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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033233
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】評価器具
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/04 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N19/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136714
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】丸山 央
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘樹
(57)【要約】
【課題】粘着剤を付した部品を一定の条件を満たす圧力で貼り付け対象の面に貼り付ける操作と、貼り付けられた部品を剥がす操作とを単一の器具によって行うことが可能な評価器具を提供する。
【解決手段】本体10と、試験部品20と、を備え、本体10は、筐体11と、可動軸12と、コイルばねと、を備える。可動軸12は、一定の範囲で筐体11に対して移動可能であると共に、試験部品20を貼り付け対象面50に圧着させるための押圧ヘッドおよび貼り付け対象面50に張り付けられた試験部品20を剥がすための引っ張りヘッド124を有する。コイルばねは、試験部品20を押す際および試験部品20を引く際の可動軸12の動きに反発する力を与える。可動軸12に設けられた目盛り121および指示器122は、引っ張りヘッド124で試験部品20を引いた際の可動軸12の移動量に応じて、可動軸12に作用した荷重を示す。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に着脱可能に設けられ、貼り付け対象面に張り付けられる試験部品と、を備え、
前記本体は、
筐体と、
前記筐体を貫通し、かつ一定の範囲で当該筐体に対して移動可能であると共に、端部に、前記試験部品を前記貼り付け対象面に圧着させるための押圧ヘッドおよび当該貼り付け対象面に張り付けられた当該試験部品を剥がすための引っ張りヘッドを有する可動軸と、
前記押圧ヘッドで前記試験部品を押す際および前記引っ張りヘッドで当該試験部品を引く際の前記可動軸の動きに反発する力を与える弾性部材と、
前記引っ張りヘッドで前記試験部品を引いた際の前記可動軸の移動量に応じて、当該可動軸に作用した荷重を示す提示部と、
を備え、
前記試験部品は、
粘着剤を付して貼り付け対象面に貼り付けられる接着面と、
前記本体の前記押圧ヘッドにより押圧される被押圧面と、
前記引っ張りヘッドを接続して引かれる接続部と、
を備えることを特徴とする、評価器具。
【請求項2】
前記提示部は、
前記可動軸に、前記引っ張りヘッドで前記試験部品を引く際の当該可動軸の移動量と荷重とを対応付けて設けられた目盛りと、
前記引っ張りヘッドで前記試験部品を引いた際の前記可動軸の最大移動位置を示す指示器と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の評価器具。
【請求項3】
前記可動軸は、
一端側に前記押圧ヘッドを有し、
他端側に前記引っ張りヘッドを有し、
前記押圧ヘッド側の露出部分に、前記引っ張りヘッドで前記試験部品を引く際の前記可動軸の移動量と荷重とを対応付けた目盛りを設けたことを特徴とする、請求項2に記載の評価器具。
【請求項4】
前記提示部は、
前記可動軸に、前記押圧ヘッドで前記試験部品を押す際の当該可動軸の移動量と荷重とを対応付けて設けられた目盛りと、
前記押圧ヘッドで前記試験部品を押した際の前記可動軸の最大移動位置を示す指示器と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の評価器具。
【請求項5】
前記可動軸は、一端に、一体に形成した前記押圧ヘッドおよび前記引っ張りヘッドを有し、
