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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033198
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3063 20060101AFI20240306BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240306BHJP
   C25F 7/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L21/306 L
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 643C
H01L21/306 R
C25F7/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136643
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】森田 康生
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA26
5F043DD13
5F043DD14
5F043EE07
5F043EE08
5F043GG02
5F157AA54
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB23
5F157BB24
5F157BE35
5F157BE43
5F157BE44
5F157CD24
5F157CE03
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF48
5F157DB02
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】エッチング幅を精度良く調節する。
【解決手段】基板処理装置は、基板9の周縁部に対して電解エッチングを行う。第1エッチングヘッド611は、回転軸を中心とする周方向の一部において基板9の周縁部と径方向に対向する。第1エッチングヘッド611は、電解液610を内部に保持する。第1エッチングヘッド611は、基板9の周縁部が挿入される挿入口615を有する。第1ヘッド移動機構は、第1エッチングヘッド611を基板9の周縁部に対して進退させる。アノードは、導電膜93と電気的に接触する。カソード66は、電解液610と電気的に接触する。電源は、基板9の周縁部が挿入口615から第1エッチングヘッド611の内部に挿入されて電解液610と接触している状態で、アノードとカソード66との間に電圧を付与する。これにより、導電膜93のエッチング幅を精度良く調節することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部に対して電解エッチングを行う基板処理装置であって、
一方の主面上に導電膜が設けられた基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転軸を中心として回転させる基板回転機構と、
前記回転軸を中心とする周方向の一部において前記基板の周縁部と径方向に対向し、電解液を内部に保持するとともに前記基板の前記周縁部が挿入される挿入口を有するエッチングヘッドと、
前記エッチングヘッドを前記基板の前記周縁部に対して進退させるヘッド移動機構と、
前記導電膜と電気的に接触するアノードと、
前記電解液と電気的に接触するカソードと、
前記基板の前記周縁部が前記挿入口から前記エッチングヘッドの内部に挿入されて前記電解液と接触している状態で、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を付与する電源と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記回転軸は上下方向に平行であり、
前記基板保持部は、前記一方の主面を上側に向けた状態の前記基板を下方から保持することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記電解液が前記エッチングヘッドの内部から前記基板の前記一方の主面上に流出することを抑制する流出抑制部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記周方向の一部において前記基板の周縁部と前記径方向に対向し、前記アノードと電気的に接触する導電液を内部に保持するとともに前記基板の前記周縁部が挿入される挿入口を有するもう1つのエッチングヘッドをさらに備え、
前記もう1つのエッチングヘッドは、前記基板の前記周縁部に対して進退可能であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとは、前記周方向において隣接することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとは、周方向にて連続する一繋がりの部材であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとは、前記周方向において離間して配置されており、
前記周方向における前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとの間に、前記基板の前記周縁部に付着した液体を除去する付着液除去部が設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記アノードは、前記基板の上方に位置し、前記導電膜と直接的または導電液を介して間接的に接触することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記径方向に延びて前記アノードを支持するアームをさらに備え、
前記エッチングヘッドも前記アームにより支持されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記回転軸は上下方向に垂直であり、
前記アノードおよび前記基板保持部はそれぞれ、前記基板の前記一方の主面および他方の主面に直接的に接触して前記基板を挟持し、
前記エッチングヘッドは前記基板の下方に配置されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流を測定する電流計と、
前記電流計からの出力に基づいて前記基板の前記周縁部に対する電解エッチングを停止する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記導電膜はルテニウムを含むことを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の周縁部に対して電解エッチングを行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板に対して様々な処理が施される。例えば、基板の主面に導電膜を形成した後に、当該基板のベベル部等に付着した導電膜を除去する処理が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1では、表面全体にルテニウム(Ru)の導電膜が設けられた基板から、裏面およびベベル部の導電膜を除去する技術が提案されている。特許文献1の除去装置では、電解容器に満たされた電解液中に、基板の裏面およびベベル部を浸漬し、基板上の導電膜と電解容器の底面に設けられた対向電極との間に直流電圧を印加することにより、導電膜のうち電解液中に浸漬された部位(すなわち、裏面およびベベル部)が陽極酸化され、電解液中に溶解する。これにより、塩酸や水酸化ナトリウムのような酸またはアルカリの水溶液中に単に浸漬するだけでは除去することが難しいルテニウムの導電膜が除去される。当該除去装置では、電解液に基板を浸漬する際に、基板の上面に電解液が接触しないように、電解容器の上端部に固定されて下方へと延びる円筒状のシール部材を、基板の上面に圧着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-353191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の除去装置では、電解容器に満たされた電解液に基板を浸漬するため、電解液の消費量が多くなる。また、基板の周縁部からの導電膜の除去が、基板の全周に亘って同時に行われるため、基板の周方向や径方向において導電膜の電気抵抗にばらつきが存在すると、基板の周縁部における導電膜の除去の均一性が低下するおそれがある。
【0006】
