(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033149
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、および液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240306BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41J2/14 307
B41J2/14 613
B41J2/14 607
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136574
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 優
(72)【発明者】
【氏名】鷹合 仁司
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 貴公
(72)【発明者】
【氏名】平井 栄樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EC07
2C056EC37
2C056HA05
2C057AF01
2C057AF10
2C057AF34
2C057AG12
2C057AG29
2C057AG33
2C057AG40
2C057AG44
2C057AG75
2C057AM17
2C057AM18
2C057AQ01
2C057AQ02
2C057AQ03
2C057AQ06
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】吐出特性を維持するため圧力室への素早い液体の充填が必要であったり、ヘッド自体の小型化の要求があったり等、種々の課題を解決可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体を吐出するノズルが設けられたノズル基板と、ノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室と、圧力室よりも上流側に隣接し、圧力室内の液体に圧力が付与された際に発生する液体の振動を吸収する吸収室と、を有する圧力室基板と、圧力室に対応して設けられ、電圧が印加されることで駆動する第1圧電素子と、吸収室に対応して設けられ、電圧が印加されることで第1圧電素子と独立して駆動する第2圧電素子と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルが設けられたノズル基板と、
前記ノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室と、前記圧力室よりも上流側に隣接し、前記圧力室内の液体に圧力が付与された際に発生する液体の振動を吸収する吸収室と、を有する圧力室基板と、
前記圧力室に対応して設けられ、電圧が印加されることで駆動する第1圧電素子と、
前記吸収室に対応して設けられ、電圧が印加されることで前記第1圧電素子と独立して駆動する第2圧電素子と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1圧電素子は、
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極を介して電圧が印加されることにより駆動する第1圧電体と、
前記第1圧電体の駆動によって振動する第1振動板と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2圧電素子は、
前記第1電極および前記第2電極と電気的に分離した第3電極と、
前記第1電極および前記第2電極と電気的に分離した第4電極と、
前記第1圧電体と電気的に分離し、前記第3電極と前記第4電極を介して電圧が印加されることにより駆動する第2圧電体と、
前記第2圧電体の駆動によって振動する第2振動板と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1電極と前記第3電極は、同じ材料で形成され、
前記第2電極と前記第4電極は、同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1振動板と前記第2振動板は、分離しておらず、一続きの部材で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記圧力室基板は、複数の前記圧力室と、前記複数の圧力室に対して共通の1つの前記吸収室と、を有することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1電極は、前記複数の圧力室に対して共通に設けられ、
前記第2電極は、前記複数の圧力室に対して個別に設けられることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第3電極は、前記吸収室において1つのみ設けられ、
前記第4電極は、前記吸収室において1つのみ設けられ、
前記第2圧電体は、前記吸収室において1つのみ設けられることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第3電極は、前記吸収室において1つのみ設けられ、
前記第4電極は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられ、
前記第2圧電体は、前記吸収室において1つのみ設けられることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第3電極は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられ、
前記第4電極は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられ、
前記第2圧電体は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方に電圧を印加する第1駆動回路と、
前記第3電極と前記第4電極の少なくとも一方に電圧を印加する第2駆動回路と、
を更に有することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第1駆動回路は、第1タイミングにおいて、前記圧力室を収縮させ、
前記第2駆動回路は、前記第1タイミングよりも後の第2タイミングにおいて、前記吸収室を膨張させることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記第1駆動回路は、前記第2タイミングにおいて、前記圧力室を膨張させることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記第1駆動回路は、第1タイミングにおいて、前記圧力室を収縮させ、
