このときは、非印刷時であるが、用紙Pをそのままプラテンローラ25及びサーマルヘッド39の間を通過させると、用紙PとインクリボンTが接して、インクリボンTが用紙Pに貼り付いてインクリボンTが用紙Pとともにグリップローラ(用紙搬送部)23まで引き出されて、グリップローラ23におけるインクリボンTのジャムの原因となることがあった。そこで、本実施の形態では、この際に、併せて、リボン繰り出しロール31及びリボン巻き取りロール33が時計回りに回転し、リボン繰り出しロール31でインクリボンTを繰り出し、且つ、リボン巻き取りロール33で巻き取る。この間、サーマルヘッド39は、通電せず、発熱しない状態で、インクリボンTを、搬送路CPを搬送される用紙Pに対して押圧する(ヘッドダウン)。そして、
図6Bに示すように、インクリボンTが用紙Pに接触しなくなるまで、搬送機構19による用紙の搬送と同期させてインクリボンTを繰り出し、且つ、巻き取る(インクリボン繰り出しステップ)。これにより、搬送機構19のグリップローラ(用紙搬送部)23にインクリボンTが巻き込まれることを防止することができる。
【0042】
なお、用紙Pを順方向FDに進める場合には、用紙PがインクリボンTに貼り付いたとしても、輪列33Bに生じているセルフロックによりリボン巻き取り軸33Cが回転せず、インクリボンTが繰り出されないため、搬送機構19におけるインクリボンTのジャムの原因となることはない。
【0043】
図6Cに示すように、インクリボンTが用紙Pに接触しなくなったら、サーマルヘッド39による押圧を解除し(ヘッドアップ)、リボン繰り出しロール31及びリボン巻き取りロール33を反時計回りに回転し、
図6Bの際に用紙Pとともに繰り出した長さ分のインクリボンTをリボン繰り出しロール31に巻き戻す。
【0044】
その後、ロール紙10が反時計回りに回転して、用紙Pが順方向FDに繰り出され、端部検出部41の位置まで用紙Pの先端位置を進めて、
図4に示した待機状態に戻る。
【0045】
[プリンタの作用]
以下にプリンタ1及び制御方法の作用を説明する。
【0046】
用紙Pを、搬送路CPに沿って、順方向FD及び逆方向RDに搬送する用紙搬送部23と、インクリボンTを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロール31と、繰り出されたインクリボンTを巻き取って巻回するリボン巻き取りロール33とを有し、リボン繰り出しロール31とリボン巻き取りロール33との間のガイド部(従動ローラ35,37)で張られたインクリボンTの転写面を、搬送路CPに沿って搬送される用紙Pに向けて配置され、搬送路CPに沿って逆方向RDにインクリボンTを繰り出すインクリボン部IRと、ガイド部で張られたインクリボンTの転写面とは反対側に配置され、ガイド部で張られたインクリボンTを、搬送路CPを搬送される用紙Pに対して押圧し、熱により、転写面のインクを用紙Pに転写して印刷を行うサーマルヘッド39と、サーマルヘッド39によりインクリボンTが押圧される用紙Pに対して、サーマルヘッド39が配置された側とは反対側に配置されて、インクリボンTが押圧された用紙Pを支持するプラテンローラ25と、を備え、インクリボン部IRは、非印刷時に用紙搬送部23が用紙Pを逆方向RDに搬送してプラテンローラ25及びサーマルヘッド39の間を通過させる際、インクリボンTが用紙Pに接触しなくなるまで、用紙搬送部23による用紙Pの搬送と同期させて前記リボン繰り出しロールでインクリボンTを繰り出し、且つ、前記リボン巻き取りロールで巻き取って、用紙搬送部23にインクリボンTが巻き込まれることを防止することを特徴とする。
【0047】
このようにすることで、本発明では、インクリボンTを用紙Pの搬送と同期して進めるようにリボン巻き取りロール33がインクリボンTを巻き取るため、仮に、インクリボンTが用紙Pに接触することで、用紙Pに貼りついて用紙Pとともに搬送されても、インクリボンは、強制的に、リボン巻き取りロール33に巻き取られる経路に進むことで、用紙Pから離される。したがって、本発明では、用紙搬送部23にインクリボンTが巻き込まれることがない。そのため、部品点数を増やすことなく、ジャムを防止することができる。