さらに、現在、基板上のデバイスの微細化等に伴って、基板の周縁部における導電膜の除去幅の精度向上が要求されているが、上記除去装置では、電解容器内に基板を配置する際に基板の位置が少しでもずれると、当該除去幅が周方向において不均一になる。また、上記除去装置では、基板の周縁部における導電膜の除去幅を決定するシール部材が電解容器に固定されているため、当該除去幅を調節することができない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、エッチング幅を精度良く調節することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、基板の周縁部に対して電解エッチングを行う基板処理装置であって、一方の主面上に導電膜が設けられた基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転軸を中心として回転させる基板回転機構と、前記回転軸を中心とする周方向の一部において前記基板の周縁部と径方向に対向し、電解液を内部に保持するとともに前記基板の前記周縁部が挿入される挿入口を有するエッチングヘッドと、前記エッチングヘッドを前記基板の前記周縁部に対して進退させるヘッド移動機構と、前記導電膜と電気的に接触するアノードと、前記電解液と電気的に接触するカソードと、前記基板の前記周縁部が前記挿入口から前記エッチングヘッドの内部に挿入されて前記電解液と接触している状態で、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を付与する電源と、を備える。
【0009】
本発明の態様2は、態様1の基板処理装置であって、前記回転軸は上下方向に平行である。前記基板保持部は、前記一方の主面を上側に向けた状態の前記基板を下方から保持する。
【0010】
本発明の態様3は、態様2の基板処理装置であって、当該基板処理装置は、前記電解液が前記エッチングヘッドの内部から前記基板の前記一方の主面上に流出することを抑制する流出抑制部をさらに備える。
【0011】
本発明の態様4は、態様2(態様2または3、であってもよい。)の基板処理装置であって、当該基板処理装置は、前記周方向の一部において前記基板の周縁部と前記径方向に対向し、前記アノードと電気的に接触する導電液を内部に保持するとともに前記基板の前記周縁部が挿入される挿入口を有するもう1つのエッチングヘッドをさらに備える。前記もう1つのエッチングヘッドは、前記基板の前記周縁部に対して進退可能である。
【0012】
本発明の態様5は、態様4の基板処理装置であって、前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとは、前記周方向において隣接する。
【0013】
本発明の態様6は、態様5の基板処理装置であって、前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとは、周方向にて連続する一繋がりの部材である。
【0014】
本発明の態様7は、態様4の基板処理装置であって、前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとは、前記周方向において離間して配置されている。前記周方向における前記エッチングヘッドと前記もう1つのエッチングヘッドとの間に、前記基板の前記周縁部に付着した液体を除去する付着液除去部が設けられる。
【0015】
本発明の態様8は、態様2(態様2または3、であってもよい。)の基板処理装置であって、前記アノードは、前記基板の上方に位置し、前記導電膜と直接的または導電液を介して間接的に接触する。
【0016】
本発明の態様9は、態様8の基板処理装置であって、当該基板処理装置は、前記径方向に延びて前記アノードを支持するアームをさらに備える。前記エッチングヘッドも前記アームにより支持される。
【0017】
本発明の態様10は、態様1の基板処理装置であって、前記回転軸は上下方向に垂直である。前記アノードおよび前記基板保持部はそれぞれ、前記基板の前記一方の主面および他方の主面に直接的に接触して前記基板を挟持する。前記エッチングヘッドは前記基板の下方に配置される。
【0018】
本発明の態様11は、態様1ないし10のいずれか1つの基板処理装置であって、当該基板処理装置は、前記アノードと前記カソードとの間に流れる電流を測定する電流計と、前記電流計からの出力に基づいて前記基板の前記周縁部に対する電解エッチングを停止する制御部と、をさらに備える。
【0019】
本発明の態様12は、態様1ないし10のいずれか1つ(態様1ないし11のいずれか1つ、であってもよい。)の基板処理装置であって、前記導電膜はルテニウムを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、エッチング幅を精度良く調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】基板処理システムの平面図である。
図2】第1の実施の形態に係る基板処理装置の側面図である。
図3】制御部の構成を示す図である。
図4】エッチング部の一部の構成および基板を示す平面図である。
図5】第1エッチングヘッドの縦断面図である。
図6】第2エッチングヘッドの縦断面図である。
図7】基板の処理の流れを示す図である。
図8】エッチング部の一部の構成および基板を示す平面図である。
図9】エッチング部の一部の構成および基板を示す平面図である。
図10】エッチング部の一部の構成および基板を示す平面図である。
図11】第2の実施の形態に係るエッチング部近傍を示す側面図である。
図12】エッチング部近傍を示す側面図である。
図13】第3の実施の形態に係るエッチング部近傍を示す側面図である。
図14】エッチング部近傍を示す正面図である。
図15】第1エッチングヘッドの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、基板処理システム10のレイアウトを示す図解的な平面図である。基板処理システム10は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を処理するシステムである。基板処理システム10は、インデクサブロック101と、インデクサブロック101に結合された処理ブロック102とを備える。
【0023】
インデクサブロック101は、キャリア保持部104と、インデクサロボット105と、IR移動機構106とを備える。キャリア保持部104は、複数枚の基板9を収容できる複数のキャリア107を保持する。複数のキャリア107(例えば、FOUP)は、所定のキャリア配列方向に配列された状態でキャリア保持部104に保持される。IR移動機構106は、キャリア配列方向にインデクサロボット105を移動させる。インデクサロボット105は、基板9をキャリア107から搬出する搬出動作、および、キャリア保持部104に保持されたキャリア107に基板9を搬入する搬入動作を行う。基板9は、インデクサロボット105によって水平な姿勢で搬送される。
【0024】
処理ブロック102は、基板9を処理する複数(たとえば、4つ以上)の処理ユニット108と、センターロボット109とを備えている。複数の処理ユニット108は、平面視において、センターロボット109を取り囲むように配置されている。複数の処理ユニット108では、基板9に対する様々な処理が施される。後述する基板処理装置は、複数の処理ユニット108のうちの1つである。センターロボット109は、処理ユニット108に基板9を搬入する搬入動作、および、基板9を処理ユニット108から搬出する搬出動作を行う。さらに、センターロボット109は、複数の処理ユニット108間で基板9を搬送する。基板9は、センターロボット109によって水平な姿勢で搬送される。センターロボット109は、インデクサロボット105から基板9を受け取るとともに、インデクサロボット105に基板9を渡す。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す側面図である。基板処理装置1は、基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板9の周縁部(すなわち、ベベル部、および、ベベル部近傍の部位)に対して電解エッチングを行う装置である。図2では、基板処理装置1の構成の一部を断面にて示す。
【0026】
基板処理装置1は、基板保持部31と、基板回転機構33と、カップ部4と、処理液供給部5と、エッチング部6と、ハウジング11と、制御部8とを備える。基板保持部31、基板回転機構33およびカップ部4等は、ハウジング11の内部空間に収容される。ハウジング11の天蓋部には、当該内部空間にガスを供給して下方に流れる気流(いわゆる、ダウンフロー)を形成する気流形成部12が設けられる。気流形成部12としては、例えば、FFU(ファン・フィルタ・ユニット)が利用される。制御部8は、ハウジング11の外部に配置され、基板保持部31、基板回転機構33、処理液供給部5およびエッチング部6等を制御する。
【0027】