前記弾性部材は、前記押圧ヘッドで前記試験部品を押す際の前記可動軸の第1の動きに反発し、前記引っ張りヘッドで当該試験部品を引く際の当該可動軸の前記第1の動きとは逆向きである第2の動きにも反発する押し引きばねであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の評価器具。
【請求項6】
前記試験部品は、前記粘着剤により貼り付けられる貼り付け対象物の重量と当該貼り付け対象物に付される当該粘着剤の面積との比に基づいて、当該試験部品の重量と前記接着面における当該粘着剤の面積との比が特定されることを特徴とする、請求項1に記載の評価器具。
【請求項7】
前記試験部品の前記接続部は、前記引っ張りヘッドで前記試験部品を引く方向が前記接着面の法線方向に対して特定の角度となるように、前記引っ張りヘッドと接続することを特徴とする、請求項1乃至請求項3に記載の評価器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価器具に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ製品を設置する際、両面テープ等の粘着剤を用いて貼り合わせる場合がある。アンテナ製品の設置場所は様々であり、粘着剤の接着力を定量的に評価可能とすることが望まれる。従来、テンションゲージを用いて接着テープの接着力を測定する器具が提案されている。
【0003】
特許文献1には、テープを取り付けるテープ取付具と、テープ取付具に一定の圧力を加えて貼り付け対象面に貼り付けるためのテープ圧着具と、貼り付け対象面に貼り付けられたテープ取付具を引き剥がすと共に、引き剥がす際の引張り力をテンションゲージで計測可能とした引張り具とを備えた測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54-023689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナ製品を設置するための粘着剤の接着力を評価するためには、実際にアンテナが設置される現場に近い環境や状況で評価のための操作を行うことが望ましく、現場で作業が行われる場合も多い。現場等の様々な場所に器具を持ち運ぶことを考慮すると、接着力の評価のために粘着剤を付した部品を貼り付ける際に用いる器具と、貼り付けられた部品を剥がす際に用いる器具とが共通であることが、器具の扱いや管理の点で好ましい。
【0006】
本発明は、粘着剤を付した部品を一定の条件を満たす圧力で貼り付け対象の面に貼り付ける操作と、貼り付けられた部品を剥がす操作とを単一の器具によって行うことが可能な評価器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明は、本体と、本体に着脱可能に設けられ、貼り付け対象面に張り付けられる試験部品と、を備え、本体は、筐体と、筐体を貫通し、かつ一定の範囲で筐体に対して移動可能であると共に、端部に、試験部品を貼り付け対象面に圧着させるための押圧ヘッドおよび貼り付け対象面に張り付けられた試験部品を剥がすための引っ張りヘッドを有する可動軸と、押圧ヘッドで試験部品を押す際および引っ張りヘッドで試験部品を引く際の可動軸の動きに反発する力を与える弾性部材と、引っ張りヘッドで試験部品を引いた際の可動軸の移動量に応じて、可動軸に作用した荷重を示す提示部と、を備え、試験部品は、粘着剤を付して貼り付け対象面に貼り付けられる接着面と、本体の押圧ヘッドにより押圧される被押圧面と、引っ張りヘッドを接続して引かれる接続部と、を備えることを特徴とする、評価器具である。
より詳細には、提示部は、可動軸に、引っ張りヘッドで試験部品を引く際の可動軸の移動量と荷重とを対応付けて設けられた目盛りと、引っ張りヘッドで試験部品を引いた際の可動軸の最大移動位置を示す指示器と、を備える構成としても良い。
また、可動軸は、一端側に押圧ヘッドを有し、他端側に引っ張りヘッドを有し、押圧ヘッド側の露出部分に、引っ張りヘッドで試験部品を引く際の可動軸の移動量と荷重とを対応付けた目盛りを設けた構成としても良い。
また、提示部は、可動軸に、押圧ヘッドで試験部品を押す際の可動軸の移動量と荷重とを対応付けて設けられた目盛りと、押圧ヘッドで試験部品を押した際の可動軸の最大移動位置を示す指示器と、をさらに備える構成としても良い。
また、可動軸は、一端に、一体に形成した押圧ヘッドおよび引っ張りヘッドを有し、弾性部材は、押圧ヘッドで試験部品を押す際の可動軸の第1の動きに反発し、引っ張りヘッドで試験部品を引く際の可動軸の第1の動きとは逆向きである第2の動きにも反発する押し引きばねとしても良い。
