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特開2024-33213断熱パネル保持具および断熱パネル配設構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033213
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】断熱パネル保持具および断熱パネル配設構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20240306BHJP
   E04B 7/18 20060101ALI20240306BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
E04B1/80 100A
E04B7/18 Z
E04B1/76 500Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136672
(22)【出願日】2022-08-30
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591235430
【氏名又は名称】ウチヤマコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 和久
(72)【発明者】
【氏名】安達 森一
(72)【発明者】
【氏名】長岡 晴義
(72)【発明者】
【氏名】滝本 育治
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】浅原 敏勝
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DB05
2E001DD01
2E001EA09
2E001FA16
2E001GA12
2E001GA82
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD09
2E001LA09
2E001LA11
2E001MA02
(57)【要約】
【課題】断熱パネルを垂木間にしっかりと固定、保持させるとともに、略一定の厚さの通気層空間を容易かつ確実に形成できる断熱パネル保持具および断熱パネル配設構造を提供する。
【解決手段】断熱パネル保持具10は、垂木30の上端側の出隅部33に係合する、横片12と縦片13とを有した逆L字状の吊り板部11と、断熱パネル20を上側より押さえる、縦片13の上下方向の中途より突出したパネル押さえ板部14と、断熱パネル20を固定する、パネル押さえ板部14の下方側でパネル押さえ板部14と同方向に突出したパネル固定部15と、を一体に備え、このパネル押さえ板部14は、縦片13の上端よりも下方位置に配されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱パネルの端部に固定され、かつ垂木に掛支持された状態で、隣り合う2本の垂木間に配設される前記断熱パネルを保持する断熱パネル保持具であって、
前記垂木の上端出隅部に係合する、横片と縦片とを有した逆L字状の吊り板部と、前記断熱パネルを上側より押さえる、前記縦片の上下方向の中途より突出したパネル押さえ板部と、前記断熱パネルを固定する、該パネル押さえ板部の下方側で該パネル押さえ板部と同方向に突出したパネル固定部と、を一体に備え、
前記パネル押さえ板部は、前記縦片の上端よりも下方位置に配されていることを特徴とする断熱パネル保持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記パネル固定部は前記断熱パネルの端面に差し込み可能な板状体とされることを特徴とする断熱パネル保持具。
【請求項3】
請求項1において、
前記パネル押さえ板部の突出寸法は、前記パネル固定部の突出寸法よりも大きいことを特徴とする断熱パネル保持具。
【請求項4】
請求項1において、
前記パネル押さえ板部の突出寸法は前記パネル固定部の突出寸法よりも小さいことを特徴とする断熱パネル保持具。
【請求項5】
請求項1において、
前記垂木に沿う、前記断熱パネルの辺縁に対して複数個取り付けられることを特徴とする断熱パネル保持具。
【請求項6】
