(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033164
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電池セルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/593 20210101AFI20240306BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20240306BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240306BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240306BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240306BHJP
H01M 50/564 20210101ALI20240306BHJP
【FI】
H01M50/593
H01M50/627
H01M50/588
H01M50/586
H01M50/55 101
H01M50/564
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136592
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】烏野 魁人
(72)【発明者】
【氏名】高林 洋志
【テーマコード(参考)】
5H023
5H043
【Fターム(参考)】
5H023AA03
5H023AS01
5H043AA04
5H043AA19
5H043CA04
5H043GA22
5H043GA23
5H043GA24
5H043HA25E
5H043KA22E
(57)【要約】
【課題】組付工数を低減しながら、電解液の注液時におけるセパレータめくれおよびそれにともなう短絡を防止することができる電池セルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】電池セルは、正極板および負極板を含む電極体と、開口を有し、電極体を収納する外装缶と、端子部挿入孔および電解液注液孔を有し、外装缶の開口を封口する封口板と、端子部挿入孔を貫通する端子部と、正極板または負極板と電気的に接続された集電体と、外装缶の外部において端子部と封口板とを絶縁する第1部分と、外装缶の内部において集電体と封口板とを絶縁する第2部分と、電解液注液孔に連通する筒状の第3部分とを有する樹脂絶縁体とを備え、樹脂絶縁体の第3部分は、電解液注液孔の少なくとも一部と電極体との間を遮る遮断部を含み、樹脂絶縁体の第1部分、第2部分、および第3部分は一体に成形される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板および負極板を含む電極体と、
開口を有し、電極体を収納する外装缶と、
端子部挿入孔および電解液注液孔を有し、前記外装缶の前記開口を封口する封口板と、
前記端子部挿入孔を貫通する端子部と、
前記正極板または前記負極板と電気的に接続された集電体と、
前記外装缶の外部において前記端子部と前記封口板とを絶縁する第1部分と、前記外装缶の内部において前記集電体と前記封口板とを絶縁する第2部分と、前記電解液注液孔に連通する筒状の第3部分とを有する樹脂絶縁体とを備え、
前記樹脂絶縁体の前記第3部分は、前記電解液注液孔の少なくとも一部と前記電極体との間を遮る遮断部を含み、
前記樹脂絶縁体の前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分は一体に成形される、電池セル。
【請求項2】
前記端子部と前記樹脂絶縁体とがインサート成形により一体化されている、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記端子部または前記封口板における前記樹脂絶縁体との接触面の少なくとも一部が粗面化されている、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記遮断部は、筒状の前記第3部分を横切るように形成された帯状部分を含む、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項5】
前記遮断部の前記帯状部分に貫通孔が形成されている、請求項4に記載の電池セル。
【請求項6】
前記帯状部分は、第1の方向に延びる第1帯状部分と、前記第1の方向に交差する方向に延在する方向に延びる第2帯状部分とを含む、請求項4に記載の電池セル。
【請求項7】
前記遮断部は、略多角形形状に形成された部分を含む、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項8】
前記遮断部は、筒状の前記第3部分の中心に対して一方側にのみ形成される、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項9】
正極板および負極板を含む電極体を形成する工程と、
前記正極板または前記負極板と集電体とを電気的に接続する工程と、
