(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033147
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】可塑化材料吐出装置、三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20240306BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240306BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240306BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240306BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240306BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/106
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136572
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】張 俊華
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP03
4F213AR07
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】可塑化材料吐出装置において、ノズル開口からの造形材料の吐出を安定させることができる技術を提供する。
【解決手段】可塑化材料吐出装置は、材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、ノズル開口を有し、ノズル開口から可塑化材料を吐出するノズルと、ノズル開口に連通し可塑化材料が流れる連通流路の内壁の少なくとも一部となる壁部、及び、壁部が可塑化材料の流動方向に交差する方向に変位するための空間を規定する孔部を有する変位部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化材料吐出装置であって、
材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、
ノズル開口を有し、前記ノズル開口から前記可塑化材料を吐出するノズルと、
前記ノズル開口に連通し前記可塑化材料が流れる連通流路の内壁の少なくとも一部となる壁部、及び、前記壁部が前記可塑化材料の流動方向に交差する方向に変位するための空間を規定する孔部を有する変位部と、を備える、
可塑化材料吐出装置。
【請求項2】
前記壁部は、可撓性材料を含む、請求項1に記載の可塑化材料吐出装置。
【請求項3】
前記変位部は、さらに、前記孔部に設けられ、前記壁部を前記連通流路に向かって付勢する付勢部材を備える、請求項1に記載の可塑化材料吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の可塑化材料吐出装置であって、
前記付勢部材は、前記付勢部材が前記壁部を付勢する付勢方向と、前記付勢方向に交差する方向とに変形可能に構成されている、
可塑化材料吐出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の可塑化材料吐出装置であって、
前記付勢部材の変位量は、前記連通流路から前記付勢部材に付与される圧力に対してべき乗比例または指数比例する、
可塑化材料吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の可塑化材料吐出装置であって、
さらに、前記連通流路に設けられ、前記ノズル開口からの前記可塑化材料の吐出量を調整する吐出量調整部を備え、
前記壁部は、前記連通流路において、前記吐出量調整部よりも上流に配置される、
可塑化材料吐出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の可塑化材料吐出装置であって、
さらに、前記壁部の変位量を検出する変位量取得部を備える、
可塑化材料吐出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の可塑化材料吐出装置と、
前記ノズルから吐出された前記可塑化材料が堆積される造形面を有するステージと、を備える、
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可塑化材料吐出装置、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フラットスクリューを有する溶融部によって材料を可塑化し、可塑化した材料を、溶融部とノズル開口とを連通する流路に流動させてノズル開口から吐出させる可塑化材料吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の可塑化材料吐出装置では、ノズル開口からの材料の吐出が安定しない場合があった。この課題は、フラットスクリュー方式やインラインスクリュー方式などの溶融方式に関わらず、いずれの可塑化材料吐出装置においても共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、可塑化材料吐出装置が提供される。この可塑化材料吐出装置は、材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、ノズル開口を有し、前記ノズル開口から前記可塑化材料を吐出するノズルと、前記ノズル開口に連通し前記可塑化材料が流れる連通流路の内壁の少なくとも一部となる壁部、及び、前記壁部が前記可塑化材料の流動方向に交差する方向に変位するための空間を規定する孔部を有する変位部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図。
【
図4】三次元造形物が造形される様子を模式的に示す説明図。
