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▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033259
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136752
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村元 僚
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】山ノ内 祐太
(72)【発明者】
【氏名】青木 陸太
(72)【発明者】
【氏名】テン ポーリン
(72)【発明者】
【氏名】林 宗儒
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC13
5F157BB23
5F157BB37
5F157BB45
5F157BB52
5F157CF06
5F157CF16
5F157CF22
5F157CF44
5F157CF50
5F157CF52
5F157CF92
5F157CF99
5F157DB37
5F157DB41
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】洗浄液のミストを処理液雰囲気に接触させることができ、洗浄液の消費量を減らすことができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、水平な基板Wの上面に向けて処理液を吐出する処理液ノズル31と、処理液ノズル31の近傍を漂う洗浄液のミストを発生するミスト発生器105と、処理液ノズル31およびミスト発生器105を移動させることにより、処理液ノズル31から吐出された処理液が基板Wの上面に衝突する衝突位置P1を基板Wの上面内で移動させるノズルアクチュエータ38とを備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な基板の上面に向けて処理液を吐出する処理液ノズルと、
前記処理液ノズルの近傍を漂う洗浄液のミストを発生するミスト発生器と、
前記処理液ノズルおよびミスト発生器を移動させることにより、前記処理液ノズルから吐出された前記処理液が前記基板の前記上面に衝突する衝突位置を前記基板の前記上面内で移動させるノズルアクチュエータと、を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記ミスト発生器は、前記洗浄液を貯留し、前記処理液ノズルと共に移動する液槽と、前記液槽内の前記洗浄液を振動させることにより、前記液槽内の前記洗浄液から前記ミストを発生させる超音波振動子と、を含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液槽は、平面視で前記処理液ノズルに重なるように前記処理液ノズルの上方に配置されている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ミスト発生器は、前記洗浄液を前記液槽に供給し、前記処理液ノズルと共に移動する洗浄液配管をさらに含む、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板の前記上面に直接対向するシールド面を含み、前記処理液ノズルと共に移動する飛沫シールドをさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ミスト発生器は、前記洗浄液を貯留し、前記処理液ノズルと共に移動する液槽と、前記液槽内の前記洗浄液を振動させることにより、前記液槽内の前記洗浄液から前記ミストを発生させる超音波振動子と、を含み、
前記液槽は、平面視で前記飛沫シールドに重なるように前記飛沫シールドの上方に配置されている、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板処理装置は、シールドプレートをさらに備え、
前記処理液ノズルは、液体を下方に吐出する少なくとも1つの吐出口が開口した下面を含み、前記基板の前記上面に向かって下方に飛散する複数の液滴を生成し、
前記シールドプレートは、前記処理液ノズルを下から見ると前記処理液ノズルの前記下面を取り囲んだ内周と、前記内周から外方に延びており、前記基板の前記上面に対向する環状の下面と、前記下面の上方で前記内周から外方に延びる環状の上面と、を含み、
前記処理液ノズルおよびシールドプレートは、前記シールドプレートの前記上面よりも上側で前記内周よりも外側の空間である上側空間を、前記内周の内側の空間である内側空間に接続する接続空間を形成しており、
前記接続空間は、前記内側空間と上下に連なると共に前記上側空間と水平に連なる空間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
処理液ノズルの近傍を漂う洗浄液のミストをミスト発生器に発生させながら、水平な基板の上面に向けて前記処理液ノズルに処理液を吐出させる工程と、
ノズルアクチュエータに前記処理液ノズルおよびミスト発生器を移動させることにより、前記処理液ノズルから吐出された前記処理液が前記基板の前記上面に衝突する衝突位置を前記基板の前記上面内で移動させる工程と、を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チャンバーの側壁またはチャンバー内の整流板から突出したミスト噴射ノズルに水を噴霧させることにより、基板が配置された空間に水のミストを充満させ、この状態で薬液ノズルに薬液を吐出させることにより、当該空間を漂う薬液雰囲気に水のミストを接触させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6338275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置および方法では、基板が配置された空間に水のミストを充満させるので、多量の水が必要になる。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、洗浄液のミストを処理液雰囲気に接触させることができ、洗浄液の消費量を減らすことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、水平な基板の上面に向けて処理液を吐出する処理液ノズルと、前記処理液ノズルの近傍を漂う洗浄液のミストを発生するミスト発生器と、前記処理液ノズルおよびミスト発生器を移動させることにより、前記処理液ノズルから吐出された前記処理液が前記基板の前記上面に衝突する衝突位置を前記基板の前記上面内で移動させるノズルアクチュエータと、を備える、基板処理装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、基板の上面に向けて処理液ノズルに薬液やリンス液などの処理液を吐出させる。処理液ノズルが処理液を吐出すると、処理液の飛沫や処理液のミストなどの処理液雰囲気が基板の近くで発生する。特に、100℃以上のSPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)が処理液ノズルから吐出される場合には、SPMに含まれる水の蒸発により、SPMの液滴やSPMのミストが処理液ノズルから激しく噴出する。SPMとレジストとの反応により基板からヒューム(煙のような気体)が発生する場合もある。
【0008】
処理液ノズルの近傍を漂う処理液雰囲気は、ミスト発生器から発生した洗浄液のミストに接触する。この接触により、処理液の粒子が洗浄液の粒子と結合し、より大きくかつ重い液体の粒子に変化する。粒子の重量が増加するので、処理液雰囲気が上方に流れ難くなり、処理液雰囲気が拡散する範囲が狭まる。特に、処理液雰囲気の主たる発生源である処理液ノズルの近傍で洗浄液のミストを処理液雰囲気に接触させるので、処理液雰囲気の拡散範囲を効果的に狭めることができる。これにより、乾燥後の基板や基板の近傍に配置された部材に付着する処理液雰囲気を無くすまたは減らすことができ、処理液雰囲気に起因する基板等の汚染を低減できる。
【0009】
さらに、ノズルアクチュエータは、処理液ノズルだけでなく、ミスト発生器も移動させる。ミスト発生器から発生した洗浄液のミストは、処理液を吐出している処理液ノズルを追従し、処理液ノズルが移動した後も処理液ノズルの近傍を漂う。したがって、基板を収容するチャンバー内に洗浄液のミストを充満させる必要がなく、このような場合に比べて洗浄液の消費量を減らすことができる。これにより、基板の処理に要するエネルギーや環境への負荷を低減しながら、処理液雰囲気の拡散範囲を効率的に狭めることができる。
【0010】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理装置に加えてもよい。
【0011】
前記ミスト発生器は、前記洗浄液を貯留し、前記処理液ノズルと共に移動する液槽と、前記液槽内の前記洗浄液を振動させることにより、前記液槽内の前記洗浄液から前記ミストを発生させる超音波振動子と、を含む。
【0012】
この構成によれば、液槽内の洗浄液をヒーターで蒸発させたり、ミストノズルに洗浄液を噴霧させたりするのではなく、処理液ノズルと共に移動する液槽内の洗浄液を超音波振動子で振動させることにより、洗浄液のミストを生成する。超音波振動子は、より短い時間でミストを生成できる点でヒーターよりも優れ、比較的簡素な構成でより細かなミストを生成できる点でミストノズルよりも優れる。洗浄液の粒子を小さくすることにより、洗浄液のミストが浮遊する時間を延ばすことができ、より多くの処理液雰囲気を洗浄液のミストに接触させることができる。
【0013】
前記液槽は、平面視で前記処理液ノズルに重なるように前記処理液ノズルの上方に配置されている。
【0014】
この構成によれば、液槽が処理液ノズルの上方に配置されており、平面視で処理液ノズルに重なっている。したがって、液槽が処理液ノズルのまわりに配置されている場合に比べて高い位置で洗浄液のミストを発生できる。これにより、洗浄液のミストが基板または基板上の液体に接触するまでの時間を延ばすことができ、洗浄液のミストが浮遊する時間を延ばすことができる。
【0015】
前記ミスト発生器は、前記洗浄液を前記液槽に供給し、前記処理液ノズルと共に移動する洗浄液配管をさらに含む。
【0016】
この構成によれば、洗浄液配管から液槽に洗浄液を供給する。洗浄液配管は、処理液ノズルと共に移動する。したがって、液槽に洗浄液を供給するために処理液ノズルを特定の位置に移動させる必要がなく、任意の位置で液槽に洗浄液を供給できる。さらに、洗浄液配管から液槽に洗浄液を補充すれば、液槽の容量が小さい場合でも、単位時間あたりのミストの発生量、または、ミストを発生できる時間を増加させることができる。
【0017】
前記基板処理装置は、前記基板の前記上面に直接対向するシールド面を含み、前記処理液ノズルと共に移動する飛沫シールドをさらに備える。
【0018】
この構成によれば、飛沫シールドのシールド面を基板の上面に直接対向させる。処理液ノズルが基板の上面に向けて処理液を吐出すると、処理液が基板の上面または基板上の液体に衝突し、上方に飛散する処理液の飛沫が発生する。この飛沫を飛沫シールドのシールド面で受け止めることができる。さらに、飛沫シールドは処理液ノズルと共に移動するので、処理液ノズルがいずれの位置に配置されているときでも、基板から上方に飛散する処理液の飛沫を飛沫シールドで受け止めることができる。
【0019】
前記処理液ノズルが、前記基板の前記上面内の狙い位置に向けて前記基板の前記上面に対して傾いた処理液吐出方向に処理液を吐出する処理液吐出口を含む場合、前記シールド面は、平面視で前記狙い位置に重なってもよいし、重ならなくてもよい。いずれの場合でも、前記処理液ノズルと前記シールド面とを下から見ると、前記処理液吐出口のいずれの部分も、前記シールド面の外縁の外側または前記シールド面の前記外縁上に配置されていてもよいし、前記シールド面の前記外縁の内側に配置されていてもよい。
【0020】
前記処理液ノズルが、前記基板の上面内の狙い位置に向けて前記基板の前記上面に対して垂直な処理液吐出方向に処理液を吐出する処理液吐出口を含む場合、前記処理液ノズルと前記シールド面とを下から見ると、前記処理液吐出口のいずれの部分も、前記シールド面の外縁の外側に配置されていてもよいし、前記シールド面の前記外縁の内側に配置されていてもよい。後者の場合、前記処理液ノズルと前記シールド面とを下から見ると、前記シールド面の前記外縁が前記処理液吐出口を取り囲んでいてもよい。
【0021】
前記ミスト発生器は、前記洗浄液を貯留し、前記処理液ノズルと共に移動する液槽と、前記液槽内の前記洗浄液を振動させることにより、前記液槽内の前記洗浄液から前記ミストを発生させる超音波振動子と、を含み、前記液槽は、平面視で前記飛沫シールドに重なるように前記飛沫シールドの上方に配置されている。
【0022】
この構成によれば、液槽内の洗浄液を超音波振動子で振動させることにより、液槽内の洗浄液からミストを発生させる。液槽は、飛沫シールドの上方に配置されており、平面視で飛沫シールドに重なっている。この場合、液槽を処理液ノズルの上方に配置する場合に比べて液槽の容積を大きくし易い。つまり、液槽の深さと平面視における液槽の面積との両方または一方を増加させ易い。これにより、より多くの洗浄液を液槽内に保持できる。
【0023】
前記基板処理装置は、シールドプレートをさらに備え、前記処理液ノズルは、液体を下方に吐出する少なくとも1つの吐出口が開口した下面を含み、前記基板の前記上面に向かって下方に飛散する複数の液滴を生成し、前記シールドプレートは、前記処理液ノズルを下から見ると前記処理液ノズルの前記下面を取り囲んだ内周と、前記内周から外方に延びており、前記基板の前記上面に対向する環状の下面と、前記下面の上方で前記内周から外方に延びる環状の上面と、を含み、前記処理液ノズルおよびシールドプレートは、前記シールドプレートの前記上面よりも上側で前記内周よりも外側の空間である上側空間を、前記内周の内側の空間である内側空間に接続する接続空間を形成しており、前記接続空間は、前記内側空間と上下に連なると共に前記上側空間と水平に連なる空間である。
【0024】
この構成によれば、処理液ノズルの下面から水平な基板の上面に向かって下方に飛散する複数の液滴を生成する。複数の液滴は、基板の上面または基板上の液体に衝突する。このとき、基板から上方に飛散する飛沫が発生する。このような飛沫は、基板の上面に対向するシールドプレートの下面に衝突し落下する。これにより、処理液の粒子を含む処理液雰囲気が拡散する範囲を狭めることができる。
【0025】
さらに、処理液ノズルが複数の液滴を生成すると、処理液ノズルの下面から下方に流れる気流が発生する。この気流は、処理液ノズルの下面から基板の上面に向かって下方に流れる。その後、この気流は、シールドプレートの下面と基板の上面との間を上下に広がりながら、処理液ノズルから水平に離れる方向に放射状に流れる。シールドプレートの下面は、上下方向への気流の広がりを制限し、気流の水平な速度成分の減少を小さくする。これにより、気流がシールドプレートと基板との間を通過した後も気流の水平な速度成分が大きい状態を維持することができ、ガードなどの基板を取り囲む部材まで気流を到達させることができる。
【0026】
加えて、処理液ノズルおよびシールドプレートは、シールドプレートの上面よりも上側でシールドプレートの内周よりも外側の空間である上側空間をシールドプレートの内周の内側の空間である内側空間に接続する接続空間を形成している。接続空間は、内側空間の上方に位置しており、上側空間の内側に位置している。接続空間は、内側空間と上下に連なると共に上側空間と水平に連なる空間である。シールドプレートの下面と基板の上面との間の空間である下側空間は、内側空間および接続空間を介して上側空間に接続される。
【0027】