隣り合う2本の垂木間に、請求項1~5のいずれか1項に記載された断熱パネル保持具を介して、断熱パネルが配設されていることを特徴とする断熱パネル配設構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記断熱パネルの側端面に配された前記断熱パネル保持具の下端よりも下方の面をすくなくとも覆うように、前記側端面の全長にわたり、前記垂木、前記断熱パネル間にパッキンシートが介装されていることを特徴とする断熱パネル配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の垂木間に配設される断熱パネルを保持する断熱パネル保持具および断熱パネル配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の屋根断熱技術として、隣り合う2本の垂木間に断熱パネルを嵌装、配設するものが多く提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1のものは、断熱パネルの側端面に気密部材が装着されており、その気密部材が垂木の側面に密着することにより気密性が担保されるとともに、断熱パネルは垂木間にしっかりと固定される。配設された断熱パネルの上方で、かつ垂木の上面に配した野地板の下方には通気用の空間(通気層)が形成される。
【0004】
特許文献2のものは、断熱パネル配設空間と、通気層とが下側野地板で分離された構造とされている。通気層は下側野地板の上面に通気垂木を配設し、その上に上側野地板を配設することで形成される。
【0005】
一般に、垂木間には複数の断熱パネルが連設されるため、それにともなって通気層も連なり、軒から棟に向かう屋根換気のための通気路が形成される。この通気路は、屋根換気を効率的に行うために略一定の厚さ空間とすることが望ましく、近時ではその厚さを30mm以上とすることが推奨されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-186378号公報
【特許文献2】特開2020-2624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1のように断熱パネルを垂木間に押し込んで嵌入させる方法では、垂木の長手方向に沿って所定の厚さの通気層を形成するためには、垂木の側面に断熱パネルの配設位置(例えば上面位置)を事前にマーキングなどで位置決めしておかなければならず、面倒な作業となる可能性がある。通気層が連なってなる通気路について厚さを略一定にするのは当然に大変な作業となる。
【0008】
また、特許文献2の断熱パネル配設構造では、通気層が断熱パネルとは分離された構成であるため所定寸法の厚さの通気層を形成することはできるが、多くの部材を必要とし、かつ施工には多くの工数がかかり、よってコスト高となるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、断熱パネルを垂木間にしっかりと固定、保持させるとともに、略一定の厚さの通気層を容易かつ確実に形成できる断熱パネル保持具および断熱パネル配設構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の断熱パネル保持具は、断熱パネルの端部に固定され、かつ垂木に掛支持された状態で、隣り合う2本の垂木間に配設される前記断熱パネルを保持する断熱パネル保持具であって、前記垂木の上端出隅部に係合する、横片と縦片とを有した逆L字状の吊り板部と、前記断熱パネルを上側より押さえる、前記縦片の上下方向の中途より突出したパネル押さえ板部と、前記断熱パネルを固定する、該パネル押さえ板部の下方側で該パネル押さえ板部と同方向に突出したパネル固定部と、を一体に備え、前記パネル押さえ板部は、前記縦片の上端よりも下方位置に配されていることを特徴とする。上記構成において、前記パネル固定部は前記断熱パネルの端面に差し込み可能な板状体としてもよい。上記構成において、前記パネル押さえ板部の突出寸法は、前記パネル固定部の突出寸法よりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。上記構成において、前記垂木に沿う、前記断熱パネルの辺縁に対して複数個取り付けるようにしてもよい。
【0011】