【
図5】連通流路およびその近傍を拡大して示す説明図。
【
図6】第2実施形態の可塑化材料吐出装置が備える変位部の構成を示す説明図。
【
図7】第3実施形態の可塑化材料吐出装置が備える変位部の構成を示す説明図。
【
図9】付勢部材に付与される圧力と付勢部材の変位量との関係を示す説明図。
【
図10】第4実施形態の可塑化材料吐出装置が備える変位部の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。三次元造形装置100は、三次元造形装置100の各部を制御する制御装置101と、造形材料を生成して吐出する可塑化材料吐出装置200と、三次元造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する位置変更部230とを備える。三次元造形装置100は、制御装置101の制御下において、可塑化材料吐出装置200を駆動してステージ210に造形材料を吐出することによって、三次元造形物を造形する。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを含む。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、互いに同じ方向を表している。以下では、説明の便宜のために、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。
【0008】
可塑化材料吐出装置200は、制御装置101の制御下において、造形材料をステージ210上に吐出する。可塑化材料吐出装置200は、材料供給部20と、可塑化部30と、連通流路69と、ノズル61と、を備えている。
【0009】
材料供給部20は、造形材料に転化される前の材料の供給源である。材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態では、ペレット状に形成された樹脂が材料として用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。
【0010】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を造形材料として生成し、生成した造形材料をノズル61に供給する。「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、スクリュー40と、バレル50とを備えている。本実施形態におけるスクリュー40は、フラットスクリューや、スクロールと呼ばれることがある。
【0011】
図2は、スクリュー40の概略構成を示す斜視図である。
図3は、バレル50を示す概略平面図である。スクリュー40は、その中心軸RXに沿った軸線方向の長さが、軸線方向に直交する方向の長さよりも短い略円柱状を有する。スクリュー40は、例えば、その回転中心となる中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0012】
図1に示すように、スクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。スクリュー40の上面41には駆動モーター32が連結されている。駆動モーター32は、制御装置101の制御下において駆動する。スクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。なお、スクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0013】
図2に示すように、スクリュー下面42には、渦状の溝部45が形成されている。材料供給部20の供給路22は、スクリュー40の側面43から、溝部45に連通する。溝部45は、スクリュー40の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。本実施形態では、溝部45は、凸条部46によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部45の数は、3本に限られず、1本でもよく、2本以上であってもよい。溝部45は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよく、中央部47から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0014】
図1に示すように、バレル50は、スクリュー40の下方に配置され、スクリュー下面42に面している。バレル上面52のうち、スクリュー下面42の溝部45と、バレル上面52との間には空間が形成されており、材料の流路として機能する。バレル50には、スクリュー40の中心軸RX上に、ノズル61に連通する連通孔56が設けられている。連通孔56は、連通流路69の一部を形成している。
図3に示すように、連通孔56には、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。複数の案内溝54は、溶融材料を連通孔56に導く。なお、案内溝54は、連通孔56に直接的に接続されていなくてもよく、また、案内溝54が形成されていなくてもよい。本実施形態では、バレル50内に、ヒーター58が設けられている。なお、ヒーター58は、バレル50内に設けられている必要はなく、例えばバレル50の下方に配置されてもよい。ヒーター58の温度は、制御装置101によって制御される。
【0015】
スクリュー40の溝部45内に供給された材料は、溝部45内において溶融されながら、スクリュー40の回転によって溝部45に沿って流動し、造形材料としてスクリュー40の中央部47へと導かれる。流動性を発現しているペースト状の造形材料は、中央部47から連通孔56を介してノズル61に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が溶融していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が溶融することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0016】