また、試験部品において、粘着剤により貼り付けられる貼り付け対象物の重量と貼り付け対象物に付される粘着剤の面積との比に基づいて、試験部品の重量と接着面における粘着剤の面積との比を特定しても良い。
また、試験部品の接続部は、引っ張りヘッドで試験部品を引く方向が接着面の法線方向に対して特定の角度となるように、引っ張りヘッドと接続する構成としても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粘着剤を付した部品を一定の条件を満たす圧力で貼り付け対象の面に貼り付ける操作と、貼り付けられた部品を剥がす操作とを単一の器具によって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による評価器具の外観を示す図である。
図2】評価器具の本体の断面を示す図である。
図3】試験部品の構成例を示す図である。
図4】試験部品を押圧ヘッドに装着する様子を示す図であり、図4(A)は装着前の状態を示す図、図4(B)は装着された状態を示す図である。
図5】試験部品を引っ張りヘッドに装着する様子を示す図であり、図5(A)は装着前の状態を示す図、図5(B)は装着された状態を示す図である。
図6】押圧ヘッドにより試験部品を貼り付け対象面に貼り付ける際の評価器具の動作を示す図であり、図6(A)は押圧前の状態を示す図、図6(B)は押圧時の状態を示す図、図6(C)は押圧後の本体を試験部品から離脱させた状態を示す図である。
図7】引っ張りヘッドにより試験部品を貼り付け対象面から剥す際の評価器具の動作を示す図であり、図7(A)は試験部品を引く前の状態を示す図、図7(B)は試験部品を引いている状態を示す図、図7(C)は試験部品を貼り付け対象面から剥した状態を示す図である。
図8】本実施形態による評価器具の変形例を示す図である。
図9】本実施形態による評価器具の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<評価器具の構成>
図1は、本実施形態による評価器具の外観を示す図である。図2は、評価器具の本体の断面を示す図である。評価器具1は、本体10と、本体10に着脱可能に設けられた試験部品20とを備える。評価器具1は、貼り付け対象物を貼り付け対象面に貼り付けた場合の接着力を評価するための器具である。貼り付け対象物は、粘着剤を用いて貼り付け対象面に貼り付けられる。評価器具1による評価は、貼り付け対象物を貼り付ける際に用いるものと同じ粘着剤を用いて試験部品20を貼り付け対象面に接着し、本体10を用いて貼り付け対象面に貼り付けられた試験部品20を剥がす際に要する力を測定することにより行われる。貼り付け対象物および試験部品20を貼り付け対象面に貼り付けるための粘着剤としては、例えば、両面テープが用いられる。なお、図2では、試験部品20の図示を省略している。
【0011】
本体10は、筐体11と、筐体11を貫通する可動軸12とを備える。筐体11は、筒状であり、両端に貫通孔111、112が形成されている。図1図2に示す例では、筐体11は、直方体の筒である。可動軸12は、筐体11よりも長く、一部が筐体11から露出している。詳しくは後述するが、可動軸12は、荷重をかけられていない状態で一端側に突出するように、弾性部材の一例としてのコイルばね13により力が加えられている。以下、可動軸12において、荷重をかけられていない状態で筐体11から露出している部分を露出部12Aと呼ぶ場合がある。また、図1図2に示す本体10において、可動軸12の両端のうち露出部12Aのある側(図の右側)を後端側、反対側(図の左側)を先端側と呼ぶ場合がある。
【0012】
可動軸12は、端部に、試験部品20を貼り付け対象面に対して貼り付けたり、剥がしたりするのに用いるヘッドが設けられている。図1図2に示す例では、後端側の端部に押圧ヘッド123、先端側の端部に引っ張りヘッド124が設けられている。押圧ヘッド123は、試験部品20を貼り付け対象面に貼り付ける際に用いられる。引っ張りヘッド124は、試験部品20を貼り付け対象面から剥がす際に用いられる。図1では、引っ張りヘッド124に試験部品20を装着した状態が示されている。
【0013】