本発明の断熱パネル配設構造は、隣り合う2本の垂木間に、前記断熱パネル保持具を介して、断熱パネルが配設されていることを特徴とする。上記構成において、前記断熱パネルの側端面に配された前記断熱パネル保持具の下端よりも下方の面をすくなくとも覆うように、前記側端面の全長にわたり、前記垂木、前記断熱パネル間にパッキンシートが介装されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は前述した構成とされているため、断熱パネルを垂木間にしっかりと固定、保持させるとともに、略一定の厚さの通気層を容易かつ確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】断熱パネルの取り付け対象とされる屋根骨組みの概略斜視図である。
図2】(a)は本発明の一実施形態に係る断熱パネル保持具の使用態様例を示す部分斜視図、(b)は同断熱パネル保持具の斜視図である。
図3】(a)は同断熱パネル保持具の断熱パネルへの装着手順を示す、図2(a)のA-A線に対応した部分縦断面図、(b)は同断熱パネル保持具が装着された断熱パネルの垂木間への配設状態を示す、図2(a)のA-A線に対応した縦断面図である。
図4】同断熱パネルが取り付けられた屋根の模式的縦断面図である。
図5】(a)~(c)は、断熱パネル保持具の他の3例を示す斜視図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る断熱パネル保持具の説明図であり、(a)は同断熱パネル保持具の断熱パネルへの取り付け手順を示す、図2(a)のA-A線に対応した部分縦断面図、(b)は同断熱パネル保持具が装着された断熱パネルの垂木間への配設状態を示す、図2(a)のA-A線に対応した縦断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る断熱パネル保持具の説明図であり、(a)は同断熱パネル保持具が装着された断熱パネルの垂木間への取り付け前の状態を示す部分斜視図、(b)は同断熱パネル保持具が装着された断熱パネルの垂木間への取り付け手順を示す、図2(a)のA-A線に対応した部分縦断面図、(c)は同断熱パネル保持具が装着された断熱パネルの垂木間への配設状態を示す、図2(a)のA-A線に対応した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の断熱パネル保持具10の基本構成について記述する。
【0015】
断熱パネル保持具10は、断熱パネル20の端部21に固定され、かつ垂木30に掛支持された状態で、隣り合う2本の垂木30間に配設される断熱パネル20を保持する部材である。
【0016】
断熱パネル保持具10は、垂木30の上端側の出隅部33に係合する、横片12と縦片13とを有した逆L字状の吊り板部11と、断熱パネル20を上側より押さえる、縦片13の上下方向の中途より突出したパネル押さえ板部14と、断熱パネル20を固定する、パネル押さえ板部14の下方側でパネル押さえ板部14と同方向に突出したパネル固定部15と、を一体に備えている。このパネル押さえ板部14は、縦片13の上端よりも下方位置に配されている。
【0017】
ついで、一実施形態に係る断熱パネル保持具10について、図1図4を参照しながら詳述する。図1は、断熱パネル20の取り付け対象とされる屋根骨組み1の概略斜視図である。図2(a)は本発明の一実施形態に係る断熱パネル保持具10の使用態様例を示す部分斜視図、図2(b)は断熱パネル保持具10の斜視図である。図3(a)は断熱パネル保持具10の断熱パネル20への装着手順を示す部分縦断面図、図3(b)は断熱パネル保持具10が装着された断熱パネル20の垂木間への配設状態を示す縦断面図である。図4は、断熱パネル20が取り付けられた屋根の模式的縦断面図である。
【0018】
断熱パネル20の取り付け対象は、図1に示すように棟、軒間に傾斜状に配された垂木30と垂木30との間である。この垂木30は、棟木2から複数の母屋4を経て軒桁3にいたるまでに架け渡すように取り付けられている、屋根の傾斜形状をなす骨組み材とされる。本断熱パネル20が取り付けられる屋根構造としては、特に限定されないが、このような垂木30を有する木造の勾配屋根に好適である。
【0019】
