(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033155
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】火花点火エンジン
(51)【国際特許分類】
F02P 13/00 20060101AFI20240306BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F02P13/00 303Z
F02F1/24 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136581
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 智裕
【テーマコード(参考)】
3G019
3G024
【Fターム(参考)】
3G019KA21
3G024AA01
3G024DA01
(57)【要約】
【課題】タンブル等の筒内流動(混合気の乱れ)を弱めることなく、点火プラグの着火性を向上することが可能な火花点火エンジンを提供する。
【解決手段】火花点火エンジン10は、シリンダヘッド10Bに取り付けられ、先端に、燃焼室10C内に突出する中心電極17a及び接地電極17bを有する点火プラグ17と、シリンダヘッド10Bから点火プラグ17の軸方向に進退自在に設けられ、シリンダヘッド10Bから燃焼室10C内に進出したときに、中心電極17a及び接地電極17bの側方の一部又は全部を覆う風防部材40と、点火プラグ17の点火時期に基づいて、風防部材40を点火プラグ17の軸方向に進退させる駆動機構43とを備える。駆動機構43は、点火プラグ17による点火時に風防部材40をシリンダヘッド10Bから燃焼室10C内に進出させ、点火後に風防部材40を燃焼室10C内からシリンダヘッド10Bに退出させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに取り付けられ、先端に、燃焼室内に突出する中心電極及び接地電極を有する点火プラグと、
前記シリンダヘッドから前記点火プラグの軸方向に進退自在に設けられ、前記シリンダヘッドから前記燃焼室内に進出したときに、前記中心電極及び接地電極の側方の一部又は全部を覆う風防部材と、
前記点火プラグの点火時期に基づいて、前記風防部材を前記点火プラグの軸方向に進退させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記点火プラグによる点火時に前記風防部材を前記シリンダヘッドから前記燃焼室内に進出させ、点火後に前記風防部材を前記燃焼室内から前記シリンダヘッドに退出させることを特徴とする火花点火エンジン。
【請求項2】
前記風防部材は、後端部に接続され、前記点火プラグの軸方向後端側に延びる連結部材を含み、
前記駆動機構は、
クランクシャフトの回転と同期して回転され、前記連結部材を前記点火プラグの軸方向に押し、前記風防部材を進出させるカム山を含む風防用カムシャフトと、
前記風防部材を退出させる方向に付勢するリターンスプリングと、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の火花点火エンジン。
【請求項3】
前記風防部材は、円筒状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の火花点火エンジン。
【請求項4】
前記クランクシャフトに対する前記風防用カムシャフトの回転位相を連続的に変更して、点火時期の進遅角に応じて、前記風防部材の進退タイミングを可変する可変タイミング機構をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の火花点火エンジン。
【請求項5】
前記風防部材を進退する前記風防用カムシャフトのカム山のカムプロフィールは、吸気バルブ及び排気バルブを開閉するカムシャフトのカム山のカムプロフィールよりも狭角に形成されていることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の火花点火エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火プラグを備える火花点火エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気的に火花(スパーク)を発生させる点火プラグ(スパークプラグ)を備え、点火プラグの中心電極と接地電極(側方電極)との間に高電圧を印加して火花放電を起こし、圧縮混合気に点火する火花点火エンジン(SI(Spark Ignition)エンジン)が広く用いられている。
【0003】
火花点火エンジンでは、点火プラグの電極間(プラグギャップ)における火花放電により混合気が着火(点火)して火炎核が生成され、該火炎核から混合気全体(燃焼室全体)に火炎が伝播することにより混合気が燃焼する。
【0004】
