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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033202
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240306BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20240306BHJP
   A01B 63/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01B69/00 301
B60P3/00 M
A01B69/00 303M
A01B63/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136649
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】有村 浪漫
【テーマコード(参考)】
2B043
2B304
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA08
2B043BB03
2B043DA17
2B043DA20
2B043EA06
2B043EB05
2B043EE01
2B043EE06
2B304KA16
2B304LA02
2B304LA06
2B304LB05
2B304LB15
2B304MA20
2B304MB02
2B304RB01
2B304RB07
(57)【要約】
【課題】情報を効率よく表示して視認し易くした作業車両を提供する。
【解決手段】測位装置203により取得される機体の位置に基づいて、目標経路R1~Ryに沿って走行するように機体を走行制御する制御部302を備え、設定された目標経路R1~Ryの位置と機体の位置を表示する進行状況表示部32を有する走行アシスト画面Jを設け、この走行アシスト画面Jには目標経路R1~Ryに対する機体との偏移距離を示す数値と、目標経路R1~Ryの示す方向と、機体の進行方向とのずれ角度を表示するインジケータ35を設けた。
【選択図】 図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位装置(203)により取得される機体の位置に基づいて、目標経路(R1~Ry)に沿って走行するように機体を走行制御する制御部(302)を備え、設定された目標経路(R1~Ry)の位置と機体の位置を表示する進行状況表示部(32)を有する走行アシスト画面(J)を設け、この走行アシスト画面(J)には目標経路(R1~Ry)に対する機体との偏移距離を示す数値と、目標経路(R1~Ry)の示す方向と、機体の進行方向とのずれ角度を表示するインジケータ(35)を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行アシスト画面(J)は横長の進行状況表示部(32)を備え、インジケータ(35)を左右に並べて表示する請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
インジケータ(35)は機体の進行方向と目標経路のずれ角度が所定の範囲以下になるとインジケータ(35)の背景カラーを変更する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
基準直線経路(T)を基準に平行かつ等間隔に並べた目標直進経路(R1~Ry)を有し、機体が基準直線経路(T)又は目標直進経路(R1~Ry)を直進する直進工程と基準直線経路(T)又は目標直進経路(R1~Ry)から別の目標直進経路(R1~Ry)に旋回して移動する旋回工程を繰り返して作業を行う場合、直進工程が終了すると、隣接する目標直進経路(R1~Ry)の進行状況表示部(32)内における表示方法を変更した請求項1から請求項3のいずれか一に記載の作業車両。
【請求項5】
進行状況表示部(32)内における表示方法が変更された目標直進経路を跨いで通過し、次に隣接の目標直進経路に接近した場合、元の目標直進経路の表示方法を元に戻し、接近した側の目標直進経路の表示方法を変更した請求項4に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車体の進行状況を表示する進行状況表示部とともに隣接目標経路に対する操舵方向を指向するアシスト矢印を表示する操舵表示部を備え、アシスト矢印は作業目標経路に対して走行車体が離れた距離に応じた偏移状態を表示する農用作業車両が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-112056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記アシスト矢印の表示方法では操舵表示部上を走行車体が離れた距離に応じて矢印の位置を移動させるためにある程度の表示領域を必要とするため、進行状況表示部の表示エリアを圧迫してしまい、画面が狭くなっていた。
