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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033148
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、および液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240306BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240306BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 603
B41J2/01 301
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136573
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 優
(72)【発明者】
【氏名】鷹合 仁司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼部 本規
(72)【発明者】
【氏名】平井 栄樹
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 貴公
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056HA05
2C056KB35
2C057AF10
2C057AF40
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG75
2C057BA04
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドにおいて、サイズアップを抑制しつつ振動吸収特性を向上可能な技術を提供する。
【解決手段】ノズルと、ノズルから液体を吐出するための圧力が付与される圧力室と、をそれぞれ有し、第1方向に配列された複数の個別流路と、複数の個別流路に共通に連通する共通流路と、圧力室の第1方向と交差する第2方向の一方側である第1側に設けられ、圧力室内の液体に圧力を付与してノズルから液体を吐出させる圧電素子と、を有する液体吐出ヘッドであって、共通流路のうちの複数の個別流路と接続する接続領域の第1側に面した位置には、第1コンプライアンスが設けられ、共通流路のうちの接続領域において第2方向の他方側であって第1側と反対の第2側に面した位置には、第1コンプライアンスと異なる第2コンプライアンスが設けられ、第2方向からみたとき、第1コンプライアンスと第2コンプライアンスは、一部が重なる重複部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、前記ノズルから液体を吐出するための圧力が付与される圧力室と、をそれぞれ有し、第1方向に配列された複数の個別流路と、
前記複数の個別流路に共通に連通する共通流路と、
前記圧力室の前記第1方向と交差する第2方向の一方側である第1側に設けられ、前記圧力室内の液体に圧力を付与して前記ノズルから液体を吐出させる圧電素子と、
を有する液体吐出ヘッドであって、
少なくとも前記共通流路のうちの前記複数の個別流路と接続する接続領域の前記第1側に面した位置には、第1コンプライアンスが設けられ、
少なくとも前記共通流路のうちの前記接続領域において前記第2方向の他方側であって前記第1側と反対の第2側に面した位置には、前記第1コンプライアンスと異なる第2コンプライアンスが設けられ、
前記第2方向からみたとき、前記第1コンプライアンスと前記第2コンプライアンスは、一部が重なる重複部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第2コンプライアンスのコンプライアンス能力は、前記第1コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2コンプライアンスのヤング率は、前記第1コンプライアンスのヤング率よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第2コンプライアンスの前記第2方向の厚さは、前記第1コンプライアンスの前記第2方向の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第2コンプライアンスの幅であって前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向の幅は、前記第1コンプライアンスの前記第3方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2コンプライアンスの前記第1方向の幅は、前記第1コンプライアンスの前記第1方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1コンプライアンスは、前記第1方向に複数に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第2コンプライアンスは、前記第1方向に複数に分割されていないことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記圧力室と前記第1コンプライアンスとの前記第2方向に沿った距離は、前記圧力室と前記第2コンプライアンスの前記第2方向に沿った距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第2方向からみたとき、前記第1コンプライアンスは、前記第2コンプライアンスと重ならない第1非重複部を更に有し、
前記第2方向からみたとき、前記第2コンプライアンスは、前記第1コンプライアンスと重ならない第2非重複部を更に有することを特徴とする請求項1の記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第2方向からみたときの前記第1非重複部の面積は、前記第2方向からみたときの前記第2非重複部の面積よりも狭いことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記共通流路は、
前記複数の個別流路に液体を供給する供給側共通流路と、
前記複数の個別流路から液体を排出する排出側共通流路と、を含み、
前記第1コンプライアンスおよび前記第2コンプライアンスは、前記供給側共通流路に設けられ、
少なくとも前記排出側共通流路のうちの前記複数の個別流路と接続する第2接続領域の前記第1側に面した位置には、第3コンプライアンスが設けられ、
少なくとも前記排出側共通流路のうちの前記第2接続領域の前記第2側に面した位置には、前記第3コンプライアンスと異なる第4コンプライアンスが設けられ、
前記第2方向からみたとき、前記第3コンプライアンスと前記第4コンプライアンスは、一部が重なる第2重複部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記第3コンプライアンスのコンプライアンス能力は、前記第1コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記第4コンプライアンスのコンプライアンス能力は、前記第2コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記第2重複部の幅であって前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向の幅は、前記重複部の前記第3方向の幅よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッド、および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター等の液体吐出装置に備えられる液体吐出ヘッドに関して、特許文献1には、コンプライアンス基板を有する液体吐出ヘッドが開示されている。