(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033219
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】イオン導電性樹脂粒子、分散液及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
C08F 212/14 20060101AFI20240306BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240306BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240306BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08F212/14
H01M4/62 Z
H01B1/06 A
C08F220/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136682
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大塚 丈
(72)【発明者】
【氏名】山内 健司
(72)【発明者】
【氏名】趙 泰衡
【テーマコード(参考)】
4J100
5G301
5H050
【Fターム(参考)】
4J100AB02Q
4J100AB07P
4J100AB07Q
4J100AB16Q
4J100AK08P
4J100AL03Q
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4J100AL63Q
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4J100BA56Q
4J100CA04
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4J100EA05
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5G301CA30
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5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
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5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】耐溶剤性が高く、導電抵抗を低減して高性能のリチウムイオン電池を作製可能なイオン導電性樹脂粒子を提供する。また、該イオン導電性樹脂粒子を含む分散液及びリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を含む重合体を含み、前記重合体はLi原子を含む官能基を有する、イオン導電性樹脂粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を含む重合体を含み、
前記重合体はLi原子を含む官能基を有する、イオン導電性樹脂粒子。
【請求項2】
前記重合体はスチレン系モノマーに由来する成分を含む、請求項1に記載のイオン導電性樹脂粒子。
【請求項3】
前記重合体は(メタ)アクリルモノマーに由来する成分及びスチレン系モノマーに由来する成分100重量%中、2官能以上の(メタ)アクリル酸エステル及び2官能以上のスチレン系モノマーを合計10重量%以上100重量%以下含む、請求項1又は2に記載のイオン導電性樹脂粒子。
【請求項4】
前記スチレン系モノマーがp-スチレンスルホン酸塩を含む、請求項2に記載のイオン導電性樹脂粒子。
【請求項5】
前記重合体はp-スチレンスルホン酸塩に由来する成分を1重量%以上90重量%以下含む、請求項4に記載のイオン導電性樹脂粒子。
【請求項6】
前記p-スチレンスルホン酸塩はp-スチレンスルホン酸リチウムを含む、請求項4又は5に記載のイオン導電性樹脂粒子。
【請求項7】
平均粒子径が0.1μm以上5μm以下である、請求項1、2、4又は5に記載のイオン導電性樹脂粒子。
【請求項8】
請求項1、2、4又は5に記載のイオン導電性樹脂粒子と、水及び有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、
前記イオン導電性樹脂粒子の含有量が5重量%以上30重量%以下、前記水及び前記有機溶媒の合計含有量が70重量%以上95重量%以下である、分散液。
【請求項9】
有機溶媒がN-メチルピロリドンを含む、請求項8に記載の分散液。
【請求項10】
請求項8に記載の分散液を用いてなる、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン導電性樹脂粒子、該イオン導電性樹脂粒子を含む分散液及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、充放電のサイクル特性に優れるため、多くの電子機器の電源として広く用いられている。リチウムイオン電池の電極は、通常、活物質とバインダー等の樹脂材料とを溶媒と共に混錬し、活物質を分散させたスラリーとした後、このスラリーをドクターブレード法等によって集電体上に塗布し乾燥して薄膜化することにより形成される。
また、このようなリチウムイオン電池には可燃性の有機溶媒が封入されており、液漏れや爆発等の事故が多発していることから、近年では、無機系固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池が検討されている。全固体電池の製造では、無機電解質とバインダー樹脂等の樹脂材料とを有機溶媒に分散させたスラリー組成物を塗工乾燥することで均一な厚みの無機粉体シートを作製し、これらを重ねて電池を形成し、焼成することでバインダー樹脂を取り除く、湿式法と呼ばれる工程が用いられる。
【0003】
リチウムイオン電池に用いられる樹脂材料として、例えば、特許文献1には(メタ)アクリル酸メチルとジビニルベンゼンとを含む単量体組成物を重合させた(メタ)アクリル系架橋粒子重合体からなる樹脂粒子が開示されている。
また、特許文献2には特定のポリフッ化ビニリデン共重合体に特定構造を有する溶融塩単量体をグラフト重合して得た高分子導電組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-062435号公報
【特許文献2】特許第6654310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の樹脂材料は耐溶剤性に劣るため、溶剤中で粒子形状を保って分散させることができず、樹脂が活物質や電解質を覆ってしまうこととなる。これにより活物質同士や活物質と電解質との接触を妨げ導電抵抗が高くなり繰り返しの充放電により電池性能が著しく劣化するという問題がある。
【0006】