【0005】
本発明は、情報を効率よく表示して視認し易くした作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、測位装置203により取得される機体の位置に基づいて、目標経路R1~Ryに沿って走行するように機体を走行制御する制御部302を備え、設定された目標経路R1~Ryの位置と機体の位置を表示する進行状況表示部32を有する走行アシスト画面Jを設け、この走行アシスト画面Jには目標経路R1~Ryに対する機体との偏移距離を示す数値と、目標経路R1~Ryの示す方向と、機体の進行方向とのずれ角度を表示するインジケータ35を設けた作業車両とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、走行アシスト画面Jは横長の進行状況表示部32を備え、インジケータ35を左右に並べて表示する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、インジケータ35は機体の進行方向と目標経路のずれ角度が所定の範囲以下になるとインジケータ35の背景カラーを変更する構成とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一に記載の発明において、基準直線経路Tを基準に平行かつ等間隔に並べた目標直進経路R1~Ryを有し、機体が基準直線経路T又は目標直進経路R1~Ryを直進する直進工程と基準直線経路T又は目標直進経路R1~Ryから別の目標直進経路R1~Ryに旋回して移動する旋回工程を繰り返して作業を行う場合、直進工程が終了すると、隣接する目標直進経路R1~Ryの進行状況表示部32内における表示方法を変更する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、進行状況表示部32内における表示方法が変更された目標直進経路を跨いで通過し、次に隣接の目標直進経路に接近した場合、元の目標直進経路の表示方法を元に戻し、接近した側の目標直進経路の表示方法を変更する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、偏移距離を数値で表示し、目標経路に対するずれ角度を表示するので、目標経路に対するズレの情報をコンパクトに表示できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、走行アシスト画面Jに進行状況表示部とインジケータ35を左右に並べて表示することで、操作表示部35による進行状況表示部32の圧迫感を抑制できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、インジケータ35の背景カラーを変更することで、アシスト運転に適した状態になっているか否かを容易に確認できる。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、請求項1から請求項3のいずれか一に記載の効果に加え、次の目標直進経路の優先順位の数字のほか色・線種・点滅などによって表示方法を変更することでどの直線に向かえばよいか認識することが容易となる。
【0015】
請求項5に記載の発明によると、請求項4に記載の効果に加え、目標直進経路を跨ぐことで目標直線経路を一つ飛ばして往復する走行方法を採用していることが予想されるため、目標経路を変更することにより、どの目標直線経路に向かえばよいか認識することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態にかかる農用トラクタの側面図である。
図2】同トラクタの管理システムのブロック図である。
図3】同トラクタの管理端末と複数の圃場との位置関係を示す模式図である。
図4】同トラクタの圃場の外周経路を記録する模式図である。
図5】同トラクタの枕地走行経路及び往復走行経路の一例を示す図である。
図6】同トラクタの直進アシスト中画面一例の概要図である。
