(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003315
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】異種金属接合配管および異種金属配管の接合方法
(51)【国際特許分類】
F16L 13/14 20060101AFI20240105BHJP
B23K 11/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
F16L13/14
B23K11/02 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102369
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000153720
【氏名又は名称】株式会社白山
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 博志
(72)【発明者】
【氏名】山下 英樹
(72)【発明者】
【氏名】稲川 康二
(72)【発明者】
【氏名】八代 健司
【テーマコード(参考)】
3H013
【Fターム(参考)】
3H013FA04
(57)【要約】
【課題】接合部の機械強度が強く、接合部が腐食されにくく、配管内部にバリが突出しないため液体の流通を妨げることがない、異種金属接合配管、および異種金属配管の接合方法を提供する。
【解決策】本発明にかかる異種金属接合配管100は、外径が同じで、内径はアルミニウム配管20が銅配管10より小さい銅配管10と、アルミニウム配管20とを接合した異種金属接合配管100であって、アルミニウム配管20のアルミニウムが接合面近傍の銅配管10内側に伸長して銅配管10の内面と接合し、銅配管10とアルミニウム配管20とを溶接した際に接合面に発生する合金層からなるバリ45が接合面から配管の外側にのみ突出したものである。。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅配管とアルミニウム配管とを接合した異種金属接合配管であって、
前記銅配管と前記アルミニウム配管とを抵抗溶接した際に接合面に発生する合金層がバリとして前記接合面から配管の外側にのみ突出した、異種金属接合配管。
【請求項2】
前記銅配管と前記アルミニウム配管とは、外径が同じで、内径は前記アルミニウム配管が前記銅配管より小さく、
前記アルミニウム配管のアルミニウムが前記接合面近傍の前記銅配管の内側に伸長して前記銅配管の内面と接合した、請求項1記載の異種金属接合配管。
【請求項3】
前記接合面近傍において、バリ除去加工により前記バリが除去された、請求項2記載の異種金属接合配管。
【請求項4】
空調機用配管として用いられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の異種金属接合配管。
【請求項5】
外径が同じで内径はアルミニウム配管が銅配管より小さい、前記銅配管と前記アルミニウム配管とを接合する異種金属配管の接合方法であって、
前記アルミニウム配管または前記銅配管のいずれか一方から他方へ丸棒形状の中子を挿入する中子挿入工程と、
前記銅配管の端部と前記アルミニウム配管の端部とを突き合わせて溶接する溶接工程と、
前記中子を溶接後の異種金属接合配管から取り出す中子取り出し工程と、
前記銅配管と前記アルミニウム配管との接合面近傍の外面のバリを除去するバリ除去工程とを含む、異種金属配管の接合方法。
【請求項6】
前記溶接工程は、2段アプセットによる加熱圧接であって、
前記銅配管の端部と前記アルミニウム配管の端部とを突き合わせて第1の所定時間および第1の所定圧力で加圧するスクイズ工程と、
前記第1の所定圧力を加圧しつつ、通電によるジュール熱を利用して、前記銅配管と前記アルミニウム配管との接合面溶融させる抵抗溶接工程と、
通電を継続した状態で前記第1の所定圧力に加えて、前記第1の所定圧力よりも大きい第2の所定圧力を加える強加圧工程と、