本発明は、耐溶剤性が高く、導電抵抗を低減して高性能のリチウムイオン電池を作製可能なイオン導電性樹脂粒子を提供することを目的とする。また、該イオン導電性樹脂粒子を含む分散液及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示(1)は、(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を含む重合体含み、前記重合体はLi原子を含む官能基を有するイオン導電性樹脂粒子である。
本開示(2)は、前記重合体はスチレン系モノマーに由来する成分を含む本開示(1)のイオン導電性樹脂粒子である。
本開示(3)は、前記重合体は(メタ)アクリルモノマーに由来する成分及びスチレン系モノマーに由来する成分100重量%中、2官能以上の(メタ)アクリル酸エステル及び2官能以上のスチレン系モノマーを合計10重量%以上100重量%以下含む本開示(1)又は(2)のイオン導電性樹脂粒子である。
本開示(4)は、前記スチレン系モノマーがp-スチレンスルホン酸塩を含む本開示(2)又は(3)のイオン導電性樹脂粒子である。
本開示(5)は、前記重合体はp-スチレンスルホン酸塩に由来する成分を1重量%以上90重量%以下含む本開示(4)のイオン導電性樹脂粒子である。
本開示(6)は、前記p-スチレンスルホン酸塩はp-スチレンスルホン酸リチウムを含む本開示(4)又は(5)のイオン導電性樹脂粒子である。
本開示(7)は、平均粒子径が0.1μm以上5μm以下である本開示(1)~(6)の何れかとの任意の組み合わせのイオン導電性樹脂粒子である。
本開示(8)は、本開示(1)~(7)の何れかのイオン導電性樹脂粒子と、水及び有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、前記イオン導電性樹脂粒子の含有量が5重量%以上30重量%以下、前記水及び前記有機溶媒の合計含有量が70重量%以上95重量%以下である分散液である。
本開示(9)は、有機溶媒がN-メチルピロリドンを含む本開示(8)の分散液である。
本開示(10)は、本開示(8)又は(9)の分散液を用いてなるリチウムイオン電池である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、Li原子を含む官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂粒子は耐溶剤性が高く、リチウムイオン電池の樹脂材料として用いた場合に導電抵抗を低減して高性能のリチウムイオン電池を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記イオン導電性樹脂粒子は、(メタ)アクリルモノマーに由来する成分を含む重合体含む。
また、上記重合体は、Li原子を含む官能基を有する。
なお、上記(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、エチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル及びメタクリル酸リチウム等の(メタ)アクリル酸塩等が挙げられる。
上記構造を有することで、リチウムイオン電池の樹脂材料として用いた場合に導電抵抗を低減できる。
【0010】
上記Li原子を含む官能基としては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基等のリチウム塩等が挙げられる。なかでも、導電抵抗を低減できるという観点からスルホン酸基のリチウム塩が好ましい。
また、上記Li原子を含む官能基は、上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分に含まれていてもよく、後述するスチレン系モノマーに由来する成分に含まれていてもよい。なかでも、耐溶剤性を高められるという観点からスチレン系モノマーに由来する成分に含まれることが好ましい。
【0011】
上記Li原子を含む官能基を有するモノマーとしては、例えば、後述するスチレン系モノマーであるp-スチレンスルホン酸リチウム、メタクリル酸リチウム等が挙げられる。
【0012】
上記重合体におけるLi原子を含む官能基を有するモノマーに由来する成分の含有量は、1重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましく、10重量%以上がより好ましく、85重量%以下がより好ましく、20重量%以上が更に好ましく、80重量%以下が更に好ましい。上記の範囲内にすることによって導電抵抗をより低減しつつ耐溶剤性をより高めることができる。
なお、重合体中の各モノマーに由来する成分の含有量は、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0013】
上記重合体におけるLi原子含有量は、0.03重量%以上が好ましく、7.0重量%以下が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、3.5重量%以下がより好ましく、0.07重量%以上が更に好ましく、3.0重量%以下が更に好ましい。
上記Li原子含有量は、重合体を形成するモノマー成分の仕込み量及び上記Li原子を含む官能基を有するモノマー中のLi原子の含有量から計算することができる。また、上記Li原子含有量は、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0014】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルは、単官能の(メタ)アクリル酸エステルであってもよく、2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。なかでも、耐溶剤性を向上させるという観点から、2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
【0015】
また、上記(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル価が80以上のものが好ましく、250以下のものが好ましく、90以上のものがより好ましく、200以下のものがより好ましい。
なお、上記(メタ)アクリル価は、上記(メタ)アクリルモノマーの分子量を1分子中の(メタ)アクリロイル基の数で割ることにより求めることができる。
また、上記(メタ)アクリルモノマーが(メタ)アクリル価が異なる複数の(メタ)アクリルモノマーを含む場合、上記(メタ)アクリル価は(メタ)アクリルモノマー全体における各(メタ)アクリルモノマーの割合と(メタ)アクリル価を乗じて合算することで求めることができる。
【0016】
上記重合体における上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分の含有量は、10重量%以上が好ましく、100重量%以下が好ましく、15重量%以上がより好ましく、99重量%以下がより好ましく、20重量%以上が更に好ましく、90重量%以下が更に好ましい。上記の範囲にすることで反応時間を短縮することができる。