図1に示すように、ノズル61は、連通流路69に連通し造形材料を吐出する。ノズル61は、ノズル流路65と、ノズル開口62が設けられた先端面63とを備えている。ノズル流路65は、ノズル61内に形成された造形材料の流路であり、連通流路69の一部を形成している。先端面63は、ノズル61のうち、造形面211に向かって-Z方向に突出した先端部分を構成する面である。ノズル開口62は、ノズル流路65の大気に連通する側の端部となる先端面63に設けられ、ノズル流路65の流路断面が縮小された部分である。可塑化部30によって生成された造形材料は、連通流路69を介して、ノズル開口62から吐出される。ノズル61の周囲には、ステージ210上に吐出された造形材料の温度低下を抑制するヒーターが配置されてもよい。
【0017】
ステージ210は、ノズル開口62に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル開口62からステージ210の造形面211に向けて造形材料を吐出させて積層することによって三次元造形物を造形する。造形面211および造形面211よりも上方の領域のうち、三次元造形物が造形される領域のことを、造形領域とも呼ぶ。
【0018】
位置変更部230は、ノズル61とステージ210との相対的な位置を変更する。本実施形態では、位置変更部230は、ノズル61に対してステージ210を移動させる。本実施形態における位置変更部230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御装置101の制御下にて駆動する。なお、ステージ210に対するノズル61の相対的な位置の変化を、単に、ノズル61の移動や走査とも呼ぶ。例えば、ステージ210を+X方向に移動させたことを、ノズル61を-X方向に移動させたと言い換えることもできる。位置変更部230は、ステージ210を移動させる構成ではなく、ステージ210を移動させずにノズル61を移動させる構成であってもよい。また、位置変更部230は、ステージ210とノズル61との双方を個別に移動させる構成であってもよい。
【0019】
制御装置101は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成することができる。本実施形態では、制御装置101は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、可塑化材料吐出装置200の駆動や三次元造形物を造形するための三次元造形処理等の種々の機能を発揮する。なお、制御装置101は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0020】
制御装置101は、三次元造形処理において、造形データに従って可塑化材料吐出装置200と位置変更部230とを制御して、造形面211上の造形領域に造形物を造形する。造形データには、ノズル61のステージ210に対する相対的な移動の移動経路を表す造形パスデータと、造形パスデータに関連付けられた吐出量を表す吐出量データとが含まれる。吐出量とは、ノズル開口62から単位時間あたりに吐出される造形材料の量を意味する。
【0021】
図4は、三次元造形装置100において三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、可塑化部30において、回転しているスクリュー40の溝部45に供給された固体状態の材料が溝部45内で可塑化されることで造形材料MMが生成される。制御装置101は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル開口62から造形材料MMを吐出させる。ノズル開口62から吐出された造形材料MMは、ノズル開口62の移動方向に連続して堆積されていく。ノズル61の走査によって、ノズル開口62の走査経路に沿って線状に延びる造形部位が造形される。三次元造形物のうち、一の連続する線状の造形部位のことを部分造形物Opとも呼ぶ。
【0022】
制御装置101は、ノズル61による走査を繰り返して層MLを形成する。制御装置101は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に移動させる。形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって三次元造形物を造形していく。制御装置101は、造形材料の層を積層する際、ノズル61と吐出目標との間の距離を保持したまま、ノズル61から造形材料を吐出させる。吐出目標は、造形面211上に造形材料を吐出する場合は造形面211であり、既に吐出された造形材料上に造形材料を吐出する場合は、既に吐出された造形材料の上面である。
【0023】
図5は、連通流路69およびその近傍を拡大して示す説明図である。連通流路69は、可塑化部30に形成された流路からノズル開口62までを連通する造形材料の流路である。本実施形態では、「可塑化部30内の流路」とは、バレル50内の流路である連通孔56を意味しており、連通流路69には、連通孔56とノズル流路65とが含まれる。ただし、可塑化部30内の流路には、さらに、スクリュー40内の流路である溝部45および中央部47が含まれてもよい。
図5に示すように、本実施形態において連通流路69には、吐出量調整部70と、圧力調整部75と、変位部80とが設けられている。なお、
図5では、便宜のためにバレル50の構成は簡略化されている。
【0024】
