(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033152
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】導波機能付きRFID用カバー及びRFIDタグセット
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20240306BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q13/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136578
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
【テーマコード(参考)】
5J045
5J047
【Fターム(参考)】
5J045AB02
5J045DA08
5J045LA01
5J047AA06
5J047AA14
5J047AB13
5J047EF05
(57)【要約】
【課題】 RFIDタグの耐衝撃性を高めることができる薄型の導波機能付きRFID用カバー及びRFIDタグセットを提供する。
【解決手段】 本発明の導波機能付きRFID用カバー1は、板状アンテナの導波素子20の表面を覆う本体部2と、本体部の側辺から下垂する下垂部3とを備える。RFIDタグ100の少なくとも表面及び側面は絶縁材から成る被覆層11で覆われており、本体部は被膜層を介して導波素子の表面を覆い、下垂部は被膜層を介して導波素子の側面を覆う。本体部、下垂部、被膜層及び導波素子によって空気層を含む結合コンデンサ4が形成される。空気層を含む結合コンデンサと、板状アンテナのコンデンサ93が静電容量結合することにより、RFIDタグのインダクタンスと共振回路を形成する。RFID用カバーに設ける切欠きを調節することでRFIDタグのコイルのミューを変化させて共振周波数を好ましい値に調節できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取装置から送信される電波を受信する板状アンテナと、前記電波に基づいて動作するICチップとを備えるRFIDタグに使用する導体製のカバーにおいて、
前記板状アンテナの導波素子の表面を覆う本体部と、前記本体部の側辺から下垂する下垂部とを備えており、
前記RFIDタグの少なくとも表面及び側面は絶縁材から成る被覆層で覆われており、
前記本体部は前記被膜層を介して前記導波素子の表面を覆い、前記下垂部は前記被膜層を介して前記導波素子の側面を覆うものであり、
前記本体部、前記下垂部、前記被膜層及び前記導波素子によって空気層を含む結合コンデンサが形成されることを特徴とする導波機能付きRFID用カバー。
【請求項2】
前記下垂部の一部に切欠きを備えることを特徴とする請求項1に記載のRFID用カバー。
【請求項3】
前記板状アンテナが板状逆Fアンテナであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導波機能付きRFID用カバー。
【請求項4】
前記板状逆Fアンテナは、第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁基材と、前記第1主面に設けられる第1導波素子と、前記第2主面に設けられる第2導波素子と、前記第2導波素子に一端が電気的に接続される給電部と、前記第1導波素子に一端が電気的に接続され、前記第2導波素子に他端が電気的に接続される短絡部とを備え、前記第1絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部により前記電波を受信するものであり、
前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されており、
前記本体部及び前記下垂部は前記被膜層を介して前記第1導波素子を覆うものであり、
前記空気層を含む結合コンデンサと前記コンデンサが静電容量結合することを特徴とする請求項3に記載の導波機能付きRFID用カバー。
【請求項5】
前記本体部及び前記下垂部が前記被覆層を介して前記第1導波素子を覆った状態で、側面視した場合に前記下垂部の下端と前記第2主面との間に隙間を備えることを特徴とする請求項4に記載の導波機能付きRFID用カバー。
【請求項6】
前記第1絶縁基材が弾性を有する材料から成ることを特徴とする請求項4に記載の導波機能付きRFID用カバー。
【請求項7】
読取装置から送信される電波を受信する板状アンテナと、前記電波に基づいて動作するICチップとを備えるRFIDタグと、前記RFIDタグに使用する請求項1に記載の導波機能付きRFID用カバーとからなるRFIDタグセットにおいて、
前記板状アンテナが板状逆Fアンテナであり、
