(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033249
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240306BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20240306BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01C11/02 322D
B60P3/00 M
A01C11/02 320A
A01C11/02 330B
A01B69/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136740
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】高野 重幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
【テーマコード(参考)】
2B043
2B062
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BB06
2B043EA02
2B043EC13
2B043EC14
2B043ED14
2B062AA02
2B062AA05
2B062AB01
2B062BA18
2B062BA24
2B062CA05
2B062CA16
(57)【要約】
【課題】旋回操作の時期を補助すること。
【解決手段】第1の作業経路(403-2)から第2の作業経路(403-3)に向けて走行する際に、車体(4)を旋回から直進に移行させる直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する報知手段(31a)を備えることで、作業者が直進移行時期になったことを認識することができ、旋回操作の時期を補助することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部に作業機(10)を有する車体(4)と、
直線状の第1の作業経路(403-2)と、前記第1の作業経路(403-2)に対して並行する直線状であり且つ前記作業機(10)の作業幅(L1)に基づく間隔離れて隣り合う第2の作業経路(403-3)と、を有する走行経路(401)に沿って前記車体(4)を走行させる場合に、前記第1の作業経路(403-2)から前記第2の作業経路(403-3)に向けて走行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する報知手段(31a)と、
を備えたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記第1の作業経路(403-2)および前記第2の作業経路(403-3)に加えて、前記第1の作業経路(403-2)の終端(A1)と前記第2の作業経路(403-3)の始端(A2)との間に設定され、前記第1の作業経路(403-2)に交差する直線状の横走り経路(404b)を有する前記走行経路(401)と、
前記第1の作業経路(403-2)から前記横走り経路(404b)に移行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる前記直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する前記報知手段(31a)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記横走り経路(404b)から前記第2の作業経路(403-3)に移行する際に、前記車体(4)を直進から旋回に移行させる旋回移行時期になったことが検知されると、作業者に旋回移行時期を報知する前記報知手段(31a)、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記第1の作業経路(403-2)および前記第2の作業経路(403-3)に加えて、前記第1の作業経路(403-2)の終端(A1)と前記第2の作業経路(403-3)の始端(A2)との間に設定され、前記第1の作業経路(403-2)に交差する直線状の横走り経路(404b)を有する前記走行経路(401)と、
前記横走り経路(404b)から前記第2の作業経路(403-3)に移行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる前記直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する前記報知手段(31a)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記第1の作業経路(403-2)および前記第2の作業経路(403-3)に加えて、前記第1の作業経路(403-2)の終端(A1)と前記第2の作業経路(403-3)の始端(A2)との間に設定された弧状の転回経路(404′)を有する前記走行経路(401)と、
前記弧状の転回経路(404′)から前記第2の作業経路(403-3)に移行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる前記直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する前記報知手段(31a)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
作業者が操作して前記車体(4)を旋回させるハンドル(32)と、
前記ハンドル(32)がきられた場合に、前記作業機(10)を上昇させる作業機制御手段(307)と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記ハンドル(32)の切れ角を検知する切れ角検知手段(303)と、
