(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033218
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】尿量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/493 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N33/493 B
G01N33/493 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136680
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】500035890
【氏名又は名称】株式会社ゼオシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100093894
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 清
(72)【発明者】
【氏名】下川 三郎
(72)【発明者】
【氏名】倉金 力男
(72)【発明者】
【氏名】原 智巳
(72)【発明者】
【氏名】杤久保 修
(72)【発明者】
【氏名】山末 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 英一
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA15
2G045AA16
2G045CB03
2G045DB10
2G045FA34
2G045GC08
2G045HA03
(57)【要約】
【課題】尿量測定の取り扱いが手軽な携帯型を含む尿量測定装置を提供する。
【解決手段】排尿される尿を受ける捕尿カップ1は、その底面からの高さをy、そのy位置における半径をrとしたとき、rがy
1/4に比例する容器とする。捕尿カップ1の底部には排出孔2設け、上部には尿漏れ穴3を設ける。排尿時に尿を捕尿カップ1内に受け排出孔2から排出する。その排出開始から排出終了までの時間tを検出し排尿量VをV=C´t
3/2(C´は定数)の演算データによって求める。更に捕尿カップの上部に小孔を有す小型受け皿を設置し、温度センサ、電気電導度センサを設置、捕尿カップの底出口付近に設けた電導度センサでの測定をもとに、塩分排泄量、深部体温、平均排尿速度を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排尿される尿を受ける捕尿カップを具備し、該捕尿カップの底部には受けた尿を排出する排出孔が設けられており、前記捕尿カップの内周面は円周面と成し、該捕尿カップ内の底面からの高さをy、その高さy位置における前記円周面の半径をrとしたとき、前記捕尿カップは前記rがy1/4に比例する関係を有する容器と成し、前記排出孔からの尿の排出開始時と排出終了時とを検出する尿排出検出センサと、該尿排出検出センサの検出情報に基き尿の排出開始時から排出終了時までの尿排出時間tを計測する尿排出時間計測手段が設けられ、尿の排出量をV、Cを定数としてV=Ct3/2の式が尿排出量演算データとして与えられていて、前記尿排出時間計測手段によって計測された尿排出時間tに基き、前記尿排出量演算データによって尿の排出量Vを求める尿排出量演算手段が設けられていることを特徴とする携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項2】
前記捕尿カップの上部側には尿が捕尿カップの上端から溢れ出るのを防止するための尿漏れ穴が設けられ、前記尿排出量演算データによって尿の排出量Vを求める場合には前記尿漏れ穴から排出される尿を含めて捕尿カップから外部へ排出される尿は全て前記捕尿カップの底部の前記排出孔であって該排出孔の孔面積よりも予め定められる面積分だけ大きな面積を有する仮定の排出孔から排出されると見做して修正されたV=C´t3/2の尿排出量演算データを用いて前記尿排出量演算手段により尿の排出量Vが求められることを特徴とする請求項1記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項3】
前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れ排出を検出する尿漏れ検出センサが設けられ、該尿漏れ検出センサにより前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れが検出されている間は前記V=C´t3/2の尿排出量演算データを用いて前記尿排出量演算手段により尿の排出量Vが求められ、前記尿漏れ検出センサにより前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れが検出されていない状態で、前記尿排出検出センサにより、前記排出孔からの尿の排出が検出されているときには、前記V=Ct3/2の尿排出量演算データを用いて前記尿排出量演算手段により尿の排出量Vが求められるという如く、前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れが生じているか否かに応じて尿排出量演算データが切り替え使用され、それぞれの尿排出量演算データを用いて求められる尿の排出量の和が1回の排尿時におけるトータルの尿排出量として求められることを特徴とする請求項2記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項4】
前記捕尿カップ内の底部には前記排出孔に向かう尿の流れが渦状の流れとなるのを防止するための渦流防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項5】