吐出量調整部70は、ノズル開口62から吐出される造形材料の吐出量を調整する。本実施形態では、吐出量調整部70は、連通流路69の開口面積を変更することによって、連通流路69における造形材料の流量を調整することにより、ノズル開口62からの吐出量を調整する。本実施形態において、吐出量調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出量調整部70は、ノズル流路65内で回転することによりノズル流路65の開口面積を変化させる。吐出量調整部70は、制御装置101による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御装置101は、第1駆動部74を駆動してバタフライバルブの回転角度を調整することによって、連通流路69を流動する造形材料の流量を調整する。吐出量調整部70は、造形材料の流量を調整するとともに、造形材料の吐出のオン/オフを制御することも可能である。なお、造形材料の流量を調整しない場合などには吐出量調整部70を省略することも可能である。
【0025】
ノズル流路65のうち吐出量調整部70よりも下流側を、下流側ノズル流路65Dとも呼び、ノズル流路65のうち吐出量調整部70よりも上流側を、上流側ノズル流路65Uとも呼ぶ。吐出量調整部70により造形材料の流量が小さくされる場合、あるいは造形材料の吐出がオフにされる場合には、可塑化部30から連通流路69への造形材料の供給が継続されると、上流側ノズル流路65Uでの内圧は上昇し得る。吐出量調整部70により造形材料の流量が大きくされる場合には、上流側ノズル流路65Uの内圧は減少し得る。このように、吐出量調整部70の上流側の流路の内圧は、吐出量調整部70の開度などの影響により大きく変動し得る。
【0026】
圧力調整部75は、分岐流路76と、プランジャー77と、
図1で示した第2駆動部78とを有している。分岐流路76は、吐出量調整部70とノズル開口62との間、すなわち、ノズル流路65のうち下流側ノズル流路65Dに設けられており、下流側ノズル流路65Dの内圧を調整する。
【0027】
本実施形態では、分岐流路76は、下流側ノズル流路65Dに接続されたシリンダーによって形成され、下流側ノズル流路65Dとの接続部分から-X方向に向かって延びている。プランジャー77は、制御装置101による制御下において、第2駆動部78によって駆動され、分岐流路76内を往復移動する。第2駆動部78は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャー77の並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0028】
制御装置101は、圧力調整部75を制御してプランジャー77を分岐流路76内で往復移動させることによって、吸引操作と送出操作とを実行する。吸引操作とは、下流側ノズル流路65D内の造形材料を分岐流路76内に吸引する操作を意味する。吸引操作が行われた場合、下流側ノズル流路65D内の造形材料が圧力調整部75へと吸引されるため、下流側ノズル流路65Dの内圧は減少する。送出操作とは、分岐流路76内に吸引した造形材料を下流側ノズル流路65Dに送出する操作を意味する。送出操作が行われた場合、圧力調整部75から下流側ノズル流路65Dへと造形材料が排出されるため、下流側ノズル流路65Dの内圧は増加する。制御装置101は、吸引操作において、プランジャー77をノズル流路65から離れる方向へと後退させ、送出操作において、プランジャー77をノズル流路65へと近付く方向に前進させる。
【0029】
吸引操作を実行して下流側ノズル流路65D内の圧力を減少させることにより、造形材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制することも可能である。この場合、制御装置101は、吐出量調整部70によってノズル流路65の開度をゼロとした後に吸引操作を実行することで、尾引き現象をより効果的に抑制できる。また、送出操作を実行して連通流路69内の圧力を増加させることにより、ノズル開口62からの造形材料の送出の応答性を高めることも可能である。この場合、制御装置101は、吐出量調整部70によってノズル流路65の開度をゼロより大きくする前に送出操作を実行することで、造形材料の送出の応答性をより高めることができる。なお、下流側ノズル流路65Dの圧力を調整しない場合などには圧力調整部75を省略することも可能である。
【0030】
変位部80は、連通流路69内の圧力変動を吸収する。本実施形態では、変位部80は、連通流路69のうち上流側ノズル流路65Uに設けられている。ただし、変位部80は、上流側ノズル流路65Uには限らず、連通流路69に含まれるいずれの流路に設けられてもよい。変位部80は、変位可能な壁部82と、孔部84とを備えている。孔部84は、
図5に示すように、上流側ノズル流路65Uの壁面を、造形材料の流動方向MDに交差する方向に向かって外側まで貫通する貫通孔である。孔部84は、壁部82が上流側ノズル流路65Uとは逆側に向かって変位するための空間を規定している。壁部82が上流側ノズル流路65Uとは逆側に変位するための空間のことを、「コンプライアンス室」とも呼ぶ。
【0031】
壁部82は、弾性変形可能な可撓性材料によって形成されている膜状の部材である。本実施形態において、壁部82は、上流側ノズル流路65Uの壁面と面一になる位置で、孔部84を封止するように設けられており、上流側ノズル流路65Uの内壁としても機能する。壁部82の厚み82T、平面形状、ヤング率などは、変位部80が予め定められた範囲のコンプライアンスを有するように予め調整されている。「コンプライアンス」とは、基準圧力あたりの容積変化量を意味する。壁部82は、コンプライアンス室において、弾性変形し、造形材料の流動方向MDに交差する方向に変位する。本実施形態では、上流側ノズル流路65Uにおける造形材料の流動方向MDは-Z方向と一致し、壁部82は、連通流路69に向かう-X方向と、上流側ノズル流路65Uとは逆側の+X方向とに変位する。このように構成することにより、変位部80によって上流側ノズル流路65U内の圧力変動を吸収することができる。
【0032】
本実施形態では、孔部84には変位量取得部90が取り付けられている。変位量取得部90は、壁部82の変位量を検出する。変位量取得部90は、例えば、レーザー変位計などの非接触式の変位センサを用いることができる。変位量取得部90による検出結果は、制御装置101に出力される。制御装置101は、変位量取得部90による壁部82の変位量を監視し、壁部82の変位量が予め定められた範囲内であるか否かにより、上流側ノズル流路65Uの内圧の異常の有無を検出する。