前記板状逆Fアンテナは、第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁基材と、前記第1主面に設けられる第1導波素子と、前記第2主面に設けられる第2導波素子と、前記第2導波素子に一端が電気的に接続される給電部と、前記第1導波素子に一端が電気的に接続され、前記第2導波素子に他端が電気的に接続される短絡部とを備え、前記第1絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部により前記電波を受信するものであり、
前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されており、
前記本体部及び前記下垂部は前記被膜層を介して前記第1導波素子を覆うものであり、
前記空気層を含む結合コンデンサと前記コンデンサが静電容量結合することを特徴とするRFIDタグセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグの耐衝撃性を高めることができる薄型の導波機能付きRFID用カバー及びRFIDタグセットに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)システムで使用するRFIDタグにはアンテナ及びRFチップが格納されており、リーダ・ライタのアンテナから送信された搬送波をアンテナで受信し、RFチップに記録されている識別データ等を反射波に乗せてリーダ・ライタへ返送することにより、非接触で交信する仕組みになっている。
RFIDタグにはその用途によって耐衝撃性が求められることがある。
例えば特許文献1にはケース内に第1のアンテナと第2のアンテナを格納し、第1のアンテナから放射された電波に第2のアンテナが共振し、増幅させた電波を外部に放射する無線ICタグが開示されている。
特許文献2にはIDタグの周囲を弾性体や耐熱性の材料で覆った球体のIDタグパッケージが開示されている。
特許文献3にはプラスチック等の非導電性のケースに格納したRFタグが開示されている(特許文献3の
図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4778264号公報
【特許文献2】特許第4884383号公報
【特許文献3】特許第6705116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術ではRFチップ及びアンテナの周囲をケースや弾性体等で覆う構造のため、RFIDタグが大型化するという問題や、製造コストが嵩むという問題がある。
また、RFIDタグを設置する位置によっては、位相による通信指向性やインピーダンス整合等のため通信が困難になる場合がある。
【0005】
本発明はこのような問題を考慮して、RFIDタグの耐衝撃性を高めることができる薄型の導波機能付きRFID用カバー及びRFIDタグセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導波機能付きRFID用カバーは、読取装置から送信される電波を受信する板状アンテナと、前記電波に基づいて動作するICチップとを備えるRFIDタグに使用する導体製のカバーにおいて、前記板状アンテナの導波素子の表面を覆う本体部と、前記本体部の側辺から下垂する下垂部とを備えており、前記RFIDタグの少なくとも表面及び側面は絶縁材から成る被覆層で覆われており、前記本体部は前記被膜層を介して前記導波素子の表面を覆い、前記下垂部は前記被膜層を介して前記導波素子の側面を覆うものであり、前記本体部、前記下垂部、前記被膜層及び前記導波素子によって空気層を含む結合コンデンサが形成されることを特徴とする。
また、前記下垂部の一部に切欠きを備えることを特徴とする。
また、前記板状アンテナが板状逆Fアンテナであることを特徴とする。
また、前記板状逆Fアンテナは、第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁基材と、前記第1主面に設けられる第1導波素子と、前記第2主面に設けられる第2導波素子と、前記第2導波素子に一端が電気的に接続される給電部と、前記第1導波素子に一端が電気的に接続され、前記第2導波素子に他端が電気的に接続される短絡部とを備え、前記第1絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部により前記電波を受信するものであり、前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されており、前記本体部及び前記下垂部は前記被膜層を介して前記第1導波素子を覆うものであり、前記空気層を含む結合コンデンサと前記コンデンサが静電容量結合することを特徴とする。
また、前記本体部及び前記下垂部が前記被覆層を介して前記第1導波素子を覆った状態で、側面視した場合に前記下垂部の下端と前記第2主面との間に隙間を備えることを特徴とする。
また、前記第1絶縁基材が弾性を有する材料から成ることを特徴とする。