前記第2駆動回路は、前記第1タイミングにおいて、前記吸収室を収縮させることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記第1駆動回路は、第1タイミングにおいて前記圧力室を収縮させ、
前記第2駆動回路は、前記第1タイミングよりも前の第3タイミングで前記吸収室を膨張させることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッド、および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の液体吐出ヘッドでは、圧力室と圧力室内の液体の振動を吸収する吸収室とが、互いに別基板の離間した位置に設けられているため、圧力室における液体振動の吸収効率が低い。これに対し同一の基板の近接する位置に圧力室と吸収室を設けることが検討されている。このとき吸収室には少なくとも振動板を設け、その振動板が圧力変動に応じて振動することで該圧力変動を減衰させ、隣の圧力室等で圧力変動が伝わることを抑制し、吐出特性低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、液体吐出ヘッドにおいては、その他、吐出特性を維持するため圧力室への素早い液体の充填が必要であったり、ヘッド自体の小型化の要求があったり等、種々の課題が生じていた。このような種々の課題を解決可能な液体吐出ヘッドの提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1の形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルが設けられたノズル基板と、前記ノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室と、前記圧力室よりも上流側に隣接し、前記圧力室内の液体に圧力が付与された際に発生する液体の振動を吸収する吸収室と、を有する圧力室基板と、前記圧力室に対応して設けられ、電圧が印加されることで駆動する第1圧電素子と、前記吸収室に対応して設けられ、電圧が印加されることで前記第1圧電素子と独立して駆動する第2圧電素子と、を有する。
【0007】
本開示の第2の形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記第1の形態における液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態としての液体吐出装置の概略構成を示す説明図である。
【
図4】液体吐出ヘッドの断面図であって、
図3におけるIV-IV線断面図である。
【
図5】液体吐出ヘッドの断面図であって、
図3におけるV-V線断面図である。
【
図6】液体吐出ヘッドの断面図であって、
図3におけるVI-VI線断面図である。
【
図7】液体吐出時における第1圧電素子および第2圧電素子の動作を模式的に説明する説明図である。
【
図8】液体吐出時における第1圧電素子および第2圧電素子の動作を模式的に説明する説明図である。
【
図9】本開示の第2実施形態における、液体吐出ヘッドの断面図である。
【
図10】本開示の他の形態における、液体吐出ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.液体吐出装置1の構成:
図1は、本開示の第1実施形態としての液体吐出装置1の概略構成を示す説明図である。本実施形態において、液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを印刷媒体である印刷用紙PA(以下、単に「用紙PA」という)に吐出して画像を形成するインクジェット式プリンターである。液体吐出装置1は、用紙PAに代えて、樹脂フィルム、布帛等の任意の種類の媒体を、インクの吐出対象としてもよい。
【0010】
液体吐出装置1は、インクを吐出する液体吐出ヘッド10、インクを貯留する液体容器2、液体吐出ヘッド10を搭載するキャリッジ3、キャリッジ3を搬送するキャリッジ搬送機構4、用紙PAを搬送する媒体搬送機構5、及び、制御部30を備える。制御部30は、液体の吐出を制御する制御部である。
【0011】
液体容器2の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器2に貯留されるインクの種類は任意である。液体吐出装置1は、例えば、4色のインクに対応して複数の液体容器2を備える。4色のインクとしては、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、及び、ブラックがある。液体容器2は、キャリッジ3に搭載されるものでもよい。
【0012】
液体吐出装置1は、インクを循環させる循環機構8を備える。循環機構8は、液体吐出ヘッド10にインクを供給する供給流路81と、液体吐出ヘッド10から排出されたインクを回収する回収流路82と、インクを移送するポンプ83と、を含む。
【0013】
キャリッジ搬送機構4は、キャリッジ3を搬送するための搬送ベルト4a及びモーターを有する。媒体搬送機構5は、用紙PAを搬送するための搬送ローラー5a及びモーターを有する。キャリッジ搬送機構4及び媒体搬送機構5は、制御部30によって制御される。液体吐出装置1は、媒体搬送機構5によって用紙PAを搬送させながら、キャリッジ搬送機構4によってキャリッジ3を搬送させて、用紙PAにインク滴を吐出して印刷する。
【0014】
図2は、液体吐出装置1を示すブロック図である。液体吐出装置1は、
図2に示すように、リニアエンコーダー6を備える。キャリッジ3の位置を検出可能な位置に設けられている。リニアエンコーダー6は、キャリッジ3の位置に関する情報を取得する。リニアエンコーダー6は、キャリッジ3の移動に伴って、制御部30にエンコーダー信号を出力する。
【0015】
制御部30は、1又は複数のCPU31を含む。制御部30は、CPU31の代わりに、又は、CPU31に加えて、FPGAを備えるものでもよい。制御部30は、記憶部35を含む。記憶部35は、例えばROM36及びRAM37を備える。記憶部35は、EEPROM、又はPROMを備えていてもよい。記憶部35は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgを記憶できる。記憶部35は、液体吐出装置1の制御プログラムを記憶する。
【0016】
CPUは、Central Processing Unitの略称である。FPGAは、field-programmable gate arrayの略称である。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称である。PROMは、Programmable ROMの略称である。