この液体吐出ヘッドでは、コンプライアンス基板によって液体による圧力変動を吸収し、液体吐出ヘッドからの液体吐出の安定性を高めている。特許文献1に記載の液体吐出ヘッドでは、圧力室へと繋がる共通流路の下部にコンプライアンス基板を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-153926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の液体吐出ヘッドでは、コンプライアンス基板が圧力室から離間しているため、振動の吸収特性が十分に得られない虞があった。そこで、例えば、共通流路およびコンプライアンス基板の横方向の寸法を増大させて振動吸収特性を向上させる場合には、振動吸収特性を向上できたとしても液体吐出ヘッドのサイズアップを招いてしまうという問題がある。このため、液体吐出ヘッドにおいて、サイズアップを抑制しつつ振動吸収特性を向上可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1の形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出するための圧力が付与される圧力室と、をそれぞれ有し、第1方向に配列された複数の個別流路と、前記複数の個別流路に共通に連通する共通流路と、前記圧力室の前記第1方向と交差する第2方向の一方側である第1側に設けられ、前記圧力室内の液体に圧力を付与して前記ノズルから液体を吐出させる圧電素子と、を有する液体吐出ヘッドであって、少なくとも前記共通流路のうちの前記複数の個別流路と接続する接続領域の前記第1側に面した位置には、第1コンプライアンスが設けられ、少なくとも前記共通流路のうちの前記接続領域において前記第2方向の他方側であって前記第1側と反対の第2側に面した位置には、前記第1コンプライアンスと異なる第2コンプライアンスが設けられ、前記第2方向からみたとき、前記第1コンプライアンスと前記第2コンプライアンスは、一部が重なる重複部を有する。
【0007】
本開示の第2の形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記第1の形態における液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態における液体吐出装置の概略構成を示す説明図である。
図2】液体吐出装置を示すブロック図である。
図3】液体吐出ヘッドの一部断面図である。
図4】液体吐出ヘッドの断面図であって、図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】液体吐出ヘッドの断面図であって、図3におけるV-V線断面図である。
図6】液体吐出ヘッドの断面図であって、図3におけるVI-VI線断面図である。
図7】第1実施形態の液体吐出ヘッドにおいて、圧力吸収の効果を説明する図である。
図8】本開示の第2実施形態における、液体吐出ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.液体吐出装置1の構成:
図1は、本開示の第1実施形態としての液体吐出装置1の概略構成を示す説明図である。本実施形態において、液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを印刷媒体である印刷用紙PA(以下、単に「用紙PA」という)に吐出して画像を形成するインクジェット式プリンターである。液体吐出装置1は、用紙PAに代えて、樹脂フィルム、布帛等の任意の種類の媒体を、インクの吐出対象としてもよい。
【0010】
液体吐出装置1は、インクを吐出する液体吐出ヘッド10、インクを貯留する液体容器2、液体吐出ヘッド10を搭載するキャリッジ3、キャリッジ3を搬送するキャリッジ搬送機構4、用紙PAを搬送する媒体搬送機構5、及び、制御部30を備える。制御部30は、液体の吐出を制御する制御部である。
【0011】
液体容器2の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器2に貯留されるインクの種類は任意である。液体吐出装置1は、例えば、4色のインクに対応して複数の液体容器2を備える。4色のインクとしては、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、及び、ブラックがある。液体容器2は、キャリッジ3に搭載されるものでもよい。
【0012】
液体吐出装置1は、インクを循環させる循環機構8を備える。循環機構8は、液体吐出ヘッド10にインクを供給する供給流路81と、液体吐出ヘッド10から排出されたインクを回収する回収流路82と、インクを移送するポンプ83と、を含む。
【0013】
キャリッジ搬送機構4は、キャリッジ3を搬送するための搬送ベルト4a及びモーターを有する。媒体搬送機構5は、用紙PAを搬送するための搬送ローラー5a及びモーターを有する。キャリッジ搬送機構4及び媒体搬送機構5は、制御部30によって制御される。液体吐出装置1は、媒体搬送機構5によって用紙PAを搬送させながら、キャリッジ搬送機構4によってキャリッジ3を搬送させて、用紙PAにインク滴を吐出して印刷する。
【0014】
図2は、液体吐出装置1を示すブロック図である。液体吐出装置1は、図2に示すように、リニアエンコーダー6を備える。キャリッジ3の位置を検出可能な位置に設けられている。リニアエンコーダー6は、キャリッジ3の位置に関する情報を取得する。リニアエンコーダー6は、キャリッジ3の移動に伴って、制御部30にエンコーダー信号を出力する。
【0015】
制御部30は、1又は複数のCPU31を含む。制御部30は、CPU31の代わりに、又は、CPU31に加えて、FPGAを備えるものでもよい。制御部30は、記憶部35を含む。記憶部35は、例えばROM36及びRAM37を備える。記憶部35は、EEPROM、又はPROMを備えていてもよい。記憶部35は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgを記憶できる。記憶部35は、液体吐出装置1の制御プログラムを記憶する。
【0016】
CPUは、Central Processing Unitの略称である。FPGAは、field-programmable gate arrayの略称である。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称である。PROMは、Programmable ROMの略称である。
【0017】
制御部30は、液体吐出装置1の各部の動作を制御するための信号を生成する。制御部30は、印刷信号SI及び波形指定信号dComを生成できる。印刷信号SIは、液体吐出ヘッド10の動作の種類を指定するためのデジタル信号である。印刷信号SIは、圧電素子20に対して駆動信号Comを供給するか否かを指定できる。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するデジタル信号である。駆動信号Comは、圧電素子20を駆動するためのアナログ信号である。
【0018】
液体吐出装置1は、駆動信号生成回路32を備える。駆動信号生成回路32は、制御部30と電気的に接続されている。駆動信号生成回路32は、DA変換回路を含む。駆動信号生成回路32は、波形指定信号dComにより規定される波形を有する駆動信号Comを生成する。制御部30は、リニアエンコーダー6からエンコーダー信号を受信すると、駆動信号生成回路32に、タイミング信号PTSを出力する。タイミング信号PTSは、駆動信号Comの生成タイミングを規定する。駆動信号生成回路32は、タイミング信号PTSを受信するごとに、駆動信号Comを出力する。
【0019】
駆動回路7は、制御部30及び駆動信号生成回路32と電気的に接続されている。駆動回路7は、印刷信号SIに基づいて、駆動信号Comを圧電素子20に供給するか否かを切り替える。駆動回路7は、制御部30から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHに基づいて、駆動信号Comが供給される圧電素子20を選択できる。ラッチ信号LATは、印刷データImgのラッチタイミングを規定する。チェンジ信号CHは、駆動信号Comに含まれる駆動パルスの選択タイミングを規定する。