【0017】
また、上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分と後述するスチレン系モノマーに由来する成分との合計100重量%中、上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分の割合は10重量%以上が好ましく、100重量%以下が好ましく、15重量%以上がより好ましく、99重量%以下がより好ましく、20重量%以上が更に好ましく、90重量%以下が更に好ましい。上記の範囲にすることで反応時間を短縮することができる。
なお、上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分と上記スチレン系モノマーに由来する成分との合計100重量%中の各モノマーに由来する成分の含有量は、原料モノマーの仕込比により算出することができる。また、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸エステルのうち上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、エステル置換基の炭素数が1以上のものが好ましく、18以下のものが好ましく、2以上のものがより好ましく、12以下のものがより好ましく、3以上のものが更に好ましく、8以下のものが更に好ましい。
なお、上記エステル置換基の炭素数は、(メタ)アクリル酸エステルにおける(メタ)アクリロイル基を構成する炭素以外の炭素数を示す。
【0019】
上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、直鎖状のエステル置換基を有するものであってもよく、分岐状のエステル置換基を有するものであってもよく、環状のエステル置換基を有するものであってもよい。なかでも、直鎖状のエステル置換基を有するものが好ましい。
【0020】
上記直鎖状のエステル置換基を有する単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル等を用いることもできる。
【0021】
上記分岐状のエステル置換基を有する単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。具体的には、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
上記環状のエステル置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、脂環式炭化水素基を有するもの、芳香族炭化水素基を有するもの、グリシジル基を有するもの等が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基を有する単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基を有する単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に、直鎖状のエステル置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
また、上記直鎖状のエステル置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、エステル置換基の炭素数は、1以上のものが好ましく、18以下のものが好ましく、2以上のものがより好ましく、12以下のものがより好ましく、3以上のものが更に好ましく、8以下のものが更に好ましい。
更に、上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル価が80以上のものが好ましく、250以下のものが好ましく、90以上のものがより好ましく、200以下のものがより好ましい。
【0024】
上記重合体における上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分の含有量は、0重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましい。上記の範囲内にすることによって耐溶剤性をより高めることができる。
【0025】
また、上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分100重量%中、上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分の割合は0重量%以上が好ましく、100重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0026】
更に、上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分と後述するスチレン系モノマーに由来する成分との合計100重量%中、上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分の割合は0重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましい。上記の範囲内にすることによって耐溶剤性をより高めることができる。
【0027】
上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-20℃以上が好ましく、105℃以下が好ましく、0℃以上がより好ましく、80℃以下がより好ましく、10℃以上が更に好ましく、60℃以下が更に好ましい。
上記ホモポリマーのTgは、例えば、示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。
【0028】
上記2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、オキシアルキレンユニットを有する多官能性(メタ)アクリレート、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0029】
上記2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルは、エステル部位の炭素数が2以上が好ましく、50以下が好ましく、3以上がより好ましく、40以下がより好ましく、6以上が更に好ましく、30以下が更に好ましい。なお、上記エステル部位の炭素数とは、(メタ)アクリル酸エステル中の(メタ)アクリロイル基を構成する炭素以外の炭素数を意味する。
【0030】
上記オキシアルキレンユニットを有する多官能性(メタ)アクリレートは、分子構造中に1個以上のオキシアルキレンユニットを有するものである。
上記オキシアルキレンユニットの炭素数は、好ましい下限が1、より好ましい下限が2、好ましい上限が4、より好ましい上限が3である。
上記オキシアルキレンユニットとしては、例えば、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシブチレンユニット等が挙げられる。なかでも、オキシプロピレンユニットを有するものが好ましい。