【0017】
制御部30は、液体吐出装置1の各部の動作を制御するための信号を生成する。制御部30は、印刷信号SI及び波形指定信号dComを生成できる。印刷信号SIは、液体吐出ヘッド10の動作の種類を指定するためのデジタル信号である。印刷信号SIは、圧電素子11に対して駆動信号Comを供給するか否かを指定できる。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するデジタル信号である。駆動信号Comは、圧電素子11を駆動するためのアナログ信号である。
【0018】
液体吐出装置1は、駆動信号生成回路32を備える。駆動信号生成回路32は、制御部30と電気的に接続されている。駆動信号生成回路32は、DA変換回路を含む。駆動信号生成回路32は、波形指定信号dComにより規定される波形を有する駆動信号Comを生成する。制御部30は、リニアエンコーダー6からエンコーダー信号を受信すると、駆動信号生成回路32に、タイミング信号PTSを出力する。タイミング信号PTSは、駆動信号Comの生成タイミングを規定する。駆動信号生成回路32は、タイミング信号PTSを受信するごとに、駆動信号Comを出力する。
【0019】
第1駆動回路7a、第2駆動回路7bは、制御部30及び駆動信号生成回路32と電気的に接続されている。第1駆動回路7aは、印刷信号SIに基づいて、駆動信号Comを第1圧電素子11に供給するか否かを切り替える。第2駆動回路7bは、印刷信号SIに基づいて、駆動信号Comを第2圧電素子12に供給するか否かを切り替える。駆動信号生成回路32は、第1駆動回路7aと第2駆動回路7bに対して、それぞれの駆動振動を生成する。なお、第1圧電素子11および第2圧電素子の構成および動作についての詳細は後述する。各駆動回路7a,7bは、制御部30から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHに基づいて、駆動信号Comが供給される圧電素子11,12を選択できる。ラッチ信号LATは、印刷データImgのラッチタイミングを規定する。チェンジ信号CHは、駆動信号Comに含まれる駆動パルスの選択タイミングを規定する。
【0020】
制御部30は、液体吐出ヘッド10によるインクの吐出動作を制御する。制御部30は、第1圧電素子11を駆動することにより、圧力室C内のインクの圧力を変動させて、ノズルNからインクを吐出する。また、制御部30は、第2圧電素子12を駆動することにより、インク吐出時における後述する供給側吸収室44内の液体流れを制御する。なお、第1圧電素子11、第2圧電素子12、圧力室C、ノズルN、および供給側吸収室44等の詳細構成については後述する。制御部30は、印刷動作を行う際に、吐出動作を制御する。
【0021】
A2.液体吐出ヘッド10の構成:
次に、液体吐出ヘッド10の構成について説明する。液体吐出ヘッド10は、後述する供給側共通流路41、個別流路42、排出側共通流路43へと液体を循環させる循環方式を採用する。
図3は、液体吐出ヘッド10の一部断面図である。以下の説明において、互いに交差する3方向をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0022】
X軸方向は、
図3における左右方向であり、互いに反対の方向であるX1方向(
図3においては右方向)及びX2方向(
図3においては左方向)を含む。X軸方向は、第3方向の一例である。Y軸方向は、互いに反対の方向であるY1方向及びY2方向を含む。Y1方向は、
図3において、紙面奥行き方向である。Y2方向は、
図3において紙面手前方向である。Y軸方向は、第1方向の一例である。Z軸方向は、
図3における上下方向であり、互いに反対の方向であるZ1方向(
図3においては下方向)及びZ2方向(
図3においては上方向)を含む。Z軸方向は、第2方向の一例である。
【0023】
また、「Z2側」が「第1側」の一例であり、「Z1側」が「第2側」の一例に相当する。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、直交している。Z軸方向は、通常上下方向に沿う方向であるが、Z軸方向は、上下方向に沿う方向でなくてもよい。なお、以下の説明においては、Z1方向を「上」、Z2方向を「下」として説明する場合もある。
【0024】
本明細書では、「供給側」及び「排出側」との用語を用いる場合がある。「供給側」とは、液体の流路に関してノズルNよりも上流側を示す。また、ノズルNよりも上流側に関連するものを「供給側」という場合がある。また、ノズルNよりも下流側に関連するものを「排出側」という場合がある。
【0025】
液体吐出ヘッド10は、ノズル基板21、連通板22、圧力室基板23、振動板24、封止板25、及び圧電素子11,12,13を備える。また、液体吐出ヘッド10は、ケース26、及びCOF60を備える。COFは、Chip on Filmの略称である。さらに、液体吐出ヘッド10は、供給側共通流路41、複数の個別流路42、排出側共通流路43、複数の圧力室C、供給側吸収室44、排出側吸収室45、第1圧電素子11、第2圧電素子12、および第3圧電素子13、を有する。なお、複数の個別流路42および複数の圧力室Cは、Y軸方向に沿って配列されているため、
図3では、それぞれ一つずつのみ表されている。本実施形態では、液体の一例であるインクを吐出する液体吐出ヘッド10について説明する。液体は、インクに限定されず、液体吐出ヘッド10は、その他の液体を吐出することができる。
【0026】
ノズル基板21、連通板22、圧力室基板23、振動板24、封止板25、及びケース26の厚さ方向は、Z軸方向に沿う。ノズル基板21は、液体吐出ヘッド10の底部に配置される。ノズル基板21のZ2方向には、連通板22が配置される。連通板22のZ2方向には、圧力室基板23が配置される。言い換えると、連通板22は、圧力室基板23とノズル基板21の間に設けられる。圧力室基板23のZ2方向には、振動板24が設けられる。振動板24は、例えばSiO2にて形成される。振動板24は、圧力室基板23と別の部材であり、圧力室基板23に接着されることで配置されても良いし、圧力室基板23のZ2方向の表面に熱酸化等の処理が行われることで形成されても良い。
【0027】
振動板24のZ2方向には、封止板25が配置される。封止板25は、振動板24、複数の圧電素子11,12,13、及び圧力室基板23を覆う。ケース26は、封止板25上に配置される。第1圧電素子11は、圧力室Cに対応して設けられている。
【0028】
[流路の説明]
