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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033247
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】吸着式冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20240306BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240306BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240306BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F25B17/08 D
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
B01J20/34 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136735
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古庄 和宏
【テーマコード(参考)】
3L093
4G066
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093PP04
4G066AA04B
4G066AA33D
4G066AA37D
4G066AA51A
4G066BA23
4G066BA25
4G066CA43
4G066DA03
4G066GA04
(57)【要約】
【課題】吸着式のヒートポンプサイクルを作動できなかったり、効率が低下したりすることを抑制できる吸着式冷凍機を提供する。
【解決手段】吸着式冷凍機は、水を吸着する吸着材(24)をそれぞれ有する吸着器(20)と、蒸発器(40)と、凝縮器(50)とを備える。吸着材(24)は、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が、0.17[g/g]以上である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吸着する吸着材(24)をそれぞれ有する吸着器(20)と、蒸発器(40)と、凝縮器(50)とを備え、吸着式のヒートポンプサイクルを行う吸着式冷凍機であって、
前記吸着材(24)は、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が、0.17[g/g]より大きい
吸着式冷凍機。
【請求項2】
前記吸着器(20)の吸着材(24)の再生温度が、45℃以上60℃以下である
請求項1に記載の吸着式冷凍機。
【請求項3】
前記蒸発器(40)は、対象物を20℃以上25℃以下まで冷却する
請求項2に記載の吸着式冷凍機。
【請求項4】
前記蒸発器(40)で冷却した前記対象物としての熱媒体により電子機器(E)を冷却する
請求項1~3のいずれか1つに記載の吸着式冷凍機。
【請求項5】
前記吸着材(24)は、
炭素、窒素、および酸素を含み、
前記窒素に対する前記炭素の元素比率が1.8より大きく、
多数の細孔を有する細孔構造であり、
その重量に対する、直径2nm以上50nm以下の細孔の合計の体積の比率が0.32[cm3/g]以上である
請求項1~3のいずれか1つに記載の吸着式冷凍機。
【請求項6】
単段の吸着式のヒートポンプサイクルを行う
請求項1~3のいずれか1つに記載の吸着式冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸着式冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着式のヒートポンプサイクルを行う吸着式冷凍機がある。特許文献1に記載の吸着式冷凍機は、2つの吸着器と、凝縮器と、蒸発器と備える。2つの吸着器の一方では、吸着材に水を吸着する吸着動作が行われ、他方では吸着材の水を再生する再生動作が行われる。吸着材の再生には、例えば工場からの排熱が利用される。蒸発器と吸着動作中の吸着器とが連通することで、蒸発器の冷却コイルの周囲の水が蒸発する。これにより、蒸発器の冷却コイル内の水が冷却される。蒸発器で蒸発した水分は、吸着動作中の吸着器の吸着材に吸着される。再生動作中の吸着器の吸着材が工場の排熱により再生されると、水蒸気が発生する。