本発明のRFIDタグセットは、読取装置から送信される電波を受信する板状アンテナと、前記電波に基づいて動作するICチップとを備えるRFIDタグと、前記RFIDタグに使用する請求項1に記載の導波機能付きRFID用カバーとからなるRFIDセットにおいて、前記板状アンテナが板状逆Fアンテナであり、前記板状逆Fアンテナは、第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁基材と、前記第1主面に設けられる第1導波素子と、前記第2主面に設けられる第2導波素子と、前記第2導波素子に一端が電気的に接続される給電部と、前記第1導波素子に一端が電気的に接続され、前記第2導波素子に他端が電気的に接続される短絡部とを備え、前記第1絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部及び前記短絡部により前記電波を受信するものであり、前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子及び前記給電部により構成されるインダクタパターンと、前記第1導波素子、前記第2導波素子及び前記第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、前記電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されており、前記本体部及び前記下垂部は前記被膜層を介して前記第1導波素子を覆うものであり、前記空気層を含む結合コンデンサと前記コンデンサが静電容量結合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では本体部、下垂部、被膜層及び導波素子によって空気層を含む結合コンデンサが形成され、この結合コンデンサと、板状アンテナのコンデンサが静電容量結合することにより、RFIDタグのインダクタンスと共振回路を形成する。
RFIDタグにRFID用カバーを取り付けることでRFID用カバーは導波素子として機能することになるが、インダクタンスが小さくなり、その分だけ共振周波数が高くなってしまう。また、RFID用カバーは被膜層を介して第1導波素子の表面及び側面を覆う構造になっており、RFID用カバーの周囲長は第1導波素子の周囲長よりも常に長くなることから、これも共振周波数を高くする効果がある。したがって、RFID用カバーにおける、RFIDタグのインダクタンスL部分の近傍部分に切欠きを設けてコイルのミューを調節することで共振周波数を好ましい値に調節することができる。
つまり、RFID用カバーがRFIDタグに接近することによってインダクタンスが小さくなり、共振周波数が高くなるので、RFID用カバーに切欠きを設けて、RFID用カバーが接近した時のミューを設定することで周波数を調整できる。
【0008】
RFIDタグにRFID用カバーを取り付けるので、従来のようにRFIDタグをケース内に格納する場合と比較して薄型のRFIDタグセットを得られる。
隙間を設けることで、RFIDタグを金属板等の導体の上に取り付けた場合でも、RFID用カバーが金属板等に接触してショートしてしまう事態を防止できる。
また、第1絶縁基材として発泡スチロール等の弾性を有する材料を用いた場合、RFID用カバーに外力が付加された場合に、隙間を利用して発泡スチロール等が弾性変形できるので、外力によりRFIDタグが損傷する事態を防止でき、RFIDタグの耐衝撃性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】RFIDタグの斜視図(a)、RFID用カバーを取り付けたRFIDタグセットの斜視図(b)及び正面図(c)
【
図2】RFID用カバーの正面図(a)、側面図(b)、平面図(c)、底面図(d)及びA-A線断面図(e)
【
図3】RFIDタグを平面側から見た斜視図(a)、底面側から見た斜視図(b)及びシートの展開図(c)
【
図5】RFID用カバーを取り付けた状態のRFIDタグセットの等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導波機能付きRFID用カバー(以下、単に「RFID用カバー」と表記する場合がある。)の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、RFID用カバー1はRFIDタグ100に使用するカバーである。RFIDタグ100にRFID用カバー1を取り付けることでRFIDタグセット200が構成される。
本実施の形態ではRFIDタグ100の全体、つまり表面、裏面及び前後左右の側面が絶縁材からなる被膜層11で覆われているが、少なくともRFIDタグ100の表面及び側面が被覆層で覆われている必要がある。RFIDタグはベース12の表面に載置されている。
【0011】
RFID用カバー1は例えばステンレス、アルミニウム、鉄、銅及びこれらの合金等の導体製である。RFID用カバー1はRFIDタグ100の落下やRFIDタグ100に対する物体の衝突等、RFIDタグ100に対して何らかの外力が作用した場合のRFIDタグ100の耐衝撃性を高めることができると共にRFIDタグ100のアンテナとして機能する。