まず、液体吐出ヘッド10内に形成される液体流路について説明する。液体流路は、図示しない供給口および排出口、供給側共通流路41、複数の個別流路42、および排出側共通流路43を含む。供給側共通流路41と各個別流路42との境界Laを、
図3において破線で図示している。なお、供給側共通流路41と各個別流路42との境界Laには、図示しない周知の流路絞りが設けられている。
【0029】
供給側共通流路41は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。供給側共通流路41は、複数の圧力室Cに亘ってY軸方向に連続する。供給側共通流路41は、ケース26に設けられた液室部61、圧力室基板23に設けられた液室部62、及び連通板22に設けられた液室部63を含む。これらの液室部61,62,63は、Z軸方向に連続する。
【0030】
供給側吸収室44は、圧力室CのX1方向に位置する。供給側吸収室44は、圧力室Cの上流に連通する。供給側吸収室44は、供給側共通流路41の一部を構成する。
【0031】
複数の個別流路42は、複数の圧力室Cに対してそれぞれ設けられており、Y軸方向に配列されている。個別流路42は、供給側共通流路41の下流に配置される。個別流路42は、圧力室基板23に設けられた液室部62の下流に連通する。個別流路42は、圧力室Cと、第1連通流路65と、第2連通流路66と、第3連通流路67と、を上流から順に有している。
【0032】
複数の圧力室Cには、第1連通流路65および第2連通流路66を介して複数のノズルNがそれぞれ連通する。各ノズルNは、各圧力室Cに対してZ1方向に位置する。複数の第1連通流路65は、Z軸方向に延在する。複数の第2連通流路66は、第1連通流路65のZ1方向の端部に接続し、X2方向に延在する。ノズルNは、第2連通流路66におけるX軸方向の略中央に位置する。複数の第3連通流路67は、第2連通流路66のX2方向の端部に接続し、Z2方向に延在する。
【0033】
排出側共通流路43は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。排出側共通流路43は、複数の個別流路42に対して共通に連通する。排出側共通流路43は、各個別流路42を介して、各圧力室Cと連通する。排出側共通流路43は、各個別流路42の下流に配置されている。
【0034】
排出側共通流路43は、Y軸方向に連続する。排出側共通流路43は、ケース26に設けられた液室部71、圧力室基板23に設けられた液室部72、及び連通板22に設けられた液室部73を含む。これらの液室部71,72,73は、Z軸方向に連続する。
【0035】
[各基板の説明]
図4~
図6は、液体吐出ヘッドの断面図であって、
図4は、
図3におけるIV-IV線断面図であり、
図5は、
図3におけるV-V線断面図であり、
図6は、
図3におけるVI-VI線断面図である。以下、
図3~
図6を適宜参照して、液体吐出ヘッド10を構成する各基板の構造について説明する。
図3に示すように、ノズル基板21には、ノズル基板21をZ方向に貫通するノズルNが形成されている。上述したように、液体吐出ヘッド10は、このノズルNを介して液体を吐出する。ノズル基板21には、複数のノズルNがY軸方向に沿って複数配列されることによって、ノズル列が形成されている。ノズル基板21は、例えば、ステンレス鋼等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等により形成される。
【0036】
図3、
図5に示すように、圧力室基板23には、供給側液室部62と、供給側吸収室44と、圧力室Cと、排出側吸収室45と、排出側液室部72と、が形成されている。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、ともに、液体の流路の一部を構成する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、X軸方向に延在する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、圧力室基板23をZ軸方向に貫通する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、所定の容積を有する。各吸収室44,45は、複数の圧力室Cに対して共通の1つの部屋として形成されている。すなわち、各吸収室44,45は、Y軸方向に亘って圧力室Cよりも長く設けられている。
【0037】
複数の圧力室Cは、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。複数の圧力室Cは、Y軸方向において、供給側吸収室44および排出側吸収室45と同じ位置に配置されている。Y軸方向において対応する圧力室Cと供給側吸収室44とは、隣接しており、X方向に連通している。供給側液室部62は、ケース26に設けられた液室部61と、連通板22に設けられた液室部63とともに、供給側共通流路41を形成している。
【0038】
本実施形態の圧力室基板23は、シリコン単結晶基板により形成されている。他の実施形態では、圧力室基板23は、例えば、ステンレス鋼(SUS)やニッケル(Ni)などの金属、ジルコニア(ZrO2)あるいはアルミナ(Al2O3)を代表とするセラミック材料 、ガラスセラミック材料、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミン酸(LaAlO3)のような酸化物等によって形成されてもよい。本実施形態では、圧力室Cおよび吸収室44,45は、例えば、圧力室基板23を異方性エッチングによって加工することで形成される。なお、圧力室Cおよび吸収室44,45の機能の詳細については後述する。
【0039】
連通板22は、ノズル基板21と圧力室基板23との間に配置され、接着剤等によってノズル基板21上に固定されている。連通板22は、例えば、シリコン単結晶基板によって形成される。
図3、
図6に示すように、連通板22には、供給側液室部63と、排出側液室部73と、第1連通流路65と、第2連通流路66と、第3連通流路67と、が形成されている。各液室部63,73、第1連通流路65、および第3連通流路67は、連通板22をZ方向に貫通して形成されている。また、第2連通流路66は、連通板22をZ方向に貫通することなく、連通板22の下面が窪んだ部分として形成されている。第2連通流路66において、X軸方向の略中間位置に、ノズルNが接続している。液室部73は、ケース26に形成された液室部71、圧力室基板23に形成された液室部72とともに、排出側共通流路43を形成している。
【0040】
図3に示すように、封止板25は、Z1方向の下面に凹部が設けられた部材である。凹部は、圧力室Cおよび各吸収室44,45のZ2側において、圧力室Cおよび各吸収室44,45に対向する位置に開口している。具体的には、本実施形態の封止板25には、凹部として、第1凹部75と、第2凹部76と、第3凹部77と、が設けられている。