通電を停止し、第2の所定時間、前記第1の所定圧力および前記第2の所定圧力を加え続けるホールド工程と、を含む請求項5に記載の異種金属配管の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配管とアルミニウム配管などの異種金属の配管が接合された異種金属接合配管、および異種金属の配管を接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅配管とアルミニウム配管などの異種金属の配管を接合する方法に関して、多くの技術が開示されている。特許文献1(特開昭60-9591号公報)には、異種金属のパイプ同士をばらつきの少ない状態で接続することのできる異種金属パイプの接続方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の異種パイプの接続方法は、異なる金属材料で作った2種のパイプを設け、これら双方のパイプ内に、各相手方の材料で作った棒を挿着し、双方のパイプの端面同士を当接し、当接部に通電加熱あるいは熱間圧接処理を施してパイプ同士を接続している。
【0004】
また、特許文献2(特開昭52-48542号公報)には、摩擦溶着時において、管内部へ溶融金属が侵入せず、溶解金属は全て両管の外方へ放出され、その後のドリル穿孔が不費になり比較的簡単な設備で容易に溶着ができ不良率の少ない低コストの接合ができる銅管とアルミニウム管の接合方法が開示されている。
【0005】
特許文献2に記載の銅管とアルミニウム管の接合方法では、ほぼ同径よりなる銅管とアルミニウム管の開口端面を当接しこの両管内の当接面に位置して、剥離性のよい芯棒を圧入し、前記両菅の接合面を摩擦溶着する。
【0006】
また、特許文献3(特開2001-334371号公報)には、銅-アルミニウムパイプの共晶接合方法において、パイプの加熱工程や接合終了後の冷却工程における温度条件のばらつきに起因する接合不良を解消する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3に記載の銅-アルミニウムパイプの共晶接合方法は、銅パイプの一端側に形成された先細り状のテーパ部にアルミニウムパイプの一端側開口端部を外嵌めし、両パイプの嵌合部位を加熱して接触部を溶融させ、アルミニウムパイプ内に銅パイプを圧入して共晶接合する方法において、前記両パイプの嵌合部位を拘束治具で径方向外方から拘束し、接触部の軟化溶融前に両パイプに嵌合方向への押込力を予め付与した状態で嵌合部位を加熱することにより、接触部の軟化溶融に伴って前記圧入が開始される。
【0008】
また、特許文献4(特公平6-47178号公報)には、ばりの発生や不完全な圧接状態がなく、機械プレス力を利用するためその量産化も容易となる金属管の冷間圧接方法が開示されている。
【0009】
特許文献4に記載の金属管の冷間圧接方法では、銅-アルミニウム等の異種金属管、または同種金属管の端部を衝合せて両管にわたり内部に芯金を可及的密に挿通し、これら金属管の衝合せ部を含む各金属管をダイス内に拘束して置き、この金属管を軸方向に強圧して前記衝合せ部を冷間圧接する。
【0010】
また、特許文献5(特開昭59-39488号公報)には、多数の管を同時に接合するような場合、加圧装置が不要であるため、容易に作業が実施できる管状製品の拡散接合方法が開示されている。
【0011】
特許文献5の管状製品の拡散接合方法では、第1の管に、それより小口径の第2の管を篏挿し、該篏挿部の第1の管の外表面に第1、第2の管より高温強度が大きく、かつ線膨張係数が第1、第2の管と同等かそれより小さい材料よりなる拘束環を、また該篏挿部の第2の管の内部に第1、第2の管より高温強度が大きく、かつ第1、第2の管より線膨張係数が大きい材料よりなる中子を、設置して、高温に加熱する。
【0012】
また、特許文献6(特開昭53-102249号公報)には、パイプ重ね部分の全面で接合されているため洩れに対する信頼性が高く、更にパイプ肉厚も薄くでき接合後のパリ取り加工が不用のため、安価なパイプ重ね接手の接合方法が開示されている。
【0013】
特許文献6に記載のパイプ重ね接手の接合法では、雄パイプと雄パイプが挿入できるようにパイプ端部を拡管した雌パイプの2本のパイプをはめ合わせ、雄パイプの外壁と雌パイプの内壁の重なった部分を接合するに際し、雄パイプを回転させながら重ね部分の雌パイプを上記雄パイプの外部に設けたダイスにより微量ずつ連続的に縮管させ、雄パイプと雌パイプの接触面が摩擦により発熱し、上記パイプの両方または一方の表面が溶融状態に達した時点で回転を止め、雌パイプを急激にさらに縮管して雄パイプと雌パイプを圧接する。
【0014】
また、特許文献7(特開2000-263250号公報)には、銅とアルミニウムなど異種金属の接合において、配管構造物へ相手材の直接接合が可能で、強度や密封性などの接合信頼性が高く、かつ接合管の端面処理が容易で寸法許容差も大きい事により、より安価な接合方法が開示されている。