前記切れ角検知手段(303)で検知された前記ハンドル(32)の現在の操作位置と、前記車体(4)の直進時または旋回時の前記ハンドル(32)の目標位置と、のズレを表示する前記報知手段(31a)と、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
長手方向に延びる枠部(452)と、
前記枠部(452)の長手方向の中央部に表示される直進時の目標位置と、
前記ハンドル(32)の切れ角が大きくなるほど前記枠部(452)の長手方向の端側に表示される旋回時の目標位置であって、前記枠部(452)の短手方向の両端部に配置された五角形状の図形(454a)と、前記五角形状の図形どうしを結ぶ線分(454b)と、を有する画像(454)で表示される前記旋回時の目標位置と、
前記切れ角検知手段(303)で検知された前記ハンドル(32)の切れ角に応じて前記枠部(452)の長手方向に沿って移動する四角形状の画像(455)で表示されると共に、前記切れ角検知手段(303)で検知された前記ハンドル(32)の切れ角が大きくなるほど前記枠部(452)の長手方向の端部に前記四角形状の画像(455)が表示される前記現在の操作位置と、
を備えたことを特徴とする請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記旋回時の目標位置は、作業者の入力に応じて設定可能である
ことを特徴とする請求項8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記現在の操作位置と前記目標位置とのズレが、予め定められた範囲内の場合と範囲外の場合とで、表示する色を異ならせる
ことを特徴とする請求項7に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機、耕うん機、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機やトラクタ等の作業車両において、直線状の作業経路に沿って作業した後、次の作業経路に移行する際に、ハンドルが切られると植付部を上昇させ、ハンドル切れ角が所定範囲内になると植付部が下降される技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ハンドル操作に連動して作業機が昇降しているが、ハンドル操作、特に、ハンドルを切るタイミングや旋回から直進にハンドルを戻すタイミングを誤ると、作業機が昇降するタイミングがズレ、作業が行われる位置がずれる問題がある。
図13は大型の作業機を備えた作業機がUターンした場合の問題点の説明図である。
図13において、特に、条数の多い田植え機や、作業幅(横幅)の大きな作業機01を使用する場合、隣接する直線状の作業経路02,03どうしの間隔も広くなる。すなわち、旋回する際に、U字状の転回経路04に沿って走行してしまうと(いわゆる、Uターンしてしまうと)、早く回りすぎてしまい、次の作業経路03に一致せず、作業幅も重複する領域06が発生する問題がある。なお、作業経路02,03の間隔に合わせて旋回半径を大きくすることも考えられるが、この場合、畔際の作業がされない領域が広くなってしまい、作業性が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、旋回操作の時期を補助することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、後部に作業機(10)を有する車体(4)と、直線状の第1の作業経路(403-2)と、前記第1の作業経路(403-2)に対して並行する直線状であり且つ前記作業機(10)の作業幅(L1)に基づく間隔離れて隣り合う第2の作業経路(403-3)と、を有する走行経路(401)に沿って前記車体(4)を走行させる場合に、前記第1の作業経路(403-2)から前記第2の作業経路(403-3)に向けて走行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する報知手段(31a)と、を備えたことを特徴とする作業車両である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記第1の作業経路(403-2)および前記第2の作業経路(403-3)に加えて、前記第1の作業経路(403-2)の終端(A1)と前記第2の作業経路(403-3)の始端(A2)との間に設定され、前記第1の作業経路(403-2)に交差する直線状の横走り経路(404b)を有する前記走行経路(401)と、前記第1の作業経路(403-2)から前記横走り経路(404b)に移行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる前記直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する前記報知手段(31a)と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記横走り経路(404b)から前記第2の作業経路(403-3)に移行する際に、前記車体(4)を直進から旋回に移行させる旋回移行時期になったことが検知されると、作業者に旋回移行時期を報知する前記報知手段(31a)、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記第1の作業経路(403-2)および前記第2の作業経路(403-3)に加えて、前記第1の作業経路(403-2)の終端(A1)と前記第2の作業経路(403-3)の始端(A2)との間に設定され、前記第1の作業経路(403-2)に交差する直線状の横走り経路(404b)を有する前記走行経路(401)と、前記横走り経路(404b)から前記第2の作業経路(403-3)に移行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる前記直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する前記報知手段(31a)と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記第