(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033165
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電力分配器、アンテナ装置、送信機、及びレーダー
(51)【国際特許分類】
H01P 5/12 20060101AFI20240306BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240306BHJP
H01Q 1/46 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01P5/12 C
H01Q13/08
H01Q1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136593
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 憲一
【テーマコード(参考)】
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J045AA01
5J045AA02
5J045AA05
5J045DA10
5J045NA07
5J046AA03
5J046AB02
5J046AB13
5J046TA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不要輻射を抑えつつ電力分配が容易な電力分配器を提供する。
【解決手段】電力分配器1Aは、誘電体基板と、誘電体基板上に形成され、矩形状で、基本波の1/2波長に対応する幅を有し、幅方向に伸びて向かい合う入力用辺7及び出力用辺8を有するパッチ共振器31と、入力用辺の中央に対して第1の側71に接続される第1入力端子41と、出力用辺の中央に対して第1の側81に接続される第1出力端子51と、出力用辺の中央に対して第1の側とは反対の第2の側82に接続される第2出力端子52と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板上に形成された矩形状のパッチ共振器であって、基本波の1/2波長に対応する幅を有し、幅方向に伸びて向かい合う入力用辺及び出力用辺を有するパッチ共振器と、
前記入力用辺の中央に対して第1の側に接続される第1入力端子と、
前記出力用辺の中央に対して前記第1の側に接続される第1出力端子と、
前記出力用辺の中央に対して前記第1の側とは反対の第2の側に接続される第2出力端子と、
を備える、電力分配器。
【請求項2】
前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に接続される第2入力端子と、
前記第2入力端子から前記パッチ共振器に入力される基本波の位相を、前記第1入力端子から前記パッチ共振器に入力される基本波に対して逆相に調整する逆相調整器と、
をさらに備える、
請求項1に記載の電力分配器。
【請求項3】
前記第2入力端子は、前記第1入力端子が接続された給電線路に前記逆相調整器を介して接続される、
請求項2に記載の電力分配器。
【請求項4】
前記逆相調整器は、基本波の1/2波長に対応する長さの伝送線路である、
請求項3に記載の電力分配器。
【請求項5】
それぞれが、前記パッチ共振器、前記第1入力端子、前記第1出力端子、及び前記第2出力端子を含む、第1の組及び第2の組を備え、
前記第1の組の前記第1入力端子と、前記第2の組の前記第1入力端子とが共通の給電線路に接続される、
請求項1に記載の電力分配器。
【請求項6】
前記第1の組の前記パッチ共振器の前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に一端が接続され、前記第2の組の前記パッチ共振器の前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に他端が接続された、基本波の1/2波長に対応する長さの介在線路をさらに備える、
請求項5に記載の電力分配器。
【請求項7】
請求項1に記載の電力分配器を備えるアンテナ装置。
【請求項8】
前記パッチ共振器は、パッチアンテナである、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
請求項7に記載のアンテナ装置を備える送信機。
【請求項10】
請求項7に記載のアンテナ装置を備えるレーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力分配器、アンテナ装置、送信機、及びレーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力分配を行う回路としてラットレース回路が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、高周波を扱う回路では、線路が急峻な曲げを含むと、不要輻射の問題を避けられない。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、不要輻射を抑えつつ電力分配が容易な電力分配器、アンテナ装置、送信機、及びレーダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の電力分配器は、誘電体基板と、前記誘電体基板上に形成された矩形状のパッチ共振器であって、基本波の1/2波長に対応する幅を有し、幅方向に伸びて向かい合う入力用辺及び出力用辺を有するパッチ共振器と、前記入力用辺の中央に対して第1の側に接続される第1入力端子と、前記出力用辺の中央に対して前記第1の側に接続される第1出力端子と、前記出力用辺の中央に対して前記第1の側とは反対の第2の側に接続される第2出力端子と、を備える。これによれば、不要輻射を抑えつつ電力分配が容易となる。