図7】同トラクタの基準直線経路演算制御モードのフローチャートであるである。
図8】同トラクタの直進走行アシストモードのフローチャートである。
図9】同トラクタの直進アシスト制御モードにおける経路作成概要説明図である。
図10】同トラクタの直進アシスト中画面における他例の概要図である。
図11】同トラクタの直進アシスト中画面における他例の概要図である。
図12】(A)、(B)、(C)同トラクタの自動走行表示部の表示一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面に基づき説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施態様に係る作業車両管理システムの作業車両100の構成を示す略側面図である。作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13を走行可能な農作業用の車両であり、車体前部には、ボンネット107に覆われたエンジン105が配設され、このエンジン105の回転動力を複数の変速装置を介して前輪103及び後輪104に伝達することで走行できるように構成されている。また、エンジン105の後方には、操縦部106が設けられており、操縦部106後方の車体後部には往復隣接作業走行範囲13を耕耘可能な作業機140が取り付けられている。
【0019】
操縦部106には、作業者が操作するステアリングハンドルと操縦席とを備えているキャビンが設けられている。また、キャビンの天井であるキャビンルーフ108にはGNSS受信機102が設けられており、人工衛星170から所定の時間間隔で電波を受信して作業車両100の位置を測定することができるように構成されている。
【0020】
作業車両100の車体後部には、上側にあるトップリンク145aと下側にある左右のロアリンク145bとからなる3点リンク機構145が設けられており、これに作業機140が連結されている。作業機140は耕耘作業機とされ、圃場の土を耕す耕耘爪146と、耕耘爪146の上方を覆うロータリカバー147と、ロータリカバー147の後部で上下動自在に支持されるリヤカバー148とが設けられる。
【0021】
3点リンク機構145のロアリンク145bには、リフトアーム142を介して作業機昇降シリンダ141が接続されており、作業機昇降シリンダ141を伸縮させることによりロアリンク145bを上下させることができるように構成されている。
【0022】
以下、作業車両100が作業機140を下ろした状態で、往復隣接作業走行範囲13の土を耕しながら走行することを作業走行と呼ぶ。
【0023】
図2は、本発明の好ましい実施態様に係る作業車両管理システム1の構成を示すブロック図である。作業車両100は、図1のGNSS受信装置102が受信した電波から自機の位置情報を取得する位置情報取得手段である位置情報取得部301と、車両の自律走行を制御する自動運転ECU302と、車両の走行及び作業機の操作を制御する車両ECU303とを備えており、車両ECU303は、通信網をなすクラウドCと相互に通信を行う通信部304と、位置情報や地形情報から走行経路を算定する経路算定部306とを備えている。
【0024】
したがって、作業車両100は、位置情報取得部301により取得した自機の位置情報を、所定時間毎に、通信部304を介してクラウドCに送信して格納することができ、また、クラウドCに格納された情報を取得することができるように構成されている。
【0025】
遠隔管理装置200は、携帯可能な電子演算機器であり、管理ユーザにより操作可能な管理端末201によって構成されている。管理端末201は、クラウドCと相互に通信可能な通信機202と、管理端末201を制御する端末制御部204とを備えている。したがって、管理ユーザは、管理端末201を所持することにより、通信機202を介してクラウドCと情報のやり取りをすることができる。
【0026】
このように、作業車両100と遠隔管理装置200とがクラウドCを媒介して通信可能に構成されているので、管理ユーザは、遠隔管理装置200により、作業車両100の状態を監視したり、指令を送ったりすることができ、遠隔的に作業車両100を管理することが可能になる。
【0027】
クラウドCには管理サーバ320が設けられており、この管理サーバ320には圃場やその周辺の地形情報を格納する地形情報データベース322と、作業車両100の位置情報を格納する位置情報データベース323とが記録されている。したがって、管理ユーザは、管理サーバ320にアクセスし、地形情報データベース322および位置情報データベース323を参照することにより、作業車両100と圃場との位置関係を把握することができる。
