(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033248
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61H7/00 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136736
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(71)【出願人】
【識別番号】594001775
【氏名又は名称】株式会社ベアーメディック
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100179132
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 知生
(72)【発明者】
【氏名】佐武 利彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一郎
【テーマコード(参考)】
4C100
【Fターム(参考)】
4C100AB02
4C100AB04
4C100AB07
4C100BB05
4C100CA02
(57)【要約】
【課題】身体の部位を効率的に吸引できる吸引器具を提供する。
【解決手段】本発明に係る吸引器具11は、生体組織の表面を吸引するための吸引器具であって、開口部を有する立体形状である中空の覆部材12と、覆部材の開口部121の端部122に沿って固定される皮膚接触部材13と、覆部材の内部を吸引するために、覆部材に配置される通気孔14とを備える。また、皮膚接触部材が、覆部材に脱着可能に固定され、覆部材の開口部の端部の近傍の外周に沿って配置される凸部123と、皮膚接触部材において覆部材に固定される面に配置され、覆部材の開口部の端部と篏合する第1の溝131と、第1の溝の外周に沿って配置され、凸部と篏合する凹部133とを備えてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の表面を吸引するための吸引器具であって、
開口部を有する立体形状である中空の覆部材と、
前記覆部材の前記開口部の端部に沿って固定される皮膚接触部材と、
前記覆部材の内部を吸引するために、前記覆部材に配置される通気孔と
を備える吸引器具。
【請求項2】
前記皮膚接触部材が、前記覆部材に脱着可能に固定され、
前記覆部材の前記開口部の端部の近傍の外周に沿って配置される凸部と、
前記皮膚接触部材において前記覆部材に固定される面に配置され、前記覆部材の前記開口部の端部と篏合する第1の溝と、
前記第1の溝の外周に沿って配置され、前記凸部と篏合する凹部と
を備える請求項1に記載の吸引器具。
【請求項3】
前記皮膚接触部材において前記生体組織の表面と接触する面に、第2の溝を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸引器具。
【請求項4】
生体組織の表面を吸引するための吸引器具において覆部材に固定される皮膚接触部材であって、
前記覆部材に脱着可能に固定され、
前記覆部材に固定される面に配置され、前記覆部材の開口部の端部と篏合する第1の溝と、
前記第1の溝の外周に沿って配置され、前記覆部材の開口部の端部の近傍の外周に沿って配置される凸部と篏合する凹部と
を備える皮膚接触部材。
【請求項5】
生体組織の表面を吸引するための吸引器具において覆部材に固定される皮膚接触部材であって、
前記生体組織の表面と接触する面に、第2の溝
を備える皮膚接触部材。
【請求項6】
請求項1に記載の吸引器具と、
ポンプと
を備える吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体など生体組織の一部を吸引するための吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
健康分野や美容分野において、身体の部位に圧力を印加することによって、血行を促進させ、組織の治癒、改善などの効能を発揮させる機器、器具が利用されている。
【0003】
例えば、身体の部位に陰圧、陽圧を印加してマッサージすることが、疲労回復、毛髪の成長の促進、搾乳の促進に利用されている。また、血行の促進に効果がある。
【0004】
このように、身体の一部の部位(皮膚)を陰圧、陽圧を印加するために、吸引器具および吸引装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の吸引器具および吸引装置では、生体組織(身体や皮膚など)との密着性を維持して効率的に吸引することが重要となる。しかしながら、吸引器具等の材料または生体組織の表面状態によっては、生体組織に吸引器具等を密着させることが困難である場合がある。
【0007】