【0006】
上記態様において、前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に接続される第2入力端子と、前記第2入力端子から前記パッチ共振器に入力される基本波の位相を、前記第1入力端子から前記パッチ共振器に入力される基本波に対して逆相に調整する逆相調整器と、をさらに備えてもよい。これによれば、電力分配特性の向上を図ることが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記第2入力端子は、前記第1入力端子が接続された給電線路に前記逆相調整器を介して接続されてもよい。これによれば、共通の給電線路を用いて、電力分配特性の向上を図ることが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記逆相調整器は、基本波の1/2波長に対応する長さの伝送線路であってもよい。これによれば、簡易な構成により、電力分配特性の向上を図ることが可能となる。
【0009】
上記態様において、それぞれが、前記パッチ共振器、前記第1入力端子、前記第1出力端子、及び前記第2出力端子を含む、第1の組及び第2の組を備え、前記第1の組の前記第1入力端子と、前記第2の組の前記第1入力端子とが共通の給電線路に接続されてもよい。これによれば、さらなる電力分配が容易となる。
【0010】
上記態様において、前記第1の組の前記パッチ共振器の前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に一端が接続され、前記第2の組の前記パッチ共振器の前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に他端が接続された、基本波の1/2波長に対応する長さの介在線路をさらに備えてもよい。これによれば、介在線路によって電力分配特性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明の他の態様のアンテナ装置は、上記の電力分配器を備える。これによれば、不要輻射を抑えつつ電力分配が容易な電力分配器を備えることが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記パッチ共振器は、パッチアンテナであってもよい。これによれば、パッチ共振器をパッチアンテナとして利用することが可能となる。
【0013】
また、本発明の他の態様の送信機は、上記のアンテナ装置を備える。これによれば、不要輻射を抑えつつ電力分配が容易なアンテナ装置を備えることが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の態様のレーダーは、上記のアンテナ装置を備える。これによれば、不要輻射を抑えつつ電力分配が容易なアンテナ装置を備えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
[レーダー]
図1は、本実施形態に係るレーダー100の構成例を示すブロック図である。レーダー100は、本実施形態に係る送信機の例であり、本実施形態に係るアンテナ装置10を備えている。レーダー100は、アンテナ装置10の他に、送受信部11、信号処理部12、及び制御部13を備えている。
【0018】
送受信部11は、変調部及びマグネトロンを含み、信号処理部12からのトリガー信号に応じて変調部で生成されたパルス電圧でマグネトロンを間欠駆動し、送信信号を生成する。アンテナ装置10は、送受信部11からの送信信号を電波パルスとして送信する。
【0019】
また、アンテナ装置10は、受信した反射波を受信信号に変換する。アンテナ装置10からの受信信号は、送受信部11に含まれる周波数変換・増幅回路及び検波回路などを経て、信号処理部12で信号処理され、デジタル信号として制御部13に送り込まれる。
【0020】
レーダー100は、例えばマイクロ波を送受信する船舶用レーダーであってもよいし、例えばミリ波を送受信する障害物検知又は衝突防止用の車載レーダー等であってもよい。
【0021】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係るアンテナ装置10Aの構成例を示す平面図である。
図3は、アンテナ装置10Aの部分拡大図であり、第1実施形態に係る電力分配器1Aの構成例を示す平面図である。
図4は、電力分配器1Aの散乱行列の周波数特性の計算結果例を示す図である。
【0022】
アンテナ装置10Aは、誘電体基板2と、誘電体基板2の第1主表面(