電解液注液孔を有する封口板に端子部および樹脂絶縁体を取り付ける工程と、
前記集電体と前記端子部とを接続する工程と、
開口を有する外装缶に前記電極体を収納する工程と、
前記封口板により前記外装缶の前記開口を封口する工程と、
前記電解液注液孔を介して前記外装缶に電解液を注液する工程とを備え、
前記樹脂絶縁体は、前記外装缶の外部において前記端子部と前記封口板とを絶縁する第1部分と、前記外装缶の内部において前記集電体と前記封口板とを絶縁する第2部分と、前記電解液注液孔に連通する筒状の第3部分とを有し、
前記樹脂絶縁体の前記第3部分は、前記電解液注液孔の少なくとも一部と前記電極体との間を遮る遮断部を含み、
前記樹脂絶縁体の前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分は一体に成形される、電池セルの製造方法。
【請求項10】
前記端子部と前記樹脂絶縁体とがインサート成形により一体化される、請求項9に記載の電池セルの製造方法。
【請求項11】
前記端子部または前記封口板における前記樹脂絶縁体との接触面の少なくとも一部を粗面化する工程をさらに備える、請求項9または請求項10に記載の電池セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルの筐体に電解液を注液するための注液孔に連通する筒体を設けた電池が特許文献1(特開2019-129129号公報)に記載されている。ここでは、注液孔と電極体との間に介在する遮蔽部を設けることにより、注液によるセパレータめくれおよびそれに伴う電気的短絡を抑制している。
【0003】
電池のケース部材および集電端子のうち絶縁材と接する部分の少なくとも一部に粗面化処理を行うことによりアンカー効果を高めたものが特許文献2(特開2021-86813号公報)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-129129号公報
【特許文献2】特開2021-86813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
筒体を形成した絶縁部材を設けることにより、電池を構成する部品点数が増大する。また、電池の製造時において、組付け工数を低減することも要請されている。
【0006】
本技術の目的は、組付工数を低減しながら、電解液の注液時におけるセパレータめくれおよびそれにともなう短絡を防止することができる電池セルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術は、以下の電池セルおよびその製造方法を提供する。
【0008】
[1]正極板および負極板を含む電極体と、開口を有し、電極体を収納する外装缶と、端子部挿入孔および電解液注液孔を有し、外装缶の開口を封口する封口板と、端子部挿入孔を貫通する端子部と、正極板または負極板と電気的に接続された集電体と、外装缶の外部において端子部と封口板とを絶縁する第1部分と、外装缶の内部において集電体と封口板とを絶縁する第2部分と、電解液注液孔に連通する筒状の第3部分とを有する樹脂絶縁体とを備え、樹脂絶縁体の第3部分は、電解液注液孔の少なくとも一部と電極体との間を遮る遮断部を含み、樹脂絶縁体の第1部分、第2部分、および第3部分は一体に成形される、電池セル。
【0009】
[2]端子部と樹脂絶縁体とがインサート成形により一体化されている、[1]に記載の電池セル。
【0010】
[3]端子部または封口板における樹脂絶縁体との接触面の少なくとも一部が粗面化されている、[1]または[2]に記載の電池セル。
【0011】
[4]遮断部は、筒状の第3部分を横切るように形成された帯状部分を含む、[1]から[3]のいずれか1項に記載の電池セル。
[5]遮断部の帯状部分に貫通孔が形成されている、[4]に記載の電池セル。
【0012】
[6]帯状部分は、第1の方向に延びる第1帯状部分と、第1の方向に交差する方向に延在する方向に延びる第2帯状部分とを含む、[4]または[5]に記載の電池セル。
【0013】
[7]遮断部は、略多角形形状に形成された部分を含む、[1]から[3]のいずれか1項に記載の電池セル。
【0014】
[8]遮断部は、筒状の第3部分の中心に対して一方側にのみ形成される、[1]から[3]のいずれか1項に記載の電池セル。
【0015】
[9]正極板および負極板を含む電極体を形成する工程と、正極板または負極板と集電体とを電気的に接続する工程と、電解液注液孔を有する封口板に端子部および樹脂絶縁体を取り付ける工程と、集電体と端子部とを接続する工程と、開口を有する外装缶に電極体を収納する工程と、封口板により外装缶の開口を封口する工程と、電解液注液孔を介して外装缶に電解液を注液する工程とを備え、樹脂絶縁体は、外装缶の外部において端子部と封口板とを絶縁する第1部分と、外装缶の内部において集電体と封口板とを絶縁する第2部分と、電解液注液孔に連通する筒状の第3部分とを有し、樹脂絶縁体の第3部分は、電解液注液孔の少なくとも一部と電極体との間を遮る遮断部を含み、樹脂絶縁体の第1部分、第2部分、および第3部分は一体に成形される、電池セルの製造方法。
【0016】