図3に示すように、制御部8は、例えば、プロセッサ81と、メモリ82と、入出力部83と、バス84とを備える通常のコンピュータシステムである。バス84は、プロセッサ81、メモリ82および入出力部83を接続する信号回路である。メモリ82は、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサ81は、メモリ82に記憶されるプログラム等に従って、メモリ82等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算)を実行する。入出力部83は、操作者からの入力を受け付けるキーボード85およびマウス86、プロセッサ81からの出力等を表示するディスプレイ87、並びに、プロセッサ81からの出力等を送信する送信部等を備える。なお、制御部8は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)、または、回路基板等であってもよい。制御部8は、コンピュータシステム、PLCおよび回路基板等のうち、任意の複数の構成を含んでいてもよい。
【0028】
図2に示す基板保持部31および基板回転機構33はそれぞれ、略円板状の基板9を保持して回転させるスピンチャックの一部である。基板保持部31は、水平状態の基板9を下側から保持する。基板保持部31は、例えば、基板9を吸着して保持するバキュームチャックである。基板保持部31は、基板9の下側の主面(以下、「下面92」とも呼ぶ。)の中央部に接触して吸着する略円板状のベース部311を備える。ベース部311の直径は、基板9の直径よりも小さい。
【0029】
基板9の上側の主面(以下、「上面91」とも呼ぶ。)には、導電性を有する膜である導電膜が形成されている。当該導電膜は、基板9の上面91全体を覆うように上面91の略全面に亘って設けられており、基板9の周縁部も当該導電膜により覆われている。導電膜は、例えば、金属により形成された膜である。導電膜は、例えば、ルテニウム(Ru)を含む。本実施の形態では、導電膜の略全体がルテニウムにより形成されている。図2に示す例では、基板保持部31は、導電膜が形成された上面91を上側に向けた状態の基板9を下方から保持する。
【0030】
基板回転機構33は、基板保持部31の下方に配置される。基板回転機構33は、上下方向に略平行に延びる回転軸J1を中心として、基板9を基板保持部31と共に回転させる。図2に示す例では、基板回転機構33は、基板9を平面視における時計回りに回転させる。基板回転機構33は、シャフト331と、モータ332とを備える。シャフト331は、回転軸J1を中心とする略円柱状または略円筒状の部材である。シャフト331は、上下方向に延び、基板保持部31のベース部311の下面中央部に接続される。モータ332は、シャフト331を回転させる電動回転式モータである。なお、基板回転機構33は、他の構造を有するモータ(例えば、中空モータ等)であってもよい。また、基板9の回転方向は反時計回り方向であってもよい。
【0031】
処理液供給部5は、基板9に対して処理液を供給し、基板9に対する液処理を行う。処理液供給部5は、基板9の上方から基板9の上面91に向けて処理液を吐出するノズル51を備える。ノズル51は、例えば、略水平に延びる図示省略のアーム等により支持される。当該処理液は、例えば、基板9のリンス処理に利用されるDIW(脱イオン水)等のリンス液である。なお、ノズル51からは、リンス液以外の様々な種類の処理液が吐出されてもよい。
【0032】
処理液供給部5は、ノズル51を移動するノズル移動機構を備えていてもよい。当該ノズル移動機構は、例えば、基板9の上方の供給位置と、基板9の外縁よりも回転軸J1を中心とする径方向(以下、単に「径方向」とも呼ぶ。)の外側の退避位置との間で、ノズル51を略水平に移動する。ノズル移動機構は、例えば、電動リニアモータ、エアシリンダ、または、ボールネジおよび電動回転式モータを備える。また、処理液供給部5は、ノズル51に加えて、ノズル51から吐出される処理液とは異なる種類の処理液を基板9に吐出する他のノズルを備えていてもよい。
【0033】
カップ部4は、カップ41と、図示省略のカップ昇降機構とを備える。カップ41は、回転軸J1を中心とする環状の部材である。カップ41は、基板9および基板保持部31の周囲において、回転軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも呼ぶ。)の全周に亘って配置され、基板9および基板保持部31の側方および下方を覆う。カップ41は、回転中の基板9から周囲に向かって飛散する処理液等の液体を受ける受液容器である。カップ41の内側面は、例えば撥水性材料により形成される。カップ41は、基板9の回転および静止に関わらず、周方向において静止している。カップ41の底部には、カップ41にて受けられた処理液等をハウジング11の外部へと排出する排液ポート(図示省略)が設けられる。
【0034】
カップ昇降機構は、カップ41を基板保持部31に対して相対的に上下方向に移動する。カップ昇降機構は、例えば、カップ41に接続される電動リニアモータ、エアシリンダ、または、ボールネジおよび電動回転式モータを備える。カップ41は、カップ昇降機構により、図2に示す基板9の周囲の位置である処理位置と、当該処理位置よりも下側の退避位置との間で上下方向に移動可能である。
【0035】
カップ部4は、径方向に積層される複数のカップ41を備えていてもよい。カップ部4が複数のカップ41を備える場合、複数のカップ41はそれぞれ独立して上下方向に移動可能であり、基板9から飛散する処理液の種類に合わせて、複数のカップ41が切り替えられて処理液の受液に使用される。
【0036】
図4は、エッチング部6の一部の構成および基板9を示す平面図である。エッチング部6は、2つのヘッドユニット61,62と、2つの付着液除去部63,64と、電源65とを備える。2つのヘッドユニット61,62は、周方向に離間して配置される。図2および図4に示す例では、2つのヘッドユニット61,62は、周方向において略180°離れた位置に配置される。換言すれば、ヘッドユニット61は、回転軸J1を挟んでもう1つのヘッドユニット62の反対側に配置される。2つのヘッドユニット61,62の構造は略同じである。以下の説明では、ヘッドユニット61、および、もう1つのヘッドユニット62をそれぞれ、「第1ヘッドユニット61」および「第2ヘッドユニット62」とも呼ぶ。
【0037】
第1ヘッドユニット61は、エッチングヘッド611と、ヘッド移動機構612と、アーム613とを備える。エッチングヘッド611は、例えば、略直方体状の部材であり、略水平に延びるアーム613によって支持される。エッチングヘッド611は、基板保持部31に保持された基板9の周囲において周方向の一部に配置される。エッチングヘッド611は、基板9と上下方向の略同じ位置に配置され、基板9の周縁部の一部と径方向に対向する。ヘッド移動機構612は、エッチングヘッド611を径方向に略平行に移動することにより,エッチングヘッド611を基板9の周縁部に対して進退させる。ヘッド移動機構612は、例えば、電動リニアモータ、エアシリンダ、または、ボールネジおよび電動回転式モータを備える。
【0038】
第2ヘッドユニット62は、エッチングヘッド621と、ヘッド移動機構622と、アーム623とを備える。エッチングヘッド621は、例えば、略直方体状の部材であり、略水平に延びるアーム623によって支持される。エッチングヘッド621は、基板保持部31に保持された基板9の周囲において周方向の一部に配置される。エッチングヘッド621は、基板9と上下方向の略同じ位置に配置され、基板9の周縁部の一部と径方向に対向する。ヘッド移動機構622は、エッチングヘッド621を径方向に略平行に移動することにより,エッチングヘッド621を基板9の周縁部に対して進退させる。ヘッド移動機構622は、例えば、電動リニアモータ、エアシリンダ、または、ボールネジおよび電動回転式モータを備える。
【0039】
以下の説明では、エッチングヘッド611、および、もう1つのエッチングヘッド621をそれぞれ、「第1エッチングヘッド611」および「第2エッチングヘッド621」とも呼ぶ。また、ヘッド移動機構612、および、もう1つのヘッド移動機構622をそれぞれ、「第1ヘッド移動機構612」および「第2ヘッド移動機構622」とも呼ぶ。第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621とは、略同じ構造を有する。また、第1ヘッド移動機構612と第2ヘッド移動機構622とは、略同じ構造を有する。
【0040】
図5は、第1エッチングヘッド611を拡大して示す縦断面図である。第1エッチングヘッド611は、ヘッド流路614と、挿入口615と、流出抑制部616とを備える。ヘッド流路614は、第1エッチングヘッド611の内部に形成された空間であり、導電性を有する液体である電解液610が流れる。図5では、電解液610に平行斜線を付す。ヘッド流路614は、例えば、第1エッチングヘッド611の上部および下部において略水平に広がる空間を、第1エッチングヘッド611の径方向内側の部位(すなわち、図5中の左側の部位)において連結した形状を有する。図5に示す例では、ヘッド流路614の上部に径方向外側から供給された電解液610が、径方向内方へと流れてヘッド流路614の下部へと移動し、ヘッド流路614の下部を径方向外方へと流れてヘッド流路614から排出される。電解液610としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸または水酸化ナトリウム等が利用可能である。