【0028】
図3は、管理区域10における、管理端末201と、複数の往復隣接作業走行範囲13との位置関係を示す模式図であり、管理区域10には複数の往復隣接作業走行範囲13(A1~An)が設けられており、それぞれの往復隣接作業走行範囲13で走行車両100(V1~Vn)が作業走行するように構成されている。各往復隣接作業走行範囲13は管理通路12に接しており、出入口11から作業車両100が出入りできるように構成されている。
【0029】
管理端末201は、どの往復隣接作業走行範囲13にどの作業車両100が作業しているかを特定する圃場特定手段を備えており、図2に示したクラウドCを介して管理サーバ320にアクセスし、地形情報データベース322に格納されている各往復隣接作業走行範囲13(A1~An)の位置情報と、位置情報データベース323に格納されている作業車両100(V1~Vn)の位置情報とを比較参照することで、往復隣接作業走行範囲13が位置する範囲に存在する作業車両100を特定し、作業車両Vx(x=1,2,・・・,n)と、その作業車両Vxが作業している圃場Ax(x=1,2,・・・,n)とを対応付けることができるように構成されている。
【0030】
ここで、管理端末201において、端末制御部204は、測位装置203により、クラウドCを介して図2に示した地形情報データベース322から管理区域10の管理通路12と、往復隣接作業走行範囲13(A1~An)とのそれぞれの地形情報を取得することができる。さらに、管理端末201の現在位置から管理通路12を通って往復隣接作業走行範囲13の出入り口11の位置に達する経路(L1~Ln)を算出して、これらの経路(L1~Ln)の距離から、所定の速度における往復隣接作業走行範囲13(A1~An)への移動時間T(T1~Tn)を算出可能に構成されている。
【0031】
図4は、圃場Hの枕地走行を記録する作業車両100の様子を示す模式図であり、図5は、圃場H内を作業走行する作業車両100の様子を示す略平面図である。
【0032】
図4に示されるよう、畦15に囲まれ、この畦15による外形Pe形状で区画される圃場Hは、往復隣接作業走行範囲13と、枕地走行範囲14とからなり、管理通路12に対し、出入口11によって走行車両100が出入り可能に構成されている。枕地走行範囲14は、走行車両100が走行可能であり、往復隣接作業走行範囲13の外を周回するための枕地走行経路22に基づいて作業走行することによりこの枕地走行範囲14を耕耘処理できる。
【0033】
作業車両100は、圃場の形状を示す地形情報を取得する圃場形状取得手段を備えている。その前提として、作業車両100は、あらかじめ、図2の位置情報取得部301で現在位置を測定しながら枕地走行経路22を走行し、図2の経路算定部306が走行した経路の位置情報をつなげることにより、外周の枕地走行経路22としての経路情報を作成し、かつ、枕地走行経路22の経路情報において走行した経路が囲む範囲を計算して圃場Hの地形情報(圃場の位置座標、面積および縦横の長さ)を作成し、これらの情報を、クラウドCを介して、地形情報データベース322に記録する地形情報記録モードを備えている。そして、作業車両100は、地形情報記録モードの実行で圃場形状取得手段によって、地形情報データベース322に記録された外周Pe形状情報による枕地走行経路22の経路情報及び地形情報データベース322に記録された往復隣接作業走行範囲13の地形情報を取得することができるように構成されている。
【0034】
地形情報記録モードにより作業車両100が作成した枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とは、クラウドCを介して管理サーバ320に送信され、枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とを受け取った管理サーバ320は、その情報を地形情報データベース322に記録する。これにより、作業車両100は、クラウドCを介して管理サーバ320にアクセスすることで、任意のタイミングで枕地走行経路22の経路情報と往復隣接作業走行範囲13の地形情報とを取得することができる。作業車両100は、例えば、エンジン105を起動した際に、圃場形状取得手段によって、枕地走行経路22の経路情報及び往復隣接作業走行範囲13の地形情報を取得する。
【0035】