【0012】
RFID用カバー1は本体部2と下垂部3とを備える。
本体部2は被膜層11を介して板状アンテナの導波素子(後述する第1導波素子20)の表面を覆う部材である。
下垂部3は本体部2の側辺から下垂する部材であり、被膜層11を介して導波素子(第1導波素子20)の側面を覆うものである。
つまり、
図2(e)に示すようにRFID用カバー1は下方に向かって開口した箱状になっており、その内部にRFIDタグ100の上部を格納する仕組みになっている。
詳しい説明は後述するが、本体部2、下垂部3、被膜層11及び導波素子(第1導波素子20)によって空気層を含む結合コンデンサ4(本明細書において単に「結合コンデンサ4」と表記する場合がある。)が形成される。
【0013】
図3(a)~(c)に示すように、RFIDタグ100は読取装置から送信される電波を受信する板状アンテナ10と、電波に基づいて動作するICチップ80とを備えており、本実施の形態では全体が絶縁材からなる被膜層11で覆われている。更にRFIDタグ100の下面に粘着層(図示略)を設けて、粘着層を介してRFIDタグ100を対象物に貼り付けることにしてもよい。
本実施の形態では板状アンテナの例として板状逆Fアンテナ10を用いて説明する。
板状逆Fアンテナ10は第1導波素子20、第2導波素子30、第1絶縁基材40、給電部50及び短絡部60を備えている。
第1絶縁基材40は、上面(第1主面)及び第1主面の反対側の下面(第2主面)を有する。第1絶縁基材40は例えば略直方体であるがこれに限らない。例えば円盤状であってもよく、あるいは鉛直方向に沿った断面が円弧状に湾曲したものであってもよい。
【0014】
第1導波素子20は第1絶縁基材40の上面に設けられる。第2導波素子30は第1絶縁基材40の下面に設けられる。第1導波素子20及び第2導波素子30はいずれも長方形状であり、アルミ等の金属薄膜のエッチング又はパターン印刷等によって形成される。
第1導波素子20と第2導波素子30は同一形状である。なお、本願において「同一形状」とは、厳密な意味での同一に限られるものではなく、アンテナの構造に起因して僅かな差異が生じる場合も「同一形状」に含むものとする。例えば、後述のICチップ80を第1導波素子20と同一平面上に設ける場合、ICチップ80を配置するために、
図3(a)に示すように例えば四角形状の第1導波素子20の一部に凹部21を設ける必要がある。この場合、第1導波素子20と第2導波素子30の形状は厳密には同一ではない。しかし、第1導波素子20は第2導波素子30と同様の四角形状であるので、第1導波素子20と第2導波素子30は同一形状であるというものとする。
【0015】
給電部50は、第1絶縁基材40の短辺側の側面に設けられ、第2導波素子30に一端が電気的に接続されている。短絡部60は第1絶縁基材40の短辺側の側面に設けられ、第1導波素子20に一端が電気的に接続され、第2導波素子30に他端が電気的に接続されている。
図3(c)に示すように、給電部50及び短絡部60は、第1導波素子20と第2導波素子30とに架け渡されるようにシート70上に互いに平行に設けられる部材である。
なお、給電部50及び短絡部60を第1絶縁基材40の長辺側の側面に設けてもよい。また、給電部50及び短絡部60は互いに並行に設けられなくてもよい。また、給電部50及び短絡部60は第1導波素子20及び第2導波素子30と同時に一体成形してもよい。あるいは、給電部50及び短絡部60を第1導波素子20及び第2導波素子30とは別体に成形した後、各々の端部を第1導波素子20及び第2導波素子30に接合してもよい。
【0016】
第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60は、絶縁性のシート70上に形成されており、第1絶縁基材40の辺の部分で折り曲げられたシート70を介して第1絶縁基材40に貼り付けられている。後ほど詳しく説明するように、片面に第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60が形成された可撓性のシート70を、給電部50及び短絡部60とともに屈曲させて第1絶縁基材40に貼り付けることにより容易に板状逆Fアンテナ10を製造することができる。
【0017】
シート70の材料としては、PET、ポリイミド、ビニールなど可撓性を有する絶縁材料を用いることが可能である。シート70の厚さは特に限定されるものではないが、一般的には数十μm程度である。また、第1導波素子20及び第2導波素子30の表面に絶縁被膜処理を施してもよい。
本実施形態では第1導波素子20及び第2導波素子30をシート70(基材)上に形成しているが、必ずしもシート70上に形成する必要はない。例えば、第1導波素子20及び第2導波素子30を単体で形成してもよい。あるいは、第1導波素子20及び第2導波素子30をシート70上に形成した後で当該シート70を剥がしてもよい。