【0041】
挿入口615は、第1エッチングヘッド611の径方向内側の側面において、略水平に延びるスリット状の開口である。挿入口615は、第1エッチングヘッド611の上記側面において、径方向内側を向いて開口している。挿入口615には、基板9の周縁部が径方向内側から挿入される。基板9の周縁部は、第1エッチングヘッド611の挿入口615の周囲の部位とは直接的に接触しておらず、基板9と挿入口615の周囲の部位との間には僅かな間隙が存在する。挿入口615は、ヘッド流路614の径方向内側の部位に接続されており、ヘッド流路614を流れる電解液610は、挿入口615にも供給される。挿入口615を介して第1エッチングヘッド611の内部に挿入された基板9の周縁部は、ヘッド流路614を流れる電解液610と直接的に接触する。
【0042】
流出抑制部616は、挿入口615の近傍に設けられ、第1エッチングヘッド611の内部に保持されている電解液610が、挿入口615を介して基板9の上面91上に流出することを抑制する。図5に示す例では、流出抑制部616は、挿入口615の上部に配置されるノズル617を備える。ノズル617の下端部には、下方に向けてガスを噴射する噴射口618が設けられる。噴射口618は、平面視において周方向に延びる略円弧状の開口である。噴射口618は、挿入口615に挿入された基板9の上面91と上下方向に対向する。
【0043】
ノズル617は、第1エッチングヘッド611内に設けられたガス流路を介して、図示省略のガス供給源に接続される。当該ガス供給源からノズル617に供給されたガス(例えば、窒素等の不活性ガスまたは圧縮空気)は、ノズル617の噴射口618から基板9の上面91に向けて噴射される。これにより、第1エッチングヘッド611内部の電解液610が、基板9の上面91を伝わって周縁部よりも径方向内側の領域へと流出することが抑制される。その結果、基板9の上面91において、周縁部よりも径方向内側の領域の導電膜93と電解液610との直接的な接触が抑制される。図5では、導電膜93を太線にて示す。後述する図6図11図12および図14においても同様である。
【0044】
ヘッド流路614の下部には、電源65(図4参照)の陰極に電気的に接続されたカソード66が配置される。カソード66は、ヘッド流路614の内部において電解液610と直接的に接触することにより、電解液610と電気的に接触している。カソード66は、例えば、導電性を有する略平板状の部材である。カソード66の材質は、例えば、プラチナ(Pt)、ルテニウムまたはカーボン等である。カソード66の形状および材質は様々に変更されてよい。
【0045】
なお、カソード66は、電解液610と電気的に接触するのであれば、必ずしもヘッド流路614の下部に配置される必要はなく、その位置は適宜変更されてよい。例えば、カソード66は、ヘッド流路614の上部に配置されて電解液610と直接的に接触してもよい。あるいは、カソード66は、ヘッド流路614の外部に配置されて、電解液610と直接的に接触することなく、ヘッド流路614内の電解液610と電気的に接触してもよい。
【0046】
図6は、第2エッチングヘッド621を拡大して示す縦断面図である。第2エッチングヘッド621は、ヘッド流路624と、挿入口625と、流出抑制部626とを備える。ヘッド流路624は、第1エッチングヘッド621の内部に形成された空間であり、導電性を有する液体である導電液620が流れる。図6では、導電液620に平行斜線を付す。ヘッド流路624は、例えば、第2エッチングヘッド621の上部および下部において略水平に広がる空間を、第2エッチングヘッド621の径方向内側の部位(すなわち、図6中の右側の部位)において連結した形状を有する。図6に示す例では、ヘッド流路624の上部に径方向外側から供給された導電液620が、径方向内方へと流れてヘッド流路624の下部へと移動し、ヘッド流路624の下部を径方向外方へと流れてヘッド流路624から排出される。導電液620は、電解液610と同じ種類の液体であってもよく、電解液610とは異なる種類の液体であってもよい。導電液620が電解液610と同じ種類の液体である場合、導電液620は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸または水酸化ナトリウム等である。
【0047】
挿入口625は、第2エッチングヘッド621の径方向内側の側面において、略水平に延びるスリット状の開口である。挿入口625は、第2エッチングヘッド621の上記側面において、径方向内側を向いて開口している。挿入口625には、基板9の周縁部が径方向内側から挿入される。基板9の周縁部は、第2エッチングヘッド621の挿入口625の周囲の部位とは直接的に接触しておらず、基板9と挿入口625の周囲の部位との間には僅かな間隙が存在する。挿入口625は、ヘッド流路624の径方向内側の部位に接続されており、ヘッド流路624を流れる導電液620は、挿入口625にも供給される。挿入口625を介して第2エッチングヘッド621の内部に挿入された基板9の周縁部は、ヘッド流路624を流れる導電液620と直接的に接触する。
【0048】
流出抑制部626は、挿入口625の近傍に設けられ、第2エッチングヘッド621の内部に保持されている導電液620が、挿入口625を介して基板9の上面91上に流出することを抑制する。図6に示す例では、流出抑制部626は、挿入口625の上部に配置されるノズル627を備える。ノズル627の下端部には、下方に向けてガスを噴射する噴射口628が設けられる。噴射口628は、平面視において周方向に延びる略円弧状の開口である。噴射口628は、挿入口625に挿入された基板9の上面91と上下方向に対向する。
【0049】
ノズル627は、第2エッチングヘッド621内に設けられたガス流路を介して、図示省略のガス供給源に接続される。当該ガス供給源からノズル627に供給されたガス(例えば、窒素等の不活性ガスまたは圧縮空気)は、ノズル627の噴射口628から基板9の上面91に向けて噴射される。これにより、第2エッチングヘッド621内部の導電液620が、基板9の上面91を伝わって第2エッチングヘッド621よりも径方向内側の領域まで流出することが抑制される。
【0050】
ヘッド流路624の上部には、電源65(図4参照)の陽極に電気的に接続されたアノード67が配置される。アノード67は、ヘッド流路624の内部において導電液620と直接的に接触することにより、導電液620と電気的に接触している。アノード67は、例えば、導電性を有する略平板状の部材である。アノード67の材質は、例えば、プラチナ、ルテニウムまたはカーボン等である。アノード67の形状および材質は様々に変更されてよい。
【0051】
なお、アノード67は、導電液620と電気的に接触するのであれば、必ずしもヘッド流路624の上部に配置される必要はなく、その位置は適宜変更されてよい。例えば、アノード67は、ヘッド流路624の下部に配置されて導電液620と直接的に接触してもよい。あるいは、アノード67は、ヘッド流路624の外部に配置されて、導電液620と直接的に接触することなく、ヘッド流路624内の導電液620と電気的に接触してもよい。
【0052】
図4に示すように、2つの付着液除去部63,64は、周方向において略180°離れた位置に配置される。換言すれば、付着液除去部63は、回転軸J1を挟んでもう1つの付着液除去部64の反対側に配置される。2つの付着液除去部63,64の構造は略同じである。以下の説明では、付着液除去部63、および、もう1つの付着液除去部64をそれぞれ、「第1付着液除去部63」および「第2付着液除去部64」とも呼ぶ。
【0053】
図2および図4に示す例では、第1付着液除去部63は、例えば、基板9の周縁部に向けてガス(例えば、窒素等の不活性ガスまたは圧縮空気)を噴射するノズル631を備える。ノズル631は、周方向に離間して配置される第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621との間に配置される。ノズル631は、例えば、第1エッチングヘッド611から基板9の回転方向(すなわち、時計回り方向)に約90°離れた位置において、基板9の上面91よりも上側に配置される。ノズル631から基板9の周縁部に向けてガスが噴射されることにより、第1エッチングヘッド611にて基板9の周縁部に付着した電解液の液滴等が吹き飛ばされ、基板9上から除去される。基板9上から除去された電解液は、カップ部4により受けられる。
【0054】