【0041】
第1凹部75は、圧力室Cと対向する位置に開口している。第2凹部76は、供給側吸収室44と対向する位置に開口している。第3凹部77は、排出側吸収室45と対向する位置に開口している。各凹部75,76,77の間は、封止板25の一部として形成された壁部によって隔てられている。なお、本実施形態において、各凹部75,76,77の開口の深さは等しい。すなわち、各凹部75,76,77のZ方向の寸法は等しい。
【0042】
また、各凹部75,76,77は、液体の流路と連通しておらず、凹部75,76,77には液体が流通しない。各凹部75,76,77のX軸方向の幅は、大きい順に第1凹部75、第2凹部76、第3凹部77となっている。
図3、
図4に示すように、第1凹部75、第2凹部76および第3凹部77は、液体吐出ヘッド10のY軸方向の幅に亘って延在する。第2凹部76および第3凹部77のY軸方向の幅は同じである。封止板25のX軸方向の中央部よりもX2方向寄りの位置には、封止板25をZ軸方向に貫通する貫通孔78が設けられている。貫通孔78には、上記COF60が挿入されている。
【0043】
振動板24は、圧力室基板23上に積層されている。圧電素子11,12,13は、振動板24上に積層されている。複数の第1圧電素子11は、第1凹部75内に位置する。第2圧電素子12は、第2凹部76内に位置する。第3圧電素子13は、第3凹部77内に位置する。第1凹部75に位置する圧力室Cに対応する第1圧電素子11は、第1電極51と、第1圧電体52と、第2電極53と、第1振動板54と、がZ1方向へ順に積層されて構成されるアクチュエーターである。第1圧電素子11は、液体吐出用の圧電素子である。第1圧電体52は、第1電極51と第2電極53を介して電圧が印加されることにより駆動する。第1振動板54は、振動板24における中央からX1方向寄りに位置する一部位である。第1電極51は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。第2電極53は、複数の圧力室Cに対応して区切られており、個別に複数設けられている。
【0044】
第2凹部76内に位置する第2圧電素子12は、Y軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続する。第2圧電素子12は、第3電極55と、第2圧電体56と、第4電極57と、第2振動板58と、がZ1方向へ順に積層されて構成されるアクチュエーターである。第3電極55は、第1電極51および第2電極53と電気的に分離している。第4電極57は、第1電極51および第2電極53と電気的に分離している。第2圧電体56は、第1圧電体52と電気的に分離している。第2圧電体56は、第3電極55と第4電極57を介して電圧が印加されることにより駆動する。第2振動板58は、振動板24において、上記第1振動板54よりもさらにX1方向側の端部寄りに位置する一部位である。第1振動板54と第2振動板58とは、分離しておらず、一続きの部材で形成されている。
【0045】
図4に示すように、第2圧電素子12は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。すなわち、第2圧電素子12を構成する第3電極55、第4電極57、および第2圧電体56は、Y軸方向に延びて形成されており、吸収室44においてそれぞれ1つのみ設けられている。なお、第1電極51と第3電極55は、同じ材料で形成されている。第2電極53と第4電極57は、同じ材料で形成されている。
【0046】
第1電極51~第4電極57には、それぞれに異なる配線が電気接続している。なお、
図3においては、これらの配線部の図示は省略している。複数の第2電極53および第4電極57には、図示しない複数のCOM配線が接続されている。複数のCOM配線は、X軸方向に延在し、封止板25の貫通孔78内まで引き出されている。なお、
図3において、COM配線の図示は省略されている。COM配線は、第1電極51よりも低抵抗な導電材料で形成される。例えば、COM配線は、ニクロム(NiCr)で形成された導電膜の表面に金(Au)の導電膜を積層した構造の導電パターンである。
【0047】
本実施形態では、第3凹部77内に位置する第3圧電素子13についても、第1、第2圧電素子と同様に、2つの電極と圧電体とを有する構成である。ただし、第3凹部77内に位置する圧電素子13は、第1,第2圧電素子11,12とは異なり、流路内の液体に圧力を付与するものではなく、振動吸収をするためのものであるため、制御部30とは電気的に接続されていないことが好ましい。
【0048】
A3.動作説明・液体の流れ:
液体容器2内の液体は、ポンプ83によって移送され、供給流路81内を流れて、図示しない供給口を通り、供給側共通流路41に流入する。供給側共通流路41内の液体は、供給側吸収室44を通り、個別流路42の一部を構成する圧力室Cに供給される。圧力室C内の液体の一部は、ノズルNから吐出される。
【0049】
ノズルNから吐出されなかった液体は、第2連通流路66および第3連通流路67、個別流路42の一部を構成する排出側吸収室45を通り、排出側共通流路43に流入する。排出側共通流路43内の液体は、図示しない排出口を通じて、回収流路82内に流入し、液体容器2に回収される。液体吐出ヘッド10では、このように液体が循環される。
【0050】
上述した圧力室Cは、振動板24の振動によって、圧力室C内の液体に圧力を付与する。振動板24は、第1圧電素子11の駆動によって振動する。具体的には、第1圧電体52に電圧が印加されることによって、第1圧電体52のうち第1電極51と第2電極53とによってZ方向に挟まれた部分である能動部に、圧電歪みが生じる。圧電素子11は、この圧電歪みによって、振動板24を撓むように振動させて圧力室の容積を変化させることで、圧力室C内の液体に圧力を付与する。
【0051】
A4.液体吐出制御:
図7、
図8は、液体吐出時における第1圧電素子11および第2圧電素子12の動作を模式的に説明する説明図である。なお、
図7、
図8では、第1振動板54、第2振動板58および電極51,53,55,57等の詳細を省略し、各圧電素子11,12の構成の図示を簡略化して図示している。また、
図7は、後述する第2タイミングにおける態様を示す、
図8は、後述する第1タイミングにおける態様を示す。液体吐出ヘッド10は、上述したように、圧力室Cにおいて液体に圧力を付与することによって、ノズルNから液体を吐出する。以下、本実施形態にて実行する液体吐出制御について、その効果とともに説明する。
【0052】