【0033】
本実施形態では、上流側ノズル流路65Uの壁面には、さらに、圧力センサ92が設けられている。圧力センサ92は、上流側ノズル流路65Uの内圧を検出する。圧力センサ92は、ダイヤフラムを備えた一般的なセンサであり、例えばピエゾ素子を用いた半導体センサや静電容量型センサなどを用いることができる。圧力センサ92による検出結果は、制御装置101に出力される。制御装置101は、圧力センサ92の検出結果を用いて、例えば、吐出時の圧力が所定の範囲内となるように吐出量調整部70を制御してノズル61からの造形材料の吐出量を調整する。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部30と、ノズル開口62を有し、ノズル開口62から可塑化材料を吐出するノズル61と、ノズル開口62に連通し可塑化材料が流れる連通流路69に設けられ、連通流路69における可塑化材料の流動方向MDに交差するX方向に沿って変位するように構成された変位部80と、を備えている。変位部80の変位によって連通流路69内の圧力変動を吸収することができ、連通流路69の内圧を安定させることができる。したがって、ノズル開口62からの造形材料の吐出量、吐出圧、吐出速度を安定させることができる。
【0035】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、変位部80は、連通流路69の内壁となる壁部82と、壁部82が連通流路69とは逆側に変位するための空間を規定する孔部84とを備えている。したがって、簡易な構成により変位部80を形成することができる。
【0036】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、壁部82は、可撓性材料を含んでいる。したがって、簡易な構成により壁部82を変位させることができる。
【0037】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、連通流路69に設けられ、連通流路69における造形材料の流量を調整する吐出量調整部70を備えている。変位部80は、連通流路69において、吐出量調整部70よりも上流の上流側ノズル流路65Uに配置されている。吐出量調整部70の上流側に変位部80を設けることにより、連通流路69のうち内圧が大きく変動し得る吐出量調整部70の上流側での圧力変動を吸収することができ、連通流路69の内圧をより安定させることができる。
【0038】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、さらに、変位部80の変位量を検出する変位量取得部90を備えている。壁部82の変位量の検出という簡易な方法により、上流側ノズル流路65Uの内圧の異常を検出することができる。
【0039】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態の可塑化材料吐出装置200が備える変位部80bの構成を示す説明図である。第2実施形態の可塑化材料吐出装置200のその他の構成は、第1実施形態の可塑化材料吐出装置200と同様である。変位部80bは、壁部82および孔部84に代えて壁部82bおよび孔部84bを備える点と、さらに、軸部83、突出部85および付勢部材86を備える点で、第1実施形態で示した変位部80とは相違する。
【0040】
孔部84bは、貫通孔に代えて、コンプライアンス室を覆う凹部として形成されている。孔部84bは、上流側ノズル流路65Uの壁面に形成された開口部84Eと、コンプライアンス室を挟んで開口部84Eと対向する底壁部84W2と、開口部84Eと底壁部84W2とを繋ぐ側壁部84W1と、を備えている。
【0041】
壁部82bは、上流側ノズル流路65Uに面する前面82Fと、コンプライアンス室に面する背面82Bとを有する板状部材である。前面82Fは、上流側ノズル流路65Uの内壁の一部として機能する。前面82Fは、後述する付勢部材86の付勢力により、開口部84Eをコンプライアンス室側から封止している。背面82Bには、軸部83が連結されている。壁部82bは、例えば、金属材料や樹脂材料などで形成することができる。壁部82bは、可塑化された造形材料と接することから高い耐熱性を有することが好ましい。壁部82bは、コンプライアンス室において、連通流路69における造形材料の流動方向MDに交差するX方向に沿って摺動可能に構成されている。
【0042】
軸部83は、軸状部材である。軸部83は、例えば、底壁部84W2の貫通孔に挿通されており、壁部82bの摺動方向を、軸部83の軸方向に規定している。なお、例えば壁部82bの摺動が側壁部84W1の案内によって規定される場合などには軸部83を省略することも可能である。
【0043】
突出部85は、上流側ノズル流路65Uの壁面の一部である。突出部85は、上流側ノズル流路65Uの壁面に沿って、開口部84Eの開口幅を小さくさせる向きに突出している。突出部85により、例えば、開口部84Eの開口幅は、壁部82bの幅よりも小さくなるように構成されている。これにより、突出部85の背面85Bが壁部82bの前面82Fと接触し、壁部82bの移動がコンプライアンス室内に規制されている。
【0044】
付勢部材86は、例えば、円筒形状を有する圧縮コイルばねであり、一方向に沿って伸縮する。付勢部材86の伸縮量が付勢部材86に付与される圧力に対して正比例するいわゆる線形特性を有している。付勢部材86は一方の端部が底壁部84W2に固定され、他方の端部が壁部82bの背面82Bに固定されている。付勢部材86は、圧縮された状態でコンプライアンス室に収容され、壁部82bの背面82Bを付勢している。これにより、壁部82bは、上流側ノズル流路65Uに向かう圧力F1を背面85Bに加えた状態でコンプライアンス室内に固定されている。付勢部材86が壁部82bを付勢する付勢方向は、本実施形態において-X方向と一致している。
【0045】