この水蒸気は、凝縮器によって冷却されて凝縮した後、蒸発器へ送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-37936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような吸着式冷凍機では、稼働条件などに応じて、吸着器の吸着材を再生するための空気の温度が異なる。ここで、例えば再生温度(排熱温度)が約50℃程度と比較的低い場合、従来例の吸着材(例えばシリカゲル)では、吸着材の性能を十分に得ることができない。したがって、吸着式のヒートポンプサイクルを作動できない、あるいは効率が低下してしまうことという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、吸着材の再生温度が比較的低い場合において、吸着式のヒートポンプサイクルを作動できなかったり、効率が低下したりすることを抑制できる吸着式冷凍機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、水を吸着する吸着材(24)をそれぞれ有する吸着器(20)と、蒸発器(40)と、凝縮器(50)とを備え、吸着式のヒートポンプサイクルを行う吸着式冷凍機であって、前記吸着材(24)は、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が、0.17[g/g]以上である。
【0007】
従来例の吸着式冷凍機では、吸着器の吸着材として、相対湿度がやや低い範囲(例えば9%~29%程度の範囲)での有効吸着量が比較的大きいものが用いられていた。この吸着材では、排熱温度が比較的低くなることで、吸着式のヒートポンプサイクルが作動できなかったり、効率が低下したりしてしまう。
【0008】
これに対し、第1の態様の吸着材(24)は、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が、0.17[g/g]以上である。この範囲における有効吸着量が比較的大きい吸着材(24)を用いることで、排熱温度が低い条件において、吸着材(24)の性能を十分に発揮できる。このため、吸着式のヒートポンプサイクルが作動できなかったり、効率が低下したりしてしまうことを抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記吸着器(20)の吸着材(24)の再生温度が、45℃以上60℃以下である。
【0010】
第2の態様では、吸着材(24)の再生温度、言い換えると吸着材(24)の再生に利用される排熱温度が45℃以上60℃以下と比較的低くなる。しかしながら、吸着材(24)は、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が、0.17[g/g]以上であるので、吸着材(24)の性能を十分に発揮できる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様において、前記蒸発器(40)は、対象物を20℃以上25℃以下まで冷却する。
【0012】
第3の態様では、蒸発器(40)により、対象物が20℃以上25℃の範囲で冷却される。
【0013】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記蒸発器(40)で冷却した前記対象物としての熱媒体により電子機器(E)を冷却する。
【0014】
第4の態様では、蒸発器(40)で冷却した熱媒体により、電子機器(E)を冷却できる。
【0015】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記吸着材(24)は、炭素、窒素、および酸素を含み、前記窒素に対する前記炭素の元素比率が1.8より大きく、多数の細孔を有する細孔構造であり、その重量に対する、直径2nm以上50nm以下の細孔の合計の体積の比率が0.32[cm3/g]以上である。
【0016】
第5の態様では、上記の特性を有する吸着材(24)を用いることにより、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が大きくなる。
【0017】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、単段の吸着式のヒートポンプサイクルを行う。
【0018】
第6の態様では、多段の吸着式のヒートポンプサイクルを行うものと比べて、装置の小型化、簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る吸着式冷凍機の概略の構成図である。