このように、作業車両100が地形情報記録モードを備えていることにより、あらかじめ往復隣接作業走行範囲13を測量して地形情報を取得しておく必要がなく、任意の往復隣接作業走行範囲13での作業車両100に作業走行をさせるために必要な手間を軽減することができる。
【0036】
図5に示されるように、作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13内を作業走行するにあたり、図2に示した経路算定部306により往復隣接作業走行範囲13の地形情報と作業車両100の作業幅wとに基づいて往復隣接作業走行範囲13を作業走行するための経路である往復走行経路20を算定する。往復隣接作業走行範囲13を万遍なく耕耘するように作業走行するには、往復隣接作業走行範囲13の幅を作業幅wで割った数の分だけ往復隣接作業走行範囲13を直進すればよいので(図5では7回)、往復走行経路20は、往復隣接作業走行範囲13上を直進する直進経路と、往復隣接作業走行範囲13を出て枕地14で旋回し往復隣接作業走行範囲13に戻る旋回経路とにより、往復隣接作業走行範囲13を往復するように算定される。以下、往復走行経路20が往復隣接作業走行範囲13の端と交差する点を圃場端点21a(P1~P7)、21b(Q1~Q7)と呼ぶ。
【0037】
往復走行経路20が算定されると、作業車両100は、自律走行により、往復走行経路20に沿って、往復隣接作業走行範囲13の一端から他の一端まで往復しながら、圃場全体を作業走行で通過するように構成されている。
【0038】
具体的には、作業車両100は、往復隣接作業走行範囲13の隅にある圃場端点21a(P1(以下、開始点P1))から往復隣接作業走行範囲13に進入すると、対向する位置にある圃場端点21b(Q1)まで直進して、一旦、往復隣接作業走行範囲13を出てから枕地14で左旋回し、隣接する圃場端点21b(Q2)から再度、往復隣接作業走行範囲13に進入する。その後、対向する位置にある圃場端点21a(P2)まで直進し、往復隣接作業走行範囲13を出てから枕地14で右旋回し、隣接する圃場端点21a(P3)から再度、往復隣接作業走行範囲13に進入する。作業車両100は、このような走行を圃場端点21a(Q7)に着くまで繰り返すことで、圃場全体を万遍なく耕耘することができる。
【0039】
ついで、トラクタTが所定経路に沿って自動走行できる「走行アシスト」モードについて説明する。
【0040】
携帯端末201の初期画面(図示せず)から「走行アシスト」モードを選択すると、走行アシスト画面J(図6)に切り替わる。この走行アシスト画面Jには、進行状況表示部32、該表示部32の左右一側(図例では右側)に配置した自動走行表示部33、基準経路設定スイッチ34と、該スイッチ34の下部に配置されたインジケータ35を備える。そして、機体の進行に合わせて進行状況表示部32のトラクタ画像又は矢印画像Gが進路に沿って移動する様子を表示できる構成としている。さらに、進行状況表示部32の下部には、ホーム画面設定、及び各種設定スイッチ群36を備えている。
【0041】
そして、各種設定スイッチ群36の所定スイッチ操作すると、まず「作業機幅選択」及び「走行アシストモード選択」のいずれかを指定する画面J1(図示せず)に切り替わり、「作業機幅選択」側を指定すると、前記ロータリ耕耘装置2の作業機幅Wを入力できる。また、「走行アシストモード選択」側を指定すると、「直線モード」と「曲線モード」の表記画面J2(図示せず)に切り替わる。
【0042】
そして「直線モード」を押すと、まず基準直線経路を作成し(基準直線経路演算制御モード)、次いでこの基準直線経路に基づき隣接作業目標直線経路を設定し、隣接作業のうち往復行程共に目標直線経路に沿って作業する際の機体のずれや進行方向を指示支援する構成である(直線走行アシスト制御モード)。
【0043】
また前記の図外表記画面J2のうち「曲線モード」を押すと、湾曲する畦等の曲線に沿う基準目標経路を作成し(曲線経路演算制御モード)、以下順次隣接作業目標経路を作成し曲線走行作業させたい場合の機体のずれや進行方向を指示支援する構成である(曲線走行アシスト制御モード)。
【0044】