また、上記オキシアルキレンユニットを有する多官能性(メタ)アクリレートの分子構造に含まれるオキシアルキレンユニットの数は、好ましい下限が1、より好ましい下限が2、好ましい上限が14、より好ましい上限が7である。
【0031】
上記オキシアルキレンユニットを有する多官能性(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、エチレンオキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
上記オキシアルキレンユニットを有する多官能性(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであれば特に限定されず、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート等を用いることができる。なかでも、2官能(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、エチレングリコールジメタクリレートが更に好ましい。
【0033】
上記多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、1、3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1、9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1、10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等の2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。また、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレートが挙げられる。更に、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の5官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
上記2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に2官能(メタ)アクリル酸エステル、3官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートがより好ましく、エチレングリコールジメタクリレートが更に好ましい。
また、上記2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル価が90以上150以下であることが好ましい。
【0035】
上記重合体における上記2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分の含有量は、0重量%以上が好ましく、99重量%以下が好ましく、10重量%以上がより好ましく、90重量%以下がより好ましく、20重量%以上が更に好ましく、80重量%以下が更に好ましい。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
上記重合体における上記(メタ)アクリル酸塩に由来する成分の含有量は、5重量%以上が好ましく、95重量%以下が好ましく、10重量%以上がより好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0038】
上記重合体は、スチレン系モノマーに由来する成分を含むことが好ましい。
上記構造を有することで、直流抵抗を下げることができるという利点がある。
【0039】
上記スチレン系モノマーは、単官能のスチレン系モノマーであってもよく、2官能以上のスチレン系モノマーであってもよい。
また、上記スチレン系モノマーのビニル価は、60以上が好ましく、250以下が好ましく、65以上がより好ましく、200以下がより好ましい。
上記ビニル価は、上記スチレン系モノマーの分子量を1分子中のビニル基の数で割ることにより求めることができる。
また、上記スチレン系モノマーがビニル価が異なる複数のスチレン系モノマーを含む場合、上記ビニル価はスチレン系モノマー全体における各スチレン系モノマーの割合とビニル価を乗じて合算することで求めることができる。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル価と上記スチレン系モノマーのビニル価との比((メタ)アクリル価/ビニル価)は、0.7以上が好ましく、2.0以下が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0041】
上記スチレン系モノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が60℃以上が好ましく、140℃以下が好ましく、80℃以上がより好ましく、120℃以下がより好ましい。
上記ホモポリマーのTgは、例えば、示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。
【0042】
上記重合体における上記スチレン系モノマーに由来する成分の含有量は、0重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましく、20重量%以上がより好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0043】
上記単官能のスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、p-tert-ブチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ビニルナフタレン、スチレンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸塩(p-スチレンスルホン酸リチウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム等)、ビニル安息香酸、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。なかでも、スチレン、p-スチレンスルホン酸塩が好ましく、p-スチレンスルホン酸リチウムがより好ましい。
【0044】
上記単官能のスチレン系モノマーのビニル価は、100以上が好ましく、220以下が好ましく、150以上がより好ましく、200以下がより好ましい。
上記ビニル価は、上記スチレン系モノマーの分子量を1分子中のビニル基の数で割ることにより求めることができる。
【0045】
上記重合体における上記単官能のスチレン系モノマーに由来する成分の含有量は、0重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましく、20重量%以上がより好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0046】