【0020】
制御部30は、液体吐出ヘッド10によるインクの吐出動作を制御する。制御部30は、圧電素子20を駆動することにより、圧力室C内のインクの圧力を変動させて、ノズルNからインクを吐出する。圧電素子20、圧力室C、ノズルN等の詳細構成については後述する。制御部30は、印刷動作を行う際に、吐出動作を制御する。
【0021】
A2.液体吐出ヘッド10の構成:
次に、液体吐出ヘッド10の構成について説明する。液体吐出ヘッド10は、後述する供給側共通流路41、個別流路42、排出側共通流路43へと液体を循環させる循環方式を採用する。図3は、液体吐出ヘッド10の一部断面図である。以下の説明において、互いに交差する3方向をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0022】
X軸方向は、図3における左右方向であり、互いに反対の方向であるX1方向(図3においては右方向)及びX2方向(図3においては左方向)を含む。X軸方向は、第3方向の一例である。Y軸方向は、互いに反対の方向であるY1方向及びY2方向を含む。Y1方向は、図3において、紙面奥行き方向である。Y2方向は、図3において紙面手前方向である。Y軸方向は、第1方向の一例である。Z軸方向は、図3における上下方向であり、互いに反対の方向であるZ1方向(図3においては下方向)及びZ2方向(図3においては上方向)を含む。Z軸方向は、第2方向の一例である。
【0023】
また、「Z2側」が「第1側」の一例であり、「Z1側」が「第2側」の一例に相当する。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、直交している。Z軸方向は、通常上下方向に沿う方向であるが、Z軸方向は、上下方向に沿う方向でなくてもよい。なお、以下の説明においては、Z1方向を「上」、Z2方向を「下」として説明する場合もある。
【0024】
本明細書では、「供給側」及び「排出側」との用語を用いる場合がある。「供給側」とは、液体の流路に関してノズルNよりも上流側を示す。また、ノズルNよりも上流側に関連するものを「供給側」という場合がある。また、ノズルNよりも下流側に関連するものを「排出側」という場合がある。
【0025】
液体吐出ヘッド10は、ノズル基板21、連通板22、圧力室基板23、振動板24、封止板25、及び圧電素子20を備える。また、液体吐出ヘッド10は、ケース26、及びCOF60を備える。COFは、Chip on Filmの略称である。さらに、液体吐出ヘッド10は、供給側共通流路41、複数の個別流路42、排出側共通流路43、複数の圧力室C、供給側吸収室44、排出側吸収室45、第1コンプライアンス51、第2コンプライアンス52、第3コンプライアンス53、および第4コンプライアンス54、を有する。なお、複数の個別流路42および複数の圧力室Cは、Y軸方向に沿って配列されているため、図3では、それぞれ一つずつのみ表されている。本実施形態では、液体の一例であるインクを吐出する液体吐出ヘッド10について説明する。液体は、インクに限定されず、液体吐出ヘッド10は、その他の液体を吐出することができる。
【0026】
ノズル基板21、連通板22、圧力室基板23、振動板24、封止板25、及びケース26の厚さ方向は、Z軸方向に沿う。ノズル基板21は、液体吐出ヘッド10の底部に配置される。ノズル基板21のZ2方向には、連通板22が配置される。連通板22のZ2方向には、圧力室基板23が配置される。言い換えると、連通板22は、圧力室基板23とノズル基板21の間に設けられる。圧力室基板23のZ2方向には、振動板24が設けられる。振動板24は、例えばSiOにて形成される。振動板24は、圧力室基板23と別の部材であり、圧力室基板23に接着されることで配置されても良いし、圧力室基板23のZ2方向の表面に熱酸化等の処理が行われることで形成されても良い。
【0027】
振動板24のZ2方向には、封止板25が配置される。封止板25は、振動板24、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53、圧電素子15,16,20、及び圧力室基板23を覆う。ケース26は、封止板25上に配置される。圧電素子20は、圧力室Cに対応して設けられている。
【0028】
[流路の説明]
まず、液体吐出ヘッド10内に形成される液体流路について説明する。液体流路は、図示しない供給口および排出口、供給側共通流路41、複数の個別流路42、および排出側共通流路43を含む。供給側共通流路41と各個別流路42との境界Laを、図3において破線で図示している。なお、供給側共通流路41と各個別流路42との境界には、図示しない周知の流路絞りが設けられている。
【0029】
供給側共通流路41は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。供給側共通流路41は、複数の圧力室Cに亘ってY軸方向に連続する。供給側共通流路41は、ケース26に設けられた液室部61、圧力室基板23に設けられた液室部62、及び連通板22に設けられた液室部63を含む。これらの液室部61,62,63は、Z軸方向に連続する。
【0030】
供給側吸収室44は、圧力室CのX1方向に位置する。供給側吸収室44は、圧力室Cの上流に連通する。供給側吸収室44は、供給側共通流路41の一部を構成する。
【0031】
複数の個別流路42は、複数の圧力室Cに対してそれぞれ設けられており、Y軸方向に配列されている。個別流路42は、供給側共通流路41の下流に配置される。個別流路42は、圧力室基板23に設けられた液室部62の下流に連通する。個別流路42は、圧力室Cと、第1連通流路65と、第2連通流路66と、第3連通流路67と、を上流から順に有している。
【0032】
複数の圧力室Cには、第1連通流路65および第2連通流路66を介して複数のノズルNがそれぞれ連通する。各ノズルNは、各圧力室Cに対してZ1方向に位置する。複数の第1連通流路65は、Z軸方向に延在する。複数の第2連通流路66は、第1連通流路65のZ1方向の端部に接続し、X2方向に延在する。ノズルNは、第2連通流路66におけるX軸方向の略中央に位置する。複数の第3連通流路67は、第2連通流路66のX2方向の端部に接続し、Z2方向に延在する。
【0033】
排出側共通流路43は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。排出側共通流路43は、複数の個別流路42に対して共通に連通する。排出側共通流路43は、個別流路42を介して、各圧力室Cと連通する。排出側共通流路43は、各個別流路42の下流に配置されている。
【0034】
排出側共通流路43は、Y軸方向に連続する。排出側共通流路43は、ケース26に設けられた液室部71、圧力室基板23に設けられた液室部72、及び連通板22に設けられた液室部73を含む。これらの液室部71,72,73は、Z軸方向に連続する。なお、液室部61,71は、ケース26に設けられた貫通孔により形成されている。
【0035】
[各基板の説明]
図4図6は、液体吐出ヘッドの断面図であって、図4は、図3におけるIV-IV線断面図であり、図5は、図3におけるV-V線断面図であり、図6は、図3におけるVI-VI線断面図である。以下、図3図6を適宜参照して、液体吐出ヘッド10を構成する各基板の構造について説明する。図3に示すように、ノズル基板21には、ノズル基板21をZ方向に貫通するノズルNが形成されている。上述したように、液体吐出ヘッド10は、このノズルNを介して液体を吐出する。ノズル基板21には、複数のノズルNがY軸方向に沿って複数配列されることによって、ノズル列が形成されている。ノズル基板21は、例えば、ステンレス鋼等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等により形成される。
【0036】