本実施形態では、第1駆動回路7aは、液体吐出のためのタイミングである第1タイミングにおいて、圧力室Cを収縮させ、第2駆動回路7bは、第1タイミングよりも後の第2タイミングにおいて、供給側吸収室44を膨張させる。第2タイミングは、第1タイミングにおいて第1圧電素子11がZ1方向へ撓んで圧力室Cを収縮させることによりノズルNから液体を吐出した後に、
図7における矢印A1に示すように第1圧電素子11の撓みが元の位置へ戻るときのタイミングである。つまり、第1圧電素子11の撓みがZ2方向へ戻る第2タイミングにおいて、
図7における矢印A2に示すように、第2圧電素子12はZ2方向へ撓んで供給側吸収室44を膨張させる。「第2タイミングにおいて」とは、第1タイミングにおける第1圧電素子11の駆動開始よりも時間的に後であることを意味する。なお、「第2タイミング」は、第1圧電素子11の駆動により圧力室Cが収縮した後、第1圧電素子11が元の状態へ復帰することに伴う圧力室Cの膨張と、供給側吸収室44の膨張とが時間的に重複している状態となるように設定されることが好ましい。
【0053】
以上のように、第2タイミングにおいて、第1圧電素子11と第2圧電素子12とが共にZ2方向へ撓む。このとき、
図7に示すように、第1圧電素子11の動作により、圧力室C内の液体は、矢印A3に示すようにノズルNから圧力室C(個別流路42)への引き込み方向の力と、矢印A4に示すように共通流路41から個別流路42への引き込み方向の力とを受ける。このとき、X軸方向において、矢印A3,A4の大小(A3>A4)として示すように、ノズルNから圧力室Cへの引き込み方向の力は、共通流路41から個別流路42への引き込み方向の力よりも大きい。これは、共通流路41と個別流路42との境界に前述の流路絞りが設けられているため、流路内の液体の流れやすさに差異が生じているためである。すなわち、流路絞りからX2方向へは流れにくく、流路絞りのない第1連通流路65からX1方向へは流れやすい。
【0054】
同様に、第2圧電素子12の動作により、供給側吸収室44内の液体は、矢印A5に示すように個別流路42から共通流路41への引き込み方向の力と、矢印A6に示すように上流流路から共通流路41への引き込み方向の力とを受ける。このとき、X軸方向において、矢印A5,A6の大小(A6>A5)として示すように、上流流路から共通流路41への引き込み方向の力は、個別流路42から共通流路41への引き込み方向の力よりも大きい。
図7において、圧力室Cと供給側吸収室44とを含む流路全体で見たとき、X軸方向において、上記矢印A3~A6に示す力は相殺される。
【0055】
例えば、第2圧電素子12による第2タイミングの駆動がない場合には、矢印A5および矢印A6に示す力は作用せずに、矢印A3,A4に示す力のみが作用する。このとき、ノズルNから圧力室C(個別流路42)への引き込み方向の力(A3)が、共通流路41から個別流路42への引き込み方向の力(A4)よりも大きいために、圧力室C内の液体には、ノズルNから圧力室C(個別流路42)へのX1方向への引き込み力が作用する。すなわち、第1圧電素子11が通常の位置に戻ったときに、ノズルNからの引き込みの量が多いので、この引き込みで空気を引き込んでしまう。このとき、共通流路41から圧力室Cへの引き込みが小さいと、圧力室C内の液体充填に時間を要し、高速吐出での安定駆動に支障を来す虞があった。
【0056】
その点、第1実施形態では、第1タイミングにおいてノズルNからの液体を吐出した後に、第2タイミングにおいて第2圧電素子12を駆動することにより供給側吸収室44を膨張させるため、供給側共通流路41および圧力室C内に液体を満たした状態を作りやすくできる。これにより、リフィル性を向上させることができる。なお、「リフィル性」とは、液体吐出時における圧力室C内への液体の充填性能を意味する。また、ノズルNからの液体吐出の圧力が、供給側共通流路41側へ逃げないようにできるため、吐出性能を安定させることができる。
【0057】
本実施形態では、さらに、第1駆動回路7aは、上記第2タイミングにおいて、圧力室Cを膨張させる。すなわち、上記したように供給側吸収室44の膨張と同じ第2タイミングで圧力室Cを膨張させる。第2タイミングにおいて、第1圧電素子11が自然に元の位置に復帰することに加えて、第1圧電素子11がZ2方向へ積極的に駆動されるため、さらに強い力で共通流路41から圧力室C内へ液体を引き込むことができる。
【0058】
本実施形態では、さらに、第1駆動回路7aは、液体をノズルNから吐出する第1タイミングにおいて、圧力室Cを収縮させ、第2駆動回路7bは、第1タイミングにおいて、供給側吸収室44を収縮させる。すなわち、
図8に示すように、液体吐出の第1タイミングにおいて、供給側吸収室44の第2圧電素子12を矢印A7に示すようにZ1方向へ撓むように駆動させることで、共通流路41から圧力室Cへ液体を押し出す。これにより、吐出時の圧力室Cの収縮に伴う圧力の逃げを抑制して、その後の圧力室C内の液体の充填をしやすくできる。
【0059】
なお、ここで、「第1タイミングにおいて」とは、第1圧電素子11の駆動開始と第2圧電素子12の駆動開始とが完全に同時である場合の他、第1圧電素子11が収縮する時間と、第2圧電素子12が膨張する時間とが重複する任意の場合も含む広い概念を意味する。
【0060】
本実施形態では、さらに、第1駆動回路7aは、第1タイミングにおいて、圧力室Cを収縮させ、第2駆動回路7bは、第1タイミングよりも前の第3タイミングにおいて、供給側吸収室44を膨張させる。すなわち、液体吐出前の第3タイミングにおいて、第2圧電素子12を駆動させ、供給側吸収室44を膨張させる。これにより、控除体積を増すことで、共通流路の上流から圧力室C付近へと液体を引き込むことができ、液体吐出時に液体が圧力室Cへ流れやすいようにできる。すなわち、リフィル性を向上させることができる。
【0061】
上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10および液体吐出装置1によれば、さらに以下の効果を奏することができる。上記第1実施形態では、各圧電素子11,12,13を、例えば、フォトレジストによるマスキングを利用したエッチング等の既知の方法を用いて作成することができる。例えば、第1凹部75内の第1圧電素子11を含むアクチュエーターを構成する各部材を形成する際に、アクチュエーターを構成する各部材を形成するのと同様の方法を用いて、第2圧電素子12および第3圧電素子13を構成する各部材を形成できる。また、アクチュエーターを構成する同じ材料の部材を用いて各圧電素子を簡易に製造できる。
【0062】
上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10および液体吐出装置1によれば、第1電極51と第3電極55は、同じ材料で形成されている。また、第2電極53と第4電極57は、同じ材料で形成されている。このため、それぞれの電極の組み合わせにおいて、同じ製造過程で1つの層として製造できるため、製造過程を簡易にできる。