また、吸引器具を生体組織(身体や皮膚など)に密着させて固定するときに接着剤を用いる場合、接着剤による皮膚の損傷(肌荒れなど)が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る吸引器具は、生体組織の表面を吸引するための吸引器具であって、開口部を有する立体形状である中空の覆部材と、前記覆部材の前記開口部の端部に沿って固定される皮膚接触部材と、前記覆部材の内部を吸引するために、前記覆部材に配置される通気孔とを備える。
【0009】
また、本発明に係る吸引器具は、前記皮膚接触部材が、前記覆部材に脱着可能に固定され、前記覆部材の開口部の端部の近傍の外周に沿って配置される凸部と、前記皮膚接触部材において前記覆部材に固定される面に配置され、前記覆部材の開口部の端部と篏合する第1の溝と、前記第1の溝の外周に沿って配置され、前記凸部と篏合する凹部とを備えてもよい。
【0010】
また、本発明に係る吸引器具は、前記皮膚接触部材において前記生体組織の表面と接触する面に、第2の溝を備えてもよい。
【0011】
また、本発明に係る皮膚接触部材は、生体組織の表面を吸引するための吸引器具において覆部材に固定される皮膚接触部材であって、前記覆部材に脱着可能に固定され、前記覆部材に固定される面に配置され、前記覆部材の開口部の端部と篏合する第1の溝と、前記第1の溝の外周に沿って配置され、前記覆部材の開口部の端部の近傍の外周に沿って配置される凸部と篏合する凹部とを備える。
【0012】
また、本発明に係る吸引装置は、前記吸引器具と、ポンプとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生体組織(身体の部位)を効率的に吸引できる吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る吸引装置の構成を示す概要図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る吸引器具の(a)正面概要図と、(b)上面概要図と、(c)側面概要図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る吸引器具における覆部材の(a)正面概要図と、(b)上面概要図と、(c)側面概要図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る吸引器具における皮膚接触部材の(a)正面概要図と、(b)上面概要図と、(c)側面概要図、(d)底面概要図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る吸引器具における皮膚接触部材のV-V’断面概要図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る吸引器具の動作を説明するためのVI-VI’断面概要図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施例に係る吸引器具における皮膚接触部材の(a)正面概要図と、(b)上面概要図と、(c)側面概要図、(d)底面概要図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る吸引器具の一例を説明するための断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置について、
図1~
図6(b)を参照して説明する。
【0016】
<吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置の構成>
本発明の第1の実施の形態に係る吸引装置10は、
図1に示すように、吸引器具11と、ポンプ16と、吸引器具11とポンプ16とを接続する接続部材15とを備える。また、吸引器具11は、覆部材(カップ)12と、皮膚接触部材(パッド)13と、通気管14とを備える。
【0017】
吸引装置10では、吸引器具11で生体組織1の表面(皮膚)2の一部を覆って、接続部材15を介して、ポンプ16により吸引する。このとき、吸引器具11の開口部の端部(縁)を、表面(皮膚)2に密着させる。
【0018】
吸引器具11において、
図2(a)~(c)に示すように、覆部材12の開口部121に、皮膚接触部材13が脱着可能に固定される。また、通気管14が、覆部材12の表面に固着される。通気管14は脱着可能に固定されてもよい。
【0019】
覆部材12は、
図3(a)~(c)に示すように、中空の略半球形状であり、底面が開口されている(開口部121)。ここで、底面の一部が開口されてもよい。
【0020】
また、覆部材12は、樹脂製である。例えば、覆部材12はウレタンにより構成される。
【0021】
ここで、「略半球形状」とは、球または楕円球を正確に半分に切断した形状を含み、略球または略楕円球を、中心を通らない面で切断した形状も含む。このとき、切断面が、覆部材12の底面に相当する。
【0022】
覆部材12は、開口部121近傍の外周に沿って凸部123を備える。ここで、開口部121近傍は、開口部121の端部122を含み、例えば、開口部121の端部122から1~3mm程度以内の領域である。端部122から20mm程度以内の領域でもよい。凸部123により、覆部材12と皮膚接触部材13との固定を強固にできる(後述、
図6)