図2図2は、第1運転中の吸着式冷凍機の概略の構成図である。
図3図3は、第2運転中の吸着式冷凍機の概略の構成図である。
図4図4は、材料A~Dについての、C、N、O、およびC/Nの元素比率と、細孔の体積比率を表したテーブルである。
図5図5は、材料AおよびBについての、一般的な温度条件下における水蒸気の吸着等温線である。
図6図6は、材料CおよびDについての、一般的な温度条件下における水蒸気の吸着等温線である。
図7図7は、シリカゲルについての、一般的な温度条件下における水蒸気の吸着等温線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0021】
《実施形態》
(1)全体構成
実施形態に係る吸着式冷凍機(10)は、吸着式のヒートポンプサイクルを行う。本例の吸着式冷凍機(10)は、単段の吸着式のヒートポンプサイクルを行う。単段の吸着式のヒートポンプサイクルでは、作動媒体に対して一段階の吸着動作および再生動作を行う。
【0022】
吸着式冷凍機(10)は、データセンターの対象物を冷却する。データセンターは、吸着式冷凍機(10)の冷却対象物である電子機器(E)を有する建物である。電子機器(E)は、サーバ装置や通信機器などを含む。
【0023】
図1に示すように、データセンターには、第1サーバラック(S1)と第2サーバラック(S2)とが設けられる。第1サーバラック(S1)および第2サーバラック(S2)には、電子機器であるサーバ装置が設けられる。第1サーバラック(S1)は低発熱サーバラックであり、第2サーバラック(S2)は、高発熱サーバラックである。第1サーバラック(S1)の温度は、第2サーバラック(S2)の温度よりも低い。吸着式冷凍機(10)は、第1サーバラック(S1)の電子機器(E)を冷却する。吸着式冷凍機(10)は、第2サーバラック(S2)の排熱を利用して、吸着器(20)の吸着材(24)を再生する。
【0024】
吸着式冷凍機(10)には、冷却塔が設けられる。図1の例の吸着式冷凍機(10)には、第1冷却塔(C1)、第2冷却塔(C2)、および第3冷却塔(C3)が設けられる。これらの冷却塔(C1,C2,C3)は、外気によって所定の熱媒体(水)を冷却する。これらの冷却塔(C1,C2,C3)は、1つの冷却塔によって構成されてもよい。
【0025】
(2)詳細な構成
吸着式冷凍機(10)は、作動媒体として水を用いる。本例の吸着式冷凍機(10)は、2つの吸着器(20)と、蒸発器(40)と、凝縮器(50)と、減圧弁(66)とを有する。2つの吸着器(20)は、第1吸着器(21)と第2吸着器(31)とで構成される。
【0026】
(2-1)吸着器
第1吸着器(21)は、第1吸着室(22)と、第1吸着室(22)に配置される第1吸着コイル(23)とを有する。本例の第1吸着器(21)は、第1吸着室(22)に吸着材(24)が充填される充填式である。第1吸着器(21)では、第1吸着コイル(23)の周囲に吸着材(24)が設けられる。第1吸着コイル(23)は、その内部を流れる水と吸着材(24)とを熱交換させる。
【0027】
第2吸着器(31)は、第2吸着室(32)と、第2吸着室(32)に配置される第2吸着コイル(33)とを有する。本例の第2吸着器(31)は、第2吸着室(32)に吸着材(24)が充填される充填式である。第2吸着器(31)では、第2吸着コイル(33)の周囲に吸着材(24)が設けられる。第2吸着コイル(33)は、その内部を流れる水と吸着材(24)とを熱交換させる。
【0028】
第1吸着器(21)および第2吸着器(31)は、一方において吸着動作が行われ、他方において再生動作が行われる。吸着動作では、吸着材(24)に水分が吸着される。再生動作では、吸着材(24)に吸着した水分が脱離(脱着)する。第1吸着器(21)および第2吸着器(31)は、再生動作と吸着動作とを交互に行う。具体的には、吸着式冷凍機(10)は、第1運転と第2運転とを交互に行う。第1運転では、第1吸着器(21)が吸着動作を行い、第2吸着器(31)が再生動作を行う。第2運転では、第1吸着器(21)が再生動作を行い、第2吸着器(31)が吸着動作を行う。
【0029】
(2-2)蒸発器
蒸発器(40)は、対象物を冷却する。蒸発器(40)は、蒸発室(41)と、蒸発室(41)に配置される蒸発コイル(42)とを有する。蒸発器(40)には、蒸発室(41)の底部に溜まった水を蒸発コイル(42)に向かって噴霧する噴霧機構(図示省略)が設けられる。蒸発コイル(42)は、噴霧機構から噴霧された水と、該蒸発コイル(42)の内部の第1熱媒体とを熱交換する。第1熱媒体は、蒸発器(40)で冷却される対象物であり、本例では水である。