上記重合体における上記p-スチレンスルホン酸塩に由来する成分の含有量は、直流抵抗を下げるという観点から、0重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましく、20重量%以上がより好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0047】
上記2官能以上のスチレン系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。なかでも、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0048】
上記2官能以上のスチレン系モノマーのビニル価は、100以上が好ましく、200以下が好ましく、110以上がより好ましく、180以下がより好ましい。
【0049】
上記重合体における上記2官能以上のスチレン系モノマーに由来する成分の含有量は、0重量%以上が好ましく、99重量%以下が好ましい。
【0050】
上記重合体における上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分と上記スチレン系モノマーに由来する成分との合計含有量は、10重量%以上が好ましく、100重量%以下が好ましく、99重量%以下がより好ましい。
【0051】
上記重合体における上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分と上記単官能のスチレン系モノマーに由来する成分との合計含有量は、1重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましく、20重量%以上がより好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0052】
更に、上記エステル置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分と上記スチレン系モノマーに由来する成分との合計100重量%中、上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分と上記単官能のスチレン系モノマーに由来する成分との合計割合は1重量%以上が好ましく、90重量%以下が好ましく、20重量%以上がより好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0053】
上記重合体における上記2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分と上記2官能以上のスチレン系モノマーに由来する成分との合計含有量は、10重量%以上が好ましく、99重量%以下が好ましく、20重量%以上がより好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0054】
更に、上記重合体は上記(メタ)アクリルモノマーに由来する成分及び上記スチレン系モノマーに由来する成分100重量%中、上記2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分及び上記2官能以上のスチレン系モノマーに由来する成分を10重量%以上100重量%以下含むことが好ましい。
上記範囲とすることで、耐溶剤性を高めることができる。
上記含有量は、15重量%以上がより好ましく、99重量%以下がより好ましく、20重量%以上が更に好ましく、80重量%以下が更に好ましい。
【0055】
上記重合体は、上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分、上記スチレン系モノマーに由来する成分以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記他の成分としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0056】
上記重合体における上記他の成分の含有量は、10重量%以下が好ましく、0重量%がより好ましい。
【0057】
上記重合体のガラス転移温度(Tg)は、-40℃以上であることが好ましく、105℃未満であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましく、75℃未満であることがより好ましく、9℃以上であることが更に好ましく、40℃未満であることが更に好ましい。
なお、上記Tgは、例えば、示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。
【0058】
上記イオン導電性樹脂粒子の平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、5μm以下が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、3μm以下がより好ましい。
上記平均粒子径は、例えば、動的光散乱法を利用して測定することができる。上記の範囲にすることによって導電抵抗を低減することができる。
【0059】
上記イオン導電性樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系モノマー、Li原子を含む官能基を有するモノマー等の原料モノマー混合物を水に分散させたモノマー混合液に、特定の重合開始剤及び必要に応じて添加される陰イオン界面活性剤を添加し重合させて粒子状の重合体を得る方法が挙げられる。
【0060】
上記重合開始剤としては、硫酸基、アミノ基、カルボキシル基、アミジン基、水酸基及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種を有する水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
上記重合開始剤を用いた重合では、上記水溶性ラジカル重合開始剤を用いることで、通常の乳化重合に用いられる分散剤を添加することなく、重合体を作製することができる。
上記重合反応では、水中に分散させたモノマーを上記水溶性ラジカル重合開始剤を起点に重合させ、この際、それぞれのモノマーが衝突、合着しないように低濃度で分散重合させる。このように反応させることで、成分が均一で粒子径のそろった重合体を得ることができる。上記方法では、上記水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、低濃度で重合させることにより、水素引き抜き等の不均一化の原因となる反応を最低限に抑えることができ、反応系内で複数のポリマーが成長し難いためである。
【0061】