【0023】
覆部材12は、通気管(ポート)14を備え、通気管14に接続部材15を接続し、接続部材15を介して、真空ポンプ16により吸引される。ここで、接続部材15に、シリコンチューブを用いる。
【0024】
ポンプ16は、覆部材12内の圧力を1kPa~50kPa程度で制御する。これに限らず、用途によって適宜調整してもよい。また、低圧と高圧で切り替えて制御してもよい。また、自動的に所定の圧力値でONとOFFを切り替えてもよく、手動でONとOFFを切り替えてもよい。
【0025】
また、通気管14は、覆部材12の表面のいずれに配置されてもよいが、覆部材12を身体に装着する際に、覆部材12の身長方向において上方に位置するように配置されることが望ましい。これにより、装着者が立位又は仰臥位のときに、通気管14からの汗の吸引を抑制し、ポンプ16の劣化を防止できる。
【0026】
また、ポンプ16による汗の吸引を防止するために、フィルタを配置してもよい。
【0027】
通気管14において、一方(1箇所)に吸引口(吸引インポート)が配置される。ここで、吸引口は両方(対向する2箇所)に配置されてもよい。これにより、容易に吸引できるようにいずれか一方の吸引口に接続部材15を接続して、ポンプ16を配置できる。このとき、接続部材15を接続しない他方の吸引口には、シール栓が配置される。
【0028】
皮膚接触部材13は、
図1に示すように、吸引器具11を身体に装着するときに、覆部材12と皮膚2との間に配置され、皮膚2に接触する。
【0029】
皮膚接触部材13は、
図4(a)~(d)に示すように、所定の幅wbのリング形状を有する。また、一定の高さzbを有し、表面13Sと底面13Bは平坦である。
【0030】
また、皮膚接触部材13は、樹脂製である。樹脂は、陰圧により皮膚に容易に密着されるように柔軟であるとともに、極度に変形しない程度の硬さを有することが望ましい。ここでは、硬度をE30程度とする。
【0031】
また、皮膚接触部材13の材料は、生体適合性に優れることが望ましく、シリコンゴムが望ましい。
【0032】
皮膚接触部材13は、
図4(a)に示すように、一方の面(表面)13Sに、リング形状に沿って溝(第1の溝)131を有する。この溝(第1の溝)131に、覆部材12の開口部121の端部(縁部)122が篏合される。
【0033】
また、皮膚接触部材13は、
図4(d)に示すように、他方の面(底面)13Bに、リング形状に沿って溝(第2の溝)132を有する。
【0034】
図5に、皮膚接触部材13のV-V’断面図を示す。皮膚接触部材13は、一方の面(表面)13Sに溝131(第1の溝)を備え、他方の面(底面)13Bに2本の溝132(第2の溝)を備える。ここで、一方の面(表面)13Sは覆部材12が固定される面であり、他方の面(底面)13Bは皮膚に接触する面である。
【0035】
皮膚接触部材13の溝(第1の溝)131は、外周に沿って側壁に凹部133を備える。
【0036】
図6(a)、(b)それぞれに、覆部材12に皮膚接触部材13を装着する前後での態様を示す。皮膚接触部材13を覆部材12に装着するときに、覆部材12の開口部121近傍の外周の凸部123が、皮膚接触部材13の溝131の内部の凹部133と篏合する。これにより、覆部材12と皮膚接触部材13との固定が強固になる。凹部133は、覆部材12の凸部123と篏合できる位置に配置されればよい。
【0037】
また、溝(第2の溝)132により、初期吸引時のリークの発生を抑制し、吸引時の密着性が向上し、効率的に吸引できる。溝(第2の溝)132は、2本の溝に限らず、1本又は複数でもよい。
【0038】
皮膚接触部材13の構成の一例として、皮膚接触部材13(幅wb:25mm程度、高さzb:30mm程度)において、第1の溝131の幅wb1が10mm程度、深さzb1が12mm程度である。第1の溝131内の凹部133の幅zb3が4mm程度、深さwb3が4mm程度である。また、第2の溝132の幅wb2が2mm程度、深さzb2が1mm程度である。
【0039】
<吸引装置の装着方法とマッサージ方法>
本実施の形態に係る吸引装置の装着方法の一例を、以下に説明する。また、用途の一例として、吸引装置を用いたマッサージ方法について説明する。
【0040】
初めに、覆部材(カップ)12に皮膚接触部材(パッド)13を嵌め込んで吸引器具11を準備し、吸引器具11の通気管14にシリコンチューブ15を介して真空ポンプ16を接続する。
【0041】
次に、吸引器具11を、対象部位の皮膚2を覆うように押し当て、真空ポンプ16をONにして吸引を開始する。
【0042】
次に、一定の時間(例えば、2~3分間程度)経過すると、吸引器具11内の空間が所定の圧力に到達し、真空ポンプ16が自動的に停止する。
【0043】
この状態を所定の時間維持して、対象部位に陰圧を印加する。これにより、皮膚近傍の生体組織の血行が促進され、マッサージ効果を得ることができる。
【0044】