図3図5に示すように、圧力室基板23には、供給側液室部62と、供給側吸収室44と、圧力室Cと、排出側吸収室45と、排出側液室部72と、が形成されている。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、ともに、液体の流路の一部を構成する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、X軸方向に延在する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、圧力室基板23をZ軸方向に貫通する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、所定の容積を有する。
【0037】
複数の圧力室Cは、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。複数の圧力室Cは、Y軸方向において、供給側吸収室44および排出側吸収室45と同じ位置に配置されている。Y軸方向において対応する圧力室Cと供給側吸収室44とは、隣接しており、X軸方向に連通している。供給側液室部62は、ケース26に設けられた液室部61と、連通板22に設けられた液室部63とともに、供給側共通流路41を形成している。
【0038】
本実施形態の圧力室基板23は、シリコン単結晶基板により形成されている。他の実施形態では、圧力室基板23は、例えば、ステンレス鋼(SUS)やニッケル(Ni)などの金属、ジルコニア(ZrO)あるいはアルミナ(Al)を代表とするセラミック材料 、ガラスセラミック材料、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミン酸(LaAlO)のような酸化物等によって形成されてもよい。本実施形態では、圧力室Cおよび吸収室44,45は、例えば、圧力室基板23を異方性エッチングによって加工することで形成される。なお、圧力室Cおよび吸収室44,45の機能の詳細については後述する。
【0039】
連通板22は、ノズル基板21と圧力室基板23との間に配置され、接着剤等によってノズル基板21上に固定されている。連通板22は、例えば、シリコン単結晶基板によって形成される。図3図6に示すように、連通板22には、供給側液室部63と、排出側液室部73と、第1連通流路65と、第2連通流路66と、第3連通流路67と、が形成されている。各液室部63,73、第1連通流路65、および第3連通流路67は、連通板22をZ方向に貫通して形成されている。また、第2連通流路66は、連通板22をZ方向に貫通することなく、連通板22の下面が窪んだ部分として形成されている。液室部73は、ケース26に形成された液室部71、圧力室基板23に形成された液室部72とともに、排出側共通流路43を形成している。
【0040】
図3に示すように、封止板25は、Z1方向の下面に凹部が設けられた部材である。凹部は、圧力室Cおよび各吸収室44,45のZ2側において、圧力室Cおよび各吸収室44,45に対向する位置に開口している。具体的には、本実施形態の封止板25には、凹部として、第1凹部75と、第2凹部76と、第3凹部77と、が設けられている。
【0041】
第1凹部75は、圧力室Cと対向する位置に開口している。第2凹部76は、供給側吸収室44と対向する位置に開口している。第3凹部77は、排出側吸収室45と対向する位置に開口している。各凹部75,76,77の間は、封止板25の一部として形成された壁部によって隔てられている。なお、本実施形態において、各凹部75,76,77の開口の深さは等しい。すなわち、各凹部75,76,77のZ方向の寸法は等しい。
【0042】
また、各凹部75,76,77は、液体の流路と連通しておらず、凹部75,76,77には液体が流通しない。各凹部75,76,77のX軸方向の幅は、大きい順に第1凹部75、第2凹部76、第3凹部77となっている。図3図4に示すように、第1凹部75、第2凹部76および第3凹部77は、液体吐出ヘッド10のY軸方向の幅に亘って延在する。第2凹部76および第3凹部77のY軸方向の幅は同じである。封止板25のX軸方向の中央部よりもX2方向寄りの位置には、封止板25をZ軸方向に貫通する貫通孔78が設けられている。貫通孔78には、上記COF60が挿入されている。
【0043】
振動板24は、圧力室基板23上に積層されている。圧電素子15,16,20は、振動板24上に積層されている。複数の圧電素子20は、第1凹部75内に位置する。圧電素子15は、第2凹部76内に位置する。圧電素子16は、第3凹部77内に位置する。第1凹部75に位置する圧力室Cに対応する圧電素子20は、例えば、図示しない第1電極と、圧電体と、第2電極と、がZ1方向へ積層されて構成されるアクチュエーターである。なお、図3において、第1電極または第2電極と、COF60とを電気的に接続する配線部の図示は省略している。本実施形態では、第2凹部76および第3凹部77内に位置する圧電素子15,16についても、第1凹部75内に位置するアクチュエーターと同様の構成である。
【0044】
[コンプライアンスの説明]
次に、第1コンプライアンス51~第4コンプライアンス54の構成について説明する。第1コンプライアンス51は、供給側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第1コンプライアンス51は、少なくとも供給側共通流路41のうちの複数の個別流路42と接続する接続領域A1のZ2側に面した位置に配置される。
【0045】
ここでの「接続領域A1」とは、供給側共通流路41と各個別流路42とを接続する部位の周辺であって、供給側共通流路41内の領域を指す。「接続領域A1」は、例えば、図3において二点鎖線で囲んで示すように、供給側共通流路41と個別流路42との境界Laよりも上流側であって、ケース26に形成される液室部61よりも下流であって、液室部61に対してZ1方向側かつX2方向側の部分である。図3では、接続領域A1のX1側の端を第1コンプライアンス51の中央付近に設定しているが、上記条件を満たしていれば、よりX1側、或いはよりX2側に設定しても良い。後述する接続領域A2についても同様である。
【0046】
第1コンプライアンス51は、振動板24と、圧電素子15と、を備える。図4に示すように、第1コンプライアンス51は、排出側共通流路43のY軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続する。振動板24上に、Y軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続する圧電素子15が形成されている。第1コンプライアンス51のX軸方向の幅W1は、圧電素子15のX軸方向における幅に相当する。振動板24は、液体の圧力を受けて変形可能である。振動板24は、液体の圧力によって変形し、供給側吸収室44内の液体の圧力変動を吸収できる。圧電素子15は、Z軸方向に見て供給側吸収室44に重なる位置に配置される。
【0047】
第2コンプライアンス52は、供給側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第2コンプライアンス52は、連通板22のZ1方向に設けられる。すなわち、第2コンプライアンス52は、少なくとも供給側共通流路41のうちの接続領域A1のZ1側に面した位置に配置される。第2コンプライアンス52は、供給側共通流路41内の液体の圧力変動を吸収する可撓性フィルムである。図3に示すように、第2コンプライアンス52は、連通板22の液室部63のZ1方向側の開口部を閉塞するように、連通板22の下面に設置されて、供給側共通流路41の壁面(具体的には底面)を構成する。
【0048】
ここで、圧力室CのZ方向における中心位置を通り、X軸とY軸とを含むXY平面上にある線L1を、圧力室Cの基準位置とする。圧力室Cと第1コンプライアンス51とのZ軸方向の距離D1は、圧力室Cと第2コンプライアンス52とのZ軸方向の距離D2よりも短い。距離D1は、圧力室Cの基準位置から振動板24の底面までの距離であり、「圧力室Cと第1コンプライアンス51との第2方向に沿った距離」の一例に相当する。距離D2は、圧力室Cの基準位置から第2コンプライアンス52の上面までの距離であり、「圧力室Cと第2コンプライアンス52の第2方向に沿った距離」の一例に相当する。なお、圧力室Cから第1コンプライアンス51までの流路長は、圧力室Cから第2コンプライアンス52までの流路長より短い。