造形材料が上流側ノズル流路65Uを流動し、圧力F1よりも大きい圧力が前面82Fに加えられると、壁部82bは+X方向に変位する。これにより、変位部80bは、連通流路69内の圧力変動を吸収することができる。なお、本実施形態では、壁部82bの変位量は、変位量取得部90が軸部83の移動量を検出することによって検出することが可能である。
【0046】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、変位部80bは、さらに、孔部84bに設けられ、壁部82を連通流路69に向かって付勢する付勢部材86を備えている。したがって、簡易な構成により変位部80bを形成することができる。また、付勢部材86を利用することにより、圧縮コイルばねの付勢力の調節という簡易な方法により変位部80bのコンプライアンスを調節することができる。
【0047】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態の可塑化材料吐出装置200が備える変位部80cの構成を示す説明図である。第3実施形態の可塑化材料吐出装置200のその他の構成は第2実施形態の可塑化材料吐出装置200と同様である。変位部80cは、第2実施形態で示した変位部80bとは付勢部材の構成が異なる。具体的には、変位部80cは、付勢部材86に代えて付勢部材86cを備える点において変位部80bとは相違する。
【0048】
図8は、無負荷状態での付勢部材86cを示す説明図である。付勢部材86cは、Y方向に沿って所定の幅を有する板材を円環状に加工した部材である。付勢部材86cには、軸部83を挿通するための貫通孔86Pが設けられている。
図8に示すように、無負荷状態では、付勢部材86cは、略真円形状であり、幅W21と幅W22とは略同一である。
図8に示すように、例えば、付勢方向であるX方向に沿った外力F2が付勢部材86cに加わると、付勢部材86cは、破線86Dで示す楕円形となる。より具体的には、付勢部材86cは、矢印M11として示すように、付勢方向であるX方向に沿って径が縮小するように変位するとともに、矢印M12として示すように、付勢方向とは交差するY方向に沿って径が拡大するように変形するように構成されている。なお、変位部80cが軸部83を備えない場合などには、貫通孔86Pは省略されてもよい。
【0049】
図9は、付勢部材86cに付与される圧力と付勢部材86cの変位量との関係を示す説明図である。グラフの横軸は、付勢部材86cに付与される圧力を示しており、縦軸は、付与された圧力によって付勢部材86cが変位する変位量を示している。なお、圧力の単位はMPaであり、変位量の単位はミリメートルである。
【0050】
図9には、本実施形態の可塑化材料吐出装置200が備える付勢部材86cの変位量の変化を表すグラフG2と、比較例として第2実施形態で示した円筒形状の圧縮コイルばねとしての付勢部材86の変位量の変化を表すグラフG1とが示されている。グラフG1で示すように、第2実施形態で示した付勢部材86は、フックの法則にしたがい、圧力に対する変位量は略正比例で表される。これに対して、付勢部材86cの変位量は、グラフG2で示すように、非線形特性を有している。本実施形態では、付勢部材86cの変位量は、圧力を独立変数とする二次関数で表される。ただし、変位量は、二次関数に限らず三次関数や四次関数など、圧力に対してべき乗比例してもよい。付勢部材86cは、グラフG1と比較して、上流側ノズル流路65Uの内圧が低い場合には、付勢部材86cの変位は小さくなり、上流側ノズル流路65Uの内圧が高い場合には、付勢部材86cの変位は大きくなり得る。このように構成することにより、ノズル開口62からの造形材料の吐出に影響しない低圧力では、付勢部材86cの変位量をグラフG1よりも小さくすることができる。また、造形材料の吐出が安定しない高い圧力P1では、付勢部材86cの変位量をグラフG1よりも大きくすることができる。なお、付勢部材86cの変位量は、二次関数に代えて、圧力を独立変数とする指数関数であらわされてもよい。また、変位量は、圧力に対してべき乗比例する場合には限定されず、圧力の指数関数に比例、すなわち圧力に対して指数比例してもよい。このように構成しても圧力が高い状態で変位量が大きい付勢部材を備えることができる。
【0051】
図7に示すように、付勢部材86cは、貫通孔86Pに軸部83が挿通され、かつ背面82Bと底壁部84W2とによって圧縮された状態でコンプライアンス室内に収容されている。付勢部材86cにおいて、付勢方向であるX方向の幅W11は、Y方向の幅W12よりも小さい。このように、付勢部材86cは、壁部82bの背面82Bを付勢し、壁部82bが付勢方向である-X方向に向かう圧力F1を背面85Bに加えた状態で収容される。この結果、壁部82bは、付勢部材86cの付勢力により開口部84Eを封止する。
【0052】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、付勢部材86は、付勢部材86が壁部82bを付勢する付勢方向であるX方向と、付勢方向に交差するY方向とに変形可能に構成されている。したがって、付勢部材86の変位量と、付勢部材86に付与される圧力F1との関係を非線形特性とすることができる。
【0053】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200によれば、付勢部材86の変位量は、上流側ノズル流路65Uから付勢部材86に付与される圧力に対してべき乗比例する。したがって、上流側ノズル流路65Uの内圧がノズル開口62からの造形材料の吐出に影響を与えない低圧力の状態では、壁部82bの変位量を小さくすることができ、変位部80cを上流側ノズル流路65Uの壁面として好適な状態とすることができる。また、これよりも高い圧力P1では、付勢部材86cの変位量を大きくすることができるので、ノズル開口62からの吐出が安定しにくい高い圧力での変位部80cのコンプライアンスを大きくすることができる。したがって、造形材料の吐出に対して好適なコンプライアンスを有する変位部80cを得ることができる。