【0018】
第1絶縁基材40、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60により板状逆Fアンテナ10が構成される。この板状逆Fアンテナ10は読取装置(図示せず)から送信された電波を受信する。第1導波素子20が電波を吸収する場合には第2導波素子30が導体地板として働く。一方、第2導波素子30が電波を吸収する場合には第1導波素子20が導体地板として働く。すなわち、第1導波素子20及び第2導波素子30はRFIDタグ100の使用態様に応じて、導波素子と導体地板のどちらの機能も果たすことが可能である。
【0019】
第1導波素子20はその側辺20a~20fの長さの合計Aがλ/4,λ/2,3λ/4,5λ/8のいずれかになるように設計されている。ここで、λは読取装置から送信される電波の波長である。電波の波長λはRFIDタグ100として使用可能な範囲内であれば特に限定されない。第2導波素子30はその側辺30a~30dの長さの合計Bが合計Aとほぼ等しくなるように設計されている。
【0020】
上記のように、第1導波素子20と第2導波素子30は同一形状であり、第1導波素子20と第2導波素子30の側辺の長さの合計A,Bはλ/4,λ/2,3λ/4,5λ/8のいずれかにほぼ等しい。これにより、板状逆Fアンテナ10の共振周波数を容易に設定することができる。さらに、設置場所の影響を受けることなく(例えば第1導波素子20、第2導波素子30を導体に接触させることなく)、RFIDタグ100を単体で動作させることができる。
なお、第1導波素子20、第2導波素子30の側辺の長さの合計A,Bが上記値のいずれかであれば、第1導波素子20、第2導波素子30の平面形状は長方形状に限られない、例えば、第1導波素子20、第2導波素子30の中心部を切り取ったロ字状にしてもよい。
【0021】
第1絶縁基材40として絶縁体を用いてもよい。これにより、ある程度の大きさの開口面積を確保し、板状逆Fアンテナ10の感度向上を図ることができる。例えば、第1絶縁基材40として発泡スチロールを使用することが可能である。
また、第1絶縁基材40は誘電体であってもよい。第1絶縁基材40として例えば比誘電率が1以上20以下の誘電体を用いてもよい。誘電率が大きい誘電体(例えばセラミック)を用いた場合、コンデンサ93の静電容量が大きくなるため、第1導波素子20及び第2導波素子30の開口面積が小さくなり、RFIDタグ100を小型化することができる。ただし、板状逆Fアンテナ10の利得が小さくなるため、読取装置との間で通信可能な距離(通信距離)が短くなる。数メートル以上といった比較的長い通信距離が必要な場合は、第1絶縁基材40として誘電率が小さい誘電体を用いる。この場合、比誘電率は5以下であることが好ましい。
【0022】
図4に示すように、板状逆Fアンテナ10では読取装置から送信される電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される。この共振回路はインダクタパターンLとコンデンサ93により構成される。ここで、インダクタパターンLは第1導波素子20、短絡部60、第2導波素子30及び給電部50により構成され、コンデンサ93は第1導波素子20、第2導波素子30及び第1絶縁基材40により構成される。この共振回路によって読取装置から送信された電波を板状逆Fアンテナ10が高感度で受信できるようになるため、RFIDタグ100の読み取り性能を向上させることができる。さらに、ICチップ80が生成する電源電圧を高くすることができる。
【0023】
図3(a)に示すように、ICチップ80は第1導波素子20と給電部50との間に設けられている。ICチップ80は第1絶縁基材40の上面側(第1導波素子20と同一平面上)に配置されている。なお、板状逆Fアンテナ10として機能する範囲内であれば、ICチップ80を第1絶縁基材40の側面に配置してもよい。また、ICチップ80に外部電源を接続して、当該外部電源から供給される電圧によりICチップ80が動作するようにしてもよい。
【0024】
ICチップ80は板状逆Fアンテナ10が受信した読取装置の電波に基づいて動作する。具体的には、ICチップ80は、まず、読取装置から送信される搬送波の一部を整流し、ICチップ80自身が動作するために必要な電源電圧を生成する。そして、ICチップ80は生成した電源電圧によって、ICチップ80内の制御用の論理回路を動作させる。また、ICチップ80は読取装置との間でデータの送受信を行うための通信回路等を動作させる。
【0025】
ICチップ80には内部にコンデンサを含むものがあり、また、ICチップ80は浮遊容量を有する。このため、共振回路の共振周波数を設定する際、ICチップ80内部の等価容量を考慮することが好ましい。換言すれば、共振回路はインダクタパターンLのインダクタンス、コンデンサ93の静電容量及びICチップ80内部の等価容量を考慮して設定された共振周波数を有することが好ましい。さらに、後述するように結合コンデンサ4の静電容量も考慮する必要がある。