【0063】
上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10および液室吐出装置によれば、第1振動板54と第2振動板58とは、分離しておらず、一続きの部材で形成されている。このため、分離に伴う製造工程の増加を抑制できる。
【0064】
B.第2実施形態:
次に、本開示の第2実施形態について、
図9を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と実質的に同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。
図9は、本開示の第2実施形態における、液体吐出ヘッドの断面図である。第2実施形態の液体吐出ヘッド10は、上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10に対して、第2圧電素子12を構成する第4電極64が、供給側吸収室44において、複数の圧力室Cに対応して複数設けられている点が異なっている。第3電極55および第2圧電体56については、上記第1実施形態と同様に、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。共通の第3電極55は、0ボルトで接地している。
【0065】
この構成によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、液体を吐出するノズルNに対応するセグメント位置の第2圧電素子12のみを駆動することができるため、第2圧電素子12の駆動により、吐出していないノズルNへ影響が及ぶことを抑制することができる。特に、液体を吐出するノズルNとそうでないノズルNとが存在するパターン印刷などにおいて有効である。
【0066】
C.他の形態:
(C1)上記各実施形態の液体吐出装置1では、液体吐出ヘッド10に流入した液体が循環する循環ヘッドとしたが、液体が循環しない非循環ヘッドであってもよい。
【0067】
(C2)上記第1実施形態の液体吐出装置1における第1圧電素子11を構成する第3電極55、第4電極57、および第2圧電体56は、供給側吸収室44においてそれぞれ1つのみ設けられているものとした。
図10は、本開示の他の形態における、液体吐出ヘッドの断面図である。上記構成に代えて、
図10に示すように、第3電極55、第4電極57、および第2圧電体56を、供給側吸収室44において複数の圧力室Cに対応して複数設けてもよい。
【0068】
(C3)上記各実施形態の液体吐出装置1では、各圧電素子11,12,13は、Z軸方向において、二つの電極に挟まれている構成としたが、電極の一方を省略してもよい。第2圧電素子12を、第1圧電素子11に対して独立して駆動できればよい。
【0069】
(C4)上記各実施形態の液体吐出装置1では、第1電極51と第3電極55は、同じ材料で形成されているとしたが、互いに異なる材料で形成されていてもよい。第2電極53と第4電極57,64についても、同様に互いに異なる材料で形成されていてもよい。
【0070】
(C5)上記各実施形態の液体吐出装置1では、液体吐出制御において、第2タイミングにおいて、供給側吸収室44を膨張させたが、第1タイミングにおいて圧力室Cを収縮させるのみでもよい。その他、第2タイミングにおいて圧力室Cを膨張させる制御や、第3タイミングにおいて供給側吸収室44を膨張させる制御等は、適宜省略してもよい。
【0071】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0072】
(1)本開示の一形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルが設けられたノズル基板と、前記ノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室と、前記圧力室よりも上流側に隣接し、前記圧力室内の液体に圧力が付与された際に発生する液体の振動を吸収する吸収室と、を有する圧力室基板と、前記圧力室に対応して設けられ、電圧が印加されることで駆動する第1圧電素子と、前記吸収室に対応して設けられ、電圧が印加されることで前記第1圧電素子と独立して駆動する第2圧電素子と、を有する。
この形態によれば、圧力室に対応して設けられ電圧が印加されることで駆動する第1圧電素子に対して、吸収室に対応して設けられ電圧が印加されることで独立して駆動する第2圧電素子を有するため、例えば、圧力室への素早い液体の充填が可能となったり、振動吸収のための構成を小さくしてヘッド自体を小型化できたりと、液体吐出ヘッドに関する種々の課題を解決できる。
【0073】
(2)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1圧電素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極を介して電圧が印加されることにより駆動する第1圧電体と、前記第1圧電体の駆動によって振動する第1振動板と、を有してもよい。この形態によれば、吐出用の第1圧電素子を、第1電極、第2電極、第1圧電体、および第1振動板を有する容易な構成として実現できる。
【0074】
(3)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2圧電素子は、前記第1電極および前記第2電極と電気的に分離した第3電極と、前記第1電極および前記第2電極と電気的に分離した第4電極と、前記第1圧電体と電気的に分離し、前記第3電極と前記第4電極を介して電圧が印加されることにより駆動する第2圧電体と、前記第2圧電体の駆動によって振動する第2振動板と、を有してもよい。この形態によれば、第2圧電素子を、第1圧電素子に対して独立して駆動する構成を容易に実現できる。
【0075】
(4)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1電極と前記第3電極は、同じ材料で形成され、前記第2電極と前記第4電極は、同じ材料で形成されていてもよい。この形態によれば、第1電極と第3電極、第2電極と第4電極、の各組み合わせにおいては、同じ製造過程で製造できるため、製造過程を簡易にできる。
【0076】
(5)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1振動板と前記第2振動板は、分離しておらず、一続きの部材で形成されていてもよい。この形態によれば、振動板の分離に伴う製造工程の増加を抑制できる。
【0077】
(6)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室基板は、複数の前記圧力室と、前記複数の圧力室に対して共通の1つの前記吸収室と、を有してもよい。