1の作業経路(403-2)および前記第2の作業経路(403-3)に加えて、前記第1の作業経路(403-2)の終端(A1)と前記第2の作業経路(403-3)の始端(A2)との間に設定された弧状の転回経路(404′)を有する前記走行経路(401)と、前記弧状の転回経路(404′)から前記第2の作業経路(403-3)に移行する際に、前記車体(4)を旋回から直進に移行させる前記直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知する前記報知手段(31a)と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、作業者が操作して前記車体(4)を旋回させるハンドル(32)と、前記ハンドル(32)がきられた場合に、前記作業機(10)を上昇させる作業機制御手段(307)と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の作業車両である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記ハンドル(32)の切れ角を検知する切れ角検知手段(303)と、前記切れ角検知手段(303)で検知された前記ハンドル(32)の現在の操作位置と、前記車体(4)の直進時または旋回時の前記ハンドル(32)の目標位置と、のズレを表示する前記報知手段(31a)と、を備えたことを特徴とする請求項6に記載の作業車両である。
【0013】
請求項8に記載の発明は、長手方向に延びる枠部(452)と、前記枠部(452)の長手方向の中央部に表示される直進時の目標位置と、前記ハンドル(32)の切れ角が大きくなるほど前記枠部(452)の長手方向の端側に表示される旋回時の目標位置であって、前記枠部(452)の短手方向の両端部に配置された五角形状の図形(454a)と、前記五角形状の図形どうしを結ぶ線分(454b)と、を有する画像(454)で表示される前記旋回時の目標位置と、前記切れ角検知手段(303)で検知された前記ハンドル(32)の切れ角に応じて前記枠部(452)の長手方向に沿って移動する四角形状の画像(455)で表示されると共に、前記切れ角検知手段(303)で検知された前記ハンドル(32)の切れ角が大きくなるほど前記枠部(452)の長手方向の端部に前記四角形状の画像(455)が表示される前記現在の操作位置と、を備えたことを特徴とする請求項7に記載の作業車両である。
【0014】
請求項9に記載の発明は、前記旋回時の目標位置は、作業者の入力に応じて設定可能であることを特徴とする請求項8に記載の作業車両である。
【0015】
請求項10に記載の発明は、前記現在の操作位置と前記目標位置とのズレが、予め定められた範囲内の場合と範囲外の場合とで、表示する色を異ならせることを特徴とする請求項7に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、第1の作業経路(403-2)から第2の作業経路(403-3)に向けて走行する際に、車体(4)を旋回から直進に移行させる直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知することで、作業者が直進移行時期になったことを認識することができ、旋回操作の時期を補助することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1の作業経路(403-2)から横走り経路(404b)に移行する際に、車体(4)を旋回から直進に移行させる直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知することで、横走り経路(404b)にスムーズ且つ適切なタイミングで移行できる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、横走り経路(404b)から第2の作業経路(403-3)に移行する際に、車体(4)を直進から旋回に移行させる旋回移行時期になったことが検知されると、作業者に旋回移行時期を報知することで、横走り経路(404b)からスムーズ且つ適切なタイミングで旋回を開始することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、横走り経路(404b)から第2の作業経路(403-3)に移行する際に、車体(4)を旋回から直進に移行させる直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知することで、第2の作業経路(403-3)にスムーズ且つ適切なタイミングで移行できる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、弧状の転回経路(404′)から第2の作業経路(403-3)に移行する際に、車体(4)を旋回から直進に移行させる直進移行時期になったことが検知されると、作業者に直進移行時期を報知することで、弧状の転回経路(404′)から第2の作業経路(403-3)にスムーズ且つ適切なタイミングで移行できる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、旋回の開始に連動して作業機を上昇させることができ、作業機が上昇されない場合に比べて、圃場の荒れが抑制される。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明の効果に加えて、ハンドル(32)の現在の操作位置とハンドル(32)の目標位置とのズレを表示することで、作業者が操作の目標を認識しやすくなっている。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の発明の効果に加えて、目標位置を表示する画像(454)と現在の操作位置を表示する画像(455)とのずれに応じて、作業者の操作の目標を認識しやすくなっている。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、請求項8記載の発明の効果に加えて、旋回時の目標位置を作業者の入力に応じて設定することで、圃場の状況や作業者の好みに応じて設定を変更できる。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、請求項7記載の発明の効果に加えて、操作位置と目標位置とのズレが、予め定められた範囲内の場合と範囲外の場合とで、表示する色を異ならせることで、目標位置とのずれが範囲内であるか否かを作業者が認識しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は実施の形態の苗移植機の側面図である。