図2で見えている面)上に形成されたアンテナパターン30と、誘電体基板2の第1主表面とは反対の第2主表面上に形成された不図示のグラウンドパターンとを備えている。アンテナパターン30は、複数のパッチアンテナ(パッチ共振器)31-34を含んでいる。パッチアンテナの数は、特に限定されない。
【0023】
アンテナ装置10Aは、直列給電型パッチアレイアンテナであり、複数のパッチアンテナ31-34は、一方向に配列し、直列に接続されている。図中のx方向は、パッチアンテナ31-34の配列方向であり、x方向と直交するy方向は、パッチアンテナ31-34の幅方向である。
【0024】
アンテナパターン30は、例えば、誘電体基板2の第1主表面上に設けられた金属箔をフォトリソグラフィ技術でパターンニングすることによって形成される。このため、パッチアンテナ31-34及びそれらに接続される伝送線路41,51,52,61-64は、一体となっている。
【0025】
アンテナパターン30の配列方向xの一方の端部には、給電線路9が設けられている。給電線路9は、パッチアンテナ31の入力端子41に接続されている。
【0026】
図3に示すように、電力分配器1Aは、パッチアンテナ(パッチ共振器)31並びにこれに接続される入力端子41及び出力端子51,52を備えている。入力端子41は、給電線路9とパッチアンテナ31を接続する伝送線路である。出力端子51,52は、パッチアンテナ31とパッチアンテナ32を接続する伝送線路である。
【0027】
パッチアンテナ31は、矩形状に形成されており、使用される周波数の基本波の1/2波長に対応する幅を有している。すなわち、パッチアンテナ31の幅(幅方向yの長さ)は、基本波の1/2波長とほぼ等しい。
【0028】
パッチアンテナ31は、幅方向yの中央を通る中心線(対称線)Cについて線対称となる形状を有している。中心線Cは、3次元的に見ると、幅方向yと直交する対称面と言うこともできる。
【0029】
パッチアンテナ31は、幅方向yに伸びて配列方向xに向かい合う入力用辺7及び出力用辺8を有している。入力用辺7は給電線路9に近い側の辺であり、出力用辺8は給電線路9から遠い側の辺である。入力用辺7には、1つの入力端子41が接続されており、出力用辺8には、2つの出力端子51,52が接続されている。
【0030】
具体的には、入力端子41は、入力用辺7の中心線Cに対して第1の側71(図中上側)に接続されている。出力端子51は、出力用辺8の中心線Cに対して第1の側81(図中上側)に接続されており、出力端子52は、出力用辺8の中心線Cに対して第1の側81とは反対の第2の側82(図中下側)に接続されている。
【0031】
電力分配器1Aは、パッチアンテナ(パッチ共振器)31を利用して、入力端子41から供給される電力を2つの出力端子51,52へ分配する。
図3において、入力端子41、出力端子51,52、及びパッチアンテナ31に付された片矢印は、或る瞬間の高周波電流の向きを示している。
【0032】
2つの出力端子51,52の出力は、互いに逆相である、すなわち180°の位相差を有している。入力端子41の入力に対して、入力端子41と同じ第1の側81に接続された出力端子51の出力は同相となり、反対の第2の側82に接続された出力端子52の出力は逆相となる。
【0033】
パッチアンテナ31には、中心線Cを境に2つの電磁界分布が発生し、それらが2つの出力端子51,52からそれぞれ取り出される。アンテナ装置10Aでは、パッチアンテナ31から出力端子51,52に出力される2つの出力は、下流に配置されたパッチアンテナ32に入力される(
図2参照)。
【0034】
図4において、S11は、入力端子41(#1)から入力され、入力端子41(#1)に反射する成分を表す。S21は、入力端子41(#1)から出力端子51(#2)に通過する成分を表す。S31は、入力端子41(#1)から出力端子52(#3)に通過する成分を表す。
【0035】
同図に示すように、設計周波数においては、入力端子41(#1)から入力された電力は、出力端子51(#2)と出力端子52(#3)に均等に分配されている。また、設計周波数より低い帯域では、出力端子51(#2)の出力がより多く、設計周波数より高いでは、出力端子52(#3)の出力がより多くなっている。
【0036】
以上に説明した第1実施形態によれば、パッチアンテナ(パッチ共振器)31を利用することで、線路の急な曲げによる不要輻射を抑えつつ、電力分配を容易にすることが可能である。
【0037】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係るアンテナ装置10Bの構成例を示す平面図である。
図6は、アンテナ装置10Bの部分拡大図であり、第2実施形態に係る電力分配器1Bの構成例を示す平面図である。
図7は、電力分配器1Bの散乱行列の周波数特性の計算結果例を示す図である。上記実施形態と重複する構成については、同番号を付すことで詳細な説明を省略することがある。
【0038】
図6に示すように、第2実施形態に係る電力分配器1Bは、パッチアンテナ31に接続される入力端子42と、入力端子42へ伝播する基本波を逆相に調整する逆相調整器48とをさらに備えている。入力端子42は、パッチアンテナ31の入力用辺7の中心線Cに対して第2の側72(図中下側)に接続されている。
【0039】