【0078】
(7)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1電極は、前記複数の圧力室に対して共通に設けられ、前記第2電極は、前記複数の圧力室に対して個別に設けられてもよい。
【0079】
(8)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3電極は、前記吸収室において1つのみ設けられ、前記第4電極は、前記吸収室において1つのみ設けられ、前記第2圧電体は、前記吸収室において1つのみ設けられてもよい。
【0080】
(9)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3電極は、前記吸収室において1つのみ設けられ、前記第4電極は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられ、前記第2圧電体は、前記吸収室において1つのみ設けられてもよい。
【0081】
(10)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3電極は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられ、前記第4電極は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられ、前記第2圧電体は、前記吸収室において前記複数の圧力室に対応して複数設けられてもよい。
【0082】
(11)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方に電圧を印加する第1駆動回路と、前記第3電極と前記第4電極の少なくとも一方に電圧を印加する第2駆動回路と、を更に有してもよい。この形態によれば、第1駆動回路により第1圧電素子を駆動し、第2駆動回路により第2圧電素子を駆動できる。
【0083】
(12)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1駆動回路は、第1タイミングにおいて、前記圧力室を収縮させ、前記第2駆動回路は、前記第1タイミングよりも後の第2タイミングにおいて、前記吸収室を膨張させてもよい。この形態によれば、第1タイミングにおいて液体を吐出した後に、第2タイミングにおいて第2圧電素子を駆動することにより供給側吸収室を膨張させるため、圧力室内に液体を満たした状態を作りやすくできる。これにより、リフィル性を向上させることができる。
【0084】
(13)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1駆動回路は、前記第2タイミングにおいて、前記圧力室を膨張させてもよい。この形態によれば、吸収室を膨張させる第2タイミングにおいて、圧力室を膨張させるため、さらにリフィル性を向上させることができる。
【0085】
(14)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1駆動回路は、第1タイミングにおいて、前記圧力室を収縮させ、前記第2駆動回路は、前記第1タイミングにおいて、前記吸収室を収縮させてもよい。この形態によれば、第1タイミングにおいて、圧力室と吸収室を同時に収縮させるため、吐出時の圧力室収縮に伴う圧力室からの圧力の逃げを抑制できる。
【0086】
(15)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1駆動回路は、第1タイミングにおいて前記圧力室を収縮させ、前記第2駆動回路は、前記第1タイミングよりも前の第3タイミングで前記吸収室を膨張させてもよい。この形態によれば、液体吐出前の第3タイミングにおいて、吸収室を膨張させて控除体積を増すことで、リフィル性を向上させることができる。
【0087】
(16)本開示の他の形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記第1の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、を有する。この形態によれば、十分な振動吸収が可能になるとともに、液体吐出ヘッドのサイズアップを抑制することができる。
【0088】
また、本開示は、インクジェット方式に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体吐出装置。
【0089】
「液滴」とは、液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、第1液体と第2液体との組み合わせの代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクと反応液との組み合わせのほか、以下のものが挙げられる。
(1)接着剤の主剤および硬化剤
(2)塗料のベース塗料および希釈剤や、クリア塗料および希釈剤
(3)細胞用インクの細胞を含有する主溶媒および希釈溶媒
(4)金属光沢感を発現するインク(メタリックインク)のメタリックリーフ顔料分散液および希釈溶媒
(5)車両用燃料のガソリン・軽油およびバイオ燃料
(6)薬品の薬主成分および保護成分
(7)発光ダイオード(LED)の蛍光体および封止材
【0090】
さらに、本開示は、上述した液体吐出ヘッド、液体吐出装置としての形態に限らず、液体吐出システムや、液体吐出装置を備える複合機等の種々の態様で実現可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…液体吐出装置、2…液体容器、3…キャリッジ、4…キャリッジ搬送機構、4a…搬送ベルト、5…媒体搬送機構、5a…搬送ローラー、6…リニアエンコーダー、7a…第1駆動回路、7b…第2駆動回路、8…循環機構、10…液体吐出ヘッド、11…第1圧電素子、12…第2圧電素子、13…第3圧電素子、21…ノズル基板、22…連通板、23…圧力室基板、24…振動板、25…封止板、26…ケース、30…制御部、31…CPU、32…駆動信号生成回路、35…記憶部、36…ROM、37…RAM、41…供給側共通流路、42…個別流路、43…排出側共通流路、44…供給側吸収室、45…排出側吸収室、51…第1電極、52…第1圧電体、53…第2電極、54…第1振動板、55…第3電極、56…第2圧電体、57…第4電極、58…第2振動板、61,62,63…供給側液室部、64…第4電極、65…第1連通流路、66…第2連通流路、67…第3連通流路、71,72,73…排出側液室部、75…第1凹部、76…第2凹部、77…第3凹部、78…貫通孔、81…供給流路、82…回収流路、83…ポンプ、C…圧力室、N…ノズル、PA…印刷用紙