【
図4】
図4は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は実施の形態の作業経路の一例であって、
図5(A)は作業経路の全体説明図、
図5(B)は作業経路の要部拡大図である。
【
図6】
図6は実施の形態の旋回時のハンドル目標位置(ガイド角)の設定画像の一例である。
【
図7】
図7は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図7(A)は旋回移行時期になった直後の旋回開始前の直進状態の報知画像の図、
図7(B)は
図7(A)の状態からハンドルが少し切られた状態の報知画像の図である。
【
図8】
図8は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図8(A)は旋回時にハンドルが目標位置に操作された状態の図、
図8(B)は目標位置を超えて操作された状態の図である。
【
図9】
図9は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図9(A)は
図8(A)の目標位置の許容範囲内且つ目標位置に達していない状態の図、
図9(B)は
図8(A)の目標位置の許容範囲内且つ目標位置を超えた状態の図である。
【
図10】
図10は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、目標位置を作業者が手動で設定して
図7の場合よりも目標位置の値が小さい場合の説明図である。
【
図11】
図11は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図11(A)は直進移行時期になった直後でハンドルが直進状態(中立位置)に戻される前の状態の報知画像の図、
図11(B)は直進移行時期の報知画像の別の例の図である。
【
図13】
図13は大型の作業機を備えた作業機がUターンした場合の問題点の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施の形態を、以下に説明する。
図1は実施の形態の苗移植機の側面図である。
図2は苗移植機の正面図である。
図3は苗移植機の平面図である。
【0028】
本発明の実施の形態の作業車両の一例としての苗移植機は、高床乗用走行形態の車体4の後側に、リフトシリンダ(図示せず)の油圧伸縮によって昇降回動される平行リンク形態のリフトリンク機構11を介して、作業機の一例であり、多条植機体の苗植付部10が装着されている。この苗植付部10は、前記リフトリンク機構11に連結する苗移植機体5の下側部に、土壌面を滑走均平するセンタフロートや、サイドフロート等の複数のフロート6を配置している。苗移植機体5は、伝動ケースを主体として、この上部の多数枚のマット苗を敷き並べて、後端下りの傾斜面に沿って繰出案内して、この後下端部に形成の苗取出口7へ繰出する苗タンク8と、この苗取出口7に繰出されたマット苗を分離保持して下方の均平土壌面へ挿込む植付爪を、側面視楕円形状の植付軌跡線に沿って作動させる植付装置9等を配置して、多条植形態の苗植付作動を行わせる。
【0029】
前記車体4の運転席1の下部には、エンジンカバー29下にエンジン(内燃機関)30を搭載し、この運転席1の前方部にステアリングボード31、及びステアリングハンドル32、その他苗移植機運転操作のための操作機構33等が配置されている。ステアリングボード31には、表示部の一例としての液晶モニタや入力部の一例としての各種ボタンやツマミ等が配置されている。また、ステアリングボード31の前方上部には、表示部の一例であって報知手段の一例としてのハイマウントモニタ31aが設置されている。
前記運転席1、ステアリングボード31、及びこれらの間のセンタフロア34等の左右両側部には、車体4の前端部から後端部上のリアフェンダ24に亘って一連に長く、かつ横幅広く形成のサイドフロア2が構成されている。運転者や、補助作業者は、このサイドフロア2上面を前後移動して、マット苗補給作業や、肥料補給作業等を行い易くなっている。
【0030】
前記図例の苗移植機では、苗植条数を八条植形態として、横幅の広い規格に設定しているため、前記サイドフロア2の外側に沿って適宜幅のサブフロア35を増設して、前記苗植付部10の幅域に対応させている。なお、サブフロア35を設けない構成とすることも可能である。このサブフロア35の前端部上には、車体4の横側から立設の支持フレーム36上に複数段の補助苗棚26を設けて、後側の苗タンク8へ補給するための、マット苗を積込収容しておくことができる。このサブフロア35の外側部に運転者乗降用のステップ37を設ける。
また、サブフロア35の側方には、左右一対の線引きマーカ41が配置されている。線引きマーカ41は、左右の内、苗が未植付の側の線引きマーカ41が展開されて、圃場の表層に走行の基準となる線を引く。
【0031】
前記運転席1の後側部には、サイドフロア2の後端部に亘って横幅広く段高形態のリアフロア3を構成し、このリアフロア3の前端縁は、サイドフロア2の後端縁に前下り傾斜の傾斜板38で連結して、足元移行の行い易い形態としている。この傾斜板38の下端部には、短い操作レバー機構39を配置して、運転席1からの操作を行い易くしている。このリアフロア3の上方位置には、後側縁上に沿う後辺部50と、左右側縁上に沿う側辺部51とによって、コ字状形態に囲うガードレール52を構成し、リアフロア3上で運転者が補給作業するときの作業姿勢を安全に維持できる。