[10]端子部と樹脂絶縁体とがインサート成形により一体化される、[9]に記載の電池セルの製造方法。
【0017】
[11]端子部または封口板における樹脂絶縁体との接触面の少なくとも一部を粗面化する工程をさらに備える、[9]または[10]に記載の電池セルの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
外装缶の外部において端子部と封口板とを絶縁する第1部分と、外装缶の内部において集電体と封口板とを絶縁する第2部分と、電解液注液孔に連通する筒状の第3部分(筒体)とを有する樹脂絶縁体を一体成形することで、部品点数および組付工数を低減することができる。第3部分が電解液注液孔の少なくとも一部と電極体との間を遮る遮断部を含むことにより、電解液の注液時におけるセパレータめくれおよびそれにともなう電気的短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】正極板および負極板からなる電極体を示す平面図である。
【
図5】電極体と正極集電部材および負極集電部材との接続構造を示す図である。
【
図6】封口板に電極端子を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図7】封口板に正極端子を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図8】注液孔と電極体との間に位置する遮断部の形状の例を示す図(その1)である。
【
図9】注液孔と電極体との間に位置する遮断部の形状の例を示す図(その2)である。
【
図10】注液孔と電極体との間に位置する遮断部の形状の例を示す図(その3)である。
【
図11】注液孔と電極体との間に位置する遮断部の形状の例を示す図(その4)である。
【
図12】注液孔と電極体との間に位置する遮断部の形状の例を示す図(その5)である。
【
図13】注液孔と電極体との間に位置する遮断部の形状の例を示す図(その6)である。
【
図14】注液孔と電極体との間に位置する遮断部の形状の例を示す図(その7)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0021】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0022】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0023】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0024】
本明細書において、「電池セル」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0025】
図1は、電池セル100を示す斜視図である。
図1に示すように、電池セル100は、角型形状を有する。電池セル100は、電極端子110(端子部)と、筐体120(外装缶)と、ガス排出弁130と、リベット140とを有する。
【0026】
電極端子110は、筐体120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2の方向)に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0027】
筐体120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなす。筐体120は、図示しない電極体および電解液を収容するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0028】
筐体120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。
【0029】
上面121は、Y軸方向およびX軸方向に直交するZ軸方向(第3の方向)に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Z軸方向に沿って上面121に対向している。
【0030】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、筐体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0031】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0032】
ガス排出弁130は、上面121に設けられている。ガス排出弁130は、電池セル100の温度が上昇し(熱暴走)、筐体120の内部で発生したガスにより筐体120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを筐体120の外部に排出する。
【0033】
リベット140は、筐体120の封口板120Bに取り付けられる。リベット140は、後述の電解液注液孔(
図7参照)を封止する。
【0034】