断熱パネル20の形状は矩形の板状体であることが望ましい。断熱パネル20の材料としては、種々の合成樹脂材料、例えばフェノール、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどによる発泡性材料が好適に使用され、独立気泡でも連続気泡でもよく、高い断熱性を備えたものが望ましい。なお、図2等で後述する断熱パネル保持具10は断熱パネル20にパネル固定部15を差し込む(突き刺す)ことで装着されるため、断熱パネル20は突き刺しできる発泡性材料のような柔軟な材料であることが望ましいが、図6に例示したような挟持タイプの断熱パネル保持具を用いる場合には、特に限定されない。
【0020】
断熱パネル20は、図1および図2(a)に示すように、複数の断熱パネル20が垂木30の長手方向に沿って垂木30間に嵌め入れられるように取り付けられる。具体的には、1枚の断熱パネル20に対し、両方の長手辺端部のそれぞれに複数の断熱パネル保持具10が取り付けられ、断熱パネル保持具10が取り付けられた状態で、垂木30間に装着される。断熱パネル20の構成は特に限定されず、両面に耐火性能を備えたパネルを配したものであってもよい。
【0021】
断熱パネル保持具10は、ポリプロピレンやABS、ポリスチレン、ポリカーボネート、フェノールなどの硬質の合成樹脂材料よりなる。断熱パネル保持具10の素材としては熱橋となりにくい合成樹脂材料が望ましいが、これには限られず、鋼板やアルミ板等、他の材料であってもよい。
【0022】
断熱パネル保持具10は、図2(b)および図3に示すように、横片12と縦片13のなす角度が略90度とした逆L字状の吊り板部11を基板とし、その基板の縦片13の、横片12の突出方向とは逆側の面に2枚の突出板を有した構成とされる。上側の突出板はパネル押さえ板部14とされ、下側の突出板はパネル固定部15とされる。基板および突出板の板厚は2mm~4mm程度であることが望ましい。
【0023】
パネル押さえ板部14は縦片13の中途の高さ位置より突出し、パネル固定部15は縦片13の下端より突出しており、それら突出板は相互に略平行とされる。本図例のものは、パネル押さえ板部14がパネル固定部15よりもやや長く突出している。よって、図3(a)に示すように断熱パネル20の上面23をパネル押さえ板部14の下面に沿わせて縦片13方向にスライドさせ、断熱パネル20の側端面22にパネル固定部15を差し込むだけで、縦片13とパネル押さえ板部14とで構成される断面視L字状の空間が形成され、断熱パネル20の上面23に後述の通気層40が形成される空間を確保することができる。
【0024】
断熱パネル20の寸法は特に限定されないが、短手辺については垂木30の設置間隔に合わせた寸法とすればよく、例えば約455mmとされる。長手辺については例えば約910mmとされるが、垂木30の長手寸法に合わせて棟側あるいは軒側の端部には切断したものが用いられる。
【0025】
また、断熱パネル20の厚さは、水平に寝かせた垂木30の上下寸法(厚さ)に対応したものとすればよく、図3に示すように、垂木30の上下寸法よりも小さい。垂木30の上下寸法を約90mmとし、その下面位置に断熱パネル20の下面を合わせるように装着する配設構造とするならば、断熱パネル20の厚さは垂木30の上下寸法よりも小さい40mm~80mmとすることが望ましく、約60mmとすることがより好適とされる。
【0026】
断熱パネル20を垂木30間に正しく装着した状態で、断熱パネル20の上面の高さ位置を垂木30の上面よりも低くすることが、後述する一定厚さの通気層40を配するうえで望ましい。
【0027】
したがって、断熱パネル20を垂木30の下面よりも下方に突出させるように装着する場合を想定すれば、断熱パネル20と垂木30との上記数値関係は上記のものには限られず、断熱パネル20の厚さは垂木30の上下寸法よりも大きいものであってもよい。
【0028】
本実施形態の断熱パネル保持具10のパネル固定部15は、図3(a)に示すように、断熱パネル20の長手辺の側端面22に差し込んで(突き刺して)固定する構成とされる。パネル固定部15による断熱パネル20に対する差し込み位置は、断熱パネル20の上面にパネル押さえ板部14を配したときに、断熱パネル20の下面位置よりもやや上方となる位置とされる。
【0029】