処理液ノズルの下面から下方に流れる気流は、シールドプレートの内周の内側を通り得る。さらに、この気流は、シールドプレートの下面と基板の上面との間を処理液ノズルから離れる方向に放射状に流れる。処理液ノズルまたはシールドプレートの近傍の気体は、気体の粘性によって、処理液ノズルから下方に流れる気流と基板の上面に沿って放射状に流れる気流との方に引き寄せられ、これらの気流と共に流れる。
【0028】
シールドプレートは、処理液ノズルによって形成された気流の方に引き寄せられる気体の障壁となり、当該気体を迂回させる。これにより、内側空間の方に下方に気体を吸引する吸引力が発生し得る。このような吸引力が発生すると、上側空間を漂うミストが、上側空間および内側空間を接続する接続空間を介してシールドプレートの内側に吸い込まれ、処理液ノズルによって形成された気流と共に流れる。これにより、上側空間を漂うミストが拡散する範囲を狭めることができる。
【0029】
さらに、処理液ノズルによって形成される気流を利用して、前記のような吸引力を発生させるので、吸引力を発生させるためだけにエネルギーを消費しなくてもよい。したがって、エネルギーを効率的に利用しながら、ミストなどの上側空間を漂う処理液雰囲気が拡散する範囲を狭めることができる。これにより、環境への負荷を軽減しながら、基板またはその近傍の部材の汚染を軽減または防止できる。
【0030】
本発明の他の実施形態は、処理液ノズルの近傍を漂う洗浄液のミストをミスト発生器に発生させながら、水平な基板の上面に向けて前記処理液ノズルに処理液を吐出させる工程と、ノズルアクチュエータに前記処理液ノズルおよびミスト発生器を移動させることにより、前記処理液ノズルから吐出された前記処理液が前記基板の前記上面に衝突する衝突位置を前記基板の前記上面内で移動させる工程と、を含む、基板処理方法を提供する。この方法によれば、前述の基板処理装置と同様の効果を奏することができる。前述の基板処理装置に関する特徴の少なくとも1つを前記基板処理方法に加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す概略平面図である。
図1B】基板処理装置の概略側面図である。
図2A】処理ユニットの内部を水平に見た概略図である。
図2B】処理ユニットの内部を示す概略平面図である。
図3】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4A-C】第1薬液ノズル、第2薬液ノズル、および第1リンス液ノズルを示す概略図である。
図5A図4Cに示すVA-VA線に沿う第1薬液ノズルの鉛直断面を示す概略断面図である。
図5B図5Aに示すVB-VB線に沿う第1薬液ノズルの鉛直断面を示す概略断面図である。
図6】第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを飛沫シールドの左側から見た概略図である。
図7図6の一部を拡大した図である。
図8】第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを飛沫シールドの後ろ側から見た概略図である。
図9】第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを飛沫シールドの前側から見た概略図である。
図10】第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを飛沫シールドの上側から見た概略図である。
図11】第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを飛沫シールドの下側から見た概略図である。
図12】基板に対する第1薬液ノズルおよび飛沫シールドの位置を示す概略図である。
図13】第1薬液ノズルが基板の上面の外周部に向けて薬液を吐出しているときの第1ガードに対する飛沫シールドの位置を示す概略図である。
図14】薬液の粒子を含む雰囲気が純水の粒子を含む純水のミストに接触することを説明するための概略図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを水平に見た概略図である。
図16】本発明の第2実施形態に係る第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを上から見た概略図である。
図17】本発明の第3実施形態に係る第1薬液ノズルおよび飛沫シールドの鉛直断面を示す概略断面図である。
図18】本発明の第3実施形態に係る第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを上から見た概略図である。
図19】本発明の第4実施形態に係る第1薬液ノズルおよび飛沫シールドの鉛直断面を示す概略断面図である。
図20】本発明の第5実施形態に係る飛沫シールドの鉛直断面を示す概略断面図である。
図21】本発明の第5実施形態に係る第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを水平に見た概略図である。
図22】本発明の第5実施形態に係る第1薬液ノズルおよび飛沫シールドを下から見た概略図である。
図23】本発明の第5実施形態に係る接続空間について説明するための概略図である。
図24】本発明の第5実施形態に係る第1薬液ノズルが液体および気体を吐出することにより形成される気流について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す概略平面図である。図1Bは、基板処理装置1の概略側面図である。
【0034】
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCAを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送システム5と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0035】
複数の処理ユニット2は、複数の処理ユニット2をそれぞれが含む複数のタワーTWを形成している。図1Aは、4つのタワーTWが形成された例を示している。図1Bに示すように、1つのタワーTWに含まれる複数の処理ユニット2は、上下に積層されている。図1Aに示すように、複数のタワーTWは、平面視で基板処理装置1の奥行方向(複数のロードポートLPの配列方向に平面視で直交する方向)に並んだ2つの列を形成している。平面視において2つの列は搬送路4を介して互いに向かい合っている。
【0036】
搬送システム5は、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、インデクサロボットIRと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送するセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、平面視でロードポートLPとセンターロボットCRとの間に配置されている。センターロボットCRは、搬送路4に配置されている。
【0037】
インデクサロボットIRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHiを含む。ハンドHiは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHiは、鉛直な直線まわりに回転可能である。ハンドHiは、いずれのロードポートLP上のキャリアCAに対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができ、センターロボットCRと基板Wの受け渡しをすることができる。
【0038】
センターロボットCRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHcを含む。ハンドHcは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHcは、鉛直な直線まわりに回転可能である。ハンドHcは、インデクサロボットIRと基板Wの受け渡しをすることができ、いずれの処理ユニット2に対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができる。
【0039】
複数枚の基板Wを収容したキャリアCAは、半導体装置やFPD等を製造する製造工場に設置されたキャリア搬送ロボットによってロードポートLP上に置かれる。インデクサロボットIRは、ロードポートLP上のキャリアCAから未処理の基板Wを搬出し、搬出した基板WをセンターロボットCRに渡す。センターロボットCRは、受け取った基板Wをいずれかの処理ユニット2に搬入する。これにより、基板Wが処理される。
【0040】
センターロボットCRは、処理済みの基板Wを処理ユニット2から搬出し、インデクサロボットIRに渡す。インデクサロボットIRは、受け取った基板WをロードポートLPまで搬送し、この基板Wを収容していたキャリアCAまたは別のキャリアCAに当該基板Wを搬入する。処理済みの複数枚の基板Wを収容したキャリアCAは、キャリア搬送ロボットによってロードポートLPから次の目的地に搬送される。
【0041】
次に、処理ユニット2について説明する。
【0042】
図2Aは、処理ユニット2の内部を水平に見た概略図である。図2Bは、処理ユニット2の内部を示す概略平面図である。図2Aに示すように、処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー12と、チャンバー12内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック21と、スピンチャック21に保持されている基板Wに薬液やリンス液などの処理液を供給する複数のノズルとを含む。
【0043】
図2Bに示すように、チャンバー12は、センターロボットCR(図1A参照)によって搬送された基板Wが通過する搬入搬出口13bが設けられた箱型の隔壁13と、搬入搬出口13bを開閉するシャッター17とを含む。図2Aに示すように、チャンバー12は、さらに、隔壁13の天井面で開口する送風口13aの下方に配置された整流板18を含む。クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送るFFU11(ファン・フィルター・ユニット11)は、送風口13aの上に配置されている。送風口13aは、チャンバー12の上端部に設けられており、後述する排気ダクト78は、チャンバー12の下端部に配置されている。排気ダクト78の上流端78uは、チャンバー12の中に配置されており、排気ダクト78の下流端は、チャンバー12の外に配置されている。
【0044】
整流板18は、チャンバー12の内部空間を整流板18の上方の上空間Suと整流板18の下方の下空間SLとに仕切っている。隔壁13の天井面と整流板18の上面との間の上空間Suは、クリーンエアーが拡散する拡散空間である。整流板18の下面と隔壁13の床面との間の下空間SLは、基板Wの処理が行われる処理空間である。スピンチャック21は、下空間SLに配置されている。隔壁13の床面から整流板18の下面までの鉛直方向への距離は、整流板18の上面から隔壁13の天井面までの鉛直方向への距離よりも長い。
【0045】
FFU11は、送風口13aを介して上空間Suにクリーンエアーを送る。上空間Suに供給されたクリーンエアーは、整流板18に当たり、上空間Suで拡散する。上空間Su内のクリーンエアーは、整流板18を上下に貫通する複数の貫通孔を通過し、整流板18の全域から下方に流れる。下空間SLに供給されたクリーンエアーは、排気ダクト78内に吸い込まれ、チャンバー12から排出される。これにより、整流板18から下方に流れる均一なクリーンエアーの下降流(ダウンフロー)が、下空間SLに形成される。基板Wの処理は、クリーンエアーの下降流が形成されている状態で行われる。
【0046】
スピンチャック21は、基板Wを水平に挟む複数のチャックピン22と、複数のチャックピン22を支持する円板状のスピンベース23とを含む。スピンチャック21は、さらに、スピンベース23の中央部から下方に延びるスピン軸24と、スピン軸24を回転させることにより複数のチャックピン22およびスピンベース23を回転させる電動モータ25と、電動モータ25を取り囲むチャックハウジング26とを含む。
【0047】
スピンベース23は、基板Wの下方に配置される円形の上面と、スピンベース23の上面の外周から下方に延びる円筒状の外周面とを含む。スピンベース23の上面は、基板Wの下面と平行である。スピンベース23の上面は、基板Wの下面から離れている。スピンベース23の上面は、基板Wと同心である。スピンベース23の上面の外径は、基板Wの外径よりも大きい。チャックピン22は、スピンベース23の上面の外周部から上方に突出している。
【0048】
図2Aに示すように、複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32、および第3薬液ノズル39と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出する第1リンス液ノズル33および第2リンス液ノズル45とを含む。複数のノズルは、さらに、基板Wの上面に向けて有機溶剤の液体を吐出する溶剤ノズル42を含む。
【0049】
図2Aは、SPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)が第1薬液ノズル31から吐出され、DHF(希フッ酸)が、第2薬液ノズル32から吐出され、SC1(アンモニア水と過酸化水素水と水との混合液)が第3薬液ノズル39から吐出される例を示している。この例では、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))が、第1リンス液ノズル33および第2リンス液ノズル45から吐出され、IPA(イソプロピルアルコール)が溶剤ノズル42から吐出される。
【0050】
薬液は、SPM、DHF、およびSC1以外の液体であってもよい。具体的には、薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液体であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。同じ薬液(成分および濃度が同一の薬液)が、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32、および第3薬液ノズル39のうちの2つ以上から吐出されてもよい。
【0051】
リンス液は、純水以外の液体であってもよい。有機溶剤の液体は、IPA以外の液体であってもよい。具体的には、リンス液は、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)のアンモニア水のうちの少なくとも1つを含む液体であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。有機溶剤の液体は、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液体であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。成分および濃度の少なくとも一方が異なるリンス液が、第1リンス液ノズル33および第2リンス液ノズル45から吐出されてもよい。
【0052】
第1薬液ノズル31は、基板Wに対する処理液の衝突位置を基板Wの上面内で移動させるスキャンノズルであってもよいし、基板Wに対する処理液の衝突位置を移動させることができない固定ノズルであってもよい。他のノズルについても同様である。図2Aは、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32、第3薬液ノズル39、第1リンス液ノズル33、および溶剤ノズル42がスキャンノズルであり、第2リンス液ノズル45が固定ノズルである例を示している。
【0053】