前記捕尿カップに受け入れた尿中の塩分濃度を検出するための尿中塩分濃度検出用センサが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項6】
前記尿中塩分濃度検出用センサは、前記採尿者の尿温度に対応する尿電導度を検出するための電導度検出用電極と、前記採尿者の尿温度対応する尿中のナトリウムイオン濃度を検出するためのナトリウムイオン濃度検出用電極の少なくとも一方の検出電極を有して形成されていることを特徴とする請求項5記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項7】
前記捕尿カップに受け入れた排尿者の尿の温度を検出するための尿温度検出用センサが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項8】
前記捕尿カップ内の上部開口部位には上向き状に皿状容器が配置されており、該皿状容器の上端側には該皿状容器の側壁がわから該皿状容器内に突き出し配置された基板が平置き姿勢で設けられており、該基板の上面側に前記尿中塩分濃度検出用センサの尿の塩分濃度に対応する尿電導度を検出するための電導度検出用電極と、前記基板の上面から浮かして配置された尿温度検出用センサの電極とが設けられ、前記皿状容器の底壁には皿状凹部空間を捕尿カップ内空間に連通する孔が形成されていることを特徴とする請求項6または請求項7記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項9】
前記尿排出量演算手段によって求められた尿排出量のデータと、前記尿排出検出センサの検出情報と、前記尿漏れ検出センサの検出情報と、前記尿中塩分濃度検出用センサにより検出される検出情報と、前記尿温度検出センサにより検出される検出情報との一つ以上の情報を外部の受信部に向けて発信する情報信号発信部が設けられていることを特徴とする請求項7または請求項8記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【請求項10】
捕尿カップには該捕尿カップを手に持って取り扱うための手持ちレバー部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載の携帯型を含む尿量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭等の病院外でも容易に用いることができ、尿量を簡易に測定し、尿中塩分排泄量、排尿速度、尿温度などの側手を可能とする携帯型を含む尿量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会において、様々な生活習慣病の治療や予防の大切さが重要視されている。高齢化に伴う障害の例として、例えば男性における前立腺肥大等を原因とする排尿障害や膀胱機能障害等の障害を持つ人が増えており、これらの診断や治療を行う上で、尿の排出量を測定することが重要である。また、塩分の多量摂取は、高血圧や心疾患、腎障害、胃がん、夜間頻尿などに影響するものであり、摂取塩分は大部分が尿に排泄されることから、尿中の塩分量を測定することによって塩分摂取量を推定することも重要であると考えられる。更に、感染症や熱中症の早期発見、性周期を推定できる尿温度を測定し、多くの病態管理に必要である。
【0003】
尿量を測定する装置として、従来は、例えば便器に尿量計を設置し、便器の中の水位変化を調べる設置型の装置が用いられている。また、尿を容器に貯めて、例えばロードセルを使用して尿の重さの変化を調べるものや、尿を貯めないで尿流量特性を測定する装置も提案されている(例えば特許文献1、2、参照)。
【0004】
塩分をどの位摂取しているかはわかりにくいが、尿には摂取塩分量の90%以上が排泄(排出)されるので、尿中の塩分量を測定することが一般的に行われている。尿中の塩分量測定方法としては、例えば24時間尿を、例えばプラスチック製容器や、排尿毎の尿の1/50を比例採尿するユリンメートP(ユリンメートは登録商標:住友ベークライト株式会社製)のような特別な容器に採尿して尿量を測定するとともに、尿中のNa(ナトリウム)イオン濃度を高価な分析機器で測定するか分析機関に分析依頼するかして尿中塩分量を測定する方法があり、尿量と尿中塩分濃度の値に基づき1日の塩分量を推定することが行われる。また、スポット尿から、クレアチニン量とナトリウム量を分析し、年齢、身長、体重のデータから推定される1日のクレアチニン排泄量とナトリウム排泄量との比を利用して、1日の尿への塩分排泄量を推定する方法や、特許文献3のように、夜間尿を1リットルのコップに採取し、その中の塩分量を測り、統計的な演算式から1日の塩分量を推定する方法も知られている。
【0005】
なお、人の体調管理を行う上で、人の深部体温の測定も重要なものであるが、尿は体の核心にある膀胱に蓄積された後に放出されるので、その温度は深部体温を反映すると言われていることから、尿から人の深部体温を的確に測定できれば、体調管理の利用に有効であると考えられる。尿温度を測定する装置として、便器内に検温部を設け、その検温部を通過する尿の温度を測定するものが提案されている(例えば、特許文献4、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5553315号公報
【特許文献2】特開2016-178966号公報
【特許文献3】特許第37126396号公報
【特許文献4】特開昭63-171933号公報
