(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033252
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】粒状大豆たん白加工食品及び粒状大豆たん白加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/16 20060101AFI20240306BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240306BHJP
【FI】
A23J3/16
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136743
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中本 知里
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 暁
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 真一
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LB24
4B020LC04
4B020LG04
4B020LK04
4B020LK05
4B020LK07
4B020LK20
4B020LP03
4B020LP15
4B020LP27
(57)【要約】
【課題】
所定の弾力を有しつつ、かつ同時に製造適性の良好な粒状大豆たん白加工食品及びその製造方法を提供する。さらに詳しくは、粒状大豆たん白加工食品の噛み応えが加工食品全体にわたって均一で、かつ該加工食品が肉のようなしなやかさを有しており、さらには製造時に該加工食品同士が結着せず滞りなく製造することが可能な粒状大豆たん白加工食品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
粒状大豆たん白加工食品であって、ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を含有し、該加工食品全体重量中、ゼラチンを1.5~6.0重量%含有することを特徴とする粒状大豆たん白加工食品により上記課題を解決する。好ましくは、最大応力が580~1,700g、最大応力に達するまでの時間が3.0~4.5秒である粒状大豆たん白加工食品である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状大豆たん白加工食品であって、ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を含有し、該加工食品全体重量中、ゼラチンを1.5~6.0重量%含有することを特徴とする粒状大豆たん白加工食品。
【請求項2】
最大応力が580~1,700g、最大応力に達するまでの時間が3.0~4.5秒である請求項1記載の粒状大豆たん白加工食品。
【請求項3】
下記(1)、(2)工程を順次備えることを特徴とする粒状大豆たん白加工食品の製造方法。
(1)ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を調製する工程
(2)粒状大豆たん白に前記乳化物を浸透させる工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の弾力を有しつつ、かつ同時に製造適性の良好な粒状大豆たん白加工食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水性を有する乾燥粒状大豆たん白中に、ハイドロコロイド、油脂、及び水分によるO/W型エマルジョンを封入した食感改良用乳化組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。該食感改良用乳化組成物は、例えば、餃子やハンバーグの具材生地に加えて冷凍加工食品とすることで、加熱して喫食する際に作りたてと変わらないジューシーな食味を与えることができるものである。また、該食感改良用乳化組成物は、該組成物をそのまま喫食するのではなく、畜肉や野菜を使用する食品に添加することを想定した食感改良剤であった。さらに、弾力などの食感に関する記載はなく、示唆もされていない。
【0003】