【0049】
第2コンプライアンス52のZ軸方向の厚さは、第1コンプライアンス51のZ軸方向の厚さより薄い。第2コンプライアンス52のX軸方向の幅W2(図6参照)は、第1コンプライアンス51のX軸方向の幅W1(図4参照)よりも大きい。第1コンプライアンス51のY軸方向の幅と、第2コンプライアンス52のY軸方向の幅とは略同じである。
【0050】
また、第2コンプライアンス52のヤング率は、第1コンプライアンス51のヤング率よりも小さい。ここで、第1コンプライアンス51のヤング率は、第1コンプライアンス51を一つの積層膜と捉えて算出できる。具体的には、積層膜におけるヤング率に重み係数を乗じることにより重み付けを行い、重み付けされた各積層膜の平均値を取ることにより算出できる。重み係数は、例えば膜の厚みに相当する定数である。
【0051】
Z軸方向から見たとき、第1コンプライアンス51と、第2コンプライアンス52は、一部が重なる重複部11を有する。Z軸方向から見たとき、第1コンプライアンス51は、第2コンプライアンス52とは重ならない第1非重複部12を有する。Z軸方向から見たとき、第2コンプライアンス52は、第1コンプライアンス51とは重ならない第2非重複部13を有する。Z軸方向から見たときの第1非重複部12の面積は、Z軸方向から見たときの第2非重複部13の面積よりも狭い。
【0052】
上述のような第1コンプライアンス51および第2コンプライアンス52の物性や寸法等により、第2コンプライアンス52のコンプライアンス能力は、第1コンプライアンス51のコンプライアンス能力よりも大きい。コンプライアンス能力は、コンプライアンス量と同じ意味であり、以下の式(1)を用いて表現できる。
【数1】
【0053】
式(1)中、「ν」は、振動板24のポアソン比である。「ν」は、コンプライアンスを構成する材料の物性値である。「E」は、ヤング率である。「E」は、コンプライアンスを構成する材料の物性値である。
【0054】
「w」は、コンプライアンスが覆うX軸に沿う開口の長さである。「l」は、コンプライアンスが覆うY軸に沿う開口の長さである。「t」は、コンプライアンスの厚さである。なおここではw<lであるため上記の条件となるが、w>lの場合は「w」はY軸に沿う長さ、「l」はX軸に沿う長さとなる。
【0055】
第3コンプライアンス53は、排出側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第3コンプライアンス53は、少なくとも排出側共通流路43のうちの複数の個別流路42と接続する第2接続領域A2のZ2側に面した位置に配置される。ここでの「第2接続領域A2」とは、排出側共通流路43と個別流路42とを接続する部位の周辺であって、排出側共通流路43内の領域を指す。「第2接続領域A2」は、例えば、図3において二点鎖線で囲んで示すように、排出側共通流路43と個別流路42との境界線Lbよりも下流側かつ、ケース26に形成される液室部71よりも上流側であって、液室部71のX1方向側かつZ1方向側の部分である。
【0056】
第3コンプライアンス53の構成は、第1コンプライアンス51と略同様であり、振動板24と、圧電素子16と、を備える。第3コンプライアンス53を構成する振動板24は、Y軸方向に連続する。第3コンプライアンス53のX軸方向の幅は、複数の圧電素子16のX軸方向における幅に相当する。振動板24は、液体の圧力を受けて変形可能である。振動板24は、液体の圧力によって変形し、排出側吸収室45内の液体の圧力変動を吸収できる。
【0057】
振動板24上には、Y軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続する圧電素子16が形成されている。圧電素子16は、Z軸方向に見て複数の排出側吸収室45に重なる位置に対応して配置される。
【0058】
第4コンプライアンス54は、排出側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第4コンプライアンス54は、連通板22のZ1方向に設けられる。すなわち、第4コンプライアンス54は、少なくとも排出側共通流路43のうちの第2接続領域A2のZ1側に面した位置に配置される。第4コンプライアンス54は、排出側共通流路43内の液体の圧力変動を吸収する可撓性フィルムである。第4コンプライアンス54は、連通板22の液室部73のZ1方向側の開口部を閉塞するように、連通板22の下面に設置されて、排出側共通流路43の壁面(具体的には底面)を構成する。
【0059】
ここで、圧力室Cと第3コンプライアンス53とのZ軸方向の距離は、圧力室Cと第1コンプライアンス51とのZ軸方向の距離D1と同じである。また、圧力室Cと第4コンプライアンス54とのZ軸方向の距離は、圧力室Cと第2コンプライアンス52とのZ軸方向の距離D2と同じである。すなわち、圧力室Cと第3コンプライアンス53とのZ軸方向の距離D1は、圧力室Cと第4コンプライアンス54とのZ軸方向の距離D2よりも短い。
【0060】
第4コンプライアンス54のZ軸方向の厚さは、第3コンプライアンス53のZ軸方向の厚さより薄い。第4コンプライアンス54のX軸方向の幅は、第3コンプライアンス53のX軸方向の幅よりも大きい。第3コンプライアンス53のY軸方向の幅と、第4コンプライアンス54のY軸方向の幅とは略同じである。
【0061】
また、第4コンプライアンス54のヤング率は、第3コンプライアンス53のヤング率よりも小さい。ここで、第3コンプライアンス53のヤング率は、第1コンプライアンス51と同様に、第3コンプライアンス53を一つの積層膜と捉えて算出できる。
【0062】
Z軸方向から見たとき、第3コンプライアンス53と、第4コンプライアンス54は、一部が重なる第2重複部14を有する。第2重複部14のX軸方向の幅W4は、重複部11のX軸方向の幅W3よりも小さい。第2重複部14の面積は、重複部11の面積より小さい。
【0063】
Z軸方向から見たとき、第4コンプライアンス54は、排出側共通流路43におけるX2方向側に、第3コンプライアンス53とは重ならない非重複部を有する。また、第4コンプライアンス54のコンプライアンス能力は、第3コンプライアンス53のコンプライアンス能力よりも大きい。第3コンプライアンス53のコンプライアンス能力は、第1コンプライアンス51のコンプライアンス能力より小さい。さらに、第2コンプライアンス52のコンプライアンス能力は、第4コンプライアンス54のコンプライアンス能力よりも大きい。
【0064】
なお、上記各コンプライアンス51~54を形成する材料や、コンプライアンス51~54の厚み等を調整することによって、圧力室Cから伝搬した液体の振動を吸収するのに適した可撓性を有するように、コンプライアンス51~54を形成することが好ましい。また、液体の振動を効果的に吸収するため、本実施形態の第1、第3コンプライアンス53のように、コンプライアンスが圧電素子15,16を構成する部材を含む場合、コンプライアンスは、圧電体に電圧が負荷された際に圧電歪みを生じないように構成されていると好ましい。すなわち、第2凹部76及び第3凹部77内に位置する圧電素子15,16は、第1凹部75内の圧電素子20とは異なり圧力室内の液体に圧力を付与するものではないため、制御部30とは電気的に接続されていないことが好ましい。
【0065】
[動作説明・液体の流れ]
液体容器2内の液体は、ポンプ83によって移送され、供給流路81内を流れて、図示しない供給口を通り、供給側共通流路41に流入する。供給側共通流路41内の液体は、供給側吸収室44を通り、個別流路42の一部を構成する圧力室Cに供給される。圧力室C内の液体の一部は、ノズルNから吐出される。
【0066】
ノズルNから吐出されなかった液体は、第2連通流路66および第3連通流路67、個別流路42の一部を構成する排出側吸収室45を通り、排出側共通流路43に流入する。排出側共通流路43内の液体は、図示しない排出口を通じて、回収流路82内に流入し、液体容器2に回収される。液体吐出ヘッド10では、このように液体が循環される。