【0030】
蒸発器(40)は、吸着動作中の吸着器(20)と繋がる。吸着器(20)に水分が吸着されることで、蒸発室(41)の圧力が低下する。これにより、蒸発室(41)内の水の蒸発潜熱を利用して第1熱媒体を冷却できる。
【0031】
蒸発コイル(42)には、第1冷却回路(43)が接続される。第1冷却回路(43)には、第1ポンプ(P1)が接続される。第1ポンプ(P1)は、第1冷却回路(43)の水を循環させる。第1冷却回路(43)の流入端は蒸発コイル(42)の一端に接続し、第1冷却回路(43)の流出端は蒸発コイル(42)の他端に接続する。第1冷却回路(43)は、第1サーバラック(S1)を冷却するための流路(図視省略)に繋がる。第1冷却回路(43)の第1熱媒体は、第1サーバラック(S1)の電子機器(E)を冷却する。
【0032】
(2-3)凝縮器
凝縮器(50)は、水蒸気を冷却して凝縮させる。凝縮器(50)は、凝縮室(51)と、凝縮室(51)に配置される凝縮コイル(52)とを有する。凝縮コイル(52)は、凝縮室(51)内の水蒸気と、凝縮コイル(52)の内部の第2熱媒体とを熱交換する。第2熱媒体は、第1冷却塔(C1)によって冷却される熱媒体であり、本例では水である。
【0033】
凝縮器(50)は、再生動作中の吸着器(20)と繋がる。吸着器(20)の吸着材(24)から脱離した水蒸気は、凝縮器(50)によって冷却されて凝縮する。凝縮した水分は、凝縮室(51)の底部に溜まる。
【0034】
凝縮器(50)には、第2冷却回路(53)が接続される。第2冷却回路(53)には、第2ポンプ(P2)が接続される。第2ポンプ(P2)は、第2冷却回路(53)の水を循環させる。第2冷却回路(53)の流入端は、凝縮コイル(52)の一端に接続し、第2冷却回路(53)の流出端は、凝縮コイル(52)の他端に接続する。第2冷却回路(53)は、第1冷却塔(C1)と熱的に接続する。第2冷却回路(53)の第2熱媒体は、第1冷却塔(C1)によって冷却される。
【0035】
(2-4)主回路
吸着式冷凍機(10)は、作動媒体が流れる主回路(60)を有する。主回路(60)は、第1蒸発側流路(61)、第2蒸発側流路(62)、第1凝縮側流路(63)、第2凝縮側流路(64)、および中継流路(65)を含む。
【0036】
第1蒸発側流路(61)の流入端は、蒸発器(40)の蒸発室(41)と繋がり、第1蒸発側流路(61)の流出端は、第1吸着器(21)の第1吸着室(22)と繋がる。第2蒸発側流路(62)の流入端は、蒸発器(40)の蒸発室(41)と繋がり、第2蒸発側流路(62)の流出端は、第2吸着器(31)の第2吸着室(32)と繋がる。第1蒸発側流路(61)には、第1開閉弁(V1)が設けられ、第2蒸発側流路(62)には、第2開閉弁(V2)が設けられる。
【0037】
第1凝縮側流路(63)の流入端は、第1吸着器(21)の第1吸着室(22)と繋がり、第1凝縮側流路(63)の流出端は、凝縮器(50)の凝縮室(51)と繋がる。第2凝縮側流路(64)の流入端は、第2吸着器(31)の第2吸着室(32)と繋がり、第2凝縮側流路(64)の流出端は、凝縮器(50)の凝縮室(51)と繋がる。第1凝縮側流路(63)には、第3開閉弁(V3)が設けられ、第2凝縮側流路(64)には、第4開閉弁(V4)が設けられる。
【0038】
中継流路(65)の流入端は、凝縮器(50)の凝縮室(51)の底部に繋がる。中継流路(65)の流出端は、蒸発器(40)の蒸発室(41)に繋がる。中継流路(65)には、減圧機構である減圧弁(66)が設けられる。減圧弁(66)は、中継流路(65)を流れる作動媒体を減圧する。
【0039】
(2-5)吸着側回路
吸着式冷凍機(10)は、吸着器(20)の吸着材(24)を冷却するための吸着側回路(70)を有する。吸着側回路(70)では、第3熱媒体としての水が流れる。吸着側回路(70)は、吸着側流入路(71)、第1流路(72)、第2流路(73)、第3流路(74)、第4流路(75)、および吸着側流出路(76)を含む。
【0040】
吸着側流入路(71)の流入端は、第2冷却塔(C2)に繋がる。第1流路(72)の流入端と、第2流路(73)の流入端とは、吸着側流入路(71)の流出端と繋がる。第1流路(72)の流出端は、第1吸着器(21)の第1吸着室(22)に繋がる。第2流路(73)の流出端は、第2吸着器(31)の第2吸着室(32)に繋がる。第3流路(74)の流入端は、第1吸着器(21)の第1吸着室(22)に繋がる。第4流路(75)の流入端は、第2吸着器(31)の第2吸着室(32)に繋がる。第3流路(74)の流出端と、第4流路(75)の流出端とは、吸着側流出路(76)の流入端に繋がる。吸着側流出路(76)の流出端は、第2冷却塔(C2)に繋がる。