上記水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]スルファトハイドレイト、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等のイミダゾール系アゾ化合物の酸混合物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の水溶性アゾ化合物、過硫酸カリウム(ペルオキソ二硫酸カリウム)、過硫酸アンモニウム(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)、過硫酸ナトリウム(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)等のオキソ酸類、過酸化水素、過酢酸、過ギ酸、過プロピオン酸等の過酸化物等が挙げられる。なかでも、イミダゾール系アゾ化合物の酸混合物、水溶性アゾ化合物、オキソ酸類が好ましい。また、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムがより好ましい。更に、残渣を少なくできることから、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが更に好ましい。
これらの水溶性ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記水溶性ラジカル重合開始剤の添加量は、原料モノマー100重量部に対して、0.02~1.0重量部とすることが好ましく、0.03~0.5重量部とすることがより好ましい。
上記添加量を0.02重量部以上とすることで、原料モノマーの反応率を充分に高めることができる。上記添加量を1.0重量部以下とすることで、得られる粒子のCV値を30%以下にすることができる。
また、上記範囲とすることで、分子末端(ω位)に硫酸基、アミノ基、カルボキシル基、アミジン基、水酸基及びアミド基から選択される少なくとも1種を有する重合体が水中に低濃度で分散して均一な粒径の樹脂を得ることができる。
更に、上記範囲とすることで、乳化剤を用いなくても高い分子量を有する重合体を作製することができる。
【0063】
上記陰イオン界面活性剤は、乳化重合の際に添加される分散剤として用いられるものが挙げられ、例えば、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
上記アルキルスルホン酸塩としては、オクチルスルホン酸、デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸等のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
上記陰イオン界面活性剤の添加量は、原料モノマー100重量部に対して、0~0.03重量部とすることが好ましく、0.002~0.01重量部とすることがより好ましい。
【0064】
また、原料モノマーの添加量は、水1000重量部に対して50~300重量部とすることが好ましい。
上記範囲とすることで、重合途中での凝集や反応容器への樹脂の付着を防止することができる。
また、原料モノマーの添加量は、水1000重量部に対して70~200重量部とすることがより好ましい。
上記範囲とすることで、残留モノマーを少なくして、均一に重合することが可能となる。
【0065】
上記原料モノマー混合物を水に分散させる方法としては、攪拌翼を用いて100~250rpmの条件で攪拌する方法が挙げられる。
【0066】
上記重合させる際の温度は、50~100℃であることが好ましい。
上記温度を50℃以上とすることで重合反応を良好に進行させることができる。上記温度が80℃以下であると、樹脂の合着を防止して、均一な樹脂粒子を得ることができる。
また、上記重合においては、数時間所定温度を保持することでモノマー末端の極性官能基を基点に水中に分散して、より均一な樹脂粒子を形成することができる。
本発明の全固体電池製造用スラリー組成物における上記有機溶媒の含有量は、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが更に好ましく、40重量%以上であることが更により好ましく、70重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。
上記範囲内とすることで、塗工性、無機粉体の分散性を向上させることができる。
【0067】
上記イオン導電性樹脂粒子を水、有機溶媒等の溶媒と混合することで分散液を作製することができる。
上記イオン導電性樹脂粒子と、水及び有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、イオン導電性樹脂粒子の含有量が5重量%以上30重量%以下、水及び有機溶媒の合計含有量が70重量%以上95重量%以下である分散液も本発明の1つである。
【0068】
上記分散液における上記イオン導電性樹脂粒子の含有量は5重量%以上30重量%以下である。
5重量%以上とすることで直流抵抗を下げることができる。30重量%以下とすることで分散液中での粒子の分散性を高めることができるという利点がある。
上記イオン導電性樹脂粒子の含有量は、7重量%以上が好ましく、25重量%以下が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以下がより好ましい。
【0069】
上記分散液は、水及び有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
上記有機溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン、エタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、酪酸ヘキシル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、テキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。なかでも、酢酸ブチル、N-メチルピロリドンが好ましく、極性が高く、電池の性能を向上させやすいことからN-メチルピロリドンがより好ましい。
【0070】
上記有機溶媒の沸点は、60℃以上が好ましく、250℃以下が好ましく、100℃以上がより好ましく、220℃以下がより好ましい。
【0071】
上記分散液における上記水及び上記有機溶媒の合計含有量は70重量%以上95重量%以下である。
95重量%以下とすることで直流抵抗を下げることができる。70重量%以上とすることで分散液中での粒子の分散性を高めることができる。
上記合計含有量は、75重量%以上が好ましく、93重量%以下が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0072】
上記分散液における水の含有量は75重量%以上が好ましく、93重量%以下が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0073】
上記分散液における上記有機溶媒の含有量は、75重量%以上が好ましく、93重量%以下が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0074】