【0015】
特許文献7に記載の異種金属の接合法では、合金時共晶凝固現象を示す異種金属を接続する際に、少なくとも一方を周方向にずらし回転させることによって当接面を擦り合わせて密着部を形成させる工程と、前記密着部に共晶融液を生じさせるように何れかの金属が備える低い融点温度近傍になるように予め加熱または後加熱する工程と、冷却によって前記共晶融液を固化させる工程とを備える。
【0016】
また、特許文献8(特開昭56-062685号公報)には、圧接されるべき金属母材の接触面に酸化物や他の汚染物質が存在していても圧接を短時間に確実に行なうことができ、接合部では完全に母材同士による強固な継手が得られる、金属母材を圧接する方法が開示されている。
【0017】
特許文献8に記載の金属母材を圧接する方法は、共晶反応を利用して金属母材を圧接する方法であって、圧接すべき2つの金属母材を該母材の塑性変形応力以下の所定の接触圧力で接触させ、該接触圧力がかけられた状態で接触部を母材の融点以下且つ共晶温度以上の温度に加熱して接合面に共晶反応による共晶融液を生成させる段階と、次に前記接合面に上記圧力より高いアプセット圧力を加えて前記共晶融液を接合面から排除する段階と、を包含する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開昭60-9591号公報
【特許文献2】特開昭52-48542号公報
【特許文献3】特開2001-334371号公報
【特許文献4】特公平6-47178号公報
【特許文献5】特開昭59-39488号公報
【特許文献6】特開昭53-102249号公報
【特許文献7】特開2000-263250号公報
【特許文献8】特開昭56-062685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
エアコン機器では、室外熱交換機の周辺にはアルミニウムまたはアルミニウム合金製の伝熱管が使われ、圧縮機の周辺には銅または銅合金製の冷媒配管が使われることが多い。この場合、アルミニウム管と銅管とを接続するACジョイント(接続構造部)が必要である。
このアルミニウム管と銅管との接合方法としては、拡散接合、バット接合などが用いられているが、接合部分の界面にアルミニウムと銅との金属間化合物からなる共晶層が残り、この共晶層は非常に硬く延性がないため接合部分が脆弱となる。また、金属表面に水滴、銅イオンおよび塩素等の腐食因子が付着すると、腐食因子により金属が酸化反応を起こし、腐食(錆)が発生するが、共晶層が残る場合、接合部分がより腐食されやすくなる。
【0020】
また、バット溶接では、溶接部の中に金属組織上好ましくない欠陥の残留が発生し、伸線中での断線、強度低下がある。これを無くすため、まず小さい力(1次圧力)をかけつつ、材料が十分溶けた時に瞬間的に強力なアプセット力(2次圧力)をかけ、溶融部をバリとして外に出すという2段式圧力(ダブルアプセット)バット溶接方法が用いられることがあるが、配管同士の接合の場合は、バリが配管の内側にも出て、配管内の液体のスムーズが流れを阻害するとの課題もある。
【0021】
特許文献1に記載の異種パイプの接続方法では、配管の内側に出るバリを中ぐり加工で除去しており、追加の工数が発生する点、配管の形状によってはバリの除去が困難になる点で課題がある。
特許文献2に記載の銅管とアルミニウム管の接合方法では、長さの短い銅管とアルミニウム管との接続のみが可能であって、通常はさらに銅管同士、およびアルミニウム管同士の接合が必要になる(第4図参照)。
特許文献3に記載の銅-アルミニウムパイプの共晶接合方法では、接合部の配管の内径が縮小され、配管内の液体のスムーズが流れを阻害する。
特許文献4に記載の冷間圧接方法でも、特許文献2と同様銅管とアルミニウム管の長さが限定されている。
【0022】
特許文献5に記載の管状製品の拡散接合方法では、一方の管の内径が他方の管の外径と一致していないといけない点で、用途が限定されている。
特許文献6に記載のパイプ重ね接手の接合法でも、一方のパイプ端部を拡管しなければいけない、雄パイプを高速で回転させなければいけないなどの課題がある。
特許文献7の異種金属の接合方法でも、一方の管の内径が他方の管の外径と一致していないといけない、他方の間を回転させなければいけない、接合部に固化された共晶融液が残るため、接合部分が脆弱となる可能性がある、などの課題がある。