【0041】
吸着側流入路(71)には、第3ポンプ(P3)が設けられる。第3ポンプ(P3)は、吸着側回路(70)の水を循環させる。第1流路(72)には、第5開閉弁(V5)が設けられる。第2流路(73)には、第6開閉弁(V6)が設けられる。第3流路(74)には、第7開閉弁(V7)が設けられる。第4流路(75)には、第8開閉弁(V8)が設けられる。
【0042】
(2-6)再生側回路
吸着式冷凍機(10)は、吸着器(20)の吸着材(24)を加熱および再生するための再生側回路(80)を有する。再生側回路(80)では、第4熱媒体としての水が流れる。再生側回路(80)は、再生側流入路(81)、第5流路(82)、第6流路(83)、第7流路(84)、第8流路(85)、および再生側流出路(86)を含む。
【0043】
再生側流入路(81)の流入端は、第2サーバラック(S2)から吸熱する流路(図示省略)の一端に繋がる。第5流路(82)の流入端と、第6流路(83)の流入端とは、再生側流入路(81)の流出端と繋がる。第5流路(82)の流出端は、第1吸着器(21)の第1吸着室(22)に繋がる。第6流路(83)の流出端は、第2吸着器(31)の第2吸着室(32)に繋がる。第7流路(84)の流入端は、第1吸着器(21)の第1吸着室(22)に繋がる。第8流路(85)の流入端は、第2吸着器(31)の第2吸着室(32)に繋がる。第7流路(84)の流出端と、第8流路(85)の流出端とは、再生側流出路(86)の流入端に繋がる。再生側流出路(86)の流出端は、第2サーバラック(S2)から吸熱する流路の他端に繋がる。
【0044】
再生側流入路(81)には、第4ポンプ(P4)が設けられる。第5流路(82)には第9開閉弁(V9)が設けられる。第6流路(83)には、第10開閉弁(V10)が設けられる。第7流路(84)には、第11開閉弁(V11)が設けられる。第8流路(85)には、第12開閉弁(V12)が設けられる。
【0045】
再生側流出路(86)には、第3冷却塔(C3)が繋がる。第3冷却塔(C3)は、第2サーバラック(S2)に流入する前の水を冷却する。
【0046】
(3)運転動作
吸着式冷凍機(10)の運転動作について図2および図3を参照しながら説明する。吸着式冷凍機(10)は、第1運転と第2運転とを交互に繰り返し行う。なお、図2および図3では、開状態の開閉弁を白抜きで表し、閉状態の開閉弁を黒抜きで表す。
【0047】
(3-1)第1運転
図2に示す第1運転では、第1開閉弁(V1)、第4開閉弁(V4)、第5開閉弁(V5)、第7開閉弁(V7)、第10開閉弁(V10)、第12開閉弁(V12)が開状態になり、第2開閉弁(V2)、第3開閉弁(V3)、第6開閉弁(V6)、第8開閉弁(V8)、第9開閉弁(V9)、第11開閉弁(V11)が閉状態になる。減圧弁(66)は所定開度に調節される。第1ポンプ(P1)、第2ポンプ(P2)、第3ポンプ(P3)が運転される。
【0048】
第1運転では、第1冷却塔(C1)によって冷却された熱媒体が凝縮コイル(52)に送られる。第2冷却塔(C2)によって冷却された熱媒体が第1吸着器(21)の第1吸着コイル(23)に送られる。第2サーバラック(S2)によって加熱された熱媒体が第2吸着器(31)の第2吸着コイル(33)に送られる。蒸発コイル(42)によって冷却された熱媒体が第1サーバラック(S1)に送られる。第1運転では、第1吸着器(21)で吸着動作が行われ、第2吸着器(31)で再生動作が行われる。
【0049】
第1開閉弁(V1)が開状態になると、蒸発室(41)と第1吸着室(22)とが連通する。これにより、蒸発器(40)で蒸発した水は第1吸着器(21)の吸着材(24)に吸着される。第1吸着器(21)では、吸着材(24)で生じた吸着熱が第1吸着コイル(23)を流れる熱媒体によって冷却される。
【0050】
第2吸着器(31)では、第2吸着コイル(33)を流れる熱媒体によって吸着材(24)が加熱される。これにより、吸着材(24)から水が脱離する。第4開閉弁(V4)が開状態になると、第2吸着室(32)と凝縮室(51)とが連通する。このため、第2吸着器(31)の吸着材(24)から脱離した水は、凝縮器(50)によって冷却される。
【0051】
凝縮器(50)で凝縮した水は、減圧弁(66)で減圧された後、蒸発器(40)へ送られる。蒸発器(40)では、熱媒体が蒸発することにより、蒸発コイル(42)内の熱媒体が冷却される。蒸発室(41)で蒸発した水は、再び第1吸着器(21)に送られる。