例えば垂木30の上下寸法を90mmとし、断熱パネル20の厚みを60mmとし、下面同士の位置を合わせるように断熱パネル20を装着するものにおいては、断熱パネル保持具10の好適な高さ寸法は60mm~90mmとされる。また、パネル押さえ板部14の形成位置は断熱パネル保持具10の上端より20mm~40mm下方の位置とすることが望ましい。
【0030】
図2(b)に例示した断熱パネル保持具10は、板幅が約40mm、高さ(縦片13の長さ)が約80mm、横片12の突出長が約20mm、パネル押さえ板部14の突出長が30mm、パネル固定部15の突出長が20mmとされる。
【0031】
必要とされる複数(図例では6つ)の断熱パネル保持具10を、断熱パネル20の両長手辺の側端面に図3(a)に示した手順で取り付けることで、複数の断熱パネル保持具10と断熱パネル20とが合体されたパネルユニット27が形成される。そして、このパネルユニット27を垂木30間に、横片12の裏面が垂木30の上面32に密着するまで嵌め入れることで、断熱パネル20(パネルユニット27)を垂木30間に配設することができる。
【0032】
複数の断熱パネル20(パネルユニット27)を垂木30の長手方向に沿って図2(a)のように配設すれば、図4に示すように、垂木30の上面高さ位置と断熱パネル20の上面高さ位置との間には、一定の厚みの通気層40が連続してなる通気路が形成される。なお、図4中の符号5は垂木30や断熱パネル20、通気層40などを上方より覆うように配設される野地板である。
【0033】
通気路は図4に示すように断熱パネル20の上側に、軒から棟へと空気が抜けるように屋根換気のために設けられた空間であり、熱を抑える効果だけではなく、結露を抑える効果もあり、外壁や屋根の耐久性の向上にも寄与する。
【0034】
本実施形態の断熱パネル保持具10を断熱パネル20の配設に用いれば、所定寸法の通気層40を簡易に形成することができる。軒から棟までに使用する複数の断熱パネル20について同一の断熱パネル保持具10を用いれば、軒から棟まで連続する通気層40の厚さも当然に略一定となる。そのため、軒から棟までの通気路での空気の滞留を抑制することもでき、省エネルギー法に則った厚さの通気路(通気層40)を屋根に形成することもできる。またこのような断熱パネル20は、戸建て住宅を建築する工程において、棟上げ(上棟式)の際に一日のうちの限られた時間内・人員でスピーディに行うことが求められる。本実施形態の断熱パネル保持具10によれば、工具を使わずに通気層40を確保した上で、断熱パネル20を安全に素早く配設していくことができる。
【0035】
さらに、この断熱パネル保持具10によれば、施工現場に断熱パネル20を運びこむ前にあらかじめ断熱パネル保持具10を装着してパネルユニット27として形成しておくこともできる。したがって現場での断熱パネル20の施工をさらに迅速にでき、工期の短縮化を図ることができる。
【0036】
また、この断熱パネル保持具10は断熱パネル20へのパネル固定部15による適宜な高さ位置への差し込みにより装着されるものであるため、種々の厚さの断熱パネル20に対応することもできる。よって、パネル押さえ板部14とパネル固定部15との間寸法を超える厚みを備えた断熱パネル20であればよく、断熱パネル20の厚みに応じて複数種類の保持具を準備する必要がなくなるので、部品管理がし易い。
【0037】
また、パネル固定部15が差し込みタイプであるため、断熱パネル20の断熱パネル保持具10からの傾斜に沿ったずれの発生を抑制することもでき、図1に示すような勾配のある屋根構造に好適である。なお、垂木30に対する断熱パネル保持具10自体のずれを抑制するために、横片12の裏側に例えば梨地凹凸状などの滑り止めを設けることが望ましい。
【0038】
また、この断熱パネル保持具10によれば断熱パネル20を適正な位置に、適正な状態で、一般に使用される矩形板状の物をそのまま配設できるから、断熱パネル20の性能を正しく生かすことができる。さらに、現場で断熱パネル20を変形させたり、変形・加工した断熱パネル20を準備したりする必要がないから、高コスト化を抑制できる。
【0039】
断熱パネル保持具10は断熱パネル20の長手辺の側端面全体を覆うように取り付けられるものではなく、複数箇所に不連続に取り付けられるものであるため、断熱パネル保持具10の省材料化も図れる。
【0040】