処理ユニット2は、1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させるノズル移動ユニットを含む。2つ以上のスキャンノズルに連結された1つのノズル移動ユニットを設けてもよいし、1つのスキャンノズルごとに1つのノズル移動ユニットを設けてもよい。図2Bは、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32、および第1リンス液ノズル33が、第1ノズル移動ユニット38に連結され、第3薬液ノズル39が、第2ノズル移動ユニット41に連結され、溶剤ノズル42が、第3ノズル移動ユニット44に連結された例を示している。以下では、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32、および第1リンス液ノズル33を、「3本のノズル」ということがある。
【0054】
図2Bは、第1ノズル移動ユニット38、第2ノズル移動ユニット41、および第3ノズル移動ユニット44のそれぞれが、平面視で円弧状の経路に沿って1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させる旋回ユニットである例を示している。円弧状の経路の半径が大きいので、旋回ユニットは、平面視で直線と見なせる経路に沿って1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させる。第1ノズル移動ユニット38、第2ノズル移動ユニット41、および第3ノズル移動ユニット44の少なくとも一つは、平面視で直線状の経路に沿って1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させるスライドユニットであってもよい。
【0055】
第1ノズル移動ユニット38は、ノズルアクチュエータの一例である。第1薬液ノズル31は、処理液ノズルの一例である。ノズルアクチュエータは、処理液ノズルを移動させるアクチュエータである。アクチュエータは、電気、流体、磁気、熱、または化学的エネルギーを機械的な仕事に変換する装置である。アクチュエータには、電動モータ、エアシリンダ、およびその他の装置が含まれる。ノズルアクチュエータは、電動モータまたはエアシリンダであってもよいし、これら以外であってもよい。アクチュエータの定義は、他のアクチュエータについても同様である。
【0056】
第1ノズル移動ユニット38は、1つ以上のスキャンノズルを鉛直な直線まわりに回転させることにより、当該1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させる水平駆動アクチュエータと、1つ以上のスキャンノズルを鉛直に移動させる鉛直駆動アクチュエータとを含む。第2ノズル移動ユニット41および第3ノズル移動ユニット44についても同様である。水平駆動アクチュエータおよび鉛直駆動アクチュエータは、例えば、電動モータである。水平駆動アクチュエータおよび鉛直駆動アクチュエータは、エアシリンダなどの電動モータ以外のアクチュエータであってもよい。
【0057】
図2Aに示すように、第1薬液ノズル31は、第1薬液ノズル31に向けて硫酸を案内する硫酸配管34pと、第1薬液ノズル31に向けて過酸化水素水を案内する過酸化水素水配管35pとに接続されている。硫酸バルブ34vおよび流量調整バルブ34fは、硫酸配管34pに介装されている。過酸化水素水バルブ35vおよび流量調整バルブ35fは、過酸化水素水配管35pに介装されている。硫酸配管34pは、第1成分液配管の一例であり、過酸化水素水配管35pは、第2成分液配管の一例である。
【0058】
図示はしないが、硫酸バルブ34vは、硫酸などの処理液が通過する環状の弁座が設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。過酸化水素水バルブ35vなどの他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、硫酸バルブ34vを開閉させる。
【0059】
硫酸バルブ34vが開かれると、硫酸が、流量調整バルブ34fの開度に対応する流量で硫酸配管34pから第1薬液ノズル31に供給される。過酸化水素水バルブ35vが開かれると、過酸化水素水が、流量調整バルブ35fの開度に対応する流量で過酸化水素水配管35pから第1薬液ノズル31に供給される。硫酸バルブ34vおよび過酸化水素水バルブ35vが開かれると、硫酸と過酸化水素水とが混ざり合い、SPMが生成される。そして、このSPMが、第1薬液ノズル31から下方に連続的に吐出される。
【0060】
硫酸および過酸化水素水が混ざり合うと、硫酸の希釈熱により高温のSPMが生成される。第1薬液ノズル31から吐出されるSPMの温度は、例えば、100℃よりも高い。過酸化水素水と混合される前の硫酸の温度は、例えば、100℃よりも高い。基板処理装置1は、第1薬液ノズル31に供給される硫酸を加熱するヒーター34hを備えている。硫酸と混合される前の過酸化水素水の温度は、例えば、室温(例えば、20~30℃)である。硫酸と混合される前の過酸化水素水の温度は、室温よりも高くてもよい。
【0061】
第2薬液ノズル32は、第2薬液ノズル32に向けてDHFを案内する第2薬液配管36pに接続されている。第1リンス液ノズル33は、第1リンス液ノズル33に向けて純水を案内する第1リンス液配管37pに接続されている。第2薬液配管36pに介装された第2薬液バルブ36vが開かれると、DHFが、第2薬液配管36pから第2薬液ノズル32に供給され、第2薬液ノズル32から下方に連続的に吐出される。第1リンス液配管37pに介装された第1リンス液バルブ37vが開かれると、純水が、第1リンス液配管37pから第1リンス液ノズル33に供給され、第1リンス液ノズル33から下方に連続的に吐出される。第1リンス液ノズル33から吐出される純水の温度は、室温であってもよいし、室温よりも高くてもよい。
【0062】
第1ノズル移動ユニット38は、3本のノズル、つまり、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32、および第1リンス液ノズル33から吐出された処理液が基板Wの上面に供給される処理位置と、3本のノズルが平面視でスピンチャック21のまわりに位置する待機位置と、の間で3本のノズルを水平に移動させる。3本のノズルは、第1薬液ノズル31、第1リンス液ノズル33、第2薬液ノズル32の順番で水平に並んだ状態で第1ノズル移動ユニット38に支持されている。図2Bに示すように、第1ノズル移動ユニット38が3本のノズルを待機位置に移動させると、第1薬液ノズル31は、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33に対して平面視で基板W側に配置される。
【0063】
処理ユニット2は、第1薬液ノズル31が基板Wの上面に向けて薬液を吐出したときに発生する薬液の飛沫を受け止める飛沫シールド101と、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を収容する待機ポッド111とを含む。飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31のまわりに配置されており、第1薬液ノズル31と共に移動する。待機ポッド111は、第1薬液ノズル31が待機位置に配置されているときに、平面視で第1薬液ノズル31および飛沫シールド101に重なる位置に配置されている。飛沫シールド101の詳細については後述する。
【0064】
第3薬液ノズル39は、第3薬液ノズル39に向けてSC1を案内する第3薬液配管40pに接続されている。第3薬液配管40pに介装された第3薬液バルブ40vが開かれると、SC1が、第3薬液配管40pから第3薬液ノズル39に供給され、第3薬液ノズル39から下方に連続的に吐出される。第2ノズル移動ユニット41は、第3薬液ノズル39から吐出された処理液が基板Wの上面に供給される処理位置と、第3薬液ノズル39が平面視でスピンチャック21のまわりに位置する待機位置と、の間で第3薬液ノズル39を水平に移動させる。
【0065】
溶剤ノズル42は、溶剤ノズル42に向けてIPAを案内する溶剤配管43pに接続されている。溶剤配管43pに介装された溶剤バルブ43vが開かれると、IPAが、溶剤配管43pから溶剤ノズル42に供給され、溶剤ノズル42から下方に連続的に吐出される。第3ノズル移動ユニット44は、溶剤ノズル42から吐出された処理液が基板Wの上面に供給される処理位置と、溶剤ノズル42が平面視でスピンチャック21のまわりに位置する待機位置と、の間で溶剤ノズル42を水平に移動させる。
【0066】
第2リンス液ノズル45は、第2リンス液ノズル45に向けて純水を案内する第2リンス液配管46pに接続されている。第2リンス液配管46pに介装された第2リンス液バルブ46vが開かれると、純水が、第2リンス液配管46pから第2リンス液ノズル45に供給され、第2リンス液ノズル45から下方に連続的に吐出される。固定ノズルである第2リンス液ノズル45は、チャンバー12の隔壁13に対して固定されている。第2リンス液ノズル45は、基板Wの上面の中央部に向けて純水を吐出する。
【0067】
図2Aに示すように、複数のノズルは、さらに、基板Wの下面の中央部に向けて処理液を上方に吐出する下面ノズル47を含む。下面ノズル47は、水平な姿勢でスピンベース23の上面と基板Wの下面との間に配置された円板部を含む。円板部は、回転軸線A1を取り囲む円環状であり、基板Wの直径よりも小さい外径を有している。下面ノズル47の吐出口は、円板部の上面の中央部で開口している。下面ノズル47の吐出口は、基板Wの下面の中央部に上下方向に対向する。
【0068】
処理ユニット2は、チャンバー12内でスピンチャック21の周囲を取り囲んでおり、基板Wから外方に飛散した処理液を受け止める筒状の処理カップ52を含む。処理カップ52は、基板Wから外方に飛散した処理液を受け止める複数のガード53と、複数のガード53によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ68とを含む。図2Aは、2つのガード53と2つのカップ68とが設けられており、最も外側のカップ68が外側から2番目のガード53と一体である例を示している。
【0069】
2つのガード53は、スピンチャック21を同心円状に取り囲んでいる。2つのカップ68も、スピンチャック21を同心円状に取り囲んでいる。以下では、最も外側のガード53を第1ガード53Aといい、残りのガード53を第2ガード53Bという。同様に、最も外側のカップ68を第1カップ68Aといい、残りのカップ68を第2カップ68Bという。第1ガード53Aおよび第2ガード53Bを総称して、ガード53といい、第1カップ68Aおよび第2カップ68Bを総称して、カップ68ということがある。
【0070】
図2Aに示すように、ガード53は、スピンチャック21の周囲を取り囲む円筒部54と、円筒部54から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円筒状の天井部60とを含む。天井部60は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円筒状の傾斜部61と、傾斜部61の上端から回転軸線A1に向かって水平に延びる円形の水平部62(図13参照)と、天井部60の内周端に相当する水平部62の内周端から下方に突出した円形の折り返し部63(図13参照)とを含む。第1ガード53Aの円筒部54と第2ガード53Bの円筒部54とは、スピンチャック21を同心円状に取り囲んでいる。第1ガード53Aの天井部60は、第2ガード53Bの天井部60の上方に配置されており、平面視で第2ガード53Bの天井部60に重なっている。
【0071】
第1ガード53Aの天井部60の内周部は、第1ガード53Aの上端部53uに相当する。第2ガード53Bの天井部60の内周部は、第2ガード53Bの上端部に相当する。第1ガード53Aの上端部53uと第2ガード53Bの上端部とは、平面視で基板Wおよびスピンベース23を取り囲む円形の開口を形成している。第1ガード53Aの上端部53uの内径は、第2ガード53Bの上端部の内径よりも小さい。第1ガード53Aの上端部53uの内径は、第2ガード53Bの上端部の内径と等しくてもよい。第1ガード53Aの上端部53uの内径と第2ガード53Bの上端部の内径は、スピンベース23の外径よりも大きい。
【0072】
カップ68は、スピンチャック21を取り囲む円筒状の内壁部と、径方向に間隔を空けて内壁部を取り囲む円筒状の外壁部と、内壁部の下端部から外壁部の下端部に延びる円環状の底壁部とを含む。内壁部、外壁部、および底壁部は、上向きに開いた円環状の液受溝を形成している。ガード53によって受け止められた処理液は、液受溝内に流れ落ちる。カップ68内の処理液を排出する排液口は、底壁部の上面で開口している。
【0073】
第1ガード53Aおよび第2ガード53Bは、チャンバー12の隔壁13に対して上下に移動可能である。第1カップ68Aは、第2ガード53Bと一体であり、第2ガード53Bと共に上下に移動する。第1カップ68Aは、第2ガード53Bとは別の部材であり、隔壁13に対して固定されていてもよい。第2カップ68Bは、隔壁13に対して固定されている。第2カップ68Bの底壁部は、チャンバー12の床面(隔壁13の床面。以下同様)から上方に離れている。第1カップ68Aの底壁部も、チャンバー12の床面から上方に離れている。
【0074】
図2Aに示すように、複数のガード53は、複数のガード53を鉛直方向に個別に昇降させるガード昇降ユニット51に接続されている。ガード昇降ユニット51は、上位置から下位置までの範囲内の任意の位置にガード53を位置させる。図2Aは、第1ガード53Aおよび第2ガード53Bが下位置に配置された状態を示している。上位置は、スピンチャック21による基板Wの保持位置よりもガード53の上端が上方に配置される位置である。下位置は、スピンチャック21による基板Wの保持位置よりもガード53の上端が下方に配置される位置である。スピンチャック21による基板Wの保持位置は、スピンチャック21に保持されている基板Wが配置される位置である。
【0075】
回転している基板Wに処理液を供給するとき、制御装置3(図1A参照)は、ガード昇降ユニット51を制御することにより、少なくとも一つのガード53を上位置に位置させる。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液は、基板Wから外方に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード53の内周面に衝突し、このガード53に対応するカップ68に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液がカップ68に集められる。
【0076】
処理カップ52は、複数のガード53および複数のカップ68に加えて、全てのガード53と全てのカップ68とを取り囲む筒状外壁70を含む。筒状外壁70は、全てのガード53のうちで最も外側に位置する第1ガード53Aを径方向に間隔を空けて取り囲んでいる。筒状外壁70は、チャンバー12の床面から上方に延びている。筒状外壁70の上端は、スピンチャック21の電動モータ25よりも上方に配置されている。筒状外壁70の上端は、基板Wよりも下方に配置されている。
【0077】
処理ユニット2は、チャンバー12内における第1ガード53Aのまわりの空間を上下に仕切る仕切板80を含む。仕切板80は、第1ガード53Aを取り囲んでいる。仕切板80は、筒状外壁70の上方に配置されている。仕切板80は、筒状外壁70の上に置かれており、筒状外壁70に支持されている。仕切板80は、基板Wよりも下方に配置されている。仕切板80の外周端は、チャンバー12の内周面から水平に離れており、チャンバー12の内周面と水平に向かい合っている。
【0078】