他に、粒状大豆たん白のような大豆たん白製品を、O/W型エマルジョンで処理することで、大豆たん白特有の青臭み、キナコ臭等の不快臭をマスキングする大豆たん白食品が知られている。さらに、該O/W型エマルジョンの油脂分によって粘性を付与することで、パサツキを防止し、かつ水くささを解消する大豆たん白食品が知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、該大豆たん白食品は、さらに、O/W型エマルジョンを作成するに際して天然ガム、キサンタンガム、アラビアガム等の高分子多糖類を添加すれば、エマルジョンの界面が保護されてより強固なエマルジョンを作成することができることも記載されている。しかしながら、該大豆たん白食品の食感には言及されておらず、示唆もされていない。
【0004】
さらに、乾燥粒状大豆たん白にカードランの水分散液を吸収させ、ついでこれを加熱してなる加熱加工食品が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、該加熱加工食品の弾力性は物足りないところがあり改良の余地があった。さらに、製造の際、個々の加熱加工食品同士が結着して無用な人手や時間を要し製造適性の点では問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-118号公報
【特許文献2】特開平04-207158号公報
【特許文献3】特開平06-90686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、所定の弾力を有しつつ、かつ同時に製造適性の良好な粒状大豆たん白加工食品及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
さらに詳しくは、粒状大豆たん白加工食品の噛み応えが加工食品全体にわたって均一で、かつ該加工食品が肉のようなしなやかさを有しており、さらには製造時に該加工食品同士が結着せず滞りなく製造することが可能な粒状大豆たん白加工食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粒状大豆たん白加工食品であって、ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を含有し、該加工食品全体重量中、ゼラチンを1.5~6.0重量%含有することを特徴とする粒状大豆たん白加工食品により上記目的を達成する。
【0009】
好ましくは、最大応力が580~1,700g、最大応力に達するまでの時間が3.0~4.5秒である。
【0010】
さらに、下記(1)、(2)工程を順次備えることを特徴とする粒状大豆たん白加工食品の製造方法により上記目的を達成する。
(1)ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を調製する工程
(2)粒状大豆たん白に前記乳化物を浸透させる工程
【0011】
すなわち、本発明者らは、粒状大豆たん白加工食品において肉のような弾力を実現するために、ゲル化剤や増粘剤について検討したところ、粒状大豆たん白にゲル化剤や増粘剤をそのまま浸透させると弾力は付与された。しかし弾力が付与された部分が不均一に分布することから肉様とは言い難かった。さらに、製造の際個々の加工食品同士が結着し、結着した加工食品を解すなどの人手や余分な時間を要することとなり、製造適性に問題があることが判明した。
【0012】
そこで、さらに鋭意検討した結果、ゼラチンを、ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物にして粒状大豆たん白に浸透させると、驚くべきことに、加工食品に所定の弾力を付与でき、同時に結着などの問題を生じることなく粒状大豆たん白加工食品を製造できることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粒状大豆たん白加工食品は、均一な噛み応えを有し、かつ肉のようなしなやかさを有しており、さらには製造時に該加工食品同士が結着することなく良好な製造適性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の粒状大豆たん白加工食品のテクスチャーアナライザーによる測定結果を示す測定チャートの一例である。
【
図2】表2の実施例及び比較例の最大応力(H1)を示す図である。
【
図3】表2の実施例及び比較例の最大応力に達するまでの時間(T1)を示す図である。
【
図4】表3の実施例及び比較例の最大応力(H1)を示す図である。
【
図5】表3の実施例及び比較例の最大応力に達するまでの時間(T1)を示す図である。
【
図6】実施例1及び比較例1、4のH1及びT1による散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0016】