【0032】
前記車体4の後輪27の上方部には、リアフェンダ24が構成されていて、このリアフェンダ24の上側に前記リアフロア3の左右側端部を構成している。前輪40、後輪27は、サイドフロア2、及びリアフロア3の横幅内部域に配置されるが、特に後輪27トレッドの広い形態によっては、このリアフロア3の幅域から外側へ張出す形態となることがある。このため、リアフェンダ24は、リアフロア3の外側端よりも外側へ幅広く張出す形態に構成することも可能であり、又、前記リアフロア3自体の下面をリアフェンダ24として共用する形態とすることも可能である。
【0033】
前記車体4の後側部には、土壌面を滑走して苗移植機体5を支持するフロート6と、マット苗を受けて後側下部の苗取出口7へ繰出す苗タンク8と、この苗取出口7に繰出されたマット苗を分離保持して前記フロート6による均平土壌面に植付ける植付装置9とからなる苗植付部10が、昇降可能のリフトリンク機構11を介して装着されている。前記リアフロア3の外側部に前後方向に沿って複数基の施肥装置12が配置されている。
【0034】
苗移植機による苗植作業時には、苗植付部10が下降した状態で、各フロート6で均平した土壌面に植付装置9が作動して、苗タンク8の苗取出口7に繰出したマット苗を適数本に分離しながら保持して、均平土壌面に一定深さに植付ける。各植付装置9による植付部に施肥を行うときは、予め施肥ホッパ19に供給していた粒状肥料が繰出装置15によって繰出口部に繰り出されて、ブロア13からリアフロア3下側のダクト14を経て送風される送風力によって、各施肥条毎の施肥ホース25を経て各フロート6によって均平された植付土壌面の植付近傍位置に施肥が行われる。
【0035】
苗植付部10を上昇させる時の苗タンク8の上端部を、このリアフロア3の上方位置へ接近させるように上昇させることができ、リアフロア3面上からの作業者によるマット苗の補給作業を行い易くすることができ、迅速で、的確な苗補給を行うことができる。
【0036】
また、前記リアフロア3の左右両側端部を、リアフェンダ24として構成するか、または、リアフェンダ24の上側部に構成し、このリアフェンダ24の上方位置に前記複数基の施肥装置12を配置する。
【0037】
前記運転席1横側のサイドフロア2の後端部に形成されるリアフロア3の左右両側端部は、高床形態の車体4の後輪27上側部を覆うリアフェンダ24の上方位置に配置されるため、前記のように苗タンク8に対するマット苗補給作業時の踏付移動の邪魔になり難く、このサイドフロア2後側位置のリアフロア3の横端部の足元域を広く形成して、後方側苗タンク8に対する苗補給作業や、横側の施肥ホッパ19に対する肥料補給作業等を容易に行わせることができる。
【0038】
(苗移植機の制御部の説明)
図4は実施の形態の制御部の機能ブロック図である。
実施の形態の苗移植機は、各機能を制御する制御部300を有する。制御部300は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部300は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部300は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部300は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施の形態の制御部300は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部300は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0039】
制御部300には、入力部の一例であって表示部の一例であり、タッチパネルで構成されたハイマウントモニタ31aや、切れ角センサSN1、後輪回転センサSN2、その他の図示しない各種センサ等の信号入力要素からの信号が入力される。
【0040】
制御部300は、被制御要素の一例としてのリフトシリンダや植え付けクラッチ等に制御信号を送信して、苗植付部10の昇降や、苗植付部10の作動/停止を制御可能である。
また、制御部300は、表示部の一例としての液晶モニタやハイマウントモニタ31aに制御信号を出力して、作業情報や作業状況を表示可能である。
【0041】
図5は実施の形態の作業経路の一例であって、
図5(A)は作業経路の全体説明図、
図5(B)は作業経路の要部拡大図である。
実施の形態の制御部300は、以下の機能手段(プログラムモジュール)を有する。
作業経路記憶手段301は、走行経路401を記憶する。
図5において、実施の形態の作業経路記憶手段301は、圃場402内で作業や転回等を行う経路である走行経路401が予め記憶されている。実施の形態の走行経路401は、作業開始位置401aと作業終了位置401bや、作業が行われる作業経路403と、作業経路403どうしの間を結ぶ接続経路404と、を有する。作業経路403は、圃場402のいずれかの外縁に平行且つ互いに並行して延びる複数の直線状の作業経路403-1,403-2,403-3,…を有する。隣り合う作業経路403どうしの間隔は、作業機である苗植付部10の作業幅L1に基づいて、作業幅L1が重複せず且つ隣接する間隔に設定されている。
【0042】
実施の形態の接続経路404は、前側の作業経路403(第1の作業経路の一例、
図5(B)では403-2)の終端A1に接続された弧状の前旋回経路404aと、前旋回経路404aの終端B1に接続された直線状の横走り経路404bと、横走り経路404bの終端B2と次の作業経路403(第2の作業経路の一例、
図5(B)では403-3)の始端A2に接続された弧状の後旋回経路404cと、を有する。従って、
図5に示す例では、接続経路404は、弧状に湾曲するU字型ではなく、横走り経路404bと前後の旋回経路404a,404cとを有するコの字型の経路で構成されている。
【0043】