特許文献8の金属母材を圧接する方法では、段階Eにおいて、大きなアプセット圧力を付加し、接合面間に残留する共晶融液を排出する。この場合、共晶融液は配管の外側と内部の両方に排出され、バリとなる。そして、この内部に排出されて形成されたバリは除去が困難であり、配管内の液体のスムーズが流れを阻害する可能性がある。
【0023】
本発明の主な目的は、上記特許文献の課題を踏まえ、配管に幅広く使用可能で、接合部の機械強度が強く、配管内部にバリが突出しないため液体の流通を妨げることがなく、容易に接合できる、異種金属接合配管、および異種金属配管の接合方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、空調機等の配管に幅広く使用可能で、接合部の機械強度が強く、配管内部にバリが突出しないため液体の流通を妨げることがなく、容易に接合できる、異種金属接合配管、および異種金属配管の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(1)
一局面に従う異種金属接合配管は、銅配管と、アルミニウム配管とを接合した異種金属接合配管であって、銅配管とアルミニウム配管とを抵抗溶接した際に接合面に発生する合金層がバリとして接合面から配管の外側にのみ突出している。
【0025】
この場合、合金層が銅配管とアルミニウム配管との接合面に存在しないか、または一部残留していたとしてもその層の厚さが薄いため、接合部の機械強度が強い。
また、合金層からなるバリが接合面から配管の外側に突出し、配管の内部には突出しないため、配管内部の液体の流通を妨げることがない。
なお、抵抗溶接とは、電流を流し電気抵抗によるジュール熱を発生させ局部的に発熱・溶融させ接合される溶接工法である。
【0026】
(2)
第2の発明にかかる異種金属接合配管は、一局面に従う異種金属接合配管において、銅配管とアルミニウム配管とは、外径が同じで、内径はアルミニウム配管が銅配管より小さく、アルミニウム配管のアルミニウムが伸長して銅配管の内面と接合してもよい。
【0027】
本発明の異種金属接合配管は、アルミニウム配管の内径が銅配管の内径より小さく、配管接合時に、アルミニウムより融点の高い金属で形成され、外径がアルミニウム配管の内径に近い中子が配管の接合部付近に挿入されているため、抵抗溶接時にアルミニウム配管のアルミニウムの一部が銅配管内側に伸長し、銅管の内壁との間で接合面を形成する。
そして、接合面近傍の銅配管内側までアルミニウム配管のアルミニウムが伸長していることによって、銅管とアルミニウム管との間に強い圧接圧力を印加して、接合面に発生する合金層を接合面から配管の外側に突出する際に、この伸長したアルミニウムと中子とが壁となって、合金層の配管内部への突出を防いでいる。
【0028】
(3)
第3の発明にかかる異種金属接合配管は、第2の発明にかかる異種金属接合配管において、接合面近傍において、バリ除去加工によりバリが除去されてもよい。
【0029】
この場合、銅管とアルミニウム管とがスムーズにつながって美観上好ましい。
なお、バリの除去は、まず、バリを押し切り、その後グラインダー等で接合部の外面を滑らかに仕上げる。
【0030】
(4)
第4の発明にかかる異種金属接合配管は、一局面から第3の発明のいずれかにかかる異種金属接合配管において、異種金属接合配管が空調機用配管として用いられてもよい。
【0031】
本発明の異種金属接合配管は、機械的強度、配管内にバリの突出がないこと、美観などの観点で、空調機用配管として好適である。
【0032】
(5)
他の局面に従う異種金属配管の接合方法は、外径が同じで内径はアルミニウム配管が銅配管より小さい、銅配管とアルミニウム配管とを接合する異種金属配管の接合方法であって、アルミニウム配管または銅配管のいずれか一方から他方へ丸棒形状の中子を挿入する中子挿入工程と、銅配管の端部とアルミニウム配管の端部とを突き合わせて溶接する溶接工程と、中子と溶接後の異種金属接合配管から取り出す中子取り出し工程と、銅配管とアルミニウム配管との接合面近傍の外面のバリを除去するバリ除去工程とを含む。
【0033】
この場合、アルミニウム配管の内径に近い中子を銅配管とアルミニウム配管との接合部近傍に挿入した状態で、銅配管の端部とアルミニウム配管の端部とを突き合わせて溶接することによって、アルミニウム配管のアルミニウムを銅配管内側に伸長させている。そして、合金層をバリとして接合面から突出させた際に、この伸長したアルミニウムと中子とが壁となって、合金層の配管内部への突出を防止している。