可動軸12は、筐体11を貫通しており、図2に示す例では、筐体11内部を通って引っ張りヘッド124に至る先端側2/3程度が細く、後端側1/3程度の露出部12Aが太く形成されている。一例として、可動軸12の細い部分を金属等で形成し、露出部12Aを含む太い部分を樹脂等で形成しても良い。
【0014】
筐体11の内部において、可動軸12には、コイルばね13が巻かれている。コイルばね13は、圧縮ばねである。コイルばね13の後端側の端部は、可動軸12の露出部12Aの先端側に設けられたばね止め125に固定され、先端側の端部は、筐体11の先端部の内壁に固定されている。引っ張りヘッド124が可動軸12の軸方向に引かれると、可動軸12が筐体11の先端側から引き出され、ばね止め125が筐体11の内部で先端側へ移動し、コイルばね13を圧縮する。圧縮ばねであるコイルばね13は、ばね止め125による圧縮に反発する。このため、引っ張りヘッド124を引いた際の可動軸12の移動量は、引っ張り荷重に比例する。
【0015】
可動軸12の露出部12Aには、目盛り121が刻まれている。目盛り121は、引っ張りヘッド124が引かれた際の可動軸12の移動量と、引っ張りヘッド124に掛かった荷重とを対応付けて設けられている。したがって、引っ張りヘッド124が引かれると、目盛り121によって確認される可動軸12の移動量に基づいて、引っ張り荷重の大きさを判断することができる。以上、ここでは引っ張りヘッド124が引かれた場合のコイルばね13の働きおよび可動軸12の動きについて説明したが、押圧ヘッド123が可動軸12の軸方向に押し込まれた場合も同様である。すなわち、押圧ヘッド123を押し込んだ際の可動軸12の移動量は、押圧荷重に比例し、目盛り121を用いて押圧荷重の大きさを判断することができる。
【0016】
可動軸12の露出部12Aには、指示器122が設けられている。指示器122は、可動軸12の露出部12Aに嵌め込まれた環状体である。指示器122は、可動軸12に荷重がかけられていない初期状態で、筐体11の後端に接触させて配置される。この一を指示器122のホーム位置とする。引っ張りヘッド124または押圧ヘッド123に荷重が加えられ、可動軸12が軸方向に沿って移動すると、指示器122は、本体10と共に、可動軸12の後端方向へ相対的に移動する。この後、荷重が取り除かれることにより、筐体11と可動軸12は初期状態に戻る。これに対し、指示器122は、筐体11に固定されていないので、可動軸12に対して最も移動した際の場所に留まる。したがって、指示器122の位置(より詳しくは、指示器122の先端側の縁の位置)の目盛り121を読むことで、可動軸12の最大移動量(言い換えれば、目盛り121における最大移動位置)を知ることができる。目盛り121および指示器122は、提示部の一例である。
【0017】
押圧ヘッド123は、可動軸12の後端側に設けられ、押圧面123aと、突出部123bとを有する。押圧面123aは、可動軸12の軸方向に垂直な平面である。突出部123bは、押圧面123aから垂直に立ち上がる凸状部位である。詳しくは後述するが、押圧ヘッド123を用いて試験部品20を押圧する場合、突出部123bにより試験部品20に対する位置決めを行い、押圧面123aにより可動軸12の軸方向に沿って試験部品20に圧力をかける。
【0018】
上記のように、可動軸12の移動量は可動軸12にかかる荷重に比例する。このため、押圧ヘッド123で試験部品20を押圧した際の移動量を目盛り121および指示器122で確認することにより、どの程度の荷重で試験部品20を押圧したかを判断することができる。特に、可動軸12をそれ以上押し込むことができない状態まで押し込んだ場合、一定以上の荷重で試験部品20を押圧したことを確認することができる。ここで、一定以上の荷重とは、目盛り121および指示器122により測定可能な最大荷重以上の荷重である。
【0019】
引っ張りヘッド124は、可動軸12の先端側に設けられ、突縁124aを有する。突縁124aは、可動軸12の径方向に突出する部位であり、例えば、可動軸12よりも大きい径を有する円盤状に形成される。詳しくは後述するが、引っ張りヘッド124を用いて試験部品20を引く場合、突縁124aを試験部品20に掛けて、可動軸12の軸方向に沿って試験部品20を引く。
【0020】
上記のように、可動軸12の移動量は可動軸12にかかる荷重に比例する。このため、引っ張りヘッド124で試験部品20を引いた際の移動量を目盛り121および指示器122で確認することにより、どの程度の荷重で試験部品20を引いたかを判断することができる。