本発明において、「所定の弾力を有する」とは、弾力部分が不均一に分布することなく粒状大豆たん白加工食品全体にわたって噛み応えのある弾力を有し(以後、「均一な噛み応え」という)、かつ該加工食品が「肉のようなしなやかさ」を有することを言う。
【0017】
前記「肉のようなしなやかさ」とは、粒状大豆たん白加工食品を噛むと抵抗を感じながらもたわみ、繰り返し噛むうちにほぐれる食感を意味する。すなわち、一噛みで噛み切れ
ることなく、噛むことで該加工食品が歪み、繰り返し噛むことでその歪みが少しずつ崩壊していき、噛み切られるまでは、減衰しながらも応力を有する状態を指す。
【0018】
また、「良好な製造適性」とは、粒状大豆たん白加工食品を製造する時に、個々の加工食品同士が結着しないため、解す人手や時間を必要とせず滞りなく製造できることを意味する。
【0019】
さらに、本発明の「粒状大豆たん白加工食品」は、主材の畜肉や野菜に添加して風味やテクスチャー向上のため使用する加工食品や冷解凍する加工食品とは異なり、粒状大豆たん白を原料として製造され、直接そのまま喫食する加工食品を指す。
【0020】
本発明は、粒状大豆たん白を加工する食品(粒状大豆たん白加工食品)であって、該粒状大豆たん白にゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を含有することが、所定の弾力及び製造適性の点で重要である。
【0021】
<粒状大豆たん白>
粒状大豆たん白とは、脱脂大豆、大豆由来の粉末状植物性たん白を主原料に、エクストルーダーなどを用いて加熱、加圧等の物理的な加工を施して得られる組織状のたん白である。この大豆由来の組織状のたん白、すなわち粒状大豆たん白を用いることが、肉のようなしなやかさの点で重要である。
【0022】
粒状大豆たん白としては、例えば、日本農林規格が定義する植物性たん白のうち大豆由来の粒状植物性たん白や繊維状植物性たん白などが挙げられる。
【0023】
粒状大豆たん白の形態は、粒状、繊維状、フレーク状、ブロック状、略円柱状、スライス状等様々あるが適宜選択して用いればよい。これらの中でも、好ましくは、スライス状が所定の弾力、製造時における乳化物や調味液の浸漬のしやすさの点で好適に用いられる。
【0024】
なお、前記脱脂大豆、大豆由来の粉末状植物性たん白とは、日本農林規格が定義する植物性たん白のうち、大豆由来の粉末状植物性たん白を指し、該規格では、大豆等の採油用の種実若しくはその脱脂物(以下「主原料」という。)に加工処理を施してたん白質含有率を高め、主原料に由来するたん白質含有率が50%を超えるものと定義されている。
【0025】
<ゼラチン>
ゼラチンは、肉のようなしなやかさを付与する点で重要である。由来、原料処理方法は特に問わず、牛、豚、鳥、魚等から得られたもの、酸処理、アルカリ処理されたもの、ゼラチン強度(ブルーム値)等、限定することなくいずれを用いてもよい。
【0026】
また、ゼラチンの含有量は、粒状大豆たん白加工食品全体重量中1.5~6.0重量%となるように含有することが肉のようなしなやかさ、製造適性の点で重要である。1.5重量%以上であると肉のようなしなやかさが得られ、6.0重量%以下であると良好な製造適性が得られる。
【0027】
なお、ゼラチン溶解液に用いる水性媒体は、上水道水が、バクテリア汚染、タンパク質分解酵素による分解、pH等の点で好適である。
【0028】
<油脂>
油脂は、ゼラチン溶解液との乳化、粒状大豆たん白への浸透性、製造適性の点で重要である。油脂は、ゼラチン溶解液と乳化する際液体状であればよく、例えば、70℃以下の
融点を有するものが挙げられる。具体的には、植物性油脂、動物性油脂、例えば、菜種油、とうもろこし油、大豆油、綿実油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油、米糠油、ごま油、カカオ脂、オリーブ油、パーム核油等の植物油、魚油、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂等の動物脂、及びこれらの油脂の硬化油又はエステル交換油、或いはこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等の食用油脂が挙げられ、これらより選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
<乳化物>