そして、銅配管とアルミニウム配管との溶接後、中子を取り出し、突出した合金層を主成分とするバリを除去することによって、美観上も好ましいスムーズにつながった異種金属接合配管を完成させている。
【0034】
(6)
第6の発明にかかる異種金属配管の接合方法は、他の局面に従う異種金属配管の接合方法において、溶接工程は、2段アプセットによる加熱圧接であって、銅配管の端部とアルミニウム配管の端部とを突き合わせて第1の所定時間および第1の所定圧力で加圧するスクイズ工程と、第1の所定圧力を加圧しつつ、通電によるジュール熱を利用して銅配管とアルミニウム配管との接合面を溶融させる抵抗溶接工程と、通電を継続した状態で第1の所定圧力に加えて、第1の所定圧力よりも大きい第2の所定圧力を加える強加圧工程と、通電を停止し、第2の所定時間、第1の所定圧力および第2の所定圧力を加え続けるホールド工程と、を含んでもよい。
【0035】
この場合、まずスクイズ工程で銅配管の端部とアルミニウム配管の端部とを塑性変形圧力以下の第1の所定圧力で突き合わせる。
次に溶接工程で、銅配管とアルミニウム配管との間に電流を流して接合面をアルミニウムの融点温度以上の温度に加熱して接合面に合金層からなる溶融層を生成させる。このとき、アルミニウム配管の内径は銅配管の内径に比べて小さいため、溶融したアルミニウムが銅配管内側に伸長して銅配管の内面と接触する。また、銅配管とアルミニウム配管との合計長さは第1の所定圧力により第1の溶接距離だけ短くなる。
次いで、強加圧工程で第1の所定圧力よりも大きい第2の所定圧力を加え、接合面に生成された合金層からなる溶融層を接合面から配管の外側に突出させる。このとき、配管の内側には銅配管の側までアルミニウム配管のアルミニウムが伸長しているため、溶融層は配管の内側には突出しない。
最後に通電を停止した後のホールド工程で、第1の所定圧力および第2の所定圧力を加えた状態で、接合面の温度を下げる。
これらの工程を通じて、接合面における合金層からなる溶融層が配管の外側に突出してバリとなることで接合面の合金層が薄くなるとともに、配管の内側には溶融層が突出しない(バリができない)異種金属配管の接合が実現される。
そして、この接合方法で接合した銅配管とアルミニウム配管との異種金属接合配管は、接合部の機械強度が強く、配管内部がバリで液体の流通を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1(a)は本実施形態の異種金属接合配管の構造の一例を示す模式的断面図であり、
図1(b)は異種金属接合配管の外観写真である。
【
図2】本実施形態の異種金属接合配管と同じ素材の銅板およびアルミニウム板を2段アプセットによる加熱圧接で接合した接合面を観察した光学顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の実施形態の異種金属配管接合の工程を示す模式的フローチャートである。
【
図4】
図4(a)はスクイズ工程における異種金属接合配管の断面図、
図4(b)は溶接工程における異種金属接合配管の断面図、
図4(c)は強加圧工程における異種金属接合配管の断面図、
図4(d)は中子取り出し工程後における異種金属接合配管の断面図、
図4(e)はバリ除去工程後における異種金属接合配管の断面図である。
【
図5】異種金属配管接合を行うための加熱圧接機の原理を示す模式図である。
【
図6】本実施形態の異種金属配管の溶接方法を、横軸を時間にしてグラフ化した模式図である。
【
図8】本実施形態の異種金属接合配管と同じ素材の銅板およびアルミニウム板を2段アプセットによる加熱圧接と同様の方法で接合し、さらに冷間圧接を行った場合の接合面を観察した光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0038】
(異種金属接合配管100の構造と評価結果)
図1(a)は、本発明の実施形態の異種金属接合配管100の構造の一例を示す模式的断面図であり、
図1(b)は異種金属接合配管100の外観写真である。
【0039】
図1(a)において、10は銅配管、20はアルミニウム配管、45は銅配管10とアルミニウム配管20とを抵抗溶接した場合に接合面に発生する金属間化合物を含む溶融層40が突出して形成されたバリ45であり、55は抵抗溶接した際に銅配管10の側までアルミニウム配管20のアルミニウムが伸長して形成されたアルミニウム薄膜55である。