【0021】
筐体11の後端側には、鍔部113が設けられている。押圧ヘッド123で試験部品20を押圧したり、引っ張りヘッド124で試験部品20を引いたりする際、ユーザは、手に持った筐体11を、試験部品20側へ押し付けたり、引いたりする。このとき、手の指を鍔部113に掛けることにより、押し引きの力を加えやすくなる。
【0022】
図3は、試験部品20の構成例を示す図である。図3(A)は接着面側の斜視図、図3(B)は接着面とは反対側の斜視図である。試験部品20は、貼り付け対象面に接着される接着面21と、本体10の押圧ヘッド123により押圧するための被押圧面22と、本体10の引っ張りヘッド124を接続して引くための接続部23とを備える。図3(A)、(B)に示す例では、試験部品20は、接着面21を有する板部材と、被押圧面22および接続部23を有する板部材とを、連結柱25で連結して構成されている。
【0023】
接着面21は、貼り付け対象面に対して試験部品20を貼り付けるために用いられる面である。接着面21には、中央に、貼り付け対象物を貼り付け対象面に貼り付けるために用いられる粘着剤が付着されている。以下では、粘着剤として両面テープ30を用いた場合を例として説明する。接着面21に付着する両面テープ30のサイズは、特に限定しないが、例えば、1cm×1cm=1cmとしても良い。このようにすれば、引っ張りヘッド124を用いて試験部品20を剥がす際に要した荷重の値が、そのまま単位面積当たりの両面テープ30を剥がすのに要する荷重となる。
【0024】
被押圧面22は、試験部品20を貼り付け対象面に貼り付ける際に本体10の押圧ヘッド123により押圧される面である。図3(A)、(B)に示す例では、接着面21と被押圧面22とは平行であり、各面の中央の位置が一致しているものとする。図3(B)に示すように、被押圧面22には、切り欠き24が形成されている。切り欠き24は、押圧ヘッド123の突出部123bおよび引っ張りヘッド124側の可動軸12が通る幅を有し、被押圧面22の一の辺から中央に達している。これにより、押圧ヘッド123で試験部品20を押圧する際、被押圧面22の中央にある切り欠き24の端部に突出部123bを挿入することで、押圧面123aの中央と被押圧面22の中央とが一致するように、押圧ヘッド123を位置決めすることができる。
【0025】
接続部23は、貼り付け対象面に貼り付けられた試験部品20を剥がす際に、本体10の引っ張りヘッド124により引かれる部位である。図3(A)、(B)に示す例では、接続部23は、被押圧面22と一体に形成されている。上記のように、切り欠き24は、引っ張りヘッド124側の可動軸12も通る幅を有している。また、切り欠き24の幅は、引っ張りヘッド124の突縁124aの径よりも小さい。このため、接続部23の側方から切り欠き24へ可動軸12を挿入し、引っ張りヘッド124の突縁124aを切り欠き24の縁部241に掛けて引くことにより、試験部品20に対して貼り付け対象面から引き剥がす方向の力を与えることができる。また、引っ張りヘッド124で試験部品20を引く際にも、可動軸12を接続部23の中央にある切り欠き24の端部に位置させることにより、可動軸12と接続部23の中央とが一致するように、引っ張りヘッド124を位置決めすることができる。
【0026】
図3(A)、(B)に示す例では、試験部品20を、2枚の板部材を連結した構成としたが、試験部品20は、接着面21、被押圧面22および接続部23を有するものであれば良く、図示の構成に限定されない。例えば、対抗する2面を接着面21および被押圧面22とする直方体の部材等であっても良い。試験部品20は、例えば金属で形成される。
【0027】
また、試験部品20は、貼り付け対象物の重量と対象物に付される両面テープ30の面積との比に基づいて、試験部品20の重量を特定しても良い。ここで、貼り付け対象物および貼り付け対象面として、フィルムシート型のアンテナ製品を壁に貼り付ける場合を考える。アンテナ製品の重量と、アンテナ製品を壁に貼り付けるために用いる両面テープ30の面積との比から、アンテナ製品を貼り付けた状態で両面テープ30に作用する単位面積当たりの荷重を、例えば5.6g/cmとする。試験部品20の接着面に付着させる両面テープ30の面積を上述したように1cmとすると、試験部品20の重量を5.6g以上とすることで、上記のアンテナ製品を貼り付ける場合を想定した接着力の評価を行うことができる。実際には、上記の貼り付け対象物の重量および両面テープ30の面積に加え、安全率等も考慮して試験部品20の重量を決定しても良い。