【0067】
上述した圧力室Cは、振動板24の振動によって、圧力室C内の液体に圧力を付与する。振動板24は、圧電素子20の駆動によって振動する。具体的には、圧電体に電圧が印加されることによって、圧電体のうち第1電極と第2電極とによってZ方向に挟まれた部分である能動部に、圧電歪みが生じる。圧電素子20は、この圧電歪みによって、振動板24を撓むように振動させて圧力室の容積を変化させることで、圧力室C内の液体に圧力を付与する。なお、圧電体のうち、第1電極と第2電極とによってZ方向に挟まれない部分である非能動部では、圧電体に電圧が印加された場合であっても、上記の圧電歪みは生じない。
【0068】
液体吐出ヘッド10は、上述したように、圧力室Cにおいて液体に圧力を付与することによって、ノズルNから液体を吐出する。ここで、圧力室Cにおいて液体に圧力が付与された場合、圧力室C内の液体の一部は、圧力室Cよりも上流に位置する、複数の圧力室Cに共通の液室等に流れ、圧力室Cから液室等へと液体の振動が伝搬する。ここで、複数の圧力室Cにおいて液体に圧力が付与された場合、ある圧力室Cから液室等へと流れる液体は、例えば、他の圧力室Cから液室等へと流れる液体によって流通を阻害される等の影響を受ける。そのため、ある圧力室Cからの液体の振動の伝搬の態様が、他の圧力室Cからの液体の振動の伝搬の影響によって変化し、ある圧力室Cを介してノズルNから吐出される液体の品質の安定性が低下する場合がある。
【0069】
上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10および液体吐出装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0070】
上述した供給側吸収室44は、圧力室Cから伝搬した液体の振動を吸収する。具体的には、供給側吸収室44のZ2方向側に設けられた第1コンプライアンス51および供給側吸収室44のZ1方向側に設けられた第2コンプライアンス52が、圧力室Cから吸収室44に伝搬した液体の振動に応じて撓むことによって、液体の振動を吸収する。図3に示すように、圧力室Cと供給側吸収室44とは、Z軸方向において同じ位置に、X軸方向において互いに隣接して設けられている。この隣接した位置に、すなわちより近い位置に設けられた第1コンプライアンス51により、圧力室Cから伝搬した液体の振動を効果的に吸収することができる。
【0071】
また、第2コンプライアンス52のコンプライアンス能力は、第1コンプライアンス51のコンプライアンス能力より高い。このため、第1コンプライアンス51と比較して圧力室Cからの距離が遠い第2コンプライアンス52においても、液体の振動を効果的に吸収することができる。
【0072】
なお、振動が伝わりやすい位置にある圧力室Cの圧電素子20に近い方が、振動が伝わりやすいため、吐出の振動吸収だけを考えれば、本来第1コンプライアンス51のコンプライアンス能力を大きくしておく方が好ましい。しかし、コンプライアンス能力が高いということは、振動吸収のためにコンプライアンス自身がよく振動する(この振動を「追従振動」という)ということである。
【0073】
このため、あるタイミングでの吐出に由来する振動を吸収するために第1コンプライアンス51が追従振動している間に、次のタイミングで吐出が行われてしまい、その吐出に対して追従振動が影響を及ぼし、吐出特性に好ましくない影響を与える虞がある。ゆえに、上記第1実施形態では、敢えて第1コンプライアンス51は第2コンプライアンス52よりもコンプライアンス能力を落とし、相対的に圧電素子20から離れており追従振動が生じにくい第2コンプライアンス52を追加することで、吐出の振動吸収と連続吐出時の特性低下抑制の両方を達成させることができる。
【0074】
図7は、上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10において、圧力吸収の効果を説明する図である。図7において、第1実施形態を実線で示し、比較形態を破線で示している。図7は、圧力吸収を等価回路モデルとして考え、供給側共通流路41と個別流路42との境界に設けられる流路絞り直後における圧力を計算したものである。比較形態は、供給側共通流路41の底面のみにコンプライアンスが設けられる形態である。図5に示すように、上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10では、比較形態と比較して、全体的に圧力値が小さく、圧力吸収の効果がより向上していることが確認できる。
【0075】
さらに、上記第1実施形態では、重複部11および第2重複部14が設けられている。例えば、重複部11および第2重複部14が設けられておらず、上下のコンプライアンスがZ軸方向から見たときに重ならない位置に配置されていると、X軸方向(横方向)のサイズが大きくなる。この点、上記第1実施形態では、上下のコンプライアンスの少なくとも一部がZ軸方向から見たときに重なるように配置されているため、X軸方向(横方向)のサイズが大きくなることを抑制できる。すなわち、上記第1実施形態では、サイズアップ抑制と振動吸収双方の観点において優れた液体吐出ヘッド10とすることができる。
【0076】
更に、重複部11、重複部14が設けられていることで、振動の吸収を好適に抑えることができる。例えば、接続領域A1において第1コンプライアンス51が設けられているものの、第2コンプライアンス52が設けられていない場合、第1コンプライアンス51と対向するZ1側では撓みは生じないため、例えZ2側で第1コンプライアンス51が撓むことにより圧力を多少吸収することができたとしても、Z1側ではその作用を得られず、接続領域A1全体でみると十分に振動を吸収することができない虞があった。第1実施形態のように、接続領域A1のZ1側、Z2側の両方にコンプライアンスを配置することで、好適に振動を吸収することが可能となる。
【0077】
すなわち、上記第1実施形態では、サイズアップ抑制と振動吸収双方の観点において優れた液体吐出ヘッド10とすることができる。
【0078】
上記第1実施形態では、第2重複部14のX軸方向の幅W4は、重複部11のX軸方向の幅W3よりも小さい。重複部11では、上下で減衰しあうのでその減衰効果はコンプライアンスが上下のうち片方だけしかないときよりも強い。このため、供給側については、排出側よりも重複部11を大きくしておくことで、さらに減衰効果を高めることができる。
【0079】
排出側については、ノズルNから吐出された後の比較的圧力の小さい液体が流通する部位であり、供給側ほどの減衰効果を求める必要性がない。むしろ、不要にコンプライアンスを大きくすることは無駄に流路壁面を振動させることに繋がり、かえって流路内の液体の流れを不要に阻害することになり好ましくない。第2重複部14のX軸方向の幅W4を、重複部11のX軸方向の幅W3よりも小さくしておくことで、上記問題を解消し好適な構成とできる。また、第3コンプライアンス53のコンプライアンス能力を、第1コンプライアンス51のコンプライアンス能力より小さくすることで、同様に、不要にサイズアップしてしまうことを抑制できる。
【0080】
上記第1実施形態では、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を、例えば、フォトレジストによるマスキングを利用したエッチング等の既知の方法を用いて作成することができる。例えば、第1凹部75内の圧電素子20を含むアクチュエーターを構成する各部材を形成する際に、アクチュエーターを構成する各部材を形成するのと同様の方法を用いて、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を構成する各部材を形成できる。アクチュエーターを構成する部材を用いて第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を簡易に製造できる。また、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を構成する部材とアクチュエーターを構成する部材とを、同様の製造方法によって製造することによって、液体吐出ヘッド10の製造工程をより簡略化できる。