【特許文献5】特開2020-101381号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tochikubo et .al Simple portable device for sampling a whole day’s urine and its application to hypertensive patients. Hypertension ;5(2):270-274,1983.
【非特許文献2】山末耕太郎 他 著「家庭での塩分、カリウム摂取量測定方の検討」日循予防誌 2004年、39巻 p157-163
【非特許文献3】太田雅規 他 著「核心温の指標としての尿温測定の意義」産得衛誌 2008年50巻、p226-229.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記のような便器に設置するタイプの尿量計は、設置に多額の設備費を投入する必要があるといった問題があり、しかも、特定の便器でしか尿流量を測定(計測も)できないといった問題もある。同様に、深部体温を測定する方法においても、特許文献4に記載されているような、便器内に検温部を設けて該検温部を通過する尿の温度を測定する上記のような方法では、特定の便器でしか深部体温を検出できないといった問題がある。
【0009】
一方、尿を容器に貯めて尿量を測定する尿量測定方法は、特定の便器での採尿を必要としないものの、前記のようにロードセルを使用して重さの変化を調べるものは取り扱いがしにくいといった問題があり、尿をコップ等の容器に貯めてから尿量を測定する方法は、臭い等で嫌われることがあった。また、尿を容器にためないで測定するものにおいて、特許文献1に記載されている尿量計は、超音波ドプラー方式を応用した尿流計であるが、指に取り付けて使用されるもので取り扱い性等が悪く、精度も悪いことから実用化されていない。また、特許文献2,5に記載されているような水車の回転情報に基いて尿量を測定するものは、一般家庭での普及を広く図る上ではまだ価格的に問題があり、より一層の価格低減が望まれるものであった。
【0010】
また、従来の尿中塩分濃度測定方法は、それぞれ、以下に示すような問題を有する。例えば容器に貯めた尿のNaイオン濃度を測定する方法においては、Naイオン濃度の測定のためには高価な分析機器を必要としたり、採尿した尿を分析機関に依頼して分析したりする必要があるため、尿中塩分濃度の測定が非常に大変であるといった問題があった。また、採尿される夜間尿等に基づいて1日の塩分量を推定する方法は、夜間尿と24時間尿との関係に個人差があるため精度が不十分で、正確な塩分量推定ができないといった問題があり、スポット尿から1日の尿への塩分排泄量を推定する方法も家庭では測定できず、精度的にも不十分であった。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、排尿時の尿を貯めることなく、排尿の尿量を例えば家庭等においても容易に測定できるようにする使い勝手の良好なより安価な装置で、かつ、尿中塩分濃度も容易に正確に検出可能とし、尿量や塩分量の検出結果を医療用に幅広く利用できるようにする携帯型を含む尿量測定装置を提供することにあり、好ましくは、尿の温度を検出できるようにして尿温度の検出結果を医療用に幅広く利用できるような携帯型を含む尿量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明は、排尿される尿を受ける捕尿カップを具備し、該捕尿カップの底部には受けた尿を排出する排出孔が設けられており、前記捕尿カップの内周面は円周面と成し、該捕尿カップ内の底面からの高さをy、その高さy位置における前記円周面の半径をrとしたとき、前記捕尿カップは前記rがy1/4に比例する関係を有する容器と成し、前記排出孔からの尿の排出開始時と排出終了時とを検出する尿排出検出センサと、該尿排出検出センサの検出情報に基き尿の排出開始時から排出終了時までの尿排出時間tを計測する尿排出時間計測手段が設けられ、尿の排出量をV、Cを定数としてV=Ct3/2の式が尿排出量演算データとして与えられていて、前記尿排出時間計測手段によって計測された尿排出時間tに基き、前記尿排出量演算データによって尿の排出量Vを求める尿排出量演算手段が設けられている構成をもって課題を解決するための手段としている。
【0013】
また、第2の発明は、前記第1の発明の構成に加え、前記捕尿カップの上部側には尿が捕尿カップの上端から溢れ出るのを防止するための尿漏れ穴が設けられ、前記尿排出量演算データによって尿の排出量Vを求める場合には前記尿漏れ穴から排出される尿を含めて捕尿カップから外部へ排出される尿は全て前記捕尿カップの底部の前記排出孔であって該排出孔の孔面積よりも予め定められる面積分だけ大きな面積を有する仮定の排出孔から排出されると見做して修正されたV=C´t3/2の尿排出量演算データを用いて前記尿排出量演算手段により尿の排出量Vが求められることを特徴とする。
【0014】
さらに、第3の発明は、前記第2の発明の構成に加え、前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れ排出を検出する尿漏れ検出センサが設けられ、該尿漏れ検出センサにより前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れが検出されている間は前記V=C´t3/2の尿排出量演算データを用いて前記尿排出量演算手段により尿の排出量Vが求められ、前記尿漏れ検出センサにより前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れが検出されていない状態で、前記尿排出検出センサにより、前記排出孔からの尿の排出が検出されているときには、前記V=Ct3/2の尿排出量演算データを用いて前記尿排出量演算手段により尿の排出量Vが求められるという如く、前記尿漏れ穴から外部への尿の漏れが生じているか否かに応じて尿排出量演算データが切り替え使用され、それぞれの尿排出量演算データを用いて求められる尿の排出量の和が1回の排尿時におけるトータルの尿排出量として求められることを特徴とする。