【0052】
(3-2)第2運転
図3に示す第2運転では、第1開閉弁(V1)、第4開閉弁(V4)、第5開閉弁(V5)、第7開閉弁(V7)、第10開閉弁(V10)、第12開閉弁(V12)が閉状態になり、第2開閉弁(V2)、第3開閉弁(V3)、第6開閉弁(V6)、第8開閉弁(V8)、第9開閉弁(V9)、第11開閉弁(V11)が開状態になる。減圧弁(66)は所定開度に調節される。第1ポンプ(P1)、第2ポンプ(P2)、第3ポンプ(P3)が運転される。
【0053】
第2運転では、第1冷却塔(C1)によって冷却された熱媒体が凝縮コイル(52)に送られる。第2冷却塔(C2)によって冷却された熱媒体が第2吸着器(31)の第2吸着コイル(33)に送られる。第2サーバラック(S2)によって加熱された熱媒体が第1吸着器(21)の第1吸着コイル(23)に送られる。蒸発コイル(42)によって冷却された熱媒体が第1サーバラック(S1)に送られる。第2運転では、第1吸着器(21)で再生動作が行われ、第2吸着器(31)で吸着動作が行われる。
【0054】
第2開閉弁(V2)が開状態になると、蒸発室(41)と第2吸着室(32)とが連通する。これにより、蒸発器(40)で蒸発した水は第2吸着器(31)の吸着材(24)に吸着される。第2吸着器(31)では、吸着材(24)で生じた吸着熱が第2吸着コイル(33)を流れる熱媒体によって冷却される。
【0055】
第1吸着器(21)では、第1吸着コイル(23)を流れる熱媒体によって吸着材(24)が加熱される。これにより、吸着材(24)から水が脱離する。第3開閉弁(V3)が開状態になると、第1吸着室(22)と凝縮室(51)とが連通する。このため、第1吸着器(21)の吸着材(24)から脱離した水は、凝縮器(50)によって冷却される。
【0056】
凝縮器(50)で凝縮した水は、減圧弁(66)で減圧された後、蒸発器(40)へ送られる。蒸発器(40)では、熱媒体が蒸発することにより、蒸発コイル(42)内の熱媒体が冷却される。蒸発室(41)で蒸発した水は、再び第2吸着器(31)に送られる。
【0057】
(4)温度条件
吸着式冷凍機(10)の運転時における温度条件について説明する。
【0058】
吸着器(20)の吸着材(24)の再生温度は、45℃以上60℃以下である。具体的には、第2サーバラック(S2)から再生側流入路(81)に流出する熱媒体の温度T1は、45℃以上60℃以下である。温度T1は、第2サーバラック(S2)の排熱温度に相当する。温度T1の熱媒体は、吸着器(20)に供給され、その吸着材(24)の再生に利用される。
【0059】
蒸発器(40)は、対象物である熱媒体を20℃以上25℃以下の範囲の所定温度まで冷却する。具体的には、第1冷却回路(43)のうち蒸発コイル(42)で冷却された後の第1熱媒体の温度T2は、20℃以上25℃以下である。この熱媒体は、電子機器(E)を含む第1サーバラック(S1)の冷却に利用される。
【0060】
第1冷却塔(C1)、第2冷却塔(C2)、および第3冷却塔(C3)では、それぞれ熱媒体が外気温度(例えば30℃)まで冷却される。
【0061】
(5)吸着材
上述したように、本実施形態の吸着式冷凍機(10)の吸着材(24)の再生温度は、45℃以上60℃以下である。この再生温度は、従来例の一般的な再生温度(例えば80℃)と比べて低い。このため、従来例の吸着材(例えばシリカゲル)を用いると、吸着式冷凍機において上述したような吸着式のヒートンポンプサイクルを十分に作動できなかったり、COP(成績係数)などの効率が低下したりする。そこで、本実施形態では、吸着器(20)の吸着材(24)として以下の材料Aあるいは材料Bを用いている。
【0062】
(5-1)C/N、および細孔の体積比率
図4に本実施形態の材料A、B、および比較対象となる材料CおよびDの特性を示す。なお、以下に示す図4図6のデータは、以下の出典元の文献に基づく。
【0063】
出典元:Janina Kossmann, Regina Rothe, Tobias Heil, Markus Antonietti, Nieves Lopez-salas, Ultrahigh water sorption on highly nitrogen doped carbonaceous materials derived from uric acid, Journal of Colloid and Interface Science 602, 2021, page 883-885