このように、断熱パネル保持具10を垂木30、断熱パネル20間に不連続に取り付ければ、垂木30、断熱パネル20間に縦片13の厚み分程度の僅かな隙間ができる可能性がある。しかし、断熱パネル保持具10の板厚や断熱パネル20の柔軟性および弾性を調整したり、断熱パネル20の嵌め入れ態様を調整したりすることで、隙間が形成されないようにすることもでき、気密性の低下を回避することができる。なお、隙間発生をより効果的に抑制する実施形態については、図7の説明とともに後述する。
【0041】
この種の断熱パネル保持具10としては、図2(b)のもの以外に、例えば図5(a)~(c)のような種々の形状のものを用いることができる。
【0042】
図5(a)(b)のものは、パネル固定部15の突出端を尖鋭状としたものである。これらによれば、断熱パネル20の側端面22への差し込みを容易に行える。図5(a)のものは板幅寸法が図2(b)のものと略同一であるが、図5(b)のように板幅寸法を例えば25mm程度に小さくすれば、パネル固定部15をより尖鋭なものとすることができ、差し込みがより楽になる。
【0043】
また、図5(a)(b)に示したものはいずれも、パネル押さえ板部14およびパネル固定部15の各突出長が図2(b)のものと略同一の例を示しており、パネル押さえ板部14の突出寸法は、パネル固定部15の突出寸法よりも大きく設けられている。そのため、断熱パネル20に装着する際にパネル押さえ板部14で断熱パネル20の上面23を押さえながら、パネル固定部15に側端面22を差し込んでいくことができ、差し込み手間を軽減することができる。
【0044】
図5(c)に示すように、パネル押さえ板部14の突出寸法(例えば突出長20mm)をパネル固定部15の突出寸法(例えば突出長30mm)よりも小さく(短く)したものであってもよい。パネル押さえ板部14の作用はおもに略一定厚の通気層を形成することであり、断熱パネル20を保持する作用はおもにパネル固定部15が担っているため、図5(c)の例のようにパネル押さえ板部14は小さく(短く)、パネル固定部15は大きく(長く)してもよい。
【0045】
また、断熱パネル20の短手方向においては中央が浮き上がるような撓みや反りは発生しにくいから、突出寸法の大きいパネル押さえ板部14で押さえる必要性はほとんどなく、そのためパネル押さえ板部14の突出寸法を図5(c)のように小さくしてもよい。一方、断熱パネル20の長手方向については撓みや反りが発生しやすいため、図2(a)に示すように、長手方向に沿って複数箇所に断熱パネル保持具10を取り付けることが望ましい。
【0046】
また図5(c)のような寸法関係であれば、パネル固定部15を断熱パネル20へ差し込まず、図6に示すように、パネル押さえ板部14とパネル固定部15とで断熱パネル20を隙間なく挟持、挟着できるような断熱パネル保持具10であってもよい。図6に示す例の場合は、勾配のある屋根に配設される場合でも断熱パネル20が位置ずれしないように断熱パネル20をパネル押さえ板部14とパネル固定部15とで強固に挟持する。パネル押さえ板部14の突出寸法がパネル固定部15の突出寸法よりも小さい方が、断熱パネル20の下面24に沿わせて、パネル押さえ板部14とパネル固定部15との間に断熱パネル20を挟持させ易い。また図6に示す例の場合、断熱パネル20の下方に縦片13の厚み分の隙間が形成されることなく、断熱パネル20を配設できる。なお、図6の実施形態については、パネル固定部15が断熱パネル20を下方より支持する作用を有し、垂木30の厚み寸法と縦片13の上下寸法が略同一である以外は図3のものと共通するため、各部の説明については、図3と同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0047】
また、パネル固定部15は板状片でなくてもよい。断熱パネル20を下方より支持できるように、板状体をハゼ状に成形したパネル固定部15であってもよい。また、下方より断熱パネル20の下面24に突き刺して固定できるようなパネル固定部15であってもよい。また、パネル押さえ板部14についても、断熱パネル20の上面23に突き刺せるような鉤片を有してもよい。これらにより、施工後の断熱パネル20の下方へのずれを抑制できる。
【0048】
以上に説明した断熱パネル保持具10は、断熱パネル20の長手方向の側端面22の複数箇所に不連続に取り付けられるものである。そのため、前述したように垂木30と断熱パネル20との間には断熱パネル保持具10の板厚に起因した隙間ができるおそれがある。また図3の断熱パネル保持具10を用いれば、断熱パネル保持具10の下端の下方においても隙間が形成される可能性がある。