【0015】
さらに、第4の発明は、前記第1または第2または第3の発明の構成に加え、前記捕尿カップ内の底部には前記排出孔に向かう尿の流れが渦状の流れとなるのを防止するための渦流防止手段が設けられていることを特徴とすることを特徴とする。
【0016】
さらに、第5の発明は、前記第1乃至第4のいずれか一つの発明の構成に加え、前記捕尿カップに受け入れた尿中の塩分濃度を検出するための尿中塩分濃度検出用センサが設けられていることを特徴とする。
【0017】
さらに、第6の発明は、前記第5の発明の構成において、前記尿中塩分濃度検出用センサは、前記採尿者の尿温度に対応する尿電導度を検出するための電導度検出用電極と、前記採尿者の尿温度に対応する尿中のナトリウムイオン濃度を検出するためのナトリウムイオン濃度検出用電極の少なくとも一方の検出電極を有して形成されている。
【0018】
さらに、第7の発明は、前記第1乃至第6のいずれか一つの発明の構成に加え、前記捕尿カップに受け入れた排尿者の尿の温度を検出するための尿温度検出用センサが設けられていることを特徴とする。
【0019】
さらに、第8の発明は、前記6または第7の発明の構成に加え、前記捕尿カップ内の上部開口部位には上向き状に皿状容器が配置されており、該皿状容器の上端側には該皿状容器の側壁がわから該皿状容器内に突き出し配置された基板が平置き姿勢で設けられており、該基板の上面側に前記尿中塩分濃度検出用センサの尿の塩分濃度に対応する尿電導度を検出するための電導度検出用電極と、前記基板の上面から浮かして配置された尿温度検出用センサの電極とが設けられ、前記皿状容器の底壁には皿状凹部空間を捕尿カップ内空間に連通する孔が形成されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0020】
さらに、第9の発明は、前記第7または第8の発明の構成に加え、前記尿排出量演算手段によって求められた尿排出量のデータと、前記尿排出検出センサの検出情報と、前記尿漏れ検出センサの検出情報と、前記尿中塩分濃度検出用センサにより検出される検出情報と、前記尿温度検出センサにより検出される検出情報との一つ以上の情報を外部の受信部に向けて発信する情報信号発信部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
さらに、第10の発明は、前記第1乃至第9のいずれか一つの発明の構成に加え、前記捕尿カップには該捕尿カップを手に持って取り扱うための手持ちレバー部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本発明は上記の構成を有しており、以下に、本願発明における尿排出量演算データのV=Ct
3/2がどのように導かれて与えられているかを
図1の説明図を用いて説明する。
【0023】
本発明における捕尿カップ1の内周面は円周面と成し、該捕尿カップ内の底面からの高さをy、その高さy位置における前記円周面の半径をrとしたとき、前記捕尿カップは前記rがy1/4に比例する関係を有する容器と成しているので、捕尿カップ内の底面からyの高さレベルの尿量が底部の前記排出孔2を通して排出される時間をtとすると、tとyは比例することになる(後述の証明参照)。ここで、aを定数とすれば、
y=at・・・・・・・(1)
と表わされる。
【0024】
トリチェリの法則によれば排出孔2から排出される尿の流出速度vは、重力の加速度をgとして、
v=√(2gy)・・・・・(2)
と表わせる。
従って、排出孔2からの尿の排出量(流出量)Vは、排出孔2の面積をsとすれば、
V=svtとなる。ここで、(2)式により、
V=svt=s√(2gy)・t=s√(2gat)・t
=s√(2ga)・t3/2=Ct3/2・・・・・(3)
ただし、Cは定数(C=s√(2ga))である。なお、定数のaは例えば実験により求められる。つまり、排出口2を閉じた状態で捕捉カップ1内に既知の高さyレベルまで水(湯)を入れた後、排出口2を開けて捕捉カップ1内の水が出終わるまでの時間tを計測し、その時間tでyを割ることによりaの値が求められる(a=y/t)。
【0025】
上記の如く、尿の排出量(流出量)Vはtの函数データとして求められ、尿排出量演算データとして尿排出量演算手段等のメモリに与えられる。
【0026】
次に半径rがy1/4と比例関係にある捕尿カップ1内の底面からyの高さレベルの尿量が底部の排出孔2を通して排出される時間をtとすると、tとyは比例する点については、古くより水時計の原理として証明されている。
【0027】
図1を参照して、高さyにおいての捕尿カップ1内の面積(開口面積)をS(y)とすると、排出口2からdt時間に排出される尿量svdt(sは排出口2の面積、vは尿の排出速度)は、捕尿カップ1内の高さy位置での尿水面のdyの減少に対応する尿水量はS(y)dyであり、svdt=S(y)dyとなる。トリチェリの法則によりv=√(2gy)であるから、s√(2gy)・dt=S(y)dy。それ故に、dt=(S(y)/s√(2gy))dy、積分すると、
∫dt=∫(S(y)/s√(2gy))dy・・・・・・(4)
【0028】
ここでtとyは比例すると仮定して以下nを決定する。
S(y)=S0ynとすると(S0は定数)、(4)式より、
∫dt=∫(S0yn)/s√(2gy))dy=
(S0/(s√(2g))∫(yn/√y)dy=
(S0/(s√(2g))∫yn-1/2dy
積分すると、t=S0/((n+1/2)s√(2g))yn+1/2+K(Kは積分定数)
故に、tとyが比例するためにはn+1/2=1であり、nは1/2となる。すなわち、S(y)=S0√yの形状の容器なら良い。ここで、S0=r0