上記分散液を作製する方法は特に限定されず、例えば、上記イオン導電性樹脂粒子、水、有機溶媒等をプラネタリーミキサー、ディスパー、ボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0075】
上記分散液に活物質を添加して混合することでリチウムイオン電池電極用組成物を得ることができる。
【0076】
上記リチウムイオン電池電極用組成物は、活物質を含有する。
上記リチウムイオン電池電極用組成物は、正極、負極の何れの電極に使用してもよく、また、正極及び負極の両方に使用してもよい。従って、活物質としては、正極活物質、負極活物質がある。
【0077】
上記正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム含有複合金属酸化物が挙げられる。具体的には例えば、LiMn2O4、LiMO2(M=Mn、Co、Ni)等が挙げられる。
なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記負極活物質としては、例えば、従来から二次電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、球状天然黒鉛、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、又は、これらの成分に異種元素を添加したもの等が挙げられる。また、リチウムイオン吸蔵能力の高いシリコン(Si、SiO、Si合金)を用いてもよい。
【0079】
上記リチウムイオン電池電極用組成物は、導電付与剤(導電助剤)を含有することが好ましい。
上記導電付与剤としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等の炭素材料が挙げられる。特に、正極用の導電付与剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラックが好ましく、負極用の導電付与剤としては、アセチレンブラック、鱗片状黒鉛が好ましい。
【0080】
上記リチウムイオン電池電極用組成物は、上述した活物質、導電助剤以外にも、必要に応じて、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0081】
上記分散液に上述した活物質、導電助剤等を添加して得られたリチウムイオン電池電極用組成物は、例えば、導電性基体上に塗布し、乾燥させる工程を経ることで電極とすることができる。
上記電極としては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、燃料電池等の電極として用いることができる。リチウムイオン電池としては、液体電解質をリチウムイオン電池でもよく、固体電解質を有するリチウムイオン電池(全固体電池)でもよい。
上記分散液を用いてなるリチウムイオン電池もまた本発明の1つである。
上記リチウムイオン電池電極用組成物を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、押出しコーター、リバースローラー、ドクターブレード、アプリケーター等をはじめ、各種の塗布方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0082】
本発明によれば、耐溶剤性が高く、導電抵抗を低減して高性能のリチウムイオン電池を作製可能なイオン導電性樹脂粒子を提供できる。また、該イオン導電性樹脂粒子を含む分散液及びリチウムイオン電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0084】
(実施例1~11、比較例1~8)
(イオン導電性樹脂粒子の作製)
撹拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコを用意した。2Lセパラブルフラスコに、水900重量部、表1に示す配合となるようにモノマーを添加した。その後、攪拌翼により150rpmの条件で攪拌し、モノマーを水中に分散させてモノマー混合液を得た。
なお、モノマーとしては、以下のものを用いた。
<スチレン系モノマー>
<単官能>
NaSS:p-スチレンスルホン酸ナトリウム
LiSS:p-スチレンスルホン酸リチウム
St:スチレン
<2官能以上>
DB:ジビニルベンゼン
<(メタ)アクリルモノマー>
<単官能>
LiMA:メタクリル酸リチウム
BMA:メタクリル酸n-ブチル
<2官能以上>
EG:エチレングリコールジメタクリレート
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート
【0085】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、攪拌しながら湯浴が80℃になるまで昇温した。その後、水20重量部に対して、陰イオン界面活性剤としてドデシルスルホン酸アンモニウム0.03重量部、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.12重量部を溶解した溶液を添加し重合を開始した。重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させて、重合体を含む樹脂水溶液を得た。得られた水溶液2gを150℃オーブンで乾燥させ、樹脂固形分を評価したところ、水溶液中の樹脂固形分濃度は10重量%であり、用いたモノマーがすべて反応したことを確認した。
得られた樹脂水溶液を噴霧乾燥機を用いて乾燥し、イオン導電性樹脂粒子を回収した。
【0086】
(分散液の作製)
得られたイオン導電性樹脂粒子、水、有機溶媒を表1に示す配合となるように混合し攪拌して、分散液を作製した。
なお、有機溶媒としては以下のものを用いた。
<有機溶媒>
有機溶媒1:酢酸ブチル
有機溶媒2:N-メチルピロリドン
【0087】
<評価>
実施例、比較例で用いたイオン導電性樹脂粒子について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0088】
(1)熱分解GC-MS
得られた樹脂水溶液をアルミカップに5g計量し、100℃のオーブンで1時間乾燥させることでイオン導電性樹脂粒子を得た。得られたイオン導電性樹脂粒子をガスクロマトグラフ質量分析計を用いた熱分解GC-MSにより、Li原子の含有量を測定した。
【0089】
(2)平均粒子径
得られた樹脂水溶液をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、LA-950)に供給して平均粒子径を測定した。
【0090】
(3)耐溶剤性
得られたイオン導電性樹脂粒子についてSEMにより100個の粒子を観察して、初期粒子径の平均値を測定した。また、得られたイオン導電性樹脂粒子1重量部をN-メチルピロリドン99重量部に添加し、24時間保管した後、乾燥させることでイオン導電性樹脂粒子を回収した。回収したイオン導電性樹脂粒子について同様にして粒子径の平均値を測定した。初期粒子径の平均値に対するN-メチルピロリドンに添加して保管後の粒子径の平均値の増加率を以下の式により算出した。