逆相調整器48は、入力端子42からパッチアンテナ31に入力される基本波の位相を、入力端子41からパッチアンテナ31に入力される基本波に対して逆相となるように調整する。入力端子42は、入力端子41が接続された給電線路9に逆相調整器48を介して接続されている。
【0040】
図5に示すように、逆相調整器48は、例えば基本波の1/2波長に対応する長さのL字状又はコの字状の伝送線路である。すなわち、給電線路9と入力端子42の間に、基本波の1/2波長とほぼ等しい長さの伝送線路を設けることで、逆相調整器48として機能する。
【0041】
これに限らず、逆相調整器48は、例えばラットレース回路又はメアンダライン等の、基本波の位相を逆相に調整する回路であってもよい。
【0042】
上記第1実施形態に係る電力分配器1Aにおいては、中心線Cが電気的に短絡面となるTE20モードを励振することがあまり容易ではない。これは、TE20モードを励振する場合、同時にTE10モードが励振され、その相互作用によって2つのモードが合成されるためである。
【0043】
このため、上記第1実施形態に係る電力分配器1Aでは、設計周波数において、2つの出力端子51,52に均等に電力が分配されるものの、設計周波数より低い帯域では出力端子51へより多く分配され、設計周波数より高い帯域では出力端子52へより多く分配される(
図4参照)。
【0044】
これに対し、第2実施形態に係る電力分配器1Bでは、入力端子41に加えて入力端子42を設け、入力端子41,42から互いに逆相の基本波をパッチアンテナ31に入力するので、パッチアンテナ31においてTE10モードを抑制して、TE20モードを励振することが容易となる。
【0045】
これにより、
図7に示すように、S21とS31が、設計周波数だけでなく、比較的広い帯域に亘って等しくなる。すなわち、入力端子41,42からパッチアンテナ31に入力された電力は、設計周波数を含む比較的広い帯域に亘って出力端子51,52へ均等に分配される。
【0046】
以上に説明した第2実施形態によれば、さらに、比較的広い帯域に亘って所望の且つ安定した電力分配特性を実現することが可能となる。
【0047】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る電力分配器1Cの構成例を示す平面図である。
図9は、電力分配器1Cの散乱行列の位相特性の計算結果例を示す図である。上記実施形態と重複する構成については、同番号を付すことで詳細な説明を省略することがある。
【0048】
図8に示すように、第3実施形態に係る電力分配器1Cは、パッチアンテナ31、入力端子41、出力端子51,52を含む第1の組と、パッチアンテナ35、入力端子45、出力端子55,56を含む第2の組とを備えている。第1の組の入力端子41と第2の組の入力端子45は、共通の給電線路9に接続されている。
【0049】
第2の組に含まれるパッチアンテナ35、入力端子45、及び出力端子55,56は、第1の組に含まれるパッチアンテナ31、入力端子41、及び出力端子51,52と同様に構成される。
【0050】
すなわち、第2の組のパッチアンテナ35も、矩形状に形成されており、使用される周波数の基本波の1/2波長に対応する幅を有している。入力端子45は、パッチアンテナ35の入力用辺7の中心線Cに対して第1の側75(図中上側)に接続されている。
【0051】
出力端子55は、パッチアンテナ35の出力用辺8の中心線Cに対して第1の側8(図中上側)に接続されている。出力端子56は、パッチアンテナ35の出力用辺8の中心線Cに対して第1の側85とは反対の第2の側86(図中下側)に接続されている。
【0052】
電力分配器1Cは、給電線路9から供給される電力を、パッチアンテナ31,35を利用して、4つの出力端子51,52,55,56へ分配する。
【0053】
図9において、S21は、給電線路9(#1)から出力端子51(#2)へ通過する成分を表す。S31は、給電線路9(#1)から出力端子52(#3)へ通過する成分を表す。S41は、給電線路9(#1)から出力端子55(#4)へ通過する成分を表す。S51は、給電線路9(#1)から出力端子56(#5)へ通過する成分を表す。
【0054】
同図に示すように、S21とS41は同相となっている。一方、S31とS51は同相となっておらず、位相が異なっている。
【0055】
以上に説明した第3実施形態によれば、さらに多くの出力端子51,52,55,56へ電力を分配することが可能となる。
【0056】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態に係る電力分配器1Dの構成例を示す平面図である。
図11は、電力分配器1Dの散乱行列の位相特性の計算結果例を示す図である。
図12は、電力分配器1Dを備えるアンテナ装置10Dの構成例を示す平面図である。上記実施形態と重複する構成については、同番号を付すことで詳細な説明を省略することがある。
【0057】
図12に示すように、第4実施形態に係るアンテナ装置10Dでは、アンテナパターン30の配列方向xの中央に設けられた給電線路9から両側のパッチアンテナ31,35に供給される。
【0058】
パッチアンテナ31から出力端子51,52に出力される2つの出力は、さらにパッチアンテナ32-34に分配される。また、パッチアンテナ35から出力端子55,56に出力される出力も、さらにパッチアンテナ36-38に分配される。