材料A、B、C、およびDは、尿酸由来の炭素材料であり、窒素を含有している。材料A、B、C、およびDは、いずれも多数の細孔を有する細孔構造である。材料A、B、C、おおよびBは直径2nm以上50nm以下の多数の細孔(メソ孔)を有している。
【0064】
材料A、B、C、およびDは、次の手順によって得られる。まず、1gの尿酸を5gのNaClおよび5gのZnClと混合することで混合物を調整する。これら混合物をるつぼにうつし、窒素雰囲気下において、1℃/分の加熱速度で熱処理する。材料Aは、熱処理での最終温度が750℃である。材料Bは、熱処理での最終温度が800℃である。材料Cは、熱処理での最終温度が500℃である。材料Dは、熱処理での最終温度が700℃である。尿酸由来の炭素材料は、熱処理の温度が700℃以上であるのが好ましい。熱処理後の材料を、塩酸により洗浄した後、70℃で3時間乾燥させることで、各材料を得る。
【0065】
図4における各材料の元素の組成は、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)により計測されている。図4における窒素に対する炭素の元素比率(C/N)は、ECA(elemental chemical analysis)により計測されている。C/N[%]については、材料Aが2.6であり、材料Bが6.2であり、材料Cが1.1であり、材料Dが1.8である。このことから、吸着材(24)は、C/Nが1.8より大きいのが好ましい。
【0066】
図4における各材料の細孔の体積比率は、材料の全重量wtに対する、直径2nm以上50nm以下の細孔(メソ孔)の合計の体積Vtの比率(α=Vt/wt[cm3/g])を意味する。細孔の体積比率については、材料Aが076、材料Bが1.75、材料Cが0.00、材料Dが0.32である。このことから、吸着材(24)は、細孔の体積比率が0.32より大きいのが好ましい。
【0067】
(5-2)有効吸着量
上述した実施形態では、吸着材(24)の再生温度が45℃以上60℃以下であり、蒸発器(40)は、熱媒体を20℃以上25℃以下まで冷却する。この運転条件では、吸着材(24)において相対湿度が30%から66%の範囲において、吸着性能が高ければ、吸着式冷凍機(10)において効率の高い運転が可能であることがわかった。そこで、本実施形態では、吸着材(24)として、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が0.17[g/g]以上であるものを用いている。ここでいう、有効吸着量は、相対湿度が30%から66%の範囲で水分を吸着する吸着工程と、水分を脱着する脱着工程を行う場合において、吸着材(24)が単位重量あたりに吸着可能な吸着量を意味する。
【0068】
図5の実線は材料Aの吸着等温線であり、図5の破線は材料Bの吸着等温線である。材料Aにおいて、相対湿度30%から66%の範囲で水の吸脱着が行われる場合、a1、a2、a3、a4、a1の順に相対湿度および吸着量が変化する。a1からa2の間では、吸着材(24)で吸着工程が行われる。a3からa4の間では、吸着材(24)で脱着工程が行われる。ここで、材料Aにおける相対湿度が30%から66%までの範囲での有効吸着量は、a1に対応する吸着量と、a2に対応する吸着量との差分ΔWaとなる。具体的に、材料Aの相対湿度30%から66%の範囲における有効吸着量は、約0.3[g/g]である。
【0069】
材料Bにおいて、相対湿度30%から66%の範囲で水の吸脱着が行われる場合、b1、b2、b3、b1の順に相対湿度および吸着量が変化する。b1からb2の間では、吸着材(24)で吸着工程が行われる。b3からb1の間では、吸着材(24)で脱着工程が行われる。ここで、材料Bにおける相対湿度が30%から66%までの範囲での有効吸着量は、b1に対応する吸着量と、b2に対応する吸着量との差分ΔWbとなる。具体的に、材料Bの相対湿度30%から66%の範囲における有効吸着量は、約0.45[g/g]である。
【0070】
図6の一点鎖線は材料Cの吸着等温線であり、図6の二点鎖線は材料Dの吸着等温線である。材料Cおよび材料Dでは、相対湿度が30%から66%までの範囲での有効吸着量が極めて低く0.1[g/g]にも達していない。
【0071】
図7は、吸着材として一般的なシリカゲルの水蒸気の吸着等温線である。図7のデータは、以下の出典元に基づく。
【0072】
出典元:鈴木正哉, Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan 14, (2007)
なお、シリカゲルは、吸着工程と脱着工程とで同じ特性を示すので、図7では、これらを1つの特性として表していると推察できる。