一方、混合気の燃焼速度を向上させるため、タンブル(縦渦、シリンダ軸方向旋回流)やスワール(横渦)などの筒内流動(混合気の乱れ)を高めた火花点火エンジンが知られている。例えば、特許文献1には、筒内にタンブル流を生成するとともに、該タンブル流を吸気行程下死点近傍で噴射した燃料で強化することで、点火時期における混合気の乱れを増大させて、混合気の燃焼速度を向上させた火花点火内燃機関が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、タンブル等の筒内流動(混合気の乱れ)が強いと、筒内流動による放電路の吹き消えや火炎核の吹き消え等(消炎作用)により、点火プラグの着火性(着火安定性)が悪化することがある。一方、点火プラグの着火性の悪化を防止(着火性を改善)するため、筒内流動を弱めると、燃焼速度が低下して熱効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、タンブル等の筒内流動(混合気の乱れ)を弱めることなく、点火プラグの着火性(着火安定性)を向上することが可能な火花点火エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る火花点火エンジンは、シリンダヘッドに取り付けられ、先端に、燃焼室内に突出する中心電極及び接地電極を有する点火プラグと、シリンダヘッドから点火プラグの軸方向に進退自在に設けられ、シリンダヘッドから燃焼室内に進出したときに、中心電極及び接地電極の側方の一部又は全部を覆う風防部材と、点火プラグの点火時期に基づいて、風防部材を点火プラグの軸方向に進退させる駆動機構とを備え、駆動機構が、点火プラグによる点火時に風防部材をシリンダヘッドから燃焼室内に進出させ、点火後に風防部材を燃焼室内からシリンダヘッドに退出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンブル等の筒内流動(混合気の乱れ)を弱めることなく、点火プラグの着火性(着火安定性)を向上することが可能となる。すなわち、高い燃焼速度と高い着火性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る火花点火エンジンの全体構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る火花点火エンジンの要部を示す図である。
【
図3】実施形態に係る風防部材の構成を示す図である。
【
図4】DOHCエンジンに適用した場合の駆動機構の模式図である。
【
図5】SOHCエンジンに適用した場合の駆動機構の模式図である。
【
図6】OHVエンジンに適用した場合の駆動機構の模式図である。
【
図7】風防部材のリフト量(風防用カムのカムプロフィール)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
まず、
図1~
図7を併せて用いて、実施形態に係る火花点火エンジン10の構成について説明する。
図1は、火花点火エンジン10の全体構成を示す図である。
図2は、火花点火エンジン10の要部を示す図である。
図3は、風防部材40の構成を示す図である。
図4は、DOHCエンジンに適用した場合の駆動機構43の模式図である。
図5は、SOHCエンジンに適用した場合の駆動機構43’の模式図である。
図6は、OHVエンジンに適用した場合の駆動機構43’’の模式図である。
図7は、風防部材40のリフト量(風防用カム(カム山)44aのカムプロフィール)を示す図である。
【0013】
火花点火エンジン10は、例えば水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。また、火花点火エンジン10は、シリンダ内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。火花点火エンジン10では、エアクリーナ16から吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、火花点火エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量は、エアクリーナ16とスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気管圧力)を検出する圧力センサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0014】
シリンダヘッド10Bには、気筒毎に吸気ポート22と排気ポート23とが形成されている。ここで、吸気ポート22は、タンブルを生成させることができる形状に形成されている。なお、吸気ポート22の形状をタンブルを生成できる形状に形成することに代えて、又は加えて、例えば、吸気ポート22に、該吸気ポート22内で吸気を偏流させて燃焼室10C内にタンブルを生成する気流制御弁を設けてもよい。
【0015】
各吸気ポート22、排気ポート23それぞれには、該吸気ポート22、排気ポート23を開閉する吸気バルブ24、排気バルブ25が設けられている。吸気バルブ24を駆動する吸気カムシャフト28と吸気カムスプロケットとの間には、吸気カムスプロケットと吸気カムシャフト28とを相対回動してクランクシャフト10aに対する吸気カムシャフト28の回転位相(変位角)を連続的に変更して、吸気バルブ24のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構26が配設されている。この可変バルブタイミング機構26により吸気バルブ24の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0016】