排気ダクト78は、筒状外壁70を径方向に貫通する排出穴72に挿入されている。排気ダクト78の上流端78uは、筒状外壁70の内側に配置されている。排気ダクト78の上流端78uは、基板Wよりも下方に配置されている。排気ダクト78の上流端78uは、仕切板80よりも下方に配置されている。排気ダクト78は、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気設備に接続されている。排気ダクト78の上流端78uは、チャンバー12内の気体を吸引する排気口を形成している。
【0079】
チャンバー12内における処理カップ52よりも上方の空間にある気体は、排気ダクト78を介して伝達される吸引力によって、筒状外壁70の内側に吸い込まれる。仕切板80の外周端とチャンバー12の内周面との間の隙間を通って筒状外壁70のまわりの空間に流れ着いた気体は、筒状外壁70を径方向に貫通する排気中継穴73を介して、筒状外壁70の内側に吸い込まれる。筒状外壁70の内側にある気体は、排気ダクト78に吸い込まれる。これにより、チャンバー12内の気体が、排気ダクト78を介して排出される。
【0080】
次に、基板処理装置1の電気的構成について説明する。
【0081】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶するメモリー3cとを含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶するストレージ3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取るリーダー3fと、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0082】
制御装置3は、入力装置および表示装置に接続されている。入力装置は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置の画面に表示される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置および表示装置を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられてもよい。
【0083】
CPU3bは、ストレージ3eに記憶されたプログラムPを実行する。ストレージ3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、リーダー3fを通じてリムーバブルメディアRMからストレージ3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピュータなどの外部装置から通信装置3gを通じてストレージ3eに送られたものであってもよい。
【0084】
ストレージ3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。ストレージ3eは、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、例えば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体(non-transitory tangible media)である。
【0085】
ストレージ3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。制御装置3は、後述する各工程を実行するようにプログラムされている。
【0086】
例えば、制御装置3は、SPM、純水、SC1、純水の順番で、これらの処理液を回転する基板Wの上面に供給し、その後、基板Wの高速回転により基板Wを乾燥させる。基板Wに供給される処理液の種類および順番は、これに限られない。例えば、制御装置3は、SPM、温水(室温よりも高温の純水)、純水(室温の純水)の順番で、これらの処理液を基板Wの上面に供給してもよい。もしくは、制御装置3は、SPM、純水、DHF、純水、SC1、純水の順番で、これらの処理液を基板Wの上面に供給してもよいし、DHF、純水、SPM、純水、SC1、純水の順番で、これらの処理液を基板Wの上面に供給してもよい。
【0087】
前記の例において、制御装置3は、基板W上の純水をIPAなどの有機溶剤で置換し、その後、有機溶剤が付着している基板Wを基板Wの高速回転により乾燥させてもよい。前記の例において、制御装置3は、SPMによりレジストを剥離する時間を短縮したり、レジストの残渣をオゾン水で除去したりするために、SPMを供給する前にオゾン水を基板Wに供給してもよいし、SPMを供給した後にオゾン水を基板Wに供給してもよい。前者の場合、SPMは、オゾン水の液膜で覆われている基板Wの上面に供給される。後者の場合、オゾン水は、SPMの液膜で覆われている基板Wの上面に供給される。
【0088】
次に、3本のノズル、つまり、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32、および第1リンス液ノズル33について説明する。
【0089】
以下では、第1薬液ノズル31が水平に移動する方向を第1薬液ノズル31の右方向および左方向と、第1薬液ノズル31の右方向および左方向に対して直交し、第1ノズル移動ユニット38から水平に離れる方向を第1薬液ノズル31の前方向と、第1薬液ノズル31の前方向とは反対の方向を第1薬液ノズル31の後方向と、それぞれ定義する。第1薬液ノズル31の下方向は、重力の作用する方向と同じである。
【0090】
図4Aは、3本のノズルの概略平面図である。図4Bは、3本のノズルの概略左側面図である。図4Cは、3本のノズルの概略正面図である。図5Aは、図4Cに示すVA-VA線に沿う第1薬液ノズル31の鉛直断面を示す概略断面図である。図5Bは、図5Aに示すVB-VB線に沿う第1薬液ノズル31の鉛直断面を示す概略断面図である。
【0091】
図4A図4B、および図4Cに示すように、3本のノズルは、いずれもL字状である。3本のノズルのそれぞれは、薬液や純水などの処理液を吐出する吐出口が設けられたノズル部81と、ノズル部81を支持するアーム部82とを含む。第1薬液ノズル31の前後方向への第1薬液ノズル31の長さは、第1薬液ノズル31の上下方向への第1薬液ノズル31の長さより大きい。第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33についても同様である。
【0092】
図4Bに示すように、第1ノズル移動ユニット38は、3本のノズルのそれぞれを支持する共通アーム83と、共通アーム83を移動させることにより、3本のノズルを一体的に移動させる駆動ボディー84とを含む。共通アーム83は、駆動ボディー84から水平に突出している。3本のノズルは、共通アーム83から水平に突出している。駆動ボディー84は、処理カップ52(図2B参照)の外側に配置されている。駆動ボディー84は、鉛直な回転軸線A2に沿って上下に延びている。駆動ボディー84は、回転軸線A2まわりに回転することにより、共通アーム83を水平に移動させ、上下に伸縮することにより、共通アーム83を鉛直に移動させる。
【0093】
アーム部82は、共通アーム83から対応するノズル部81まで水平に延びている。ノズル部81は、対応するアーム部82の先端から下方に延びている。例えば、第1薬液ノズル31のアーム部82は、共通アーム83から第1薬液ノズル31のノズル部81まで水平に延びており、第1薬液ノズル31のノズル部81は、第1薬液ノズル31のアーム部82の先端から下方に延びている。アーム部82は、上方向または下方向に斜めにまたは直角に折れ曲がっていてもよい。アーム部82は、右方向または左方向に斜めにまたは直角に折れ曲がっていてもよい。
【0094】
図4Aに示すように、3つのアーム部82の中心線は、水平に離れており、鉛直に見ると互いに平行である。第1リンス液ノズル33のアーム部82は、第1薬液ノズル31のアーム部82と第2薬液ノズル32のアーム部82との間に配置されている。図4Cに示すように、3つのノズル部81の中心線は、水平に離れており、水平に見ると互いに平行である。第1リンス液ノズル33のノズル部81は、第1薬液ノズル31のノズル部81と第2薬液ノズル32のノズル部81との間に配置されている。
【0095】
3本のノズルの下端は、共通アーム83よりも下方に配置されている。図4Cは、3本のノズルの下端が別々の高さに配置された例を示している。この例では、第2薬液ノズル32の下端が第1薬液ノズル31および第1リンス液ノズル33の下端よりも下方に配置されており、第1リンス液ノズル33の下端が第1薬液ノズル31および第2薬液ノズル32の下端よりも上方に配置されている。3本のノズルの下端は、等しい高さに配置されてもよいし、3本のノズルの下端のうちの2つが、3本のノズルの下端のうちの残りとは異なる等しい高さに配置されてもよい。
【0096】
図4Cに示すように、第1薬液ノズル31のノズル部81は、第1薬液ノズル31のアーム部82から下方に延びる上流部87と、上流部87から下方に延びており、上流部87よりも細い下流部88とを含む。第2薬液ノズル32のノズル部81は、第2薬液ノズル32のアーム部82から下方に延びる大径部と、大径部から下方に離れるにしたがって細くなったテーパー部と、テーパー部から下方に延びており、大径部よりも細い小径部とを含む。第1リンス液ノズル33のノズル部81も、第1リンス液のアーム部82から下方に延びる大径部と、大径部から下方に離れるにしたがって細くなったテーパー部と、テーパー部から下方に延びており、大径部よりも細い小径部とを含む。
【0097】
第1薬液ノズル31の薬液吐出口95(図5B参照)は、第1薬液ノズル31の下流部88の外周面89で開口している。第2薬液ノズル32の吐出口は、第2薬液ノズル32の小径部の下面で開口している。第1リンス液ノズル33の吐出口は、第1リンス液ノズル33の小径部の下面で開口している。第1薬液ノズル31の下流部88の下面90は、第1薬液ノズル31の下面90および下端に相当する。第2薬液ノズル32の小径部の下面は、第2薬液ノズル32の下面および下端に相当する。第1リンス液ノズル33の小径部の下面は、第1リンス液ノズル33の下面および下端に相当する。
【0098】
第1薬液ノズル31の下流部88は、第1薬液ノズル31の上流部87の下面から下方に延びる鉛直な柱状である。下流部88は、基板Wの上面と平行な平面である下面90と、下面90から上流部87の下面まで鉛直に延びる筒状の外周面89とを含む。図4Aは、下流部88が円柱状である例を示している。この例では、下流部88の下面90は、水平な円形の平面であり、下流部88の外周面89は、鉛直な円筒状である。
【0099】
図5Aおよび図5Bに示すように、第1薬液ノズル31は、過酸化水素水と混合前の硫酸が流入する硫酸流入口91と、硫酸と混合前の過酸化水素水が流入する過酸化水素水流入口92と、硫酸流入口91に流入した硫酸と過酸化水素水流入口92に流入した過酸化水素水とが混ざり合う内部空間93とを含む。第1薬液ノズル31は、さらに、内部空間93で生成されたSPMを吐出する薬液吐出口95と、内部空間93から薬液吐出口95にSPMを案内する先端流路94とを含む。
【0100】
硫酸流入口91、過酸化水素水流入口92、および薬液吐出口95は、第1薬液ノズル31の外表面で開口している。図5Aおよび図5Bに示す例では、硫酸流入口91および過酸化水素水流入口92は、上流部87の外表面で開口しており、薬液吐出口95は、下流部88の外表面で開口している。下流部88の内部空間は、上流部87の内部空間から下方に延びている。上流部87および下流部88の内部空間は、第1薬液ノズル31の内部空間93に相当する。水平面に沿う下流部88の内部空間の断面の面積は、水平面に沿う上流部87の内部空間の断面の面積よりも小さい。
【0101】
図5Aに示すように、第1薬液ノズル31のアーム部82は、第1薬液ノズル31のノズル部81まで延びる筒状である。硫酸配管34pおよび過酸化水素水配管35pは、第1薬液ノズル31のアーム部82の中に挿入されている。硫酸配管34pの一部と過酸化水素水配管35pの一部とは、第1薬液ノズル31のアーム部82の中に配置されている。硫酸配管34pおよび過酸化水素水配管35pは、第1薬液ノズル31のノズル部81に連結されている。硫酸配管34pは、第1薬液ノズル31のアーム部82の中に挿入されていなくてもよい。過酸化水素水配管35pについても同様である。
【0102】
先端流路94は、第1薬液ノズル31の内部空間93から薬液吐出口95にSPMを案内する。先端流路94は、薬液吐出口95から第1薬液ノズル31の内部空間93に向かって斜め上に延びている。したがって、第1薬液ノズル31は、薬液吐出口95からSPMを真下に吐出するのではなく、水平面に対して傾いた薬液吐出方向D1(図5B参照)に薬液吐出口95からSPMを吐出する。水平面に対する薬液吐出方向D1の傾き角度は、水平面に対する先端流路94の中心線の傾き角度に相当する。
【0103】
薬液吐出口95は、第1薬液ノズル31の外表面で開口した円形または楕円形の開口である。薬液吐出口95は、下流部88の下面90ではなく、下流部88の外周面89で開口している。薬液吐出口95は、第1薬液ノズル31の左方向に向けられている(図5Bの右方向が、第1薬液ノズル31の左方向)。第1薬液ノズル31は、第1薬液ノズル31の左右方向に水平に移動する。したがって、薬液吐出口95は、第1薬液ノズル31が水平に移動する方向と平面視で平行またはほぼ平行な薬液吐出方向D1にSPMを吐出する。
【0104】
次に、飛沫シールド101について説明する。
【0105】
以下では、平面視において薬液吐出方向D1と平行であり、平面視において向きが同じ水平な方向を飛沫シールド101の後方向と、飛沫シールド101の後方向とは反対の方向を飛沫シールド101の前方向と、平面視において薬液吐出方向D1と直交する水平な方向を飛沫シールド101の右方向および左方向と、それぞれ定義する。飛沫シールド101の下方向は、重力の作用する方向と同じである。飛沫シールド101の前方向は、第1薬液ノズル31の右方向に一致し、飛沫シールド101の後方向は、第1薬液ノズル31の左方向に一致する。
【0106】
図6は、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を飛沫シールド101の左側から見た概略図である。図7は、図6の一部を拡大した図である。図8図11は、それぞれ、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を、飛沫シールド101の後ろ側、前側、上側、および下側から見た概略図である。
【0107】
図6図11において、矢印U、矢印F、矢印R、および矢印Lは、それぞれ、飛沫シールド101の上方向、前方向、右方向、および左方向を示している。他の図についても同様である。また、図11では、薬液吐出口95を太線で示している。
【0108】
図6に示すように、第1薬液ノズル31は、基板Wから上方に飛散した薬液の飛沫を受け止める飛沫シールド101付きのノズルである。飛沫シールド101は、薬液の飛沫の拡散を防止するフェンダーのような液はね防止用のガードである。飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31の側方に配置されている。飛沫シールド101は、L字状である。飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31の側方で上下に延びるサポートアーム102と、第1薬液ノズル31から離れるようにサポートアーム102の下端から側方に延びるシールドプレート103とを含む。シールドプレート103は、サポートアーム102に支持されている。
【0109】
飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31に取り付けられている。飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31と共に移動する。第1薬液ノズル31が移動したとしても、第1薬液ノズル31に対する飛沫シールド101の位置は変わらない。言い換えると、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101の相対的な位置が固定された状態でチャンバー12内を移動する。第1薬液ノズル31が基板Wの上面に向けてSPMを吐出するとき、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101は、基板Wの上方に配置される。飛沫シールド101は、平面視で基板Wよりも小さい(図12参照)。