図2は、電極体200を構成する正極板200Aの平面図である。正極板200Aは、矩形状のアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質(たとえばリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等)、結着材(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等)、および導電材(たとえば炭素材料等)を含む正極活物質合剤層が形成された本体部220Aを有する。本体部の端辺から正極芯体が突出しており、この突出した正極芯体が正極タブ210Aを構成する。正極タブ210Aにおける本体部の220Aと隣接する部分には、アルミナ粒子、結着材、および導電材を含む正極保護層230Aが設けられている。正極保護層230Aは、正極活物質合剤層の電気抵抗よりも大きな電気抵抗を有する。正極活物質合剤層は導電材を含まなくてもよい。正極保護層230Aは必ずしも設けられなくてもよい。
【0035】
図3は、電極体200を構成する負極板200Bの平面図である。負極板200Bは、矩形状の銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質合剤層が形成された本体部220Bを有する。本体部220Bの端辺から負極芯体が突出しており、この突出した負極芯体が負極タブ210Bを構成する。
【0036】
図4は、正極板200Aおよび負極板200Bからなる電極体200を示す平面図である。
図5に示すように、電極体200は、一方の端部において各々の正極板200Aの正極タブ210Aが積層され、各々の負極板200Bの負極タブ210Bが積層されるように作製される。正極板200Aおよび負極板200Bは、たとえば各々50枚程度ずつ重ねられる。正極板200Aと負極板200Bとは、ポリオレフィン製の矩形状のセパレータを介して交互に積層される。なお、長尺のセパレータをつづら折りして用いてもよい。
【0037】
図5は、電極体200と正極集電部材600および負極集電部材700との接続構造を示す図である。
図5に示すように、電極体200は、第1電極体要素201(第1積層群)および第2電極体要素202(第2積層群)により構成される。第1電極体要素201および第2電極体要素202の外面にもセパレータが各々配置される。
【0038】
第1電極体要素201の複数枚の正極タブ210Aが第1正極タブ群211Aを構成する。第1電極体要素201の複数枚の負極タブ210Bが第1負極タブ群211Bを構成する。第2電極体要素202の複数枚の正極タブ210Aが第2正極タブ群212Aを構成する。第2電極体要素202の複数枚の負極タブ210Bが第2負極タブ群212Bを構成する。
【0039】
第1電極体要素201と第2電極体要素202の間に、正極集電部材600および負極集電部材700が配置される。第1正極タブ群211Aおよび第2正極タブ群212Aが、正極集電部材600上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。第1負極タブ群211Bおよび第2負極タブ群212Bが、負極集電部材700上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。溶接接続部213は、たとえば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等により形成し得る。
【0040】
電池セル100を製造するときは、正極板200Aおよび負極板200Bを含む電極体200が形成され、正極板200Aおよび負極板200Bと正極集電部材600および負極集電部材700(集電体)とが電気的に各々接続される。次に、封口板120Bに取り付けられた正極端子111および負極端子112(端子部)と正極集電部材600および負極集電部材700とが各々接続(たとえばカシメ接続)される。この状態で、ケース本体120Aに電極体200を収納し、封口板120Bによりケース本体120Aの開口を封口する。
【0041】
図6は、封口板120Bに電極端子110を取り付けた状態を示す斜視図であり、
図7は、
図6の状態(正極端子111側)を示す断面図である。
【0042】
図6,
図7に示すように、封口板120Bは、電解液注液孔120B1および端子部挿入孔120B2を有する。
【0043】
電極端子110(
図7には正極端子111を示す。)は、端子部挿入孔120B2に挿入されている。封口板120Bによりケース本体120Aの開口が封口された後、電解液注液孔120B1を介して筐体120に電解液が注液される。
【0044】
電極端子110(正極端子111および負極端子112)とともに、樹脂絶縁体800,900が封口板120Bに取り付けられている。正極端子111および負極端子112と樹脂絶縁体800,900とは、インサート成形により各々一体化されていてもよい。
【0045】
樹脂絶縁体800は、筐体120の外部において正極端子111と封口板120Bとを絶縁する第1部分810と、筐体120の内部において正極集電部材600と封口板120Bとを絶縁する第2部分820と、電解液注液孔120B1に連通する筒状の第3部分830とを有する。
【0046】
樹脂絶縁体800の第3部分830は、電解液注液孔120B1の少なくとも一部と電極体200との間を遮る遮断部830Aを含む。第1部分810、第2部分820、および第3部分830は一体に成形される。