本実施形態の場合、銅配管10は外径6.4mm、内径5.2mm、アルミニウム配管20は外径6.35mm、内径4.3mmである。すなわち配管の肉厚は銅配管10が0.6mm、アルミニウム配管20が約1.0mmであって、アルミニウム配管20の方が約0.4mm厚い。これらの数値はルームエアコン用配管として使用されている一般的な配管の形状の数値である。ただし、本実施形態の異種金属接合配管100は、外径がほぼ同一で、アルミニウム配管20の内径が銅配管10の内径よりも小さければ、上記各配管の寸法に限定されるものではない。なお、
図1は模式図であって、図面の外径、内径等の寸法は説明のために誇張されている。
本実施形態の異種金属接合配管100の接合方法については詳しく後述するが、まずアルミニウムの融点以上の温度に加熱して圧力P1で加圧すると、銅配管10とアルミニウム配管20との接合面に金属間化合物を含む溶融層40が形成されるとともにアルミニウム配管20の内側の層が溶融し、アルミニウム溶融層50として銅配管10の内面に伸長する。
次に銅配管10とアルミニウム配管20とを圧力P2で強加圧すると金属間化合物を含む溶融層40が押し出されて配管の外側に突出する。このとき、通常であれば溶融層40は配管の外側だけでなく内側にも突出するが、本実施形態の場合、溶融層40の内側にはアルミニウム溶融層50が存在し、さらにアルミニウム溶融層50の内側には中子30が存在するため、溶融層40は配管の外側にだけ突出する。
図1(b)の配管の接合部分から突出しているバリ45は溶融層40が突出して形成されたものである。
【0040】
図2は本実施形態の異種金属接合配管100と同じ素材の銅板およびアルミニウム板を2段アプセットによる加熱圧接で接合した接合面を観察した光学顕微鏡写真である。
本実施形態の加熱圧接で接合した場合の接合面には合金層が残ってはいるがその厚さは薄く、機械強度などの点で実用上問題ないレベルであると思われる。
【0041】
(異種金属配管接合方法)
図3は、本実施形態の異種金属配管接合の工程を示す模式的フローチャートである。
図4(a)はスクイズ工程における異種金属接合配管100の断面図、
図4(b)は溶接工程における異種金属接合配管100の断面図、
図4(c)は強加圧工程における異種金属接合配管100の断面図、
図4(d)は中子取り出し工程後における異種金属接合配管100の断面図、
図4(e)はバリ除去工程後における異種金属接合配管100の断面図である。
【0042】
また、
図5は本実施形態の異種金属配管接合に用いる加熱圧接機200の原理を示す模式図、
図6は異種金属配管接合の各工程における通電、加圧、経過時間などの制御パラメータを示す模式図、
図7は
図6のパラメータの一例を示す表である。
【0043】
図3のフローチャートに沿って、本実施形態の異種金属配管接合方法の流れを説明する。
突き合わせ工程(ステップS1):加熱圧接機200(
図5参照)のチップ210にそれぞれ銅配管10とアルミニウム配管20を固定し端面同士を突き合わせる。
中子挿入工程(ステップS2):アルミニウム配管20側から中子30を挿入する。中子30は銅、アルミニウムより融点が高い、丸棒形状の絶縁体、または絶縁を施した鋼鉄である。なお、中子30を先端がテーパー形状を備えた丸棒とし、銅配管10側からアルミニウム配管20側へ挿入するようにしてもよい。
スクイズ工程(ステップS3):銅配管10とアルミニウム配管20とを加圧装置220によって圧力P1で時間T1の間加圧する。この所定の圧力(P1)は、摩擦抵抗を考慮しない状態で、0.25MPa(78N:アルミニウム配管20および銅配管10との接合面の単位面積当たり、7.5N/mm
2 )以上0.35MPa(110N:アルミニウム配管20および銅配管10との接合面の単位面積当たり、10.5N/mm
2 )以下の範囲であることが望ましい。また時間T1は、1sec以上、2sec以下であることが望ましい。
抵抗溶接工程(ステップS4):加熱用電源トランス240によりチップ210間に電流を流し、ジュール熱で銅配管10とアルミニウム配管20との接合面を加熱する。このとき、接合面に合金層からなる溶融層40が生成するとともに、溶融したアルミニウムが接合面近傍の銅配管10の内側に伸長して銅配管10の内面と接触する。抵抗溶接工程は、チップ間隔TD(加熱圧接機200において、銅配管10とアルミニウム配管20とをそれぞれ固定する2つのチップ210の間の距離)が溶接前よりL1短くなったら終了し、次の強加圧工程に移行する。