図7~9のフローチャート及び経路説明図に基づき、最初の基準経路を設定する基準直線経路演算制御モード及び直線走行アシスト制御モードについて詳細に説明する。図7において、携帯端末201の電源をONし、トラクタの位置情報取得部301からGPS情報を受信可能とする(ステップ101,102)。予め「直線モード」を選択しておく(ステップ103,104)。そして機体を圃場内に移動し作業開始地点に至ると基準経路設定スイッチ34のうちA表記の「アシスト開始」スイッチ34aを選択する(ステップ105)。この選択した地点が作業開始位置tsとして記憶され、作業機を下降し所定作業、例えば耕耘作業を開始し任意に略直線に沿って作業を行う(ステップ106,107)。圃場の端部近くに達して、基準経路設定スイッチ34のうちB表記の「アシスト終了」スイッチ34bを選択すると(ステップ108)、作業終了位置teとして記憶する(ステップ109)。前記作業開始位置tsと作業終了位置teとを接続することで基準直線経路Tが演算される(ステップ110)。
【0045】
そして、図7において、前記「設定」スイッチの1回操作によって表示される作業機幅設定画面にて入力された作業機幅Wに基づいて(S203)、第1隣接作業開始点rs1が演算されて記憶され(S204)、基準直線経路Tとの関係によって、第1隣接作業終了点re1と第1隣接作業目標直線経路R1が演算設定される構成である(S205,S206)。以下順次第2隣接作業目標直線経路R2、…第y隣接作業目標直線経路Ryが演算される(S207~S212)(y=1,2…,y)。これらの第1隣接作業目標直線経路R1、第2隣接作業目標直線経路R2…第y隣接作業目標直線経路Ryは、前記走行アシスト画面Jの進行状況表示部32に表示されるものである。なお、基準直線経路Tの両側に、順次遠くに至るにつれてy=1,y=2…の順に遠くなるように表示される。
【0046】
図7において、走行アシストモードに入ると、走行アシスト開始される(S213)。すなわち、図外モード設定スイッチ操作等に起因して、走行アシストモードが選択されると、走行アシスト開始されるよう構成され、機体は第1隣接作業開始点rs1へ案内表示される。図10は、機体旋回中の案内画面一例を示すもので、進行状況表示部32に表示されるトラクタ画像は、画面上下方向に沿って移動する様子を表示し、前記の隣接作業目標直線経路(以下「目標直線経路」)のうち、基準直線経路Tの右側に1本、左側には3本の目標直線経路がその方向、つまり機体進行方向に対するずれ角度、と共に表示され、現在の機体位置においては基準直線経路Tの左側で一番近い目標直線経路R1に対するアシスト表示が実行されている。つまり、機体左方向に0.12メートルの距離表示で対象の目標直線経路R1から現在機体位置の外れた距離の表示例である。なお、左側の目標直線経路R1に対する表示内容は、前記インジケータ35にも表示される。このインジケータ35は円形を呈し、機体が目標直線経路と対比して外れた距離の数値表示35A、及びそれが左右いずれの方向かの矢印表示35Bによって目視判定できるように表示できる。また目標直線経路の傾き角度は、現在の機体の向き方向とのずれ角度35Cを表示できる。このように、インジケータ35A~35Cのアシスト表示によって、オペレータは基準となる目標直線経路からの機体のずれ量やステアリングハンドル24の切り方向を容易に把握できる。なおこの場合、目標直線経路のうち、機体が現に目標とする目標直線経路(図例ではR1)について、例えば橙色表示とし、他はグレー表示として区分することで視認性を良好とする。
【0047】
所定の目標直性経路R1に基づく走行アシスト運転が終了すると(S217)、旋回操作によって(S218)、次の目標直線経路R2~Ryのいずれかを選択して目標直線経路とし、作業を継続する(S219~S222)。ここで、図10図11に示すように、複数に設定される目標直線経路のうち、機体に最も近い目標直線経路を選択してインジケータ35に各種データに基づく表示が行われる構成である。同時に、進行状況表示部32における目標直線経路は複数に設定されているが、最も機体に近い目標直線経路は「1」、次いで「2」、遠い目標直線経路は「3」の符号を付して、旋回操作中の作業者に示すようになっている。つまり、アシスト終了の信号を受けて制御部は次の目標直線経路を容易に認識できるよう表示形態に符号を付加している。なお、作業者の旋回操作によって、複数ある目標直線経路の一を跨いで走行した場合には(図11)、当該跨いだ目標直線経路に対するインジケータ35の表示をキャンセルし次に近い目標直線経路を対象とした操舵表示35の表示に切り換わるものである。そのタイミングは、所定に次の目標直線経路に接近した状態において行う。
【0048】
前記の例では、基準直線経路Tを基準として1×W,2×W…y×W幅をもって一挙に一圃場の全体を演算設定するに限らず、隣接作業目標経路設定の度に前回の目標直線経路を基準とする場合(y=1)、あるいは適宜隣接作業間隔置きに基準直線経路を設定する場合がある。一挙に行う場合は当該圃場の作業計画(所要時間計画、施肥量計画)を立てることができ、また、区切って行う場合には誤差の集積を防いで精度良く作業を行うことができる。