第2付着液除去部64は、例えば、基板9の周縁部に向けてガス(例えば、窒素等の不活性ガスまたは圧縮空気)を噴射するノズル641を備える。ノズル641は、周方向に離間して配置される第2エッチングヘッド621と第1エッチングヘッド611との間に配置される。ノズル641は、例えば、第2エッチングヘッド621から基板9の回転方向(すなわち、時計回り方向)に約90°離れた位置において、基板9の上面91よりも上側に配置される。ノズル641から基板9の周縁部に向けてガスが噴射されることにより、第2エッチングヘッド621にて基板9の周縁部に付着した導電液の液滴等が吹き飛ばされ、基板9上から除去される。基板9上から除去された導電液は、カップ部4により受けられる。
【0055】
次に、基板処理装置1における基板9の処理の流れについて、図7を参照しつつ説明する。基板9が処理される際には、まず、基板処理装置1に基板9が搬入され、基板保持部31により略水平に保持される(ステップS11)。ステップS11では、基板9の中心と回転軸J1とが平面視において一致する様に、基板保持部31の位置調整が行われる。また、基板9が搬入される際には、第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621は、図2中において二点鎖線にて示される退避位置、または、当該退避位置の上方に位置する。第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621は、平面視において基板9の外周縁から径方向外方に離間しており、基板9の搬出入を阻害しない。
【0056】
続いて、制御部8によって制御された第1ヘッド移動機構612および第2ヘッド移動機構622により、第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621が、上述の退避位置から径方向内方へと移動され、図2中において実線にて示される処理位置に位置する。これにより、基板9の周縁部が、第1エッチングヘッド611の挿入口615、および、第2エッチングヘッド621の挿入口625に挿入される(ステップS12)。
【0057】
ステップS12では、第2エッチングヘッド621の処理位置は、第1エッチングヘッド611の処理位置よりも径方向内側に位置する。換言すれば、処理位置における第2エッチングヘッド621の径方向内端部は、処理位置における第1エッチングヘッド611の径方向内端部よりも径方向内側に位置する。これにより、第2エッチングヘッド621の挿入口625から第2エッチングヘッド621の内部に挿入される基板9の径方向の幅は、第1エッチングヘッド611の挿入口615から第1エッチングヘッド611の内部に挿入される基板9の径方向の幅(以下、「挿入深さ」とも呼ぶ。)よりも大きくなる。
【0058】
第1エッチングヘッド611では、制御部8による制御によって、ヘッド流路614への電解液610の供給が開始されるとともに、流出抑制部616のノズル617から、基板9の上面91に対するガスの噴射が開始される。これにより、基板9の周縁部の導電膜93が、第1エッチングヘッド611の内部の電解液610と直接的に接触する。また、流出抑制部616により、第1エッチングヘッド611内の電解液610が、基板9の上面91上において周縁部よりも径方向内側の領域へと流出することが抑制される。なお、基板9の下面92を伝わって第1エッチングヘッド611内から流出した電解液は、カップ部4により受けられる。
【0059】
第2エッチングヘッド621では、制御部8による制御によって、ヘッド流路624への導電液620の供給が開始されるとともに、流出抑制部626のノズル627から、基板9の上面91に対するガスの噴射が開始される。これにより、基板9上の導電膜93が第2エッチングヘッド621の内部の導電液620と直接的に接触する。また、流出抑制部626により、第2エッチングヘッド621内の導電液620が、基板9の上面91上において周縁部よりも径方向内側の領域へと流出することが抑制される。なお、基板9の下面92を伝わって第2エッチングヘッド621内から流出した導電液は、カップ部4にカップ部4により受けられる。
【0060】
次に、制御部8によって基板回転機構33が駆動されることにより、基板9の回転が開始される(ステップS13)。そして、制御部8によって電源65が制御されることにより、アノード67とカソード66との間に電圧が付与される。これにより、第1エッチングヘッド611において、電解液610と接触している基板9の周縁部の導電膜93(すなわち、ルテニウム膜)がイオン化されて溶解する。このように、第1エッチングヘッド611では、基板9の周縁部の導電膜93が電解エッチングされて基板9上から除去される(ステップS14)。電解エッチングにより除去される導電膜93の径方向における幅(すなわち、エッチング幅)は、例えば3mm以下であり、当該幅の精度として、例えば0.1mm以下が要求される。なお、電源65は、直流電源であり、アノード67とカソード66との間に付与される電圧は、例えば、2V(ボルト)~10Vである。なお、当該電圧は、2V未満であってもよく、10Vよりも高くてもよい。
【0061】
ステップS14では、回転する基板9の周縁部のうち、第1エッチングヘッド611において電解液610と接触した部位が第1付着液除去部63に到達すると、基板9に付着している電解液は、ノズル631から噴射されるガスにより吹き飛ばされて基板9上から除去される。これにより、基板9に付着している電解液が、第2エッチングヘッド621において導電液620に混入することが抑制または防止される。また、ステップS14では、回転する基板9の周縁部のうち、第2エッチングヘッド621において導電液620と接触した部位が第2付着液除去部64に到達すると、基板9に付着している導電液は、ノズル641から噴射されるガスにより吹き飛ばされて基板9上から除去される。これにより、基板9に付着している導電液が、第1エッチングヘッド611において電解液610に混入することが抑制または防止される。
【0062】
ステップS14では、上述のように、第2エッチングヘッド621における基板9の挿入深さは、第1エッチングヘッド611における基板9の挿入深さよりも大きい。このため、第2エッチングヘッド621において導電液620と接触する導電膜93の幅は、第1エッチングヘッド611において電解液610と接触する導電膜93の幅よりも大きくなる。換言すれば、基板9の周縁部では、電解液610と接触する領域よりも径方向内側の領域まで導電液620と接触する。このため、基板9の周縁部から導電膜93がある程度除去された状態であっても、基板9上の導電膜93と第2エッチングヘッド621内の導電液620との接触(すなわち、電気的接続)を好適に維持することができる。
【0063】
基板処理装置1では、制御部8により所定のレシピに従って基板回転機構33およびエッチング部6が制御されることによって、所定の処理時間の経過後、電源65からの電圧の付与が停止され、上述の電解エッチングが停止される。基板9は、電解エッチングの開始から終了までの間に、少なくとも1周(すなわち、360°)以上回転し、好ましくは、2~3周回転する。これにより、基板9上の導電膜93のうち、基板9の周縁部上の部位が全周に亘って除去される。
【0064】
電解エッチングが終了すると、第1エッチングヘッド611において、電解液610の供給および流出抑制部616からのガス噴射が停止され、第2エッチングヘッド621において、導電液620の供給および流出抑制部626からのガス噴射が停止される。また、基板9の回転が停止され(ステップS15)、第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621が退避位置へと移動される。さらに、第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621は上方へと移動され、カップ部4よりも上側へと退避する。
【0065】
続いて、処理液供給部5のノズル51から基板9の上面91の中央部にリンス液が供給されるとともに、基板回転機構33によって基板9が回転される。これにより、リンス液が基板9の上面91全体に広がり、基板9の周縁部に付着している電解液や導電液等を洗い流すリンス処理が行われる(ステップS16)。リンス液は、基板9の回転による遠心力によって基板9の外周縁から径方向外方へと飛散し、カップ部4により受けられる。
【0066】
基板9に対するリンス処理が所定の時間行われると、ノズル51からのリンス液の供給が停止される。その後、基板9の回転速度が増大され、基板9上のリンス液が振り切られて除去されることにより、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS17)。なお、乾燥処理は、公知の様々な方法により行われてよい。基板9の乾燥処理が終了すると、基板9の回転が停止され、基板9が基板処理装置1から搬出される。
【0067】