同様に、排気カムシャフト29と排気カムスプロケットとの間には、排気カムスプロケットと排気カムシャフト29とを相対回動してクランクシャフト10aに対する排気カムシャフト29の回転位相(変位角)を連続的に変更して、排気バルブ25のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構27が配設されている。この可変バルブタイミング機構27により排気バルブ25の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0017】
なお、可変バルブタイミング機構26、27として、本実施形態では、電磁弁で油圧を調節することにより、カムシャフト28、29の回転位相を変更する方式のものを用いた。なお、このような方式のものに代えて、例えば、電磁クラッチとヘリカル歯車を用いた方式や、駆動機構にDCモータを使用した方式のものを用いてもよい。可変バルブタイミング機構26,27は、後述する電子制御装置50により、火花点火エンジン10の運転状態に応じて駆動される。
【0018】
火花点火エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ(図示省略)により加圧された燃料を各気筒の燃焼室10C内へ直接噴射する。
【0019】
また、各気筒のシリンダヘッド10Bには、混合気に点火する点火プラグ(スパークプラグ)17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。なお、点火プラグ17は公知のものを用いることができる。すなわち、点火プラグ17は、先端に、中心電極17a及び接地電極17bを有している。そして、点火プラグ17は、燃焼室10Cの略中央に中心電極17a及び接地電極17bを突出させた状態でシリンダヘッド10Bに取り付けられる。
【0020】
火花点火エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。より詳細には、火花点火エンジン10では、点火プラグ17の電極間(プラグギャップ)における火花放電により混合気が着火(点火)して火炎核が生成され、該火炎核から混合気全体(燃焼室10C全体)に火炎が伝播することにより混合気が燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管18を通して排出される。
【0021】
排気管18には、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する空燃比センサ19が取り付けられている。空燃比センサ19としては、排気空燃比をリニアに検出することのできるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。なお、空燃比センサ19として、排気空燃比をオン-オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
【0022】
また、空燃比センサ19の下流には排気浄化触媒20が配設されている。排気浄化触媒20は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)及び窒素(N2)に清浄化するものである。
【0023】
上述したエアフローメータ14、空燃比センサ19、圧力センサ30、スロットル開度センサ31に加え、火花点火エンジン10のカムシャフト28、29近傍には、火花点火エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、火花点火エンジン10のクランクシャフト10a近傍には、クランクシャフト10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。カム角センサ32及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。これらのセンサは、電子制御装置(以下「ECU」という)50に接続されている。
【0024】
さらに、ECU50には、火花点火エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、オイルの温度を検出する油温センサ35、及び、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダル操作量センサ36等の各種センサも接続されている。
【0025】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットル13を開閉する電動モータ13aを駆動するモータドライバ等を備えている。
【0026】
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力からエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管圧力、アクセルペダル操作量、混合気の空燃比、及び火花点火エンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、及び、スロットル13(電動モータ13a)等の各種デバイスを制御することにより火花点火エンジン10を総合的に制御する。
【0027】
特に、火花点火エンジン10は、タンブル等の筒内流動(混合気の乱れ)を弱めることなく、点火プラグ17の着火性を向上(改善)する機能を有している。そのため、火花点火エンジン10は、主として、点火プラグ17の電極17a、17bの周囲を覆い得る進退自在な風防部材40と、風防部材40を駆動(進退)する駆動機構43とを備えている。