【0047】
樹脂絶縁体800の第3部分830が電解液注液孔120B1の少なくとも一部と電極端子110との間を遮る遮断部830Aを含むことにより、電解液の注液時におけるセパレータめくれおよびそれにともなう電気的短絡を抑制することができる。
【0048】
他方、電解液注液孔120B1に連通する筒状部(第3部分830に相当)筒体を設けることにより、電池セル100を構成する部品点数が増大し得る。また、電池セル100の製造時において、各部品の組付け工数を低減することも要請される。
【0049】
本実施の形態に係る電池セル100においては、筐体120の外部において正極端子111と封口板120Bとを絶縁する第1部分810と、筐体120の内部において正極集電部材600および負極集電部材700と封口板120Bとを絶縁する第2部分820と、電解液注液孔120B1に連通する筒状の第3部分830とを有する樹脂絶縁体800を一体成形することで、電池セル100の部品点数および各部品の組付工数を低減することができる。結果として、電解液注液時のセパレータめくれを抑制しながら、電池セル100を低コストで製造することが可能となる。
【0050】
電極端子110および封口板120Bにおける樹脂絶縁体800,900との接触面の少なくとも一部が粗面化されていてもよい。上記粗面化を行った場合、アンカー効果により、電極端子110および封口板120Bと樹脂絶縁体800,900との密着性を高めることができる。
【0051】
電極端子110、封口板120Bおよび樹脂絶縁体800の構造は
図6,
図7に示すものに限定されず、たとえば電極端子110が電流遮断装置(CID:Current Interrupt Device)を有するものであってもよい。
【0052】
図6,
図7の例では、正極端子111側の樹脂絶縁体800と負極端子112側の樹脂絶縁体900とが分離して形成され、正極端子111側の樹脂絶縁体に電解液注液孔120B1に連通する筒状の第3部分830を設けた構造を示したが、本技術の範囲はこれに限定されない。たとえば、負極端子112側の樹脂絶縁体900に電解液注液孔120B1に連通する筒状部(第3部分830に相当)が設けられてもよいし、樹脂絶縁体800,900が1つの部材としても設けられてもよい。
【0053】
図8~
図14は、遮断部830Aの形状の例を示す図である。なお、
図8~
図14に示す遮断部830Aの形状は一例であって、本技術の範囲はこれらに限定されない。
【0054】
図8,
図9に示す例では、遮断部830Aは、筒状の第3部分830を横切るように形成された帯状部分からなる。
図8の例では、帯状部分はX軸方向に延び、
図9の例では、帯状部分はY軸方向に延びている。
【0055】
帯状部分は、X軸方向およびY軸方向に交差する斜め方向に延びてもよい。帯状部分の幅は適宜変更可能である。また、帯状部分は複数に分離して形成されてもよい。
【0056】
図8,
図9の例では、帯状部分が筒状の第3部分830の中心を含む領域に形成されているが、本技術の範囲はこれらに限定されない。
【0057】
図10の例のように、帯状部分は、Y軸方向に延びる第1帯状部分と、X軸方向に延在する方向に延びる第2帯状部分とを含んでもよい。
図10の例では、第1帯状部分と第2帯状部分とが略直交する十文字形状を示しているが、第1帯状部分と第2帯状部分とは、斜めに交差してもよい。
【0058】
図11の例のように、帯状部分に貫通孔831が形成されていてもよい。貫通孔831の位置、形状、および大きさは適宜変更され得る。貫通孔831は、
図11に示すように複数設けられてもよいし、1つだけ設けられてもよい。
【0059】
図12の例のように、遮断部830Aは長方形(四角形)であってもよい。また、樹脂絶縁体800の第3部分830の筒形状は、円形に限定されず、
図12のように四角形形状であってもよい。
【0060】
図13の例のように、遮断部830Aは、四角形以外を含む略多角形形状に形成されてもよい。略多角形形状とは、完全な多角形ではなく、たとえば角部にR加工ないし面取り加工が施された形状を含む。また、
図13の例(正六角形形状)のように、正多角形には限定されない。
【0061】
図14の例のように、遮断部830Aは、筒状の第3部分830の中心に対して一方側にのみ形成されてもよい。
図14の例では、遮断部830Aは略月形形状を有するが、筒状の第3部分830の中心に対して一方側にのみ遮断部830Aが形成される場合にも、遮断部830Aの形状は適宜変更され得る。
【0062】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、120A ケース本体、120B1 電解液注液孔、120B2 端子部挿入孔、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、130 ガス排出弁、140 リベット、200 電極体、200A 正極板、200B 負極板、201 第1電極体要素、202 第2電極体要素、210A 正極タブ、210B 負極タブ、211A 第1正極タブ群、211B 第1負極タブ群、212A 第2正極タブ群、212B 第2負極タブ群、213 溶接接続部、220A,220B 本体部、230A 正極保護層、600 正極集電部材、700 負極集電部材、800 樹脂絶縁体、810 第1部分、820 第2部分、830 第3部分、830A 遮断部、831 貫通孔、900 樹脂絶縁体。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板および負極板を含む電極体と、