強加圧工程(ステップS5):加熱用電源トランス240によりチップ210間に電流を流したままの状態で、強加圧装置230でP1より強い圧力P2で加圧する。このとき、接合面にはP1+P2の圧力が印加され、接合面に生成された溶融層40が配管の外側に突出する。接合面の配管の内側には溶融したアルミニウムの層とそのさらに内側には中子30があるため、溶融層40は配管の外側にだけ突出する。強加圧工程は、チップ間隔TD(加熱圧接機200において、銅配管10とアルミニウム配管20とをそれぞれ固定する2つのチップ210の間の距離)がさらにL2短くなったら加熱用電源をオフして、ホールド工程に移行する。圧力P2は、0.50MPa(アルミニウム配管20および銅配管10との接合面の単位面積当たり、752N/mm
2)以上であることが望ましい。
ホールド工程(ステップS6):時間T2の間、圧力P1+P2で加圧した状態を維持する。時間T2は、1sec以上、5sec以下であることが望ましい。ホールド工程後、配管が冷却するまで待機する。なお、本実施の形態においては、ホールド工程という工程を追加しているが、ホールド工程を強加圧工程に含めてもよい。すなわち、強加圧工程において通電切後をホールド工程と称しているのみで、圧力P1+P2で加圧した状態であるからである。
中子取り出し工程(ステップS7):アルミニウム配管20側から中子30を引っ張り出す。このとき、中子30がアルミニウム配管20から外れにくい場合は、中子30をプラスチックハンマー等で軽くたたいてもよい。
バリ除去加工工程(ステップS8):銅配管10とアルミニウム配管20との接合面近傍の外部に形成されたバリ45を押し切り、最後にグラインダー等で接合部の外面を滑らかに仕上げる。
【0044】
図4には、本実施形態の異種金属配管接合方法のいくつかのステップにおける異種金属配管の断面構造を示した。
図4(a)は中子挿入工程(ステップS2)終了時の断面図であり、銅配管10とアルミニウム配管20の端面同士が突き合わされ、アルミニウム配管20側から中子30が銅配管10とアルミニウム配管20の接合面より銅配管10側まで挿入されている。また、本実施形態においては、中子30は外径4mmであり、アルミニウム配管20の基準内径4.35mmとの差は0.35mmである。
図4(b)は抵抗溶接工程(ステップS4)終了時の断面図であり、接合面に合金層からなる溶融層40が生成するとともに、アルミニウム溶融層50が銅配管10の内側に伸長して銅配管10の内面と接触している。このとき、銅配管10とアルミニウム配管20との合計長さはL1だけ短くなり、チップ間隔TDもL1だけ短くなる。
【0045】
図4(c)はホールド工程(ステップS6)終了時の断面図であり、配管を圧力P1+P2で加圧することにより、溶融層40が配管の外側に突出してバリ45となるとともに、アルミニウム溶融層50がアルミニウム薄膜55となる。このとき、銅配管10とアルミニウム配管20との合計長さはほぼ接合前のチップ間隔TDだけ短くなる。
図4(c)では溶融層40がバリ45となって配管の外側に突出している。
図4(d)は中子取り出し工程(ステップS7)終了時の断面図であり、中子30が取り出されている。
図4(e)はバリ除去工程(ステップS8)終了時の断面図であり、接合面の外側のバリ45が除去されている。
【0046】
図5は異種金属配管接合を行うための加熱圧接機200の原理を示す模式図である。加熱圧接機200は、ホールド工程において配管接合部外面のバリ45を押し切るチップ210、チップ210と銅配管10およびアルミニウム配管20とを固定するとともに電流を通電する電極270、固定ブロック250、移動ブロック260、圧力P1を印加する加圧装置220、圧力P2を印加する強加圧装置230、および電極270間に電流を流し、銅配管10とアルミニウム配管20との接合面を加熱する加熱用電源トランス240を備える。加圧装置220はいわゆるエアシリンダであるが、強加圧装置230はエアシリンダのロッドの力を、てこの原理で増倍しており、銅配管10とアルミニウム配管20との接合面に非常に大きな力が印加されるように構成されている。
【0047】
チップ間隔TDは例えば10mm(銅配管10側5mm、アルミニウム配管20側5mm)である。例えばL1=4mm、L2=4.5mmの場合、抵抗溶接工程(ステップS4)終了時にはこのチップ間隔TDが約6mm、通電停止時には約5.5mm、最終段階のチップ間隔TDの理想は0.0mmであるが、バリ45の厚さに相当する約0.2mmになる。
【0048】
図6は本実施形態の異種金属配管の溶接方法を、横軸を時間にしてグラフ化した模式図である。
【0049】