【0048】
プリンタ1は、搬送路CP上のリボン巻き取りロール33よりもリボン繰り出しロール31に近い側に配置され、用紙Pの端部を検出する端部検出部41をさらに備えており、用紙搬送部23は、インクリボンTが用紙Pに接触しなくなるまで用紙Pを逆方向RDに搬送した後、端部検出部41によって用紙Pの端部が検出されるまで、用紙Pを順方向FDに搬送してもよい。このようにすることで、用紙Pを印画の待機位置に搬送することができる。
【0049】
サーマルヘッド39は、非印刷時に用紙搬送部23が用紙Pを逆方向RDに搬送してプラテンローラ25及びサーマルヘッド39の間を通過させる際、熱を発しない状態でインクリボンTを用紙Pに対して押圧してもよい。このようにすれば、サーマルヘッド39でインクリボンTと用紙Pを押さえることができるため、安定して用紙Pを搬送させることができる。
【0050】
インクリボン部IRは、インクリボンTが用紙Pに接触しなくなるまで用紙Pを逆方向RDに搬送した後、リボン繰り出しロール31とリボン巻き取りロール33を逆回転させて、非印刷時にリボン巻き取りロール33に繰り出した長さ分のインクリボンTをリボン繰り出しロール31に巻き戻してもよい。繰り出したインクリボンTを戻すことで、インクの転写がされていないインクリボンTを、次の印刷時の転写に使用することができるため、インクリボンTを無駄にすることがない。
【0051】
プリンタ1の制御方法としてとらえることもできる。この場合は、非印刷時に用紙搬送部23が用紙Pを逆方向RDに搬送してプラテンローラ25及びサーマルヘッド39の間を通過させる通過ステップと、通過ステップと共に実行され、インクリボンTが用紙Pに接触しなくなるまで、用紙搬送部23による用紙Pの搬送と同期させてインクリボンTを繰り出し、且つ、巻き取るインクリボン繰り出しステップと、を含むようにすることができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0053】
上記実施の形態では、
図6Aの状態の際、サーマルヘッド39をヘッドダウン状態で用紙PとインクリボンTを同期させて進めたが、用紙PとインクリボンTを同期させて進めれば、サーマルヘッド39をヘッドアップ状態で進めることも可能である。
【0054】
また、上記実施の形態では、
図6Cの際に、
図6Bの際に用紙Pとともに繰り出した長さ分のインクリボンTをリボン繰り出しロール31に巻き戻した。しかしながら、インクリボンTを巻き戻さないようにすることもできる。また、予めインクリボンTの繰り出し位置を調整して、同期して繰り出すインクリボンTを使用済み部分とすることで、後で巻き戻す必要がないようにすることもできる。さらには、
図6Cと
図6Dの順番を入れ替えて、先に端部検出部41の位置まで用紙Pの先端位置を進めてから、インクリボンTをリボン繰り出しロール31に巻き戻してもよいのはもちろんである。
【0055】
また、上記実施の形態では、待機状態への移行時に、通過ステップ及びインクリボン繰り出しステップを実施するようにしたが、他の非印刷時に用紙をプラテンローラ25及びサーマルヘッド39の間を通過させるときでも、通過ステップ及びインクリボン繰り出しステップを実施してもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0056】
1 プリンタ
3 本体部
5 ゴミ箱
7 外装カバー
9 フロントケース
10 ロール紙
11 用紙収容室
12 インクリボンユニット
13 リボン収容室
15 カッターユニット
17 排出口
19 搬送機構
21 ロール紙繰り出しローラ
23 グリップローラ(用紙搬送部)
25 プラテンローラ
27 送りローラ
31 リボン繰り出しロール
33 リボン巻き取りロール
35,37 従動ローラ
39 サーマルヘッド
41 端部検出部
CP 搬送路
T インクリボン
IR インクリボン部
H 高さ方向
L 前後方向
W 幅方向
FD 順方向
RD 逆方向