【0049】
次いで、インジケータ35の応用表示構成について説明する。インジケータ35はカラー液晶表示機能を備えて、前記目標直線経路R1、距離数値35A、矢印表示35B、ずれ角度35Cに加えて、機体の進行方向35Dを表示できる。そして、円形の内側の背景部35Eのカラーを変更できるように構成し、ずれ角度35Cが例えば3度以内のときは背景カラーを例えばグレーから青に変更することで、ずれ角度が過大であるか否かを予想し易くする。なお、カラーの選択は任意である。
【0050】
さらに、アシスト走行モード中、進行状況表示部32をOFFに設定しておくことで、円形のインジケータ35の各種表示機能のみであっても、容易に作業継続できる。
【0051】
進行状況表示部32における目標直線経路の表示本数、即ち縮尺度については、任意に変更できるよう縮尺設定手段を設けておくものである。任意の倍率で画面表示できる利点がある。
【0052】
図12(A)~(C)は、前記自動走行表示部33の表示一例を示すもので、各表示共にトラクタイラストにネットワーク環境を示す円弧表示を付与している。同図(A)は、目標直線経路の設定が実行されていない等に基づき、「アシスト走行不可」の場合であって、車両表示に斜め線を付加した表示とし、背景は黒色としている。同図(B)は、事前準備完了し「アシスト走行可」の状態を示し、トラクタ上部にチェックマークを付与し、背景は青色としている。同図(C)は、「アシスト走行中」を示し、背景を橙色としている。このように、イラストの区別とともに背景色を異ならせて視認による区別を容易としている。
【0053】
上記の例においては、目標直線経路R1,…Ryについて説明したが、曲線経路においても同様に実施できる。走行アシスト画面Jの、進行状況表示部32やインジケータ35の各種データや表示形式に応用できる。
【0054】
前記したように、本実施例によると、測位装置203により取得される機体の位置に基づいて、目標直線経路又は目標曲線経路等の目標経路に沿って走行するように機体を走行制御する制御部302を備え、設定された目標経路の位置と機体の位置を表示する進行状況表示部32を有する走行アシスト画面Jを設け、この走行アシスト画面Jには目標経路に対する機体との偏移距離を示す数値と、目標経路の示す方向と、機体の進行方向とのずれ角度を表示するインジケータ35を設けている。従って、偏移距離を数値で表示し、目標経路に対するずれ角度を表示するので、目標経路に対するズレの情報をコンパクトに表示できる。
【0055】
また、走行アシスト画面Jは横長の進行状況表示部32を備え、インジケータ35を左右に並べて表示している。従って、走行アシスト画面Jに進行状況表示部とインジケータ35を左右に並べて表示することで、操作表示部35による進行状況表示部32の圧迫感を抑制できる。
【0056】
インジケータ35は機体の進行方向と目標経路のずれ角度が所定の範囲以下になるとインジケータ35の背景カラーを変更する構成としている。インジケータ35の背景カラーを変更することで、アシスト運転に適した状態になっているか否かを容易に確認できる。
【0057】
また、基準直線経路を基準に平行かつ等間隔に並べた目標直進経路を有し、
機体が基準直線経路又は目標直進経路を直進する直進工程と基準直線経路又は目標直進経路から別の目標直進経路に旋回して移動する旋回工程を繰り返して作業を行う場合、直進工程が終了すると、隣接する目標直進経路の進行状況表示部32内における表示方法を変更する
次の目標直進経路の優先順位の数字のほか色・線種・点滅などによって表示方法を変更することでどの直線に向かえばよいか認識することが容易となる。
【0058】
進行状況表示部32内における表示方法が変更された目標直進経路を跨いで通過し、次に隣接の目標直進経路に接近した場合、元の目標直進経路の表示方法を元に戻し、接近した側の目標直進経路の表示方法を変更する。目標直進経路を跨ぐことで目標直線経路を一つ飛ばして往復する走行方法を採用していることが予想されるため、目標経路を変更することにより、どの目標直線経路に向かえばよいか認識することが容易となる。
【符号の説明】
【0059】
32 進行状況表示部
35 インジケータ
203 測位装置
302 自動運転ECU(制御部)
J 走行アシスト画面
R1~Ry 目標直進経路(目標経路)
T 基準直線経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12