銅配管10およびアルミニウム配管20をそれぞれ電極270に固定し、加圧装置220で圧力P1を印加する(スクイズ工程)。次に加熱用電源トランス240で電極270間に電流を流して銅配管10とアルミニウム配管20との接合面を加熱する。接合面の温度が上昇するにつれて、接合面に合金層からなる溶融層40が形成され、合わせてアルミニウム配管20のアルミニウムが溶融し、銅配管側に伸長してアルミニウム溶融層50が形成される。溶融層40の形成と圧力P1とにより、チップ間隔TDはだんだん短くなる。このチップ間隔TDが溶接前よりL1だけ短くなったら、圧力P1に加えて、強加圧装置230で圧力P2を印加する。このとき、接合面に形成された金属間化合物を含む溶融層40が圧力に押されて配管の外側に突出する。一方で、配管の内側にはアルミニウム溶融層50とさらに中子30があるため、合金層からなる溶融層40は内側には突出しない。
その後、チップ間隔TDがさらにL2短くなったら加熱用電源の電流をオフし、さらにホールド時間T2を経過したら圧力P1と圧力P2とを同時にオフする。強加圧工程で、チップ210は配管接合部外面のバリ45を押し切る。なお、バリ45を押し切るのはホールド工程であってもよい。
【0050】
(実施例)
本実施形態の異種金属配管接続法を用いて、外径6.4mm内径5.2mmの銅配管10と、外径6.35mm内径4.3mmのアルミニウム配管20とを接続した。
接続に用いた主なパラメータを
図7に示す。加熱圧接機200としては、株式会社白山製のBSH-2を用いた。中子30は外径4mmのものを用いた。
本実施の形態において、異種金属接合方法の通電は、オンオフ制御を採用した。なお、オンオフ制御のみならず、スロープ制御、位相制御の1つまたは複数を組み合わせて使用してもよい。
P1は0.3MPa、P2は0.5MPaであって、P1とP2との差は少ないが、P2はてこの原理で力が増倍されており、銅配管10とアルミニウム配管20の接合面の単位面積当たりの押圧力は、P1では9.0N/mm
2であるのに対してP2では752.6N/mm
2と非常に大きくなっている。
【0051】
本実施形態の2段アプセットによる加熱圧接で接合した場合の接合面には合金層が残ってはいるがその厚さは薄く、機械強度などの点で実用上問題ないレベルであると思われる。しかし、本実施形態の加熱圧接で接合した異種金属接合配管100にさらに冷間圧接(常温圧接ともいう)することにより接合面の合金層をさらに薄くすることもできる。
図8には、本実施形態の異種金属接合配管100と同じ素材の銅板およびアルミニウム板を2段アプセットによる加熱圧接と同様の方法で接合し、さらに冷間圧接を行った場合の接合面を観察した光学顕微鏡写真を示した。
図2と
図8とを比較すると、
図8の方が接合面の合金層の厚さが薄くなっており、機械強度などの特性がさらに向上していると思われる。
【0052】
本実施形態では、接合面に形成された金属間化合物を含む溶融層40を強い圧力(P1+P2)を印加することによって接合面から除去し、銅配管10とアルミニウム配管20との間に金属間化合物または/および酸化膜などの少ない接合面を形成することで、機械的強度が強い異種金属配管接合を実現している。
さらに、本実施形態では、外径が同じで、アルミニウム配管20の内径が銅配管10より小さい銅配管10とアルミニウム配管20との溶接において、アルミニウム配管20側から中子30を挿入するとともに、溶接工程時、アルミニウム配管20のアルミニウムを銅配管10側に伸長させアルミニウム溶融層50を形成することによって、金属間化合物を含む溶融層40を配管の外側だけに突出させることで、配管の内側へのバリ45の発生を防止し、配管内の液体の流通が妨げられないようにしている。
本実施形態の異種金属接合配管100は、機械的強度、配管内にバリ45の突出がないこと、美観などの観点で、空調機用配管として好適である。
【0053】
本発明においては、銅配管10が「銅配管」に相当し、アルミニウム配管20が「アルミニウム配管」に相当し、異種金属接合配管100が「異種金属接合配管」に相当し、金属間化合物を含むバリ45が「金属間化合物を含むバリ」に相当し、中子30が「中子」に相当し、時間T1が「第1の所定時間」に相当し、時間T2が「第2の所定時間」に相当し、圧力P1が「第1の所定圧力」に相当し、圧力P2が「第2の所定圧力」に相当する。
【0054】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0055】
10 銅配管
20 アルミニウム配管
30 中子
45 金属間化合物を含むバリ
100 異種金属接合配管