【0028】
風防部材40は、シリンダヘッド10Bから点火プラグ17の軸方向に進退自在に設けられている。そして、風防部材40は、シリンダヘッド10Bから燃焼室10C内に進出したときに、中心電極17a及び接地電極17bの側方の一部又は全部(少なくとも一部)を覆うことができるように構成されている。なお、本実施形態では、風防部材40として、円筒状(スリーブ状)に形成されているもの(すなわち、側方の全部を覆い得るもの)を用いた。
【0029】
風防部材40の軸方向長さ及び突き出し量は、例えば、電極17a、17bの先端まで覆うことができるように設定される。よって、風防部材40のリフト量(ストローク量)は、例えば、約10~15mm程度に設定されることが好ましい。なお、筒内流動は主として吸気側から排気側に向けて流れるため、吸排気方向(すなわち中心電極17a及び接地電極17bの側方の一部)で筒内流動を遮る構成としてもよい。より詳細には、吸気側からの流動、及び、排気側からの2次流れを遮る構成としてもよい。
【0030】
駆動機構43は、点火プラグ17の点火時期(点火タイミング)に基づいて、風防部材40を点火プラグ17の軸方向に進退させる。より具体的には、駆動機構43は、点火プラグ17による点火時に風防部材40をシリンダヘッド10Bから燃焼室10C内に進出(突出)させ、点火後に風防部材40を燃焼室10C内からシリンダヘッド10Bに退出させる(すなわち、風防部材40をシリンダヘッド10Bに収納する)。
【0031】
より詳細には、風防部材40は、後端部に接続され、点火プラグ17の軸方向後端側に延びる棒状の連結部材41を含んでいる。例えば、4本の棒状の連結部材41それぞれは、先端が、円筒状(スリーブ状)の風防部材40の後端に周方向に沿って等間隔(90°毎)に取り付けられている。また、4本の棒状の連結部材41それぞれの後端には、円環状の後端部材(エンドプレート)42が取り付けられている。なお、円環状の後端部材42の外周に、後述するカム山44aが当接する舌片を突設してもよい。
【0032】
一方、駆動機構43は、クランクシャフト10aの回転と同期して回転され、円環状の後端部材42を点火プラグ17の軸方向に押し、風防部材40を進出させるカム山44aを含む風防用カムシャフト44と、風防部材40を退出(退行)させる方向に付勢するリターンスプリング45とを有している。ここで、風防部材40、連結部材41、円環状後端部材42、及び、風防用カムシャフト44(カム山44a)、リターンスプリング45等は、点火プラグ17やイグナイタ内蔵型コイル21等を避けるように(干渉しないように)配設される。
【0033】
そして、円環状後端部材42がカム山44aによって押下げられることで、風防部材40が燃焼室10C内に進出(突出)される。カム山44aが通過すると、風防部材40は、リターンスプリング45の付勢力により退行される(戻される)。
【0034】
なお、本発明は、例えば、動弁系の形式等に関わりなく、DOHCエンジン、SOHCエンジン、OHVエンジン等、いずれの形式のエンジンにも適用することができる。ここで、
図4に、DOHCエンジンに適用した場合の駆動機構43の模式図を示す。また、
図5に、SOHCエンジンに適用した場合の駆動機構43’の模式図を示し、
図6に、OHVエンジンに適用した場合の駆動機構43’’の模式図を示す。なお、本実施形態では、DOHCエンジンに適用した。
【0035】
より具体的には、
図4に示されるように、風防部材40を駆動(進退)する風防用カムシャフト44の端部に接続された風防用カムスプロケット48と、クランクシャフト10aとの間にタイミングチェーン47が巻回されている。そして、クランクシャフト10aの回転と連動(同期)して、風防用カムスプロケット48(風防用カムシャフト44)が駆動(回転)され、風防部材40が駆動(進退)される。
【0036】
また、火花点火エンジン10は、クランクシャフト10aに対する風防用カムシャフト44の回転位相(変位角)を連続的に変更して、点火時期の進遅角(変化)に応じて、風防部材40の進退タイミングを可変(進遅角)する可変タイミング機構46を備えている。すなわち、例えば、風防部材40を駆動する風防用カムシャフト44と風防用カムスプロケット48との間には、風防用カムスプロケット48と風防用カムシャフト44とを相対回動してクランクシャフト10aに対する風防用カムシャフト44の回転位相(変位角)を連続的に変更して、風防部材40の進退タイミングを進遅角する可変タイミング機構46が配設されている。この可変タイミング機構46により風防部材40の進退タイミングが点火時期の進遅角(変化)に応じて可変される。
【0037】
なお、本実施形態では、可変タイミング機構46として、上述した吸排気バルブ24、25の可変バルブタイミング機構26、27と同様のもの(同様の駆動形式)を採用した。すなわち、可変タイミング機構46として、本実施形態では、電磁弁で油圧を調節することにより、風防用カムシャフト44の回転位相を変更する方式のものを用いた。なお、このような方式のものに代えて、例えば、電磁クラッチとヘリカル歯車を用いた方式や、駆動機構にDCモータを使用した方式のものを用いてもよい。可変タイミング機構46は、ECU50により、火花点火エンジン10の点火時期の進遅角(変化)に応じて駆動される。