【0073】
図7からわかるように、シリカゲルにおける相対湿度が30%から66%までの範囲での有効吸着量は、本実施形態に係る材料AおよびBのそれよりも極めて小さい。具体的に、シリカゲルにおける相対湿度が30%から66%までの範囲での有効吸着量ΔWcは約0.17であった。
【0074】
このように吸着材(24)は、相対湿度が30%から66%までの範囲での有効吸着量は、シリカゲルに相当する0.17より大きいのが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.45以上であることがさらに好ましい。
【0075】
吸着式冷凍機(10)の冷凍能力Qは以下の(1)式で表される。
【0076】
冷凍能力Q=M×L×ΔW・・・(1)式
ここで、Mは、吸着材(24)の総乾燥重量であり、Lは、蒸発器(40)における水蒸気の蒸発潜熱である、ΔMは上述した有効吸着量である。本実施形態では、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が大きいので、再生温度が比較的低い運転条件下において、高い冷凍能力を得ることができる。
【0077】
(6)実施形態の効果
吸着式冷凍機(10)の吸着材(24)は、相対湿度が30%から66%の範囲における有効吸着量が、0.17[g/g]以上である。このため、吸着材(24)の再生温度が比較的低い運転条件下において、吸着材(24)の性能の低下を抑制できる。このため、吸着式のヒートポンプサイクルを作動できなかったり、COPなどの効率が低下したりすることを抑制できる。
【0078】
特に、吸着材(24)の再生温度が45℃以上60℃以下である場合にさらには、蒸発器(40)が対象物を20℃以上25℃以下まで冷却する場合には、本開示の吸着材(24)は高い冷凍能力を得るために適している。
【0079】
さらに本開示の吸着材(24)は電子機器(E)を冷却するのに適している。
【0080】
さらに本開示の吸着材(24)である材料Aや材料Bは、炭素、窒素、および酸素を含み、窒素に対する前記炭素の元素比率が1.8より大きく、多数の細孔を有する細孔構造であり、その重量に対する、直径2nm以上50nm以下の細孔の合計の体積の比率が0.32[cm3/g]以上である(図4を参照)。このため、図5に示されるように、相対湿度が30%から66%の範囲において、高い有効吸着量を得ることができる。このため、本実施形態の運転条件下において、特に高い冷凍能力を得ることができる。
【0081】
本実施形態の吸着式冷凍機(10)では、単段式でありながら、高い冷凍能力を得ることができる。このため、多段の吸着式のヒートポンプサイクルを行う吸着式冷凍機と比べて装置の小型化、簡素化、低コスト化を図ることができる。ここで、多段式の吸着式冷凍機は、2段以上の吸着器(20)毎に吸着動作および再生動作を行う。
【0082】
(7)その他の実施形態
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0083】
吸着器(20)は、吸着コイルと、吸着コイルが貫通する多数のフィンとを備え、多数のフィンの表面に吸着材(24)が設けられた、吸着熱交換器式であってもよい。
【0084】
吸着式冷凍機(10)は、1つの吸着器(20)で間欠的に吸着動作と再生動作とを行う間欠バッチ式であってもよい。
【0085】
吸着式冷凍機(10)は、3つ以上の吸着器(20)を有し、これらの吸着器(20)の一部で吸着動作を行い、残部で再生動作を行う方式であってもよい。
【0086】
吸着式冷凍機(10)は、2段以上の吸着器(20)毎に吸着動作および再生動作を行う多段式であってもよい。
【0087】
吸着材(24)は、材料AおよびBでなくてもよい。吸着材(24)は、上述した種々の条件を満たす材料であれば、他の材料であってもよい。
【0088】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態の要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0089】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上に説明したように、本開示は、吸着式冷凍機について有用である。
【符号の説明】
【0091】
10 吸着式冷凍機
20 吸着器
24 吸着材
40 蒸発器
50 凝縮器
E 電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7