開口を有し、電極体を収納する外装缶と、
端子部挿入孔および電解液注液孔を有し、前記外装缶の前記開口を封口する封口板と、
前記端子部挿入孔を貫通する端子部と、
前記正極板または前記負極板と電気的に接続された集電体と、
前記外装缶の外部において前記端子部と前記封口板とを絶縁する第1部分と、前記外装缶の内部において前記集電体と前記封口板とを絶縁する第2部分と、前記電解液注液孔に連通する筒状の第3部分とを有する樹脂絶縁体とを備え、
前記樹脂絶縁体の前記第3部分は、前記電解液注液孔の少なくとも一部と前記電極体との間を遮る遮断部を含み、
前記樹脂絶縁体の前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分は一体に成形される、電池セル。
【請求項2】
前記端子部と前記樹脂絶縁体とがインサート成形により一体化されている、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記端子部または前記封口板における前記樹脂絶縁体との接触面の少なくとも一部が粗面化されている、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記遮断部は、筒状の前記第3部分を横切るように形成された帯状部分を含む、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項5】
前記遮断部の前記帯状部分に貫通孔が形成されている、請求項4に記載の電池セル。
【請求項6】
前記帯状部分は、第1の方向に延びる第1帯状部分と、前記第1の方向に交差する方向に延びる第2帯状部分とを含む、請求項4に記載の電池セル。
【請求項7】
前記遮断部は、略多角形形状に形成された部分を含む、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項8】
前記遮断部は、筒状の前記第3部分の中心に対して一方側にのみ形成される、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項9】
正極板および負極板を含む電極体を形成する工程と、
前記正極板または前記負極板と集電体とを電気的に接続する工程と、
電解液注液孔を有する封口板に端子部および樹脂絶縁体を取り付ける工程と、
前記集電体と前記端子部とを接続する工程と、
開口を有する外装缶に前記電極体を収納する工程と、
前記封口板により前記外装缶の前記開口を封口する工程と、
前記電解液注液孔を介して前記外装缶に電解液を注液する工程とを備え、
前記樹脂絶縁体は、前記外装缶の外部において前記端子部と前記封口板とを絶縁する第1部分と、前記外装缶の内部において前記集電体と前記封口板とを絶縁する第2部分と、前記電解液注液孔に連通する筒状の第3部分とを有し、
前記樹脂絶縁体の前記第3部分は、前記電解液注液孔の少なくとも一部と前記電極体との間を遮る遮断部を含み、
前記樹脂絶縁体の前記第1部分、前記第2部分、および前記第3部分は一体に成形される、電池セルの製造方法。
【請求項10】
前記端子部と前記樹脂絶縁体とがインサート成形により一体化される、請求項9に記載の電池セルの製造方法。
【請求項11】
前記端子部または前記封口板における前記樹脂絶縁体との接触面の少なくとも一部を粗面化する工程をさらに備える、請求項9または請求項10に記載の電池セルの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
[6]帯状部分は、第1の方向に延びる第1帯状部分と、第1の方向に交差する方向に延びる第2帯状部分とを含む、[4]または[5]に記載の電池セル。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
本実施の形態に係る電池セル100においては、筐体120の外部において正極端子111と封口板120Bとを絶縁する第1部分810と、筐体120の内部において正極集電部材600と封口板120Bとを絶縁する第2部分820と、電解液注液孔120B1に連通する筒状の第3部分830とを有する樹脂絶縁体800を一体成形することで、電池セル100の部品点数および各部品の組付工数を低減することができる。結果として、電解液注液時のセパレータめくれを抑制しながら、電池セル100を低コストで製造することが可能となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
図10の例のように、帯状部分は、Y軸方向に延びる第1帯状部分と、X軸方向
に延びる第2帯状部分とを含んでもよい。
図10の例では、第1帯状部分と第2帯状部分とが略直交する十文字形状を示しているが、第1帯状部分と第2帯状部分とは、斜めに交差してもよい。