走行経路401は、圃場402の形状と作業機である苗植付部10の作業幅とに基づいて、自動的に計算、設定することも可能であるし、作業者が手動で設定することも可能である。したがって、条数の多い苗移植機では、横走り経路404bが長くなりやすく、条数の少ない苗移植機では横走り経路404bが短くなりやすい。また、条間の狭い機種に比べて条間の広い機種の方が横走り経路404bが長くなりやすい。他にも、前輪40と後輪27の間隔(ホイールベース)によって最小旋回半径が異なるため、ホイールベースによって横走り経路404bの長さも異なる。
また、走行経路401は、苗移植機の外部の情報処理装置(コンピュータ装置)で自動的に計算した情報を、苗移植機に記憶媒体や、有線通信、無線通信等を介して記憶させることも可能であるし、苗移植機の制御部300で計算させることも可能である。
【0044】
図6は実施の形態の旋回時のハンドル目標位置(ガイド角)の設定画像の一例である。
旋回時のハンドル目標位置の記憶手段の一例としての旋回角記憶手段302は、前旋回経路404aや後旋回経路404cを走行する際の旋回角、すなわち、ステアリングハンドル32の目標位置(操作量の目標値)の設定情報を記憶する。旋回角は、予め標準値(デフォルト値)が設定されているが、作業者が圃場の状態(深さや土の軟らかさ、水の量等)や作業者の好みに応じて、手動で設定、変更することも可能である。
図6において、実施の形態の苗移植機では、ステアリングボード31の液晶パネル(表示部、図示せず)に設定画像411を表示して、ステアリングボード31の入力ボタンや操作つまみ(図示せず)を操作して、旋回角(ガイド角)を手動で設定可能である。
【0045】
切れ角検知手段303は、切れ角センサSN1の検知結果に基づいて、ステアリングハンドル32の現在の操作位置、いわゆる切れ角を検知する。
【0046】
後輪回転量演算手段304は、後輪回転センサSN2の検知結果に基づいて、後輪27の回転量を演算する。実施の形態では、走行経路401の走行時に、後輪27の回転量を演算することで、車体4の走行距離を導出する。したがって、作業経路403の始端A2からの走行距離と作業経路403の全長とを比較することで、作業経路403の終端A1に到達したことを判別可能である。また、前旋回経路404aの始端(作業経路403の終端A1)からの走行距離と切れ角とから、前旋回経路404aの終端B1に到達したことも判別可能である。横走り経路404bや後旋回経路404cについても同様である。
【0047】
なお、実施の形態の苗移植機では、前輪40が駆動輪、後輪27が従動輪であり、後輪27の回転に基づいて、走行距離を導出している。駆動輪は、土壌が軟らかい状況で走行する際にスリップすることがあり、駆動輪の回転量と実際の走行距離にずれが発生する恐れがある。これに対して、従動輪ではスリップによるずれが発生しにくく走行距離導出の誤差が少ない。よって、実施の形態では、従動輪である後輪27で走行距離を導出している。なお、圃場の状況によっては、駆動輪で走行距離を導出することも可能であるし、四輪駆動の場合はどの車輪の回転量に基づいて走行距離を導出することも可能である。
【0048】
ハンドル操作時期判別手段305は、旋回移行時期判別手段305aと直進移行時期判別手段305bとを有し、ステアリングハンドル32の操作時期の判別を行う。すなわち、ステアリングハンドル32を直進状態(中立位置)からハンドルを切る時期である旋回移行時期や、ステアリングハンドル32を切った状態から直進状態(中立位置)に戻す時期である直進移行時期を判別する。
【0049】
旋回移行時期判別手段305aは、後輪回転量演算手段304での検出結果に基づいて、旋回移行時期になったか否かを判別する。実施の形態では、直線状の作業経路403や横走り経路404bを走行時に、後輪回転量演算手段304で演算された走行距離と走行中の経路の長さとから、作業経路403の終端A1や横走り経路404bの終端B2に到達した場合に、旋回移行時期になったと判別する。
【0050】
直進移行時期判別手段305bは、後輪回転量演算手段304での検出結果に基づいて、直進移行時期になったか否かを判別する。実施の形態では、弧状(非直線状)の前旋回経路404aや後旋回経路404cを走行時に、後輪回転量演算手段304で演算された走行距離や切れ角と走行中の経路の長さとから、前旋回経路404aの終端B1や後旋回経路404cの終端(次の作業経路403の始端A2)に到達した場合に、直進移行時期になったと判別する。
【0051】
なお、実施の形態では、終端A1,B2に到達した場合に旋回移行時期になったと判別し、終端B1や始端A2へ到達した場合を直進移行時期になったと判別することを例示したが、これに限定されない。操作に対する時間的な猶予を考慮して、終端A1,B2から所定距離手前の位置への到達時を旋回移行時期としたり、終端B1や始端A2から所定距離手前の位置への到達時を直進移行時期とすることも可能である。手前の位置については、標準値を予め定めることも可能であるし、作業者が手動で変更することも可能である。また、手前の位置は、具体的な距離、長さで設定することも可能であるし、後輪27の回転量の値で設定することも可能である。
【0052】
また、実施の形態では走行距離から直進移行時期や旋回移行時期の検出を行う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、車体4の方位を検出するセンサを搭載しておき、作業経路403の終端A1の方位から90°方位が変わると横走り経路404bへの直進移行時期になったと検出したり、作業経路403の終端A1の方位から180°方位が変わると後旋回経路404cから次の作業経路403への直進移行時期になったと判別することも可能である。
【0053】
図7は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図7(A)は旋回移行時期になった直後の旋回開始前の直進状態の報知画像の図、
図7(B)は
図7(A)の状態からハンドルが少し切られた状態の報知画像の図である。
図8は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図8(A)は旋回時にハンドルが目標位置に操作された状態の図、