増加率(%)=[(保管後の粒子径の平均値-初期粒子径の平均値)/初期粒子径の平均値]×100
増加率について、以下の基準で評価した。
1:150%以上
2:100%以上150%未満
3:50%以上100%未満
4:10%以上50%未満
5:0%以上10%未満
【0091】
(4)直流抵抗
下記の方法により正極及び負極を作製し、小型電池を得た。得られた小型電池について直
流抵抗の測定を行った。
<正極の作製>
Li2CO3と、Ni0.5Co0.2Mn0.3(OH)2で表される共沈水酸化物とをLiと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した。その後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理し、粉砕することにより正極活物質として、平均粒子径が12μmのLi1.04Ni0.5Co0.2Mn0.3O2を得た。
【0092】
得られた正極活物質を、実施例、比較例で得られた分散液に対して活物質100重量部に対するイオン導電性樹脂粒子が2重量部となるように加えて混合し、スラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液をアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ:20μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、10mg/cm2であった。アルミニウム箔をプレスして切断し、正極を作製した。
【0093】
<負極の作製>
負極活物質としてチタン酸リチウム(石原産業社製、XA-105、メジアン径:6.7μm)を、実施例、比較例で得られた分散液に対して活物質100重量部に対するイオン導電性樹脂粒子が2重量部となるように加えて混合し、スラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液をアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ:20μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、11mg/cm2であった。アルミニウム箔をプレスして切断して負極を作製した。
【0094】
<合成樹脂フィルムの作製>
ホモポリプロピレン(重量平均分子量(Mw)413,000、数平均分子量(Mn)44,300、分子量分布(Mw/Mn)9.3、融点163℃)を押出機に供給し、樹脂温度220℃にて溶融混錬し、押出機の先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出した。その後、表面温度が30℃になるまで冷却して、厚み30μm、幅200mmの長尺状のホモポリプロピレン原反フィルムを得た。なお、製膜速度は22m/分、押出量は12kg/時間、ドロー比は70とした。ここで、ドロー比とは、TダイのリップのクリアランスをTダイから押出された原反フィルムの厚みで除した値をいう。Tダイのリップのクリアランスの測定は、JIS B7524に準拠したすきまゲージを用いてTダイのリップのクリアランスを10箇所測定し、その相加平均値により求めた。
【0095】
次に、ホモポリプロピレン原反フィルムを表面温度が147℃となるようにして10分間養生した。
その後、養生を施したホモポリプロピレン原反フィルムをその表面温度が140℃となるようにして歪み速度40%/分にて延伸倍率2.5倍となるように押出方向にのみ一軸延伸装置を用いて一軸延伸した。
【0096】
次に、ホモポリプロピレン原反フィルムを熱風炉に供給し、ホモポリプロピレン原反フィルムを表面温度が130℃となるように、かつ、ホモポリプロピレン原反フィルムに張力が加わらないようにして1分間に亘って走行させて、ホモポリプロピレン原反フィルムにアニールを施して長尺状のホモプロピレン微多孔フィルムを得た。ホモプロピレン微多孔フィルムの厚みは16μmであった。なお、アニーリング工程におけるホモポリプロピレン原反フィルムの収縮率は14%とした。
【0097】
塩素によって変性された変性ポリプロピレン100質量部をキシレン575質量部に供給し、キシレンに溶解させた。次に、キシレンに酢酸エチル575質量部を供給して、キシレンに溶解している変性ポリプロピレンを析出させて、バインダー粒子を得た。得られたバインダー粒子を溶媒(キシレンと酢酸エチルとの混合溶媒)中に均一に分散させて塗工液を得た。塗工液中に分散しているバインダー粒子を溶媒から分離し、バインダー粒子の平均粒子径を測定した。バインダー粒子の平均粒子径は2.3μmであった。
【0098】
塗工液をホモポリプロピレン微多孔フィルムの両面(2個の主面)に全面的に塗工した後、ホモポリプロピレン微多孔フィルムを60℃で30分間に亘って真空乾燥することにより溶媒を除去した。このようにしてホモポリプロピレン微多孔フィルムの両面にバインダー粒子を配設一体化させて合成樹脂フィルムを得た。
【0099】
<直流抵抗の測定>
正極を直径14mmの円形状に、負極を直径15mmの円形状に打ち抜いた。小型電池は、正極及び負極との間に合成樹脂フィルムを介在させた状態で合成樹脂フィルムに電解液を含浸させることで構成した。小型電池を5個作製した。
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比3:7混合溶媒に、1Mになるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を使用した。
【0100】
小型電池の充電は、予め設定した上限電圧まで電流密度0.20mA/cm2で充電した。放電は、予め設定した下限電圧まで、電流密度0.20mA/cm2で放電した。上限電圧は2.7V、下限電圧は2.0Vであった。1サイクル目に得られた放電容量を電池の初期容量とした。その後、初期容量の80%まで充電した後、25mA(I1)で10秒間放電したときの電圧(E1)、50mA(I2)で10秒間放電したときの電圧(E2)をそれぞれ測定した。
上記の測定値を用いて、30℃における直流抵抗(Rx)を以下の式により算出した。
各小型電池の直流抵抗(Rx)の相加平均値を、直流抵抗として採用した。
直流抵抗(Rx)=|(E1-E2)/放電電流(I1-I2)|
得られた直流抵抗を以下の基準で評価した。
1:2.0以上
2:1.9以上2.0未満
3:1.8以上1.9未満
4:1.7以上1.8未満
5:1.6以上1.7未満
【0101】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、耐溶剤性が高く、導電抵抗を低減して高性能のリチウムイオン電池を作製可能なイオン導電性樹脂粒子を提供できる。また、該イオン導電性樹脂粒子を含む分散液及びリチウムイオン電池を提供できる。