なお、本発明では、ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を、粒状大豆たん白に含有させることが、所定の弾力及び製造適性の点で重要である。乳化物とせずにゼラチン溶解液と油脂を粒状大豆たん白に含有させると、ゼラチンが粒状大豆たん白加工食品の全体に浸透せず不均一に、さらに硬いゲルによる弾力が付与される。また、該加工食品の内部まで浸透せず表面にゼラチンが残りやすく、製造の際加工食品同士が結着して製造適性が低下する。
【0030】
これは、ゼラチン溶解液を油脂によって乳化することで流動性が増し、ゼラチンが乳化物の状態で粒状大豆たん白の全体かつ内部にまで浸透するため、粒状大豆たん白加工食品全体が均一な噛み応えと肉のようなしなやかさを有することとなり、加工食品表面にゼラチンが残らず製造適性も良好となったためと推察される。さらに、ゼラチン単体でゲル化した場合と比べ柔らかい組織を形成するため、加工食品の食感が柔らかくなり、加工食品同士の結着性が弱くなると推察している。
【0031】
次に、本発明の粒状大豆たん白加工食品は、好ましくは、最大応力が580~1,700g、最大応力に達するまでの時間が3.0~4.5秒であると、より好ましくは、最大応力が600~1,300g、最大応力に達するまでの時間が3.0~4.5秒であると、肉のようなしなやかさの点で好適である。
【0032】
<最大応力>
最大応力とは、テクスチャーアナライザーを使用し、直径3.2mmの円柱プローブを用い、進入速度2mm/秒、進入距離10mmの条件下で測定した時の、円柱プローブが粒状大豆たん白加工食品(25℃)を貫通する際に円柱プローブにかかる力のことであり、粒状大豆たん白加工食品を噛む時の抵抗力、すなわち噛み応えを示している。
【0033】
<最大応力に達するまでの時間>
最大応力に達するまでの時間とは、最大応力と同条件下で測定した時の最大応力に達するまでの時間のことであり、粒状大豆たん白加工食品を繰り返し噛むことで噛む度にたわみ続けて該加工食品がほぐれていく際のほぐれやすさ、すわなち肉のようなしなやかさを示している。
【0034】
なお、前記最大応力及び前記最大応力に達するまでの時間は、テクスチャーアナライザーを使用して、例えば、次のようにして測定することができる。
【0035】
(1)測定試料を準備する
縦25mm以上、横25mm以上、厚み3.0~3.8mmの粒状大豆たん白加工食品を測定試料(25℃)として準備する。
【0036】
(2)測定試料をテクスチャーアナライザーにセッティングする
テクスチャーアナライザーとしては、例えば、テクスチャーアナライザーTA.XT ExpressC TA10/450L(英弘精機株式会社製)などが挙げられる。なお、測定試料の凹凸の無い面を、直径3.2mmの円柱プローブの真下にセッティングする
。
【0037】
(3)最大応力及び最大応力に達するまでの時間を測定する
雰囲気温度25℃、進入速度2mm/秒、進入距離10mmの条件で、最大応力及び最大応力に達するまでの時間を測定し、
図1のような測定チャートを得る。
【0038】
最大応力及び最大応力に達するまでの時間に関し、
図1に基づき説明する。
図1は、本発明の粒状大豆たん白加工食品のテクスチャーアナライザーによる測定結果を示す測定チャートの一例である。縦軸が応力(g)を、横軸が時間(秒)を示し、本発明の粒状大豆たん白加工食品を測定して得られた応力曲線が示されている。応力曲線のうち最も高い値(H1)が「最大応力」であり、最大応力に達するまでに要した時間(T1)が「最大応力に達するまでの時間」である。
【0039】
次に、本発明の粒状大豆たん白加工食品の製造方法は、下記(1)、(2)工程を順次備えることが所定の弾力及び製造適性の点で重要である。
(1)ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を調製する工程
(2)粒状大豆たん白に前記乳化物を浸透させる工程
【0040】
(1)ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を調製する工程
まず、ゼラチンを上水道水に溶解しゼラチン溶解液を調製する。ゼラチンの溶解方法としては、例えば、膨潤溶解法及び直接溶解法が挙げられ、どちらを採用してもよいが、作業効率の点で直接溶解法が好適である。
【0041】
上記膨潤溶解法とは、ゼラチンに予め室温程度の上水道水を十分に吸水させて膨潤し、次に加温して溶解する方法である。例えば、1~25℃の上水道水にゼラチンを加えて吸水膨潤し、次に水温60~80℃に加温して溶解することでゼラチン溶解液を調製する方法が挙げられる。
【0042】