【0110】
図6に示すように、第1薬液ノズル31が基板Wの上面に向けてSPMを吐出するとき、第1薬液ノズル31の下面90とシールドプレート103の下面104とは、基板Wの上面に直接対向する。シールドプレート103の下面104は、基板Wの上面に直接対向するシールド面104である。以下では、「シールドプレート103の下面104」を、「シールド面104」または「飛沫シールド101の下面104」ということがある。
【0111】
飛沫シールド101のシールド面104のいずれの部分も基板Wの上面に直接対向する。第1薬液ノズル31は、基板Wの上面内の狙い位置P1に向けて薬液を斜めに吐出する。シールド面104は、基板Wの上面から上方に離れており、狙い位置P1を含む基板Wの上面の一部分だけに平面視で重なる(図10参照)。狙い位置P1から上方に飛散したSPMの飛沫は、シールド面104によって受け止められる。
【0112】
飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31の左側に配置されている(図6の右側が、第1薬液ノズル31の左側)。飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31に対して第1リンス液ノズル33とは反対側に配置されている(図2B参照)。第1薬液ノズル31が待機位置に配置されているとき、飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31に対してスピンチャック21側に配置される(図2B参照)。
【0113】
図6に示すように、飛沫シールド101は、一体の一つの部材である。シールドプレート103は、サポートアーム102と一体である。飛沫シールド101は、互いに固定された複数の部材であってもよい。飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31のノズル部81に接しており、第1薬液ノズル31のノズル部81に固定されている。飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31のアーム部82に接した状態で第1薬液ノズル31のアーム部82に固定されていてもよい。もしくは、飛沫シールド101の一部または全部が、第1薬液ノズル31と一体であってもよい。
【0114】
サポートアーム102は、第1薬液ノズル31の上流部87の側面に重ねられている。サポートアーム102は、例えばボルトによって上流部87に固定されている。サポートアーム102は、上流部87から下方に延びている。サポートアーム102の下端は、上流部87の下端よりも下方で、かつ、下流部88の下端よりも上方の位置に配置されている。シールドプレート103は、サポートアーム102から第1薬液ノズル31とは反対の方向に延びている。シールドプレート103およびサポートアーム102は、下流部88に接触しておらず、下流部88から水平に離れている。
【0115】
サポートアーム102は、例えば、鉛直な板状である。サポートアーム102の前面102fおよび後面102rは、互いに平行またはほぼ平行である。サポートアーム102の前面102fおよび後面102rは、いずれも、鉛直な長方形状の1つの平面である。サポートアーム102の前面102fは、2つ以上の平面であってもよいし、平面および曲面を含んでいてもよい。サポートアーム102の前面102fは、長方形以外の形状であってもよい。サポートアーム102の後面102rについても同様である。
【0116】
サポートアーム102の前面102fは、上流部87の側面に重ねられている。サポートアーム102の前面102fは、上流部87から下方に延びている。サポートアーム102の前面102fの下端は、上流部87の下端よりも下方で、かつ、下流部88の下端よりも上方の位置に配置されている。サポートアーム102の前面102fは、下流部88に接触しておらず、下流部88から水平に離れている。下流部88からサポートアーム102の前面102fまでの水平方向への最短距離は、下流部88の上端からサポートアーム102の前面102fの下端まで一定であってもよいし、薬液吐出口95に近づくにしたがって段階的または連続的に減少していてもよい。
【0117】
図6に示すように、シールドプレート103の上面103uは、サポートアーム102の後面102rから第1薬液ノズル31とは反対の方向に延びている。シールド面104に相当するシールドプレート103の下面104は、サポートアーム102の前面102fから第1薬液ノズル31とは反対の方向に延びている。シールドプレート103の上面103uおよび下面104は、互いに平行またはほぼ平行である。シールドプレート103の上面103uおよび下面104は、上流部87の下端よりも下方に配置されている。
【0118】
図8および図9に示すように、サポートアーム102の幅(飛沫シールド101の左右方向への長さ)は、サポートアーム102の上端からシールドプレート103の近傍まで一定またはほぼ一定であり、シールドプレート103の近傍ではシールドプレート103に近づくにしたがって増加している。サポートアーム102の幅は、サポートアーム102の上端からサポートアーム102の下端まで一定であってもよい。
【0119】
図10に示すように、シールドプレート103の幅(飛沫シールド101の左右方向への長さ)は、シールドプレート103の前端からシールドプレート103の後端まで一定またはほぼ一定である。シールドプレート103の幅は、サポートアーム102の幅の最大値と等しいまたはほぼ等しい。シールドプレート103の奥行(飛沫シールド101の前後方向への長さ)は、シールドプレート103の右端からシールドプレート103の左端まで一定またはほぼ一定である。シールドプレート103の幅は、シールドプレート103の奥行と等しくてもよいし、シールドプレート103の奥行よりも大きいまたは小さくてもよい。シールドプレート103の幅および奥行は、一定ではなく、変化していてもよい。
【0120】
図6に示すように、シールド面104は、飛沫シールド101の前後方向に薬液吐出口95から離れるにしたがって基板Wの上面に近づくように水平面に対して一定の角度で傾斜した1つの平面である。言い換えると、基板Wの上面からシールド面104までの鉛直方向への距離は、飛沫シールド101の前後方向に薬液吐出口95から離れるにしたがって一定の割合で連続的に減少している。
【0121】
その一方で、飛沫シールド101の前後方向への薬液吐出口95からの距離が変わらなければ、基板Wの上面からシールド面104までの鉛直方向への距離は、シールド面104の右端からシールド面104の左端まで一定である。したがって、図9に示すように、シールド面104の前端104f(前方の一辺)は、水平であり、シールド面104の後端104r(後方の一辺)も、水平である。
【0122】
水平面に対するシールド面104の傾き角度θ2(図7参照)は、水平面に対する薬液吐出方向D1の傾き角度θ1(図7参照)と等しくてもよいし、水平面に対する薬液吐出方向D1の傾き角度θ1よりも大きいまたは小さくてもよい。水平面に対する薬液吐出方向D1の傾き角度θ1は、例えば、10~45度である。水平面に対するシールド面104の傾き角度θ2は、例えば、10~45度度である。
【0123】
シールド面104は、水平であってもよい。つまり、基板Wの上面からシールド面104までの鉛直方向への距離は、シールド面104の前端104fからシールド面104の後端104rまで一定であると共に、シールド面104の右端からシールド面104の左端まで一定であってもよい。もしくは、基板Wの上面からシールド面104までの鉛直方向への距離は、飛沫シールド101の前後方向にシールド面104の後端104rに近づくにしたがって連続的または段階的に変化していてもよい。同様に、基板Wの上面からシールド面104までの鉛直方向への距離は、飛沫シールド101の左右方向にシールド面104の左端に近づくにしたがって連続的または段階的に変化していてもよい。
【0124】
図7に示すように、シールド面104の前端104fは、シールド面104の後端104rよりも上方に配置されている。シールド面104の前端104fは、シールド面104の上端に相当し、シールド面104の後端104rは、シールド面104の下端に相当する。シールド面104の前端104fからシールド面104の後端104rまでの鉛直方向への距離DS1(高低差)は、第1薬液ノズル31の下面90の半径よりも大きく、シールド面104の奥行DP1(図11参照)よりも短い。距離DS1は、基板Wの上面からシールド面104の後端104rまでの鉛直方向への距離よりも大きくてもよい。
【0125】
シールド面104の前端104fは、シールド面104のうちで薬液吐出口95に最も近い部分である。シールド面104の前端104fは、薬液吐出口95の下端95Lよりも上方に配置されている。シールド面104の前端104fは、薬液吐出口95の上端95uと等しい高さに配置されていてもよいし、薬液吐出口95の上端95uよりも上方または下方に配置されていてもよい。シールド面104の後端104rは、薬液吐出口95の上端95uよりも下方に配置されている。シールド面104の後端104rは、薬液吐出口95の下端95Lと等しい高さに配置されてもよいし、薬液吐出口95の下端95Lよりも上方または下方に配置されていてもよい。
【0126】
シールド面104の後端104rが薬液吐出口95の下端95Lよりも下方に配置される場合、シールド面104の後端104rは、第1薬液ノズル31の下面90と等しい高さに配置されてもよいし、基板Wの上面に接触しないのであれば、第1薬液ノズル31の下端よりも下方に配置されてもよい。シールド面104の下端に相当するシールド面104の後端104rが基板W上のSPMに接触しない範囲でシールド面104の後端104rを基板Wの上面に近づけることにより、基板Wから上方に飛散したSPMの飛沫を効率的にシールド面104で受け止めることができる。
【0127】
図11に示すように、シールド面104、すなわち、シールドプレート103の下面104を下から見ると、シールド面104は、四角形または長方形状の1つの平面である。シールド面104は、1つの曲面であってもよいし、平面および曲面を含んでいてもよい。シールド面104は、扇形または台形などの四角形および長方形以外の形状であってもよい。シールド面104は、平面視で基板Wよりも小さい(図12参照)。つまり、平面視におけるシールド面104の面積は、平面視における基板Wの面積よりも小さい。
【0128】
シールド面104の奥行DP1(飛沫シールド101の前後方向における長さ)は、シールド面104の右端からシールド面104の左端まで一定であってもよいし、連続的または段階的に変化していてもよい。同様に、シールド面104の幅WD1(飛沫シールド101の左右方向における長さ)は、シールド面104の前端104fからシールド面104の後端104rまで一定であってもよいし、連続的または段階的に変化していてもよい。シールド面104の奥行DP1は、シールド面104の幅WD1と等しくてもよいし、シールド面104の幅WD1よりも大きいまたは小さくてもよい。
【0129】
シールド面104の奥行DP1および幅WD1のそれぞれは、第1薬液ノズル31の下面90の直径よりも大きい。シールド面104の奥行DP1および幅WD1のそれぞれは、基板Wの半径よりも小さい。シールド面104の奥行DP1および幅WD1のそれぞれは、飛沫シールド101の上端から飛沫シールド101の下端までの鉛直方向への距離DS2(図6参照)よりも小さい。シールド面104の奥行DP1および幅WD1のそれぞれは、第1薬液ノズル31のノズル部81の上端から第1薬液ノズル31のノズル部81の下端までの鉛直方向への距離DS3(図6参照)よりも小さい。
【0130】
図11に示すように、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を下から見ると、第1薬液ノズル31の下面90のいずれの部分も、シールド面104の外縁104oの外側に配置されており、シールド面104から水平に離れている。第1薬液ノズル31を下から見ると、薬液吐出口95のいずれの部分も、第1薬液ノズル31の下面90の外縁上に配置されている。したがって、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を下から見ると、薬液吐出口95のいずれの部分も、シールド面104の外縁104oの外側に配置されており、シールド面104から水平に離れている。
【0131】
第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を下から見たとき、薬液吐出口95からシールド面104の外縁104oまでの最短距離DS4(図11参照)は、シールド面104の奥行DP1よりも短い。図11に示す例では、薬液吐出口95からシールド面104の前端104f(上端)までの最短距離は、シールド面104の奥行DP1よりも短い。したがって、シールド面104は、薬液吐出口95の近くに配置されており、シールド面104は、飛沫シールド101の前後方向に長い。シールド面104の奥行DP1は、最短距離DS4以下であってもよい。
【0132】
ノズルの吐出口から基板Wの上面に向けて吐出された液体は、基板Wの上面内の狙い位置P1またはその近傍で基板Wの上面または基板W上の液体に衝突する。このとき、基板W上で液跳ねが発生し、液体の飛沫(液滴、ミスト、蒸気など)が基板Wから上方に飛散する。加えて、吐出口から放射状に飛散する液体の飛沫も発生する。このような液体の飛沫がチャンバー12(図2A参照)内の部材に付着し乾燥すると、基板Wを汚染させるパーティクルに変化することがある。
【0133】
化学的に反応する2種類の液体を吐出の直前に混合する場合は、当該2種類の液体の化学反応により液体の飛沫が発生し、この飛沫が吐出口および基板Wの上面から飛散することがある。100℃を超える液体と水を含む100℃未満の液体とを吐出の直前に混合する場合は、急激な水の沸騰により、液体の飛沫が吐出口および基板Wの上面から飛散することがある。
【0134】
特に、100℃を超える液体と水を含む100℃未満の液体とが、発熱反応を起こす2種類の液体である場合は、当該2種類の液体に含まれる水がさらに急激に加熱されるので、飛沫の数が増えたり、飛沫が飛散する勢いが増したりする。このような2種類の液体の例は、100℃を超える硫酸と100℃未満の過酸化水素水である。硫酸および過酸化水素水を混合すると、硫酸の希釈熱により高温のSPMが生成される。
【0135】
図6に示すように、基板Wの上面にSPMを供給するとき、制御装置3(図1A参照)は、第1薬液ノズル31の下面90とシールド面104とを基板Wの上面に近接させた状態で、基板Wの上面内の狙い位置P1に向けて第1薬液ノズル31にSPMを吐出させる。基板Wの上面から第1薬液ノズル31の下面90までの鉛直方向への距離DS5は、シールド面104の奥行DP1よりも短い。薬液吐出口95から狙い位置P1までの水平方向への距離DS6は、シールド面104の奥行DP1よりも短い。
【0136】
第1薬液ノズル31は、基板Wの上面に対して垂直な方向にSPMを吐出するのではなく、基板Wの上面に対して斜めにSPMを吐出する。これにより、SPMの飛沫が上方向に飛散する範囲を狭めることができる。さらに、基板Wの上面内の狙い位置P1をシールド面104で覆う。薬液吐出口95から上方に飛散したSPMの飛沫と、基板Wから上方に飛散したSPMの飛沫とは、シールド面104に衝突する。これにより、SPMの飛沫が飛散する範囲を狭くでき、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101以外のチャンバー12内の部材(例えば、図2Aに示す整流板18の下面)に付着するSPMの飛沫の数を減らすことができる。