【0026】
共振回路の共振周波数f[Hz]は、式(1)により与えられる。共振周波数fの値は読取装置から送信される電波の周波数帯域に含まれるように設定される。
【0027】
【0028】
式(1)において、La:インダクタパターンLのインダクタンス、Ca:コンデンサ93の静電容量、Cb:ICチップ80内部の等価容量を意味する。
【0029】
上述の通り、ICチップ80には内部にコンデンサを含むものがあり、また、ICチップ80は浮遊容量を有する。そのため、共振回路の共振周波数fを設定する場合、ICチップ80内部の等価容量Cbを考慮することが好ましい。すなわち、共振回路はインダクタパターンLのインダクタンス、コンデンサ93の静電容量、およびICチップ80の内部の等価容量Cbを考慮して設定された共振周波数fを有することが好ましい。なお、Cbとしては、例えば、使用するICチップ80の仕様諸元の一つとして公表されている静電容量値を用いることができる。
【0030】
ICチップ80内部の等価容量Cbを考慮することで、共振回路の共振周波数fを電波の周波数帯域に精度良く設定することができる。その結果、RFIDタグ100の読み取り性能をさらに向上させることができる。また、ICチップ80が生成する電源電圧をさらに高くすることができる。
【0031】
図5はRFID用カバー1を取り付けた状態のRFIDタグ100の等価回路の一例を示す図である。
上述の通り、RFID用カバー1の本体部2及び下垂部3、被膜層11(絶縁材)及びRFIDタグ100の第1導波素子20によって結合コンデンサ4が形成され、コンデンサ93と静電容量結合することによりRFIDタグ100のインダクタンスと共振回路を形成する。結合コンデンサ4が形成されることでRFID用カバー1が導波機能を有し、第1導波素子20から送受信される電波を導波して読取装置と通信することが可能になる。
【0032】
結合コンデンサ4は第1導波素子20、第2導波素子30及び絶縁基材140で構成されるコンデンサ93と直列に接続される。したがって、コンデンサ93と結合コンデンサ4の合成容量が変化してRFIDタグ100の共振回路の共振周波数が変化する可能性がある。
RFIDタグ100にRFID用カバー1を取り付けることでRFID用カバー1は導波素子として機能することになるが、取り付けることにより共振周波数が高くなってしまう。また、RFID用カバー1は被膜層11を介して第1導波素子20の表面及び側面を覆う構造になっており、これも共振周波数を高くする効果がある。したがって、RFIDタグ100のコイルLのミューを調整して共振周波数を好ましい値に調節することができる。
RFIDタグ100のコイルLのミューを調節する場合、すなわちインダクタンスLのインピーダンス値を調整する場合、例えば
図6に示すように、RFIDタグのインダクタンスL部分の近傍部分の下垂部3の一部に切欠き5を設ければよい。
【0033】
また、RFID用カバー1の形状は板状アンテナ10の導波素子20の形状に応じて変更すればよく、例えば板状アンテナ10の導波素子20の形状が円形・楕円形であればRFID用カバー1の形状も円形・楕円形にすればよく、板状アンテナ10の導波素子20の鉛直方向に沿った断面が円弧状の場合はRFID用カバー1の鉛直方向に沿った断面を円弧状にすればよい。
図1(c)に示すように、RFID用カバー1をRFIDタグ100に取り付けた状態では側面視した場合に下垂部3の下端と第2主面との間に隙間6が形成される。隙間6を設けることで、RFIDタグ100を金属板等の導体の上に取り付けた場合でも、RFID用カバー1が金属板等に接触してショートしてしまう事態を防止できる。また、第1絶縁基材40として発泡スチロール等の弾性を有する材料を用いた場合、RFID用カバー1に外力が付加された場合に、隙間6を利用して発泡スチロール等が弾性変形できるので、外力によりRFIDタグ100が損傷する事態を防止できる。
なお、本実施の形態では板状アンテナとして板状逆Fアンテナ10を用いて説明したが、これに限らず面状の導波素子を備える一般的なF型アンテナにも本発明のRFID用カバー1を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、RFIDタグの耐衝撃性を高めることができる薄型の導波機能付きRFID用カバー及びRFIDタグセットであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0035】
L インダクタパターン
1 導波機能付きRFID用カバー
2 本体部
3 下垂部
4 結合コンデンサ
5 切欠き
6 隙間
10 板状アンテナ(板状逆Fアンテナ)
11 被膜層
12 ベース
20 第1導波素子
21 凹部
30 第2導波素子
40 第1絶縁基材
50 給電部
60 短絡部
80 ICチップ
93 コンデンサ
100 RFIDタグ
200 RFIDタグセット