2πとする(r0は定数)。S(y)=r2π(rは高さがy位置での半径)であるから、S(y)/S0=√y、すなわち、r2π/(r0
2π)=√y
∴r2=r0
2√yとなり、rがy1/4に比例する容器であれば捕尿カップ1内の底面からyの高さレベルの尿量が底部の前記排出孔2を通して排出される時間をtとすると、tとyは比例することになり、捕尿カップ1内から排出孔2を通して排出される尿量を時間tによって算出できる。換言すれば、捕尿カップ1内の尿量(高さy)を時間tに変換できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば排尿者が捕尿カップに排尿することにより、尿は捕尿カップに受け止められながら捕尿カップの底部の排出孔からトイレに排出され、1回の排尿時毎の排尿の尿量が排出孔からの尿の排出開始から排出終了までの時間の検出情報に基き求められる。
【0030】
つまり、本発明は、尿をコップ等の容器に貯めて尿量を測定するのではなく、排尿時毎に、尿量をリアルタイムで検出することができるので、尿量測定装置の捕尿カップ等そのものを直後に水洗いすることにより、清潔に保てることに加え、容器に貯めて尿量を測定する場合と異なり、臭いや衛生上の問題を回避できる。
【0031】
また、尿量の測定時には 捕尿カップでの尿の受け入れと捕尿カップからの尿の排出が同時に行われるので、排尿時に捕尿カップ内に溜まる尿量を少なくできる。したがって、必然的に捕尿カップを小型で軽量化でき、捕尿カップの取り扱いも容易となる。特に捕尿カップの上部側に尿漏れ穴を設けた構成にあっては、尿水面が上昇して尿漏れ穴に達した時には該尿漏れ穴からも尿が排出されるので、排尿時に捕尿カップ内に溜まる尿量をより少なくできることとなり、必然的に捕尿カップをより小型で軽量化でき、捕尿カップの取り扱いが非常に容易となる上に、外出時に携帯することも容易である。
【0032】
また、本発明において、捕尿カップ内の底部に、排出孔に向かう尿の流れが渦状の流れとなるのを防止する渦流防止手段を設けたものにあっては、捕尿カップ内から排出孔へ尿が円滑に流れ込むので、捕尿カップ内の尿の排出時間tを正確に求めることができ、これに伴い排出時間tに基いて求められる尿の排出量Vの値の信頼性を高めることができる。
【0033】
また、本発明においては、尿中塩分濃度検出用センサの検出情報に基き尿中の塩分濃度も検出することができるので、尿量と尿中塩分濃度との検出結果を医療用に幅広く利用できるようにする、非常に利用価値の高い携帯型を含む尿量測定装置を提供することができる。
【0034】
尿量の測定を行う上で、小型軽量で家庭でも、外周先でも使える取り扱い易いものの要求が強いが、本発明の携帯型を含む尿量測定装置はこのような要求に応えることができるものであり、例えば高齢者の住宅や施設等に本発明の尿量測定装置の捕尿カップを常備しておいて、一定期間、尿量情報を検出することにより、適切な尿量情報を得ることができる。そして、その情報に応じて、治療効果の確認や、排尿疾患の早期発見を行えるようにすることができることに加え、大部分の人が自分の塩分の摂取量がわかっておらず栄養士の聞き取りでは精度が悪いことから必要とされていた塩分摂取量の把握にも役立てることができ、高血圧症や心疾患等の、塩分摂取量に関連する疾患の治療や予防に役立てることができる。
【0035】
また、本発明の携帯型を含む尿量測定装置において、捕尿カップに手持ちレバー部を設けたものにあっては、捕尿カップを手持ち状態で取り扱うことが可能で、捕尿カップの持ち運びが容易で、使い勝手も非常に良好となる。
【0036】
また、本発明において、前記尿中塩分濃度検出用センサは、排尿者の尿温度に対応する尿電導度を検出するための電導度検出用電極と、前記採尿者の尿温度に対応する尿中のナトリウムイオン濃度を検出するためのナトリウムイオン濃度検出用電極との少なくとも一方の検出電極を有して形成されているものにおいては、電導度検出用電極とナトリウムイオン濃度検出用電極の少なくとも一方の電極を用いて尿中の塩分濃度の的確な検出を可能とすることができる。特に電導度検出用電極は現在においても安価であり、測定毎の校正も不要で寿命も長いので、安価な携帯型を含む尿量測定装置の実現を可能とし、メンテナンスも容易となる。
【0037】
さらに、本発明において、排尿者の深部体温(膀胱内)を検出するための尿温度検出用センサを設けることにより、排尿者が排尿する毎に、排尿者の深部体温を、尿温度検出用センサを介して推定できるようにすることができる。そして、尿温度検出用センサの検出情報に基き排尿ごとに排尿者の深部体温を測定できるようにすることで、COVID-19を含む感染症などの症状をいち早く知ることができる。また、性周期の観察にも有効である。なお、深部体温は、例えば排尿開始からの経過に伴って立ち上がったピーク温度となった温度を排尿者の深部体温として排尿毎に検出(推定)することができる。
【0038】
本発明において、特に、捕尿カップ内の上部開口部位の皿状容器の側壁がわから該皿状容器内の皿状容器の上端側に突き出し配置された基板の上面側に前記尿中塩分濃度検出用センサの尿電導度を検出するための電導度検出用電極と、尿温度検出用センサの電極とが設けられている構成のものにあっては、排尿者が捕尿カップに排尿する際に、排尿者の排尿の器官と尿温度検出用センサの電極との距離が極めて近くなるので、器官から放出された尿は殆ど冷えずに尿温度検出用センサの電極に達することになる。このため、尿温度検出用センサにより、極めて真に近い排尿者の深部体温を求める(推定する)ことができる。
【0039】