【0137】
次に、ミスト発生器105について説明する。
【0138】
図10に示すように、基板処理装置1は、洗浄液のミストを発生するミスト発生器105を備えている。図10は、ミスト発生器105が超音波振動子106を含む例を示している。超音波振動子106は、第1薬液ノズル31のノズル部81に取り付けられている。第1薬液ノズル31のアーム部82または飛沫シールド101に超音波振動子106を取り付けてもよい。第1薬液ノズル31のノズル部81と、第1薬液ノズル31のアーム部82と、飛沫シールド101とのうちの2つ以上に超音波振動子106を取り付けてもよい。第1ノズル移動ユニット38が第1薬液ノズル31を水平に移動させると、第1薬液ノズル31およびミスト発生器105は、両者の位置関係が一定に維持されたまま水平に移動する。
【0139】
ミスト発生器105は、ミストの供給源である洗浄液を溜める液槽107を含む。図10は、第1薬液ノズル31の上流部87の上面から下方に凹んだ凹部が液槽107である例を示している。液槽107は、第1薬液ノズル31の上流部87の上面で開口している。液槽107は、液槽107内の洗浄液を取り囲む筒状の内周面と、液槽107の内周面の底を塞ぐ底面とを含む。液槽107は、第1薬液ノズル31のノズル部81と一体であってもよいし、第1薬液ノズル31のノズル部81に固定された、第1薬液ノズル31のノズル部81とは別の部材であってもよい。
【0140】
図10は、超音波振動子106が液槽107内に配置された例を示している。液槽107内の洗浄液からミストを発生できるのであれば、超音波振動子106を液槽107の外に配置してもよい。超音波振動子106は、液槽107の底面上に配置されている。図10に示す例では、超音波振動子106は水平な円板状であり、液槽107の内周面は超音波振動子106の外周面を同心円状に取り囲んでいる。超音波振動子106の上端は、第1薬液ノズル31の上流部87の上面と等しい高さに配置されていてもよいし、第1薬液ノズル31の上流部87の上面よりも上方または下方に配置されていてもよい。
【0141】
超音波振動子106は、電圧の変化に応じて振動する圧電素子(piezoelectric element)または磁界の変化に応じて振動する磁歪振動子(magnetostrictive vibrator)であってもよいし、これら以外の振動子であってもよい。超音波振動子106を振動させる発振器は、配線を介して超音波振動子106に電気的に接続されている。超音波振動子106の一部または全部は、液槽107内の洗浄液に浸漬される。超音波振動子106が振動を開始すると、液槽107内の洗浄液の一部がミストに変化し、洗浄液のミストが液槽107内の液面から上方に流れる。
【0142】
ミスト発生器105は、超音波振動子106および液槽107に加えて、液槽107に供給すべき洗浄液を案内する洗浄液配管108pと、洗浄液配管108pから液槽107への洗浄液の供給が実行される開状態と洗浄液配管108pから液槽107への洗浄液の供給が停止される閉状態との間で切り替わる洗浄液バルブ108vとを含む。洗浄液配管108pは、第1薬液ノズル31に取り付けられている。洗浄液配管108pは、第1薬液ノズル31と共に移動する。洗浄液バルブ108vが開かれると、洗浄液配管108p内の洗浄液が液槽107に供給される。
【0143】
液槽107内の洗浄液は、純水である。ミスト発生器105は、純水のミスト、つまり、純水の粒子の集合体を発生する。洗浄液は、純水以外の液体であってもよい。例えば、洗浄液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)のアンモニア水のうちの少なくとも1つを含む液体であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。第1薬液ノズル31から吐出される薬液が酸性である場合、洗浄液は中性または酸性であり、第1薬液ノズル31から吐出される薬液がアルカリ性である場合、洗浄液は中性またはアルカリ性であることが好ましい。
【0144】
ミスト発生器105は、超音波式以外の発生器であってもよい。ミスト発生器105は、超音波振動子106に代えてまたは加えて、液槽107内の洗浄液を加熱することにより、液槽107内の洗浄液を蒸発させるヒーターを備えていてもよい。ミスト発生器105は、超音波振動子106に代えてまたは加えて、ミストを噴射するミストノズルを備えていてもよい。ミストノズルは、気体および液体を衝突させることによりミストを発生する外部混合型または内部混合型の二流体ノズルであってもよいし、圧縮された液体をオリフィスから噴射することによりまたはベンチュリ効果(Venturi effect)を利用することによりミストを発生するスプレーノズルであってもよい。ただし、超音波振動子106は、より短い時間でミストを生成できる点でヒーターよりも優れ、比較的簡素な構成でより細かなミストを生成できる点でミストノズルよりも優れる。
【0145】
次に、基板W上での第1薬液ノズル31および飛沫シールド101の動作について説明する。
【0146】
図12は、基板Wに対する第1薬液ノズル31および飛沫シールド101の位置を示す概略図である。図13は、第1薬液ノズル31が基板Wの上面の外周部に向けて薬液を吐出しているときの第1ガード53Aに対する飛沫シールド101の位置を示す概略図である。図14は、薬液の粒子を含む雰囲気が純水の粒子を含む純水のミストに接触することを説明するための概略図である。
【0147】
基板Wの上面にSPMを供給するとき、制御装置3(図1A参照)は、少なくとも一つのガード53を上位置に位置させた状態で、スピンチャック21に基板Wを回転させながら、基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル31にSPMを吐出させる。このとき、制御装置3は、第1薬液ノズル31から吐出されたSPMが基板Wの上面に衝突する衝突位置が基板Wの上面の中央部に留まるように第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を静止させてもよいし、当該衝突位置が基板Wの上面内で基板Wの径方向(基板Wの回転軸線A1に直交する方向)に移動するように第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に移動させてもよい。
【0148】
第1薬液ノズル31にSPMを吐出させながら、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に移動させる場合、制御装置3は、第1薬液ノズル31から吐出されたSPMが基板Wの上面の中央部に衝突するセンター処理位置と、第1薬液ノズル31から吐出されたSPMが基板Wの上面の外周部に衝突するエッジ処理位置と、の間で第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に移動させてもよい(ハーフスキャン)。もしくは、制御装置3は、第1薬液ノズル31から吐出されたSPMが基板Wの上面の外周部に衝突する2つのエッジ処理位置の間で第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に移動させてもよい(フルスキャン)。
【0149】
図12は、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101が2つのエッジ処理位置の間で水平に移動する例を示している。この例の場合、制御装置3は、第1ノズル移動ユニット38を制御することにより、外側エッジ位置(二点鎖線で示す位置)と内側エッジ位置(一点鎖線で示す位置)と、の間で第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に移動させる。
【0150】
「外側エッジ位置」は、第1薬液ノズル31が第2薬液ノズル32に対して基板Wの回転軸線A1とは反対側に配置されており、飛沫シールド101が、上位置に位置する第1ガード53Aに平面視で重なるように基板Wの上面に対するSPMの衝突位置を基板Wの外周に近づけた位置である。
【0151】
「内側エッジ位置」は、第2薬液ノズル32が第1薬液ノズル31に対して基板Wの回転軸線A1とは反対側に配置されており、第2薬液ノズル32が、上位置に位置する第1ガード53Aに接触しない範囲で基板Wの上面に対するSPMの衝突位置を基板Wの外周に近づけた位置である。
【0152】
図13に示すように、第1薬液ノズル31が外側エッジ位置に配置されているとき、飛沫シールド101のシールドプレート103は、上位置に位置する第1ガード53Aの天井部60の下方に配置され、平面視で当該天井部60に重なる。このとき、サポートアーム102およびシールドプレート103は、上位置に位置する第1ガード53Aから離れており、第1ガード53Aに接触していない。上位置に位置する第1ガード53Aの上端部53uは、シールドプレート103のいずれの部分よりも上方に配置されており、外側エッジ位置に位置する飛沫シールド101に平面視で重なっている。
【0153】
外側エッジ位置は、基板Wの径方向に関して内側エッジ位置よりも外側の位置である。つまり、基板Wの中心から第1薬液ノズル31が外側エッジ位置に配置されているときのSPMの衝突位置までの最短距離は、基板Wの中心から第1薬液ノズル31が内側エッジ位置に配置されているときのSPMの衝突位置までの最短距離よりも長い。
【0154】
図14に示すように、第1薬液ノズル31が薬液の一例であるSPMを吐出すると、薬液の粒子を含む薬液雰囲気が第1薬液ノズル31の近くで発生する。チャックピン22(図13参照)やガード53(図13参照)にSPMが衝突したときも、薬液雰囲気が第1薬液ノズル31の近くで発生する。また、100℃以上のSPMが第1薬液ノズル31から吐出されるので、SPMに含まれる水の蒸発により、SPMの液滴やミストが第1薬液ノズル31から激しく噴出する。噴出する勢いが強いので、第1薬液ノズル31から噴出したSPMの液滴やミストは整流板18(図2A参照)の下面に付着する場合がある。SPMとレジストとの反応により基板Wからヒュームが発生する場合もある。殆どの薬液雰囲気は、ダウンフローや排気設備の吸引力によって、ガード53内に送り込まれる。しかしながら、一部の薬液雰囲気が、下空間SL(図2A参照)に拡散する場合がある。
【0155】
制御装置3(図1A参照)は、ミスト発生器105にミストの発生を開始させ、その後、第1薬液ノズル31にSPMの吐出を開始させる。洗浄液の一例である純水のミストは、ミスト発生器105から上方に流れ、その後、ダウンフローや排気設備の吸引力によってガード53の方に流れる。第1薬液ノズル31の近傍を漂う薬液雰囲気は、第1薬液ノズル31の近傍を漂う純水のミストに接触する。図14に示すように、この接触により、薬液の粒子が純水の粒子と結合し、より大きくかつ重い液体の粒子が形成される。粒子の重量が増加するので、薬液雰囲気が上方に流れ難くなり、薬液雰囲気が拡散する範囲が狭まる。
【0156】
第1薬液ノズル31からのSPMの吐出が停止された後は、基板Wが回転しており、SPMの液膜が基板Wの上面の全域を覆っている状態で、第1リンス液ノズル33(図2A参照)または第2リンス液ノズル45(図2A参照)に純水を吐出させる。制御装置3は、第1薬液ノズル31がSPMの吐出を停止するのと同時にミスト発生器105にミストの発生を停止させてもよいし、第1薬液ノズル31がSPMの吐出を停止する前または後にミスト発生器105にミストの発生を停止させてもよい。
【0157】
第1リンス液ノズル33または第2リンス液ノズル45から吐出された純水は、回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。ミスト発生器105から発生した純水のミストは、ミスト発生器105がミストの発生を停止した後も、ある程度の時間は基板Wの上方を漂うので、基板W上のSPMを純水で洗い流す際に発生したSPMの飛沫は、基板Wの上方を漂う純水のミストに捕捉され、その後、ガード53の内部を通じてチャンバー12の外に排出される。これにより、乾燥後の基板Wや基板Wの近傍に配置された部材に付着する薬液雰囲気を無くすまたは減らすことができる。
【0158】
以上のように第1実施形態では、基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル31に薬液を吐出させる。第1薬液ノズル31が薬液を吐出すると、薬液の飛沫や薬液のミストなどの薬液雰囲気が基板Wの近くで発生する。特に、100℃以上のSPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)が第1薬液ノズル31から吐出される場合には、SPMに含まれる水の蒸発により、SPMの液滴やSPMのミストが第1薬液ノズル31から激しく噴出する。SPMとレジストとの反応により基板Wからヒューム(煙のような気体)が発生する場合もある。
【0159】
第1薬液ノズル31の近傍を漂う薬液雰囲気は、ミスト発生器105から発生した洗浄液のミストに接触する。この接触により、薬液の粒子が洗浄液の粒子と結合し、より大きくかつ重い液体の粒子に変化する。粒子の重量が増加するので、薬液雰囲気が上方に流れ難くなり、薬液雰囲気が拡散する範囲が狭まる。特に、薬液雰囲気の主たる発生源である第1薬液ノズル31の近傍で洗浄液のミストを薬液雰囲気に接触させるので、薬液雰囲気の拡散範囲を効果的に狭めることができる。これにより、乾燥後の基板Wや基板Wの近傍に配置された部材に付着する薬液雰囲気を無くすまたは減らすことができ、薬液雰囲気に起因する基板W等の汚染を低減できる。
【0160】
さらに、ノズルアクチュエータの一例である第1ノズル移動ユニット38は、第1薬液ノズル31だけでなく、ミスト発生器105も移動させる。ミスト発生器105から発生した洗浄液のミストは、薬液を吐出している第1薬液ノズル31を追従し、第1薬液ノズル31が移動した後も第1薬液ノズル31の近傍を漂う。したがって、基板Wを収容するチャンバー12内に洗浄液のミストを充満させる必要がなく、このような場合に比べて洗浄液の消費量を減らすことができる。これにより、基板Wの処理に要するエネルギーや環境への負荷を低減しながら、薬液雰囲気の拡散範囲を効率的に狭めることができる。
【0161】
第1実施形態では、液槽107内の洗浄液をヒーターで蒸発させたり、ミストノズルに洗浄液を噴霧させたりするのではなく、第1薬液ノズル31と共に移動する液槽107内の洗浄液を超音波振動子106で振動させることにより、洗浄液のミストを生成する。超音波振動子106は、より短い時間でミストを生成できる点でヒーターよりも優れ、比較的簡素な構成でより細かなミストを生成できる点でミストノズルよりも優れる。洗浄液の粒子を小さくすることにより、洗浄液のミストが浮遊する時間を延ばすことができ、より多くの薬液雰囲気を洗浄液のミストに接触させることができる。
【0162】
第1実施形態では、液槽107が第1薬液ノズル31の上方に配置されており、平面視で第1薬液ノズル31に重なっている。したがって、液槽107が第1薬液ノズル31のまわりに配置されている場合に比べて高い位置で洗浄液のミストを発生できる。これにより、洗浄液のミストが基板Wまたは基板W上の液体に接触するまでの時間を延ばすことができ、洗浄液のミストが浮遊する時間を延ばすことができる。
【0163】
第1実施形態では、洗浄液配管108pから液槽107に洗浄液を供給する。洗浄液配管108pは、第1薬液ノズル31と共に移動する。したがって、液槽107に洗浄液を供給するために第1薬液ノズル31を特定の位置に移動させる必要がなく、任意の位置で液槽107に洗浄液を供給できる。さらに、洗浄液配管108pから液槽107に洗浄液を補充すれば、液槽107の容量が小さい場合でも、単位時間あたりのミストの発生量、または、ミストを発生できる時間を増加させることができる。