【0081】
B.第2実施形態:
次に、本開示の第2実施形態について、図8を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と実質的に同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。第2実施形態の液体吐出ヘッド10は、上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10に対して、第1コンプライアンス51が、Y軸方向において複数(本実施形態では2つ)に分割されている点が異なっている。
【0082】
図8は、第2実施形態において、液体吐出ヘッド10の圧力室Cおよび供給側の部位を模式的に示す平面図である。図8に示すように、第1コンプライアンス51は、上記第1実施形態のように供給側共通流路41のY軸方向の幅に亘って全面をカバーする1枚の振動板24によって単一に構成されるのでなく、Y軸方向に2つに分割された振動板により、2つの分割コンプライアンス55,56を有して構成されている。
【0083】
この構成によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、振動板24が1枚の連続した部材として構成されている場合と比較して、振動板24を圧力室基板23に接着させやすいため、この部位での接着性や保持力を向上させることができたり、サイズを小さくすることで振動板24の撓みを小さくし振動板24の破損をしにくくしたりすることができる。
【0084】
なお、第2コンプライアンス52および第4コンプライアンス54は、圧電素子20から離れているため振動を受けにくく、接着性や保持力はそこまで必要ではない。むしろ、第2コンプライアンス52および第4コンプライアンス54では、上記したようにコンプライアンス能力を大きくしたいため、分割されない状態で配置されるのが好ましい。また、第2コンプライアンス52および第4コンプライアンス54は、破損しにくい材料で形成されているので、破損しにくくするために分割する必要が然程なく、それよりも分割せずにコンプライアンス能力を大きくした方が好ましい。
【0085】
C.他の形態:
(C1)上記各実施形態の液体吐出装置1では、液体吐出ヘッド10に流入した液体が循環する循環ヘッドとしたが、液体が循環しない非循環ヘッドであってもよい。非循環ヘッドの場合、排出側共通流路43を備えないため、第3コンプライアンス53と第4コンプライアンス54は備えず、供給側共通流路41に第1コンプライアンス51と第2コンプライアンス52とを備える構成として実施できる。
【0086】
(C2)上記各実施形態の液体吐出装置1では、供給側および外出側にコンプライアンス51~54を設ける構成としたが、供給側と排出側のうちいずれか一方にのみ、Z方向に対向するコンプライアンスを設けてもよい。
【0087】
(C3)上記各実施形態の液体吐出装置1では、第4コンプライアンス54のコンプライアンス能力は、第3コンプライアンス53のコンプライアンス能力よりも大きいとしたが、必ずしも上記関係でなくてもよい。また、第2コンプライアンス52のコンプライアンス能力の方が、第4コンプライアンス54のコンプライアンス能力よりも小さくてもよい。また、第1コンプライアンス51のコンプライアンス能力の方が。第2コンプライアンス52のコンプライアンス能力よりも大きくてもよい。
【0088】
(C4)上記各実施形態の液体吐出装置1において、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53は、振動板24と、第1電極と、圧電体、第2電極を有するものとしたが、振動板24のみで構成してもよいし、第1電極および第2電極の一方を有していなくてもよい。また、第2コンプライアンス52および第4コンプライアンス54と同様に樹脂フィルムで構成してもよい。
【0089】
(C5)上記第1実施形態の液体吐出装置1において、第1コンプライアンス51のY軸方向の幅と、第2コンプライアンス52のY軸方向の幅とは略同じであるとしたが、第2コンプライアンス52のY軸方向の幅は、第1コンプライアンス51のY軸方向の幅よりも長くてもよい。
【0090】
(C6)上記各実施形態の液体吐出装置1において、第1非重複部12および第2非重複部13はなくてもよい。すなわち、Z軸方向に見たとき、第1コンプライアンス51と第2コンプライアンス52とが完全に重複していてもよい。同様に、Z軸方向に見たとき、第2コンプライアンス52と第4コンプライアンス54とが完全に重複していてもよい。
【0091】
(C7)上記各実施形態の液体吐出装置1において、第2重複部14のX軸方向の幅W2は、重複部11のX軸方向の幅W1よりも小さいものとしたが、第2重複部14のX軸方向の幅W2は、重複部11のX軸方向の幅W1以上であってもよい。
【0092】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0093】
(1)本開示の一形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出するための圧力が付与される圧力室と、をそれぞれ有し、第1方向に配列された複数の個別流路と、前記複数の個別流路に共通に連通する共通流路と、前記圧力室の前記第1方向と交差する第2方向の一方側である第1側に設けられ、前記圧力室内の液体に圧力を付与して前記ノズルから液体を吐出させる圧電素子と、を有する液体吐出ヘッドであって、少なくとも前記共通流路のうちの前記複数の個別流路と接続する接続領域の前記第1側に面した位置には、第1コンプライアンスが設けられ、少なくとも前記共通流路のうちの前記接続領域において前記第2方向の他方側であって前記第1側と反対の第2側に面した位置には、前記第1コンプライアンスと異なる第2コンプライアンスが設けられ、前記第2方向からみたとき、前記第1コンプライアンスと前記第2コンプライアンスは、一部が重なる重複部を有することを特徴とする。
この形態によれば、共通流路のうちの複数の個別流路と接続する接続領域において、第1コンプライアンスと第2コンプライアンスとが、第2方向から見たときその一部が重なるように設けられる。このため、十分な振動吸収が可能になるとともに、液体吐出ヘッドのサイズアップを抑制できる。
【0094】
(2)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2コンプライアンスのコンプライアンス能力は、前記第1コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも大きくてもよい。この形態によれば、第2コンプライアンスのコンプライアンス能力は、第1コンプライアンスのコンプライアンス能力より大きいため、第2コンプライアンスにおいて、液体の振動を効果的に吸収することができる。
【0095】
(3)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2コンプライアンスのヤング率は、前記第1コンプライアンスのヤング率よりも小さくてもよい。この形態によれば、第2コンプライアンスのコンプライアンス能力を、第1コンプライアンスのコンプライアンス能力より大きくできる。
【0096】
(4)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2コンプライアンスの前記第2方向の厚さは、前記第1コンプライアンスの前記第2方向の厚さよりも薄くてもよい。この形態によれば、第2コンプライアンスのコンプライアンス能力を、第1コンプライアンスのコンプライアンス能力より大きくできる。
【0097】
(5)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2コンプライアンスの幅であって前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向の幅は、前記第1コンプライアンスの前記第3方向の幅よりも大きくてもよい。この形態によれば、第2コンプライアンスのコンプライアンス能力を、第1コンプライアンスのコンプライアンス能力より大きくできる。