【0028】
図4は、試験部品20を押圧ヘッド123に装着する様子を示す図であり、図4(A)は装着前の状態を示す図、図4(B)は装着された状態を示す図である。試験部品20を押圧ヘッド123に装着する場合、図4(A)に示すように、まず、押圧ヘッド123を試験部品20の被押圧面22に対向させる。次に、図4(A)の矢印に示すように、押圧ヘッド123を試験部品20に向けて進行させる。そして、図4(B)に示すように、試験部品20の被押圧面22の切り欠き24に、押圧ヘッド123の突出部123bを挿入して位置決めしながら、押圧面123aを試験部品20の被押圧面22に接触させる。この状態で、試験部品20に対して押圧ヘッド123による押圧力を作用させることができる。
【0029】
図5は、試験部品20を引っ張りヘッド124に装着する様子を示す図であり、図5(A)は装着前の状態を示す図、図5(B)は装着された状態を示す図である。試験部品20を引っ張りヘッド124に装着する場合、図5(A)に示すように、まず、引っ張りヘッド124を試験部品20における接続部23の切り欠き24が形成されている側方に位置させる。次に、図5(A)の矢印に示すように、引っ張りヘッド124を試験部品20の接続部23に向けて進行させる。そして、図5(B)に示すように、試験部品20の接続部23の切り欠き24に、引っ張りヘッド124の付近の可動軸12を挿入して位置決めしながら、突縁124aを試験部品20における接続部23の切り欠き24の縁部241に接触させる。この状態で、試験部品20に対して引っ張りヘッド124による引っ張り力を作用させることができる。
【0030】
<評価器具の動作>
図6は、押圧ヘッド123により試験部品20を貼り付け対象面に貼り付ける際の評価器具1の動作を示す図である。図6(A)は押圧前の状態を示す図、図6(B)は押圧時の状態を示す図、図6(C)は押圧後の本体10を試験部品20から離脱させた状態を示す図である。図6では、本体10について、図1図2に示した状態とは左右を逆に記載している。
【0031】
押圧ヘッド123により試験部品20を貼り付け対象面50に貼り付ける場合、まず、図6(A)に示すように、試験部品20に押圧ヘッド123を装着する。図6(A)に示す例では、試験部品20が、押圧ヘッド123に装着した状態で、貼り付け対象面50に接触している。これは、押圧ヘッド123に装着した試験部品20を貼り付け対象面50に接触させても良いし、予め、ユーザが手で試験部品20を貼り付け対象面50に接触させ、貼り付け対象面50上で試験部品20に押圧ヘッド123を装着しても良い。
【0032】
次に、図6(B)に示すように、本体10の筐体11を貼り付け対象面50に向けて押し付ける。図6(B)に示す例では、押圧ヘッド123側の可動軸12が全て筐体11に入り込むまで押し付けている。このようにすることで、少なくとも、押圧ヘッド123側の可動軸12を全て筐体11に押し込むのに要する荷重以上の力で、試験部品20を貼り付け対象面50に押し付けたことを確認することができる。なお、可動軸12の目盛り121および指示器122を用いて筐体11の移動量を確認しながら押圧することにより、押圧力を加減することもできる。
【0033】
試験部品20を貼り付け対象面50に貼り付けた後、図6(C)に示すように、本体10を試験部品20から離脱させる。以上の手順によって、試験部品20は、貼り付け対象面50に対し、一定以上の荷重により押圧されることによって貼り付けられた。貼り付け対象面50に貼り付けられた試験部品20は、静接着力を評価するために一定期間(例えば、3日程度)放置された後、本体10の引っ張りヘッド124を用いて剥される。静接着力については後述する。
【0034】
図7は、引っ張りヘッド124により試験部品20を貼り付け対象面50から剥す際の評価器具1の動作を示す図である。図7(A)は試験部品20を引く前の状態を示す図、図7(B)は試験部品20を引いている状態を示す図、図7(C)は試験部品20を貼り付け対象面50から剥した状態を示す図である。
【0035】