ここで、吸引装置を用いてマッサージを施す場合、ポンプのON/OFFを自動で切り替える所定の圧力として、低圧の値と高圧の値を設定してもよい。このとき、低圧の値に達したときに真空ポンプを停止(OFF)させ、引き続き、リーク等によって高圧の値になったときに真空ポンプを動作(ON)させる。これにより、吸引器具11内の空間を所定の範囲の圧力に維持できる。
【0045】
<効果>
本実施の形態に係る吸引器具によれば、皮膚接触部材において生体組織の表面と接触する面に配置される第2の溝により、皮膚との密着性を向上できる。
【0046】
また、本実施の形態に係る吸引器具は、覆部材と皮膚接触部材とが脱着可能な構成を有する。
【0047】
従来の吸引器具では、覆部材の材料(樹脂)と容易に接着できる皮膚接触部材の材料(樹脂)が限られている。そこで、覆部材の材料と皮膚接触部材の材料との組み合わせの自由度を増やすために、覆部材と皮膚接触部材とを接着することなく、脱着可能な構成とすることが望ましい。
【0048】
しかしながら、この構成では、装着時又は吸引時に皮膚接触部材が覆部材から外れてしまう等、覆部材と皮膚接触部材との固定が不十分な場合がある。また、吸引時の吸引器具と皮膚との密着性が不十分な場合がある。その結果、生体組織の血行を促進するなどの効果が十分に得られない。
【0049】
本実施の形態に係る吸引器具によれば、覆部材と皮膚接触部材が脱着可能な構成において、覆部材の凸部と皮膚接触部材の第1の溝内の凹部との篏合により、覆部材と皮膚接触部材とを強固に固定できる。
【0050】
本実施の形態に係る吸引器具によれば、覆部材の材料と皮膚接触部材の材料との組み合わせの自由度が増えるので、例えば、覆部材の材料に透明な樹脂を用いることができる。これにより、利用者は、覆部材の皮膚の状態などを外部から視認することができる。
【0051】
また、例えば、皮膚接触部材の材料に生体適合材料を用いることができる。これにより、皮膚接触部材が接触する皮膚に損傷を与えず、良好な状態を維持できる。
【0052】
また、従来の吸引器具において、皮膚と接触する部分(皮膚接触部材)に、柔軟性に欠けるなどの皮膚との密着が困難な材料を用いる場合、接着剤で吸引器具を皮膚に固定していた。この場合、生体組織(皮膚)に損傷(かぶれ等)が生じる場合があった。
【0053】
本実施の形態に係る吸引器具によれば、覆部材の材料と皮膚接触部材の材料との組み合わせの自由度が増えるので、皮膚接触部材に密着性に優れる材料を用いることにより、接着剤を要さずに吸引器具を皮膚に固定できる。
【0054】
さらに、皮膚接触部材の第2の溝により皮膚との密着性を向上させて、吸引器具を皮膚に固定できる。
【0055】
以上より、本実施の形態に係る吸引器具および吸引装置によれば、皮膚を含む生体組織を効率的に吸引でき、生体組織の血行を促進できる。
【0056】
とくに、生体適合性に優れるシリコンゴムと覆部材の材料との接着が困難であるため、皮膚と接触する部分(皮膚接触部材)にシリコンゴムを用いることができず、他の樹脂を用いていた。その結果、吸引器具と接触する皮膚に損傷等が生じるなどの問題が生じていた。
【0057】
また、皮膚接触部材にシリコンゴムを用いて、覆部材と皮膚接触部材が脱着可能な構成とする場合には、シリコンゴム表面が滑りやすい等により覆部材と皮膚接触部材との固定が不十分で、装着時又は吸引時にシリコンゴム製の皮膚接触部材(パッド)が覆部材(カップ)から外れてしまう等の問題が生じていた。
【0058】
本実施の形態に係る吸引器具および吸引装置によれば、覆部材(カップ)とシリコンゴム製の皮膚接触部材との固定を強固にして、また身体(皮膚)との密着性を向上させる構成により、皮膚接触部材にシリコンゴムを用いて、覆部材と皮膚接触部材が脱着可能な構成が可能になり、皮膚を含む生体組織を効率的に吸引でき、生体組織の血行を促進できる。
【0059】
また、本実施の形態に係る吸引器具によれば、覆部材と皮膚接触部材を分離できるので、皮膚接触部材(パッド)を容易に洗浄できる。また、皮膚接触部材にシリコンゴムを用いれば、アルコールや熱湯でも容易に洗浄できる。
【0060】
<第1の実施例>
本発明の第1の実施例に係る吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置について、
図7(a)~(c)を参照して説明する。本実施例では、対象部位を肩部、腰部、胸部などとする一例を説明する。
【0061】
<吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置の構成>
本実施例に係る吸引装置は、吸引器具と、ポンプと、吸引器具とポンプとを接続する接続部材とを備える。ここで、吸引器具の皮膚接触部材23の構成以外は、第1の実施の形態と略同様である。
【0062】
皮膚接触部材23は、覆部材(図示せず)に篏合させた状態で、皮膚接触部材23の底面が対象部位の体表の湾曲面にフィットする形状を有する。
【0063】
例えば、皮膚接触部材23において、覆部材に篏合させた状態で、
図7(b)に示すように、皮膚接触部材23の底面(皮膚と接触する面)23Bが、上面からの外観又は一方向(xbの方向)において緩やかな凹形状を有する。また、
図7(c)に示すように、側面からの外観又は一方向に垂直な方向(ybの方向)において緩やかな凸形状を有する。