また、尿中塩分濃度検出用センサの電導度検出用電極も皿状容器の上端側に配置されるので、排尿者が排尿を開始すると直ぐにその電導度検出用電極は尿に浸かり、排尿が終了すると皿状容器内の尿は該皿状容器の底壁の孔から流下するので電導度検出用電極は空気に触れることとなり、電導度検出用電極が尿に浸かるか空気に触れるかの違いによる伝導度の変化により排尿者の排尿の開始と終了とを的確に検出でき、これにより排尿時間も正確に検出できるので、その排尿時間で前記尿排出量演算手段によって求められる排尿量を割ることにより平均排尿速度を求めることもでき、この平均排尿速度を医療の診断等に活用することが可能となる。
【0040】
さらに、排尿者が排尿すると、その尿は最初に皿状容器に当ってから捕尿カップ内に入るので、皿状容器を設けることによって、排尿による尿の落下衝撃が捕尿カップ内に溜まっている尿に直接影響を及ぼすのを抑制できるという効果が得られるものである。
【0041】
さらに、本発明においては、排尿者の排尿時毎にリアルタイムで排尿量や、尿中塩分濃度や、平均排尿速度を求めたりすることができるし、排尿者の深部体温を求める(推定する)ことができる。そのため、例えばそれらの求めた値を装置に表示可能に構成することにより、排尿者が尿量と塩分濃度と深部体温と平均排尿速度の表示値を見て排尿ごとに把握できるようにすることができる。
【0042】
さらに、本発明において、前記尿排出量演算手段によって求められた尿排出量のデータと、前記尿排出検出センサの検出情報と、前記尿漏れ検出センサの検出情報と、前記尿中塩分濃度検出用センサにより検出される検出情報と、前記尿温度検出センサにより検出される検出情報との一つ以上の情報を外部の受信部に向けて発信する情報信号発信部が設けられているものにおいては、情報信号発信部から発信する情報に基づいて、外部の受信部側に設けた情報解析手段等によって、前記発信される情報に基づいた様々な解析を行うことができる。
【0043】
つまり、利用者が単純に排尿の度に捕尿カップを用いて排尿するだけで、その尿量や、尿中塩分濃度、尿の温度等に関する少なくとも一つの検出情報を外部に伝えられることができ、その検出情報をもとに、外部で尿量、尿中塩分濃度、尿温度、平均排尿速度等の必要な情報を把握できるので、例えば医療機関等が利用して治療効果の確認、排尿疾患の早期発見、高血圧の予防、体調管理等に適宜に役立てることができる。また、例えば高齢者施設等において、その後の介護等に役立てることもできるし、より幅広く有効な情報利用を行うことができるようになる。尚、夜間尿(起床時1回目含む)で1日の塩分摂取量を推定できることがわかっており、(非特許文献2)基底基礎体温も早朝尿で推定できるので、夜間から早朝尿のみの測定も使用可能である。なお、本発明における「携帯型を含む尿量測定装置」は非携帯型と携帯型との両方の尿量測定装置が本発明の技術的範囲に含まれるものであることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に係る携帯型を含む尿量測定装置の尿量測定概念の説明図である。
【
図2】本発明に係る携帯型を含む尿量測定装置の第1実施例の斜視説明図である。
【
図3】第1実施例の尿量測定装置を用いた排水量測定実験のグラフである。
【
図4】実施例においての情報処理を示すブロック図である。
【
図5】実施例の尿量測定装置のデータ解析システム例を説明するための模式的なイメージ図である。
【
図6】本発明に係る携帯型を含む尿量測定装置の第2実施例の要部構成の概念説明図である。
【
図7】本発明に係る携帯型を含む尿量測定装置の第3実施例の説明図である。
【
図8】本発明に係る携帯型を含む尿量測定装置の第4実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【実施例0046】
図2には、本発明に係る携帯型を含む尿量測定装置の第1実施例が模式的な斜視図により示されている。同図に示されるように、本実施例の尿量測定装置は、排尿者の排尿される尿を受ける捕尿カップ1を有している。捕尿カップ1の底部には受けた尿を排出する排出孔2が設けられている。この排出孔2の大きさは捕尿カップ1で尿を受けたときに尿が捕尿カップ1内に溜まる大きさであればよく、限定はされないが、この実施例では直径が4mmの孔に形成されている。
【0047】
捕尿カップ1の形状は、前述の
図1を参照して説明したように、その内周面は円周面と成し、該捕尿カップ1内の底面からの高さをy、その高さy位置における前記円周面の半径をrとしたとき、前記捕尿カップ1は前記rがy
1/4に比例する関係を有するカップ状の容器(一例として高さyが72mmの位置における半径rは32.5mm)と成している。この容器形状とすることにより、前記したように、捕尿カップ1内の底面からの尿量の高さyはその尿量が排出孔2から出る時間tに比例することになり、y=atとなる(aは定数でこの例ではa=00398)。
【0048】
捕尿カップ1の上部側には尿が捕尿カップ1の上端から溢れ出るのを防止するための尿漏れ穴3が設けられている。この尿漏れ穴3の大きさも限定されないが、本実施例では直径6mmの穴と成している。捕尿カップ1内の底部には捕尿カップ1内の尿水が排出穴2に渦流となって流れ込むのを防止するための渦流防止手段が設けられている。本実施例ではこの渦流防止手段は板部材6によって形成されており、板部材6は排出穴2を二分する立設状の態様で捕尿カップ1内に固定されている。そして、板部材6の底面(下端面)と捕尿カップ1内の底面との間には隙間が形成されている。また、捕尿カップ1内の下部側の前記排出孔2の近傍位置には尿の捕尿カップ1からの排出開始時と排出終了時とを検出する尿排出検出センサ4が設けられている。この尿排出検出センサ4は水位センサや電導度センサによって形成される。
【0049】