引っ張りヘッド124により試験部品20を貼り付け対象面50から剥がす場合、まず、図7(A)に示すように、試験部品20に引っ張りヘッド124を装着する。そして、図7(B)に示すように、本体10の筐体11を、可動軸12の軸方向に沿って、貼り付け対象面50から遠ざかるように引く。このとき、可動軸12に対する筐体11の相対的な移動量は、筐体11を引く力に対応する。図7(B)に示す例では、可動軸12の途中までが筐体11に入り込む程度の力で引いている。
【0036】
図7(B)に示す状態まで本体10を引いた時点で、試験部品20が貼り付け対象面50から剥がれたものとする。すると、図7(C)に示すように、試験部品20が引っ張りヘッド124に装着された状態で、コイルばね13(図2参照)の作用により、本体10の筐体11と可動軸12との相対的な位置は初期状態に戻る。しかし、指示器122は筐体11に固定されていないため、図7(B)に示した状態において移動した位置に残る。したがって、ユーザは、試験部品20を貼り付け対象面50から剥がした後に、目盛り121に対する指示器122の位置により、試験部品20が貼り付け対象面50から剥がれたときの引っ張り荷重の大きさを確認することができる。
【0037】
ここで、両面テープ30の接着力についてさらに説明する。一般に、接着力には、動接着力と静接着力とがある。動接着力は、瞬間的に加えられる力に対して接着状態を維持できる強度を表すものである。この動接着力は、図7(A)~(C)を参照して説明した手順で試験部品20に作用させた荷重の大きさにより評価することができる。
【0038】
一方、静接着力は、長時間継続して加えられた荷重に対して接着状態を維持できる強度を表すものである。この静接着力は、図6(A)~(C)を参照して説明した手順により試験部品20を貼り付け対象面50に貼り付けた後、一定期間放置することによって評価することができる。この場合、貼り付け対象物を貼り付け対象面50に貼り付けた場合の両面テープ30に作用する単位面積当たりの荷重に基づいて、試験部品20の重量が設定される。
【0039】
<変形例>
図8は、本実施形態による評価器具1の変形例を示す図である。図8に示す変形例は、本体10に対するものである。図8に示す構成例では、図1、2に示した構成例における押圧ヘッド123および引っ張りヘッド124に代えて、可動軸12の一端に、試験部品20を押圧する動作と引く動作の両方に用いられる兼用ヘッド40が設けられている。図8に示す構成例では、兼用ヘッド40は、可動軸12の先端側(図8において、左端側)に設けられている。
【0040】
また、図8に示す構成例では、図2に示した構成例におけるコイルばね13に代えて、押し引きばね14が設けられている。この押し引きばね14は、圧縮に対しても、引き伸ばす力に対しても反発する。このため、図8に示す本体10は、筐体11に対する可動軸12の移動に関して、押し引きばね14を圧縮する方向への移動においても、押し引きばね14を引き延ばす方向への移動においても、移動量と荷重とが比例する。なお、押し引きばね14を圧縮する方向への移動とは、図8において、筐体11に対して可動軸12を左方向へ移動させる場合である。また、押し引きばね14を引き延ばす方向への移動とは、図8において、筐体11に対して可動軸12を右方向へ移動させる場合である。
【0041】
図8に示すように、兼用ヘッド40は、押圧面41と、突出部42と、突縁43とを有する。押圧面41は、図1図2図4乃至図7を参照して説明した押圧ヘッド123の押圧面123aと同様であり、試験部品20を貼り付け対象面50に貼り付ける際に、試験部品20の被押圧面22を押圧する面である。突出部42は、図1図2図4乃至図7を参照して説明した押圧ヘッド123の突出部123bと同様であり、試験部品20を押圧する際に兼用ヘッド40を位置決めするために用いられる部位である。突縁43は、図1図2図4乃至図7を参照して説明した引っ張りヘッド124の突縁124aと同様であり、試験部品20を貼り付け対象面50から剥がす際に、試験部品20の接続部23に接続させる部位である。
【0042】
以上のように、兼用ヘッド40は、図1図2図4乃至図7を参照して説明した押圧ヘッド123および引っ張りヘッド124を合わせた構成および機能を有する。そして、試験部品20を押圧する際は、兼用ヘッド40の押圧面41で試験部品20を押圧するため、可動軸12は、押し引きばね14を引き延ばす方向へ移動する。一方、試験部品20を引く際は、兼用ヘッド40の突縁43で試験部品20を引くため、可動軸12は、押し引きばね14を圧縮する方向へ移動する。