【0164】
第1実施形態では、飛沫シールド101のシールド面104を基板Wの上面に直接対向させる。第1薬液ノズル31が基板Wの上面に向けて薬液を吐出すると、薬液が基板Wの上面または基板W上の液体に衝突し、上方に飛散する薬液の飛沫が発生する。この飛沫を飛沫シールド101のシールド面104で受け止めることができる。さらに、飛沫シールド101は第1薬液ノズル31と共に移動するので、第1薬液ノズル31がいずれの位置に配置されているときでも、基板Wから上方に飛散する薬液の飛沫を飛沫シールド101で受け止めることができる。
【0165】
次に、第2実施形態について説明する。
【0166】
以下の図15図16において、前述の図1A図14に示された構成と同等の構成については、図1A等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0167】
第2実施形態の第1実施形態に対する主要な相違点は、ミスト発生器105が第1薬液ノズル31ではなく、飛沫シールド101に取り付けられていることである。
【0168】
図15は、本発明の第2実施形態に係る第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に見た概略図である。図16は、本発明の第2実施形態に係る第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を上から見た概略図である。
【0169】
ミスト発生器105の液槽107は、第1薬液ノズル31ではなく、飛沫シールド101に設けられている。図15図16は、液槽107が飛沫シールド101と一体である例を示している。シールドプレート103の上面103uは、液槽107の底面に相当する。ミスト発生器105の超音波振動子106は、液槽107の底面上に配置されている。
【0170】
液槽107は、シールドプレート103から上方に延びる平面視U字状の側壁107sを含む。サポートアーム102は、側壁107sに結合されている。サポートアーム102の後面102rと側壁107sの内面とが、液槽107の内周面に相当する。液体は、側壁107sの内側に溜められる。側壁107sの高さは、第1薬液ノズル31が外側エッジ位置(図12において二点鎖線で示す第1薬液ノズル31の位置)に配置されているときに、上位置に位置する第1ガード53Aに側壁107sが接触しないように設定されている。
【0171】
第2実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第2実施形態では、液槽107内の洗浄液を超音波振動子106で振動させることにより、液槽107内の洗浄液からミストを発生させる。液槽107は、飛沫シールド101の上方に配置されており、平面視で飛沫シールド101に重なっている。この場合、液槽107を第1薬液ノズル31の上方に配置する場合に比べて液槽107の容積を大きくし易い。つまり、液槽107の深さと平面視における液槽107の面積との両方または一方を増加させ易い。これにより、より多くの洗浄液を液槽107内に保持できる。
【0172】
次に、第3実施形態について説明する。
【0173】
以下の図17図18において、前述の図1A図16に示された構成と同等の構成については、図1A等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0174】
第3実施形態の第1実施形態に対する主要な相違点は、第1薬液ノズル31が基板Wの上面に対して垂直な方向に薬液を吐出すると共に、飛沫シールド101が第1薬液ノズル31の全周を取り囲んでいることである。
【0175】
図17は、本発明の第3実施形態に係る第1薬液ノズル31および飛沫シールド101の鉛直断面を示す概略断面図である。図18は、本発明の第3実施形態に係る第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を上から見た概略図である。
【0176】
第1薬液ノズル31の薬液吐出口95は、第1薬液ノズル31の外周面89ではなく、第1薬液ノズル31の下面90で開口している。第1薬液ノズル31は、基板Wの上面内の狙い位置P1に向けて薬液吐出口95から下方向に鉛直に薬液を吐出する。第1薬液ノズル31は、薬液吐出口95から基板Wの上面に対して傾いた方向に薬液を吐出してもよい。
【0177】
飛沫シールド101のサポートアーム102は、第1薬液ノズル31の全周を取り囲んでいる。サポートアーム102は、第1薬液ノズル31に固定されている。飛沫シールド101のシールドプレート103は、サポートアーム102から水平に延びている。シールドプレート103は、第1薬液ノズル31の全周を取り囲んでいる。シールド面104に相当するシールドプレート103の下面104は、サポートアーム102の下端よりも下方に配置されている。
【0178】
図17は、シールドプレート103の下面104が第1薬液ノズル31の外周面89からシールドプレート103の下面104の外縁104oまで水平である例を示している。この例では、シールドプレート103の下面104の全体が水平であり、シールドプレート103の下面104が第1薬液ノズル31の下面90よりも上方に配置されている。薬液吐出口95は、シールドプレート103の下面104よりも下方に配置されている。
【0179】
シールドプレート103の下面104は、第1薬液ノズル31の下面90と等しい高さに配置されていてもよいし、第1薬液ノズル31の下面90よりも下方に配置されていてもよい。シールドプレート103の下面104は、基板Wの上面に対して垂直または傾いた部分を有していてもよい。シールドプレート103の下面104の内縁は、一定の間隔を空けて第1薬液ノズル31の外周面89を取り囲んでいてもよい。
【0180】
図18に示すように、シールドプレート103は、平面視で第1薬液ノズル31と同心の円形である。平面視におけるシールドプレート103の形状は、円以外であってもよい。シールドプレート103の下面104の外縁104oは、平面視で第1薬液ノズル31の全周を取り囲んでいる。平面視におけるシールドプレート103の面積は、平面視における基板Wの面積よりも小さい。
【0181】
第1薬液ノズル31がSPMなどの薬液を基板Wの上面内の狙い位置P1に向けて薬液吐出口95から垂直に吐出すると、狙い位置P1から上方に飛散する薬液の飛沫が発生する。薬液の飛沫は、狙い位置P1から斜め上方向に放射状に飛散する。このような薬液の飛沫は、シールド面104に相当するシールドプレート103の下面104によって受け止められる。これにより、薬液の飛沫が拡散する範囲を狭めることができる。
【0182】
薬液の粒子を含む薬液雰囲気が飛沫シールド101の上方で発生したり、飛沫シールド101の上方に流れ着いたりしたとしても、この薬液雰囲気は、第1薬液ノズル31の近傍を漂う洗浄液のミストに接触する。これにより、薬液雰囲気が上方に流れ難くなり、薬液雰囲気が拡散する範囲が狭まる。特に、薬液雰囲気の主たる発生源である第1薬液ノズル31の近傍で洗浄液のミストを薬液雰囲気に接触させるので、薬液雰囲気の拡散範囲を効果的に狭めることができる。
【0183】
次に、第4実施形態について説明する。
【0184】
以下の図19において、前述の図1A図18に示された構成と同等の構成については、図1A等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0185】
第4実施形態の第3実施形態に対する主要な相違点は、ミスト発生器105が第1薬液ノズル31ではなく、飛沫シールド101に取り付けられていることである。
【0186】
図19は、本発明の第4実施形態に係る第1薬液ノズル31および飛沫シールド101の鉛直断面を示す概略断面図である。
【0187】
ミスト発生器105の液槽107は、第1薬液ノズル31ではなく、飛沫シールド101に設けられている。図19は、液槽107が飛沫シールド101と一体である例を示している。シールドプレート103の上面103uは、液槽107の底面に相当する。図19に示す例では、複数の超音波振動子106が、液槽107の底面上に配置されている。
【0188】
液槽107は、シールドプレート103から上方に延びる筒状の側壁107sを含む。側壁107sは、第1薬液ノズル31の全周を取り囲んでいる。洗浄液は、側壁107sの内側に溜められる。側壁107sの高さは、第1薬液ノズル31が外側エッジ位置(図12において二点鎖線で示す第1薬液ノズル31の位置)に配置されているときに、上位置に位置する第1ガード53Aに側壁107sが接触しないように設定されている。
【0189】
次に、第5実施形態について説明する。
【0190】
以下の図20図24において、前述の図1A図19に示された構成と同等の構成については、図1A等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0191】
第5実施形態の第1実施形態に対する主要な相違点は、第1薬液ノズル31が二流体ノズルであり、第1薬液ノズル31を下から見ると、シールドプレート103の内周103iが間隔を空けて第1薬液ノズル31の下面90の全周を取り囲んでいることである。
【0192】
最初に、第1薬液ノズル31について説明する。
【0193】
図20は、本発明の第5実施形態に係る第1薬液ノズル31を水平に見たときの第1薬液ノズル31の外観を示す概略図である。第1薬液ノズル31は、液体と気体とを衝突させることにより、基板Wの上面に向かって下方に飛散する複数の液滴を生成する二流体ノズルである。二流体ノズルは、二流体ノズルの中で液体と気体とを衝突させる内部混合型であってもよいし、二流体ノズルの外で液体と気体とを衝突させる外部混合型であってもよい。図20は、第1薬液ノズル31が外部混合型の二流体ノズルである例を示している。
【0194】
第1薬液ノズル31は、液体および気体を下方に吐出する少なくとも1つの吐出口を含む。少なくとも1つの吐出口は、液体を下方に吐出する液体吐出口と、気体を下方に吐出する気体吐出口であってもよいし、液体および気体の両方を吐出する1つの流体吐出口であってもよい。図20は、液体および気体の両方を吐出する1つの薬液吐出口95が、第1薬液ノズル31の下面90および下端に相当する第1薬液ノズル31の下流部88の下面90で開口した例を示している。
【0195】
第1薬液ノズル31から吐出される液体は、基板処理装置1で使用される前に作製された1種類の液体であってもよいし、基板処理装置1内で混合された2種類以上の液体の混合液であってもよい。図20は、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMを第1薬液ノズル31が吐出する例を示している。硫酸および過酸化水素水は、第1薬液ノズル31内で混合されてもよいし、第1薬液ノズル31の外で混合されてもよい。
【0196】
第1薬液ノズル31は、硫酸が流入する硫酸流入口91と、過酸化水素水が流入する過酸化水素水流入口92と、硫酸流入口91に流入した硫酸と過酸化水素水流入口92に流入した過酸化水素水とを混合しながら薬液吐出口95の方に案内する液体流路に相当する内部空間93とを含む。第1薬液ノズル31は、さらに、不活性ガスなどの気体が流入する気体流入口97と、気体流入口97に流入した気体を薬液吐出口95の方に案内する気体流路98とを含む。
【0197】
液体流路に相当する内部空間93は、ノズル部81の鉛直な中心線に沿って上下に延びている。気体流路98は、内部空間93の全周を取り囲む筒状である。気体流路98は、内部空間93のまわりで上下に延びている。気体流路98の下端は、第1薬液ノズル31の下面90上に配置されており、円形の薬液吐出口95を形成している(図22参照)。内部空間93の下端は、第1薬液ノズル31の下面90上に配置されていてもよいし、第1薬液ノズル31の下面90よりも上方に配置されていてもよい。
【0198】
気体流路98は、第1薬液ノズル31に供給すべき気体を案内する気体配管96pに気体流入口97を介して接続されている。気体配管96pに介装された気体バルブ96vが開かれると、窒素ガスなどの不活性ガスが、気体配管96pから気体流入口97を介して気体流路98に供給される。気体流路98に供給された不活性ガスは、気体流路98内で周方向に広がりながら、気体流路98内を下方に流れる。これにより、気体流路98に供給された不活性ガスが薬液吐出口95から下方に吐出される。
【0199】
次に、飛沫シールド101について説明する。
【0200】
以下では、図20図23を参照する。図20は、本発明の第5実施形態に係る飛沫シールド101の鉛直断面を示す概略断面図である。図21は、本発明の第5実施形態に係る第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に見た概略図である。図22は、本発明の第5実施形態に係る第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を下から見た概略図である。図23は、本発明の第5実施形態に係る接続空間S2について説明するための概略図である。
【0201】
図20および図21に示すように、基板処理装置1は、基板Wから上方に飛散する飛沫を受け止める飛沫シールド101を備えている。飛沫シールド101は、ノズル部81から下方に延びるサポートアーム102と、サポートアーム102によって支持されたシールドプレート103とを含む。サポートアーム102は、第1薬液ノズル31に固定されている。シールドプレート103は、サポートアーム102を介して第1薬液ノズル31に固定されている。図21は、2つのサポートアーム102が1つのシールドプレート103に固定された例を示している。
【0202】
図21に示すように、サポートアーム102は、第1薬液ノズル31に固定されたベースプレート102bと、ベースプレート102bを介して第1薬液ノズル31に固定されたロワープレート102Lと、ロワープレート102Lからベースプレート102bに延びる一対のサイドプレート102sとを含む。ベースプレート102bは、ノズル部81に接した状態で第1薬液ノズル31に固定されている。ロワープレート102Lは、シールドプレート103の上面103uに接した状態でシールドプレート103に固定されている。シールドプレート103は、ロワープレート102Lおよびベースプレート102bを介して第1薬液ノズル31に固定されている。
【0203】
シールドプレート103は、全周にわたって連続したリング状の板である。図22に示すように、シールドプレート103は、第1薬液ノズル31を下から見たときに第1薬液ノズル31の下面90の全周を取り囲む内周103iと、第1薬液ノズル31を下から見たときに内周103iの全周を取り囲む外周103oとを含む。シールドプレート103は、さらに、内周103iから外周103oに延びる上面103uと、上面103uの下方で内周103iから外周103oに延びる下面104とを含む。
【0204】
図20および図21に示す例では、シールドプレート103の上面103uおよび下面104は、シールドプレート103の内周103iからシールドプレート103の外周103oまで水平に延びる環状の平面である。シールドプレート103の上面103uの内縁および外縁は、同心の円形である。シールドプレート103の下面104の内縁および外縁も、同心の円形である。シールドプレート103の厚み、つまり、シールドプレート103の下面104からシールドプレート103の上面103uまでの上下方向への長さは、シールドプレート103の内周103iからシールドプレート103の外周103oまで一定である。
【0205】
シールドプレート103の上面103uおよび下面104は、第1薬液ノズル31の上端よりも下方に配置されている。図20および図21は、シールドプレート103の上面103uおよび下面104が、第1薬液ノズル31の下面90よりも上方で、かつ、第1薬液ノズル31から吐出される気体が流入する気体流入口96よりも下方の位置に配置された例を示している。シールドプレート103の上面103uは、第1薬液ノズル31の下面90と等しい高さに配置されていてもよいし、第1薬液ノズル31の下面90よりも下方に配置されていてもよい。シールドプレート103の下面104についても同様である。