【0054】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態の可塑化材料吐出装置200が備える変位部80dの構成を示す説明図である。第4実施形態の可塑化材料吐出装置200のその他の構成は第1実施形態の可塑化材料吐出装置200と同様である。変位部80dは、第2実施形態で示した変位部80bとは付勢部材の構成が異なる。具体的には、変位部80dは、付勢部材86に代えて付勢部材86dを備える点において変位部80bとは相違する。
【0055】
図11は、無負荷状態での付勢部材86dを示す説明図である。付勢部材86dは、金属製の部材であり、Y方向に所定の幅を有する板材を、一方の面が互いに対向するように2つの支点FCを所定の角度で屈曲させることにより形成されている。付勢部材86dには、軸部83を挿通するための貫通孔86P2が設けられている。無負荷状態において、付勢部材86dの高さW41と幅W42とは略同一である。
【0056】
図8に示すように、例えば、付勢部材86dに対して付勢方向に沿った外力F2が加わると、付勢部材86dは、破線86Dで示すように幅方向に広がった形状に変形する。具体的には、付勢部材86dは、矢印M11として示すように、付勢方向であるX方向に沿って高さが低くなるとともに、矢印M12として示すように、Y方向に沿って幅が拡大するように変位する。付勢部材86dの変位量は、第3実施形態で示した付勢部材86cと同様に、上流側ノズル流路65Uから付勢部材86dに付与される圧力を独立変数とする二次関数で表される。ただし、変位量は、二次関数に限らず三次関数や四次関数など、圧力に対してべき乗比例してもよい。
【0057】
図10に示すように、付勢部材86dは、貫通孔86P2に軸部83が挿通され、かつ背面82Bと底壁部84W2とによって圧縮された状態でコンプライアンス室内に収容されている。付勢部材86dにおいて、付勢方向であるX方向の幅W31は、Y方向の幅W32よりも小さい。このように、付勢部材86dは、壁部82bの背面82Bを付勢し、壁部82bが付勢方向である-X方向に向かう圧力F1を背面85Bに加えた状態で収容される。
【0058】
本実施形態の可塑化材料吐出装置200であっても、付勢部材86dを、付勢部材86が壁部82を付勢する付勢方向と、付勢方向に交差する方向とに変形させることができる。したがって、付勢部材86dの変位量と、付勢部材86dに付与される圧力F1との関係を非線形特性とすることができる。
【0059】
また、付勢部材86の変位量は、上流側ノズル流路65Uから付勢部材86に付与される圧力に対してべき乗比例する。したがって、本実施形態の可塑化材料吐出装置200であっても、コンプライアンス特性を造形材料の吐出に対して好適なコンプライアンスを有する変位部80dを得ることができる。
【0060】
E.他の実施形態:
(E1)上記第2実施形態では、付勢部材86として線形特性を有する圧縮コイルばねを備える例を示した。これに対して、付勢部材86は、線形特性を有する圧縮コイルばねに代えて、非線形特性を有する圧縮コイルばねとされてもよい。べき乗比例や指数比例などの非線形特性を有する圧縮コイルばねは、例えば、円筒形状に代えて、コイル径が変化した錐体形状の圧縮コイルばね、コイル間のピッチが変化した不等ピッチを有する圧縮コイルばね、コイルの線径が変化したテーパばねなどを用いること得ることができる。このように構成しても、第3実施形態と同様な効果を得ることができる。また、圧縮コイルばねに代えて、皿ばねなど、線形特性を有する種々のタイプのばねが用いられてもよい。
【0061】
(E2)上記各実施形態では、可塑化材料吐出装置200が変位量取得部90を備える例を示した。これに対して、例えば、上流側ノズル流路65Uの内圧の異常の有無を検出しない場合には、変位量取得部90を省略することもできる。
【0062】
(E3)上記各実施形態では、吐出量調整部70がバタフライバルブを有する例を示した。これに対して、吐出量調整部70は、ピストンが連通流路69内に突出して連通流路69の開口面積を変化させるプランジャーを用いた機構や、連通流路69に交差する方向に移動して連通流路69の開口面積を変化させるシャッターを用いた機構によって構成されてもよい。吐出量調整部70は、上記実施形態のバタフライバルブや、上述のシャッター機構、プランジャー機構のうちの2つ以上を組み合わせて構成されてもよい。
【0063】
(E4)上記各実施形態では、スクリュー40はフラットスクリューとして構成されている。これに対して、スクリュー40は、フラットスクリューとして構成されていなくてもよく、インラインスクリューとして構成されていてもよい。
【0064】
(E5)上記各実施形態では、材料供給部20に供給される原材料として、ペレット状のABS樹脂が用いられる。これに対して、三次元造形装置100は、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0065】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化部30において、当該材料が可塑化することによって造形材料が生成される。熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0066】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、スクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0067】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂は、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル61からの射出時には約200℃であることが望ましい。
【0068】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、原材料として可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0069】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ210に配置された造形材料はレーザーの照射や温風などによる焼結によって硬化されてもよい。