【0043】
図9は、本実施形態による評価器具1の他の変形例を示す図である。図9に示す変形例は、試験部品に対するものである。図9に示す試験部品60は、L字形状に折れ曲がった板部材で形成されている。この試験部品60は、L字の一方の板部分に接着面61と被押圧面62とを有し、他方の板部分に接続部63を有する。接着面61は、図3を参照して説明した試験部品20の接着面21と同様であり、両面テープ30を付着して貼り付け対象面50に貼り付けられる面である。
【0044】
被押圧面62は、接着面61が設けられた板部分において、接着面61の裏側に設けられている。被押圧面62は、試験部品60を貼り付け対象面に貼り付ける際に本体10の押圧ヘッド123により押圧される。なお、図9に示す構成では、板部材の一面側を接着面61とし、他面側を被押圧面62とするため、試験部品20の切り欠き24のように押圧ヘッド123の突出部123bを挿入する部位を形成できない場合がある。このような場合は、押圧ヘッド123において突出部123bを設けず、平面に形成した押圧面123aにより被押圧面62を押圧する構成としても良い。
【0045】
接続部63は、図3を参照して説明した試験部品20の接続部23と同様である。図示していないが、接続部63には、試験部品20の切り欠き24と同様に、引っ張りヘッド124の突縁124aが掛かるように構成されている。
【0046】
図9に示す試験部品60では、接着面61が設けられた板部分と、接続部63が設けられた板部分とが平行ではなく直角となっている。このため、接続部63に引っ張りヘッド124を装着して試験部品60を引くと、図9に矢印で示すように、貼り付け対象面50に対して平行に引くことになる。したがって、図9に示す構成によれば、貼り付け対象面50に平行な力に対する接着力を評価することができる。なお、図9に示す例では、接着面61が設けられた板部分と、接続部63が設けられた板部分とを直角としたが、これらの板部分がなす角度は90度に限定されない。実際に貼り付け対象面50に貼り付けられた貼り付け対象物に作用する力に応じて、種々の角度の試験部品を用いて接着力の評価を行うことができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、可動軸12を筐体11の一方側へ突出させるように力を加える弾性体として、コイルばね13(または押し引きばね14)を用いたが、これには限定されない。可動軸12の目盛り121が刻まれた部位(露出部12A)を筐体11から突出させるように力を加えることができる構成であれば、例えば、ゴムや樹脂などを用いた機構であっても良い。
【0048】
また、上記の実施形態では、可動軸12において、筐体11の内部を通る部分を細く、露出部12Aを太く形成したが、可動軸12の一部に目盛り121を形成し、指示器122を装着できる構成であれば、かかる形状には限定されない。
【0049】
また、上記の実施形態では、引っ張りヘッド124と試験部品20、60とを接続する構成として、引っ張りヘッド124に突縁124aを設け、接続部23に切り欠き24を設けて、切り欠き24の縁部241に突縁124aを掛ける構成としたが、これには限定されない。試験部品20、60を引く際に、引っ張りヘッド124と試験部品20、60とを安定的に接続できるものであれば、例えば、フック等を用いても良い。
【0050】
また、上記の実施形態では、貼り付け対象物の重量と粘着剤の面積とに基づいて、試験部品20の重量を特定することとしたが、重り等を用いて試験部品20の重量を調整可能としても良い。
【0051】
また、上記の実施形態では、粘着剤の例として両面テープ30を用いたが、他の粘着剤の接着力の評価にも本実施形態を適用し得る。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…評価器具、10…本体、11…筐体、12…可動軸、13…コイルばね、20…試験部品、21…接着面、22…被押圧面、23…接続部、24…切り欠き、30…両面テープ、121…目盛り、122…指示器、123…押圧ヘッド、124…引っ張りヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9