以上に説明したように、基板処理装置1は、基板9の周縁部に対して電解エッチングを行う。基板処理装置1は、基板保持部31と、基板回転機構33と、エッチングヘッド611(すなわち、第1エッチングヘッド611)と、ヘッド移動機構612(すなわち、第1ヘッド移動機構612)と、アノード67と、カソード66と、電源65とを備える。基板保持部31は、一方の主面(上記例では、上面91)上に導電膜93が設けられた基板9を保持する。基板回転機構33は、基板保持部31を回転軸J1を中心として回転させる。第1エッチングヘッド611は、回転軸J1を中心とする周方向の一部において基板9の周縁部と径方向に対向する。第1エッチングヘッド611は、電解液610を内部に保持する。第1エッチングヘッド611は、基板9の周縁部が挿入される挿入口615を有する。第1ヘッド移動機構612は、第1エッチングヘッド611を基板9の周縁部に対して進退させる。アノード67は、導電膜93と電気的に接触する。カソード66は、電解液610と電気的に接触する。電源65は、基板9の周縁部が挿入口615から第1エッチングヘッド611の内部に挿入されて電解液610と接触している状態で、アノード67とカソード66との間に電圧を付与する。
【0068】
基板処理装置1では、基板9の周縁部における導電膜93の電解エッチングにおいて、第1エッチングヘッド611の挿入口615に対する基板9の挿入深さを変更することにより、導電膜93のエッチング幅を精度良く調節することができる。また、基板処理装置1では、基板9が回転することにより、基板9の周縁部の周方向の各部位が第1エッチングヘッド611を通過して第1エッチングヘッド611において電解エッチングされるため、導電膜93のエッチング幅を基板9の全周に亘って略均一にすることができる。さらに、基板処理装置1では、電解エッチングに用いられる電解液610を、基板9の周縁部の一部のみが挿入される比較的小型の第1エッチングヘッド611内に保持しているため、電解液610の消費量を低減することもできる。
【0069】
上述のように、カソード66は第1エッチングヘッド611の内部に配置されることが好ましい。これにより、カソード66と電解液610との電気的接触を容易とすることができる。その結果、基板処理装置1の構造を簡素化することができる。
【0070】
上述のように、回転軸J1は上下方向に平行であり、基板保持部31は、上記一方の主面(上記例では、上面91)を上側に向けた状態の基板9を下方から保持することが好ましい。これにより、基板保持部31の構造を簡素化することができる。また、基板9の保持に、公知の基板保持部31、および、基板保持部31に関連する公知の構成を使用することができるため、基板処理装置1の製造を容易とすることができる。
【0071】
上述のように、基板処理装置1は、電解液610が第1エッチングヘッド611の内部から基板9の上記一方の主面上に流出することを抑制する流出抑制部616をさらに備えることが好ましい。これにより、基板9において、電解エッチングが行われる周縁部以外の領域への電解液の付着、および、電解液の付着に起因する当該領域における電解エッチングを好適に抑制することができる。
【0072】
基板処理装置1は、もう1つのエッチングヘッド621(すなわち、第2エッチングヘッド621)を備えることが好ましい。第2エッチングヘッド621は、周方向の一部において基板9の周縁部と径方向に対向する。第2エッチングヘッド621は、アノード67と電気的に接触する導電液620を内部に保持する。第2エッチングヘッド621は、基板9の周縁部が挿入される挿入口625を有する。また、第2エッチングヘッド621は、基板9の周縁部に対して進退可能であることが好ましい。これにより、アノード67と、回転する基板9の導電膜93との電気的接触を、簡素な構造で実現することができる。
【0073】
また、上述のように、アノード67は第2エッチングヘッド621の内部に配置されることが好ましい。これにより、アノード67と導電液620との電気的接触を容易とすることができる。その結果、基板処理装置1の構造を簡素化することができる。
【0074】
上述のように、第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621とは、周方向において離間して配置されている。そして、周方向における第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621との間に、基板9の周縁部に付着した液体を除去する付着液除去部(上記例では、第1付着液除去部63または第2付着液除去部64)が設けられることが好ましい。上述のように、第1付着液除去部63が設けられることにより、基板9に付着した電解液が第2エッチングヘッド621内の導電液620に混入することを抑制または防止することができる。また、第2付着液除去部64が設けられることにより、基板9に付着した導電液が第1エッチングヘッド611内の電解液610に混入することを抑制または防止することができる。
【0075】
上述のように、第1付着液除去部63および第2付着液除去部64は、基板9の周縁部に向けてガスを噴射するノズル631,641を備えることが好ましい。これにより、基板9の周縁部に付着した液体(すなわち、電解液および導電液)の除去を簡素な構造で実現することができる。なお、第1付着液除去部63および第2付着液除去部64は、必ずしも、ガスを噴射するノズル631,641を備える必要はなく、その構造は様々に変更されてよい。例えば、第1付着液除去部63および第2付着液除去部64は、基板9の周縁部に近接して周縁部上の液体を吸引する吸引部を備えていてもよい。また、基板処理装置1では、第1付着液除去部63および第2付着液除去部64の一方が省略され、他方のみが設けられてもよい。あるいは、基板9の周縁部に付着した上記液体が、基板9の回転による遠心力によって除去可能な場合、第1付着液除去部63および第2付着液除去部64の双方が省略されてもよい。
【0076】
上述のように、基板処理装置1では、半導体製造において一般的に使用されている薬液(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、SPM(Sulfuric. Acid Hydrogen Peroxide Mixture)、HPM(hydrochloric acid-hydrogen peroxide mixture)、水酸化アンモニウム等)を単に付与するだけではエッチングすることが難しいルテニウムを、当該一般的な薬液を用いてエッチングすることができる。したがって、基板処理装置1は、ルテニウムを含む導電膜93が設けられた基板9のエッチングに特に適している。
【0077】
基板処理装置1では、ステップS14における電解エッチングの終了は、必ずしもレシピにより決定される必要はなく、他の方法により決定されてもよい。例えば、電解エッチング中の基板9の周縁部が連続的に撮像され、撮像された画像と参照画像(例えば、導電膜93が良好に除去された基板9の周縁部の画像)とが比較されて、導電膜93の除去が基板9の全周に亘って良好に行われたことが確認された後、電解エッチングが終了されてもよい。
【0078】
あるいは、図8に示すように、第1エッチングヘッド611内のカソード66と電源65の陰極との間に電流計68が設けられ、電流計68からの出力に基づいて電解エッチングの終了が決定されてもよい。具体的には、電解エッチングが進行して第1エッチングヘッド611内の電解液610(図5参照)と接触する導電膜93が減少すると、電流計68により測定される電流(すなわち、第2エッチングヘッド621内のアノード67とカソード66との間に流れる電流)は減少する。したがって、電流計68から出力される電流の測定値が、所定の閾値以下にて所定時間以上維持された場合、制御部8(図2参照)により、基板9の周縁部の導電膜93が好適に除去されたと判断され、電源65が制御されてアノード67およびカソード66間への電圧の付与(すなわち、基板9の周縁部に対する電解エッチング)が停止される。
【0079】
このように、基板処理装置1は、アノード67とカソード66との間に流れる電流を測定する電流計68と、電流計68からの出力に基づいて基板9の周縁部に対する電解エッチングを停止する制御部8と、をさらに備えることも好ましい。これにより、基板9に対する電解エッチングの完了を精度良く判断することができる。なお、電流計68の接続位置は、カソード66と電源65との間には限定されず、様々に変更されてよい。
【0080】
上記例では、第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621は、周方向において略180°離れた位置に配置されるが、これには限定されず、第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621の配置は様々に変更されてよい。また、第1付着液除去部63および第2付着液除去部64の配置も様々に変更されてよい。
【0081】