【0064】
詳細には、皮膚接触部材23を身体(対象部位)に装着するときの左右方向(xbの方向)において、中央部から端部まで高さ(zbx1~zbx2)を増加させる。例えば、zbx1が30mm程度であり、zbx2が40mm程度である。
【0065】
また、皮膚接触部材23を身体(対象部位)に装着するときの身長方向(ybの方向)において、中央部から端部まで高さ(zby1~zby2)を減少させる。例えば、zby1が40mm程度であり、zby2が30mm程度である。
【0066】
これにより、皮膚接触部材23を身体(対象部位)に装着するときに、皮膚接触部材23の底面23Bを対象部位の体表の湾曲面にフィットさせることができる。その結果、皮膚接触部材23の底面23Bと対象部位の体表との密着性を向上でき、効率的に吸引できる。
【0067】
また、皮膚接触部材23は、第1の実施の形態と同様に、表面23Sに第1の溝231を備え[
図7(a)]、底面23Bに第2の溝232を備える[
図7(d)]。また、第1の溝231内の外周に沿って凹部を備え、覆部材の開口部の端部の近傍の外周に沿って配置される凸部と篏合する。
【0068】
本実施例に係る吸引器具および吸引装置によれば、第1の実施の形態と同様に、覆部材と皮膚接触部材とを強固に固定でき、皮膚との密着性を向上できるとともに、身体(対象部位)に装着するときに皮膚接触部材を対象部位の体表の湾曲面に適合でき、吸引器具と身体(対象部位)との密着性をさらに向上でき、効率的に吸引できる。
【0069】
本発明の実施の形態では、覆部材における開口部近傍の外周に沿って配置する凸部として、覆部材の表面形状を凸形状とする例を示したが、これに限らない。
図8(a)、(b)それぞれに、覆部材32_1、32_2と皮膚接触部材33との篏合の形態を示す。覆部材の凸部として、覆部材32_1、32_2のように、開口部の端部(縁部)を屈曲させて用いてもよい。これにより、覆部材32_1、32_2の屈曲形状の凸部と、皮膚接触部材33の第1の溝331内の凹部333とが篏合する。その結果、覆部材32_1、32_2と皮膚接触部材33とを強固に固定できる。
【0070】
本発明の実施の形態において、覆部材は略半球形状に限らず、例えば、円柱や多角形柱等の形状でもよい。または、複数の湾曲面を含む形状でもよい。対象部位を吸引するために、少なくとも一面の一部に開口部を有する中空の立体であればよく、対象部位の表面上を覆って密閉空間を形成できる形状であればよい。
【0071】
本発明の実施の形態に係る吸引器具の構成の一例として、覆部材の横方向(x方向)の長さが80~140mm程度、縦方向(y方向)の長さが150~180mm程度、高さ(z方向の長さ)が80mm程度である。皮膚接触部材23の横方向の外周間の長さ(例えば、xb)は160mm程度、縦方向の外周間の長さ(例えば、yb)は180~190mm程度である。
【0072】
本発明の実施の形態では、皮膚接触部材にシリコンゴムを用いる例を示したが、これに限らない。覆部材に装着して皮膚に密着できる程度の硬度(柔軟性)を有する樹脂や高分子材料などを用いてもよい。また、皮膚接触部材の材料は、生体適合材料であることが望ましい。
【0073】
本発明の実施の形態では、覆部材に通気管が配置される例を示したが、これに限らない。覆部材に通気孔を設けて、接続部材を直接嵌入(挿入)してもよい。このように、覆部材に通気管が配置する構成を含めて、覆部材の内部を吸引するために、覆部材に通気孔を備えればよい。
【0074】
本発明の実施の形態では、吸引器具とポンプを、接続部材を介して接続する例を示したが、これに限らず、接続部材を用いなくてもよい。吸引器具とポンプを直接接続してもよい。例えば、覆部材に設けた通気孔に、ポンプの通気管を直接嵌入(挿入)してもよい。
【0075】
本発明の実施の形態では、皮膚接触部材が第1の溝と第2の溝とを備える例を示したが、これに限らず、第1の溝と第2の溝とのいずれか一方を備えればよい。皮膚接触部材が第2の溝のみを備える場合には、覆部材が開口部の端部の近傍に凸部を備えなくともよく、覆部材に皮膚接触部材が固着されてもよい。
【0076】
本発明の実施の形態では、吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置の構成、使用方法などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。吸引器具および吸引装置の機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、吸引器具、皮膚接触部材および吸引装置に関するものであり、マッサージ用機器などに適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10 吸引装置
11 吸引器具
12 覆部材
121 覆部材の開口部
122 覆部材の開口部の端部
123 覆部材の凸部
13 皮膚接触部材
131 第1の溝
132 第2の溝
133 凹部
14 通気管(通気孔)
15 接続部材
16 ポンプ