【0049】
このような隙間により断熱性、気密性が低下しないように、断熱パネル20の側端面22を、断熱パネル保持具10の縦片13とともに覆うように、熱橋とはならないような材料によるパッキン材を垂木30、断熱パネル20間に配することが望ましい。
【0050】
図7は、垂木30と断熱パネル20との隙間にパッキンシート18を設けた断熱パネル20の配設構造の説明図である。図7(a)はパッキンシート18の取り付け箇所を示す部分斜視図、図7(b)はパッキンシート18の断熱パネル20への取り付け手順を示す部分縦断面図、図7(c)は断熱パネル20の垂木30間への配設状態を示す縦断面図である。
【0051】
パッキンシート18としては、例えばポリエチレンなどの合成樹脂製のシート材、軟質ゴム製のシート材、軟質ウレタン製のシート材、EPDM製のシート材等が用いられる。パッキンシート18は、シート厚が1mm~3mmとされ、柔軟で厚方向に圧縮可能なものが望ましい。
【0052】
パッキンシート18は、図7(a)に示すように、断熱パネル20の長手方向の略全長に配することが望ましく、断熱パネル20の下部の長手辺の出隅から側端面22の中ほどまでを覆うように取り付けられればよい。
【0053】
具体的には、断熱パネル20の側端面22に配された断熱パネル保持具10の下端よりも下方の面をすくなくとも覆うように、側端面22の全長にわたり、垂木30、断熱パネル20間に介装されることが望ましい。なお図例のものでは、パッキンシート18は断熱パネル保持具10の縦片13の下部をも覆っている。
【0054】
さらに具体的には、図7(a)に示すようにパッキンシート18の幅の半分程度(20mm~30mm程度)を断熱パネル20の下面24に接着剤で接着しておき、図7(b)に示すように断熱パネル20を垂木30間に嵌め入れることで、パッキンシート18の残りの半分幅のシートを断熱パネル20の側端面22側に配するような配設手順を用いればよい。
【0055】
図7では、断熱パネル20の側端面22は、接着剤によるパッキンシート18の貼り付けをしていない例を示しているが、側端面22も接着剤で接着剤することを除外するものではない。しかし、側端面22にパッキンシート18が接着されていなくても、図7(b)の手順で断熱パネル20を嵌め入れすることでパッキンシート18を垂木30、断熱パネル20間の所定の部位に介装することができ、作業の効率化が図れる。
【0056】
垂木30、断熱パネル20間の隙間を通じて空気が連通しないようにするためには、つまり気密性を高めるためには、断熱パネル保持具10の下端よりも下方の面をすくなくとも覆うようにパッキンシート18を配すればよい。そして、さらなる気密性を担保するためには、図例のように、断熱パネル保持具10の一部(下部)を覆うように配することが望ましい。
【0057】
断熱パネル保持具10の縦片13の全体を覆うように、断熱パネル20の側端面22の全体にパッキンシート18を配してもよいが、図7に示すように縦片13の一部と重なり合う程度でよく、縦片13と必ずしも重なり合っていなくてもよい。要は、垂木30と断熱パネル20との隙間をパッキンシート18で埋めれば、より気密性能の向上を図ることができる。よって、本実施形態にかかる断熱パネル配設構造によれば、断熱性だけでなく、気密性を高めることができるので、外気温の影響を受けにくく、結露の発生を抑え、断熱パネル20の劣化を抑制することができる。
【0058】
以上に説明した実施形態に関する断熱パネル保持具10および断熱パネル配設構造は、一例にすぎない。各図例以外の形状や寸法に適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10 断熱パネル保持具
11 吊り板部
12 横片
13 縦片
14 パネル押さえ板部
15 パネル固定部
18 パッキンシート
20 断熱パネル
21 端部
22 側端面
23 上面
24 下面
27 パネルユニット
30 垂木
31 側面
32 上面
33 出隅部
40 通気層
1 屋根骨組み
2 棟木
3 軒桁
4 母屋
5 野地板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7