【0059】
図10に示すように、第4実施形態に係る電力分配器1Dは、第1の組のパッチアンテナ31と第2の組のパッチアンテナ35の間に介在する介在線路49(「ダミー線路」ともいう)をさらに備えている。
【0060】
介在線路49は、第1の組のパッチアンテナ31の入力用辺7の中心線Cに対して第2の側72に一端が接続され、第2の組のパッチアンテナ31の入力用辺7の中心線Cに対して第2の側76に他端が接続されている。
【0061】
介在線路49は、基本波の1/2波長に対応する長さの伝送線路である。すなわち、介在線路49のパッチアンテナ31に接続された一端からパッチアンテナ35に接続された他端までの長さは、基本波の1/2波長とほぼ等しい。
【0062】
パッチアンテナ31,35を介在線路49で連結することにより、パッチアンテナ31,35の一方の電力が介在線路49を通じて他方の電力と干渉し、その対称性から出力端子52,56の出力の位相差を揃えることが可能となる。
【0063】
上記第3実施形態では、
図9に示すように、出力端子52の出力(S31)と出力端子56の出力(S51)が同相となっておらず、位相が異なっていた。これに対し、第4実施形態では、
図11に示すように、出力端子52の出力(S31)と出力端子56の出力(S51)が同相になっていることが分かる。
【0064】
以上に説明した第4実施形態によれば、さらに多くの出力端子51,52,55,56へ電力を分配することが可能であるとともに、出力端子51,55だけでなく、出力端子52,56の出力も同相にすることが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0066】
上記実施形態では、パッチアンテナ(パッチ共振器)をマイクロストリップラインで形成した例について説明したが、これに限らず、例えばパッチ共振器をストリップラインで形成してもよい。これにより、電波を放射させずに電力を分配することが可能となる。
【0067】
また、パッチアンテナ(パッチ共振器)は、その中心をグラウンドパターンに接地してもよい。これによれば、パッチアンテナにおいてTE10モードを抑制して、TE20モードを励振することが容易となる。
【0068】
以下、本発明の代表的な実施形態について列挙する。
【0069】
(1)
誘電体基板と、
前記誘電体基板上に形成された矩形状のパッチ共振器であって、基本波の1/2波長に対応する幅を有し、幅方向に伸びて向かい合う入力用辺及び出力用辺を有するパッチ共振器と、
前記入力用辺の中央に対して第1の側に接続される第1入力端子と、
前記出力用辺の中央に対して前記第1の側に接続される第1出力端子と、
前記出力用辺の中央に対して前記第1の側とは反対の第2の側に接続される第2出力端子と、
を備える、電力分配器。
【0070】
(2)
前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に接続される第2入力端子と、
前記第2入力端子から前記パッチ共振器に入力される基本波の位相を、前記第1入力端子から前記パッチ共振器に入力される基本波に対して逆相に調整する逆相調整器と、
をさらに備える、
(1)に記載の電力分配器。
【0071】
(3)
前記第2入力端子は、前記第1入力端子が接続された給電線路に前記逆相調整器を介して接続される、
(2)に記載の電力分配器。
【0072】
(4)
前記逆相調整器は、基本波の1/2波長に対応する長さの伝送線路である、
(2)または(3)に記載の電力分配器。
【0073】
(5)
それぞれが、前記パッチ共振器、前記第1入力端子、前記第1出力端子、及び前記第2出力端子を含む、第1の組及び第2の組を備え、
前記第1の組の前記第1入力端子と、前記第2の組の前記第1入力端子とが共通の給電線路に接続される、
(1)ないし(4)の何れかに記載の電力分配器。
【0074】
(6)
前記第1の組の前記パッチ共振器の前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に一端が接続され、前記第2の組の前記パッチ共振器の前記入力用辺の中央に対して前記第2の側に他端が接続された、基本波の1/2波長に対応する長さの介在線路をさらに備える、
(5)に記載の電力分配器。
【0075】
(7)
(1)ないし(6)の何れかに記載の電力分配器を備えるアンテナ装置。
【0076】
(8)
前記パッチ共振器は、パッチアンテナである、
(7)に記載のアンテナ装置。
【0077】
(9)
(7)または(8)に記載のアンテナ装置を備える送信機。
【0078】
(10)
(7)または(8)に記載のアンテナ装置を備えるレーダー。
【符号の説明】
【0079】
1 電力分配器、2 誘電体基板、30 アンテナパターン、31-38 パッチアンテナ(パッチ共振器)、41,42,45 入力端子、48 逆相調整器、49 介在線路、51,52,55,56 出力端子、61-68 伝送線路、7 入力用辺、71,75 第1の側、72,76 第2の側、8 出力用辺、81,85 第1の側、82,86 第2の側、9 給電線路、10 アンテナ装置、11 送受信部、12 信号処理部、13 制御部、100 レーダー(送信機の例)