図8(B)は目標位置を超えて操作された状態の図である。
図9は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図9(A)は
図8(A)の目標位置の許容範囲内且つ目標位置に達していない状態の図、
図9(B)は
図8(A)の目標位置の許容範囲内且つ目標位置を超えた状態の図である。
【0054】
報知制御手段の一例としての表示制御手段306は、車体4の走行経路401の走行時に、走行経路401を案内する画像、映像をハイマウントモニタ31aに表示する。
図7~
図9において、実施の形態の表示制御手段306は、旋回移行時期になったことが検知(判別)されると、作業者に旋回移行時期を報知する画像である操舵ガイド画像451をハイマウントモニタ31aに表示する。実施の形態の操舵ガイド画像451では、横長の四角状の枠部452を有する。枠部452の長手方向の中央部には、中立位置を表示する中立バー453が表示される。枠部452には、旋回時のステアリングハンドル32の目標位置に応じて、目標位置を表示する目標位置画像454が表示される。実施の形態の目標位置画像454は、ステアリングハンドル32の目標位置である切れ角が大きくなるほど長手方向の外側に表示される。
【0055】
また、実施の形態の目標位置画像454は、枠部452の短手方向(上下方向)の両端部に配置された五角形状の図形である目標マーカ454aと、目標マーカ454aどうしを結ぶ線分である目標バー454bとを有する。
また、枠部452の内部には、ステアリングハンドル32の現在の操作位置に応じて、操作位置を表示する現在位置画像455が表示される。実施の形態の現在位置画像455は、四角形状の画像で構成されている。また、現在位置画像455は、切れ角検知手段303で検知されたステアリングハンドル32の切れ角に応じてハイマウントモニタ31aの長手方向に沿って移動する。
【0056】
また、実施の形態の操舵ガイド画像451では、
図7や
図8(B)のようにステアリングハンドル32の現在位置が目標位置の許容範囲に達していない場合は、枠部452が白抜きで表示され、
図8(A)や
図9に示すように、ステアリングハンドル32の現在位置が目標位置や目標位置の許容範囲内である場合は、枠部452の色が変化する。すなわち、ステアリングハンドル32の操作位置と目標位置とのズレが、予め定められた許容範囲内の場合と許容範囲外の場合とで、表示する色を異ならせている。
【0057】
図10は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、目標位置を作業者が手動で設定して
図7の場合よりも目標位置の値が小さい場合の説明図である。
なお、設定画像411で旋回角(ガイド角)が手動で設定された場合、
図10に示すように、設定された旋回角に応じて目標位置画像454の位置が変化する。
【0058】
図11は実施の形態の報知画像の一例の説明図であり、
図11(A)は直進移行時期になった直後でハンドルが直進状態(中立位置)に戻される前の状態の報知画像の図、
図11(B)は直進移行時期の報知画像の別の例の図である。
また、直進移行時期になったことが検知(判別)されると、作業者に直進移行時期を報知する画像である操舵ガイド画像451′がハイマウントモニタ31aに表示される。
図11(A)において、実施の形態の操舵ガイド画像451′では、中立バー453に重なるように目標位置画像454が表示される。
なお、
図11(B)に示すように、目標の位置が中立位置であることを目立ちやすくするために、中立バー453の長手方向(左右方向)両側を挟むように目標位置画像454を表示することも可能である。このとき、目標位置の許容範囲に応じて、目標位置画像454を配置すると許容範囲も視認しやすくなる。
【0059】
したがって、操舵ガイド画像451を見た作業者は、ステアリングハンドル32の現在の操作位置と、車体4の直進時または旋回時のステアリングハンドル32の目標位置と、のズレを、現在位置画像455と目標位置画像454とのずれで確認することが可能である。
なお、報知方法として、実施の形態ではハイマウントモニタ31aへの操舵ガイド画像451,451′の目標位置画像454の表示で、直進移行時期や旋回移行時期であることを報知することを例示したがこれに限定されない。例えば、音声案内で報知したり、ランプの点灯、点滅、色を変えて報知したり、ブザーを鳴らしたり、鳴らす音の種類を変えたり、鳴らす間隔、周期を変えたりして報知する等、任意の報知方法を採用可能である。
【0060】
作業機制御手段の一例としてのオートリフト制御手段307は、作業機である苗植付部10の昇降であるオートリフトを制御する。実施の形態のオートリフト制御手段307は、作業経路403の終端A1に到達後、ステアリングハンドル32が切られると(予め定められた切れ角以上操作されると)、苗植付部10を上昇させる。また、オートリフト制御手段307は、後旋回経路404cの終端(次の作業経路403の始端A2)に到達すると、苗植付部10を下降させる。
【0061】
作業機の作動制御手段の一例としての植付クラッチ制御手段308は、苗植付部10の伝動切替装置である植付クラッチの入切を制御して、苗植付部10の作動または停止を制御する。実施の形態の植付クラッチ制御手段308は、作業経路403の終端A1に到達すると、植付クラッチを切にして苗植付部10の作動を停止させる。また、植付クラッチ制御手段308は、後旋回経路404cの終端(次の作業経路403の始端A2)に到達すると、植付クラッチを入にして苗植付部10の作動させる。なお、後旋回経路404cの終端(次の作業経路403の始端A2)に到達時に、苗植付部10が下降中に作動を開始すると植付が安定しないため、苗植付部10の完了した状態、すなわち、後旋回経路404cの終端(次の作業経路403の始端A2)に到達後、所定時間経過後に、植付クラッチを入にする制御とすることが好適である。
【0062】