【0098】
(6)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2コンプライアンスの前記第1方向の幅は、前記第1コンプライアンスの前記第1方向の幅よりも大きくてもよい。この形態によれば、第2コンプライアンスのコンプライアンス能力を、第1コンプライアンスのコンプライアンス能力より大きくできる。
【0099】
(7)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1コンプライアンスは、前記第1方向に複数に分割されていてもよい。この形態によれば、第1コンプライアンスの接着性や液体吐出ヘッドにおける保持力を向上させることができる。
【0100】
(8)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2コンプライアンスは、前記第1方向に複数に分割されていなくてもよい。この形態によれば、第2コンプライアンスの部材構成が容易にできるとともに、コンプライアンス能力を大きくできる。
【0101】
(9)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室と前記第1コンプライアンスとの前記第2方向に沿った距離は、前記圧力室と前記第2コンプライアンスの前記第2方向に沿った距離よりも小さくてもよい。この形態によれば、第1コンプライアンスを、第2コンプライアンスよりも、圧力室からの距離が短い構成とできる。
【0102】
(10)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2方向からみたとき、前記第1コンプライアンスは、前記第2コンプライアンスと重ならない第1非重複部を更に有し、前記第2方向からみたとき、前記第2コンプライアンスは、前記第1コンプライアンスと重ならない第2非重複部を更に有してもよい。
【0103】
(11)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2方向からみたときの前記第1非重複部の面積は、前記第2方向からみたときの前記第2非重複部の面積よりも狭くてもよい。
【0104】
(12)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記共通流路は、前記複数の個別流路に液体を供給する供給側共通流路と、前記複数の個別流路から液体を排出する排出側共通流路と、を含み、前記第1コンプライアンスおよび前記第2コンプライアンスは、前記供給側共通流路に設けられ、少なくとも前記排出側共通流路のうちの前記複数の個別流路と接続する第2接続領域の前記第1側に面した位置には、第3コンプライアンスが設けられ、少なくとも前記排出側共通流路のうちの前記第2接続領域の前記第2側に面した位置には、前記第3コンプライアンスと異なる第4コンプライアンスが設けられ、前記第2方向からみたとき、前記第3コンプライアンスと前記第4コンプライアンスは、一部が重なる第2重複部を有してもよい。
【0105】
(13)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3コンプライアンスのコンプライアンス能力は、前記第1コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも小さくてもよい。この形態によれば、圧力室からの距離が遠く、供給側に比べてコンプライアンス能力が必要とされない排出側の第3コンプライアンスのコンプライアンス能力が、供給側の第1コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも小さいため、排出側においてコンプライアンスの設置に伴うサイズアップを抑制できる。
【0106】
(14)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第4コンプライアンスのコンプライアンス能力は、前記第2コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも小さくてもよい。この形態によれば、圧力室からの距離が遠く、供給側に比べてコンプライアンス能力が必要とされない排出側の第4コンプライアンスのコンプライアンス能力が、供給側の第2コンプライアンスのコンプライアンス能力よりも小さいため、排出側においてコンプライアンスの設置に伴うサイズアップを抑制できる。
【0107】
(15)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2重複部の幅であって前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向の幅は、前記重複部の前記第3方向の幅よりも小さくてもよい。この形態によれば、排出側の第2重複部の第3方向の幅が、供給側の重複部の第3方向の幅より小さいため、排出側においてコンプライアンスの設置に伴うサイズアップを抑制できる。
【0108】
(16)本開示の他の形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記第1の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、を有する。この形態によれば、十分な振動吸収が可能になるとともに、液体吐出ヘッドのサイズアップを抑制することができる。
【0109】
また、本開示は、インクジェット方式に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体吐出装置。
【0110】
「液滴」とは、液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、第1液体と第2液体との組み合わせの代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクと反応液との組み合わせのほか、以下のものが挙げられる。
(1)接着剤の主剤および硬化剤
(2)塗料のベース塗料および希釈剤や、クリア塗料および希釈剤
(3)細胞用インクの細胞を含有する主溶媒および希釈溶媒
(4)金属光沢感を発現するインク(メタリックインク)のメタリックリーフ顔料分散液および希釈溶媒
(5)車両用燃料のガソリン・軽油およびバイオ燃料
(6)薬品の薬主成分および保護成分
(7)発光ダイオード(LED)の蛍光体および封止材
【0111】
さらに、本開示は、上述した液体吐出ヘッド、液体吐出装置としての形態に限らず、液体吐出システムや、液体吐出装置を備える複合機等の種々の態様で実現可能である。
【符号の説明】
【0112】
1…液体吐出装置、2…液体容器、3…キャリッジ、4…キャリッジ搬送機構、4a…搬送ベルト、5…媒体搬送機構、5a…搬送ローラー、6…リニアエンコーダー、7…駆動回路、8…循環機構、10…液体吐出ヘッド、11…重複部、12…第1非重複部、13…第2非重複部、14…第2重複部、15,16,20…圧電素子、21…ノズル基板、22…連通板、23…圧力室基板、24…振動板、25…封止板、26…ケース、30…制御部、31…CPU、32…駆動信号生成回路、35…記憶部、36…ROM、37…RAM、41…供給側共通流路、42…個別流路、43…排出側共通流路、44…供給側吸収室、45…排出側吸収室、51…第1コンプライアンス、52…第2コンプライアンス、53…第3コンプライアンス、54…第4コンプライアンス、55,56…分割コンプライアンス、61,62,63…供給側液室部、65…第1連通流路、66…第2連通流路、67…第3連通流路、71,72,73…排出側液室部、75…第1凹部、76…第2凹部、77…第3凹部、78…貫通孔、82…回収流路、83…ポンプ、A1…接続領域、A2…第2接続領域、C…圧力室、D1…距離、D2…距離、N…ノズル、PA…印刷用紙
図1
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