【0070】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0071】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0072】
その他に、材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0073】
F.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0074】
(1)本開示の一形態によれば、可塑化材料吐出装置が提供される。この可塑化材料吐出装置は、材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、ノズル開口を有し、前記ノズル開口から前記可塑化材料を吐出するノズルと、前記ノズル開口に連通し前記可塑化材料が流れる連通流路の内壁の少なくとも一部となる壁部、及び、前記壁部が前記可塑化材料の流動方向に交差する方向に変位するための空間を規定する孔部を有する変位部と、を備える。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、変位部の変位によって連通流路内の圧力変動を吸収することができ、連通流路の内圧を安定させることができる。したがって、ノズル開口からの造形材料の吐出を安定させることができる。
【0075】
(2)上記形態の可塑化材料吐出装置において、前記壁部は、可撓性材料を含んでよい。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、簡易な構成により壁部を変位させることができる。
【0076】
(3)上記形態の可塑化材料吐出装置において、前記変位部は、さらに、前記孔部に設けられ、前記壁部を前記連通流路に向かって付勢する付勢部材を備えてもよい。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、簡易な構成により変位部を形成することができる。
【0077】
(4)上記形態の可塑化材料吐出装置において、前記付勢部材は、前記付勢部材が前記壁部を付勢する付勢方向と、前記付勢方向に交差する方向とに変形可能に構成されてもよい。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、付勢部材の変位量と、付勢部材に付与される圧力との関係を非線形特性とすることができる。
【0078】
(5)上記形態の可塑化材料吐出装置において、前記付勢部材の変位量は、前記連通流路から前記付勢部材に付与される圧力に対してべき乗比例または指数比例してもよい。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、造形材料の吐出に対して好適なコンプライアンスを有する変位部を得ることができる。
【0079】
(6)上記形態の可塑化材料吐出装置において、さらに、前記連通流路に設けられ、前記ノズル開口からの前記可塑化材料の吐出量を調整する吐出量調整部を備えてよい。前記壁部は、前記連通流路において、前記吐出量調整部よりも上流に配置されてよい。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、連通流路のうち内圧が大きく変動し得る吐出量調整部の上流側での圧力変動を吸収することができ、連通流路の内圧をより安定させることができる。
【0080】
(7)上記形態の可塑化材料吐出装置において、さらに、前記壁部の変位量を検出する変位量取得部を備えてよい。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、変位量の検出という簡易な方法により、連通流路の内圧の異常を検出することができる。
【0081】
(8)上記形態の可塑化材料吐出装置において、前記ノズルから吐出された前記可塑化材料が堆積される造形面を有するステージと、を備えてもよい。
この形態の可塑化材料吐出装置によれば、ノズル開口からの造形材料の吐出を安定させることができる。
【0082】
本開示は、可塑化材料吐出装置および三次元造形装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、可塑化材料の送出方法、可塑化材料を用いた三次元造形物の造形方法などの形態で実現することができる。その他に、可塑化材料吐出装置の制御方法、三次元造形装置の制御方法、前述した種々の方法を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することもできる。
【符号の説明】
【0083】
20…材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…スクリュー、41…上面、42…スクリュー下面、43…側面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…バレル上面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、61…ノズル、62…ノズル開口、63…先端面、65…ノズル流路、65D…下流側ノズル流路、65U…上流側ノズル流路、69…連通流路、70…吐出量調整部、74…第1駆動部、75…圧力調整部、76…分岐流路、77…プランジャー、78…第2駆動部、80,80b,80c,80d…変位部、82,82b…壁部、82B…背面、82F…前面、82T…厚み、83…軸部、84,84b…孔部、84E…開口部、84W1…側壁部、84W2…底壁部、85…突出部、85B…背面、86,86c,86d…付勢部材、86P,86P2…貫通孔、90…変位量取得部、92…圧力センサ、100…三次元造形装置、101…制御装置、200…可塑化材料吐出装置、210…ステージ、211…造形面、230…位置変更部、MD…流動方向、ML…層、MM…造形材料、Op…部分造形物