例えば、図9に示すように、第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621とは、周方向において隣接して配置されてもよい。図9に示す例では、第1エッチングヘッド611は、第2エッチングヘッド621から基板9の回転方向(すなわち、時計回り方向)に約60°離れた位置に配置される。換言すれば、第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621との間の周方向の角度間隔(鋭角)は、約60°である。第1付着液除去部63のノズル631は、第1エッチングヘッド611から基板9の回転方向に約150°離れた位置に配置される。第2付着液除去部64のノズル641は、第2エッチングヘッド621から基板9の回転方向に約30°離れた位置に配置される。なお、上述のように、第1付着液除去部63および/または第2付着液除去部64は省略されてもよい。
【0082】
基板9の導電膜93(図5参照)では、周方向や径方向において電気抵抗にばらつきが存在する場合がある。この場合、第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621との間の距離が大きくなると、当該ばらつきによる影響も大きくなり、基板9の周方向の向き毎に電解エッチングの速度等が微妙に変化する可能性がある。図9に示す例では、上述のように、第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621とを隣接して配置する(すなわち、上記角度間隔が60°以下とする)ことにより、第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621との間の距離が小さくなる。このため、導電膜93の電気抵抗にばらつきが存在する場合であっても、電解エッチングに対する当該ばらつきの影響を低減することができ、その結果、基板9の周方向における電解エッチングの均一性を向上することができる。
【0083】
基板処理装置1では、図10に示すように、第1エッチングヘッド611と第2エッチングヘッド621とは、周方向において隣接して配置され、さらに、周方向において連続する一繋がりの部材であってもよい。この場合、第1エッチングヘッド611および第2エッチングヘッド621は、1つのアームにより支持され、1つのヘッド移動機構によって基板9の周縁部に対して進退する。これにより、基板処理装置1の構造を簡素化することができる。
【0084】
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる基板処理装置1aについて説明する。図11は、基板処理装置1aのエッチング部6a近傍を拡大して示す側面図である。基板処理装置1aでは、図2に示す基板処理装置1から第2ヘッドユニット62が省略され、アノード67aが基板9の上方(すなわち、基板9の上面91よりも上側)に配置される。基板処理装置1aの他の構成は、基板処理装置1の構成と略同様であり、以下の説明では同符号を付す。
【0085】
基板処理装置1aでは、アノード67aは略円板状または略円環板状の部材である。アノード67aの下面は回転軸J1に略垂直であり、基板9の径方向中央部において、基板9の上面91に形成された導電膜93に直接的に面接触する。換言すれば、基板9は、基板保持部31およびアノード67aにより上下から挟み込まれる。基板処理装置1aでは、図2に示すアーム613に代えて、アーム613よりも径方向内側まで延びるアーム613aが設けられる。アノード67aは、アーム613aの径方向内端部において、回転軸J1を中心として回転可能に支持される。第1エッチングヘッド611は、アノード67aよりも径方向外側において、基板9の周縁部に対して進退可能にアーム613aによって支持される。
【0086】
基板処理装置1aにおける基板9の処理の流れは、上述のステップS11~S17(図7参照)と略同様である。基板処理装置1aにおいて、基板9の周縁部の導電膜93に対する電解エッチングが行われる際には、電源65によりアノード67aとカソード66との間に電圧が付与される。このとき、アノード67aは、基板9および基板保持部31と共に基板回転機構33(図2参照)により回転される。あるいは、基板処理装置1aでは、基板回転機構33とは別のアノード回転機構(図示省略)が設けられ、アノード67aは、基板回転機構33による基板9の回転と同期して、基板9と同方向に同じ回転速度にてアノード回転機構により回転されてもよい。アノード回転機構は、例えば、基板回転機構33と同様の電動回転式モータである。アノード回転機構は、他の構造を有するモータ(例えば、中空モータ等)であってもよい。
【0087】
基板処理装置1aにおいても、基板処理装置1と略同様に、第1エッチングヘッド611の挿入口615(図5参照)に対する基板9の挿入深さを変更することにより、導電膜93のエッチング幅を精度良く調節することができる。また、導電膜93のエッチング幅を基板9の全周に亘って略均一にすることができるとともに、電解液610(図5参照)の消費量を低減することもできる。
【0088】
上述のように、基板処理装置1aでは、アノード67aは基板9の上方に位置し、導電膜93と直接的に接触する。これにより、アノード67aと導電膜93との電気的接触を簡素な構造で実現することができる。また、基板処理装置1aは、径方向に延びてアノード67aを支持するアーム613aをさらに備え、第1エッチングヘッド611も当該アーム613aにより支持される。これにより、アノード67aおよび第1エッチングヘッド611の支持および移動に係る構成を簡素化することができる。また、アノード67aおよび第1エッチングヘッド611内のカソード66に対する電気配線を、アーム613aに沿わせてまとめて配置することができるため、基板処理装置1aの構造を簡素化することができる。
【0089】
基板処理装置1aでは、図12に示すように、アノード67aは基板9の上面91から上方に僅かに離間して位置し、アノード67aと基板9の上面91上の導電膜93との間に導電液620が充填されてもよい。すなわち、アノード67aは、導電液620を介して導電膜93と間接的に接触することにより、導電膜93と電気的に接触する。この場合も、アノード67aと導電膜93との電気的接触を簡素な構造で実現することができる。
【0090】
図12に示す例では、アノード67aはアーム613aの径方向内端部に回転不能に固定される。また、アノード67aの中央部に設けられた貫通孔にノズル671aが配置され、ノズル671aから基板9の上面91上に導電液620が供給される。導電液620は、アーム613a内に形成された配管、または、アーム613aに沿って設けられた配管を介してノズル671aに供給される。また、第1エッチングヘッド611に供給される電解液610(図5参照)も、アーム613a内に形成された配管、または、アーム613aに沿って設けられた配管を介して供給される。
【0091】
基板処理装置1aでは、導電液620と電解液610とが同じ種類の液体である場合、当該液体を第1エッチングヘッド611に供給する配管と、当該液体をノズル671aに供給する配管とを共通化することができる。これにより、基板処理装置1aの構造を簡素化することができる。また、基板処理装置1aでは、アノード67aが基板9に直接的に接触しないため、基板9上の導電膜93がアノード67aとの接触により損傷することを防止することができる。
【0092】
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる基板処理装置1bについて説明する。図13は、基板処理装置1bのエッチング部6b近傍を拡大して示す側面図である。図14は、エッチング部6b近傍を拡大して示す正面図である。基板処理装置1bでは、基板9が略垂直に保持され、図5に示す第1エッチングヘッド611とは異なる構造を有するエッチングヘッド611bが設けられる。基板処理装置1bの他の構成は、基板処理装置1,1aの構成と略同様であり、以下の説明では同符号を付す。
【0093】
基板処理装置1bは、図11に示す基板処理装置1aのアノード67aと略同形状のアノード67bを備える。略円板状または略円環板状のアノード67bは、基板9の径方向中央部において、基板9の一方の主面91に形成された導電膜93に直接的に面接触する。また、バキュームチャックである基板保持部31は、基板9の径方向中央部において、基板9の他方の主面92に直接的に面接触する。基板処理装置1bでは、基板処理装置1aと略同様に、基板9が基板保持部31およびアノード67bにより上下から挟み込まれ、その後、基板保持部31およびアノード67bが、水平方向に延びる回転軸を中心として、基板9と共に約90°回転することにより、図13に示すように、基板9が基板保持部31およびアノード67bにより略垂直状態で挟持される。
【0094】
基板9が略垂直に支持された状態では、基板保持部31を回転させる基板回転機構(図示省略)の回転軸J1は上下方向に略垂直である。本実施の形態に係る以下の説明では、特に説明が無い場合、回転軸J1は、上下方向に略垂直に延びる状態(すなわち、略水平に延びる状態)のものを意味する。基板処理装置1bでは、基板9は、基板保持部31と共に回転軸J1を中心として図13中の時計回り方向に回転する。
【0095】