上記直接溶解法とは、ゼラチンを、予め加温した上水道水に、攪拌しながら直接投入して溶解する方法である。なお、上水道水の加温は、ゼラチンを溶解でき、かつゼラチン投入後の水温が60℃~70℃となるように温度設定すればよい。
【0043】
次に、前記ゼラチン溶解液に油脂を混合し撹拌して、ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を調製する。例えば、電動ミキサー等を用いて、800~1600rpm、1~5分間撹拌する。
【0044】
(2)粒状大豆たん白に前記乳化物を浸透させる工程
粒状大豆たん白に前記乳化物を適量添加し、前記乳化物を絡めるように10~20分間撹拌し粒状大豆たん白に浸透させ、粒状大豆たん白加工食品を得る。なお、本工程の前に、粒状大豆たん白への吸水工程や膨潤工程は、乳化物が浸透しにくくなることから採用されない。
【0045】
好ましくは、乳化物を混合した調味液により本工程を実施すると、乳化物に加え風味原料を同時に浸透できるため製造効率の点で好ましい。より好ましくは、乳化物を80~98℃の調味液に混合すると、粒状大豆たん白への浸透性の点で好適である。
【0046】
<調味液>
調味液は、次のような原料を適宜選択し、単独もしくは複数を用いて調製すればよい。例えば、糖質甘味料(砂糖、キシロース、水飴、糖アルコール等)、高甘味度甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム等)、調味料・シー
ズニング(食塩、しょうゆ、みそ、各種ソース(ウスターソース、カラメルソース等)、香辛料(唐辛子、黒胡椒、カレー粉、ガーリックペースト等)、酢等)、うま味調味料(グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸、イノシン酸二ナトリウム、グアニル酸、グアニル酸二ナトリウム等)、乳製品、卵製品(卵、マヨネーズ等)、酒粕、野菜汁、果汁、酸味料、着色料、ミネラル、香料(水溶性香料、油溶性香料、乳化香料、粉末香料等)、乳化剤、グリセリン、エキス類(野菜エキス、魚介エキス、畜肉エキス等)等が挙げられる。
【0047】
また、本発明では、乳化物を粒状大豆たん白に浸透させることで所定の弾力を付与できるものであるが、(2)の工程の後に「加熱殺菌工程」を設けることで、さらにムラのない均一な噛み応えを付与できる点で好適である。例えば、(2)工程で得られた粒状大豆たん白を容器に収容密封後、80~100℃で20~30分間加熱殺菌する工程を挙げることができる。該容器としては、加熱殺菌に耐え得る容器を用いればよく、例えば、レトルト用パウチ、アルミパウチ、深絞りトレー又はカップ、缶などの耐熱性包装容器等が挙げられる。なお、100℃より高温の加熱殺菌は、本発明の目的の品質(所定の弾力)が得られないため採用されない。
【0048】
また、前記(2)工程の後又は加熱殺菌工程の前に「粉末状大豆たん白の表面施与工程」を設けてもよい。脱脂大豆、大豆由来の粉末状たん白を、好ましくはたん白質含有率が85%以上の該粉末状たん白を、前記(2)工程後又は加熱殺菌工程前の粒状大豆たん白の表面に施与すると、長期保存中又は加熱殺菌時に生じる表面のべたつきを抑制できる点で好適である。表面施与方法は、粉末状大豆たん白を、レボリングパンを用いて被覆する、或いは直接粉体混合する等が挙げられる。
【0049】
なお、本発明の粒状大豆たん白加工食品は、そのまま喫食することから、その大きさを、例えば、喫食時点で略一口サイズ(縦10~80mm、横10~50mm、厚み3~40mm)となるように製造することが好ましい。大きさの調整は、製造後の大きさを想定して、適切な大きさの粒状大豆たん白原料を選択する、適切な大きさに切断するなど、適宜調整すればよい。
【0050】
また、本発明の粒状大豆たん白加工食品は、好ましくは、水分含量を25~35重量%にすると、噛み応えの点で好適である。なお、水分含量の測定方法は、加熱乾燥法(常圧乾燥法、減圧乾燥法)、蒸留法、カールフィッシャー法、電気水分計法、近赤外分光分析法、ガスクロマトグラフィー法、核磁気共鳴法などの公知の方法で測定すればよい。例えば、電気水分計法としては、赤外線水分計FD-240(株式会社ケット科学研究所製)を用いて、包丁等で細かく切断した大豆たん白加工食品5~10gを正確に計量後、110℃30秒(Automatic)にて測定するなどが挙げられる。
【0051】
以上のようにして製造された粒状大豆たん白加工食品は、均一な噛み応えを有し、かつ肉のようなしなやかさを有しており、さらには製造時に該加工食品同士が結着することなく良好な製造適性を有する。
【実施例0052】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