水位センサや電導度センサはそれぞれ電極を有しており、その電極は尿の排出開始時には尿に浸り排出終了時には尿が無くなって空気に触れるので水位センサにおいては尿の排出開始時と排出終了時とが電極の抵抗変化として検出でき、対の電極を有する電導度センサにおいてはその対の電極間の電導度の変化として検出できるのでどちらのセンサを用いても尿の捕尿カップ1からの排出開始時と排出終了時とを検出できるが、この実施例では尿排出検出センサ4として電導度センサを用いている。
【0050】
また、
図2に示されるように、捕尿カップ1には排尿者が該捕尿カップ1を手に持って操作するための手持ちレバー5が設けられている。操作しやすくするため、手持ちレバー5は水平に対しほぼ45°斜め上向きに形成されている。手持ちレバー5の内部(例えば、握り部の内部)には電源としての電池や、回路基板が配置されており、手持ちレバー5の外面には電源スイッチ(図示せず)が設けられている。前記回路基板には捕尿カップ1に設けられる各種センサの情報を取り込むとともに、それらの情報を外部へ送信する手段を有している。なお、手持ちレバー5は必要に応じ防水加工が施される。
【0051】
前記捕尿カップ1のカップ内面には前記フレキシブルプリント基板7が尿排出検出センサ4の電極側から手持ちレバー部5側に伸長する形態で設けられ、このフレキシブルプリント基板7を介して尿排出検出センサ4の電極は手持ちレバー部5内に収容配置されている回路基板(回路基板の回路)に電気的に接続されている。
【0052】
図4は本実施例の携帯型を含む尿量測定装置のブロック構成を示す。本実施例の尿量測定装置は捕尿カップ1を含む本体側100と外部の情報処理側200とによって構成され、本体側100側には排尿者の排尿に関しての情報を検出する尿排出検出センサ4、尿中塩分濃度検出用センサ15および尿温度検出センサ16を有して構成されている。尿中の塩分濃度を検出するための尿中塩分濃度検出用センサ15と、尿の温度を検出するための尿温度検出用センサ16は捕尿カップ1の適宜の位置に設けられている。尿中塩分濃度検出用センサ15は、例えば、尿電導度を検出するための電導度検出用電極を用いたり、イオン電極法により塩分濃度を検出する電極を用いて形成できるが、この実施例では、尿電導度を検出するための電導度検出用電極を用いた尿中塩分濃度検出用センサ15を使用している。これら本体側100の各センサの検出情報は該本体側100の送信部から外部の情報法処理側200の受信部へ向けて送信される。
【0053】
外部の情報法処理側200は、時計機構11、尿排出時間計測手段10、尿排出量演算手段12、深部体温検出手段13および塩分排出量演算手段20を有して構成されている。該深部体温検出手段13は尿温度検出センサ16の尿温度検出情報を観察し、検出される尿温度が上昇していって飽和温度に達した時にその飽和温度を排尿者の深部体温温度として求める(推定する)ものである。
【0054】
また、尿排出時間計測手段10は尿排出検出センサ4の検出情報に基き捕尿カップ1の排出孔2を通しての尿の排出開始時から排出終了時までの尿排出時間tを時計機構11の時間情報を用いて計測する。
【0055】
尿排出量演算手段12は排尿毎に排尿者の排尿量を演算により求める。該尿排出量演算手段12には尿排出量演算データが与えられている。捕尿カップ1の排出孔2のみを通して尿が捕尿カップ1内から排出される場合は尿排出量演算データとして前述の(3)式のV=Ct3/2(Cは定数でC=√(2ga)))の演算式が与えられるが、本実施例では捕尿カップ1の上部に尿漏れ穴3が設けられていて、捕尿カップ1内の尿の水位が尿漏れ穴3以上になると尿漏れ穴3からも尿が排出される。
【0056】
そこで、この実施例では尿漏れ穴3から排出される尿を含めて捕尿カップ1から外部へ排出される尿は全て捕尿カップ1の底部の前記排出孔2から排出されるものと見做して尿排出量を求める構成と成している。ただし、この場合、実際の排出孔2の孔面積よりも予め定めた面積を加算した孔面積を持つ架空の排出孔2を通して尿が排出されるものとして尿排出量を演算により求める構成と成している。
【0057】
実際の排出孔2の面積に加算される面積の値は必ずしも限定されないがこの実施例では前記尿漏れ穴3の面積と等しい面積を「実際の排出孔2の面積に加算される面積」として設定している。それ故、尿漏れ穴3から排出される尿を含めて捕尿カップ1から外部へ排出される尿は全て捕尿カップ1の底部の前記架空の排出孔2から排出されるものと見做すことから、修正されたV=C´t3/2の尿排出量演算データが尿排出量演算手段12に与えられている。ここで、C´は定数で実際の排出孔2の面積をs1、尿漏れ穴3の面積をs2とすれば架空の排出孔2の面積は(s1+s2)であり、V=(s1+s2)vt(vは尿の排出孔2からの排出速度で、v=√(2gy))であるので、C´=(s1+s2)√(2ga)である(前記(3)式の導入過程を参照)。
【0058】
尿排出量演算手段12は尿排出時間計測手段10によって計測された尿の排出開始時から排出終了時までの尿排出時間tを用い、前記V=C´t3/2の演算式によって1回ごとの排尿者の排尿量Vを求める。
【0059】
塩分排出量演算手段20は、尿中塩分濃度検出用センサの尿中塩分濃度の検出情報(具体的には尿中電導度情報)に基き求められる尿中塩分濃度に前記尿排出量演算手段12によって求められた尿排出量を乗算することによって排尿による塩分排出量を求める。この場合、塩分排出量演算手段20は尿温検出手段13が尿温を検出したタイミングでの尿中塩分濃度(深部体温に対応した尿中塩分濃度)の検出情報に基いて塩分排出量を尿温に対応した塩分排出量として求めることができる。
【0060】
次に、本実施例の尿量測定装置を用いた尿量測定の動作について説明する。排尿者が排尿する際に排尿者は捕尿カップ1の手持ちレバー部を持って、捕尿カップ1の上端開口を排尿器官部位に当てて排尿(放尿)を開始する。そうすると、排尿された尿は捕尿カップ1内に入り込み、捕尿カップ1内に溜まりながら排出孔2を通してトイレ(便器)に排出される。捕尿カップ1内の尿の水位が尿漏れ穴3以上の水位に達すると尿漏れ穴3からも尿が出てトイレ(便器)に排出される。