【0038】
また、風防部材40をより迅速に進退させるため、風防部材40を進退(駆動)する風防用カムシャフト44のカム山44aのカムプロフィールは、吸気バルブ24及び排気バルブ25を開閉(駆動)するカムシャフト28、29のカム山のカムプロフィールよりも狭角に形成されている。
【0039】
ここで、
図7に、風防部材40のリフト量(風防用カム(カム山)44aのカムプロフィール)を示す。
図7の横軸はクランクアングル(CA)であり、縦軸は風防部材40のリフト量(mm)と筒内流動強度(m/s)である。
図7に示されるように、点火時期付近(前後)で筒内流動が強くなる傾向が見られる。一方、風防用カム44aのカムプロフィールは、点火時期付近(前後)でリフト量が最大になるように設定されている。
【0040】
よって、上述したように構成されることにより、風防用カム44aのカムプロフィールに応じて(すなわち点火時期に応じて)風防部材40が進退される。すなわち、点火プラグ17による点火時(着火時)には、風防部材40が進出(突出)され、点火プラグ17の中心電極17a及び接地電極17bの側方の全部が風防部材40により覆われる。そして、点火プラグ17による着火後は、風防部材40が退行される(戻される)。
【0041】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、点火プラグ17による点火時(着火時)に中心電極17a及び接地電極17bの側方の全部が風防部材40により覆われる。そのため、筒内流動(混合気の乱れ)の影響を受け難くすること(防ぐこと)ができ、放電により生じた火炎核の筒内流動による消炎作用を抑制できる(すなわち、火炎核が吹き消されることを防止できる)。また、点火プラグ17による着火後は風防部材40が退行されるため、火炎伝播を促進する(火炎伝播の遅延を防止する)ことができる。その結果、タンブル等の筒内流動(混合気の乱れ)を弱めることなく、点火プラグ17の着火性を向上(改善)することが可能となる。すなわち、高い燃焼速度と、高い着火性とを両立させることが可能となる。
【0042】
本実施形態によれば、風防部材40が、点火プラグ17の軸方向後端側に延びる連結部材41を含み、駆動機構43が、クランクシャフト10aの回転と同期して回転され、連結部材41を点火プラグ17の軸方向に押し、風防部材40を進出させるカム山44aを含む風防用カムシャフト44と、風防部材40を退出(退行)させる方向に付勢するリターンスプリング45とを有している。そのため、クランクシャフト10aの回転と連動(同期)して、風防部材40をカム駆動(進退)することができる。
【0043】
本実施形態によれば、風防部材40が、円筒状(スリーブ状)に形成されている。そのため、全方位からの筒内流動の影響を受け難くすること(防ぐこと)ができ、放電により生じた火炎核の筒内流動による消炎作用をより効果的に抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、クランクシャフト10aに対する風防用カムシャフト44の回転位相を連続的に変更して、点火時期の進遅角に応じて、風防部材40の進退タイミングを可変(進遅角)する可変タイミング機構46が備えられている。そのため、点火時期の進遅角(変化)に対応して、風防部材40の進退タイミングを可変(進遅角)することができ、より適確に点火プラグ17の着火性を向上することができる。
【0045】
本実施形態によれば、風防部材40を進退する風防用カムシャフト44のカム山44aのカムプロフィールが、吸気バルブ24及び排気バルブ25を開閉するカムシャフト28、29のカム山のカムプロフィールよりも狭角に形成されている。そのため、迅速に風防部材40を進出させることができる。また、点火プラグ17による着火後(火炎核の成長後)は風防部材40を迅速に退行させて火炎伝播を促進することができる。すなわち、風防部材40が筒内流動を妨げることを防止でき、燃焼速度が低下することを防止できる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を筒内噴射式の火花点火エンジン10に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、ポート噴射式の火花点火エンジンや、筒内噴射とポート噴射とを組み合わせた火花点火エンジンにも適用することができる。
【0047】
また、風防部材40の形状やサイズ、及び、連結部材41の形状や数、サイズ等は、上記実施形態に限られることなく、要件等に応じて任意に設定することができる。例えば、棒状の連結部材41の数(本数)は、4本には限られない。
【符号の説明】
【0048】
10 火花点火エンジン
10B シリンダヘッド
10C 燃焼室
13 電子制御式スロットルバルブ
17 点火プラグ
17a 中心電極
17b 接地電極(側方電極)
28 吸気カムシャフト
29 排気カムシャフト
31 スロットル開度センサ
32 カム角センサ
33 クランク角センサ
34 水温センサ
35 油温センサ
36 アクセルペダル操作量センサ
50 ECU(電子制御装置)
40 風防部材(スリーブ)
41 連結部材
42 円環状後端部材
43 駆動機構
44 風防用カムシャフト
44a カム山
45 リターンスプリング
46 可変タイミング機構
47 タイミングチェーン
48 風防用カムスプロケット