【0053】
<調味液の調製>
<実施例1>
まず、70℃の上水道水にゼラチンを表1の割合で溶解しゼラチン溶解液を調製した(直接溶解法)。次に、油脂を混合し電動ミキサーを用いて1,500rpmで3分間撹拌
してゼラチン溶解液と油脂による乳化物を調製した。この乳化物に表1の組成となるように残りの原料を混合し調味液を調製した。
<比較例1、4>
表1の組成となるように原料を混合し調味液を調製した。
<比較例2>
まず、70℃の上水道水にゼラチンを表1の割合で溶解しゼラチン溶解液を調製した(直接溶解法)。次に、このゼラチン溶解液に、表1の組成となるように残りの原料を混合し調味液を調製した。
<比較例3>
まず、70℃の上水道水にゼラチンを表1の割合で溶解しゼラチン溶解液を調製した(直接溶解法)。次に、このゼラチン溶解液に、表1の組成となるように、油脂は乳化させずに残りの原料と一緒に混合し調味液を調製した。
【0054】
【0055】
<粒状大豆たん白加工食品の製造>
<実施例1、比較例1~4>
縦10~40mm、横8~34mm、厚み2.5~5.0mmのスライス状の粒状大豆たん白100重量部に調味液270重量部(90℃)を添加し、両者を絡めるように20分間撹拌し粒状大豆たん白に調味液を浸透させた。次に、容器に収容密封後100℃で30分間加熱殺菌し、粒状大豆たん白加工食品を製造した。
【0056】
以上のようにして得られた実施例及び比較例の食感について、専門パネラー4名が表2の欄外に記載の官能評価基準に準じて評価した。さらに、最大応力(H1)及び最大応力に達するまでの時間(T1)をテクスチャーアナライザーにて測定し、製造適性(製造時の加工食品の結着性)について評価した。なお、食感は4名の平均値を、H1及びT1は10回測定による平均値及び標準偏差を示した。これらの結果を表2、及び
図2、3に示す。
【0057】
【0058】
評価の結果、表2及び
図2、3に示すとおり、実施例1は、噛んだ際に跳ね返るような噛み応えがあり、噛み進めると徐々にほぐれる肉のようなしなやかさを有し、製造時の結着がなく製造適性が良好であった。
【0059】
ゼラチン非含有の比較例1、4の官能による食感は、噛んだ際に抵抗はあるが、弾力は無くスポンジ状であり、特に、比較例1は噛み応えに、比較例4は肉のようなしなやかさ
に欠けていた。なお、比較例1、4のH1及びT1は、t検定の結果、実施例1に対し有意な差が認められた。また、ゼラチンを含有するが油脂を含有しない比較例2、ゼラチン及び油脂を含有するものの乳化物としては含有しなかった比較例3は、噛み応えはあるものの均一でなく、さらに製造時結着し製造適性が悪かった。
したがって、本願が目的とする品質のためには、ゼラチン溶解液と油脂とによる乳化物を含有することが重要であることが理解できる。
【0060】
<実施例2~3、比較例5~6>
<調味液の調製>
表1の割合でゼラチン溶解液を調製する以外は実施例1と同様に行い、調味液を調製した。
<粒状大豆たん白加工食品の製造>
実施例1と同様に行い、粒状大豆たん白加工食品を製造した。
【0061】
以上のようにして得られた実施例及び比較例の食感、H1、T1、製造適性について、実施例1と同様に評価した。これらの結果を表3、及び
図4、5に示す。
【0062】
【0063】
評価の結果、表3及び
図4、5に示すとおり、実施例1~3は程度の差はあるものの、均一な噛み応えと肉のようなしなやかさを有し、かつ、製造適性も良好であった。一方、比較例5は官能評価による食感が悪く、弾力の無いスポンジ状であった。また、比較例6は製造適性が悪かった。したがって、本願の目的とする品質のためには、ゼラチンを1.5~6.0重量%含有することが重要であることが理解できる。
【0064】
<「H1及びT1」と「食感」の関係性について>
最大応力(H1)及び最大応力に達するまでの時間(T1)と、食感との関係性について検討した。すなわち、実施例1及び比較例1、4のH1とT1の測定数を50回に増やし散布図を作成した。その結果を
図6及び表4に示す。
【0065】
【0066】
図6に示すとおり、H1が580~1,700g且つT1が3.0~4.5秒となる測定値の占有率は、実施例1は84.9%であった。一方、比較例1は31.5%、比較例4は43.8%であり、実施例1よりも明らかに低い占有率であった(表4参照)。表2の食感の官能評価の結果より、実施例1が最も好ましい食感を有することから、本願が目的とする所定の弾力を示す最大応力(H1)は好ましくは580~1,700g、最大応力に達するまでの時間T1は好ましくは3.0~4.5秒であると言える。