【0206】
図23に示すように、シールドプレート103の上面103uよりも上側でシールドプレート103の内周103iよりも外側の空間は、上側空間S1である。シールドプレート103の内周103iの内側の空間は、内側空間S3である。シールドプレート103の下面104と基板Wの上面との間の空間は、下側空間S4である。上側空間S1は、シールドプレート103の内周103iと同心の鉛直な円筒状である。内側空間S3は、水平な円板状である。
【0207】
第1薬液ノズル31およびシールドプレート103は、上側空間S1を内側空間S3に接続する接続空間S2を形成している。図23において太い一点鎖線で囲まれた領域は、接続空間S2の一部を表す。接続空間S2は、内側空間S3と上下に連なると共に上側空間S1と水平に連なる空間である。接続空間S2は、シールドプレート103の中心まわりの角度が0度から360度までの範囲の一部だけで上側空間S1を内側空間S3に接続していてもよいし、当該範囲内のいずれの位置でも上側空間S1を内側空間S3に接続していてもよい。
【0208】
次に、基板W上での第1薬液ノズル31および飛沫シールド101の動作について説明する。
【0209】
図24は、本発明の第5実施形態に係る第1薬液ノズル31が液体および気体を吐出することにより形成される気流について説明するための概略図である。
【0210】
第1薬液ノズル31は、液体の一例であるSPMと気体の一例である窒素ガスとを衝突させ、基板Wの上面に向かって下方に飛散する複数のSPMの液滴を生成する。第1薬液ノズル31がSPMを吐出したり、SPMが基板Wの上面または基板W上の液体に衝突したりすると、SPMのミストが発生する。このSPMのミストは、第1薬液ノズル31に取り付けられた飛沫シールド101に受け止められる。これにより、ミストの拡散を防止できる。飛沫シールド101は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFE(パフルオロエラストマー)などの薬品に対する耐性を有するフッ素樹脂で作製されている。
【0211】
図24に示すように、第1薬液ノズル31は、SPMを窒素ガスと共に薬液吐出口95から下方に噴出する。これにより、複数のSPMの液滴が生成され、基板Wの上面または基板W上の液体に衝突する。第1薬液ノズル31から吐出された窒素ガスは、第1薬液ノズル31の下面90から基板Wの上面に向かって下方に流れる。その後、この窒素ガスは、シールドプレート103の下面104と基板Wの上面との間を上下に広がりながら、第1薬液ノズル31から水平に離れる方向に放射状に流れる。
【0212】
第1薬液ノズル31によって形成された気流は、気体の粘性によって、第1薬液ノズル31またはシールドプレート103の近傍の気体を気流の方に引き寄せる。この気流の近くにシールドプレート103が配置されているので、気流の方に引き寄せられる気体は、シールドプレート103を迂回する。これにより、内側空間S3の方に下方に気体を吸引する吸引力が発生し得る。この吸引力は、上側空間S1を漂うミストをシールドプレート103の内側の方に吸い寄せる。これにより、上側空間S1を漂うミストが拡散する範囲を狭めることができる。
【0213】
さらに、シールドプレート103の下面104は、上下方向への気流の広がりを制限し、気流の水平な速度成分の減少を小さくする。これにより、基板Wの上面に沿って流れる気流の勢いをガード53まで維持することができ、この気流に乗せて処理液雰囲気をガード53まで送ることができる。その後、ガード53の内部から排気ダクト78(図2A参照)の方に流れる気流に乗せて処理液雰囲気を排気ダクト78の方に送ることができ、処理液雰囲気をチャンバー12から排出することができる。
【0214】
第5実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第5実施形態では、第1薬液ノズル31の中または外で液体および気体を衝突させることにより、水平な基板Wの上面に向かって下方に飛散する複数の液滴を生成する。これにより、複数のSPMの液滴が、基板Wの上面または基板W上の液体に衝突する。このとき、基板Wから上方に飛散する飛沫が発生する。このような飛沫は、基板Wの上面に対向するシールドプレート103の下面104に衝突し落下する。これにより、処理液の粒子を含む処理液雰囲気が拡散する範囲を狭めることができる。
【0215】
さらに、第1薬液ノズル31は、液体だけでなく気体も吐出する。第1薬液ノズル31から吐出された気体は、第1薬液ノズル31の下面90から基板Wの上面に向かって下方に流れる。その後、この気体は、シールドプレート103の下面104と基板Wの上面との間を上下に広がりながら、第1薬液ノズル31から水平に離れる方向に放射状に流れる。シールドプレート103の下面104は、上下方向への気流の広がりを制限し、気流の水平な速度成分の減少を小さくする。これにより、気流がシールドプレート103と基板Wとの間を通過した後も気流の水平な速度成分が大きい状態を維持することができ、ガード53などの基板Wを取り囲む部材まで気流を到達させることができる。
【0216】
加えて、第1薬液ノズル31およびシールドプレート103は、シールドプレート103の上面103uよりも上側でシールドプレート103の内周よりも外側の空間である上側空間S1をシールドプレート103の内周の内側の空間である内側空間S3に接続する接続空間S2を形成している。接続空間S2は、内側空間S3の上方に位置しており、上側空間S1の内側に位置している。接続空間S2は、内側空間S3と上下に連なると共に上側空間S1と水平に連なる空間である。シールドプレート103の下面104と基板Wの上面との間の空間である下側空間S4は、内側空間S3および接続空間S2を介して上側空間S1に接続される。
【0217】
第1薬液ノズル31の下面90から下方に流れる気体は、シールドプレート103の内周の内側を通り得る。さらに、この気体は、シールドプレート103の下面104と基板Wの上面との間を第1薬液ノズル31から離れる方向に放射状に流れる。第1薬液ノズル31またはシールドプレート103の近傍の気体は、気体の粘性によって、第1薬液ノズル31から下方に流れる気流と基板Wの上面に沿って放射状に流れる気流との方に引き寄せられ、これらの気流と共に流れる。
【0218】
シールドプレート103は、第1薬液ノズル31によって形成された気流の方に引き寄せられる気体の障壁となり、当該気体を迂回させる。これにより、内側空間S3の方に下方に気体を吸引する吸引力が発生し得る。このような吸引力が発生すると、上側空間S1を漂うミストが、上側空間S1および内側空間S3を接続する接続空間S2を介してシールドプレート103の内側に吸い込まれ、第1薬液ノズル31によって形成された気流と共に流れる。これにより、上側空間S1を漂うミストが拡散する範囲を狭めることができる。
【0219】
さらに、第1薬液ノズル31から吐出した液体および気体によって形成される気流を利用して、前記のような吸引力を発生させるので、吸引力を発生させるためだけにエネルギーを消費しなくてもよい。したがって、エネルギーを効率的に利用しながら、ミストなどの上側空間S1を漂う処理液雰囲気が拡散する範囲を狭めることができる。これにより、環境への負荷を軽減しながら、基板Wまたはその近傍の部材の汚染を軽減または防止できる。
【0220】
第1薬液ノズル31は、二流体ノズル以外のノズルであってもよい。例えば、第1薬液ノズル31は、液体を気体に衝突させずに複数の液滴を生成するノズルであってもよい。このようなノズルの一例は、加圧された液体を下方に噴射する高圧スプレーノズルである。加圧された液体を高圧スプレーノズルが下方に噴射すると、二流体ノズルと同様に、基板Wの上面に向かって下方に飛散する複数の液滴が生成されると共に、第1薬液ノズル31の下面90またはその近傍から下方に流れる気流が形成される。
【0221】
他の実施形態
第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を下から見たとき、薬液吐出口95の全部または一部が、シールド面104の外縁104o上に配置されていてもよい。
【0222】
第1薬液ノズル31の薬液吐出口95を、第1薬液ノズル31の左方向ではなく、第1薬液ノズル31の前方向または後方向に向けてもよい。第1薬液ノズル31と第1リンス液ノズル33との水平方向への間隔が広い場合、もしくは、第1リンス液ノズル33が第1薬液ノズル31の右側にない場合、第1薬液ノズル31の薬液吐出口95を、第1薬液ノズル31の右方向に向けてもよい。例えば、第1薬液ノズル31の薬液吐出口95を第1薬液ノズル31の前方向に向ける場合、第1薬液ノズル31のノズル部81の前側に飛沫シールド101を配置すればよい。
【0223】
基板Wの上面に向けてSPMを斜めに吐出できるのであれば、薬液吐出口95は、第1薬液ノズル31の外周面89(下流部88の外周面89)ではなく、第1薬液ノズル31の下面90で開口していてもよい。
【0224】
第1薬液ノズル31のノズル部81の形状は、図4A図4Cに示す形状に限られない。例えば、第1薬液ノズル31のノズル部81は、図4A図4Cに示す第2薬液ノズル32のノズル部81と同様の形状であってもよい。
【0225】
第1薬液ノズル31だけを第1ノズル移動ユニット38に支持させてもよい。つまり、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33を、第1ノズル移動ユニット38とは別のノズル移動ユニットに支持させてもよい。
【0226】
硫酸および過酸化水素水を、第1薬液ノズル31のノズル部81の中ではなく、第1薬液ノズル31のアーム部82の中で混合してもよい。もしくは、硫酸および過酸化水素水を、第1薬液ノズル31の外で混合してもよい。この場合、硫酸および過酸化水素水を、下空間SL(図2A参照)における第1薬液ノズル31の外の領域で混合してもよいし、チャンバー12の外で混合してもよい。
【0227】
飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31とは別の部材ではなく、第1薬液ノズル31と一体の部材であってもよい。例えば、飛沫シールド101は、第1薬液ノズル31の上流部87と一体であってもよい。この場合、飛沫シールド101のサポートアーム102の前面102fが、第1薬液ノズル31の下流部88の外周面89に接していてもよい。
【0228】
飛沫シールド101からサポートアーム102を省略してもよい。この場合、飛沫シールド101のシールドプレート103は、第1薬液ノズル31に取り付けられた、第1薬液ノズル31とは別の部材であってもよいし、第1薬液ノズル31と一体の部材であってもよい。
【0229】
第1薬液ノズル31から基板Wの上面に向かって飛散するSPMに飛沫シールド101が当たらないのであれば、シールド面104の全体を薬液吐出口95の下端95Lよりも下方に配置してもよい。
【0230】
第1~第4実施形態に係る第1薬液ノズル31から飛沫シールド101を省略してもよい。
【0231】
ミスト発生器105の液槽107を、第1薬液ノズル31のノズル部81の上方ではなく、平面視で第1薬液ノズル31のノズル部81に重ならない位置に配置してもよい。例えば、第1薬液ノズル31のノズル部81の前方、後方、または側方に液槽107を配置してもよい。第1薬液ノズル31のノズル部81に代えてまたは加えて、第1薬液ノズル31のアーム部82に液槽107を設けてもよい。
【0232】
ミスト発生器105の液槽107に洗浄液を供給する洗浄液配管108pは、第1薬液ノズル31に取り付けられていなくてもよい。例えば、第1薬液ノズル31が待機位置に位置しているときに洗浄液が洗浄液配管108pから液槽107に供給されるように、洗浄液配管108pをチャンバー12の隔壁13に対して固定してもよい。
【0233】
ミスト発生器105の液槽107から洗浄液を排出してもよい。例えば、液槽107内の洗浄液を吸引する吸引配管を設けてもよいし、液槽107の内部に向けて気体を吐出することにより、液槽107内の洗浄液を吹き飛ばすブロー配管を設けてもよい。吸引配管またはブロー配管は、第1薬液ノズル31が処理位置および待機位置のいずれに位置しているときに液槽107から洗浄液を排出してもよい。
【0234】
第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を洗浄してもよい。例えば、待機ポッド111(図2B参照)内に位置する第1薬液ノズル31および飛沫シールド101に向けて純水などのリンス液を吐出する液体配管を設けてもよい。この場合、待機ポッド111内に位置する第1薬液ノズル31および飛沫シールド101に向けて気体を吐出することにより、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を乾燥させる気体配管を設けてもよい。
【0235】
第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を洗浄するための液体配管を待機ポッド111に設けることに代えてまたは加えて、スピンチャック21に保持されている基板Wの下面に向けて処理液を上方に吐出する下面ノズル47(図2A参照)を用いて第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を洗浄してもよい。
【0236】
具体的には、基板Wがスピンチャック21の上方に配置されておらず、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101が下面ノズル47の上方に配置された状態で、下面ノズル47に純水などのリンス液を吐出させながら、吐出されたリンス液が第1薬液ノズル31または飛沫シールド101に当たる範囲で第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を水平に往復させてもよい。
【0237】
第1薬液ノズル31および飛沫シールド101の洗浄は、1つの処理ユニット2で1枚または複数枚の基板Wを処理するたびに行ってもよいし、一定の時間が経過するたびに行ってもよいし、任意の時期に行ってもよい。処理ユニット2のメンテナンスを行う際に(例えば、処理ユニット2の内部を洗浄するチャンバー洗浄を行う際に)、第1薬液ノズル31および飛沫シールド101を洗浄してもよい。
【0238】
スピンチャック21は、複数のチャックピン22を基板Wの外周面に接触させるメカニカルチャックに限らず、バキュームチャックなどの他の形式のチャックであってもよい。
【0239】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0240】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0241】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0242】
1 :基板処理装置
31 :第1薬液ノズル(処理液ノズル)
38 :第1ノズル移動ユニット(ノズルアクチュエータ)
90 :第1薬液ノズルの下面
94 :薬液吐出口
101 :飛沫シールド
103 :シールドプレート
103i :シールドプレートの内周
103o :シールドプレートの外周
103u :シールドプレートの上面
104 :シールドプレートの下面(シールド面)
105 :ミスト発生器
106 :超音波振動子
107 :液槽
108p :洗浄液配管
W :基板
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A-C】
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24