【0061】
排尿の経過に伴い排尿の終了近くになるにつれ捕尿カップ1内の尿の水位が低下して尿漏れ穴3よりも低下すると尿漏れ穴3からの排出が止み、その後、排尿が終了すると最終的には排出孔2からの尿の排出が停止する。この一連の排尿動作において、尿排出検出センサにより排出孔2からの尿の排出開始時と排出終了時とが検出され、この検出情報に基き、尿排出時間計測手段10(
図4参照)により尿の排出開始時から排出終了時までの尿排出時間tが計測される。そして尿排出量演算手段がこの尿排出時間tを取り込み、与えられているV=C´t
3/2の尿排出量演算データを用いて尿の排出量Vが尿排出量演算手段12(
図4参照)によって求められる。
【0062】
図3および表1は本実施例の携帯型を含む尿量測定装置を用いた尿量測定の実験結果の一例を示す。この実験は予め容器に入れた既知の水量を投入量として捕尿カップ2内に尿に見立てて投入し、その投入した水量に対応した尿量測定装置で得られたデータ(尿排出量演算手段で得られた尿排出量演算値)を各投入量に対応させて示したものである。なお、
図3のグラフにおいて横軸(x軸)はt
3/2(sec(秒))を示し、縦軸(y軸)は水量(ml)を示しており、図中のRは相関係数を示している。この
図3および表1の結果からも分かるように、本実施例の携帯型を含む尿量測定装置は簡易な構造であるにもかかわらず実用性に富む性能を有している。
【0063】
【0064】
表2は1日分の排尿日誌例を示したもので、本尿量測定装置を使用し、尿量、塩分排泄量、温度を排尿ごとに測定し、1日分が排尿日誌として記録されたものである。1日の尿量、塩分排泄量、夜間頻尿状態などがわかる。
【0065】
【0066】
図5には、実施例の尿量測定装置を用いた外部でのデータ解析を説明するための模式的なイメージ図が示されている。この例は、本実施例の携帯型を含む尿量測定装置において、排出孔2からの尿の排出開始時と排出終了時とを検出する尿排出検出センサの情報と、尿中塩分濃度検出用センサにより検出される検出情報と、尿温度検出センサにより検出される検出情報との一つ以上の情報(例えば全部の情報)が本体側100から外部の情報処理側200の装置の受信部に向けて発信される例であり、本体側100の情報信号発信部が手持ちレバー部5に配置の回路基板に設けられており、外部の情報処理側200の各信号処理部位でこれらの発信情報を受けてデータ解析が行われる例である。
【0067】
同図において、符号24はプリンタ、符号25はスマートフォン、符号26は無線端末付きタブレット、符号27はパーソナルコンピュータ、符号28はラベルプリンタ、符号29はクラウドをそれぞれ示す。それらの内、例えばパーソナルコンピュータ27には尿排出量演算データを備えた尿排出量演算手段12や尿によって体外に排出される塩分量(塩分排出量)を求める塩分排出量演算手段12が設けられている。なお、情報発信の通信方法として、低電力ブルーソース通信を用いている。そして、このように通信機能を持たせると、遠隔医療、在宅医療、ヘルスケアにも有用となりうるというメリットを有する。
【0068】
また、外部の情報処理側200の適宜の信号処理部位には表示装置が設けられ、これら尿の排出量V、塩分排出量および深部体温温度等の情報が表示されるとともに必要に応じ各種センサの検出情報が表示される。そして、必要に応じ、これらの情報が日付毎に纏められて日誌作成手段により日誌が作成される。
前記プリント基板14の上面側には前記尿中塩分濃度検出用センサの尿中塩分濃度に対応する尿電導度を検出するための電導度検出用電極15aと、前記基板の上面から浮かして配置された尿温度検出用センサ16の電極16aとが設けられている。なお、尿温度検出用センサ16はサーミスタによって構成されており、尿温度検出用センサ16の電極16aは前記プリント基板14の上面から浮いた状態でリード線によってプリント基板14の上面に固定されている。
そして、これらの各電極15a、16aはプリント基板14および前記フレキシブルプリント基板6を介して手持ちレバー部5内の回路基板(基板の回路)に電気的に接続されている。また、皿状容器8の底壁には皿状凹部空間を捕尿カップ1内空間に連通する孔18が形成されている。
この第2実施例においては、捕尿カップ1の上部側に皿状容器8が配置されることで、排尿者が排尿する尿は皿状容器8に当ってから捕尿カップ1内に入り込むので、尿の落下の衝撃が皿状容器8で受け止められることとなり、その落下の衝撃が捕尿カップ1内に溜まっている尿に加わるのを防止(抑制)することができる。
その上に、皿状容器8の容積は捕尿カップ1の容積に比べて格段に小さいので、排尿者が排尿すると、瞬時に尿は皿状容器8内が尿で満たされて電導度検出電極15aは尿に浸かることとなり、また、排尿が終了すると皿状容器8内の尿は底壁の孔18から捕尿カップ1内に流下するので、直ちに皿状容器8内の尿の水位が低下して電導度検出電極15aは空気に触れる。電導度検出電極15aが尿に浸かっている時と空気に触れている時では電導度検出電極15aで検出される尿電導度に違いが生じるので、この検出電導度の変化によって、排尿時間を正確に検出でき、これに伴い平均排尿流速検出手段21によって、平均排尿流速を正確に求めることが可能となる。
また、排尿者が排尿する場合、排尿者の排尿器官と皿状容器8側に設けられるセンサの各電極15a,16aとが至近距離となり、排尿者から排出(放尿)される尿は途中(途中の空間)で殆ど冷えることなく皿状容器8内に入り込み、皿状容器8内の尿は新しく入り込む尿と次々に入れ替わる。そのため、各電極15a,16aは冷えの無い殆ど真の深部体温の温度の尿に接する(浸かる)ことになるので、深部体温検出手段13によってこの深部体温を検出(推定)することが可能となる。