アノード67bは、回転軸J1を中心として回転可能に支持されており、基板9および基板保持部31と共に上述の基板回転機構により回転される。あるいは、基板処理装置1bでは、上述の基板回転機構とは別のアノード回転機構(図示省略)が設けられ、アノード67bは、基板回転機構による基板9の回転と同期して、基板9と同方向に同じ回転速度にてアノード回転機構により回転されてもよい。
【0096】
エッチングヘッド611bは、基板9の下方に配置される。エッチングヘッド611bは、ヘッド流路614bと、挿入口615bと、液受け619bとを備える。エッチングヘッド611bは、例えば、回転軸J1と略平行に延びる略円筒状の部材である。ヘッド流路614bは、エッチングヘッド611bの内部に形成された空間であり、上述の電解液610が流れる。図14では、エッチングヘッド611bを断面にて示し、電解液610に平行斜線を付す。図14に示す例では、電解液610は、図中の右側から左側に向かって流れる。カソード66bは、ヘッド流路614bの底部に配置され、電解液610に直接的に接触する。カソード66bは、例えば、回転軸J1と略平行に延びる略円柱状の部材である。
【0097】
挿入口615bは、エッチングヘッド611bの外周面の上端部において、略水平かつ回転軸J1に略垂直に延びるスリット状の開口である。挿入口615bは、エッチングヘッド611bの外周面において、上側を向いて開口している。挿入口615bには、基板9の周縁部の下端部が上側から挿入される。基板9の周縁部は、エッチングヘッド611bの挿入口615bの周囲の部位とは直接的に接触しておらず、基板9と挿入口615bの周囲の部位との間には僅かな間隙が存在する。挿入口615bは、ヘッド流路614bの上部に設けられており、挿入口615bを介してエッチングヘッド611bの内部に挿入された基板9の周縁部は、ヘッド流路614bを流れる電解液610と直接的に接触する。
【0098】
液受け619bは、エッチングヘッド611bに隣接して配置され、エッチングヘッド611bに対して基板9の回転方向(すなわち、図13中の時計回り方向)の前側に位置する。液受け619bおよびエッチングヘッド611bの上方には付着液除去部63bが設けられる。付着液除去部63bは、上述の第1付着液除去部63と略同様に、エッチングヘッド611bにて基板9の周縁部に付着した電解液の液滴等を除去する。図14に示す例では、付着液除去部63bは、基板9の周縁部に向けてガスを噴射する2つのノズル631bを備え、2つのノズル631bは、図中における基板9の左右両側に配置される。ノズル631bから噴射されたガスにより基板9の周縁部から吹き飛ばされた電解液は、液受け619bにより受けられる。
【0099】
基板処理装置1bにおける基板9の処理の流れは、上述のステップS11~S17(図7参照)と略同様である。ただし、基板処理装置1bでは、ステップS11において、基板9が基板保持部31によって略水平に保持された後、基板9が基板保持部31とアノード67bによって挟持され、90°回転して略垂直に支持される点が異なる。また、ステップS12では、基板9の周縁部がエッチングヘッド611bの挿入口615bに挿入される点が異なる。さらに、ステップS15とステップS16との間で、基板9が基板保持部31およびアノード67bと共に90°回転して略水平とされた後、基板9上からアノード67bが離間して退避する点が異なる。
【0100】
基板処理装置1bにおいても、基板処理装置1と略同様に、エッチングヘッド611bの挿入口615bに対する基板9の挿入深さを変更することにより、導電膜93のエッチング幅を精度良く調節することができる。また、導電膜93のエッチング幅を基板9の全周に亘って略均一にすることができるとともに、電解液610の消費量を低減することもできる。
【0101】
上述のように、基板処理装置1bでは、回転軸J1は上下方向に垂直である。また、アノード67bおよび基板保持部31はそれぞれ、基板9の一方の主面91(すなわち、導電膜93が設けられる主面)および他方の主面92に直接的に接触して基板9を挟持する。そして、エッチングヘッド611bは、基板9の下方に配置される。これにより、エッチングヘッド611b内における電解液610の保持を容易とすることができる。
【0102】
上述の基板処理装置1,1a,1bでは、様々な変更が可能である。
【0103】
例えば、基板処理装置1,1aでは、図15に示すように、第1エッチングヘッド611の下部が、第1エッチングヘッド611の上部よりも径方向内側まで、基板9の下面92に沿って延びるように構成され、基板9の下面92の下方までヘッド流路614が延びていてもよい。これにより、第1エッチングヘッド611内の電解液610が、基板9の下面92を伝わって第1エッチングヘッド611から流出することを抑制することができる。第2エッチングヘッド621においても略同様である。
【0104】
基板処理装置1では、基板9は、導電膜93が設けられた主面を下方に向けて略水平に保持されてもよい。この場合、第1付着液除去部63および第2付着液除去部64は、基板9の下方に設けられる。
【0105】
基板処理装置1aでも同様に、基板9は、導電膜93が設けられた主面を下方に向けて略水平に保持されてもよい。この場合、例えば、基板9の導電膜93に直接的に接触する基板保持部31のベース部311(図2参照)が、アノード67として兼用されてもよい。あるいは、アノード67は、基板保持部31のベース部311と第1エッチングヘッド611との間にて基板9の下方に配置され、導電液の液膜を介して基板9の導電膜93に間接的に接触してもよい。
【0106】
基板処理装置1,1aの第1エッチングヘッド611では、流出抑制部616の構造は上記例には限定されず、様々に変更されてよい。あるいは、流出抑制部616は省略されてもよい。第2エッチングヘッド621においても同様である。
【0107】
例えば、基板処理装置1では、流出抑制部616のノズル617に代えて、基板9の上面91上にOリングが配置され、当該Oリングにより、第1エッチングヘッド611の挿入口615と基板9の上面91との間の隙間、および、第2エッチングヘッド621の挿入口625と基板9の上面91との間の隙間が、径方向内側から液密に封止されてもよい。
【0108】
あるいは、基板処理装置1では、流出抑制部616のノズル617が省略され、処理液供給部5のノズル51から基板9の上面91にDIWが供給されて、上面91上にDIWの液膜が形成されてもよい。当該液膜の外周部は、第1エッチングヘッド611の挿入口615内において、第1エッチングヘッド611内の電解液610と接触して界面を形成する。基板9上に供給されるDIWの流量と、第1エッチングヘッド611内に供給される電解液610の流量とを調節することにより、第1エッチングヘッド611内部の電解液610が、基板9の上面91を伝わって周縁部よりも径方向内側の領域へと流出することを抑制することができる。第2エッチングヘッド621においても同様である。この場合、処理液供給部5は、流出抑制部616,626としても機能する。また、上記界面近傍では、電解液610とDIWとが混合し、電解液610の濃度に勾配(すなわち、径方向内方に向かうに従って濃度が低くなる勾配)が生じる。基板処理装置1では、当該勾配を利用してエッチング幅が決定されてもよい。
【0109】
基板処理装置1aでは、アノード67aと第1エッチングヘッド611とは、異なるアームにより支持されていてもよい。
【0110】
基板処理装置1,1a,1bにおいて電解エッチングが行われる導電膜93は、必ずしもルテニウム膜である必要はなく、ルテニウムを含む膜である必要もない。導電膜93は、ルテニウム以外の物質のみを含む膜であってよい。
【0111】
上述の基板処理装置1,1a,1bは、半導体基板以外に、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等の平面表示装置(Flat Panel Display)に使用されるガラス基板、あるいは、他の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。また、上述の基板処理装置1,1a,1bは、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
【0112】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0113】
1,1a,1b 基板処理装置
5 処理液供給部
8 制御部
9 基板
31 基板保持部
33 基板回転機構
63 第1付着液除去部
63b 付着液除去部
64 第2付着液除去部
66,66b カソード
67,67a,67b アノード
68 電流計
91 (基板の)上面
92 (基板の)下面
93 導電膜
610 電解液
611 第1エッチングヘッド
611b エッチングヘッド
612 第1ヘッド移動機構
613a アーム
615,615b,625 挿入口
616,626 流出抑制部
620 導電液
621 第2エッチングヘッド
622 第2ヘッド移動機構
J1 回転軸
S11~S17 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15