前記構成を備えた実施の形態の苗移植機では、作業者が圃場402内を走行経路401に沿って作業しながら走行する場合に、ハイマウントモニタ31aに表示された操舵ガイド画像451,451′の案内に沿って、ステアリングハンドル32の操舵操作を行うことで、走行経路401に沿って走行可能である。実施の形態では、旋回移行時期や直進移行時期になったことが検出されると、ステアリングハンドル32の目標位置に応じた目標位置画像454が表示される。そして、作業者は現在位置画像455が目標位置画像454に合わせるようにステアリングハンドル32を操作するだけで、適切な時期に適切な操作量の操作を促すことが可能で、走行経路401に沿った走行が可能である。したがって、実施の形態の苗移植機では、操舵ガイド画像451,451′で、旋回操作(操舵操作)の時期を適切に補助することが可能である。
【0063】
また、実施の形態では、現在位置が目標位置に対して許容範囲内になると、操舵ガイド画像451,451′の色が変わるため、作業者が目標位置に到達しているのか認識しやすくなっている。
【0064】
図12は接続経路がU字状の場合の説明図である。
なお、実施の形態では、接続経路404がコの字型の経路の場合を例示したが、これに限定されない。
図12に示すように、作業機の作業幅L1が干渉しないように、U字状の接続経路である転回経路404′が設定される構成にも適用可能である。したがって、転回経路404′の始端(第1の作業経路403-2の終端A1)になると旋回移行時期になったと検出されて、
図7と同様の操舵ガイド画像451が表示される。また、転回経路404′の終端(第2の作業経路403-3の始端A2)になると直進移行時期になったと検出されて、
図11と同様の操舵ガイド画像451′が表示される。
【0065】
なお、実施の形態では、走行経路401で旋回方向が予め定められている構成を例示したが、これに限定されない。走行経路401が定められていない構成にも適用可能である。この場合、切れ角から直進走行が検出されていると、作業経路403を走行中と判別し、ステアリングハンドル32が所定値以上切られると旋回が開始されたと判別して苗植付部10を上昇させ、方位が180°変化すると直進移行時期になった(次の作業経路403に到達した)と検出することが可能である。そして、旋回が開始されると、旋回角記憶手段302で記憶された旋回角に応じて目標位置画像454を表示する。このとき、切れ角から、右旋回か左旋回かを判別し、右旋回であれば、目標位置画像454を枠部452の右側に表示し、左旋回であれば目標位置画像454を枠部452の左側に表示することが可能である。なお、旋回角は、苗移植機の条数、条間に応じて設定することが望ましい。
【0066】
なお、右旋回時には案内を行うが、左旋回時には案内を行わないといったように、特定の状況のみ操舵ガイド画像451,451′を表示して案内を行う構成とすることも可能である。右旋回、左旋回の設定は、作業者が好みに応じて設定、変更可能とすることが好適である。
【0067】
さらに、苗移植機において、走行の基準となる線引きマーカ41は、苗植付部10の昇降や植付クラッチの入切に連動して、線引きマーカ41の収納/展開を行う構成とすることが可能である。線引きマーカ41は、車体4が旋回、転回する度に左右交互に展開させるが、走行経路401から旋回方向が予め定まっている場合は、旋回方向に合わせて左右の線引きマーカ41を交互に展開させる。また、右旋回や左旋回を検出、判別する場合は、右旋回または左旋回に対応させて、左右の線引きマーカ41のどちらを展開させるかを判別することが可能である。そして、一度、右旋回または左旋回を判別した場合、休憩等で苗移植機のエンジンを停止した後でも、次回以降の線引きマーカ41の展開は、前回の旋回方向と同様の旋回方向とみなして線引きマーカ41を展開させることが可能である。
【0068】
また、実施の形態において、操舵ガイド画像451,451′での案内は常時行う構成とする場合に限定されない。例えば、スイッチやレバー操作等で、案内を行う/行わない、を切り替えることも可能である。他にも、苗移植機が特定のモードで動作することが設定されている場合にのみ案内を行うという構成とすることが可能である。よって、特定のモードがキャンセルになると、操舵ガイド画像451,451′の表示を停止する構成とすることも可能である。
【0069】
前述の案内を行う/行わないの切替は、例えば、切り替えボタンを押す度に、入り→切り→入り→切り→…といった遷移を行う構成とすることが可能である。また、前述の右旋回と左旋回のいずれかのみ案内を行うかどうかの切り替えも、両方切り→両方入り→左旋回のみ→右旋回のみ→両方切り→両方入り→…といった遷移とすることも可能である。この切替は、切り替えボタンに限定されず、ハイマウントモニタ31aへの入力等で行うことも可能である。
【0070】
また、実施の形態では、操舵ガイド画像451,451′での案内を行う構成を例示したがこれに限定されない。例えば、直進距離の長い作業経路403を走行中は、終端A1に近づくまでは、操舵ガイド画像451,451′の表示を停止するといった構成とすることも可能である。他にも、作業経路403、前旋回経路404a、横走り経路404b、後旋回経路404cのそれぞれに対して、どの経路を走行中は案内を行い、どの経路を走行中は案内を行わない、を個別に切り替え可能な構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の作業車両は、苗移植機に限定されず、トラクタや薬液散布車両等、各種作業用車両にも適用できる。なお、作業機としては、苗植付装置に限定されず、耕うん機や整地機、播種機等の任意の作業機に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
4…車体、
10…作業機、
31a…報知手段、
32…ハンドル、
303…切れ角検知手段、
307…作業機制御手段、
401…走行経路、
403-2…第1の作業経路、
403-3…第2の作業経路、
404b…横走り経路、
404′…転回経路、
452…枠部、
454a…五角形状の図形、
454b…線分、
454…目標位置を表示する画像、
455…四角形状の画像、
A1…終端、
A2…始端、
L1…作業幅。